特許拒絶査定不服審判
2019-004398
カードシステム
- 審判番号
- 2019-004398
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-136443外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年04月04日
- 審決日
- 2020年03月03日
- 公報発行日
- 2020年04月24日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社日本マシンサービス
- 【請求人代理人】保立 浩一
- 分類
- P18 .121-WY (G06K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第164条、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-136443「カードシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 8日出願公開、特開2016-207222、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成27年1月9日に出願した特願2015-3639号の一部を平成28年7月8日に新たな特許出願としたものであって,平成30年10月1日付けで拒絶の理由が通知され,同年12月6日に意見書とともに手続補正書が提出され,同年12月25日付けで拒絶査定(謄本送達日平成31年1月8日)がなされ,これに対して平成31年4月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,令和1年5月10日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成30年12月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項2
・引用文献1-3
・請求項3
・引用文献1-2、4
・請求項4
・引用文献1-4
<拒絶の理由を発見しない請求項>
平成30年12月6日付け手続補正書による補正後の請求項(1)に係る発明については、現時点では、拒絶の理由を発見しない。
<引用文献等一覧>
1.特開平10-3524号公報
2.特開平5-116490号公報
3.特開平9-81711号公報
4.特開2007-79792号公報
第3 審判請求時の補正について
1 補正事項
審判請求時の補正(以下,「本件補正」という。)は,次の補正事項1乃至3を含むものである。
(1)補正事項1
本件補正前の請求項2の「前記情報担持部における各単位領域は、透明な領域と、黒色の領域と、黒色よりも透過率の低い他の色の領域から成るものであり」との特定事項を,本件補正後に「前記情報担持部における各単位領域は、透明な領域と、黒色の領域と、透明よりも透過率が低く黒色よりも透過率が高い他の色の領域から成るものであり」とする補正。
(2)補正事項2
本件補正前の請求項2の「前記出力制御部は、各フォトセンサの受光素子からの信号についてオン信号とするかオフ信号とするかの閾値を変更することができるものである」との特定事項を,本件補正後に「前記出力制御部は、各フォトセンサの受光素子からの信号についてオン信号とするかオフ信号とするかの閾値を変更することで異なる識別情報を取得できるようにするものである」とする補正。
(3)補正事項3
本件補正前の請求項3の「第一の群のフォトセンサは、一方又は他方の辺の外側の列の情報担持部を読み取るものであって、第二の群のフォトセンサは、一方又は他方の辺の内側の列の情報担持部を読み取るものである」との特定事項を,本件補正後に「第一の群のフォトセンサは、一方の辺の外側の列の情報担持部を読み取るものであって、第二の群のフォトセンサは、他方の辺の内側の列の情報担持部を読み取るものである」とする補正。
2 各補正事項についての判断
(1)補正事項1について
願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」という。)には,次の記載が認められる。(下線は当審で付加。以下同様。)
「【0074】
この場合、透明領域が発光素子と受光素子との間に介在した場合、検出電流はほぼ100%であるが、黒色領域や白色領域が間に介在した場合、遮光されるので、50%未満の検出電流となる。この際、図14に示すように、白色領域の方が黒色領域より若干検出電流が大きくなるものが使用されている。白色でもある程度は光が透過するからである。
この場合、図14に示すように、受光素子からの出力に対する閾値としては、標準設定と微弱設定の二つが選択的に設定されるようになっている。微弱設定は、白色領域の場合の検出電流と黒色領域の場合の検出電流(ほぼゼロ)の丁度中間の値の設定となっている。この実施形態でも、第一の実施形態と同様に出力制御部34を備えており、上記二つの閾値の設定は、出力制御部34に設けられた受信回路342で行われる。
【0075】
受信回路342での設定の仕方により、情報担持部が同じパターンのものであっても異なる情報として扱うことができる。この点について、図15を使用して説明する。図15は、第五の実施形態における読み取りのバリエーションについて示した図である。
図15には、三つの設定例が示されている。設定例Aは、各フォトセンサをすべて標準設定とした例であり、設定例Bは各フォトセンサを全て微弱設定とした例であり、設定例Cは、標準設定と微弱設定を混合させた例である。
【0076】
