特許拒絶査定不服審判
2018-016031
炭素イオン注入のためのドーパント組成物の貯蔵及び準大気圧送達
- 審判番号
- 2018-016031
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-549788
- 請求日
- 2018年12月03日
- 審決日
- 2019年08月19日
- 公報発行日
- 2020年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人浅村特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 瀬川 勝久
- 審判官 松川 直樹
- 審判官 近藤 幸浩
- 分類
- P18 .121-Z (H01J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-549788号「炭素イオン注入のためのドーパント組成物の貯蔵及び準大気圧送達」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月26日国際公開、WO2014/100621号、平成28年 4月14日国内公表、特表2016-511504号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)12月20日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2012年12月21日、及び、2013年5月8日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年8月23日付けで拒絶理由が通知され、平成30年2月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年7月30日付けで拒絶査定がなされ(発送 同年8月2日)、それに対して、同年12月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成30年12月3日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)
「ドーパント・ガス混合物用の単一供給源であって、
希釈ガス混合物と所定の濃度で予混合された1種又は複数の炭素含有ドーパント源ガスであって、前記1種又は複数の炭素含有源が少なくともCOを含み、前記希釈ガス混合物が不活性ガス及び水素含有ガスを含む、1種又は複数の炭素含有ドーパント源ガスと、
準大気圧送達及び貯蔵デバイスであって、その内部容積内に加圧状態で前記ドーパント・ガス混合物を維持するための準大気圧送達及び貯蔵デバイスと
を有し、
前記送達デバイスが排出流路と流体連通し、また前記送達デバイスが、前記排出流路に沿って達成される準大気圧条件に応答して、前記デバイスの内部容積からの前記ドーパント組成物の制御された流れを可能にするように作動する、ドーパント・ガス混合物用の単一供給源。」
(なお、平成30年12月3日になされた手続補正は、請求人提出の平成30年3月1日付け上申書で希望していた、請求項11において「実質的な」を削除し、請求項12において「約」を削除(4ケ所)する補正にあわせて、請求項15において「約」を削除(4ケ所)し、請求項18において「約」を削除(2ケ所)し、請求項19において「約」を削除(2ケ所)するものであって、請求項1については補正はなされていない。)
3 刊行物の記載
(1)引用文献1及び引用発明
ア 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の最先の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた国際公開第2012/067652号(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(訳は、引用文献1のファミリー文献である特表2013-543245号公報に基づいて当審で作成した。また、下線は当審にて付した。)。
(ア)「A system, apparatus and method for increasing ion source lifetime in an ion implanter are provided. Oxidation of the ion source and ion source chamber poisoning resulting from a carbon and oxygen-containing source gas is controlled by utilizing a hydrogen co-gas, which reacts with free oxygen atoms to form hydroxide and water.」(要約)
(訳:イオン注入装置でのイオン源の寿命を増加させるためのシステム、装置及び方法を提供するものである。自由酸素原子と反応し、水酸化物及び水を生成する水素補助ガスを利用することで、炭素及び酸素含有ソースガスにより発生するイオン源の酸化及びイオン源チャンバへの汚染を制御する。)
(イ)「Ion sources in ion implanters typically generate an ion beam by ionizing within a source chamber a source gas, a component of which can be a desired dopant element, and extracting the ionized source gas in the form of an ion beam. The ionization process is effected by an exciter which may take the form of a thermally heated filament, a filament heating a cathode (indirectly heated cathode IHC), or a radio frequency (RF) antenna.
