2019-015175
空気入りタイヤ用ゴム組成物
- 審判番号
- 2019-015175
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-249464外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年11月12日
- 審決日
- 2020年12月14日
- 公報発行日
- 2021年04月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】住友ゴム工業株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人 安富国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (B60C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
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本願は、2015年(平成27年)10月16日(優先権主張 平成26年10月17日、平成26年12月1日)を国際出願日とする特願2015-555315の一部を平成28年12月22日に新たに特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、令和1年9月11日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有する空気入りタイヤであって、前記シーラント層が、タイヤの内周面に沿って連続的にらせん状に配置された幅1.5~5.0mm、厚さ2.5~5.0mmの略紐状形状のシーラント材によって構成されており、前記シーラント材が、ブチル系ゴムを含むゴム成分100質量部に対して、液状ポリマーを100~400質量部、有機過酸化物を1~40質量部、架橋助剤を1~40質量部配合したものである空気入りタイヤ。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1-2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献1.特開昭59-15442号公報
引用文献2.特開昭59-188426号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項
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引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線については、当審において付与した。以下同様である。)。
ア「本発明のシーラント組成物は、自己修復性タイヤパンクシーラントとして開発された。タイヤシーラントとして、本発明のシーラント組成物は、ゴムタイヤの内面に塗布するのに適しており、広範囲の温度条件下でトレツド領域のパンク穴を密閉するために用いられる。」(第3ページ左上欄第2-7行)
イ「タイヤのパンクを密閉するために適当であるためには、シーラント組成物は、1連の特異でかつ例外的に要望される物理化学的規準を満足しなければならない。夏期の運転条件下でタイヤが加熱される高温に於て、シーラント組成物は、老化、分解、流動に対して抵抗性でなければならない。パンク対象物がトレツド内に留まつて、タイヤが依然として使用され続ける場合には、シーラントは、十分な粘着性と疲労抵抗とを有し、タイヤの回転中、それが前後に動いたとしても対象物に密着したまゝになつていなければならない。パンク対象物をトレツドから取り去つた場合には、シーラントは、冬期の温度でもパンク穴中に流れ込み、穴を密閉することができなければならない。」(第3ページ右上欄第3-16行)
ウ「橋かけ密度が低すぎると、遠心力のため、高温に於てシーラントがクリープまたは流動し、タイヤの肩部分の下にあるシーラントが不十分になる。」(第5ページ右下欄第10-12行)
エ「本発明のシーラントは、適当な粘着付与剤と組み合わせて、粘度平均分子量が、100,000より大きいコポリマーの形でのみ存在する硬化ブチルゴムを含み、組成物の引張強さ、伸び、橋かけ密度は、上述した所要シーラント特性を生じるように調節されている。一般に、引張強さ、伸び、橋かけ密度は、全組成物中のブチルゴムの分率、橋かけ剤の使用量、強化剤の使用量、ブチルゴムの分子量およびモル不飽和ならびにある程度粘着付与剤および加工方法を調節することによつて最も容易に制御され得る。」(第6ページ左上欄第8-18行)