図13及び図15に示すように、一例として、情報担持部22a~22dは、読み取りセンサ32で読み取られる状態では、上から順に、透明領域、黒色領域、白色領域、透明領域、白色領域とする。この場合、図15に示すように、設定例Aの場合、“1”、“0”、“0”、“1”、“0”という読み取り結果となる。“1”はセンサオン、“0”はセンサオフということである。また、設定例Bの場合、“1”、“0”、“1”、“1”、“1”となり、設定例Cの場合、“1”、“0”、“1”、“1”、“0”となる。このように、各フォトセンサについて異なる二つの閾値が設定できるようにしておくことで、結果的に情報担持部22a~22dが担持し得る情報の量が多くなる。このため、異なる多くの施設で使用される場合、より好適な顧客来場促進装置となる。
尚、青、赤、黄色等の色で印刷した場合にも、透明領域の場合と同程度の検出電流が得られることが判っており、透明領域の代わりに用いられることもある。」
「
図13」
「
図15」
以上の記載から,当初明細書等には,「透明領域」や「黒色領域」のほか,「白色領域」や「青、赤、黄色等の色」についての記載が認められ,これらは明らかに「前記情報担持部における各単位領域」が,「透明な領域と、黒色の領域と、透明よりも透過率が低く黒色よりも透過率が高い他の色の領域から成る」ものを示しているといえるから,補正事項1は,当初明細書等に新たな技術的事項を加えるものではない。
また,本件補正前に「情報担持部における各単位領域は、…(中略)…黒色よりも透過率の低い他の色の領域から成る」とされていた事項は,誤記であることは自明であって,補正事項1は,誤記の訂正を目的としたものであるといえる。
(2)補正事項2について
当初明細書等には,上記(1)の記載が認められ,そのうち,「設定例A」ないし「設定例C」によって,読み取られる情報が異なる態様を読み取ることができるから,これらは「各フォトセンサの受光素子からの信号についてオン信号とするかオフ信号とするかの閾値を変更することで異なる識別情報を取得できるようにするもの」を表していて,当初明細書等に新たな技術的事項を加えるものではない。
また,本件補正前に「各フォトセンサの受光素子からの信号についてオン信号とするかオフ信号とするかの閾値を変更することができる」とされていたものを,本件補正後に「各フォトセンサの受光素子からの信号についてオン信号とするかオフ信号とするかの閾値を変更することで異なる識別情報を取得できるようにする」と補正することは,特許請求の範囲を限定的に減縮するものといえるから,補正事項2は,特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものであるといえる。
(3)補正事項3について
当初明細書等には,次の記載も認められる。
「【0078】
第六の実施形態では、図11に示す第三の実施形態と同様、二つの読み取りセンサが設けられている。二つの読み取りセンサ32A,32Bは、受け具331に当接した状態の無料カード2の左右に位置するよう設けられている。そして、一方の読み取りセンサ(例えば左側の読み取りセンサ)32Aは、下側且つ左側の情報担持部の内側列を読み取る位置に配置されており、他方の読み取りセンサ(例えば右側の読み取りセンサ)32Bは、外側列を読み取る位置に配置されている。」
上記記載より,「第一の群のフォトセンサは、一方の辺の外側の列の情報担持部を読み取るものであって、第二の群のフォトセンサは、他方の辺の内側の列の情報担持部を読み取るものである」ことを読み取ることができるから,補正事項3は,当初明細書等に新たな技術的事項を加えるものではない。
また,本件補正前に「第一の群のフォトセンサは、一方又は他方の辺の外側の列の情報担持部を読み取るものであって、第二の群のフォトセンサは、一方又は他方の辺の内側の列の情報担持部を読み取るものである」との記載を,「第一の群のフォトセンサ」について「一方の辺の外側の列の情報担持部を読み取るもの」とし,「第二の群のフォトセンサ」について「他方の辺の内側の列の情報担持部を読み取るもの」と補正することは,明りょうでない記載の釈明,又は特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるといえる。
3 本件補正についてのむすび
そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1乃至4に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。
したがって,上記補正事項1乃至3を含む本件補正は,特許法17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
第4 本願発明
本願請求項1乃至4に係る発明(以下「本願発明1」乃至「本願発明4」という。)は,平成31年4月4日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された,次のとおりのものと認める。
「 【請求項1】
識別情報を担持したカードと、
当該カードに担持された識別情報を読み取るカード読み取り機とを備えたカードシステムであって、
カードは、基材と、基材の向かい合う両辺に設けられた情報担持部とから成るものであり、
基材は透明であって、各情報担持部は、印刷された複数の単位領域から成るパターンであって各単位領域は担持すべき識別情報に応じて光を透過させるか又は遮断する領域であり、
カード読み取り機は、
カード挿入口を備えたケーシングと、
カード挿入口に挿入されたカードを受ける受け具と、
受け具で受けられたカードの情報担持部を読み取る読み取りセンサと、
