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特許拒絶査定不服審判

2019-008364

容器、方法および制御システム

審判番号
2019-008364
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-542305
請求日
2019年06月24日
審決日
2020年09月15日
公報発行日
2021年03月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】カストロール リミテッド
  • 【請求人代理人】浜田 治雄
審判長/審判官
  • 審判長 金澤 俊郎
  • 審判官 鈴木 充
  • 審判官 谷治 和文
分類
P18 .121-WZ (F01M) / P18 .113-WZ (F01M) / P18 .537-WZ (F01M) / P18 .538-WZ (F01M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法36条6項2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-542305「容器、方法および制御システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年5月22日国際公開、WO2014/076319、平成28年1月18日国内公表、特表2016-501332〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 本願は、2013年(平成25年)11月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年11月19日(EP)欧州特許庁、2013年2月28日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成29年8月23日付け(発送日:平成29年8月30日)で拒絶理由が通知され、平成30年1月30日に意見書及び誤訳訂正書が提出され、平成30年5月24日付け(発送日:平成30年5月30日)で最後の拒絶理由が通知され、平成30年11月30日に意見書が提出されたが平成31年2月20日付け(発送日:平成31年2月22日)で拒絶査定がされ、これに対して令和元年6月24日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、令和2年2月25日付け(発送日:令和2年2月26日)で当審より拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和2年5月26日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし20に係る発明は、令和2年5月26日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 流体を保持するための貯留槽と、 前記貯留槽とエンジンの流体循環システムとの間の流体連通を提供するのに適した流体連結部と、 前記した貯留槽とエンジンの流体循環システムとの間の流体連通を可能にするために置換可能な流体容器が一度設置されると、エンジンのエンジン制御装置とのデータ通信をするデータ提供部を有するように設計されたデータ提供部であって、データを蓄積するためのメモリを有すると共に、また、前記エンジン制御装置からデータを受信するのに適し、かつ、そのメモリに蓄積している受信データとその受信データに応じて前記エンジン制御装置に提供しているデータとから選択された処置を実行するのに適したデータ提供部とを備えるエンジンの為の置き換え可能な流体容器。」 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由のうち、特許法第29条第2項(進歩性)及び特許法第36条第6項第2号(明確性)に係る拒絶理由の概要は、次のとおりである。 1.(進歩性)本願の請求項1ないし20に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 2.(明確性)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記   (引用文献等については引用文献等一覧参照) ●理由1(進歩性)について 請求項1ないし20に対して:引用文献1ないし3 <引用文献等一覧> 1.米国特許出願公開第2008/0179139号明細書 2.特開平11-286121号公報 3.特開2005-178899号公報(周知技術を示す文献) ●理由2(明確性)について 請求項1ないし20に係る発明は明確でない。 特に、請求項1の「前記エンジン制御装置からデータを受信するのに適し、かつ、そのメモリに蓄積している受信データとその受信データに応じて前記エンジン制御装置に提供しているデータとから成るリストから選択された処置を実行するのに適したデータ提供部」との記載は意味が明確でない。 第4 特許法第29条第2項(進歩性)についての判断 1 引用文献、引用発明 (1)引用文献1 当審拒絶理由において引用され、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった米国特許出願公開第2008/0179139号明細書(以下「引用文献1」という。)には、「OIL CHANGE APPARATUS」(訳:オイル交換装置)に関し図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した。