オ「ブチルゴムは、加硫法(硫黄とメルカプトベンゾチアゾールのような促進剤)を用いて硬化させることができるが、かかる硬化は、時間の経過と共に、酸素または紫外線によつて生じる分解を受けやすいゴムをもたらす。かかる分解は、ジフエニル-p-フエニレンジアミン、フエニルβ-ナフチルアミン、ヒドロキノンのような酸化防止剤、およびN,N′-ジ(2-オクチル)-p-フエニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フエニル-p-フエニレンジアミンのようなオゾン分解防止剤の使用によつてある程度防止することができる。それにも拘らず、得られたシーラントの特性は、時間の経過と共に十分に変化するので、シーラントが過酷な条件下で長年耐え得なければならないタイヤシーリング用途のための加硫には、キノイドおよびフエノール樹脂硬化系を好ましいものにする。
キノイド硬化は、芳香族ニトロソ化合物のニトロソ基による橋かけに依存する。キノイド硬化系中、p-キノンジオキシムおよびp,p-ジベンゾイルキノンジオキシムが硬化剤として好ましい。」(第8ページ右上欄第13行-左下欄第13行)
カ「本発明の組成物は種々の方法により適用しうる。組成物はその場で、例えばタイヤの内部表面上で硬化するスプレー可能な組成物として、または最初にシート形態で硬化されついで適用される組成物として配合しうる。該組成物はまた基材上へ押し出しまたはブラシがけすることができる。」(第12ページ右下欄第2-7行)
キ「特に乗物タイヤシーラントの態様に関して、第1図を参照すれば、乗物タイヤ10は通常トレツド部分12、カーカス部分14及び側壁16を包含する。チユーブレス乗物タイヤに於いて、空気不透過性であるバリヤー層またはライニング18を使用することが一般に望ましい。空気不透過性ライニング18は典型的には一つのリム接触部分20からその他のリム部分22までのタイヤ10の全内部表面上に伸びている。第1図に示される本発明の態様に従つて、シーラント層24は空気バリヤー層18に対してタイヤ10の内側上に位置される。シーラント層24はタイヤ10のトレツド12の背部に原理的にはあるように配置されており、その結果シーラント層は原理的にはタイヤのトレツド部分に起こるパンクをシールするのに役立つ。第2図は第1図に示したタイヤに類似する部分を乗物タイヤ10が有している本発明の別の態様を示すものであり同様の数値で固定されている。
しかしながら、この特別の態様に於いてシーラント層24はタイヤ10のカーカス部分14と空気不透過性バリヤー層18の間に位置されている。第1図に示した乗物タイヤの態様はタイヤ10が形成され硬化された後にシーラント層24が適用される時に通常起こる。」(第14ページ左上欄第8行-右上欄第12行)
ク「以下の実施例に用いたシーラント組成物は表1に示した成分を表に示した比率で組合せることによりつくつた。尚、比率は乾燥重量で示す。」(第14ページ左下欄第9-11行)
ケ「
」(第15ページ上欄)
コ「註1.エクソン・オイル・カムパニイから商品名“ブチル165”で入手しうる350,000の粘度平均分子量及び1.2(モル%)の不飽和度(イソプレン単位/100モノマー単位)を有するブチルゴム。
2. エクソン・オイル・カムパニイから商品名“ブチル365”で入手しうる350,000の粘度平均分子量及び不飽和度2.0(モル%)を有するブチルゴム。
3. エクソン・オイル・カムパニイから商品名“ブチル065”で入手しうる粘度平均分子量350,000及び不飽和度0.8(モル%)を有するブチルゴム。
4. エクソン・オイル・カムパニイから商品名“ビスタネツクスLM-MS”で入手しうる粘度平均分子量55,000を有するポリイソブチレン。
5. アモコ社から商品名“H-100”で入手しうる平均分子量920を有するポリブテン。
6. アモコ社から商品名“H-300”で入手しうる平均分子量1290を有するポリブテン。
7. アモコ社から商品名“H-1900”で入手しうる平均分子量2300を有するポリブテン。
8. ハーキユルズincから商品名“ピツコタクB”で入手しうる軟化点97℃を有する炭化水素樹脂。
9. シテイズ・サービス・カムパニイら商品名“ラベン-2000”で入手しうる表面積235m2/gm、算術平均粒径17ミリミクロン及びpH6.0~9.0を有するフアーネスブラツク。
