2019-015838
リモートモニタリングのための方法、及び信号取得及びリモートモニタリングのためのシステム
- 審判番号
- 2019-015838
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-525080外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年11月25日
- 審決日
- 2021年11月16日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】バンマ チシン ネットワーク(ホンコン) カンパニー リミテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (G06F) / P18 .537-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 25項目
第1 手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
本願は、2014年(平成26年)11月26日(パリ条約による優先権主張 2013年11月29日 中国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
補正の却下の決定、拒絶査定(原査定)
第2 原査定の概要
原査定(令和元年7月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1ないし16に係る発明は、以下の引用文献AないしCに記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
[引用文献等一覧]
A 沢田輝、Webプラットフォーム 新潮流 車載プラットフォーム シリーズ 第2回 カーテレマティクス(後編) 多彩なアプリをブラウザーで実現 WebSocketとWebRTCが鍵、日経コミュニケーション 第599号、日本、日経BP社、2013年11月28日、第599号、pp.60-63
B 特開2000-59762号公報(周知技術を示す文献)
C Ilya Grigorik、Chapter 18. WebRTC、High Performance Browser Networking、2013年 9月 9日、pp.309-362、URL、http://met.guc.edu.eg/Download.ashx?id=25985&file=High-Performance-Browser-Networking-Ilya-Grigorik_25985.pdf(周知技術を示す文献)
第3 当審拒絶理由の概要
1 当審拒絶理由1
令和2年11月18日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)の概要は次のとおりである。
[理由1]明確性要件
本願請求項1ないし14に係る発明は、以下の(1)ないし(3)の点において明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
[理由2]サポート要件
本願請求項1ないし14に係る発明は、以下の(2)の点において発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1及び8に記載の「前記オペレーションコマンドは、異なる瞬間における前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号のリアルタイムの比較に基づき、」は、これに続く、「…直接ピアツーピア接続を確立する」に係るのか、あるいは、単に「オペレーションコマンド」が「異なる瞬間における前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号のリアルタイムの比較」に基づいたものであることを示すのか、明確ではない。
請求項4及び12に記載の「前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号の処理は、異なる瞬間における前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号のリアルタイムの比較に基づき、」についても同様である。
(2)請求項1、4、8及び12に記載の「RTCPeerConnectionインターフェースを介して」「直接ピアツーピア接続を確立する」ことは、明細書及び図面には記載されていない。
また、「RTCPeerConnectionインターフェースを介して」「直接ピアツーピア接続を確立する」とは、どのような意味であるのか明確ではない。
(3)請求項4の記載において、「…デバイス…は、Webオペレーティングシステムで実行する」は、日本語として明確でない。
[理由3]
本願請求項1ないし14に係る発明は、以下の引用文献1ないし4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
[引用文献等一覧]
1 今月のスマートフォン通信、ラジオライフ、KK三才ブックス、2013年8月25日、第34巻・第9号、第98-99ページ(当審で新たに引用した文献)
2 ASCII.Jp:WebRTCでブラウザーが防犯カメラに!(1/4)、2012年6月20日、URL:https://ascii.jp/elem/000/000/702/702494/、検索日:2020年11月10日(周知技術を示す文献;当審で新たに引用した文献)
3 Ilya Grigorik、Chapter 18. WebRTC、High Performance Browser Networking、2013年 9月 9日、pp.309-362、URL、http://met.guc.edu.eg/Download.ashx?id=25985&file=High-Performance-Browser-Networking-Ilya-Grigorik_25985.pdf(拒絶査定の引用文献C)
4 特開2000-59762号公報(拒絶査定の引用文献B)
2 当審拒絶理由2
令和3年6月8日付け当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)の概要は次のとおりである。
[理由1]明確性要件
本願請求項1ないし14に係る発明は、以下の(1)及び(2)の点において明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
[理由2]サポート要件
本願請求項1ないし14に係る発明は、以下の(1)及び(2)の点において発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1)請求項1及び8の記載において、「アラーム」は、
a 「オペレーションコマンド」と同様に、「信号取得デバイス」が「リモートモニタリングデバイス」から受信するよう構成されている、又は、
b 「オペレーションコマンド」とは無関係に処理される(例えば、「リモートモニタリングデバイス」において発行される等)
のいずれであるのか、明確ではない。
また、請求項1及び8の記載は、上記aとも解される以上、発明の詳細な説明に記載したものではない。
(2)請求項4及び12の記載は、