出力制御部と
を備えており、
読み取りセンサは、受け具で受けられたカードの情報担持部における各単位領域が光軸上となる位置に配置された発光素子と受光素子とから成る複数対のフォトセンサから成るものであり、
出力制御部は、各受光素子からの信号がデジタル信号として入力される受信回路と、受信したデジタル信号について真正な識別情報であるかどうかを判断する判断回路とを含んでおり、
カードの両辺に設けられた情報担持部は、両辺に沿った方向のカードの中心線に対して左右対称であり、カードは、左右入れ替えてカード挿入口に挿入した際でも読み取りセンサにより同様の識別情報が読み取られるものであり、
前記読み取りセンサは、前記受け具に受けられた前記カードの一方の辺に沿って設けられた前記情報担持部を読み取る第一の群のフォトセンサと、他方の辺に沿って設けられた前記情報担持部を読み取る第二の群のフォトセンサとを備えており、
第一の群の各フォトセンサの光軸は、第二の各フォトセンサの光軸に対して幅wだけずれたものとなっており、
幅wは、前記各情報担持部において各単位領域が並ぶ方向の各単位領域の幅に一致していることを特徴とするカードシステム。
【請求項2】
識別情報を担持したカードと、
当該カードに担持された識別情報を読み取るカード読み取り機とを備えたカードシステムであって、
カードは、基材と、基材の向かい合う両辺に設けられた情報担持部とから成るものであり、
基材は透明であって、各情報担持部は、印刷された複数の単位領域から成るパターンであって各単位領域は担持すべき識別情報に応じて光を透過させるか又は遮断する領域であり、
カード読み取り機は、
カード挿入口を備えたケーシングと、
カード挿入口に挿入されたカードを受ける受け具と、
受け具で受けられたカードの情報担持部を読み取る読み取りセンサと、
出力制御部と
を備えており、
読み取りセンサは、受け具で受けられたカードの情報担持部における各単位領域が光軸上となる位置に配置された発光素子と受光素子とから成る複数対のフォトセンサから成るものであり、
出力制御部は、各受光素子からの信号がデジタル信号として入力される受信回路と、受信したデジタル信号について真正な識別情報であるかどうかを判断する判断回路とを含んでおり、
カードの両辺に設けられた情報担持部は、両辺に沿った方向のカードの中心線に対して左右対称であり、カードは、左右入れ替えてカード挿入口に挿入した際でも読み取りセンサにより同様の識別情報が読み取られるものであり、
前記情報担持部における各単位領域は、透明な領域と、黒色の領域と、透明よりも透過率が低く黒色よりも透過率が高い他の色の領域から成るものであり、
前記出力制御部は、各フォトセンサの受光素子からの信号についてオン信号とするかオフ信号とするかの閾値を変更することで異なる識別情報を取得できるようにするものであることを特徴とするカードシステム。
【請求項3】
識別情報を担持したカードと、
当該カードに担持された識別情報を読み取るカード読み取り機とを備えたカードシステムであって、
カードは、基材と、基材の向かい合う両辺に設けられた情報担持部とから成るものであり、
基材は透明であって、各情報担持部は、印刷された複数の単位領域から成るパターンであって各単位領域は担持すべき識別情報に応じて光を透過させるか又は遮断する領域であり、
カード読み取り機は、
カード挿入口を備えたケーシングと、
カード挿入口に挿入されたカードを受ける受け具と、
受け具で受けられたカードの情報担持部を読み取る読み取りセンサと、
出力制御部と
を備えており、
読み取りセンサは、受け具で受けられたカードの情報担持部における各単位領域が光軸上となる位置に配置された発光素子と受光素子とから成る複数対のフォトセンサから成るものであり、
出力制御部は、各受光素子からの信号がデジタル信号として入力される受信回路と、受信したデジタル信号について真正な識別情報であるかどうかを判断する判断回路とを含んでおり、
カードの両辺に設けられた情報担持部は、両辺に沿った方向のカードの中心線に対して左右対称であり、カードは、左右入れ替えてカード挿入口に挿入した際でも読み取りセンサにより同様の識別情報が読み取られるものであり、
前記情報担持部は、各辺において二列並んで設けられており、一方の辺における外側の列の情報担持部と、他方の辺における外側の列の情報担持部とは同じ第一の識別情報を担持したものであって、一方の辺における内側の列の情報担持部と他方の辺における内側の列の情報担持部は同じ第二の識別情報を担持したものであり、
前記読み取りセンサは、前記受け具に受けられた前記カードの一方の辺に沿って設けられた前記情報担持部を読み取る第一の群のフォトセンサと、他方の辺に沿って設けられた前記情報担持部を読み取る第二の群のフォトセンサとを備えており、
第一の群のフォトセンサは、一方の辺の外側の列の情報担持部を読み取るものであって、第二の群のフォトセンサは、他方の辺の内側の列の情報担持部を読み取るものであることを特徴とするカードシステム。
【請求項4】
前記カードの両辺に設けられた情報担持部は、両辺に垂直な方向の中心線に対して線対称であり、カードは、上下を逆にしてカード挿入口に挿入した際でも前記読み取りセンサにより同様の識別情報が読み取られるものであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のカードシステム。」
第5 引用例
1 引用例1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した,本願の原出願(特願2015-3639)の出願前に既に公知である,特開平10-3524号公報(平成10年1月6日公開。以下,これを「引用例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。
