特許判定
2018-600038
プラスチック製スペーサ
- 審判番号
- 2018-600038
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 判定
- 出願番号
- 特願2009-147152
- 登録番号
- 特許第4689732号(P4689732)
- 請求日
- 2018年12月21日
- 審決日
- 2019年06月19日
- 公報発行日
- 2019年08月30日
- 結論
- 判定(属する)
- 当事者
- 【請求人】株式会社 東京工営
- 【請求人代理人】高岡 亮一
- 【請求人代理人】樋口 喜弘
- 【被請求人】フクビ化学工業 株式会社
- 【被請求人代理人】戸川 公二
- 【被請求人代理人】岡倉 誠
- 【被請求人】株式会社 八木熊
- 【被請求人代理人】戸川 公二
- 【被請求人代理人】岡倉 誠
- 審判長/審判官
- 審判長 小野 忠悦
- 審判官 井上 博之
- 審判官 住田 秀弘
- 分類
- P12 . -YB (E04F)
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第4689732号の判定請求事件について、次のとおり判定する。
結論
【結 論】
イ号図面及びその説明書に示す「プラスチック製スペーサ」は、特許第4689732号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する。
理由
【理 由】
第1 請求の趣旨と手続の経緯
本件判定請求の趣旨は、イ号図面及び説明書に示すプラスチック製スペーサ(以下「イ号物件」という。)は、特許第4689732号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属しないとの判定を求めるものである。
なお、判定請求書の「5 請求の趣旨」では、判定の対象となる請求項の記載はないものの、判定請求書2頁下から11行~9行には「(3)本件特許発明の説明 本件特許発明は、本件明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりである」と記載され、その後、請求項1に係る発明の構成要件を(A)~(H)に分けており、同じく「(5)本件特許発明と、イ号との技術的対比」では、構成要件(A)~(H)とイ号との対比を行っていることからみて、判定を求める請求項は、請求項1であることは明らかである。
本件特許に係る手続の経緯は、平成21年6月22日の出願であって、平成23年2月25日に特許権の設定登録がなされ、平成30年12月21日に本件判定請求がなされ、その後、判定請求書副本が送付され(発送日:平成31年2月22日)、平成31年3月19日に判定事件答弁書が提出されたものである。
第2 本件特許発明について
1 本件特許発明
本件特許発明は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(当判定において、構成要件ごとに分説し、記号A~Iを付した。以下「構成要件A」などという。)。
「A 隙間に設置するためのプラスチック製のスペーサ部材であって、
B スペーサ板1のスペーサ板本体11の上側面には、同一円周上に所定の角度配分をもって複数の係止突起12・12…が形成されており、かつ、
C 当該スペーサ板本体11におけるこれらの係止突起12・12…の間には、同一円周上に沿って弧形の係止孔部15・15…が複数形成されており、
D 前記各々の係止突起12・12…を他のスペーサ板1の係止孔部15・15…にそれぞれ挿通して、かつ、
E 周方向に回転することによりバヨネット式に嵌合させ、これら両部材を一体に結合して、複数のスペーサ板1を積み重ねて連結可能である一方、
F 前記スペーサ板本体11の底面側には、略中心に枢支凹部14が形成され、かつ、
G 当該スペーサ板本体11の上面側には、略中心に枢支凸部13が形成されており、
H 前記枢支凹部14に他のスペーサ板1の枢支凸部13を合致させることによって、バヨネット嵌合の回転操作の軌道をガイドしていること
I を特徴とするプラスチック製スペーサ。」
2 本件特許明細書の記載