c 「リモートモニタリング結果のフィードバック」として「ユーザ」に「アラーム」を送信する、又は、
d 「リモートモニタリング結果のフィードバック」とは無関係に「アラーム」を使用する、
のいずれの態様であるのか、明確ではない。
また、請求項4及び12の記載は、上記c及びdのいずれであっても発明の詳細な説明(特に、明細書の【0048】)に記載したものではない。
[理由3]
本願請求項1ないし14に係る発明は、上記引用文献1ないし4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 本願発明
本願請求項1ないし14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明14」という。)は、令和3年9月15日に提出された手続補正書に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される発明であり、このうち、本願発明1、4、8及び12は、以下のとおりの発明である。なお、下線は、補正された箇所を示す。
[本願発明1]
「 Webオペレーティングシステムを実行する信号取得デバイスとリモートモニタリングデバイスとの間で、WebRTC技術を使用してピアツーピア接続の通信リンクを確立することと、前記信号取得デバイスが、オーディオ信号及び/またはビデオ信号を取得することと、前記信号取得デバイスが、前記通信リンクを介して前記リモートモニタリングデバイスに前記オーディオ信号及び/または前記ビデオ信号を送信することと、前記信号取得デバイスが、前記リモートモニタリングデバイスから、異なる瞬間において受信された前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号のリアルタイムの比較に基づいて、オペレーションコマンドを受信することであって、前記オペレーションコマンドについてのフィードバックは前記リモートモニタリングデバイスからユーザに送信される、ことと、前記信号取得デバイスが、前記オペレーションコマンドに応じたオペレーションを実行することと、を含み、前記リモートモニタリングデバイスは、前記リアルタイムの比較の結果が大きな差を示すことをアラームの条件の1つとして使用する、リモートモニタリングの方法。」
[本願発明4]
「 リモートモニタリングデバイスにおいて、信号取得デバイス及びWebRTC技術を使用する前記リモートモニタリングデバイスの間で確立されたピアツーピア接続の通信リンクを介して前記信号取得デバイスからオーディオ信号及び/またはビデオ信号を受信することであって、前記信号取得デバイス及び前記リモートモニタリングデバイスの両方は、Webオペレーティングシステムを実行することと、リモートモニタリングのための前記リモートモニタリングデバイスにおいて、前記信号取得デバイスから受信した前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号を処理することと、前記リモートモニタリングデバイスにおいて、前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号を処理した後、前記処理に基づいてオペレーションコマンドを前記信号取得デバイスに送信するとともに、前記オペレーションコマンドに基づくリモートモニタリング結果のフィードバックをユーザに送信することとを含み、前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号の処理は、異なる瞬間における前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号のリアルタイムの比較に基づくものであり、前記リモートモニタリングデバイスは、前記リアルタイムの比較の結果が大きな差を示すことをアラームの条件の1つとして使用する、リモートモニタリングの方法。」
[本願発明8]
「 プロセッサ、コンピュータ読み込み可能メモリ及びストレッジメディア、及び入出力デバイスを有するコンピューティングデバイスを有し、前記コンピューティングデバイスは、Webオペレーティングシステムを実行し及び機能モジュールを有するためにプログラムされることを含む信号取得のための装置であって、オーディオ信号及び/またはビデオ信号を取得するための信号取得モジュールと、前記信号取得モジュールとリモートモニタリングデバイスとの間でWebRTC技術を使用してピアツーピア接続の通信リンクを確立し、前記通信リンクを介して前記オーディオ信号及び/または前記ビデオ信号を前記リモートモニタリングデバイスに送信するための信号送信モジュールと、を有し、前記リモートモニタリングデバイスは、前記Webオペレーティングシステム、及びWebRTC技術を使用して確立される前記通信リンクをサポートし、前記コンピューティングデバイスは、動作を実施するためにさらにプログラムされ、前記動作は、前記リモートモニタリングデバイスからオペレーションコマンドを受信し、前記オペレーションコマンドについてのフィードバックは前記リモートモニタリングデバイスからユーザに送信され、前記オペレーションコマンドに応じたオペレーションを行うことを含み、前記オペレーションコマンドは、異なる瞬間における前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号のリアルタイムの比較に基づくものであり、前記リモートモニタリングデバイスは、前記リアルタイムの比較の結果が大きな差を示すことをアラームの条件の1つとして使用する、前記信号取得のための装置。」
[本願発明12]
「 プロセッサ、コンピュータ読み込み可能メモリ及びストレッジメディア、及び入出力デバイスを有するコンピューティングデバイスを有し、前記コンピューティングデバイスは、Webオペレーティングシステムを実行し及び機能モジュールを有するためにプログラムされることを含むリモートモニタリングシステムであって、この機能モジュールは信号取得デバイス及び信号受信モジュールの間でWebRTC技術を使用してピアツーピア接続の通信リンクを確立し、前記通信リンクを介してオーディオ信号及び/またはビデオ信号を受信するための信号受信モジュールと、リモートモニタリングのための前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号の処理のための信号処理モジュールと、を含み、前記コンピューティングデバイスは、前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号を処理した後、前記処理に基づいてオペレーションコマンドを前記信号取得デバイスに送信するとともに、前記オペレーションコマンドについてのリモートモニタリング結果のフィードバックをユーザに送るようにプログラムされており、前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号の処理は、異なる瞬間における前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号のリアルタイムの比較に基づくものであり、前記コンピューティングデバイスは、前記リアルタイムの比較の結果大きな差を示すことをアラームの条件の1つとして使用する、前記リモートモニタリングシステム。」
