特許拒絶査定不服審判
2019-008706
体温調節パッドを備える衣服
- 審判番号
- 2019-008706
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-561782外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年06月28日
- 審決日
- 2020年01月21日
- 公報発行日
- 2020年03月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】アイ・ティ・イー株式会社
- 【請求人代理人】関口 正夫
- 【請求人】モリト株式会社
- 【請求人代理人】関口 正夫
- 分類
- P18 .121-WY (A41D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017-561782「体温調節パッドを備える衣服」拒絶査定不服審判事件〔平成31年3月7日国際公開、WO2019/043837、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は平成29年8月30日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成30年7月31日付け 拒絶理由通知
平成30年10月3日 意見書および手続補正書の提出
平成31年3月29日付け 拒絶査定
令和元年6月28日 本件審判請求書の提出、および、同時に手続補正書(当該手続補正書に係る補正を、以下「審判請求時の補正」という。)の提出
第2 原査定の概要
原査定(平成31年3月29日付け拒絶査定)は、この出願については、平成30年7月31日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきであるというものであり、その概要は次のとおりである。
1. 本願請求項1~5に係る発明は、以下の引用文献1および2に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることが出来ない。
<引 用 文 献 等 一 覧>
1.登録実用新案第3182383号公報
2.登録実用新案第3205642号公報
第3 審判請求時の補正について
1. 補正の内容
審判請求時の補正は、上記令和元年6月28日にした手続補正書により補正(以下「本件補正」という。)された特許請求の範囲を補正するもので、次の補正事項からなるものである。
(1)補正事項1
本件補正前の請求項1に記載された「衣服本体」を、「着用時に人体の背中に当接する後身頃、前記後身頃の下方における左右方向の両端側から外側へ延出する側面部、及び前記後身頃の上部で左右方向の両端側から前記側面部の上縁に接続され、長さ調節機構を有する肩紐部を有する衣服本体」と、減縮する。
(2)補正事項2
本件補正前の請求項1に記載された「前記衣服本体における少なくとも人体の脇の下に対応する側面部」とあるのを、「前記側面部は、前記長さ調節機構により前記肩紐部の長さを調節することで、前記上縁が前記人体の脇の下に対応するように位置調節可能であり、」と、「側面部」が「前記衣服本体における少なくとも人体の脇の下に対応する」態様を、「前記長さ調節機構により前記肩紐部の長さを調節することで、前記上縁が前記人体の脇の下に対応する」と、減縮する。
上記補正事項1及び2はいずれも特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、かつ、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そして、以下に示すように、補正後の本願特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明(以下「本願発明1」等という。)は、いわゆる独立特許要件を満たすものである。
そうすると、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
第4 本願発明
本願発明1~5は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
冷却材又は蓄熱材を有する体温調節パッドを備える衣服であって、
着用時に人体の背中に当接する後身頃、前記後身頃の下方における左右方向の両端側から外側へ延出する側面部、及び前記後身頃の上部で左右方向の両端側から前記側面部の上縁に接続され、長さ調節機構を有する肩紐部を有する衣服本体と、
前記体温調節パッドを収容するとともに前記衣服本体に着脱可能な体温調節パッド収容部と、を有し、
前記側面部は、前記長さ調節機構により前記肩紐部の長さを調節することで、前記上縁が前記人体の脇の下に対応するように位置調節可能であり、