Examples of desired dopant elements of which the source gas is comprised can include carbon, oxygen, boron, germanium, silicon, amongst others. Of increasing interest is the use of carbon, which can be utilized in many implant steps, for example, material modification. The most common precursor source gases for carbon implants include carbon dioxide and carbon monoxide.」(2頁14~24行)
(訳:イオン注入装置内のイオン源は、通常イオンビームを生成する。その生成方法は、ソースチャンバ内のソースガス、所望のドーパント要素と成り得る成分をイオン化し、イオンビームの形で、イオン化されたソースガスを抽出することである。イオン化工程は、励振器によって行われる。この励振器は、熱されたフィラメント、カソード(間接的に熱せられるカソード“IHC”)を熱するフィラメント、または高周波(RF)アンテナの形を成している。
ソースガスを構成する好ましいドーパント元素の例としては、とりわけ、炭素、酸素、ホウ素、ゲルマニウム、シリコンが含まれる。関心が高まっているのは、多くの注入段階、たとえば物質変化で利用される炭素の使用である。カーボン注入に対するもっとも一般的な前駆体は、二酸化炭素及び一酸化炭素を含んでいる。)
(ウ)「The system 200 includes an ion source assembly 202 for producing an ion beam 204 along a beam path. The ion beam assembly 202 includes, for example, an ion source chamber 206 with an associated power source 208. The ion source chamber 206 may, for example, comprise a relatively long plasma confinement chamber from which an ion beam is extracted and accelerated. An extraction electrode 207 is positioned for extraction of an ion beam from the ion source chamber 206.」(4頁29行~5頁4行)
(訳:上記システム200は、ビームの軌道に沿ってイオンビーム204を発するために、イオン源アセンブリ202を備えている。イオンビームアセンブリ202は、例えば、付随する電源208とともにイオン源チャンバ206を備えている。イオン源チャンバ206は、例えば、比較的ライフタイムが長いプラズマを閉じ込めるチャンバを備えている。このチャンバからイオンビームが抽出され加速される。引き出し電極207は、イオン源チャンバ206からイオンビームを抽出するために配置されている。)
(エ)「Figures 2B-2C illustrate alternative embodiments of the invention. Where the source gas 216 and co-gas 220 were obtained from separate supplies and mixed in inlet 224 prior to entry into the ion source chamber 206 in the previous embodiment, it is also contemplated that the source gas 216 and co-gas 220 may be obtained as a pre-mixed product and supplied to the ion source chamber 206 in one product, as illustrated in Fig. 2B. Here, a mixture 226 of source gas and co-gas are supplied in a single source with an associated gas flow meter 228 which controls the rate and flow of mixture 226 into the ion source chamber 206. Single source 226 enters ion source chamber 206 through inlet 224.」(6頁20~28行)
(訳:図2Bから2Cは、本発明の別の実施形態を示している。前述の実施形態では、ソースガス216及び補助ガス220は、分離された供給部から得られ、イオン源チャンバ206へ注入される前に注入口224にて混合される。図2Bに示すように、ソースガス216及び補助ガス220が事前に混合され、1つのガスとしてイオン源チャンバ206へ供給されてもよい。ここで、ソースガスと補助ガスとの混合ガス226は1つの供給源に供給され、関連するガス流量メーター228を使って、イオン源チャンバ206へ注入される混合ガス226の割合と流れとが制御される。単一ソース226は、注入口224を通ってイオン源チャンバ206へ入る。)