A 「【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面等を参照して、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本発明によるカードの第1の実施形態を示す平面図である。図2は、図1のA-A断面を示す断面図である。図1のカード20において、カード基材21は、光が透過可能な透明又は半透明のPET等の合成樹脂から形成されている。カード基材21の厚みは、約250μm程度である。
【0012】カード基材21上の所定の1辺近傍には、シルク印刷等された属性情報記録部22が設けられている。属性情報記録部22は、光が透過不能な不透明領域22a(図中、斜線部領域)が所定のパターンで配置されることにより形成されている。そして、属性情報記録部22は、このパターンによりカード20の属性を示している。この属性情報記録部22は、機械読み取りが可能である。このように属性情報記録部22を設ければ、位置精度を確保しやすく、同じパターンのカード20を精度良く製造することができる。また、従来のものと比較して、切りくずの発生の心配がなくなる。
【0013】図3は、カード20の属性情報記録部22の読み取りを説明するための図である。カード20の読み取り装置内には、光源31及び受光センサ32が設けられている。カード20が読み取り装置に挿入されると、カード20の属性情報記録部22は、光源31と受光センサ32との間に配置される。
【0014】そして、光源31から属性情報記録部22に光が照射されると、属性情報記録部22のうち不透明領域22aが設けられていない領域に入射した光のみがカード基材21を透過する。そして、この光が受光センサ32に入射する。すなわち、属性情報記録部22の不透明領域22aに入射した光は、その領域で反射され、受光センサ32には入射しない。読み取り装置は、この入射光のパターンによって属性情報記録部22を認識して、カード20の属性を特定する。」
B 「【0017】図5は、入場券としてのカード20が読み取られるときのゲートを示す図である。ゲート50には、カード20の挿入口51と、ゲート50の通過を制御する開閉部52とが設けられている。入場者は、カード20を挿入口51から挿入する。ゲート50内には、図3に示した読み取り装置が設けられており、カード20の属性情報記録部22が読み取られる。そして、その読み取り結果からカード20の真偽や種別が判別され、開閉部52の動作が制御される。図6は、ゲート50の開閉部52の制御の例を示す図である。カード20の属性情報記録部22が読み取られた結果、入場可能と判別されたときは、開閉部52が倒れ、ゲート50を通過することができるようになる。一方、入場不可能と判別されたときは、開閉部52は倒れず、ゲート50を通過することができない。」
C 「
図3」
2 引用発明
ア 上記記載事項Aの「図1のカード20において、カード基材21は、光が透過可能な透明又は半透明のPET等の合成樹脂から形成されている。」との記載から,引用例1には,“光が透過可能な透明又は半透明のPET等の合成樹脂から形成されるカード基材21”が記載されているといえる。
同じく上記記載事項Aの「カード基材21上の所定の1辺近傍には、シルク印刷等された属性情報記録部22が設けられている。属性情報記録部22は、光が透過不能な不透明領域22a(図中、斜線部領域)が所定のパターンで配置されることにより形成されている。そして、属性情報記録部22は、このパターンによりカード20の属性を示している。」との記載から,引用例1には,“カード基材21上の所定の1辺近傍には,シルク印刷等された属性情報記録部22が設けられ,属性情報記録部22は,光が透過不能な不透明領域22aが所定のパターンで配置されることにより形成され,属性情報記録部22は,このパターンによりカード20の属性を示して”いることが記載されているといえる。
同じく上記記載事項Aの「図3は、カード20の属性情報記録部22の読み取りを説明するための図である。カード20の読み取り装置内には、光源31及び受光センサ32が設けられている。カード20が読み取り装置に挿入されると、カード20の属性情報記録部22は、光源31と受光センサ32との間に配置される」との記載,及び上記Cの図3から,光源31と受光センサ32は,複数対からなることが読み取れることから,引用例1には,“カード20の読み取り装置内には,複数対の光源31及び受光センサ32が設けられ,カード20が読み取り装置に挿入されると,カード20の属性情報記録部22は,複数対の光源31と受光センサ32との間に配置され”ることが記載されているといえる。
同じく上記記載事項Aの「光源31から属性情報記録部22に光が照射されると、属性情報記録部22のうち不透明領域22aが設けられていない領域に入射した光のみがカード基材21を透過する。そして、この光が受光センサ32に入射する。すなわち、属性情報記録部22の不透明領域22aに入射した光は、その領域で反射され、受光センサ32には入射しない。読み取り装置は、この入射光のパターンによって属性情報記録部22を認識して、カード20の属性を特定する」との記載から,引用例1には,“光源31から属性情報記録部22に光が照射されると,属性情報記録部22のうち不透明領域22aが設けられていない領域に入射した光のみがカード基材21を透過し,この光が受光センサ32に入射し,属性情報記録部22の不透明領域22aに入射した光は,その領域で反射され,受光センサ32には入射せず,読み取り装置は,この入射光のパターンによって属性情報記録部22を認識して,カード20の属性を特定”することが記載されているといえる。
