特許拒絶査定不服審判
2018-011827
プレシャンプー型毛髪処理剤組成物
- 審判番号
- 2018-011827
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-100721外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年09月04日
- 審決日
- 2019年09月03日
- 公報発行日
- 2019年10月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .537-WY (A61K) / P18 .121-WY (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-100721「プレシャンプー型毛髪処理剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月25日出願公開、特開2014-240381、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年5月14日(優先権主張 平成25年5月15日)の出願であって、平成29年10月31日付けで拒絶理由通知がなされ、平成30年1月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、同年10月17日に手続補正書(方式)が提出されたところ、当審において平成31年4月25日付けで拒絶理由通知がなされ、令和1年6月17日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~9に係る発明は、令和1年6月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。なお、上記の補正を「本件補正」という。
「【請求項1】
(A)カチオン性界面活性剤1.2~3質量%、
(B)高級アルコール3~8質量%、
(C)塩基性アミノ酸0.1~1質量%、及び
(D)プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール及びソルビトールから選ばれる2種以上12~20質量%
を含有し、(a)アニオン性界面活性剤5~15質量%、(b)平均分子量190~420のポリエチレングリコール45~65質量%及び(c)グリセリン15~25質量%を含有するシャンプー組成物で頭皮や毛髪を洗浄する前に使用し、その後水又はお湯で洗い流すプレシャンプー型毛髪処理剤組成物と、
前記(a)アニオン性界面活性剤を含有するシャンプー組成物と、
(ア)育毛有効成分0.01~1質量%を含有する育毛剤組成物と
の毛髪処理セット。
【請求項2】
(C)成分が、L-ヒスチジン又はL-アルギニンである請求項1記載の毛髪処理セット。
【請求項3】
(C)成分が、L-ヒスチジン、L-アルギニン、L-リジン及びこれらの塩から選ばれる2種以上である請求項1記載の毛髪処理セット。
【請求項4】
(A)成分が、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド又はジメチルステアリルアミンである請求項1~3のいずれか1項記載の毛髪処理セット。
【請求項5】
(B)成分が、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール又はセタノールである請求項1~4のいずれか1項記載の毛髪処理セット。
【請求項6】
(a)アニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム又はN-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸カリウムである請求項1~5のいずれか1項記載の毛髪処理セット。
【請求項7】
プレシャンプー型毛髪処理剤組成物が、ヘアリンス、ヘアコンディショナー又はヘアトリートメントである請求項1~6のいずれか1項記載の毛髪処理セット。
【請求項8】
(ア)育毛有効成分が、6-ベンジルアミノプリン、ペンタデカン酸グリセリド、ミノキシジル、塩化カプロニウム、t-フラバノン、アデノシン、センブリ抽出液、ビタミンE誘導体、D-パントテニルアルコール、ニコチン酸アミド、ヒノキチオール、β-グリチルレチン酸又はフォルスコリンである請求項1~7のいずれか1項記載の毛髪処理セット。
【請求項9】
請求項1記載のプレシャンプー型毛髪処理剤組成物で毛髪を処理した後、水又はお湯で洗い流し、その後、請求項1記載のシャンプー組成物で洗髪し、次いで、請求項1記載の育毛剤組成物を頭皮又は頭皮及び毛髪に適用する処理方法。」