以下同様。 ア 「[0007] The instant invention is directed to an oil change system operable on a continuous or batch basis for changing engine oil for an engine in operation. The system may employ a positive displacement of new oil from a chamber incorporating concatenated bladders separating new oil from used oil. The system also comprises a non-volatile memory which down loads engine data from the engine controller and data related to the date/time of the oil change, oil consumption and other oil related parameters as described. The chamber and non-volatile memory are incorporated into a removable unit that may be connected hydraulically to the engine oil lubrication system and electrically to the engine controller. To the engine data, there may be added to the non-volatile memory data regarding the condition of the used oil. Accumulated data in the non-volatile memory may be transmitted to a remote file server when the removable unit is serviced by recharge with new oil and used oil is collected for disposal. Engine data such as load factors, rpm histograms, and malfunction episodes may be transferred from the engine controller to a remote server by download the non-volatile memory device.」 (当審訳) 「本発明は、動作中のエンジンのエンジンオイルを交換するための連続的またはバッチ式で動作可能なオイル交換システムに向けられている。システムは、使用済みオイル、新しいオイルを分離するように連結されたチャンバを組み込んで、チャンバから新たなオイルを使用することができる。説明したシステムはまた、オイル交換、オイル消費および他のオイル関連パラメータの日/時間に関連するエンジン制御データ、エンジンデータをダウンロードする不揮発性メモリを含む。チャンバおよび前記不揮発性メモリは、エンジンオイル潤滑システムと液圧式に接続され、エンジン制御装置に電気的に接続される取り外し可能なユニットに組み込まれる。エンジンに使用されるオイルの状態を不揮発性メモリに付加してもよい。不揮発性メモリに蓄積されたデータは、取外し自在なユニットに新しいオイルが再充填され、かつ使用済みオイルが、処分のために収集されたときに、遠隔のファイルサーバに送信することができる。負荷、回転数ヒストグラム及び異常事象のようなエンジンデータは、不揮発性メモリデバイスにダウンロードすることによって、エンジンコントローラからリモートサーバに転送することができる。」 イ 「[0010]Internal combustion engines of the 4-cycle variety utilize a crankcase, a sump, and a pressurized system to circulate lubricating oil within the engine. During use, the utility of oil as a lubricant deteriorates due to the accumulation of combustion-generated compounds, debris, acid, and metallic particles generated from wear of engine parts. Further the lubricity of the oil is compromised by the thermally induced degradation of molecular weight and corresponding reduction of viscosity. Engine life is extended by periodic exchange of used oil for new oil.」 (当審訳) 「4サイクルの内燃機関は、クランクケース、サンプと、エンジン内の潤滑オイルを循環させるために加圧システムを利用している。使用中に、潤滑剤としてのオイルの有用性は、燃焼生成物、破片、酸、およびエンジン部品の摩耗から発生した金属粒子の蓄積のために、低下する。さらに、オイルの潤滑性は、高分子量の熱的に誘発される分解及び粘度の対応する減少によって損なわれる。