(オ)「In Fig. 5 there is a graphical representation of the actual beam currents obtained from the various ratios of co-gas, both for carbon 12 and for the other peaks of interest. Also shown in this figure is the transmission for the carbon beam current (defined as beam current divided by the difference of extraction minus suppression currents) as a function of the amount of carbon in the gas mixture by flow. Using beam tuning with no co-gas as a baseline, it is seen that increasing hydrogen flow improves the reducing reactions between hydrogen and oxygen as all other peak (O and CO) intensities are reduced. While the transmission continues to climb with increased hydrogen, the carbon beam current remains almost constant across the different flows of hydrogen until it begins to degrade at 3 seem indicating the introduction of too much co-gas. In this particular case the optimal ratio appears to be a 3:2 seem flow setting as the beam current is basically constant between 1 and 3sccm of H2 flow. This setting minimized the oxidation of the cathode, repeller and other internal chamber components. By reacting out the oxygen with the co-gas the arc chamber life was dramatically increased, with the added benefit of stable beam current throughout the life of the source.」(7頁11~27行)
(訳:図5には、様々な割合の補助ガスから得られた、炭素12及びその他の興味あるピークの両方に関する、実際のビーム電流のグラフが示されている。さらにこの図で示されているものは、流れの中で混合されたガス中の炭素量の関数としての、炭素ビーム電流の伝送(抽出電流と抑制電流との差によってビーム電流を割ることにより定義されている)である。基準として補助ガスなしに設定したビームを使うと、水素流量を増加させることにより、水素と酸素との間の還元反応が促進され、他の全てのピーク(酸素及び一酸化炭素)強度が減っていくことが分かる。上記伝送が、水素の増加とともに増え続ける間、炭素ビーム電流は、水素の流量を異ならせても、過度の補助ガスの注入を示す3sccmにおいて減少し始めるまで、ほとんど一定である。この特定の場合では、水素流量が1から3sccmの間で基本的に一定であるとき、最適の比率は流量比3:2sccmの設定であることが分かる。この設定は、カソード、リペラ及び他の内部のチャンバ部品の酸化を最小限にした。酸素を補助ガスと反応させることで、上記ソースのライフ全体を通して、安定的なビーム電流が得られるというもう1つの利益と共に、アークチャンバの寿命は劇的に増加された。)
(カ)図2Bは次のものである。
【図2B】
(訳:
)
イ 引用発明
上記アによれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「イオン注入装置でのイオン源の寿命を増加させるため、水素補助ガスを利用することで、炭素及び酸素含有ソースガスにより発生するイオン源の酸化及びイオン源チャンバへの汚染を制御するシステムであって(上記「ア」「(ア)」)、
前記イオン注入装置内のイオン源は、ソースチャンバ内のソースガス、所望のドーパント要素と成り得る成分をイオン化し、イオンビームの形で、イオン化されたソースガスを抽出することでイオンビームを生成するものであり、また、前記ソースガスはドーパント元素である炭素の前駆体として二酸化炭素及び一酸化炭素を含んでいて(上記「ア」「(イ)」)、
前記ドーパント元素として、炭素、酸素、ホウ素、ゲルマニウム、シリコンが含まれてよく(上記「ア」「(イ)」)、
前記システムはイオンビームを発するためのイオン源アセンブリを備え、前記イオン源アセンブリはイオン源チャンバを備え、前記イオン源チャンバは比較的ライフタイムが長いプラズマを閉じ込めるチャンバを備え、前記チャンバからイオンビームが抽出されて加速され(上記「ア」「(ウ)」)、
前記ソースガス及び前記水素補助ガスは予め混合ガスとして事前に混合させておいてもよく、1つのガスとして前記イオン源チャンバへ供給され(上記「ア」「(エ)」及び「(キ)」)、
関連するガス流量メーターを使って、イオン源チャンバへ注入される前記混合ガスの割合と流れとが制御される(上記「ア」「(エ)」)、
システム。」
(2)引用文献2及び引用文献2に記載された事項
ア 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の最先の優先日前に頒布された米国特許出願公開第2011/0021011号明細書(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある(訳は、当審で作成した。また、下線は当審にて付した。)。