10. 構造A-(B-A)1~5を有し、たゞしAはポリスチレンブロツクを表わしBは水素化ポリイソプレンブロツクを表わし、イソプレンが重量でコポリマーの約2/3を構成し、平均分子量が70,000~150,000であるブロツクコポリマー。この化合物はシエル・オイル・カムパニイから商品名“ラクトンG-6500”で入手しうる。
11. ブチルゴム100部当りの部で示す。
12. シエネクタデイ・ケミカルズ・incから商品名“CJR-328”で入手しうる数平均分子量500及び臭素含有量28~31%を有するジブロメチルオクチルフエノール」(第15ページ左下欄第1行-第16ページ左上欄第4行)
サ「実施例1
タイヤシーラントを上記組成Aの配合に従つて製造した。ブチルゴム、ビスタネツクス及びピツコタクを混合物が約50重量%の固型分を含有するようにヘキサン中にブレンドした。ついでカーボンブラツク及びポリブテンを予め溶解した混合物に添加した。ついでp-キノンジオキシムをシクロヘキサノン中にブレンドして約40重量%の固型分の稀釈液を得、これを上記混合物に添加し、その中に分散させて約73重量%の固型分からなる第一成分を形成した。この成分は6ヶ月以上の貯蔵寿命を有することが判つた。
実験室分析用に、トルエン中にベンゾイルパーオキサイドを溶解して約3%の固型分の稀釈液とすることにより第2成分を生成した。ついで第一成分及び第二成分を組合せ、型に注ぎ、ついで大気温度で24時間硬化し、続いて150°Fで24時間、190°Fで4時間硬化した。ついでシーラントの験体を引張強度、伸び及び膨潤比の測定試験をした。このシーラントの引張強度は35~45psi、伸びは967~998%、膨潤比は17.9~18.5にあることが判つた。
New JR-78-15のスケールベルト型ラジアルタイヤをタイヤのシーラント組成物評価に用いた。まずタイヤをワイヤブラシ及び石けん液によりその内部表面をスクラビングすることにより清浄にした。ついでその表面をすゝいで乾燥した。上記の第一成分をつくり、第二成分をベンゾイルパーオキサイドをメチレンクロライドに溶解し生成液が約16%固型分であるようにすることによりつくつた。ついで第一成分を260°Fに予熱し、第二成分と組合せて約66%の固型分を有する混合物を生成し、これを回転タイヤの内部表面上に約500psigでスプレーした。混合後の第一成分及び第二成分の温度は約210°F下であつた。無溶剤基準で1200gのシーラントを各タイヤ上にスプレーし、生成シーラント層はトレツドの中央部分の下で0.2~0.25インチ厚でありタイヤ肩部で0.15インチ厚であつた。スプレー後、シーラントが流れに耐えるように充分硬化するまで約10分間タイヤを連続的に回転した。ついでアプリーケーター装置からタイヤをおろし炉に140~150°Fで30分間仕込んだ。」(第16ページ左上欄第5行-左下欄第7行)
シ「実施例12
実験室分析及びタイヤ上の分析の両者用のタイヤシーラントを上記組成Gの配合を使用して実施例1のようにしてつくつた。実験室試料の引張強度、伸び及び膨潤比が夫々80psi、1197%及び17.54であることが判つた。力量計試験は3100マイルの平均総マイル数を示し、認められるシーラント流れを示さなかつた。」(第19ページ右上欄第17行-左下欄第4行)
ス「第1図
」
(2)引用発明
引用文献1(上記第4 1(1)キ)には、「第1図に示した乗物タイヤの態様はタイヤ10が形成され硬化された後にシーラント層24が適用される時に通常起こる。」、「第1図に示される本発明の態様に従つて、シーラント層24は空気バリヤー層18に対してタイヤ10の内側上に位置される。」と記載されている。そして、実施例12のタイヤは、引用文献1(上記第4 1(1)サ、シ)に記載されているように、New JR-78-15のスケールベルト型ラジアルタイヤの内部にシーラントをスプレーしシーラント層を生成するもの、つまり、タイヤが形成され硬化された後にシーラント層を形成するものである。そうすると、引用文献1の実施例12のタイヤは、第1図に示した乗物タイヤの態様と同様に、「空気バリヤー層18」を有しており、シーラント層が「空気バリヤー層18」に対してタイヤの内側上に位置されるものであるといえる。