前記衣服本体の内面には、前記体温調節パッド収容部が係合可能な係合部が設けられ、
該係合部は、前記側面部に、前記体温調節パッド収容部と係合する第1係合部を有し、
前記第1係合部は、前記体温調節パッド収容部の外形に対応した形状を有し、
前記体温調節パッド収容部は、前記第1係合部に係合可能な第1収容部を有し、
前記第1収容部は、係合した状態で前記脇の下に沿って湾曲する第1側縁と、前記第1側縁から前記側面部の下縁側に向かって前記第1側縁よりも長く延びるように湾曲する第2側縁と、前記第1側縁及び前記第2側縁の端部と接続する第3側縁と、を有する、衣服。
【請求項2】
前記係合部は、前記衣服本体の内面における後身頃の上部に配置される第2係合部を有する、請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
前記体温調節パッド収容部は、前記第2係合部に係合可能な第2収容部を備え、
該第2収容部は、前記体温調節パッドを前記衣服本体における左右方向の一方及び他方に配置する一対の収容室と、該一対の収容室の間で上下方向に延びるパッド不配置領域と、を有する、請求項2に記載の衣服。
【請求項4】
前記係合部は、前記体温調節パッド収容部を取り付けるための位置を案内する位置表示部を有し、
前記衣服本体は、着用者の体型に応じて寸法が変更される、請求項1~3いずれか1項に記載の衣服。
【請求項5】
前記体温調節パッドは、前記第1収容部の外形に対応した形状を有する、請求項1~4いずれか1項に記載の衣服。」
第5 引用文献、引用発明等
1. 引用文献1について
本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1には、図面とともに、次の記載がある。
ア. 「【技術分野】
【0001】
本考案は、保冷体を収納可能な袋状部を内側に設けた保冷ベストに関する。」
イ. 「【考案が解決しようとする課題】
【0004】
・・・特許文献1~3に記載の冷却服は、多様な体格の作業者が着用できるようにするために別途に特殊な締結具が必要であり、コストアップになっていた。
【0005】
本考案は、前記課題に鑑みてなされたもので、様々な体型の作業者にとって着脱が容易且つ一定以上の冷却効果を得られるフリーサイズのシンプル且つ低コストな保冷ベストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本考案の態様の1つは、メッシュ素材で作製されたベスト本体と、前記ベスト本体の内面側の左脇腹部に対して第1面ファスナーにて着脱自在に止着された第1袋状部と、前記ベスト本体の内面側の右脇腹部に対して第2面ファスナーにて着脱自在に止着された第2袋状部と、前記ベスト本体の背中内面側の襟刳り近傍に固定された第3袋状部と、一方の前身頃の裾部の外面側に沿って固定された第3面ファスナーと、他方の前身頃裾をウェストラインに沿って伸ばした帯状部の内面側に固定されて前記第3面ファスナーと雌雄係合する第4面ファスナーと、を備え、前記第1袋状部、第2袋状部及び第3袋状部に保冷剤が収容されることを特徴とする保冷ベストである。
【考案の効果】
【0007】
本考案によれば、作業者にとって着脱が容易であり、また、様々な体型の作業者が装着して一定以上の冷却効果を得られるフリーサイズの保冷ベストを実現することが出来る。」
ウ.「【0010】
(1)本実施形態の構成:
本実施形態に係る保冷ベストは、メッシュ素材で作製されたベスト本体の内面側の所定の3箇所にそれぞれ袋状部を有する。更に、左右前身頃の裾付近をそれぞれウェストラインに沿って他方の脇腹方向(右前身頃については左脇腹方向、左前身頃については右脇腹方向)に向かって伸ばした帯状部を有している。
【0011】
袋状部の1つは、ベスト本体内面側の背中側の襟刳り近傍に固定されている。その他の2つの袋状部は、着用者の左脇腹部と右脇腹部に当接するベスト本体内面側に設けられており、それぞれ面ファスナーでベスト本体に対して着脱自在に止着されている。
【0012】
これら2つの袋状部をベスト本体に対して止着するための面ファスナーは、ウェストライン方向に沿った長さが一定長以上であり、袋状部の止着位置を、着用者の脇腹近辺でウェストライン方向に沿って前後に変更可能になっている。
【0013】
このように構成された保冷ベストは、シンプル且つ低コストで、様々な体型の作業者にとって着脱が容易なフリーサイズを実現する。また、従来品に比べて著しく長い冷感持続時間を実現することができる。
【0014】
以下、本実施形態に係る保冷ベストについて具体的に説明する。
図1は、本実施形態に係る保冷ベスト100の斜視図である。なお、同図及び以下で説明する各図にあらわれる網目模様部分は、略円形の通孔が無数に形成されたメッシュ生地を示す。
【0015】