本件特許明細書には、係止孔部などに関して、以下のように記載されている。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用資材の改良、更に詳しくは、軽量かつ製造が容易であり、しかも、簡単な操作で迅速かつ確実に連結することができて、様々な隙間サイズに対応させることができ、スラブと床板材との隙間を精度良く埋めて支持することができるプラスチック製スペーサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、スロープやベランダなどはコンクリートで作製されており、このコンクリート製のスラブにおいては、その上に断熱材や歩行用の床下地材のパネルを敷設することが多い。
【0003】
従来、このようなスラブと敷設パネルとの間には、スラブに傾斜があったりパネルの反りがあったりして不可避的に隙間が生じてしまうため、敷設した部材が不陸によりガタついてしまうという問題があった。
【0004】
そして、この隙間を埋めるためには、木っ端やブロック片などを挟んだりしていたが(例えば、特許文献1参照)、定型部材では厚みの調節がうまくできないために不陸を修正することができず、また、見栄えが悪いという不満もあった。
【0005】
また、隙間に合わせて厚みを調節する際に、複数のスペーサとなる部材を積み重ねて使用することも考えられるが、設置中にこれらの部材がバラバラに分離してしまうおそれがあり、部材がズレてしまっては、結局、不陸やガタつきを解消することができないという問題があった。
【0006】
また、かかるスペーサは、建築現場において多くの数量を使用することがあるため、各個体について厚さ調節のための組み立て作業の労力負担を軽減するために、特別な技巧を要しなくとも、迅速かつ確実に使用できる使い勝手の良さが求められている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の低床用のスペーサに上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、軽量かつ製造が容易であり、しかも、簡単な操作で迅速かつ確実に連結することができて、様々な隙間サイズに対応させることができ、スラブと床板材との隙間を精度良く埋めて支持することができるプラスチック製スペーサを提供することにある。」
(2)「【発明の効果】
【0023】
本発明では、スペーサ板のスペーサ板本体の上側面には、、同一円周上に所定の角度配分をもって複数の係止突起を形成して、かつ、当該スペーサ板本体におけるこれらの係止突起の間には、同一円周上に沿って弧形の係止孔部を複数形成して、
前記各々の係止突起を他のスペーサ板の係止孔部にそれぞれ挿通して、かつ、周方向に回転することによりバヨネット式に嵌合させてこれら両部材を一体に結合して、複数のスペーサ板を積み重ねて連結可能にする一方、
前記スペーサ板本体の底面側には、略中心に枢支凹部を形成して、かつ、当該スペーサ板本体の上面側には、略中心に枢支凸部を形成したことによって、前記枢支凹部に他のスペーサ板の枢支凸部を合致させることによって、バヨネット嵌合の回転操作の軌道をガイドすることができる。」
(3)「【0031】
そして、当該スペーサ板本体11におけるこれらの係止突起12・12…の間には、同一円周上に沿って弧形の係止孔部15・15…を複数形成する。本実施形態では、6箇所の係止孔部15を形成するとともに、この係止孔部は、長孔の端部に挿入部15aおよび其処から側方に狭幅に延成するスロット部15bを有しており、これらの係止孔部15における挿入部15aが設けられた端部の向きは揃っている(図1および図2参照)。
【0032】
そして、前記各々の係止突起12・12…を他のスペーサ板1の係止孔部15・15…(挿入部15a・15a…)にそれぞれ挿通して、かつ、スロット部15bに沿って周方向に回転することによりバヨネット式に嵌合させ、これら両部材を一体に結合して、複数のスペーサ板1を積み重ねて連結することができる(図3参照)。」
(4)「【0042】
また、当該ベース板本体21には同一円周上に沿って弧形の係止孔部23・23…を複数形成する。本実施形態では、6箇所の係止孔部23を形成するとともに、この係止孔部は、長孔の端部に挿入部23aおよび其処から側方に狭幅に延成するスロット部23bを有しており、これらの係止孔部23における挿入部23aが設けられた端部の向きは揃っている(図5および図6参照)。