(ア)「[0017] The present disclosure also contemplates the simultaneous flowing of CwFxOyHz material(s) with oxygen or an oxygen-containing gas such as air to modify or control the ratios of C, F, O, and H, thereby further modifying or controlling the amount of carbon ions implanted and optimizing the trade-off between carbon ions implanted and oxide formation. In particular, the CwFxOyHz can be co-flowed with COF2, CO2, CO, or any other oxygen-containing gas. Without being bound by theory, it is contemplated that the co-flowing of COF2 or similar gases balances the deposition of the carbon ion with the coating of the arc chamber and etching.」
(訳:今回公開する技術は、C、F、O及びHの比率を変更または制御した空気のような、酸素または酸素含有ガスとCwFxOyHz物質を同時に流すことにより、さらに、流入する炭素イオンの量を変更または制御するとともに、炭素イオンの流入と酸化物形成の間のトレードオフを最適化することを考慮している。特に、当該CwFxOyHzは、COF2,CO2,CO,あるいは他のいかなる酸素を含むガスと一緒に流すことができる。理論に捕らわれること無く、COF2あるいは類似のガスを一緒に流すことで、炭素イオンの堆積によるアークチャンバへのコーティングとエッチングとの間のバランスを取ることを考慮している。)
(イ)「[0018] The present disclosure additionally contemplates the simultaneous flowing of CwFxOyHz material(s) with gases such as fluorine and hydrogen or dilution with inert gases such as nitrogen, argon, xenon, helium, combinations of the foregoing, and the like. The use of inert gases helps to sustain a plasma when flowing dopant gases.」
(訳:今回公開する技術は、加えて、フッ素や水素のようなガス、ないしは、窒素、アルゴン、キセノン、ヘリウムのような不活性ガスで希釈した、あるいはそれらの組み合わせとCwFxOyHz物質を同時に流すことを考慮している。不活性ガスを用いることはドーパントガスを流すときにプラズマを維持することの助けになる。)
イ 引用文献2に記載された事項
上記アによれば、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されているものと認められる。
「ドーパントガスとして、酸素または酸素含有ガスとCwFxOyHz物質、COF2,CO2,CO,あるいは他のいかなる酸素を含むガスを用いて、炭素を炭素イオン化するに際して、不活性ガスを同時に流すと、ドーパントガスを流すときにプラズマを維持する助けになること。」
(3)引用文献3及び引用文献3に記載された事項
ア 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の最先の優先日前に頒布された特表2006-515920(以下「引用文献3」という。)には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)。
(ア)「本発明は、加圧された容器(1)の出口からの加圧された流体の排出を制御する装置を指向し、特に流体あるいはガスを容器に貯蔵し、そこからの流体あるいはガスの流量を制御するための、前記容器(1)内におけるマルチ流体分配逆止弁装置(7,10)に指向される。」(【要約】)
(イ)「【背景技術】
【0002】
準大気圧状態において有毒な、可燃性の、腐食性ガスを扱う安全で、かつ効果的な方法を提供することが当該産業分野における目標であった。特に、これらのガスはドーパントガスを含む。一般に、ドーパントガスは特定のガスの特性に応じて所定の圧力、すなわち特定の圧力における個々のガスの蒸気圧と等しい圧力で圧縮ガスボンベに貯蔵される。前記ガスは半導体素子を製造するためのドーパント材料源として供される。これらのドーパントガスはイオン注入器と称される器具において使用される。イオン注入器は、半導体製造工程において数百人あるいは更には数千人もの人さえも従事している半導体製造施設の製造領域内に位置されるものである。これらの器具は、典型的には数千キロボルトまでの極めて高い電圧において作動する。このような高電圧のために、ドーパント供給源ガスは前記器具自体に、あるいはその内部に位置させておく必要がある(殆どのその他の半導体用器具では供給ガスを人間あるいは主要製造領域の外に位置させている)。イオン注入器の明白な一つの特徴はそれらが準大気圧で作動することである。ボンベから中味(製品)を送給するために前記器具に存在している真空を利用するということは真空が適用されるまでは前記中味はボンベパッケージから取り出すことができないという点で安全な包装(パッケージ)を創り出している。このような真空による送給という考え方によって加圧されたガスに偶発的に曝されることがないようにする。
【0003】