保冷ベスト100は、ベスト本体10、第1袋状部としての左袋状部70、及び、第2袋状部としての右袋状部80を備えている。ベスト本体10は、通気性を有するメッシュ生地で作製されており、後身頃部20、左前身頃部30及び右前身頃部40を備えている。
【0016】
ベスト本体10の後身頃部20の内面側には、その襟刳り近傍に、第3袋状部としての上袋状部21が縫着によりベスト本体10に一体形成されている。この上袋状部21には、後述する保冷体200又はカイロ300が収容される(図1には保冷体200を例示)。
【0017】
ベスト本体10の左脇腹部の内面側には、左袋状部70が、面ファスナー50と面ファスナー71の雌雄係合により着脱自在に止着されている。面ファスナー71は、左袋状部70に縫着によって固定されており、面ファスナー50は、ベスト本体10の左脇腹部の内面側に縫着によって固定されている。
【0018】
同様に、ベスト本体10の右脇腹部の内面側には、右袋状部80が、面ファスナー60と面ファスナー81の雌雄係合により着脱自在に止着されている。面ファスナー81は、右袋状部80に縫着によって固定されており、面ファスナー60は、ベスト本体10の左脇腹部の内面側に縫着によって固定されている。
【0019】
これら左袋状部70と右袋状部80にも、後述する保冷体200又はカイロ300が収納される(図1には保冷体200を例示)。
【0020】
また、ベスト本体10の左前身頃部30及び右前身頃部40は、保冷ベスト100を着用したときに、その裾部31及び裾部41が、着用者のウェストライン付近にくる長さである。
【0021】
裾部31には、着用時に着用者の右腰に向けてウェストラインに沿って延びる腰帯状部32が形成されており、裾部41には、着用時に着用者の左腰に向けてウェストラインに沿って延びる腰帯状部42が形成されている。すなわち、左右の前身頃部の裾には、左右反対の腰に向けてウェストラインに沿って延びる腰帯状部がそれぞれ形成されている。
【0022】
腰帯状部32,42の長さは、例えば、標準的な体格の者が、保冷ベスト100の裾がウェストラインに略密着するように着用したときに、ウェストライン方向の先端が、左右反対の脇腹に到達する程度とする。腰帯状部32,42の幅(上下長さ)は、例えば、脇腹の最も下の肋骨から腰骨までの幅に略一致する程度の広さとする。
【0023】
腰帯状部32と腰帯状部42は面ファスナー33,43の雌雄係合により互いに止着可能になっている。第4面ファスナーとしての面ファスナー33は、腰帯状部32の内面側に縫着によって固定されており、第3面ファスナーとしての面ファスナー43は、腰帯状部42の外面側に縫着によって固定されている。これらの面ファスナーを雌雄係合することにより、保冷ベスト100の裾が着用者の腰周りに沿って密着固定される。
【0024】
以上のように、面ファスナー33,43を設けた腰帯状部32,42を形成することにより、様々な体格の着用者が保冷ベスト100を安定的に装着できるようになる。」
エ. 「【0027】
各袋状部は、その内寸が、保冷体200の外寸と略一致する形状であり、図1では、略矩形の保冷体200に合わせて略矩形としてある。また、各袋状部は、可撓性を有するメッシュ生地で作製されている。これにより、各袋状部は、その内部に収容した保冷体200やカイロ300を安定して保持することができる。
【0028】
各袋状部には、保冷体200やカイロ300を出し入れするための開口が設けてあり、この開口には、内部に収容した保冷体200やカイロ300の脱落や飛び出しを防止するためのフラップが設けてある。これにより、保冷体200やカイロ300の出し入れが容易になり、また、保冷体200とカイロ300とを容易に入れ替えて、保冷ベスト100を保温ベストに転用できる。
【0029】
より具体的には、上袋状部21には、その上端辺に沿って開口が設けてあり、この開口を覆うようにフラップ22が設けてある。
【0030】
フラップ22は、雌雄の面ファスナー23a,23bにより、上袋状部21の開口を閉塞した状態で固定される。面ファスナー23aは、フラップ22の上袋状部21の本体に当接する面に縫着によって固定されており、面ファスナー23aと雌雄係合する面ファスナー23bは、上袋状部21の本体のフラップ22に当接する面に縫着によって固定されている。
【0031】
また、図2に示すように、左袋状部70には、その一辺に沿って開口が設けてあり、この開口にはフラップ72が設けてある。また、右袋状部80には、その一辺に沿って開口が設けてあり、この開口にはフラップ82が設けてある。図2は、左袋状部70と右袋状部80を拡大して示した斜視図である。
【0032】
左袋状部70の本体においてフラップ72に当接する面には、面ファスナー73aが縫着によって固定されており、フラップ72において左袋状部70の本体が当接する面には、面ファスナー73aと雌雄係合する面ファスナー73bが縫着によって固定されている。
【0033】