この点を踏まえ、引用文献1の記載事項、特に実施例に関する記載事項を中心に整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「空気バリヤー層18のタイヤ内側上にシーラント層を有するタイヤであって、シーラント層は、シーラントをタイヤの内部表面上にスプレーしたものであり、シーラントが、乾燥重量の比率で、エクソン・オイル・カムパニイから商品名“ブチル065”で入手しうる粘度平均分子量350,000及び不飽和度0.8(モル%)を有するブチルゴムを40部、アモコ社から商品名“H-300”で入手しうる平均分子量1290を有するポリブテンを20部、アモコ社から商品名“H-1900”で入手しうる平均分子量2300を有するポリブテンを29部、ベンゾイルパーオキサイドをブチルゴム100部当たり3.0部、パラキノンジオキシムをブチルゴム100部当たり1.0部配合したものであるタイヤ。」
2 引用文献2
(1)引用文献2の記載事項
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引用文献2には、次の記載がある。
ア「本発明は、パンクシール性空気タイヤに関する。特に、パンクシール性を有するチユーブレス空気タイヤに関する。」(第2ページ左下欄第13-15行)
イ「本発明の一つの目的は、パンク原因物体に対してシールすることができるか、パンクに際して、ゆつくりとしたかなり調整された漏れ速度を与えることのできるパンクシール性空気タイヤを提供することにある。
本発明における空気タイヤは、タイヤの内側表面に接着性シーラント複合材料ストリツプまたはシートを有するもので、接着性シーラント複合材料としては、(A)100重量部の、未加硫シス1,4-ポリイソプレンゴム、(B)約40~200重量部、好ましくは約100~150重量部の、粘度が99℃において約50~5000センチストークス、好ましくは約100~4400センチストークスの範囲内にあるポリブテン、(C)約約40~120重量部、好ましくは約80~100重量部の軟化点が、約10℃~110℃好ましくは約90~110℃の範囲内にある、1種以上のオレフイン/ジオレフインコポリマー粘着付与性樹脂および(D)約50~130重量部、好ましくは約90~110重量部の、平均粒子径が約100~500、好ましくは約200~400米国標準篩サイズの範囲内にあるクレーからなるものを使用する。」(第2ページ右下欄第13行-第3ページ左上欄第15行)
ウ「シーラント複合材料ストリツプは、多数の個々のストリツプまたは比較的に幅のせまい個々のストリツプを、タイヤのクラウン部分の内側表面のまわりを螺線状に接着させた単一のシートの形態で施すこともできる。
好ましくは、シーラント複合材料は、タイヤの内側のあたりのクラウン部分の帯域の内側上に、目的とする幅にするのに充分な回転を行いながら押出されたストリツプとして接着することができる。
タイヤの内側表面上の接着性シーラント複合材料は、約0.1~0.3インチ(0.25~0.76cm)、好ましくは約0.12~0.2インチ(0.3~0.5cm)の範囲の厚さにするとよい。従つて望ましい厚さは、約0.12~0.25インチ(0.3~0.6cm)の範囲にすることができる。」(第3ページ左下欄第5-20行)
エ「本発明の、タイヤの内側表面に接着したシーラント複合材料は、パンクの原因の物体に対してシールするためおよびこれらの物体を除去した後に残される孔きずをシールするために特に有用であり、約-20℃~100℃という、広い温度範囲にわたつて有効である。本発明のシーラントは、流れ抵抗性であるため、またはタイヤの内側表面に施した後の物理的状態に変化がないために特にすぐれている。このため、寸法安定性の程度を高めることができる。
本発明のシーラント複合材料は、チユーブレスタイプの硬化空気ゴムタイヤの内側表面に、加熱加圧下に押出成形し、直接ストリツプまたはシートにしてタイヤ表面に施して接着させるのが好ましく、押出の剪断力から解放されると直ちに、寸法安定性と流れ抵抗性を保つたままゝで、金属製のパンク原因物体に接着するすぐれた能力を持つことを特徴とする接着性シーラント組成物を形成することができる点が独特であり、タイヤの内側表面に、スプレーコート、はけ塗りまたは注入された液体では、このような効果は達成できない。」(第3ページ右下欄第1行-第4ページ左上欄第2行)
(2)引用文献2の技術的事項
したがって、引用文献2には、以下の技術的事項が記載されていると認める。