現在、ドーパントガスを準大気圧で送給することに関わる問題を解決するために四つの明白な方法があると考えられている。第一の方法は、圧縮ガスボンベに(例えば、ビーズ状の活性炭のような)物理的な吸着材料を充填し、ドーパントガスを前記材料に可逆吸着させることを含む。この概念は一般に、SDSTM 技法として知られている。脱着工程は吸着材料/ボンベに真空あるいは熱を付与することを含む。実際には、イオン注入器からの真空が固相吸着剤からのガスを脱着するために使用される。SDSTM 技法に対する問題にはある限度が付随しており、それらは、1)吸着剤の装填能力に限度があり、それによって所定サイズのボンベにおいて利用しうる中味(製品)の量に限度があること、2)脱着工程はボンベパッケージを熱に露出することにより開始することができるので、そのために、多くのボンベの格納箇所において一般的である27.2℃(70°F)以上の温度にボンベが露出されると、大気圧や超大気圧にボンベが到達し、大気圧や超大気圧においてガスを送給するようにさせること、3)吸着剤の上に他の材料/ガスを吸着/脱着させるためボンベから送給されるガスの純度について譲歩する可能性があること、4)吸着剤の摩損によってガス送給系において粒子による汚染をもたらしうることを含む。
【0004】
ドーパントガスの準大気圧での送給に関わる問題を解決する第二の方法は、中味を準大気圧で送給するために機械的な逆止弁を使用することを含む。この装置は当該装置に準大気圧すなわち真空状態が付与されると開放するように構成されている。本装置は従来のオン/オフ式ボンベ弁座機構の上流側に位置される。この装置の上流側での正確な位置は弁体内、ボンベの首部の空洞部内、ボンベ自体の内部、あるいはそれら3箇所全ての組み合わせのところでよい。各々の場合において、本装置はボンベの内部から送給ポートまでのガスの流れに対してボンベ弁の弁座の上流側に位置される。
【0005】
米国特許第5,937,895号は加圧されたボンベあるいはタンクからの流体の危険な排出を阻止するために事実上故障のない安全な装置を提供するように真空作動の分配逆止弁および流量制限装置の形態の逆止弁を開示している。米国特許第6,045,115号は逆止弁による万一の故障の際に圧縮されたガスボンベからの有毒ガスの排出を最小にする毛細管サイズの開口を提供する流量制限装置を開示している。これらの開示の双方とも弁を通るガスの流れに対して弁座の上流側に位置する準大気圧送給装置を提供するものである。これらの開示は最大入口圧(すなわち、ボンベ貯蔵圧)に関して顕著な制限を有する装置を提供するものと考えられる。この圧力は約42kg/cm2(600psig)か、あるいはそれ以下でなければならない。
【0006】
ドーパントガスの準大気圧送給に関連する問題を解決する第三の方法は準大気圧状態で中味を送給するのに1個の調整器(あるいは複数の調整器)を使用することを含む。前記調整器は特定の準大気圧で中味を送給するようプリセットされている。前記調整器はボンベのオン/オフ弁の座の上流側に位置され、ボンベの首部の空洞部に、あるいはボンベ自体の内部に位置させることができる。米国特許第6,089,027号および同第6,101,816号の双方とも、所望圧力でガスを保持する容器を含む、流体貯蔵および分配装置に関わるものである。前記容器は圧力調整器、例えば該容器のポートに関連し、所定の圧力にセットされている単段あるいは多段調整器を有している。例えば、弁のような流量制御手段を含む分配組立体が前記調整器とガス/蒸気の流れとの連通関係で配置されており、それによって弁が開放すると容器からガス/蒸気を分配する。前記容器内の流体は、存在する温度状態、例えば環境温度(室温)において液化圧を超える圧力で容器に閉鎖された液体によって構成しうる。特に、前記米国特許第6,089,027号は弁制御手段の上流側における多段調整器を開示している。
【0007】
前記の特許は、ボンベの内部から送給ポートまでのガスの流れに対して、弁座の上流側に調整装置を位置させることを開示している。しかしながら、調整装置は弁体内、ボンベの首部の空洞部内、ボンベ自体の内部、あるいはこれら三位置全ての組み合わせに位置させることができる。
【0008】
ドーパントガスの準大気圧送給に関連する問題を解決するための第四の方法はボンベのオン/オフ弁の下流側に位置した単一の調整器を使用することを含み、前記調整器は弁体内に位置され、中味を準大気圧で制御/送給するように設計されている。米国特許第6,314,986号は、一次モジュールと、該一次モジュールに装着された二次モジュールとからなる、圧縮ガスボンベに使用するモジュール式ガス制御装置を開示している。この特許は、主ボンベ閉止弁の下流側に位置した単一の調整器の使用を開示している。前記調整器は弁体内に位置され、準大気圧から超大気圧までの所望の出口圧力を送給するように調整可能である。閉止弁はその内部機構と座機構とを前記調整器の上流側に位置させている。単一の調整器が開示されている。この方法に関連したある潜在的な問題がある。例えば、調整器の故障が発生した場合には高度の漏洩量と圧力上昇の可能性があることである。また、単一の調整器では大きな範囲の入口圧力範囲に亘って流量を制御するのが困難でありうる。」
(ウ)「【0012】
本発明の更に別の目的は、特殊な毛管の流量制限能力により加圧されたガスが大気に露出されないように更に大きな保護を加圧されたガスボンベに対して提供することである。」
(エ)「【実施例】
【0018】
本発明は送給系内のマルチ逆止弁分配装置に関するものである。前記系は、第一の分配装置が流量制御要素(例えば、ボンベの弁)の上流側に位置している真空送給系であることが好ましい。前記第一の分配装置は、一旦起動すると、ボンベの内部からガスを送給できるようにする。
【0019】
本発明の重要な局面は、ボンベの弁の下流側に位置し、弁本体の内部に配置された第二の分配逆止弁装置を使用していることである。この第二の分配装置は準大気圧状態で開放(すなわち、ガスを送給)するように設計されている(すなわち、分配装置に対する入口は分配装置の出口での圧力よりも大きな圧力にあり、好ましくは入口での圧力は大気圧か、あるいはそれを上回り、一方分配装置の出口は準大気圧にある)。当然ながら、分配装置は真空送給に限定されるものでない。2個の分配装置は、ボンベ内からのガスを、準大気圧、大気圧、およびボンベの最大貯蔵圧力に至るまでの超大気圧を含むいずれかの下流側圧力範囲において送給するように構成することができる。