【0043】
そして、前記スペーサ板1のスペーサ板本体11の上側面には、同一円周上に所定の角度配分をもって複数の係止突起12・12…を形成する。本実施形態では、6箇所の係止突起12を形成するとともに、この係止突起12の先端をT字形状に突出させて形成する。
【0044】
次いで、これらの係止突起12・12…を前記ベース板2の係止孔部23・23…(挿入部23a・23a…)にそれぞれ挿通して、かつ、スロット部23bに沿って周方向に回転することによりバヨネット式に嵌合させ、これら両部材を一体に結合することができる。なお、前記スロット部23bの延成方向は、脱落防止のために、支持板3の螺入回転方向と一致させる(完全に螺入した際に係止突起12がスロット部12bの奥に撞止する)ことが好ましい。」
第3 イ号物件
1 請求人によるイ号物件の特定
請求人は、イ号物件について、以下のように特定している。
「(a) 隙間に設置するためのプラスチック製のスペーサ部材であって、
(b) スペーサ板のスペーサ板本体の上側面には、同一円周上に所定の角度配分をもって複数の係止突起が形成され、かつ、
(c) 当該スペーサ板本体におけるこれらの係止突起の間には、切欠きと同一円周上に沿って同一方向に所定の角度配分をもって傾斜した傾斜部とが複数形成されており、
(d) 前記各々の係止突起を他のスペーサ板の前記切欠きを介して前記傾斜部にそれぞれ嵌合し、かつ
(e) 周方向に回転することにより、これら両部材を一体に結合して、複数のスペーサ板を積み重ねて連結可能である一方、
(f) 前記スペーサ板本体の底面側には、略中心に枢支凹部が形成され、かつ、
(g) 当該スペーサ板本体の上面側には、略中心に枢支凸部が形成されており、
(h) 前記枢支凹部に他のスペーサ板の枢支凸部を合致させることによって、回転操作の軌道をガイドしていることを特徴とするプラスチック製スペーサ。」(判定請求書3頁15行~28行)
2 当審によるイ号物件の特定
(1)判定請求書におけるイ号物件の記載について
イ号図面及び説明書には、イ号物件について、次のように記載されている。(下線は当審で付与。以下同じ)
ア 「スラブとパネル板との隙間等を埋めるために設置するプラスチック製のスペーサ部材である。
スペーサ板1のスペーサ板本体11の上側面には、同一円周上に所定の角度配分をもって複数の係止突起12が設けられ、これらの係止突起12の間には、複数の切欠き19と、同一円周上に沿って同一方向に所定の角度配分をもって傾斜した複数の傾斜部15とが設けられている。
スペーサ板本体11の上面側には、略中心に枢支凸部13が設けられ、スペーサ板本体11の底面側には、略中心に枢支凹部14が設けられている。
当該スペーサ板1の枢支凸部13と他のスペーサ板の枢支凹部14とを合致し、且つ当該スペーサ板1の係止突起12と他のスペーサ板1の傾斜部15とを切欠き19を介して嵌合し、周方向に回転することにより、これら両部材とが一体に結合して、複数のスペーサ板1を積み重ねて連結可能となる。」(イ号図面及び説明書1頁4行~15行)
イ 上記アの記載、及び図1~3から、係止突起12の間には、同一円周上に沿って複数の弧形の係止凹部が形成され、係止凹部は半径方向にくぼんだ凹形状であり、それぞれの係止凹部には、半径方向へ深く凹んだ切欠き19と浅く凹んだ浅凹部があり、切欠き19と浅凹部の境界部に同一円周上に沿って同一方向に所定の角度配分をもって傾斜した傾斜部15が設けられているといえる。なお、各部材には、イ号図面における符号を引用している。以下同じ。
ウ 上記アの記載、及び図1~3から、各々の係止突起12を他のスペーサ板1の切欠き19に挿通して、周方向に回転することにより、係止突起12は傾斜部15を通過し、浅凹部に嵌合して、複数のスペーサ板1を積み重ねて連結可能であるといえる。
エ 上記ア、ウの記載、及び図1~3から、スペーサ板1の枢支凸部13と他のスペーサ板の枢支凹部14とを合致することにより、両スペーサ板1の嵌合のための回転操作の軌道をガイドしていることは明らかである。
(2)イ号物件の特定
上記(1)を総合して、イ号物件を上記本件特許発明の構成要件A~Iに対応させて整理すると、イ号物件は以下のとおり分説した構成を具備するものと認められる(構成ごとに記号a~iを付した。以下、分説した構成を「構成a」などという。)。