イ 上記記載事項Bの「図5は、入場券としてのカード20が読み取られるときのゲートを示す図である。ゲート50には、カード20の挿入口51と、ゲート50の通過を制御する開閉部52とが設けられている。入場者は、カード20を挿入口51から挿入する。ゲート50内には、図3に示した読み取り装置が設けられており、カード20の属性情報記録部22が読み取られる。そして、その読み取り結果からカード20の真偽や種別が判別され、開閉部52の動作が制御される。」との記載から,引用例1には,“入場券としてのカード20が読み取られるときのゲート50には,カード20の挿入口51と,ゲート50の通過を制御する開閉部52とが設けられ,カード20を挿入口51から挿入されると,ゲート50内に設けられた読み取り装置によって,カード20の属性情報記録部22が読み取られ,その読み取り結果からカード20の真偽や種別が判別され,開閉部52の動作が制御される”ことを読み取ることができる。
ウ 上記ア及びイに示される事項より,引用例1は「カード20」及び「読み取り装置」からなる,カード読み取りの仕組みを開示しているといえ,これらは,“カードシステム”といい得るから,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「光が透過可能な透明又は半透明のPET等の合成樹脂から形成されるカード基材21と,
カード基材21上の所定の1辺近傍には,シルク印刷等された属性情報記録部22が設けられ,属性情報記録部22は,光が透過不能な不透明領域22aが所定のパターンで配置されることにより形成され,属性情報記録部22は,このパターンによりカード20の属性を示しており,
カード20の読み取り装置内には,複数対の光源31及び受光センサ32が設けられ,カード20が読み取り装置に挿入されると,カード20の属性情報記録部22は,複数対の光源31と受光センサ32との間に配置され,
光源31から属性情報記録部22に光が照射されると,属性情報記録部22のうち不透明領域22aが設けられていない領域に入射した光のみがカード基材21を透過し,この光が受光センサ32に入射し,属性情報記録部22の不透明領域22aに入射した光は,その領域で反射され,受光センサ32には入射せず,読み取り装置は,この入射光のパターンによって属性情報記録部22を認識して,カード20の属性を特定し,
入場券としてのカード20が読み取られるときのゲート50には,カード20の挿入口51と,ゲート50の通過を制御する開閉部52とが設けられ,カード20を挿入口51から挿入されると,ゲート50内に設けられた読み取り装置によって,カード20の属性情報記録部22が読み取られ,その読み取り結果からカード20の真偽や種別が判別され,開閉部52の動作が制御されるカードシステム。」
3 引用例2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した,本願の原出願(特願2015-3639)の出願前に既に公知である,特開平5-116490号公報(平成5年5月14日公開。以下,これを「引用例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。
D 「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によるバーコード付カードは、表裏面の双方又は一方の面に、バーコードが形成されたバーコード付カードであって、同一の面であって、読み取り方向の中心線に対して線対称又は点対称の位置に、読み取り方向が逆方向となる同一内容の2つのバーコードを備えた構成としてある。」
E 「【0018】このようにすれば、カード挿入方向のみならず、表裏を間違えても、コードを正しく読み取ることができる。つまり、磁気バーコード2が正規の位置であるとすると、挿入方向のみを間違えたときには、磁気バーコード3を読めばよいし、表裏面を間違えたときには磁気バーコード5を読めばよいし、挿入方向と表裏面をともに間違えたときには、磁気バーコード6を読めばよい。」
4 引用例3に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した,本願の原出願(特願2015-3639)の出願前に既に公知である,特開平9-81711号公報(平成9年3月28日公開。以下,これを「引用例3」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。
F 「【0017】即ち、本発明の情報記録媒体によれば、マーカとドットと記録媒体が互いに異なる所定の反射率もしくは透過率を有するように記録しているので、記録されたコードを光学的に読み取る際に、マーカとドットと記録媒体をそれぞれの反射光量もしくは透過光量に基づいて分離することが簡単になり、また、マーカの持つ面積を少なくすることができ、変調もしなくても良く、コード記録面積のうちデータの占める割合を大きくすることができる。」
G 「【0027】図1の(A)は、第1の実施の形態におけるドットコード100のフォーマットを示す図で、本実施の形態では、マーカ14と、パターンドット80,アドレスドット82,及びデータドット84と、記録媒体とを、互いに異なる所定の反射率もしくは透過率を有するように記録することにより、マーカ14、パターンドット80、アドレスドット82、及びデータドット84を同じ大きさのドットとして記録するようにしている。即ち、記録媒体が白色であって、この記録媒体にマーカ14を黒ドットとして記録すると共に、パターン,アドレス,及びデータドット80,82,84については、データ「1」をグレー(灰色)のドットとして、データ「0」を透明のドットとして記録している。」