【0020】
前記第二の分配装置は、ボンベの弁が開放しているときのみボンベの圧力を受けるような位置に置かれており、それによりボンベ内からのガスに対する分配装置の露出を制限する。別の利点は従来のボンベの開口内に装嵌するに十分小さいものであることである。分配装置は任意に、ボンベの外側(例えば、顧客の使用ポート)に位置させ、本分配装置を調整可能(すなわち、作動範囲を調整可能)とすることが可能である。分配装置の位置は、該装置の一方がボンベの弁の上流側に位置され、一方第二の装置がボンベの弁の下流側に位置されるようなものであって、その結果本発明の有利な実施例が提供される。詳しくは、ボンベの弁の下流側における第二の分配装置の位置は、該分配装置が永続的に装着されているか、あるいはボンベの弁自体の実際に一部であるという点においてボンベの弁と一体である。
【0021】
本明細書で説明しているマルチ分配系は毛管作用による流量制限組立体と関連して提供されることが好ましい。前記制限組立体は、いずれかの機械的装置の故障の場合にボンベからのガスの流量を制限するように設計されている。この組立体は1)第一の分配装置とボンベの弁との間、あるいは2)第一の分配装置の上流側に位置することが好ましい。当該技術分野の専門家には、制限組立体の正確な位置は特定の用途に応じて決まることが認識される。
【0022】
図1は準大気圧送給という目的を達成する、本発明の実施例を示す。少なくとも1個の分配装置7が閉止弁3(あるいはボンベの弁11)の上流側に配置され、1個の分配装置10が前記弁3の下流側に配置されている。この配置によって、ボンベの弁が空気に露出されないようにし、より大きなパッケージング(packaging)能力を可能とし、かつ毛管作用を利用して流体の流量を低いプリセット流量に制限するシステムを提供する。
【0023】
図1に示すように、従来のものより大きなポート本体4、あるいは通常のものより僅かに大きな弁体を備えたマルチ分配真空送給弁組立体2が提供される。ボンベの弁11は弁体の内部で、かつ第一の分配装置7の下流側に位置されている。毛管組立体9が分配装置7とボンベの弁11との間に配置されている。
【0024】
マルチ真空送給弁組立体2を備えた圧縮ガスボンベ1の流体貯蔵および分配システムが示されている。圧縮ガスボンベは所定の圧力あるいは所定の中味の重量まで所望する流体13(すなわち、特にドーパントガス)で充填される。
【0025】
一般に、本発明による真空送給弁組立体が多数のガス状製品に対して適用可能である。以下の表1は、限定的でないが、本発明において考えられる流体を含んでいる。その他の流体、特にその他の不活性ガス、可燃性ガス、有毒ガス、あるいは半導体のプロセスガスを含む流体も本発明の範囲内である。
【0026】
ボンベのガス充填、調質および中味の検査は(図示していないが、図1を参照すれば、弁体の背後に位置している)二次充填ポートを介して行われる。充填ポートは弁機構5および別個の充填ポート6を介して開閉される。顧客の使用ポート4は手動の閉止弁3を介して開閉される。」
(オ)図1及び2は次のものである。
【図1】
イ 引用文献3に記載された事項
上記アによれば、引用文献3には、次の事項(以下「引用文献3に記載された事項」という。)が記載されているものと認められる。
「半導体素子を製造するためのイオン注入器において使用されるドーパント材料源として供されるドーパントガスにおいて、有毒な、可燃性の、腐食性ガスを扱う際に安全で、かつ効果的な方法を提供するために(上記「ア」「(イ)」「【0002】」)、ドーパントガスの準大気圧での送給に関わる問題を解決する、中味を準大気圧で送給するために機械的な逆止弁(上記「ア」「(イ)」「【0004】」)、1個あるいは複数の調整器(上記「ア」「(イ)」「【0006】」)、ないしは、ボンベのオン/オフ弁の下流側に位置した単一の調整器を使用し(上記「ア」「(イ)」「【0008】」)、
圧縮ガスボンベは所定の圧力まで所望する流体(ドーパントガス)で充填され(上記「ア」「(エ)」「【0024】」)、前記流体は不活性ガス、可燃性ガス、有毒ガス、あるいは半導体のプロセスガスであって(上記「ア」「(エ)」「【0025】」)、ボンベのガス充填、調質および中味の検査は二次充填ポートを介して行われる(上記「ア」「(エ)」「【0026】」)、
流体あるいはガスを容器に貯蔵し、そこからの流体あるいはガスの流量を制御するための、加圧された容器の出口からの加圧された流体の排出を制御する装置(上記「ア」「(ア)」「【0002】」)。」
4 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明は、「ソースガスはドーパント元素である炭素の前駆体として二酸化炭素及び一酸化炭素を含んでいて」、「前記ソースガス及び前記水素補助ガスは予め混合ガスとして事前に混合させておいてもよく、1つのガスとして前記イオン源チャンバへ供給され」る「システム」であるから、ドーパント用のソースガスと水素補助ガスの混合用の単一の供給源であるといえる。
したがって、引用発明の、「ソースガスはドーパント元素である炭素の前駆体として二酸化炭素及び一酸化炭素を含んでいて」、「前記ソースガス及び前記水素補助ガスは予め混合ガスとして事前に混合させておいてもよく、1つのガスとして前記イオン源チャンバへ供給され」る「システム」が備えるドーパント用のソースガスと水素補助ガスを混合する供給源は、本願発明の「ドーパント・ガス混合物用の単一供給源」に相当する。
イ 引用発明の「ソースガス」は、「ドーパント元素である炭素の前駆体として二酸化炭素及び一酸化炭素を含んでい」るから、引用発明の「ソースガス」は、炭素含有源として一酸化炭素(CO)を含む炭素含有ドーパント源ガスであるといえる。