また、フラップ82の右袋状部80の本体に当接する面には、面ファスナー83aが縫着によって固定されており、右袋状部80の本体のフラップ82に当接する面には、面ファスナー83aと雌雄係合する面ファスナー83bが縫着によって固定されている。
【0034】
これにより、フラップ72は、雌雄の面ファスナー73a,73bによって左袋状部70の開口を閉塞した状態で止着可能となり、フラップ82は、雌雄の面ファスナー83a,83bによって右袋状部80の開口を閉塞した状態で止着可能となる。
【0035】
保冷ベスト100の各部の素材は、例えば、ベスト本体10、衣服の端になる衿回、裾及び袖口を玉縁処理するパイピング、並びに各袋状部の素材は、ポリエステル100%とし、各面ファスナーの素材は、ナイロン100%とする。
【0036】
左袋状部70と右袋状部80は、図3に示すように、その取り付け角度を自在に変更可能である。なお、左右の袋状部の止着位置は正中線を線対称の軸とした略対称であるため、図3には左袋状部70を例に取り示してある。図3(a)は、左袋状部70の開口を前方に向けてベスト本体10に取り付けた状態であり、図3(b)は、左袋状部70の開口を上方に向けてベスト本体10に取り付けた状態を示す。
【0037】
このように、左右の袋状部の取り付け角度が自在であるため、使用者は、保冷体200の出し入れ等の便宜に応じて、適宜に開口の方向を選択して左右の袋状部を止着することができる。
【0038】
次に、保冷体200について説明する。保冷体200は、上袋状部21、左袋状部70及び右袋状部80に収納可能な大きさであり、保冷体200が蓄冷時に柔軟性をほとんど有さない場合は、例えばこれら袋状部よりも一回り小さいサイズとする。
【0039】
また、本実施形態に係る保冷体200は、ポリエステル等で形成された袋内に、保冷剤(蓄冷剤)を充填して密封した公知の各種の保冷体を用いることができる。保冷剤の材料は、冷凍庫等で冷却することによって蓄冷可能な素材であれば様々なものが使用可能である。」
オ. 「【0058】
図9は、保冷ベストの使用状態を説明する図である。同図には保冷ベスト100の正面図の腰帯状部32,42の部分を拡大して示しており、図9(a)は標準的な体型の者(以下、標準体型者と記載する。)が保冷ベスト100装着した状態を示し、図9(b)は標準よりもウェストが太い者(以下、太身体型者と記載する。)が同じ保冷ベスト100を装着した状態を示している。
【0059】
図9(a)に示すように、標準体型者が装着すると、面ファスナー33の略全体が正中線寄りの位置で面ファスナー43に当接して止着され、腰帯状部32のウェスト方向の先端が正中線と右脇腹の間で右脇腹寄りに位置する。
【0060】
一方、図9(b)に示すように、太身体型者が装着すると、面ファスナー33の一部のみが面ファスナー43に当接して止着され、腰帯状部32のウェスト方向の先端が、右脇腹と正中線の間で正中線よりに位置する。」
カ. 「【0062】
このように、面ファスナー33を幅広に形成することにより、ウェストサイズの大小に関わらずどのような体型の者でも着用可能なフリーサイズの保冷ベスト100が実現されていることが分かる。
【0063】
図10は、左右の袋状部の止着位置を説明する左側面図である。図10(a)は、図9(a)に示すように腰帯状部を止着した状態に対応し、図10(b)は、図9(b)に示すように腰帯状部を止着した状態に対応する。なお、左右の袋状部の止着位置は正中線を線対称の軸とした略対称であるため、図10には左袋状部70を例に取り示してある。
【0064】
面ファスナー50と面ファスナー71は、図10(a)の場合、面ファスナー71の略全体が面ファスナー50に対して雌雄係合した状態で止着されており、図10(b)の場合、面ファスナー71の前方側半分が面ファスナー50に対して雌雄係合した状態で止着されている。
【0065】
面ファスナー50は、ウェストライン方向において、左袋状部70と略同一サイズ又は左袋状部70よりも幅広に形成されている。これにより、左右の袋状部の止着位置は、保冷ベスト100の着用者の便宜に応じて左右に自在に変更可能になる。」
キ. 「【図1】~【図3】
」
ク. 「【図9】、【図10】
」
以上を総合すると、引用文献1には、次の引用発明が記載されている。
「保冷剤210を有する保冷体200を備える保冷ベストであって、
着用時に人体の背中に当接する後身頃部20、前記後身頃部20の下方における左右方向の両端側から外側へ延出する側面部、及び前記後身頃部20の上部で左右方向の両端側から前記側面部の上縁に接続された左前身頃30及び右前身頃40を有する保冷ベスト本体10と、
前記保冷体200を収容すると共に前記保冷ベストに着脱可能な左袋状部70及び右袋状部80と、を有し、
前記側面部は、前記上縁が前記人体の脇の下に対応し、