(以下、請求項順に「本願発明1」等といい、また、これらをまとめて単に「本願発明」ということがある。)
第3 引用文献の記載事項及び引用発明
1 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された特開2006-070004号公報(引用文献3)には、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
飽和分岐の高級脂肪酸モノアミド及び不飽和の高級脂肪酸モノアミドから選ばれる高級脂肪酸モノアミドからなる毛髪弾性改善剤。
【請求項2】
高級脂肪酸モノアミドが次の式1~3から選ばれるものである請求項1記載の毛髪弾性改善剤。
【化1】
【化2】
【化3】
(式1~3中、R1は炭素数9~23の飽和分岐アルキル基又は不飽和結合を有する炭化水素基を、R2 は炭素数1~6のアルキレン基を、R3 は炭素数1~6のアルキル基を示す。)
【請求項3】
飽和分岐の高級脂肪酸モノアミド及び不飽和の高級脂肪酸モノアミドから選ばれる高級脂肪酸モノアミドを含有するヘアトリートメント剤。
【請求項4】
高級脂肪酸モノアミドが次の式1~3から選ばれるものである請求項3記載のヘアトリートメント剤。
【化4】
【化5】
【化6】
(式1~3中、R1は炭素数9~23の飽和分岐アルキル基又は不飽和結合を有する炭化水素基を、R2 は炭素数1~6のアルキレン基を、R3 は炭素数1~6のアルキル基を示す。)
【請求項5】
毛髪の弾性改善率Rが20%以上である請求項3または4のヘアトリートメント剤。
【請求項6】
飽和分岐の高級脂肪酸モノアミド及び不飽和の高級脂肪酸モノアミドから選ばれる高級脂肪酸モノアミドを毛髪に適用する毛髪の弾性改善方法。」(特許請求の範囲)
イ 「【0006】
本発明は、日常的な物理的、化学的刺激により損傷を受けた毛髪に、毛髪本来のしなやかさ、弾力性を改善させ、毛髪の物性を回復させる剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、特定の高級脂肪酸モノアミドに損傷毛の物性を回復させる効果を見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、飽和分岐の高級脂肪酸モノアミド及び不飽和の高級脂肪酸モノアミドから選ばれる高級脂肪酸モノアミドからなる毛髪弾性改善剤及び当該高級脂肪酸モノアミドを含有し、損傷毛の弾性を改善するために用いられるヘアトリートメント剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高級脂肪酸モノアミドからなる毛髪弾性改善剤を毛髪、特にヘアカラーやパーマ剤で損傷を受けた毛髪に適用することにより、その弾性を回復させ、よりしなやかな、柔らかい感触とさせることができる。」(段落【0006】~【0009】)
ウ 「【0021】
本発明の飽和分岐高級脂肪酸モノアミド又は不飽和の高級脂肪酸モノアミドは、適当な媒体に含有させることにより、ヘアトリートメント剤として用いることができる。ここで、本発明のヘアトリートメント剤の媒体としては、水、エタノール及び水性エタノールを好適に用いることができ、さらにグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール等の多価アルコールを添加することもできる。」(【0021】)
エ 「【0029】
これらカチオン界面活性剤は、2種以上を併用してもよく、またその含有量は、0.1~10重量%が好ましい。」(【0029】)
オ 「【実施例】
【0036】
表1に示すヘアトリートメント剤を調製し、以下の方法で評価した。
【0037】
【表1】
」(実施例、【0036】~【0037】)
カ 「【0038】
<試験毛の調製>
未だパーマ、ヘアカラー等の化学処理をしたことのない日本人女性の毛髪(バージン毛、約20cm)から、5gの毛髪トレスをつくり、以下の前処理を施したものを試験毛とした。
【0039】
(前処理方法)
花王ラビナス「ハイブリーチ」の1剤/2剤規定割合の混合液を毛髪トレス1本当たり5g、40℃で20分間処理、次いでプレーンシャンプー/プレーンリンス処理、ドライヤー乾燥を90回繰り返した。以上のブリーチ、シャンプー/プレーンリンス処理のサイクルを8回実施(ブリーチ計8回、シャンプー/リンス計720回)して使用した。なお、プレーンシャンプーはポリオキシエチレン(2.5)ラウリル硫酸ナトリウムを15重量%含有するものであり、プレーンリンスは、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムを3.6重量%含有するものである。
【0040】
<試験毛の処理>