「チューブレス空気タイヤにおいて、パンクの原因の物体に対してシールするためおよびこれらの物体を除去した後に残される孔きずをシールするために、未加硫シス1,4-ポリイソプレンゴム及びポリブテンからなるものを使用したシーラント複合材料を、チューブレスタイプの硬化空気ゴムタイヤの内側表面に、加熱加圧下に押出成形し、直接ストリップにして、タイヤのクラウン部分の内側表面のまわりに螺線状に接着させた単一のシートの形態で施す技術」(以下、「技術的事項」という。)
第5 対比
1 本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「空気バリヤー層18」は、本願発明の「インナーライナー」に相当し、以下同様に、「タイヤ内側上」は「タイヤ半径方向内側」に、「シーラント層」は「シーラント層」、「シーラント」は「シーラント材」に、それぞれ相当する。
(2)引用発明の「タイヤ内部表面上」は、本願発明の「タイヤ半径方向内側」であって、「タイヤの内周面」に相当する。
(3)引用発明の「シーラント層」は、「シーラントをタイヤの内部表面上にスプレーしたもの」であるから、本願発明のように「シーラント層が、タイヤの内周面に沿って配置されたシーラント材によって構成されて」いるものである。
(4)引用発明の「タイヤ」は、「シーラント」を備えるものであって、「シーラント」は、パンクを防止するためのものである(上記第4 1(1))ア)ことから、空気入りであることは明らかである。したがって、引用発明の「タイヤ」は、本願発明の「空気入りタイヤ」に相当する。
(5)引用発明の「エクソン・オイル・カムパニイから商品名“ブチル065”で入手しうる粘度平均分子量350,000及び不飽和度0.8(モル%)を有するブチルゴム」は、本願発明の「ブチル系ゴムを含むゴム成分」に相当する。
(6)平均分子量1290、2300程度のポリブテンが液状ポリマーであることは、本願の優先日前の技術常識である。したがって、引用発明の「アモコ社から商品名“H-300”で入手しうる平均分子量1290を有するポリブテン」及び「アモコ社から商品名“H-1900”で入手しうる平均分子量2300を有するポリブテン」は、本願発明の「液状ポリマー」に相当する。
(7)引用発明の「ベンゾイルパーオキサイド」は、有機過酸化物であるから、本願発明の「有機過酸化物」に相当する。
(8)引用文献1(上記第4 1(1)オ)には、キノイド硬化は、芳香族ニトロソ化合物のニトロソ基による橋かけに依存し、キノイド硬化系中、p-キノンジオキシムが硬化剤として好ましい旨が記載されており、前記橋かけは架橋と同じ意味である。そうすると、引用発明の「パラキノンジオキシム」は、架橋のために用いられているから、本願発明の「架橋助剤」に相当する。
(9)引用文献1(上記第4 1(1)ク)には、表1のシーラント組成物の比率は乾燥重量である旨が記載されており、表1の組成Gの「ブチル065」は「40部」、「H-300」は「20部」、「H-1900」は「29」である。ここで、「ブチル065」を100部とした場合には、「H-300」は50部、「H-1900」は72.5部と算出できる。そして、地球上において、重量は質量にほぼ等しいと考えて差し支えないものであるから、「ブチル065」100質量部に対して、「H-300」は50質量部、「H-1900」は72.5質量部であるといえる。そうすると、引用発明において、「ブチル065」100質量部に対して、「H-300」と「H-1900」との和は125.5質量部であり、「ブチル065」100質量部に対して、「H-300」と「H-1900」との和は、本願発明のように、「100~400質量部」の範囲内である。
(10)引用文献1(上記第4 1(1)コ)には、表1の「ベンゾイルパーオキサイド」、「パラキノンジオキシム」は、ブチルゴム100部当りの部で示す旨の記載があることから、表1には、組成Gにおいて「ベンゾイルパーオキサイド」、「パラキノンジオキシム」は、「ブチル065」100質量部(質量部については上記(9)にて述べたとおり。)に対して、それぞれ、「3.0」質量部、「1.0」質量部存在していることが記載されている。そうすると、引用発明の「ベンゾイルパーオキサイド」、「パラキノンジオキシム」は、「ブチル065」100質量部に対して、それぞれ、本願発明のように、「1~40質量部」の範囲内である。
2 してみると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。
(1)一致点
「インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有する空気入りタイヤであって、前記シーラント層が、タイヤの内周面に沿って配置されたシーラント材によって構成されており、前記シーラント材が、ブチル系ゴムを含むゴム成分100質量部に対して、液状ポリマーを100~400質量部、有機過酸化物を1~40質量部、架橋助剤を1~40質量部配合したものである空気入りタイヤ。」
(2)相違点
シーラント層について、本願発明は、「連続的にらせん状に配置された幅1.5~5.0mm、厚さ2.5~5.0mmの略紐状形状のシーラント材」であるのに対し、引用発明は、「シーラントをタイヤ上にスプレーした」ものである点(以下、「相違点」という。)。
第6 判断
1 相違点について
引用発明と、引用文献2に記載された上記技術的事項とは、タイヤ内側にタイヤパンクシーラントを設けたタイヤである点で、技術分野が共通している。
そして、引用文献1には、シーラントが、流動に対して抵抗性でなければならない旨の事項が記載(上記第4 1(1)イ、ウ)されており、引用文献2には、シーラント複合材料を、タイヤの内側表面にスプレーコートすることでは流れ抵抗性を保たせることができず、タイヤの内側表面に直接ストリップとして接着させることで、流れ抵抗性を保たせる旨の事項が記載(上記第4 2(1)ウ、エ)されている。そうすると、引用発明と引用文献2に記載された上記技術的事項とは、シーラントを流動させないようにするという課題も共通している。
また、引用文献1には、シーラント組成物を基材上へ押し出しすることができる旨(上記第4 1(1)カ)が記載されており、引用文献2に記載された上記技術的事項も、シーラント複合材料を、チューブレスタイプの硬化空気ゴムタイヤの内側表面に、加熱加圧下に押出成形するものである。
したがって、引用発明に、引用文献2に記載された上記技術的事項を適用し、引用発明のシーラントを、タイヤの内部表面上にスプレーすることにかえて、引用文献2に記載された上記技術的事項のように、加熱加圧下に押出成形し、ストリップ、すなわち略紐状形状にして、タイヤのクラウン部分の内側表面のまわりに螺線状に接着させるものとすることは、当業者にとって格別困難なことではない。そして、引用発明のシーラントを、略紐状形状とした際に、当該略紐状形状の幅及び厚さを、シール性、生産性、重量等に応じて、適宜好適化して設定することは、当業者が通常なし得ることに過ぎず、本願発明のように、幅1.5~5.0mm、厚さ2.5~5.0mmとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、そもそも、タイヤの技術分野において、パンク防止のためのシーラントを、略紐状形状としてタイヤのクラウン部分の内側表面のまわりを螺線状に接着させる技術は、例えば、引用文献2等にみられるように、本願の優先日前の周知技術であるといえるから、上記周知技術に接した当業者であれば、引用発明のシーラントを、略紐状形状としてタイヤのクラウン部分の内側表面のまわりに螺線状に接着させることは、当業者にとって格別困難なことではなく、その際に、当該略紐状形状の幅を1.5~5.0mm、厚さを2.5~5.0mmとすることは、適宜設定し得ることに過ぎない。
2 効果について
本願発明についての効果は、引用発明及び引用文献2に記載された上記技術的事項からみて、予測し得る範囲内のものであって、格別顕著なものともいえない。
3 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において「引用文献2は、ゴム成分としてブチル系ゴムではなくポリイソプレンゴムを用いたシーラント材を開示するもので、所定厚さにすることで、シール性等を改良することを開示しているだけです。そして、ブチル系ゴム、ポリイソプレンゴムは構成単位が異なるポリマーで物性等も当然異なるものですので、ポリイソプレンゴムを用いるシーラント材が記載されている引用文献2の所定厚さやらせん形状の記載を、ブチル系ゴムを用いる引用文献1のシーラント材に適用することが容易とは到底言えません。」と主張している。
しかしながら、引用文献2には、ポリイソプレンゴムでなければ、紐状形状とすることができないことについて、記載又は示唆されているとは認められず、引用発明に引用文献2に記載された上記技術的事項を適用することを阻害する要因は存在していないといえる。
したがって、請求人の前記主張は、採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-015175