本願発明1ないし14は、全体としてみれば、信号を取得するデバイスとモニタリングを行うデバイスとからなるコンビネーションシステムの一部を特定した発明であり、具体的には、本願発明1は、「信号取得デバイス」を主体とする方法の発明であり、本願発明4は、「モニタリングデバイス」を主体とする方法の発明であり、本願発明8は本願発明1に対応する「信号取得のための装置」の発明であり、本願発明12は、本願発明4に対応する「リモートモニタリングシステム」の発明である。
また、本願発明2及び3は、本願発明1を減縮したものであり、本願発明5ないし7は、本願発明4を減縮したものであり、本願発明9ないし11は、本願発明8を減縮したものであり、また、本願発明13及び14は、本願発明12を減縮したものである。
なお、本願発明12における「前記リアルタイムの比較の結果大きな差を示すこと」は、本願発明1、4及び8の記載からして「前記リアルタイムの比較の結果が大きな差を示すこと」の誤記と認められる。
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
当審拒絶理由1及び当審拒絶理由2に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は強調のため当審が付与した。以降においても同様。)
「設定が超ラク! PCやスマホで遠隔操作できる監視カメラ」(タイトル)
「インターネット経由で、撮影映像を転送してくれるWebカメラ。外出先のPCなどから、その映像をリアルタイムに確認できるため、防犯やペットの監視目的として使うにはうってつけのアイテムといえます。市場には数多くのWebカメラが売られていますが、ここで紹介する「CPH537-P2P」は別格。設定が非常に簡単で、外部のPCからの遠隔操作はもちろん、手持ちのスマホでも映像を確認できるのです。」(第98ページ左段)
「活用術02 お手持ちのスマホで遠隔視聴iPhoneやAndroid端末に専用アプリ「IPCloud」(価格:無料インストール)をインストールすれば、スマホやタブレット上からでもカメラにアクセス可能だ。P2P方式による映像配信になるため、世界中どこからでもカメラの映像を確認できるぞ!…(中略)…1 無料アプリ「iPCloud」をスマホにインストール(iOS用はAppStore、Android用はGoogle Playから入手)。起動したら「Search」をタップして(iOS用の場合は「ORCode」をタップ)、カメラ本体の画面にあるORコードをスマホで読み取る。2 SecurityCode欄にパスワードを入力。初期状態なら「123456」と入れれば良い。世界中のどこからでもカメラの映像をスマホで確認!スマホにカメラの映像が表示される。カメラを首フリさせたい場合は、スマホの画面をその方向にフリックすればOK」(第98ページ右段)
「活用術03 外出先のPCからカメラにアクセスする…(中略)…1 カメラと同一のネットワーク上にあるPCのWebブラウザを開き、アドレスルータのIPアドレス(ルータ本体に記載されている)を入力2 セキュリティ画面が開くので、ルータのユーザー名とパスワードを入れて、ルータにアクセスするホーム画面から「詳細設定」→「静的NAT設定」を選ぶ。3 エントリ番号を選択。設定画面が出るので、「優先順位」、「宛先IPアドレス」、「変換対象IPアドレス」、「変換対象ポート」を入力。画面左下の「設定」を押すと、ポートが開放する。4 SETP02で使った付属の視聴ソフトを起動。「システム設定」から「ネットワーク」→「DDNS設定」と進む。「CEPSA DDNS」欄の有効にチェックを付け、さらに「DDNSアドレス」を確認。最後に確定ボタンをクリックすれば設定は完了だ。↓会社やマンガ喫茶など、外出先のPCでWebブラウザを立ち上げ、アドレスバーに「DDNSアドレス」を入力。Webブラウザ上にカメラの映像が表示される。」(第98ページ下段)
(2)引用発明
引用文献1には、「Webカメラ「CPH537-P2P」を使用した監視方法」が記載されているといえる。
よって、前記(1)より、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 PCやスマホで遠隔操作でき、監視目的(監視カメラ)として使うにはうってつけの、インターネット経由でリアルタイムに撮影映像を転送してくれるWebカメラ「CPH537-P2P」を使用した監視方法であって、iPhoneやAndroid端末であるスマホで遠隔視聴する場合、無料アプリ「iPCloud」をスマホにインストールすることで、P2P方式による映像配信によりスマホにカメラの映像が表示され、カメラを首フリさせたい場合は、スマホの画面をその方向にフリックすればよく、外出先のPCからカメラにアクセスする場合、カメラと同一のネットワーク上にあるPCのWebブラウザにより、DDNSアドレスを設定し、外出先のPCでWebブラウザを立ち上げ、アドレスバーに「DDNSアドレス」を入力すると、Webブラウザ上にカメラの映像が表示される、監視方法。」
2 引用文献2について
当審拒絶理由1及び当審拒絶理由2に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「WebRTCでブラウザーが防犯カメラに!(1/4)…(中略)WebブラウザーからPCのカメラなどのデバイスにアクセスするには、従来、FlashPlayerを利用する必要がありましたが、最近ではJavaScriptで利用できるAPIがWebブラウザーに実装されてきています。…(中略)…WebRTCは「Web Real-Time Communications」の略でカメラやマイクなどのデバイスからリアルタイムでデータをとりこめるJavaScriptのAPIが揃っています。」
以上の記載から、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
「Webブラウザーに実装されているWebRTCのAPIで防犯カメラからリアルタイムでデータをとりこむこと。」
3 引用文献3(引用文献C)について
当審拒絶理由1及び当審拒絶理由2に引用された引用文献3(原査定の引用文献C)には、次の事項が記載されている。
「Web Real-Time Communication (WebRTC) is a collection of standards, protocols, and JavaScript APIs, the combination of which enables peer-to-peer, audio, video, and data sharing between browsers (peers).Instead of relying on third-party plug-ins or proprietary software, WebRTC turns real-time communication into a standard feature that any web application can leverage via a simple JavaScript API.Delivering rich, high-quality, RTC applications such as audio and video teleconferencing and peer-to-peer data exchange requires a lot of new functionality in the browser: audio and video processing capabilities, new application APIs, and support for half a dozen new network protocols. Thankfully, the browser abstracts most of this complexity behind three primary APIs.・MediaStream: acquision of audio and video streams・RTCPeerConnection: communication of audio and video data・RTCDataChannel: communication of arbitrary application data」(第309ページ)