試験毛を10重量倍のヘアトリートメント剤に40℃、200分浸漬し、ヘアトリートメント剤を拭取り、プレーンシャンプーで洗浄、タオルドライした後、評価条件下で乾燥を行ってヘアトリートメント処理毛を得る。得られた処理毛について、官能評価試験および弾性率の測定を実施し、結果をそれぞれ表2および表3に示す。
【0041】
<官能評価>
22±1℃、相対湿度20±1%条件下で、5人の専門パネラーによりヘアトリートメント処理毛の感触を健常毛及び試験毛の感触と比較し官能評価した。
評点4:柔らかい(健常毛と同等)
評点3:やや柔らかい
評点2:やや硬い
評点1:硬い(ヘアトリートメント処理していない試験毛と同等)
【0042】
【表2】
」(段落【0038】~【0042】)
2 引用発明
引用文献3には、表1の比較例2に記載の組成からなるヘアトリートメント剤が記載され(摘記事項オ)、さらに、該ヘアートリートメント剤に試験毛を浸漬した後、該ヘアートリートメント剤を拭き取り、プレーンシャンプーで洗浄することが記載されている(摘記事項カ)。そして、引用文献3には、「ヘアートリートメント剤とプレーンシャンプとの毛髪処理セット」なる明示的な記載はないが、上記のとおり、ヘアートリートメント剤及びプレーンシャンプーは、同じ髪に対する一連の毛髪処理において使用されるものであるから、両者は「毛髪処理セット」と認識し得るものである。
したがって、引用文献3には、次の発明が記載されているものと認められる。
「アルギニン0.5重量%、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム5重量%、べへニルアルコール8重量%、ジプロピレングリコール0.5重量%、ジメチルポリシロキサン1重量%、pH調整剤 適量(pH4に調整)、水を含むヘアートリートメント剤と、
ヘアートリートメント剤を拭き取った後に用いるプレーンシャンプーであり、ポリオキシエチレン(2.5)ラウリル硫酸ナトリウムを15重量%含有するプレーンシャンプーと、
からなる毛髪処理セット」(以下、「引用発明3-1」という。)
また、摘記事項オ、カの記載からみて、以下の発明も記載されている。
「アルギニン0.5重量%、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム5重量%、べへニルアルコール8重量%、ジプロピレングリコール0.5重量%、ジメチルポリシロキサン1重量%、pH調整剤 適量(pH4に調整)、水を含むヘアートリートメント剤を毛髪に適用し、これを拭き取った後に、
ポリオキシエチレン(2.5)ラウリル硫酸ナトリウムを15重量%含有するプレーンシャンプーにより洗髪する処理方法」(以下、「引用発明3-2」という。)
第4 当審の判断(本願発明の進歩性について)
1 本願発明1について
(1) 本願発明1と引用発明3-1の対比
引用発明3-1の「ヘアートリートメント剤」は、「プレーンシャンプー」の前に用いているので、本願発明1の「プレシャンプー型毛髪処理剤組成物」に相当する。
引用発明3-1のヘアートリートメント剤における「塩化ステアリルトリメチルアンモニウム」は、本願発明1の「(A)カチオン性界面活性剤」に相当する。
引用発明3-1のヘアートリートメント剤における「べへニルアルコール」、「アルギニン」は、それぞれ本願発明1の「(B)高級アルコール」、「(C)塩基性アミノ酸」に相当し、また、配合量の単位として「重量%」と「質量%」とは実質的に同義であるから、これらは配合量においても重複する。
引用発明3-1のプレーンシャンプーにおける「ポリオキシエチレン(2.5)ラウリル硫酸ナトリウム」は、本願発明1の「(a)アニオン性界面活性剤」に相当し、その配合量においても重複する。
また、引用発明3-1のヘアートリートメント剤は、「ジメチルポリシロキサン」、「pH調整剤」、「水」を含むものであるが、本願明細書の段落【0021】の記載からみて、本願発明1のプレシャンプー型毛髪処理剤組成物もこれらの成分を含み得るものであるから、この点は、両発明における相違点ではない。
そうすると、本願発明1と引用発明3-1は、
「(A)カチオン性界面活性剤、
(B)高級アルコール3~8質量%、
(C)塩基性アミノ酸0.1~1質量%
を含有し、
(a)アニオン性界面活性剤5~15質量%を含有するシャンプー組成物で頭皮や毛髪を洗浄する前に使用するプレシャンプー型毛髪処理剤組成物と、
前記(a)アニオン性界面活性剤を含有するシャンプー組成物と
の毛髪処理セット。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
プレシャンプー型毛髪処理剤組成物のカチオン性界面活性剤の配合量が、本願発明1は「1.2~3質量%」であるのに対し、引用発明3-1では「5重量%」である点。
(相違点2)