前記保冷ベスト本体10の内面には、前記左袋状部70及び右袋状部80とがそれぞれ係合可能な面ファスナー50及び面ファスナー60が設けられ、該面ファスナー50及び面ファスナー60は、前記側面部に、前記左袋状部70及び右袋状部80とそれぞれ係合する面ファスナー50及び面ファスナー60を有し、
前記面ファスナー50及び面ファスナー60は、前記左袋状部70及び前記右袋状部80の外形に対応した形状を有し、
左袋状部70予備右袋状部80は、前記面ファスナー50及び面ファスナー60にそれぞれ係合可能な前記左袋状部70及び前記右袋状部80を有する、保冷ベスト。」
2. 引用文献2について
本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2には、次の記載がある。
ア. 「【技術分野】
【0001】
本考案は、冷蔵庫などで冷やした保冷材を用いて体温を下げる体温冷却衣に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従前は、高熱を出すと額や後頭部に冷タオルや冷却材を当てて体温を下げるようにされていた。しかしながら、幼児は高熱があっても安静に寝させていることが難しく、冷タオルや冷却材を当てても手で払い除けてしまうことが多い。それでも、脱水症状や熱性けいれんのおそれがある場合は、迅速に解熱しなければならない。」
イ. 「【考案が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記した従来の体温冷却衣では、後身頃、腕用部および脚用部の各収容ポケットの大きさがそれぞれ異なっており、それぞれの収容ポケットには異なる大きさの保冷材が使用される。そのために、大きさの異なる収容ポケットに合致したサイズの保冷材を個別に用意しておかなければならなかったのである。また、いずれかの保冷材が破損や紛失などにより足りなくなったりしたときは、体の冷却が局部的に偏ったり不充分になるという懸念があった。特に、後身頃の保冷材は高価で大サイズであるため、他の部位の保冷材として使用できないという問題もあった。
【0007】
本考案は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、保冷材を安価かつ充分に用意でき、身体の冷却も十分に行なうことのできる体温冷却衣の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本考案に係る体温冷却衣は、後身頃を有する衣本体と、衣本体の上部に形成された左右の腕用部と、衣本体の下部に設けられた左右の脚用部とを備えて成り、後身頃、左右の腕用部および左右の脚用部に、保冷材を出し入れ可能に収容する収容ポケットがそれぞれ設けられ、左右の腕用部の収容ポケットは着用時に着用者の腋窩部と対面する位置に配置され、左右の脚用部の収容ポケットは着用時に着用者の鼠蹊部と対面する位置に配置されている体温冷却衣であって、後身頃、腕用部および脚用部のそれぞれの収容ポケットが、共通の保冷材を収容する大きさに形成されていることを特徴とする構成にしてある。」
ウ. 「【0020】
後身頃5上端の左右の肩部5A,5Aには、面ファスナの鉤体またはループ体である係合片11がそれぞれ縫着されている。一方、前身頃7上端の左右の肩部7A,7Aには、面ファスナのループ体または鉤体である係合片12がそれぞれ縫着されている。これらの係合片11と係合片12とが係合部材13を構成しており、これらが係脱自在に係合することによって、肩部5A,7Aが連結されてリング状の腕用部3となり、着用者Mの腕を通せるようになっている。左側の前身頃7の背面辺部には、面ファスナの鉤体またはループ体である係合片14,14が縫着されており、右側の前身頃7の正面辺部には、面ファスナのループ体または鉤体である係合片15,15が縫着されている。これらの係合片14と係合片15とが係合部材16を構成しており、これらが係脱自在に係合することによって、重ね合わせた前身頃7,7が前留めされる。各腕用部3の下部外面すなわち各マチ布6の上部外面に配置されたポケット用布20は上辺が開口した袋状に縫着され、ポケット用布20内は保冷材Fを出し入れ可能に収容する収容ポケット9となっている。ポケット用布20の上辺とマチ布6との間は、保冷材Fを出し入れするための出し入れ口21となっている。これら左右の腕用部3,3の収容ポケット9,9は、着用時に着用者Mの腋窩部と対面する位置に配置される。」
エ. 「【図3】
」
第6 対比・判断
1. 本願発明1について
(1) 本願発明1と引用発明との対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「保冷剤210」、「保冷体200」及び「保冷ベスト」は、それぞれ、本願発明1の「冷却材」、「体温調節パッド」及び「衣服」に相当する。
引用発明の「後身頃部20」、「側面部」、「保冷ベスト本体10」は、それぞれ本願発明1の「後身頃」、「側面部」、「衣服本体」に相当する。