[当審訳]
「Web Real-Time Communication(WebRTC)は、規約、プロトコル、およびJavaScript APIのコレクションであり、これらを組み合わせることで、ブラウザー(ピア)間でのピアツーピア、オーディオ、ビデオ、およびデータ共有が可能になる。WebRTCは、サードパーティのプラグインや独自のソフトウェアに依存する代わりに、リアルタイム通信を、任意のWebアプリケーションが単純なJavaScriptAPIを介して活用できる標準機能に変える。オーディオとビデオの電話会議やピアツーピアデータ交換などのリッチで高品質のRTCアプリケーションを提供するには、ブラウザーに多くの新機能、つまり、オーディオとビデオの処理機能、新しいアプリケーションAPI、および半ダースの新しいネットワークプロトコルへのサポートが必要だ。ありがたいことに、ブラウザーは3つの主要なAPIの背後にあるこの複雑さのほとんどを抽象化する。・MediaStream:オーディオ及びビデオストリームの獲得・RTCPeerConnection:オーディオ及びビデオデータの通信・RTCDataChannel:任意のアプリケーションデータの通信」
「Brief Introduction to RTCPeerConnection APIDespite the many protocols involved in setting up and maintaining a peer-to-peer connection, the application API exposed by the browser is relatively simple. The RTCPeerConnection interface (Figure 18-4) is responsible for managing the full life cycle of each peer-to-peer connection.RTCPeerConnection manages the full ICE workflow for NAT traversal.・ RTCPeerConnection sends automatic (STUN) keep alives between peers.・ RTCPeerConnection keeps track of local streams.・ RTCPeerConnection keeps track of remote streams.・ RTCPeerConnection triggers automatic stream renegotiation as required.・ RTCPeerConnection provides necessary APIs to generate the connection offer, accept the answer, allows us to query the connection for its current state, and more.In short, RTCPeerConnection encapsulates all the connection setup, management, and state within a single interface. However, before we dive into the details of each configuration option of the RTCPeerConnection API, we need to understand signaling and negotiation, the offer-answer workflow, and ICE traversal. Let's take it step by step.」(第317~318ページ)
[当審訳]
「RTCPeerConnectionAPIの簡単な紹介ピアツーピア接続のセットアップと維持に関係する多くのプロトコルにもかかわらず、ブラウザーによって公開されるアプリケーションAPIは比較的単純です。RTCPeerConnectionインターフェイス(図18-4)は、各ピアツーピア接続のライフサイクル全体を管理する。RTCPeerConnectionは、NATトラバーサルの完全なICEワークフローを管理する。・RTCPeerConnectionは、ピア間で自動(STUN)キープアライブを送信する。・RTCPeerConnectionは、ローカルストリームを追跡する。・RTCPeerConnectionは、リモートストリームを追跡する。・RTCPeerConnectionは、必要に応じて自動ストリーム再ネゴシエーションをトリガーする。・RTCPeerConnectionは、接続オファーの生成、回答の受け入れ、接続の現在の状態の照会などに必要なAPIを提供する。つまり、RTCPeerConnectionは、すべての接続設定、管理、および状態を単一のインターフェース内にカプセル化する。ただし、RTCPeerConnection APIの各構成オプションの詳細に入る前に、シグナリングとネゴシエーション、オファーとアンサーのワークフロー、およびICEトラバーサルについて理解する必要がある。ステップバイステップで見ていこう。」
以上の記載から、引用文献3には、次の事項が記載されている。
「WebRTCは、ブラウザー(ピア)間でのピアツーピア、オーディオ、ビデオ、およびデータ共有を可能にするJavaScript APIのコレクションであり、リアルタイム通信を単純なJavaScriptAPIを介して活用できる標準機能に変えるものであって、3つの主要なAPIは、・MediaStream:オーディオ及びビデオストリームの獲得・RTCPeerConnection:オーディオ及びビデオデータの通信・RTCDataChannel:任意のアプリケーションデータの通信であり、RTCPeerConnectionは、各ピアツーピア接続のライフサイクル全体を管理するものであり、接続オファーの生成、回答の受け入れ、接続の現在の状態の照会などに必要なAPIを提供すること。」
4 引用文献4(引用文献B)について