「a スラブとパネル板との隙間等を埋めるために設置するプラスチック製のスペーサ部材であって、
b スペーサ板1のスペーサ板本体11の上側面には、同一円周上に所定の角度配分をもって複数の係止突起12が設けられ、
c これらの係止突起12の間には、同一円周上に沿って複数の弧形の係止凹部が形成され、係止凹部は半径方向にくぼんだ凹形状であり、それぞれの係止凹部には、半径方向へ深く凹んだ切欠き19と浅く凹んだ浅凹部があり、切欠き19と浅凹部の境界部に同一円周上に沿って同一方向に所定の角度配分をもって傾斜した傾斜部15が設けられており、
d 各々の係止突起12を他のスペーサ板1の切欠き19に挿通して、
e 周方向に回転することにより、係止突起12は傾斜部15を通過し、浅凹部に嵌合して、複数のスペーサ板1を積み重ねて連結可能であり、
f スペーサ板本体11の底面側には、略中心に枢支凹部14が設けられ、
g スペーサ板本体11の上面側には、略中心に枢支凸部13が設けられており、
h スペーサ板1の枢支凸部13と他のスペーサ板1の枢支凹部14とを合致することにより、両スペーサ板1の嵌合のための回転操作の軌道をガイドしている、
i プラスチック製のスペーサ部材。」
第4 当事者の主張
1 請求人の主張
判定請求書において、請求人は、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しないとして、以下のように主張している。
「イ号発明では、係止突起により挿通される弧形の係止孔部を備えないのに対し、本件特許発明では、係止突起により挿通される弧形の係止孔部を必須要件として備える点で相違する。
本件特許発明では、複数のスペーサ部材を一体に結合するため、当該スペーサ板の係止突起を他のスペーサ板の弧形の係止孔部にそれぞれ挿通させた後に周方向に回転させ、バヨネット式に嵌合するべく、係止突起により挿通される弧形の係止孔部を必須要件としているが、イ号発明では係止突起と傾斜部とを切欠きを介して嵌合し、周方向に回転させることにより複数のスペーサ部材を一体に結合させるスペーサ部材であり、係止突起と傾斜部を嵌合することから係止突起により挿通される弧形の係止孔部を原理的に必要としない。
したがって、イ号は、少なくとも本件特許発明の構成要件C及びDを充足しない。
ゆえに、イ号は本件特許発明の技術的範囲に属さない。」
「本件明細書の明細書段落[0023]の記載、本件明細書の明細書段落[0031]における「本実施形態では、6箇所の係止孔部15を形成するとともに、この係止孔部は、長孔の端部に挿入部15aおよび其処から側方に狭幅に延成するスロット部15bを有しており、これらの係止孔部15における挿入部15aが設けられた端部の向きは揃っている(図1および図2参照)」との記載、「係止孔部」を示す全ての図面である図1~3、5、6、9及び10の記載を参酌すると、特許請求の範囲に記載の係止突起により挿通される弧形の係止孔部は、係止突起により挿し通される弧形の貫通された穴を示していることは明らかである。そもそもイ号には係止突起により挿し通される、孔、穴、窪み、凹み等はない。」
「・・・本件特許発明の係止突起により挿通される係止孔部は、「挿通」「孔」という文言を用いていることから、周囲が囲まれた構成であることを要すると解されるべきである(例えば、東京地判平成15年8月28日・平成14年(ワ)第1574号)。
また、出願時の技術常識を参酌すると、周囲が囲まれた構成である「孔部」と、周囲が囲まれた構成ではない「切欠き」及び「傾斜部」とは、区別して用いられていられるのが通常である(特開平10-205010等)。さらに、本件明細書の明細書段落[0049]及び図7には、周囲が囲まれた「孔部」と周囲が囲まれていない支持板本体の周縁に設けられた「切欠凹部」とを意識的に区別して用いている。
周囲が囲まれた構成ではない「切欠き」及び「傾斜部」は、係止突起により挿通される係止孔部には含まれない。イ号には、係止手段に係る弧形の穴はなく、そもそも係止突起により挿通される部分はない。」
(判定請求書3頁下から3行~4頁9行、5頁7行~15行、6頁8行~19行)
2 被請求人の主張
被請求人は、判定事件答弁書(以下「答弁書」という。)において、イ号物件は構成要件C、D及びEを充足するとして、以下のように主張している。