エンジンの寿命は、使用済みオイルを新しいオイルに周期的に交換することによって延長される。」 ウ 「[0019] In one embodiment of a concatenated chamber, when the preprogrammed condition is met, the engine controller (not shown) initiates a batch oil change by checking that the oil level in the crankcase 15 meets a prescribed level. If crankcase oil level is at the prescribed level, the controller signals to valve 12 to divert a measured portion of the oil pressurized by the crankcase oil pump 14 through conduit 16 to used oil chamber 18 of housing 20. Alternatively, a positive displacement pump may be employed to move used oil to the used oil chamber.」 (当審訳) 「連結室の一実施形態では、予めプログラムされた条件が満たされると、エンジン制御装置(図示せず)には、クランクケース15内のオイルレベルが所定のレベルを満たしていることをチェックすることによって、バッチオイル交換を開始する。クランクケースオイルレベルが所定のレベルにある場合に、弁12への制御信号は、導管16を通してクランクケースオイルポンプ14により加圧されたオイルの一部をハウジング20の油室18に作用させる。或いは、容積移送式ポンプは、使用済みオイルを使用する油室に移動させるために使用することができる。」 エ 「[0020] The controller actively maintains a predetermined level of lubricating oil in the crankcase. Sensors for determining the oil level of an engine in operation have been described as for example in U.S. Pat. No. 4,495,909, incorporated herein by reference. The oil level may fall below a predetermined level for reasons such as leakage, or oil consumption by the engine. When the crankcase oil sensor 36 identifies that the oil level is below the prescribed level, then the controller signals a positive displacement pump 38 to transfer new oil from new oil from chamber 22 to the crankcase 15.」 (当審訳) 「コントローラは、クランクケース内の潤滑オイルの所定のレベルを維持する。動作中のエンジンのオイルレベルを測定するためのセンサは、例えば、米国特許第4,495,909号明細書に記載されている。オイルレベルは、漏れやオイル消費量のような理由から、所定の値を下回ることがある。クランクケースオイルセンサー36は、オイルレベルが所定のレベルを下回っていることを識別すると、制御装置は、容積式ポンプ38に信号を送ってチャンバ22からクランクケース15に新しいオイルを移送する。」 オ 「[0028]Upon completion of the oil change, the housing containing now used oil and the non-volatile memory may be removed from the engine. Removal may be facilitated by known quick-disconnect couplings 30, 32 that incorporate valves preventing loss of oil from the chambers upon removal of the housing and an electrical connection, preferably of a plug type, 34 to the engine controller. Optionally, a standardized housing 20 that connects to a variety of engine types and sizes may be developed.」 (当審訳) 「オイル交換が完了すると、使用済みのオイル及び非揮発性メモリを含むハウジングは、エンジンから取り外される。取り外しは、取り外しの際に室からのオイル損失を防止する弁を組み込んだ既知のクイックディスコネクトカップリング30、32、及び、電気的接続、好ましくはプラグ34、によって容易にすることができる。任意選択的に、様々なエンジンのタイプおよびサイズに接続する標準化されたハウジング20は、開発されてもよい。」 