特許判定
2018-600002
静電気対策衣料
- 審判番号
- 2018-600002
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 判定
- 出願番号
- 特願2012-057762
- 登録番号
- 特許第6016392号(P6016392)
- 請求日
- 2018年01月18日
- 審決日
- 2018年05月22日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 判定(属しない)
- 当事者
- 【請求人】モリト 株式会社
- 【請求人代理人】岡本 昭二
- 【被請求人】東光商事 株式会社
- 【被請求人代理人】清水 義仁
- 【被請求人】東光リミー 株式会社
- 【被請求人代理人】清水 義仁
- 審判長/審判官
- 審判長 千壽 哲郎
- 審判官 門前 浩一
- 審判官 井上 茂夫
- 分類
- P12 .9 -ZA (A41D)
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6016392号の判定請求事件(1)について、次のとおり判定する。
結論
【結 論】
イ号図面並びにその説明書に示す「静電気対策衣料」は、特許第6016392号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しない。
理由
【理 由】
第1 請求の趣旨
本件判定の趣旨は、イ号図面並びにその説明書に示す「静電気対策衣料」(以下「イ号製品」という。)は、特許第6016392号の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。
第2 本件特許発明
1 手続の経緯
本件特許発明に係る特許出願は、平成24年3月14日に被請求人らによって出願され、平成28年10月7日にその特許権の設定登録がされ、同月26日に特許公報が発行されたものである。そして、平成30年1月18日に本件判定請求がされ、同年3月23日に被請求人らにより答弁書が提出されたものである。
2 本件特許発明について
本件特許発明は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。(なお、構成要件に分説し、符号(A)ないし(F)を付加した。)
「(A)生地裏面の布端に静電気防止部を備え、
(B)前記静電気防止部には、導電性を有する静電気防止布帛が設けられ、
(C)前記静電気防止布帛は、衣料の裏面の前記布端の縁部に配置された状態で、前記静電気防止布帛上から前記布端縁部が縫製されてなる解れ止めを有し、
(D)前記解れ止めが複数本の縫い糸からなるものであり、
(E)前記静電気防止布帛は、前記解れ止めとして前記布端をかがる両端の縫い糸で挟まれるように設けられることを特徴とする
(F)静電気対策衣料。」
第3 イ号製品について
1 イ号製品の特定
(1)請求人による特定
請求人は、別添した「イ号図面並びにその説明」に記載した以下のとおりイ号製品を特定すべきと主張する。
「(A’)生地裏面の布端に静電気防止部を備えている。
(B’)前記静電気防止部には、導電性を有する静電気防止布帛が設けられている。
(C’)前記静電気防止布帛は、衣料の裏面の前記布端の縁部に配置された状態で、前記静電気防止布帛上から前記布端縁部が縫製されてなる解れ止めを有している。
(D’)前記解れ止めは、上下2本のミシン糸からなるものである。
(E’)前記静電気防止布帛は、前記解れ止めとして前記布端をかがる前記ミシン糸でジグザグ縫いされ、しかも、布端から生地側(内側)にはみ出している。
(F’)静電気対策衣料である。」
(2)被請求人らによる特定
被請求人らは、上記構成(E’)について、次のように特定すべきと主張する。
「構成(E’)前記静電気防止布帛は、前記解れ止めとして前記布端をかがる前記ミシン糸でジグザグ縫いされ、その幅の片側半分が前記ジグザグ縫いの領域の内側に収まっているとともに、反対側の半分が前記ジグザグ縫いの領域から衣料の内側方向にはみ出して設けられている。」
(3)合議体による認定
当合議体は、「イ号図面並びにその説明書」の記載内容及び当事者の主張を踏まえて、次のような構成(a)ないし(f)を有する製品と認定した。
「(a)生地裏面の布端に静電気防止部を備えている。
(b)前記静電気防止部には、導電性を有する静電気防止布帛が設けられている。
(c)前記静電気防止布帛は、衣料の裏面の前記布端の縁部に配置された状態で、前記静電気防止布帛上から前記布端縁部が縫製されてなる解れ止めを有している。
(d)前記解れ止めは、上下2本のミシン糸からなるものである。
(e)前記静電気防止布帛は、前記解れ止めとして前記布端をかがる前記ミシン糸でジグザグ縫いされ、その幅の片側略半分が前記ジグザグ縫いの領域内に位置するとともに、反対側の略半分が前記ジグザグ縫いの領域から衣料の内側方向にはみ出して設けられている。
(f)静電気対策衣料である。」