当審拒絶理由1及び当審拒絶理由2に引用された引用文献4(原査定の引用文献B)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、ビデオカメラ等のカメラで撮像された画像中の部分的な変化を検出し、この検出に応じてカメラを制御するカメラ制御装置、方法及びそれに用いられるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関するものである。【0002】【従来の技術】従来よりカメラで撮像した映像の変化を検出して侵入者の出現や、異常事態の発生を自動的に検出する装置が提案されている。これらの装置の中には、撮像中の映像の全域を監視対象とするのではなく、撮像中の映像の一部領域をあらかじめ指定し、この一部領域内での変化のみを検出対象として扱うものがある。また、一部領域を複数設定してそれぞれ変化を検出するものもある。」
「【0012】即ち、CPU31は、I/O34を介して信号線14にズーム制御コマンドを出力することで、ビデオカメラ1のズーム倍率の制御が可能であり、また、信号線24に雲台制御コマンドを出力することで、ビデオカメラ1の撮像方向の制御が可能である。」
「【0061】さて、ステップS6の処理を終えると、ステップS7へ進む。ステップS7では、上記表4の如くに格納された各部分領域毎に、順に変化量Vkが、あらかじめ定めた閾値T以下か否かを吟味し、全ての部分領域に関して、変化量が閾値未満の場合は、ステップS6へ戻り、吟味の途中で、例えばm番目の部分領域の変化量Vmが閾値T以上であった場合は、その時点でステップS8へ進む。【0062】ステップS8では、直前のステップで、全体撮像領域の画像中において変化が有ると判定した部分画像領域に対応する部分監視領域に対してビデオカメラの姿勢(パン、チルト、ズーム)をセットして、その画角での変化検出を行う。」
「【0066】ステップS9では、ステップS8で求めた部分監視領域の撮影方向と画角で入力した画像での変化量Vwがあらかじめ定めた閾値Tw以上であると否かを判定し、Tw以上の場合には、ステップS10へ、そうでない場合には、ステップS11に進む。【0067】ステップS10では、直前にステップS8及びステップS9で吟味した部分監視領域に、変化が発生している旨を警告として通信I/F37を経由にして外部に通報する。また、ディスプレイ51上に警告のメッセージを表示したり、図示しないスピーカ等を用いて、音による警告等を行なうように構成してもよい。ステップS10を終えると、ステップS11に進む。」
「【図1】[図:0001380223000001.jpg]」
以上の記載から、引用文献4(引用文献B)には、次の事項(以下、「引用文献4(引用文献B)記載事項」という。)が記載されている。
「 カメラで撮像した映像の変化を検出して侵入者の出現や、異常事態の発生を自動的に検出するカメラ制御装置において、CPU31は、I/O34を介して信号線14にズーム制御コマンドを出力することで、ビデオカメラ1のズーム倍率の制御が可能であり、また、信号線24に雲台制御コマンドを出力することで、ビデオカメラ1の撮像方向の制御が可能であり、各部分領域毎に、順に変化量Vkが、あらかじめ定めた閾値T以下か否かを吟味し、例えばm番目の部分領域の変化量Vmが閾値T以上であった場合は、変化が有ると判定した部分画像領域に対応する部分監視領域に対してビデオカメラの姿勢(パン、チルト、ズーム)をセットして、その画角での変化検出を行い、部分監視領域の撮影方向と画角で入力した画像での変化量Vwがあらかじめ定めた閾値Tw以上であると否かを判定し、Tw以上の場合には、部分監視領域に、変化が発生している旨を警告として通信I/F37を経由にして外部に通報したり、ディスプレイ51上に警告のメッセージを表示したり、図示しないスピーカ等を用いて、音による警告等を行なうこと。」
5 引用文献Aについて
(1)引用文献A記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
原査定に引用された引用文献Aには、図面とともに次の事項が記載されている。
「 もう一方のWebRTCもHTML5関連規格としてW3CでAPIの標準化が進む規格だ。これらはブラウザーベースで、音声や映像のリアルタイムコミュニケーションを可能にする規格である。WebSocketとの最も大きな違いは、サーバーを経由せず、P2Pの形で通信を実現できる…である。」(第61頁左欄)
「 続いてWebRTCによる車載アプリの可能性を見ていこう。WebRTCがサポートする機能は、(1)メディアストリームの取り込み、(2)P2P(Peer to Peer)でメディアストリームを送受信、(3)P2Pで任意のデータを送受信――の主に3つがある。(1)のメディアストリームの取り込みとは、ローカルの端末に接続されたカメラやマイクの音声や映像を、ブラウザーに取り込める仕組みだ。具体的には「getUserMedia」というコマンドを使うことによって、カメラの映像をブラウザーに取り込める。取り込んだ映像は、HTML5のCanvasタグなどを使って、グレースケール化といった画像処理、さらには任意のパターンマッチングなどが可能だ。」(第62頁左欄~中欄)
「 (2)のP2Pでメディアストリームを送受信できる機能を使うことで可能になる、車載アプリ例も紹介しよう。「渋滞ライブカメラ共有サービス」だ(図4)。P2Pでメディアストリームを送受信する際には「PeerConnection」というコマンドを使う。それぞれがブラウザベースの車載機を搭載していると仮定。渋滞に差し掛かったクルマが、ナビの渋滞情報を元に、先頭付近を走行するクルマへライブカメラ映像の送信リクエストをする。先頭付近のクルマがリクエストを承認すると、前方のカメラ映像を「getUserMedia」を使ってブラウザーから取得、さらに「PeerConnection」を使って、リクエストを発信したクルマの車載機とP2Pで接続し、渋滞先頭付近の映像をストリームとして返すことが可能だ。」(第62頁右欄~第63頁左欄)
「(第63頁)[図:0001380223000002.jpg]」
([補足]上記図4において、WebRTCを使った車載アプリの例として「盗難防止監視カメラ」が挙げられている。」
(2)引用発明A
引用文献Aには、全体としてみれば「WebRTCによる車載アプリを使用する方法」が記載されているといえる。
よって、前記(1)より、引用文献Aには、次の事項(以下、「引用発明A」という。)が記載されている。
「 WebRTCによる車載アプリを使用する方法であって、WebRTCがサポートする機能は、(1)メディアストリームの取り込み、(2)P2P(Peer to Peer)でメディアストリームを送受信、(3)P2Pで任意のデータを送受信の3つがあり、(1)は、ローカルの端末に接続されたカメラやマイクの音声や映像を「getUserMedia」というコマンドを使うことによってブラウザーに取り込めるものであり、(2)の機能を使うことで可能になる、車載アプリ例「渋滞ライブカメラ共有サービス」において、P2Pでメディアストリームを送受信する際には「PeerConnection」というコマンドを使い、渋滞に差し掛かったクルマが、先頭付近を走行するクルマへライブカメラ映像の送信リクエストをすると、先頭付近のクルマが前方のカメラ映像を「getUserMedia」を使ってブラウザーから取得、さらに「PeerConnection」を使って、リクエストを発信したクルマの車載機とP2Pで接続し、渋滞先頭付近の映像をストリームとして返し、WebRTCを使った車載アプリの例として「盗難防止監視カメラ」がある、方法。」