カ 「[0032]A component of the system for automated oil change is a non-volatile memory component 46. Typical of such memory capacity are devices popularly known as a “thumb drive” for connection to Universal Serial Buss (USB) ports of computers. Data storable on the memory portion of the engine controller include the date of the housing is connected to the engine, the oil type, manufacturer, and the viscosity.」 (当審訳) 「自動オイル交換のためにシステムの要素は、非揮発性メモリコンポーネント46である。このようなメモリ容量の典型的なものは、コンピュータのユニバーサルシリアルバス(USB)ポートに接続するための「サムドライブ」として広く知られている装置である。エンジンコントローラの記憶部に格納され得るデータは、ハウジングがエンジンに接続された日付、エンジンオイルのタイプ、製造者、および粘度である。」 キ 「[0033]Typical data downloadable from the engine to the non-volatile memory of the oil change system includes the data described above uploaded to the engine controller from the non-volatile memory 46 concerning new oil in the housing, at the time oil housings are exchanged, the date and/or hours of operation of the automatic oil change if a batch change, any engine error codes, engine maintenance requirements, engine performance characteristics such as exhaust gas sensor observations, engine serial number, oil pH, the rate of oil consumption by the engine, fuel consumption, engine loading, and accumulated hours. The information transferred may be an integration of measured data, or an accumulation of individual data measurements and corresponding dates or engine hours.」 (当審訳) 「エンジンからオイル交換装置の不揮発性メモリにダウンロード可能な典型的データは、不揮発性メモリ46からエンジンコントローラにアップロードされた、ハウジング内の新しいオイルに関する上述のデータ、ハウジングが交換される時期、バッチ交換の場合、自動オイル交換の作業の日付および/または時間、エラーコード、エンジン保守要件、排気ガスセンサ観測値のようなエンジンの性能特性を、機関の連続番号、pH、エンジンによって消費される油量、燃料消費量、エンジン負荷、累積時間、である。転送される情報は、測定データの積分、又は蓄積する個別のデータ測定値および対応する日付または時間であってもよい。」 上記記載事項及び図面の図示内容からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 〔引用発明〕 「オイルを保持するための油室18及びチャンバ22と、 前記油室18及びチャンバ22とエンジンのオイル潤滑システムとの間の流体連通を提供するのに適したクイックディスコネクトカップリング30,32と、 不揮発性メモリ46であって、データを蓄積するためのメモリを有すると共に、また、エンジンコントローラからデータをダウンロードし、エンジンコントローラにデータをアップロードする不揮発性メモリ46とを備えるエンジンの為の取り外し可能なハウジング20。」 (2)引用文献2 当審拒絶理由において引用され、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平11-286121号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【0008】 【課題を解決するための手段】本発明は上述の技術課題を従来とは全く異なる観点から解決することを目的とするものであり、そのために、本発明のインクタンクは、インクジェットプリントヘッドに供給するためのインクを貯蔵するとともに該インクジェットプリントヘッドに対し着脱可能なインクタンクにおいて、前記インクの貯蔵部と、前記インクジェットプリントヘッドに対するインク供給を開閉するためのインク流路開閉手段を備えるとともに、前記貯蔵部のインクを外部に送給するためのインク送給部と、前記開閉手段を制御する制御手段と、前記インク貯蔵部にインクを外部に対して加圧した状態で保持させる加圧手段と、を具えたことを特徴とする。」 イ 「【0024】インク流路開閉器5のインク送給部6は、インク供給方向に沿って内径1mm未満の穴を有している。この穴の周りの表面を撥液性の材料10にて形成し、これによってインクが送給部に液滴として残留することを防止している。 