2 合議体の認定の理由
請求人による構成(E’)の特定においては、衣料の内側方向にはみ出しているとの特定のみであって、衣料の外側方向の特定が不十分であるところ、その点の特定がなされた、被請求人らによる特定を基本的に採用した。ただし、衣服の内側方向にはみ出した領域が静電気防止布帛の幅の「半分」かどうかは不明であるので、「略半分」と認定した。
第4 対比・検討
1 イ号製品の構成(e)以外の構成の充足性について
ア 構成(a)について
構成(a)は、「生地裏面の布端に静電気防止部を備えている。」というものであるから、構成要件(A)の「生地裏面の布端に静電気防止部を備え、」を充足する。
イ 構成(b)について
構成(b)は、「前記静電気防止部には、導電性を有する静電気防止布帛が設けられている。」というものであるから、構成要件(B)の「前記静電気防止部には、導電性を有する静電気防止布帛が設けられ、」を充足する。
ウ 構成(c)について
構成(c)は、「前記静電気防止布帛は、衣料の裏面の前記布端の縁部に配置された状態で、前記静電気防止布帛上から前記布端縁部が縫製されてなる解れ止めを有している。」というものであるから、構成要件(C)の「前記静電気防止布帛は、衣料の裏面の前記布端の縁部に配置された状態で、前記静電気防止布帛上から前記布端縁部が縫製されてなる解れ止めを有し、」を充足する。
エ 構成(d)について
(ア)構成(d)は、「前記解れ止めは、上下2本のミシン糸からなるものである。」というものである。ジグザグ縫いを含む通常のミシンによる縫製においては、上方から供給される針糸が布を貫通した後、下方に位置する針釜に納められたボビンの糸と交錯することで縫製されることは、技術常識であって、構成(d)は、これら2種類の2本の糸からなる構成である。
(イ)2種類の糸は、「複数本の糸」に内包されるものであり、構成(d)は、構成要件(D)「前記解れ止めが複数本の縫い糸からなるものであり、」を充足するものといえる。
オ 構成(f)について
構成(f)は、「静電気対策衣料である。」というものであるから、構成要件(F)「静電気対策衣料。」を充足する。
2 イ号製品の構成(e)の充足性について
(1)争点について
両者の主張からみて、構成(e)の充足性に関して、次の2つの争点があると解される。
ア 争点1
本件特許発明の構成要件(E)における「前記解れ止めとして前記布端をかがる両端の縫い糸」がイ号製品において観念できるか否か。
(ア)請求人は、イ号製品においては、ジグザグ縫いされているから、本件特許発明の実施例におけるオーバーロック縫いされたものに類する両端の縫い糸が存在せず、「布端をかがる両端の縫い糸」を観念することができない、と主張する。
(イ)これに対して、被請求人らは、「「布端をかがる両端の縫い糸」とは、上述の発明の詳細な説明の記載等を参酌すれば、解れ止めが形成された一定幅を有する領域の両側の境界線部分に位置する糸ないし糸の部分を指すと解される。」と主張し、「ジグザグ縫いにおいて一定幅を有する領域の両側の境界線部分に位置するのは、ジグザグの屈曲部分であり、この屈曲部に位置する糸の部分が、本件特許における「布端をかがる両端の縫い糸」に相当する」と主張する。
イ 争点2
イ号製品において、静電気防止布帛が両端の縫い糸に挟まれているということができるか否か。
(ア)請求人は、イ号製品では、静電気防止布帛は、両端の縫い糸の間から生地側にはみ出して位置しているから、「挟まれて」おらず、構成要件Eを充足しないと主張する。
(イ)これに対して、被請求人らは、イ号製品の解れ止めはジグザグ縫いで構成されており、静電気防止布帛の片側半分がジグザグ縫いの領域の内側に収まっており、上記片側半分は、上記両側の縫い糸に挟まれていると主張する。
(2)争点2についての検討
事案にかんがみ、まず争点2について判断する。
ア 構成要件(E)について
構成要件(E)は、「前記静電気防止布帛は、前記解れ止めとして前記布端をかがる両端の縫い糸で挟まれるように設けられることを特徴とする」であって、本件特許明細書の段落【0032】、【0033】、【0053】の記載からみて、「布端をかがる両端の縫い糸で挟まれるように設けられる」とは、静電気防止布帛が全てジグザグ縫い領域内に設けられることを要件とするものと解される。これに対し、構成(e)によれば、静電気防止布帛の略半分はジグザグ縫いの領域内からはみ出しているのであるから、「両端の縫い糸で挟まれるように設けられている」と認めることはできない。
イ 小括
そうすると、上記(1)の争点1について判断するまでもなく、構成(e)は、構成要件(E)を充足しない。
第5 むすび
以上のとおり、イ号製品は、本件特許発明の構成要件を充足しないから、イ号製品は、本件発明の技術的範囲に属しない。なお、いずれの当事者からも、均等論の主張はなされていないので、均等論による充足性については検討しない。
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