プレシャンプー型毛髪処理剤組成物の配合成分として、本願発明1は「(D)プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール及びソルビトールから選ばれる2種以上」を「12~20質量%」含むのに対し、引用発明3-1では「ジプロピレングリコール」を「0.5重量%」含む点。
(相違点3)
シャンプー組成物について、本願発明1は「(b)平均分子量190~420のポリエチレングリコール45~65質量%及び(c)グリセリン15~25質量%」を含有するのに対し、引用発明3-1はこれらを含まない点。
(相違点4)
本願発明1では、プレシャンプー型毛髪処理剤組成物をシャンプー組成物での洗浄の前に「水又はお湯で洗い流す」のに対し、引用発明3-1では、ヘアートリートメント剤をプレーンシャンプーでの洗浄の前に「拭き取る」点。
(相違点5)
毛髪処理セットとして、本願発明1は「(ア)育毛有効成分0.01~1質量%を含有する育毛剤組成物」を更に含むのに対し、引用発明3-1はそれを含まない点。
(2) 相違点についての判断
(相違点1について)
引用文献3には、引用発明3-1のヘアートリートメント剤におけるカチオン性界面活性剤の配合量を1.2~3質量(重量)%とすることを示唆する記載はない。この点、引用文献3には、「カチオン性界面活性剤は、・・・、またその含有量は、0.1~10重量%が好ましい」(摘記事項エ)との記載があるが、これは、引用文献3の特許請求の範囲に記載の発明(摘記事項ア)について述べたものであって、同発明と対比し、毛髪の感触や弾力性といった同発明の効果(摘記事項イ、カ)を明らかにすることを目的として製造された引用発明3-1のヘアートリートメント剤におけるカチオン性界面活性剤の配合量について示唆するものではない。
よって、相違点1は、引用文献3の記載から当業者が容易に想到し得るものではない。
(相違点2について)
引用文献3には、引用発明3-1のヘアートリートメント剤にプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール及びソルビトールの2種以上を配合することを示唆する記載はない。この点、引用文献3には、「本発明のヘアートリートメント剤の媒体としては・・・用いることができ、さらにグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール等の多価アルコールを添加することもできる」(摘記事項ウ)と記載されているが、これも、上記と同様に、引用文献3の特許請求の範囲に記載の発明についての記述であって、引用発明3-1について示唆するものではない。
よって、相違点2は、引用文献3の記載から当業者が容易に想到し得るものではない。
(相違点3について)
引用文献3には、引用発明3-1のプレーンシャンプに「平均分子量190~420のポリエチレングリコール」や「グリセリン」を配合することを示唆する記載はない。
よって、相違点3は、引用文献3の記載から当業者が容易に想到し得るものではない。
(相違点5について)
引用文献3には、育毛剤組成物について何も記載されていないし、いわんや比較例として製造されただけの引用発明3-1に育毛剤組成物を組み合わせることが示唆されているなどとは到底言えない。
よって、相違点5は、引用文献3の記載から当業者が容易に想到し得るものではない。
(3)本願発明1の効果について
本願明細書の表14の実施例101~103には、本願発明1の毛髪処理セットについて、「洗髪時の抜け毛を減らす効果」、「乾燥後の頭頂部のふんわり感」、「乾燥後のうねりのなさ」、「育毛効果」の評価が「5」(最も良好な評価)又は「4」(「5」の次に良好な評価)であり、「シャンプー組成物の低温安定性」が「◎」(-5℃で1カ月保存後も無色透明)であったことが示されており、これらの効果は、引用文献3の記載からは当業者にも予測し得ない顕著な効果である。
(4)小括
以上のとおりであるから、相違点4について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明3-1及び引用文献3に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本願発明2~8について
本願発明2~8は、それぞれ、本願発明1における塩基性アミノ酸(本願発明2、3)、カチオン性界面活性剤(本願発明4)、高級アルコール(本願発明5)、アニオン性界面活性剤(本願発明6)、プレシャンプー型毛髪処理剤組成物(本願発明7)及び育毛有効成分(本願発明8)を更に限定した発明であって、本願発明1と同様の効果を奏するものであるから、本願発明1と同様に、引用発明3-1及び引用文献3に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本願発明9について