5 引用例4に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した,本願の原出願(特願2015-3639)の出願前に既に公知である,特開2007-79792号公報(平成19年3月29日公開。以下,これを「引用例4」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。
H 「【0011】
図1及び図2に、本発明に使用される仕切りカードとして、上記銀行券処理装置用のヘッダカードの一例を表す正面図を示す。図1はこのヘッダカードの表面、図2は図1に示すカードの裏面を各々示す。
【0012】
図示するように、この長方形のヘッダカード401は、その両主面に、その中央の領域に紙葉類を識別するための情報を記録したバーコード404が印刷されており、その上下には、バーコードの表す数字405が、正位置及び逆位置に印字されている。また、バーコード404の両側に、仕切りカードを識別するための券コード情報を記録した一対のブロックパターン402,408が、カード中心点に対して点対称になるように設けられている。
【0013】
例えばブロックパターン402,408は、図示するように、1列が4ブロックで構成され、合計2列で券コードを表している。」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(あ)引用発明の「カード20」は,本願発明1の「カード」に相当し,以下同様に,引用発明の「カード基材21」及び「読み取り装置」はそれぞれ本願発明1の「基材」及び「カード読み取り機」に相当する。
引用発明の「属性情報記録部22」は,「光が透過不能な不透明領域22aが所定のパターンで配置されることにより形成」されていることから,本願発明の「印刷された複数の単位領域から成るパターンであって各単位領域は担持すべき識別情報に応じて光を透過させるか又は遮断する領域」を有する「情報担持部」と,下記の点で相違するものの,“印刷されたパターンであって担持すべき識別情報に応じて光を透過させるか又は遮断する領域を有”する点で一致する。
引用発明の「カードシステム」は,「カード20の読み取り装置内には,複数対の光源31及び受光センサ32が設けられ,カード20が読み取り装置に挿入されると,カード20の属性情報記録部22は,複数対の光源31と受光センサ32との間に配置され,
光源31から属性情報記録部22に光が照射されると,属性情報記録部22のうち不透明領域22aが設けられていない領域に入射した光のみがカード基材21を透過し,この光が受光センサ32に入射し,属性情報記録部22の不透明領域22aに入射した光は,その領域で反射され,受光センサ32には入射せず,読み取り装置は,この入射光のパターンによって属性情報記録部22を認識して,カード20の属性を特定」するものであるから,当該「カード20」は識別情報を担持していて「読み取り装置」が当該識別情報を読取っているから,引用発明と本願発明1とは,
“識別情報を担持したカードと,
当該カードに担持された識別情報を読み取るカード読み取り機とを備えたカードシステム”の点で一致し,さらに“カードは,基材と,情報担持部とから成る”点でも一致する。
(い)引用発明の「カード基材21」は,「光が透過可能な透明又は半透明のPET等の合成樹脂から形成」されるものであり,また「カード基材21上の所定の1辺近傍」には,「シルク印刷等された属性情報記録部22が設けられ,属性情報記録部22は,光が透過不能な不透明領域22aが所定のパターンで配置されることにより形成され」ていることから,上記(あ)の認定も踏まえ,引用発明と本願発明1とは,“基材は透明であって,情報担持部は,印刷されたパターンであって担持すべき識別情報に応じて光を透過させるか又は遮断する領域”を有する点で一致する。
(う)引用発明の「読み取り装置」は,「カード20が読み取り装置に挿入され」るとともに,「カード20」が「入場券として」用いられて,当該「カード20」が「読み取られるときのゲート50」に,「カード20の挿入口51」が設けられ,「ゲート50内に設けられた読み取り装置によって,カード20の属性情報記録部22が読み取られ」ることから,当該「カード20」を受け入れる,本願発明1の「カード挿入口を備えたケーシング」や「カード挿入口に挿入されたカードを受ける受け具」に相当する構成を引用発明の「読み取り装置」が有することは明らかである。
そして,引用発明の「カード20の読み取り装置内」に設けられる「複数対の光源31及び受光センサ32」は,「カード20が読み取り装置に挿入され」て,当該「カード20の属性情報記録部」が当該「複数対の光源31と受光センサ32との間に配置され」て,「光源31から属性情報記録部22に光が照射され」,「属性情報記録部22のうち不透明領域22aが設けられていない領域に入射した光のみがカード基材21を透過し,この光が受光センサ32に入射し,属性情報記録部22の不透明領域22aに入射した光は,その領域で反射され,受光センサ32には入射」しないことにより,「読み取り装置」が「この入射光のパターンによって属性情報記録部22を認識して,カード20の属性を特定」していることから,引用発明は,本願発明1の「受け具で受けられたカードの情報担持部を読み取る読み取りセンサ」に相当する構成を有しているといえる。また,引用発明は「ゲート50内に設けられた読み取り装置によって,カード20の属性情報記録部22が読み取られ,その読み取り結果からカード20の真偽や種別が判別され,開閉部52の動作が制御される」ことから,当該「開閉部52の動作」を「制御」する制御部が存在することは明らかであるから,上記(あ)の認定も踏まえ,本願発明1の「カード読み取り機」と引用発明の「読み取り装置」とは,