引用発明の「左前身頃30及び右前身頃40」と、本願発明1の「肩紐部」は、本願発明1の用語で記載すると、両者とも、後身頃の上部で左右方向の両端側から前記側面部の上縁に接続された部材である限りで一致する。
引用発明の「左袋状部70及び右袋状部80」、「面ファスナー50及び面ファスナー60」は、それぞれ本願発明1の「第1収容部」、「第1係合部」に相当する。
そうすると、本願発明1と引用発明は、次の一致点、相違点があるといえる。<一致点>
「冷却材を有する体温調節パッドを備える衣服であって、
着用時に人体の背中に当接する後身頃、前記後身頃の下方における左右方向の両端側から外側へ延出する側面部、及び前記後身頃の上部で左右方向の両端側から前記側面部の上縁に接続された部材を有する衣服本体と、
前記体温調節パッドを収容するとともに前記衣服本体に着脱可能な体温調節パッド収容部と、を有し、
前記側面部は、前記上縁が前記人体の脇の下に対応するものであり、
前記衣服本体の内面には、前記体温調節パッド収容部が係合可能な係合部が設けられ、
該係合部は、前記側面部に、前記体温調節パッド収容部と係合する第1係合部を有し、
前記第1係合部は、前記体温調節パッド収容部の外形に対応した形状を有し、
前記体温調節パッド収容部は、前記第1係合部に係合可能な第1収容部を有する、衣服。」
<相違点1>
後身頃の上部で左右方向の両端側から側面部の上縁に接続された部材について、本願発明1は、「長さ調節機構を有する肩紐部」であるのに対し、引用発明は、「左前身頃30及び右前身頃40」である点。
<相違点2>
本願発明1の「第1収容部」は、「係合した状態で前記脇の下に沿って湾曲する第1側縁と、前記第1側縁から前記側面部の下縁側に向かって前記第1側縁よりも長く延びるように湾曲する第2側縁と、前記第1側縁及び前記第2側縁の端部と接続する第3側縁と、を有する」ものであるのに対し、引用発明の「左袋状部70及び右袋状部80」が、そのような形状であるか不明である点。
(2) 相違点についての検討
<相違点1>について、検討する。
上記第5の1.イ.及びカ.に示した引用文献1の記載から、引用発明の保冷ベストは、「様々な体型の作業者にとって着脱が容易且つ一定以上の冷却効果を得られるフリーサイズのシンプル且つ低コストな保冷ベストを提供することを目的とする」(【0005】)ものであって、「作業者にとって着脱が容易であり、また、様々な体型の作業者が装着して一定以上の冷却効果を得られるフリーサイズの保冷ベストを実現することが出来る」(【0007】)との効果を発揮するものである。そのため、引用発明のものは、「面ファスナー50は、ウェストライン方向において、左袋状部70と略同一サイズ又は左袋状部70よりも幅広に形成されている。これにより、左右の袋状部の止着位置は、保冷ベスト100の着用者の便宜に応じて左右に自在に変更可能になる」ようにしたものであり、「面ファスナー50は、上下方向においても、左袋状部70と略同一サイズ又は左袋状部70よりも幅広に形成してもよい。この場合、左右の袋状部の止着位置は、ウェストライン方向のみならず、保冷ベスト100の着用者の便宜に応じて上下や斜め方向に自在に変更可能になる」(【0065】)ものであるから、引用発明において上記<相違点1>に係る本願発明1の構成、すなわち、引用発明の「左前身頃30及び右前身頃40」との構成を、「長さ調節機構を有する肩紐部」とすることの動機付けは存在しない。むしろ、引用発明の保冷ベストを構成する「左前身頃30及び右前身頃40」に代えて、「長さ調節機構を有する肩紐部」とすることは、通常のベストと異なった形態の衣料となるから、「作業者にとって着脱が容易」との効果を減ずることとなり、この点において阻害事由が存在するといわざるをえない。
そうすると、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえず、いわゆる独立特許要件を満たすものである。
2. 本願発明2~5について
本願発明2~5は、いずれも、本願発明1の上記相違点1に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明2~5は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、いわゆる独立特許要件を満たすものである。
第7 原査定について
上記のとおり、審判請求時の補正は認められるから、本願発明1~5は、上記相違点1に係る本願発明1の構成である「前記後身頃の上部で左右方向の両端側から前記側面部の上縁に接続され、長さ調節機構を有する肩紐部」を備えたものとなっており、原査定の理由により、本願発明1~5を容易に発明できたものとすることはできない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-008706