(1)本願発明9と引用発明3-2の対比
本願発明9は、請求項1を引用して記載するものであるが、請求項1を引用せずに書き下すと、以下のようになる。
「(A)カチオン性界面活性剤1.2~3質量%、
(B)高級アルコール3~8質量%、
(C)塩基性アミノ酸0.1~1質量%、及び
(D)プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール及びソルビトールから選ばれる2種以上12~20質量%
を含有するプレシャンプー型毛髪処理剤組成物で毛髪を処理した後、水又はお湯で洗い流し、その後、
(a)アニオン性界面活性剤5~15質量%、(b)平均分子量190~420のポリエチレングリコール45~65質量%及び(c)グリセリン15~25質量%を含有するシャンプー組成物で洗髪し、次いで、
(ア)育毛有効成分0.01~1質量%を含有する育毛剤組成物を頭皮又は頭皮及び毛髪に適用する処理方法。」
上記本願発明9と引用発明3-2を対比すると、上記1(1)で述べたのと同様に、
・引用発明3-2の「ヘアートリートメント剤」は、「プレーンシャンプー」の前に用いているので、本願発明9の「プレシャンプー型毛髪処理剤組成物」に相当し、
・引用発明3-2のヘアートリートメント剤における「塩化ステアリルトリメチルアンモニウム」は、本願発明9「(A)カチオン性界面活性剤」に相当し、
・引用発明3-2のヘアートリートメント剤における「べへニルアルコール」、「アルギニン」は、それぞれ本願発明1の「(B)高級アルコール」、「(C)塩基性アミノ酸」に相当し、これらは配合量においても重複し、 ・引用発明3-2のプレーンシャンプーにおける「ポリオキシエチレン(2.5)ラウリル硫酸ナトリウム」は、本願発明1の「(a)アニオン性界面活性剤」に相当し、その配合量においても重複し、
また、引用発明3-2の「処理方法」は、本願発明9の「処理方法」に相当する。
そして、引用発明3-2のヘアートリートメント剤は、「ジメチルポリシロキサン」、「pH調整剤」、「水」を含むものであるが、本願明細書の段落【0021】の記載からみて、本願発明9のプレシャンプー型毛髪処理剤組成物もこれらの成分を含み得るものであるから、この点は、両発明における相違点ではない。
そうすると、両発明は、
「(A)カチオン性界面活性剤、
(B)高級アルコール3~8質量%、
(C)塩基性アミノ酸0.1~1質量%
を含有した、プレシャンプー型毛髪処理剤組成物で毛髪を処理した後、
(a)アニオン性界面活性剤5~15質量%を含有するシャンプー組成物で洗髪する処理方法。」である点において一致し、以下の点で相違する。
(相違点1')
プレシャンプー型毛髪処理剤組成物のカチオン性界面活性剤の配合量が、本願発明9は「1.2~3質量%」であるのに対し、引用発明3-2では「5重量%」である点。
(相違点2')
プレシャンプー型毛髪処理剤組成物の配合成分として、本願発明9は「(D)プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール及びソルビトールから選ばれる2種以上」を「12~20質量%」含むのに対し、引用発明3-2では「ジプロピレングリコール」を「0.5重量%」含む点。
(相違点3')
シャンプー組成物について、本願発明9は「(b)平均分子量190~420のポリエチレングリコール45~65質量%及び(c)グリセリン15~25質量%」を含有するのに対し、引用発明3-2ではこれらを含まない点。
(相違点4')
本願発明9では、プレシャンプー型毛髪処理剤組成物を「水又はお湯で洗い流す」のに対し、引用発明3-2では、ヘアートリートメント剤を「拭き取る」点。
(相違点5')
毛髪処理セットについて、本願発明9は「(ア)育毛有効成分0.01~1質量%を含有する育毛剤組成物を頭皮又は頭皮及び毛髪に適用する」方法を更に含むのに対し、引用発明3-2はそれを含まない点。
(2)相違点についての判断
(相違点1'、2'及び3'について)
相違点1'、2'及び3'は、相違点1、2及び3と同じものであるから、引用文献3の記載から当業者が容易に想到し得るものではない。
(相違点5'について)
引用発明3-1と同様に、比較例であるだけの引用発明3-2において育毛剤組成物を更に用いることが、引用文献3に示唆されているとは言えないから、相違点5'は、引用文献3の記載から当業者が容易に想到し得るものではない。
(3)本願発明9の効果について
本願発明9も、本願発明1と同じく、引用文献3の記載からは当業者にも予測し得ない顕著な効果を奏するものである。
(4)小括
以上のとおりであるから、相違点4'について検討するまでもなく、本願発明9は、引用発明3-2及び引用文献3に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 原査定(平成30年5月30日付け拒絶査定)について