【0025】一方、インクジェットプリントヘッド12側にあるインク受給部13は、内部に内径1.0mm以下のインク受給口14が形成された尖頭部を持つ中空円筒形状のパイプ体15である。パイプ体15の奥側部分は図4に示すように断面積が拡大しており、ここにインクの飛翔侵入による振動を緩衝するためのスパイラル体16が配置されている。」 ウ 「【0036】その後、電気配線のコネクタを用いて、インク流路開閉器制御部9を電気的に接合したのちに、インク流路開閉制御部9を筐体1にネジにて固定した。次に、電気接点部分22とインク流路開閉器制御部9とをコネクタで電気的に接合し、そののちに、電気接点部22を筐体1に熱カシメにより固定した。」 エ 「【0043】一方、インクジェットプリントヘッドの筐体1′もポリプロピレンの射出成形にて製作した。この筐体1′には、加圧インクタンクの筐体1と位置合せして嵌合する目的で位置決めピン23の嵌入穴24が設けられており、図2に示すような状態で正しく嵌合できるようインクジェットプリントヘッド12側の位置決めピン23および嵌入穴24が適切にその形状、寸法および配設位置が定められている。 【0044】インクジェットプリントヘッド12には、図1および図2に示したように、電気接点部分22′が配置されており、この接点を介し電気信号が伝達されてインクジェットプリントヘッドのインク吐出機構19の部分からインクが吐出され紙などのプリント媒体にプリントが行われる。電気接点22′は、インクジェットプリントヘッド12側のインク貯留部17のインクの有無を検知する検出器18の信号をも伝える接点を有しており、またプリンタ本体制御部からプリントヘッド12を介して加圧インクタンク1側のインク流路開閉器制御部9に信号を送るように電気的配線も施されている。」 オ 「【0067】一方インクタンク11において、421はDRAM等のメモリであり、上述したような所要のデータを格納する。また、431はインクタンク筐体1の上に構成した太陽電池ボードであり、これをインク流路開閉器制御部9等に対し、電力供給用の内部電池433と並列に配線した。さらに、441は無接点型の信号伝送手段であり、本例ではインク流路開閉器制御部9等各部に対する入出力信号を光信号(可視光または赤外線でもよい)の形態で外部との間で授受するためのフォトダイオードセット(送信用と受信用)である。なお、インク流路開閉器制御部9は、後述する制御動作フローの過程で授受される信号との関連において、メモリ421の記憶内容や圧力検出器7の検出状態に応じ、流路開閉器5の作動の可否を定めるロジック回路などの電気回路部とすることができる。 【0068】インクジェットプリントヘッド12側にも同様のフォトダイオードセット411があり、これらにより両者間での信号の授受が行われる。インクタンク11側へインクジェットプリントヘッド12側から特定周波数(例えば1MHz)の所定のスタートアップ信号が出され、これを受けてインクタンク11側はインクタンク存在を示す同じく1MHzの所定パターンの信号を発する構成とした。その後、インクジェットプリントヘッド12側がインクタンク11の存在を確認した旨の所定パターンの確認信を送信すると、インクタンク側11から8ビットのシリアル信号が後述する順序で送信される構成とした。」 カ 【0082】ここで、本発明のインクジェットプリントヘッドについて更なる説明を行なう。本発明の特徴の一つは、インクタンクの信号の授受が全てインクジェットプリントヘッド12を介して行われる点にある。そして、インクタンク11側にその能動の制御権を与える方式とした。このことにより、インクタンクの弁の開閉動作の誤動作を防ぎ、プリンタ本体の設計の自由度を向上させることができる。 【0083】インクタンクとの信号の授受は、本例では機械的な電気接点方式とした。電気接点部分22には、電力供給のための電極と共通アース極とを配置した。その他に、上述したメモリを有する場合には、メモリに格納されるインクジェットプリントヘッドの種類、製造ロット、製品番号、使用期限などを獲得する電極と、インクの圧力をアナログ信号で伝達する電極、インク貯留部17のインク有無の信号を受理する電極接点などからなる電気接点22を配置した。 【0084】本例においては、インクタンク11がインクジェットプリントヘッド12に装着され電気接点同士が電気的に接合されると、電力(電圧)が電力供給回路を介してインク流路開閉電気回路部9に伝達される。つぎに、この電圧を元に演算ロジック部は能動を開始し、インクジェットプリントヘッドに搭載されているメモリの内容を読む動作を行い、インクジェットプリントヘッドとの合致性を確認する。そして合致した条件のときにのみ、インク流路開閉器5を動作させる操作を行うことを了承するシステム構成とした。 【0085】(第4実施形態)本発明の第4実施形態では、上述の第3の実施形態において、電力の供給をインクジェットプリントヘッド12よりインクタンク側へ行い、内部電池433や太陽電池431などの自己電力供給能力を持たない加圧インクタンク11も試作した。この場合には1Kビットメモリの容量を持つEPROMをメモリ421として用いた。そしてこの場合は、電気接点部22の接合により、前記EPROMのメモリ部421を含むインク流路開閉制御電気回路部9に電力が供給されると演算部がロジック演算を開始し、インクジェットプリントヘッド12のフォトダイオードユニット411より送信される前述したような信号を加圧インクタンク側のフォトダイオードユニット441が受け、前述したような信号の授受を行うことで、インクの供給と受給とを行う構成とした。」 上記記載事項及び図面(特に、図1、2及び7を参照。)