また、引用発明の「イオン源チャンバへ供給され」る「混合ガス」は、「前記ソースガス及び前記水素補助ガス」が「予め混合ガスとして事前に混合させておいてもよ」いものであるから、水素補助ガスと予混合された炭素含有ドーパント源ガスであって、前記ガス混合物が水素ガスを含む炭素含有ドーパント源ガスであるといえる。
さらに、「混合」されたソースガスと水素補助ガスにおけるソースガスが「所定の濃度」で混合されていることは当然の事項にすぎない。
そうすると、引用発明の炭素含有ドーパント源ガスは、一酸化炭素(CO)を含むガスであるソースガスと水素ガス(水素補助ガス)とが予混合されたものであるといえる。
したがって、引用発明の「水素ガス(水素補助ガス)」は、本願発明の「希釈ガス」に相当し、引用発明の「前記ソースガス及び前記水素補助ガス」が「予め混合ガスとして事前に(所定の濃度で)混合させておい」た炭素含有ドーパント源ガスは、本願発明の「希釈ガスと所定の濃度で予混合された1種の炭素含有ドーパント源ガス」に相当し、引用発明の炭素含有源として一酸化炭素(CO)を含む炭素含有ドーパント源ガスである「ソースガス」は、本願発明の「1種の炭素含有源が少なくともCOを含」む「1種の炭素含有ドーパント源ガス」に相当する。
そして、引用発明の「水素ガス(水素補助ガス)」は、本願発明の「不活性ガス及び水素含有ガスを含む」「希釈ガス」と、「水素ガスを含む」点で一致する。
以上の検討によれば、引用発明の「ソースガス」が、「ドーパント元素である炭素の前駆体として二酸化炭素及び一酸化炭素を含んでい」て、「前記ソースガス及び前記水素補助ガス」が「水素補助ガスと予め混合ガスとして事前に混合させておいてもよ」い「イオン源チャンバへ供給され」る「混合ガス」は、本願発明の「希釈ガス混合物と所定の濃度で予混合された1種又は複数の炭素含有ドーパント源ガスであって、前記1種又は複数の炭素含有源が少なくともCOを含み、前記希釈ガス混合物が不活性ガス及び水素含有ガスを含む、1種又は複数の炭素含有ドーパント源ガス」と、「希釈ガスと所定の濃度で混合された1種の炭素含有ドーパント源ガスであって、前記1種の炭素含有源が少なくともCOを含み、前記希釈ガスが水素ガスである、1種の炭素含有ドーパント源ガス」の点で一致する。
ウ 上記ア及びイによれば、本願発明と引用発明は、
「ドーパント・ガス混合物用の単一供給源であって
希釈ガスと所定の濃度で混合された1種の炭素含有ドーパント源ガスであって、前記1種の炭素含有源が少なくともCOを含み、前記希釈ガスが水素ガスである、1種の炭素含有ドーパント源ガスである、
ドーパント・ガス混合物用の単一供給源。」
である点で一致し、下記の点で相違する。
(ア)相違点1
希釈ガスが、本願発明は「不活性ガス及び水素含有ガス」を含む「希釈ガス混合物」であるのに対して、引用発明は「水素ガス」と特定されるにとどまる点。
(ウ)相違点2
本願発明は、「その内部容積内に加圧状態で前記ドーパント・ガス混合物を維持するための準大気圧送達及び貯蔵デバイス」を有し、「前記送達デバイスが排出流路と流体連通し、また前記送達デバイスが、前記排出流路に沿って達成される準大気圧条件に応答して、前記デバイスの内部容積からの前記ドーパント組成物の制御された流れを可能にするように作動する」のに対して、引用発明は、関連するガス流量メーターを使って、イオン源チャンバへ注入される前記混合ガスの割合と流れとが制御されるものの、このような「準大気圧送達及び貯蔵デバイス」を有すると特定されない点。
(2)判断
ア 相違点2について検討する。
引用発明の「ソースガス及び水素補助ガス」は一酸化炭素を含んでいるところ、一酸化炭素が有毒な可燃性のガスであることは本願出願当時の技術常識であって、有毒な可燃性のガスである一酸化炭素をより安全に取り扱うことが求められていることも本願出願当時の技術常識である。
これに対して、引用文献3には、引用文献3に記載された事項が記載されていて、「半導体素子を製造するためのイオン注入器において使用されるドーパント材料源として供されるドーパントガスにおいて、有毒な、可燃性の、腐食性ガスを扱う際に安全で、かつ効果的な方法を提供するために、」圧縮ガスボンベに所定の圧力まで不活性ガス、可燃性ガス、有毒ガス、あるいは半導体のプロセスガス、ドーパントガスで二次充填ポートを介して充填した上で、「ドーパントガスの準大気圧での送給に関わる問題を解決する、中味を準大気圧で送給するために機械的な逆止弁、1個あるいは複数の調整器、ないしは、ボンベのオン/オフ弁の下流側に位置した単一の調整器を使用し、」「流体あるいはガスを容器に貯蔵し、そこからの流体あるいはガスの流量を制御するための、加圧された容器の出口からの加圧された流体の排出を制御する装置」が記載されている。
したがって、引用発明の有毒な可燃性のガスである一酸化炭素を含んでいる「ソースガス及び水素補助ガス」をより安全に取り扱うために、引用文献3に記載された構成を適用することは当業者が容易に想到し得ることである。
ここで、引用文献3に記載された事項の装置は、圧縮ガスボンベにドーパントガスを二次充填ポートを介して充填するものであるから、当該充填した圧縮ガスボンベは、「予混合」した「単一供給源」であるといえる。
したがって、引用発明において、引用文献3に記載された事項を適用して、相違点2に係る本願発明の構成となすことは当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点1について検討する。
引用発明のシステムは、一酸化炭素を含んでいる「ソースガス及び水素補助ガス」を用いるシステムにおいて、「イオンビームを発するためにイオン源アセンブリを備え、前記イオン源アセンブリはイオン源チャンバを備え、前記イオン源チャンバは比較的ライフタイムが長いプラズマを閉じ込めるチャンバを備え、前記チャンバからイオンビームが抽出されて加速され」るものであるから「プラズマ」のライフタイムを長くすることが求められるものであるといえる。