「(1)構成要件Cの充足性
イ号物件の構成要件cの「係止突起の挿入部と可動スペースとを有する孤形の切欠き孔」は、本件特許発明の構成要件Cの「係止孔部」に該当する。したがって、イ号物件の構成要件dは本件特許発明の構成要件Cを充足する。
(2)構成要件Dの充足性
イ号物件の構成要件dの「各々の係止突起を他のスペーサ板の切欠き孔の挿入部にそれぞれ挿通して」は、本件特許発明の構成要件Dの「各々の係止突起を他のスペーサ板の係止孔部にそれぞれ挿通して」に該当する。したがって、イ号物件の構成要件dは本件特許発明の構成要件Dを充足する。
(3)構成要件Eの充足性
イ号物件の構成要件eの「周方向に回転することにより前記係止突起を可動スペースに沿ってスライドさせてバヨネット式に嵌合させ」は、本件特許発明の構成要件Eの「周方向に回転することによりバヨネット式に嵌合させ」に該当する。したがって、イ号物件の構成要件eは本件特許発明の構成要件Eを充足する。」(答弁書4頁13行~5頁3行)
第5 属否の判断
イ号物件が、本件特許発明の構成要件を充足するか否かについて検討する。
1 構成要件A、Iについて
(1)イ号物件の構成a、iの「プラスチック製のスペーサ部材」は、本件特許発明の「プラスチック製のスペーサ部材」、「プラスチック製スペーサ」に相当するから、イ号物件の構成a、iと本件特許発明の構成要件A、Iは、それぞれ一致している。
(2)したがって、イ号物件の構成a、iは、それぞれ本件特許発明の構成要件A、Iを充足する。
2 構成要件Bについて
(1)イ号物件の構成bの「スペーサ板1」、「スペーサ板本体11」、「係止突起12」は、それぞれ本件特許発明の「スペーサ板1」、「スペーサ板本体11」、「係止突起12」に相当するから、イ号物件の構成bと本件特許発明の構成要件Bは一致している。
(2)したがって、イ号物件の構成bは、本件特許発明の構成要件Bを充足する。
3 構成要件Cについて
(1)イ号物件の構成cの「係止凹部」について、「孔」とは「くぼんだ所。または、向うまで突き抜けた所。」(広辞苑第三版)であるところ、上記「係止凹部」は、「スペーサ板本体11」の板面に対して垂直上側から見下ろした場合に、「向うまで突き抜けた所」ということができるから、「孔」の一種ということができる。
したがって、イ号物件の構成cの「弧形の係止凹部」は、本件特許発明の「弧形の係止孔部」に相当するから、イ号物件の構成cと本件特許発明の構成要件Cは一致している。
(2)よって、イ号物件の構成cは、本件特許発明の構成要件Cを充足する。
4 構成要件Dについて
(1)イ号物件の構成dの「切欠き19」は「係止凹部」の一部であり、イ号物件の「各々の係止突起12を他のスペーサ板1の切欠き19に挿通して」は、「各々の係止突起12を他のスペーサ板1の」「係止凹部」「に挿通して」ともいうことができるから、イ号物件の「各々の係止突起12を他のスペーサ板1の切欠き19に挿通して」は、本件特許発明の「前記各々の係止突起12・12…を他のスペーサ板1の係止孔部15・15…にそれぞれ挿通して」に相当する。したがって、イ号物件の構成dと本件特許発明の構成要件Dは一致している。
(2)よって、イ号物件の構成dは、本件特許発明の構成要件Dを充足する。
5 構成要件Eについて
(1)イ号物件におけるスペーサ板1同士の連結は、「(各々の係止突起12を他のスペーサ板1の切欠き19に挿通して)周方向に回転することにより、係止突起12は傾斜部15を通過し、浅凹部に嵌合」するものである。
そして、本件特許発明においてはバヨネット方式の嵌合に関して、「【0032】そして、前記各々の係止突起12・12…を他のスペーサ板1の係止孔部15・15…(挿入部15a・15a…)にそれぞれ挿通して、かつ、スロット部15bに沿って周方向に回転することによりバヨネット式に嵌合させ」(第2の2(3))と記載されており、イ号物件における「切欠き19」、「浅凹部」が、それぞれ本件特許発明の実施例の「挿入部15a」、「スロット部15b」と同様に機能していることは明らかであるから、イ号物件におけるスペーサ板1同士の連結は、バヨネット方式の嵌合であるといえる。