の図示内容からみて、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。 〔引用文献2記載事項〕 「インクタンク11は着脱可能であり、インクタンク11はメモリ421を有し、インクタンク11をプリントヘッド12に位置合わせして嵌合することにより、インクタンク11とプリントヘッド12との間のインクの連通が可能となり、インクタンク11のメモリ421とプリントヘッド12との間のデータの授受が可能となること。」 (3)引用文献3 当審拒絶理由において引用され、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2005-178899号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【0010】 容器アセンブリ110は、情報タグ200(図2参照)などのその中に含まれる材料に関する情報を記憶するための情報記憶メカニズムを含んでいる。図1に示すように、容器本体120に結合したキャップ115が配設されている。図示の実施形態では、情報タグ200は、具体的には、キャップ115に配されている。キャップ115はコネクタ118を受容して固定するように構成されている。このコネクタ118は、容器アセンブリ110を、以下にさらに説明するようなプロセスアセンブリ103および制御ユニット102に同時に結合するように構成されている。 【0011】 容器アセンブリ110は、プロセスアセンブリ103に供給される材料を収容するように構成されている。図示の実施形態において、前記コネクタ118は材料ライン125によってプロセスアセンブリ103に結合されている。同様に、前記コネクタ118は制御ユニット102に結合されている。制御ユニット102はここでさらに説明するように容器アセンブリ110を識別且つ監視するように構成されている。容器アセンブリ110と制御ユニット102の間の通信用に情報ケーブル122が設けられている。」 イ 「【0024】 図3を参照すると、740(図7参照)に示すように、容器アセンブリ110は図1のSRS100に物理的に固定される。これは、コネクタ118をキャップ115に結合することにより達成される。プローブ215は容器本体120内へ下方に延び材料と接触する。図示のように、コネクタ118は、従来の手段により流体(例えばフォトレジスト材料300)を容器本体120からプローブ215を介して材料ライン125へと抜き取るあるいはポンプで汲み上げるように容器アセンブリ110に適切に固定される。 【0025】 コネクタ118は、同時に、情報タグ200からの情報をアンテナアセンブリ275によって読み取れるように、キャップ115に固定される。コネクタ118は容器アセンブリ110からフォトレジスト材料300を抜き取るのを容易にすると同時に、情報タグ200からアンテナアセンブリ275への情報の伝達を確実にするように固定される。これによりアンテナアセンブリ275がコネクタ118と同時に連通しているまさにその容器アセンブリ110の情報タグ200以外の任意の情報源から情報を読み取る可能性が物理的に排除される。例えば、これによりユーザが1つの使用可能容器アセンブリ110およびフォトレジスト材料300の情報タグ200から情報を得て、その後塗布に際して誤って別の使用不可能容器をコネクタ118に結合することを防止する。」 ウ 「【0031】 図1~4を引き続き参照すると、図8の820に示すように、更新済み情報を情報タグ200に書き込むように、アンテナアセンブリ275を構成することができる。例えば、上記のように、情報タグ200は高周波識別(RFID)性能を含んでもよい。そのため容器アセンブリ110内の材料300の量に関する情報を情報タグ200に記憶することができる。一実施形態において、塗布中にある量の材料300を容器アセンブリ110から抜き出す際に、容器アセンブリ110内のフォトレジスト材料300の量に関する情報を更新することができる。この更新はアンテナアセンブリ275が、塗布中に抜き出されたフォトレジスト材料300の量を示す、新しい情報を情報タグ200に書き込むことにより達成される。よって、フォトレジスト材料300の量に関する最新の情報が容器アセンブリ110とともに残る。こうして容器アセンブリ110内のフォトレジスト材料300の量に関する情報を失うことなく容器アセンブリ110をSRS100から取り外すまたは他のシステムとともに使用することができる。」 上記記載事項及び図面(特に、図1ないし3を参照。)の図示内容からみて、引用文献3には次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。 〔引用文献3記載事項〕 「容器アセンブリ110は取り外し可能であり、その中に含まれる材料に関する情報を記憶するための情報タグ200を含んでおり、コネクタ118は、容器アセンブリ110を、プロセスアセンブリ103および制御ユニット102に同時に結合するように構成されており、前記コネクタ118により、容器アセンブリ110とプロセスアセンブリ103との間の流体連通が可能となり、容器アセンブリ110の情報タグ200と制御ユニット102との間の情報の授受が可能となること。」 2 対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「オイル」は、その機能、構成及び技術的意義からみて本願発明における「流体」に相当し、以下同様に、「油室18及びチャンバ22」は「貯留槽」に、「オイル潤滑システム」は「流体循環システム」に、「クイックディスコネクトカップリング30,32」は「流体連結部」に、「不揮発性メモリ46」は「データ提供部」に、「エンジンコントローラ」は「エンジン制御装置」に、「取り外し可能な」は「置き換え可能な」に、それぞれ相当する。 