これに対して、引用文献2には、「ドーパントガスとして、酸素または酸素含有ガスとCwFxOyHz物質、COF2,CO2,CO,あるいは他のいかなる酸素を含むガスを用いて、炭素を炭素イオン化するに際して、不活性ガスを同時に流すと、ドーパントガスを流すときにプラズマを維持することの助けになること」(引用文献2に記載された事項)が記載されているから、一酸化炭素を含んでいる「ソースガス及び水素補助ガス」を用いるシステムにおいては、「不活性ガスを同時に流すと、ドーパントガスを流すときにプラズマを維持する助けになること」が公知の事項であったと認められる。
そして、「プラズマを維持する助けにな」ることにより「プラズマ」のライフタイムが長くなることは明らかであるから、引用発明の一酸化炭素を含んでいる「ソースガス及び水素補助ガス」を用いるシステムにおいて、「ソースガス及び水素補助ガス」と不活性ガスを同時に流すことで、「プラズマ」のライフタイムを長くすることは当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用発明の「ドーパント元素」が、「炭素」以外に「酸素、ホウ素、ゲルマニウム、シリコンが含まれてよ」いものであることに照らしても、「いかなる酸素を含むガスを用いて、炭素を炭素イオン化するに際して、不活性ガスを同時に流すと、ドーパントガスを流すときにプラズマを維持することの助けになる」(引用文献2に記載された事項)不活性ガスを、「ソースガス及び水素補助ガス」と同時に流すことで、「プラズマ」のライフタイムを長くすることは当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、上記アでの検討を踏まえると、有毒な可燃性のガスである一酸化炭素を含んでいる「ソースガス及び水素補助ガス」を用いるシステムをより安全に取り扱うために引用文献3に記載の事項を適用して、圧縮ガスボンベに「ソースガス及び水素補助ガス」を二次充填ポートを介して充填するに際して、あわせて、「プラズマ」のライフタイムを長くするために引用文献2に記載の事項に基づいて、不活性ガスを同時に流すために、圧縮ガスボンベに「ソースガス及び水素補助ガス」と「不活性ガス」を二次充填ポートを介して充填する構成となすことも当業者が適宜なし得ることである。
ウ 以上ア及びイでの検討によれば、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
(3)請求人の審判請求書での主張について(下線は当審が付した。)
ア 請求人は審判請求書の「【本願発明が特許されるべき理由】」「(2)引用例に対する意見」において
「引用例1~3はいずれも、本願独立請求項の構成、すなわち不活性ガスおよび水素含有ガスと予混合された炭素系ドーパント源材料の組み合わせを教示も示唆もしていない。本願発明による予混合された混合物は、本願発明前に存在しておらず、審査官殿が引用例を組み合わせることができるのは、後知恵によるものに過ぎない。当業界には、炭素イオン注入プロセスを実行するために不活性ガスの流量をドーパント源によって操作するというニーズがあった。予混合されたCOおよび希釈ガスを供給源の下流の準大気圧に応答して放出するための安全で効果的な解決方法を提示するのは本願発明だけである。本願発明の前に、ドーパント・ガスおよび希釈混合物の単一の供給源を使用するよう当業者を動機付けるものはないことを具申する。
また引用例8は、不活性ガスおよび水素含有ガスとのCO系ドーパント・ガス混合物を開示していない。このCO系ドーパント・ガスは、炭素イオンが注入イオンであることを可能にするように乖離されている。
また引用例8は、CO系ドーパント・ガス組成物を開示していない。引用例8はイオン注入プロセスに関するものではなく、むしろエッチングプロセスに向けられたものである。さらに、引用例8はプラズマにおいてCOの乖離を抑制することに関するものであり、これは、(COが乖離され、次いでウェハ内に注入されなければならない)CO系混合物からの炭素注入とは真逆である。」
と主張する。
イ しかしながら、上記「(2)」「イ」で検討したとおり、不活性ガスおよび水素含有ガスと混合された炭素系ドーパント源材料の組み合わせとすることは、引用発明及び引用文献2に記載の事項から当業者が適宜なし得ることである。
そして、上記「(2)」「ア」で検討したとおり、炭素系ドーパント源材料を予混合することを教示ないし示唆することは、引用発明及び引用文献3に記載された事項から当業者が容易に想到し得たことである。
さらに、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の最先の優先日前に頒布された特開2004-356179(以下「引用文献8」という。)には、「ドライエッチング方法及びその装置」(【0001】)において、「実施の形態3」として「ガスは一括して第1ガス導入口4から導入する。但し、本実施の形態では、希釈ガスとしてキセノン(Xe)又はクリプトン(Kr)を使用する。これらの電離に必要なエネルギーが小さい希ガス原子を用いることで、プラズマの電子エネルギーは低く抑えられ、また比較的小さい電力で安定なプラズマが形成され、一定の電子密度を得ることが可能となる。・・・ガス流量:Xe/H2/CO=200/20/200sccm」(【0075】、【0076】)と記載されていて、ドライエッチング用のプラズマを発生させるためのガスとしてXe、H2、COの組み合わせが開示されている。
なお、本願発明は「ドーパント・ガス混合物用の単一供給源」と特定するものであるが、本願発明が特定する構成は、「ガス」及び「準大気圧送達及び貯蔵デバイス」からなる「単一供給源」であって、当該デバイスからのガスを特に「イオン注入プロセス」に用いることに係る格別の構成を特定するとまではいえない。
したがって、Xe、H2、COを予混合された混合物は、本願発明前に存在しておらず、審査官殿が引用例を組み合わせることができるのは、後知恵によるものに過ぎない等との請求人の主張は採用することはできない。
5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-016031