第6 当審拒絶理由2についての判断
1 理由1(明確性)及び理由2(サポート要件)について
(1)本件補正により、本件補正後の請求項1及び8の記載は「前記リモートモニタリングデバイスは、前記リアルタイムの比較の結果が大きな差を示すことをアラームの条件の1つとして使用する」と補正されることにより、「リモートモニタリングデバイス」が「リアルタイムの比較の結果が大きな差を示すこと」を「アラーム」の条件の1つとして使用することが明確となり、また、発明の詳細な説明に記載したものとなった。
(2)本件補正により、本件補正後の請求項4及び12の記載は、「前記リモートモニタリングデバイスにおいて、前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号を処理した後、前記処理に基づいてオペレーションコマンドを前記信号取得デバイスに送信するとともに、前記オペレーションコマンドに基づくリモートモニタリング結果のフィードバックをユーザに送信する」及び「前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号の処理は、異なる瞬間における前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号のリアルタイムの比較に基づくものであり、前記リモートモニタリングデバイスは、前記リアルタイムの比較の結果が大きな差を示すことをアラームの条件の1つとして使用する」と補正されることにより、「フィードバック」は、「オペレーションコマンドに基づくリモートモニタリング結果」についてのものであり、「アラーム」は、「異なる瞬間における前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号のリアルタイムの比較に基づくもの」であることが明確となり、また、発明の詳細な説明に記載したものとなった。
よって、理由1(明確性)及び理由2(サポート要件)はいずれも解消した。
2 理由3(進歩性)について
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明は、「スマホ」等により「Webカメラ「CPH537-P2P」」(及び単に「カメラ」)を「遠隔操作」し、また、「監視」するものであるから、「スマホ」は「Webカメラ「CPH537-P2P」」(「カメラ」)を遠隔監視(リモートモニタリング)するデバイスといい得るものである。
また、引用発明の「Webカメラ「CPH537-P2P」」(「カメラ」)は、映像、音声等の信号を取得するデバイスである。
よって、引用発明の「Webカメラ「CPH537-P2P」」(「カメラ」)及び「スマホ」はそれぞれ、本願発明1の「信号取得デバイス」及び「リモートモニタリングデバイス」に相当する。
(イ)引用発明は、「P2P方式による映像配信によりスマホにカメラの映像が表示され」るものであるから、「カメラと同一のネットワーク上にあるPCのWebブラウザにより、DDNSアドレスを設定し、外出先のPCでWebブラウザを立ち上げ、アドレスバーに「DDNSアドレス」を入力する」ことにより、「カメラ」と「スマホ」との間で「P2P方式」の通信リンクを確立する処理を行うものと認められる。また、「P2P方式」は「ピアツーピア接続」といい得るものである。
よって、前記(ア)を参酌すれば、引用発明において、「カメラ」と「スマホ」との間で「P2P方式」(ピアツーピア接続)の通信リンクを確立することと、本願発明1の「Webオペレーティングシステムを実行する信号取得デバイスとリモートモニタリングデバイスとの間で、WebRTC技術を使用してピアツーピア接続の通信リンクを確立すること」とは、「信号取得デバイスとリモートモニタリングデバイスとの間で、ピアツーピア接続の通信リンクを確立すること」との点において共通する。
(ウ)引用発明において、「P2P方式による映像配信によりスマホにカメラの映像が表示され」るためには、「カメラ」が、映像に係るオーディオ信号及び/又はビデオ信号を取得する必要があるため、引用発明は、本願発明1の「前記信号取得デバイスが、オーディオ信号及び/またはビデオ信号を取得すること」に相当する構成を備える。
(エ)引用発明において、「P2P方式による映像配信によりスマホにカメラの映像が表示され」るためには、「カメラ」が、映像に係るオーディオ信号及び/又はビデオ信号を「スマホ」に送信する必要があるため、引用発明は、本願発明1の「前記信号取得デバイスが、前記通信リンクを介して前記リモートモニタリングデバイスに前記オーディオ信号及び/または前記ビデオ信号を送信すること」に相当する構成を備える。
(オ)引用発明の「Webカメラ「CPH537-P2P」」は、「PCやスマホで遠隔操作でき」るものであって、また、「カメラを首フリさせたい場合は、スマホの画面をその方向にフリックすればよく」との構成からすると、「スマホ」の画面をフリックする操作により、「カメラ」を「首フリ」させるための指示命令が「スマホ」から「カメラ」に送信され、「カメラ」は、前記指示命令に応じた「首フリ」を実行するものと理解することができる。
ここで、引用発明の「指示命令」及び「首フリ」はそれぞれ、本願発明1の「オペレーションコマンド」及び「オペレーション」に相当する。
よって、引用発明と、本願発明1の「前記信号取得デバイスが、前記リモートモニタリングデバイスから、異なる瞬間において受信された前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号のリアルタイムの比較に基づいて、オペレーションコマンドを受信することであって、前記オペレーションコマンドについてのフィードバックは前記リモートモニタリングデバイスからユーザに送信される、こと」とは、「前記信号取得デバイスが、前記リモートモニタリングデバイスから、オペレーションコマンドを受信すること」との共通の構成を備えるといえる。
(カ)よって、引用発明は、本願発明1の「前記信号取得デバイスが、前記オペレーションコマンドに応じたオペレーションを実行すること」に相当する構成を備える。
(キ)前記(ア)を参酌すれば、引用発明の「監視方法」と本願発明1の「リモートモニタリングの方法」とは、後述する相違点をのぞいて、上記(イ)ないし(カ)で検討した各処理を含む「リモートモニタリングの方法」である点において共通する。
イ 一致点、相違点
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の点において一致ないし相違する。
[一致点]
「 信号取得デバイスとリモートモニタリングデバイスとの間で、ピアツーピア接続の通信リンクを確立することと、前記信号取得デバイスが、オーディオ信号及び/またはビデオ信号を取得することと、前記信号取得デバイスが、前記通信リンクを介して前記リモートモニタリングデバイスに前記オーディオ信号及び/または前記ビデオ信号を送信することと、前記信号取得デバイスが、前記リモートモニタリングデバイスから、オペレーションコマンドを受信することと、前記信号取得デバイスが、前記オペレーションコマンドに応じたオペレーションを実行することと、を含む、リモートモニタリングの方法。」
[相違点]
<相違点1>