また、引用発明における「エンジンコントローラからデータをダウンロードし、エンジンコントローラにデータをアップロードする不揮発性メモリ46」に関して、「エンジンコントローラからデータをダウンロード」することは「エンジン制御装置からデータを受信」することであり、「エンジンコントローラにデータをアップロード」することは「エンジン制御装置にデータを提供する」ことであるから、引用発明における「エンジンコントローラからデータをダウンロードし、エンジンコントローラにデータをアップロードする不揮発性メモリ46」と本願発明における「エンジン制御装置からデータを受信するのに適し、かつ、そのメモリに蓄積している受信データとその受信データに応じて前記エンジン制御装置に提供しているデータとから選択された処置を実行するのに適したデータ提供部」とは、「エンジン制御装置からデータを受信するのに適し、前記エンジン制御装置にデータを提供するのに適したデータ提供部」という限りにおいて一致している。 よって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 〔一致点〕 「流体を保持するための貯留槽と、 前記貯留槽とエンジンの流体循環システムとの間の流体連通を提供するのに適した流体連結部と、 データ提供部であって、データを蓄積するためのメモリを有すると共に、また、エンジン制御装置からデータを受信するのに適し、前記エンジン制御装置にデータを提供するのに適したデータ提供部とを備えるエンジンの為の置き換え可能な流体容器。」 〔相違点1〕 「データ提供部」に関して、本願発明においては「貯留槽とエンジンのオイル潤滑流体循環システムとの間の流体連通を可能にするために置換可能な流体容器が一度設置されると、エンジンのエンジン制御装置とのデータ通信をするデータ提供部を有するように設計された」ものであるのに対して、引用発明においては、かかる事項を備えていない点。 〔相違点2〕 「エンジン制御装置からデータを受信するのに適し、前記エンジン制御装置にデータを提供するのに適したデータ提供部」に関して、本願発明においては「エンジン制御装置からデータを受信するのに適し、かつ、そのメモリに蓄積している受信データとその受信データに応じて前記エンジン制御装置に提供しているデータとから選択された処置を実行するのに適した」ものであるのに対して、引用発明においては、エンジンコントローラからデータをダウンロードし、エンジンコントローラにデータをアップロードするものである点。 上記相違点1について検討する。 引用文献2記載事項は上記のとおり「インクタンク11は着脱可能であり、インクタンク11はメモリ421を有し、インクタンク11をプリントヘッド12に位置合わせして嵌合することにより、インクタンク11とプリントヘッド12との間のインクの連通が可能となり、インクタンク11のメモリ421とプリントヘッド12との間のデータの授受が可能となること。」というものであり、引用文献3記載事項は上記のとおり「容器アセンブリ110は取り外し可能であり、その中に含まれる材料に関する情報を記憶するための情報タグ200を含んでおり、コネクタ118は、容器アセンブリ110を、プロセスアセンブリ103および制御ユニット102に同時に結合するように構成されており、前記コネクタ118により、容器アセンブリ110とプロセスアセンブリ103との間の流体連通が可能となり、容器アセンブリ110の情報タグ200と制御ユニット102との間の情報の授受が可能となること。」というものである。 これらの記載事項から、流体容器(上記インクタンク11及び容器アセンブリ110)と当該流体容器内の流体を使用する装置(上記プリントヘッド12及びプロセスアセンブリ103)との間の流体連通を可能にするために置換可能な流体容器が一度設置されると、当該流体容器内の流体を使用する装置とのデータ通信をするデータ提供部(上記メモリ421及び情報タグ200)を有するように設計されたデータ提供部を備えた流体容器は、本願の優先日前に周知の技術(以下「周知技術」という。)であったといえる。 引用発明は、エンジンとハウジング20とが流体連通し、エンジンコントローラとハウジング20の不揮発性メモリ46がデータの授受を行うものであるから、引用発明において周知技術を参酌し、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。 上記相違点2について検討する。 上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項である「エンジン制御装置からデータを受信するのに適し、かつ、そのメモリに蓄積している受信データとその受信データに応じて前記エンジン制御装置に提供しているデータとから選択された処置を実行するのに適した」は、下記の「第5 特許法第36条第6項第2号(明確性)についての判断」に示すように、その意味が明確でない。 しかしながら、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、(データ提供部が)「エンジン制御装置からデータを受信するのに適し」ており、かつ、「エンジン制御装置」に「データを提供」するのに適している、との意味に解することができる。そして、そのように解した場合、引用発明の「エンジンコントローラからデータをダウンロードし、エンジンコントローラにデータをアップロードする」は、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項に相当するものということができる。 