“カード読み取り機は,
カード挿入口を備えたケーシングと,
カード挿入口に挿入されたカードを受ける受け具と,
受け具で受けられたカードの情報担持部を読み取る読み取りセンサと,
出力制御部と
を備えて”いる点で一致する。
(え)引用発明の「光源31」は本願発明1の「発光素子」に相当し,引用発明の「受光センサ32」は本願発明1の「受光素子」に相当し,引用発明の「複数対の光源31及び受光センサ32」は,本願発明1の「発光素子と受光素子とから成る複数対のフォトセンサ」と共通するものであるから,上記(う)の認定も踏まえれば,引用発明と本願発明1とは,“読み取りセンサは,受け具で受けられたカードの情報担持部が光軸上となる位置に配置された発光素子と受光素子とから成る複数対のフォトセンサから成るもの”である点で一致する。
(お)引用発明は,「入場券としてのカード20が読み取られるときのゲート50には,カード20の挿入口51と,ゲート50の通過を制御する開閉部52とが設けられ,カード20を挿入口51から挿入されると,ゲート50内に設けられた読み取り装置によって,カード20の属性情報記録部22が読み取られ,その読み取り結果からカード20の真偽や種別が判別され,開閉部52の動作が制御される」ものであり,当該「開閉部52の動作」の「制御」は,「カード20を挿入口51から挿入」し,「ゲート50内に設けられた読み取り装置によって,カード20の属性情報記録部22が読み取られ,その読み取り結果からカード20の真偽や種別が判別され」た結果として行われるものである。また,「読み取り装置」に設けられる「複数対の光源31及び受光センサ32」によって得られる情報はデジタル信号であることは明らかであるから,本願発明1の「各受光素子からの信号がデジタル信号として入力される受信回路」と「受信したデジタル信号について真正な識別情報であるかどうかを判断する判断回路」に相当する構成を引用発明は有しているといえ,以上総合して,引用発明と本願発明1とは,“出力制御部は,各受光素子からの信号がデジタル信号として入力される受信回路と,受信したデジタル信号について真正な識別情報であるかどうかを判断する判断回路とを含んでいる”点で一致する。
(か)以上,(あ)乃至(お)の検討から,引用発明と本願発明1とは,次の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
識別情報を担持したカードと,
当該カードに担持された識別情報を読み取るカード読み取り機とを備えたカードシステムであって,
カードは,基材と,情報担持部とから成るものであり,
基材は透明であって,情報担持部は,印刷されたパターンであって担持すべき識別情報に応じて光を透過させるか又は遮断する領域を有し,
カード読み取り機は,
カード挿入口を備えたケーシングと,
カード挿入口に挿入されたカードを受ける受け具と,
受け具で受けられたカードの情報担持部を読み取る読み取りセンサと,
出力制御部と
を備えており,
読み取りセンサは,受け具で受けられたカードの情報担持部が光軸上となる位置に配置された発光素子と受光素子とから成る複数対のフォトセンサから成るものであり,
出力制御部は,各受光素子からの信号がデジタル信号として入力される受信回路と,受信したデジタル信号について真正な識別情報であるかどうかを判断する判断回路とを含んでいるカードシステム。
〈相違点1〉
本願発明1の「情報担持部」は,「複数の単位領域」から成るとともに,「基材の向かい合う両辺に設けられ」るものであり,かつ,「各情報担持部」は,「印刷された複数の単位領域から成るパターンであって各単位領域は担持すべき識別情報に応じて光を透過させるか又は遮断する領域」であり,また,「カードの両辺に設けられた情報担持部は、両辺に沿った方向のカードの中心線に対して左右対称であり、カードは、左右入れ替えてカード挿入口に挿入した際でも読み取りセンサにより同様の識別情報が読み取られるもの」であるのに対し,引用発明の「属性情報記録部22」は,「カード基材21上の所定の1辺近傍に」設けられ,「シルク印刷等され」て「光が透過不能な不透明領域22aが所定のパターンで配置されることにより形成され」,「複数対の光源31と受光センサ32との間に配置され」,「光源31」から「光が照射されると,属性情報記録部22のうち不透明領域22aが設けられていない領域に入射した光のみがカード基材21を透過し,この光が受光センサ32に入射し,属性情報記録部22の不透明領域22aに入射した光は,その領域で反射され,受光センサ32には入射せず」,「この入射光のパターンによって」「読み取り装置」が「属性情報記録部22を認識して,カード20の属性を特定」するものではあるが,「カード20」を左右入れ替えてカード挿入口に挿入することは想定されていない点。
〈相違点2〉
本願発明1が,「前記読み取りセンサは、前記受け具に受けられた前記カードの一方の辺に沿って設けられた前記情報担持部を読み取る第一の群のフォトセンサと、他方の辺に沿って設けられた前記情報担持部を読み取る第二の群のフォトセンサとを備えており、
第一の群の各フォトセンサの光軸は、第二の各フォトセンサの光軸に対して幅wだけずれたものとなっており、