「信号取得デバイス」が、本願発明1では、「Webオペレーティングシステムを実行する」ものであるのに対し、引用発明の「Webカメラ「CPH537-P2P」」は、「Web」に係る技術を使用しているものの、「Webオペレーティングシステムを実行する」ものとして具体的に特定されていない点。
<相違点2>
「ピアツーピア接続の通信リンクを確立する」に際し、本願発明1では「WebRTC技術を使用して」行うのに対し、引用発明において、「WebRTC技術」を使用することに言及がない点。
<相違点3>
「オペレーションコマンドを受信すること」が、本願発明1では、「前記信号取得デバイスが、前記リモートモニタリングデバイスから、異なる瞬間において受信された前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号のリアルタイムの比較に基づいて」なされるのに対し、引用発明では、この点を具体的に特定するものではない点。
<相違点4>
本願発明1は、「前記オペレーションコマンドについてのフィードバックは前記リモートモニタリングデバイスからユーザに送信される」との構成を備えるのに対し、引用発明は、前記構成を具体的に特定しない点。
<相違点5>
本願発明1は、「前記リモートモニタリングデバイスは、前記リアルタイムの比較の結果が大きな差を示すことをアラームの条件の1つとして使用する」との構成を備えるのに対し、引用発明は、前記構成を具体的に特定しない点。
ウ 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3ないし5について先に検討する。なお、相違点3ないし5は、いずれも「前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号のリアルタイムの比較」に直接又は間接的に連関するため、まとめて判断する。
引用文献4(引用文献B)記載事項にあるように、「CPU31」が「I/O34」を介して「ビデオカメラ1」を制御可能であり、「CPU31」が、「ビデオカメラ1」が撮像した複数の部分領域の画像うち、特定の部分領域の画像の変化量が閾値以上であった場合は、当該部分監視領域に対して「ビデオカメラ」の姿勢(パン、チルト、ズーム)をセットして、さらに、その部分監視領域の画像の変化量があらかじめ定めた閾値以上である場合には、警告を、通信I/F37を経由して外部に通報する等の処理を行うことは、本願優先日前の周知技術であるといえる。
しかしながら、引用文献4(引用文献B)記載事項において、「CPU31」と「ビデオカメラ1」とは「I/O34」を介して接続されたものであるから、引用発明のように「P2P方式」で通信接続をするものではなく、また、「ビデオカメラ1」も、引用発明のような「Webカメラ」ではない。
そうすると、引用発明と、引用文献4(引用文献B)記載事項とは、前提とするシステム構成が異なり、引用発明に引用文献4(引用文献B)記載事項を適用する動機付けを見い出すことはできず、当業者といえどもこのように適用することが容易に想到できたとはいえない。加えて、引用発明は、「スマホ」の画面を「フリック」する等により、ユーザがカメラを手動で操作するものであるが、そのような構成に替えて、引用文献4記載事項にあるように、画像の変化量に基づいてビデオカメラを自動的に制御するように変更する動機付けも存在しない。
また、当該相違点3ないし5に係る本願発明1の構成は、引用文献2及び3にも記載されていない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1ないし4に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本願発明4、8及び12について
本願発明4、8及び12は、上記相違点3ないし5に係る本願発明1の構成に相当する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし4に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本願発明2、3、5ないし7、9ないし11、13及び14について
本願発明2、3、5ないし7、9ないし11、13及び14は、本願発明1、4又は12の構成をすべて備え、上記相違点3ないし5に係る本願発明1の構成に相当する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし4に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)小括
以上のとおり、本願発明1ないし14は、当業者が引用文献1ないし4に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえないから、理由3(進歩性)は、解消した。
第7 当審拒絶理由1についての判断
1 理由1(明確性)及び理由2(サポート要件)について
(1)本件補正後の請求項1、4、8及び12の記載は、「異なる瞬間における前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号のリアルタイムの比較」に基づくものが「オペレーションコマンド」であることが明確となった。
(2)本件補正後の請求項1、4、8及び12の記載は、「RTCPeerConnectionインターフェースを介して」「直接ピアツーピア接続を確立する」旨の記載は削除され、発明の詳細な説明に記載したものとなった。
(3)本件補正後の請求項4の記載は、日本語として明確でない記載はなく、明確となった。
よって、理由1(明確性)及び理由2(サポート要件)はいずれも解消した。
2 理由3(進歩性)について
上記第6の2で述べたことと同じ理由により、理由3(進歩性)は、解消した。
第8 原査定についての判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明Aとを対比する。
ア 引用発明Aの「車載アプリ例「渋滞ライブカメラ共有サービス」」においては、渋滞の先頭付近を走行するクルマの「ローカル端末」に接続された「カメラ」によって撮影された「カメラ画像」を、リクエストを発信した「クルマの車載機」に送信することにより、当該「クルマの車載機」のユーザが、送信された「カメラ画像」を視聴することができるものと認められる。加えて、引用発明Aには、「車載アプリ」の例として「盗難防止監視カメラ」を挙げている。以上より、「クルマの車載機」は、渋滞先頭の付近の「カメラ画像」を「ローカル端末」から受信することにより、遠隔地にいるユーザが当該渋滞の様子を「モニタリング」するためのデバイスといい得るものである。
よって、引用発明Aの(リクエストを発信した)「クルマの車載機」は、本願発明1の「リモートモニタリングデバイス」に相当する。
また、「カメラやマイク」が接続された(渋滞先頭の付近のクルマの)「ローカル端末」は、本願発明1の「信号取得デバイス」に相当する。
また、引用発明Aは、「WebRTCによる車載アプリ」を使用する方法であることから、「WebRTC」技術を使用しているといえ、また、「WebRTCがサポートする機能」として「P2P(Peer to Peer)でメディアストリームを送受信」を含み、さらに、「PeerConnection」というコマンドを使って「P2Pで接続」していることからすると、「リクエストを発信したクルマの車載機」(ローカルの端末)と「ローカル端末」との間で「カメラ画像」をストリームで送受信するにあたり、「WebRTC」技術として「PeerConnection」を使って「ピアツーピア接続」の通信リンクを確立していると認められる。