当審拒絶理由では、「●理由1(進歩性)について」において、当該相違点に関して、上記のような解釈と判断を示したが、請求人からは、具体的な反論はなかった。また、「●理由3(明確性)について」において、当該相違点に係る本願発明の発明特定事項に係る記載が明確でない旨を指摘したが、下記の「第5 特許法第36条第6項第2号(明確性)についての判断」で述べるように、当該記載を明確化する補正はされず、説明や釈明もなかった。 請求人は審判請求書3.(3)において、引用文献1における不揮発性メモリ46に関して次のように主張している。 「しかしながら、ここには、エンジン制御装置は、データ提供部にデータを送ることができ、また、このデータ提供部は、メモリにそのデータを蓄積するか、受け取ったデータに応じてエンジン制御装置と通信するといった着想がありません。 第1引用文献において、エンジンはメモリにデータを直接ダウンロードしており、エンジンからのデータを調べることができ、データをメモリに蓄積するか、戻すかを決定できるデータ提供部は開示されておりません。 言い換えれば、不揮発性メモリ46は、単に受動的な装置に過ぎないのに対し、本願の請求項1に係る発明におけるデータ提供部は、能動的な装置であります。」 上記主張について検討すると、上記主張における「受け取ったデータに応じてエンジン制御装置と通信する」とは、「受け取ったデータ」に具体的にどのように「応じて」「エンジン制御装置と通信する」のか、発明の詳細な説明を参酌しても明確でない。しかしながら、互いに関連した事項について通信を行うこと、データに応じた事項について通信を行うことは、通常行われていることであるし、関連したデータの授受を行うことは、引用文献1の段落[0033](上記1 (1)キを参照。)にも示唆されている。 そして、引用文献1に記載の不揮発性メモリ46が、単に受動的な装置ではなく、能動的な装置であることは、一般に「アップロード」や「ダウンロード」という用語は、コンピュータとメモリとの間のデータの授受ではなく、コンピュータ同士のデータの授受に用いられることから理解できる。また、引用文献1の段落[0007]の記載事項(上記1 (1)アを参照。)は、不揮発性メモリ要素が、単に受動的な装置ではなく、能動的な装置であることを示している。 以上を踏まえると、上記相違点2は実質的な相違点ではないか、少なくとも、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明に基いて当業者が容易に想到できたものである。 そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び周知技術から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第5 特許法第36条第6項第2号(明確性)についての判断 当審拒絶理由において、特許請求の範囲の記載不備について、次のように指摘した。 「請求項1の『前記エンジン制御装置からデータを受信するのに適し、かつ、そのメモリに蓄積している受信データとその受信データに応じて前記エンジン制御装置に提供しているデータとから成るリストから選択された処置を実行するのに適したデータ提供部』との記載は意味が不明である。 当該記載によれば、リストの内容は『そのメモリに蓄積している受信データ」と「その受信データに応じて前記エンジン制御装置に提供しているデータ」である、すなわち、リストの内容は『データ』であって『処置』ではないから、『リストから選択された処置を実行する』とは、どのような処置を実行するのか不明である。 また、『その受信データに応じて前記エンジン制御装置に提供しているデータ』とは、どのようなデータを指すのか不明確である。」 これに対して、請求人は、請求項1の当該記載を 「前記エンジン制御装置からデータを受信するのに適し、かつ、そのメモリに蓄積している受信データとその受信データに応じて前記エンジン制御装置に提供しているデータとから選択された処置を実行するのに適したデータ提供部」(下線は、補正箇所を示すために請求人が付した。) と補正した。 当該補正により「成るリストから」との記載は削除されたものの、「処置」は「データ」から選択されるという記載内容は変わらないものであり、例えば、発明の詳細な説明の段落【0040】、【0041】、【0044】及び【0053】ないし【0066】等に示された「データ」の例を見ても、「データ」は「処置」とはいえないものであるから、請求項1の当該記載は依然として不明確である。 また、「その受信データに応じて前記エンジン制御装置に提供しているデータ」との記載は依然として存在し、その意味についての説明や釈明もない。 そうすると、請求項1の「前記エンジン制御装置からデータを受信するのに適し、かつ、そのメモリに蓄積している受信データとその受信データに応じて前記エンジン制御装置に提供しているデータとから成るリストから選択された処置を実行するのに適したデータ提供部」との記載は、依然として意味が不明であるから、請求項1に係る発明は依然として明確でない。 よって、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 また、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 よって、結論のとおり審決する。

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2019-008364

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