幅wは、前記各情報担持部において各単位領域が並ぶ方向の各単位領域の幅に一致している」のに対し,引用発明は,そのような構成を有さない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み,先に相違点1について検討する。
本願発明1は,各種プロモーションのための無料カードのようなカードの読み取り技術に関し(本願明細書段落0001),各種物販,サービス等の商業施設において,売り上げを伸ばすにはまず顧客に来店してもらうことが必要であるため,これら商業施設においては,ティッシュ配り,クーポン券の配布,来店ポイントの付与と次回来店時のポイント還元といった各種のプロモーション(来場促進)活動が従来行われていたことを背景とし(同0002),上述した各種のプロモーションも一定の成果を挙げているが,盛んに行われ過ぎていて,飽きられている感も否めず,また,多くのプロモーションは,相当のコストがかかるため,費用対効果の観点で問題となり得(同0004),ポイント還元のようなプロモーションは,ポイントカードの発行,ポイントの読み取り,管理等のためにコストがかかり,またポイントサービスに対応したPOSシステムが必要になるため,さらに多くのコストがかかるため,チェーン展開している大手商業施設で採用されているものの,中小の施設やチェーン展開していない施設では採用が難しいことを解決しようとする課題とし(同0005),透明な基材に各単位領域から成るパターンを印刷するだけで,リーダーとして複数対のフォトセンサから成るものが採用されるので,コストとしては非常に安価なものになり,また,無料カードの向きを左右に変えても同じように読み取りができるので,使用が簡単であるという格別な効果を奏するものである(同0007)。
一方引用発明は,カード基材に所定のパターンを機械読み取り可能に設けたカードに関し(引用例1の段落0001),従来,カード基材の1辺近傍に属性情報記録部が設けられ,属性情報記録部は,カード基材の所定位置に複数の穴を形成したものであり,この穴は,例えばパンチによって抜くことによりカード基材に形成され,この穴の位置及び数により,そのカードの属性を表すため,属性情報記録部の穴の位置や数は,全てのカードで同一ではなく,カードの種類ごとに異なるので,カード基材の形成と同時に属性情報記録部を形成することはできず,カード基材の形成後にカードの種類に合わせて穴を開ける方法が採られており(同0003),カードの読み取り装置内に,光源及び受光センサが設けられ,カードが読み取り装置に挿入され,入射光のパターンによって属性情報記録部が認識されて,カードの属性を特定するものであるが(同0004),属性情報記録部を設けるために,カード基材に穴を開けるが,穴を開けた後のカード基材の小片がゴミとなり,それを回収する必要があり,また,製造上,穴開け工程が必要となり,カードのコストが高くなるという問題があり,さらに,穴の位置精度を確保することが困難であり(同0005),穴を開けたときにその外縁部に切りくずが分離しないで残る場合があり,これが読み取り装置内に混入するおそれがあったことを背景として,カードのコストを高くすることなく,情報記録部の精度の向上を図り,カードの品質を高めることを解決しようとする課題とするもの(同0006)である。
そうすると,単に従来穴で構成された属性情報記録部を「不透明領域22a」とするに過ぎない引用発明には,「カードの両辺」に当該「両辺に沿った方向のカードの中心線に対して左右対称であ」る「情報担持部」を設け,カードを「左右入れ替えてカード挿入口に挿入した際でも読み取りセンサにより同様の識別情報が読み取られ」るようにする動機付けを見いだすことはできず,このことは,その他上記引用例2乃至4にも記載されていない。
したがって,引用発明からは,当業者といえども相違点1に係る構成を導き出すことは容易とはいえず,また,相違点1に係る構成は,本願の原出願(特願2015-3639号)の出願前に周知な構成ともいえない。
したがって,上記その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明,引用例2乃至4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2 本願発明2,3について
本願発明2,3も,本願発明1の「カードの両辺に設けられた情報担持部は、両辺に沿った方向のカードの中心線に対して左右対称であり、カードは、左右入れ替えてカード挿入口に挿入した際でも読み取りセンサにより同様の識別情報が読み取られるもの」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2乃至4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
3 本願発明4について
本願発明4は,本願発明1乃至3のいずれかを引用するものであり,本願発明1乃至3と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2乃至4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定について
<特許法29条2項について>
審判請求時の補正により,本願発明1乃至4は上記第4に示したとおりのものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1乃至4(上記第5の引用例1乃至4)に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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2019-004398