よって、引用発明Aと、本願発明1の「Webオペレーティングシステムを実行する信号取得デバイスとリモートモニタリングデバイスとの間で、WebRTC技術を使用してピアツーピア接続の通信リンクを確立すること」とは、「信号取得デバイスとリモートモニタリングデバイスとの間で、WebRTC技術を使用してピアツーピア接続の通信リンクを確立すること」との共通の構成を備える。
イ 引用発明Aにおいて、リクエストを発信した「クルマの車載機」が「ローカル端末」からストリームで受信(取得)する「カメラ画像」は、本願発明1の「ビデオ信号」に相当する。
よって、引用発明Aは、本願発明1の「前記信号取得デバイスが、オーディオ信号及び/またはビデオ信号を取得すること」に相当する構成を備える。
ウ 引用発明Aにおいて、「WebRTCがサポートする機能」として、「(3)P2Pで任意のデータを送受信」が含まれる。
また、引用発明Aは、「渋滞に差し掛かったクルマ」(の車載機)が、「PeerConnection」を使い、先頭付近を走行するクルマ(ローカル端末)へライブカメラ映像の「送信リクエスト」をすると、先頭付近を走行するクルマ(ローカル端末)が、当該「送信リクエスト」に応じて、前方のカメラ映像を「getUserMedia」を使ってブラウザーから取得し、さらに「PeerConnection」を使って、リクエストを発信したクルマの車載機とP2Pで接続し、渋滞先頭付近の映像をストリームとして返すという「オペレーション」を実行していると認められる。
よって、引用発明Aと、本願発明1の「前記信号取得デバイスが、前記リモートモニタリングデバイスから、異なる瞬間において受信された前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号のリアルタイムの比較に基づいて、オペレーションコマンドを受信することであって、前記オペレーションコマンドについてのフィードバックは前記リモートモニタリングデバイスからユーザに送信される、こと」とは、「前記信号取得デバイスが、前記リモートモニタリングデバイスから、オペレーションコマンドを受信すること」という共通の構成を備える。
エ 前記ウより、引用発明Aは、本願発明1の「前記信号取得デバイスが、前記オペレーションコマンドに応じたオペレーションを実行すること」との構成を備える。
オ 前記アを参酌すれば、引用発明Aの「WebRTCによる車載アプリを使用する方法」と本願発明1の「リモートモニタリングの方法」とは、後述する相違点をのぞいて、上記アないしエで検討した各処理を含む「リモートモニタリングの方法」である点において共通する。
(2)一致点、相違点
したがって、本願発明1と引用発明Aとの間には、次の点において一致ないし相違する。
[一致点]
「 信号取得デバイスとリモートモニタリングデバイスとの間で、WebRTC技術を使用してピアツーピア接続の通信リンクを確立することと、前記信号取得デバイスが、オーディオ信号及び/またはビデオ信号を取得することと、前記信号取得デバイスが、前記通信リンクを介して前記リモートモニタリングデバイスに前記オーディオ信号及び/または前記ビデオ信号を送信することと、前記信号取得デバイスが、前記リモートモニタリングデバイスから、オペレーションコマンドを受信することと、前記信号取得デバイスが、前記オペレーションコマンドに応じたオペレーションを実行することと、を含む、リモートモニタリングの方法。」
[相違点]
<相違点1>
「信号取得デバイス」が、本願発明1では、「Webオペレーティングシステムを実行する」ものであるのに対し、引用発明Aの「ローカル端末」は、「Webオペレーティングシステムを実行する」ものとして具体的に特定されていない点。
<相違点2>
「オペレーションコマンドを受信すること」が、本願発明1では、「異なる瞬間において受信された前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号のリアルタイムの比較に基づいて」なされるのに対し、引用発明Aは、「送信リクエスト」が受信されるにあたり、そのような条件を規定していない点。
<相違点3>
本願発明1は、「前記オペレーションコマンドについてのフィードバックは前記リモートモニタリングデバイスからユーザに送信される」との構成を備えるのに対し、引用発明Aは、当該構成を備えることについて具体的に特定していない点。
<相違点4>
本願発明1は、「前記リモートモニタリングデバイスは、前記リアルタイムの比較の結果が大きな差を示すことをアラームの条件の1つとして使用する」との構成を備えるのに対し、引用発明Aは、当該構成を備えることについて具体的に特定していない点。
(3)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2ないし4について先に検討する。なお、相違点2ないし4は、いずれも「前記オーディオ信号及び/またはビデオ信号のリアルタイムの比較」に直接又は間接的に連関するものであるため、まとめて判断する。
引用発明Aは、「WebRTCを使った車載アプリ」の例として「盗難防止監視カメラ」を挙げているものの、「監視」に特化した具体的な構成について何ら特定していない。
また、引用文献4(引用文献B)記載事項は、「監視」を目的としたものであるが、「CPU31」と「ビデオカメラ1」とは「I/O34」を介して接続されたものであるから、引用発明Aのように「P2P方式」で通信接続をするものではなく、引用発明Aのように「WebRTC」技術を使用したものでもない。
そうすると、引用発明Aと、引用文献4(引用文献B)記載事項とは、前提とするシステム構成や技術分野が異なり、引用発明Aに引用文献4(引用文献B)記載事項を適用する動機付けを見い出すことはできず、当業者といえどもこのような適用が容易に想到できたとはいえない。
また、当該相違点2ないし4に係る本願発明1の構成は、引用文献C(引用文献3)にも記載されていない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献AないしCに記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本願発明4、8及び12について
本願発明4、8及び12は、上記相違点2ないし4に係る本願発明1の構成に相当する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献AないしCに記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 本願発明2、3、5ないし7、9ないし11、13及び14について
本願発明2、3、5ないし7、9ないし11、13及び14は、本願発明1、4又は12の構成をすべて備え、上記相違点2ないし4に係る本願発明1の構成に相当する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献AないしCに記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2019-015838