したがって、イ号物件の構成eの「周方向に回転することにより、係止突起12は傾斜部15を通過し、浅凹部に嵌合して、複数のスペーサ板1を積み重ねて連結可能であり」は、本件特許発明の「周方向に回転することによりバヨネット式に嵌合させ、これら両部材を一体に結合して、複数のスペーサ板1を積み重ねて連結可能である」に相当するから、イ号物件の構成eと本件特許発明の構成要件Eは一致している。
(2)よって、イ号物件の構成eは、本件特許発明の構成要件Eを充足する。
6 構成要件F、Gについて
(1)イ号物件の構成fの「スペーサ板本体11の底面側には、略中心に枢支凹部14が設けられ」、構成gの「スペーサ板本体11の上面側には、略中心に枢支凸部13が設けられており」は、それぞれ本件特許発明の「前記スペーサ板本体11の底面側には、略中心に枢支凹部14が形成され」、「当該スペーサ板本体11の上面側には、略中心に枢支凸部13が形成されており」に相当するから、イ号物件の構成f、gと本件特許発明の構成要件F、Gはそれぞれ一致している。
(2)したがって、イ号物件の構成f、gは、それぞれ本件特許発明の構成要件F、Gを充足する。
7 構成要件Hについて
(1)イ号物件の構成hの「スペーサ板1の枢支凸部13と他のスペーサ板1の枢支凹部14とを合致することにより、両スペーサ板1の嵌合のための回転操作の軌道をガイドしている」は、本件特許発明の「前記枢支凹部14に他のスペーサ板1の枢支凸部13を合致させることによって、バヨネット嵌合の回転操作の軌道をガイドしていること」に相当するから、イ号物件の構成hと本件特許発明の構成要件hは一致している。
(2)したがって、イ号物件の構成hは、それぞれ本件特許発明の構成要件Hを充足する。
第6 請求人の主張について
請求人は、「イ号発明では、係止突起により挿通される弧形の係止孔部を備えないのに対し、本件特許発明では、係止突起により挿通される弧形の係止孔部を必須要件として備える点で相違する。・・・本件明細書の明細書段落[0023]の記載、本件明細書の明細書段落[0031]における「本実施形態では、6箇所の係止孔部15を形成するとともに、この係止孔部は、長孔の端部に挿入部15aおよび其処から側方に狭幅に延成するスロット部15bを有しており、これらの係止孔部15における挿入部15aが設けられた端部の向きは揃っている(図1および図2参照)」との記載、「係止孔部」を示す全ての図面である図1~3、5、6、9及び10の記載を参酌すると、特許請求の範囲に記載の係止突起により挿通される弧形の係止孔部は、係止突起により挿し通される弧形の貫通された穴を示していることは明らかである。・・・また、出願時の技術常識を参酌すると、周囲が囲まれた構成である「孔部」と、周囲が囲まれた構成ではない「切欠き」及び「傾斜部」とは、区別して用いられていられるのが通常である(特開平10-205010等)。さらに、本件明細書の明細書段落[0049]及び図7には、周囲が囲まれた「孔部」と周囲が囲まれていない支持板本体の周縁に設けられた「切欠凹部」とを意識的に区別して用いている。」(第4の1参照)と主張する。
当該主張について検討すると、上記第5の3で説示したように、「孔」の用語の意味として、イ号物件の「係止凹部」の態様を排除するものではない。そして、本件特許発明の課題は「【0008】・・・軽量かつ製造が容易であり、しかも、簡単な操作で迅速かつ確実に連結することができて、様々な隙間サイズに対応させることができ、スラブと床板材との隙間を精度良く埋めて支持することができるプラスチック製スペーサを提供することにあ」り、その目的から見て、「係止孔部」は「係止突起」とバヨネット式に嵌合するものであれば足り、「係止孔部」を周囲が囲まれた孔に限定しなければならない理由はなく、本件明細書の他の記載を見ても、「係止孔部」を周囲が囲まれた孔に限定していることを示唆するような記載はない。したがって、本件特許発明の「係止孔部」の「孔」は通常の意味で用いられていると解することが自然である。
よって、請求人の主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明の全ての構成要件を充足するから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
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2018-600038