原査定の理由は、要するに、平成30年9月4日付け手続補正前の本願請求項1~19に係る発明は、引用文献3に記載の発明の基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない、というものである。
しかし、本件補正により、本願発明は、上記第2に記載のとおりのものとなり、これらの発明が引用文献3に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでないことは、上記第4で述べたとおりである。
したがって、原査定を維持することはできない。
第6 当審が通知した拒絶理由について
1 当審が通知した拒絶理由の概要
当審が通知した拒絶理由の概要は以下のとおりである。
「( 明確性) この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
・請求項 2-10
(1) 請求項2について
請求項2は、自項である請求項2を引用しており、引用が適切にされておらず、不明確である。
(2) 請求項3~10について
請求項3は、請求項1又は2を引用し、「(C)成分が、L-ヒスチジン、L-アルギニン、L-リジン及びこれらの塩から選ばれる2種以上である」と特定している。
ここで、請求項3で引用する請求項2では、「(C)成分が、L-ヒスチジン又はL-アルギニンである」と特定しており、(C)成分に「L-リジン」は含まれない。
そうすると、「L-リジン」を含まない請求項2を引用している請求項3に係る発明についてまで、「L-リジン」を含む2種以上の(C)成分の組合せの態様を包含することとなるので、請求項3の記載では不明確である。
請求項3を直接又は間接的に引用する請求項4~10についても同様である。
(3) 請求項7について
請求項7は、請求項1~6を引用し、
「プレシャンプー型毛髪処理剤組成物塗布後の毛髪に、
少なくとも、メチルハイドロジェンポリシロキサン、下記式(1)
・・・
で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、および酸が配合されている非水系の下処理剤を塗布し、続いて下処理剤塗布後の毛髪に、
少なくとも、アミノ変性シリコーンが配合されている毛髪改質剤を塗布するものを除く、」
と記載されている。
ここで、請求項7が引用する請求項1をみると、請求項1に係る発明は、
(i) (A)~(D)を特定量で含有するプレシャンプー組成物と、
(ii) (a)~(c)を特定量で含有するシャンプー組成物と、
(iii) 育毛有効成分を特定量で含有する育毛剤組成物
との毛髪処理セット、すなわち、(i)~(iii)の3つの組成物のみからなる毛髪処理セットであり、(i)~(iii)以外の他の毛髪用の組成物又は剤を当該セットに含むものではない。
また、この点について発明の詳細な説明の記載をみても(特に【0047】)、他の毛髪用の組成物又は剤を追加できるような記載はない。
そうすると、請求項7で除外するものは、もとから本願発明の毛髪処理セットに含まれない組成物又は剤であるから、請求項7の上記記載によって、何を除くことを意図しているのかが明確ではない。
(4) 請求項9について
請求項9は、請求項1~8を引用し、育毛有効成分の配合量を「その配合量が0.002~2質量%」と特定している。
しかし、引用元の請求項1では、「育毛有効成分は0.01~1質量%」と範囲が記載されており、この範囲よりも請求項9に記載した範囲の方が広いので、請求項9の上記特定は不明確である。
(5) 請求項10について
請求項10では、「プレシャンプー型毛髪処理剤組成物」については、請求項1~8のいずれか一項を引用しているが、「(a)アニオン性界面活性剤を含有するシャンプー組成物」及び「(ア)育毛有効成分を含有する育毛剤組成物」については、これらの請求項は引用していない。
そうすると、請求項の引用のない後者の2つの組成物の「(a)アニオン性界面活性剤を含有するシャンプー組成物」及び「(ア)育毛有効成分を含有する育毛剤組成物」は、請求項1~8で特定するものとは異なるものを含むもの、つまり、「(a)アニオン性界面活性剤5~15質量%、(b)平均分子量190~420のポリエチレングリコール45~65質量%及び(c)グリセリン15~25質量%を含有するシャンプー組成物」以外の「(a)アニオン性界面活性剤を含有するシャンプー組成物」も包含し、「育毛有効成分0.01~1質量%を含有する育毛剤組成物」以外の「(ア)育毛有効成分を含有する育毛剤組成物」も包含するものと解される。
しかしながら、請求項10は、引用する請求項1等における「(a)アニオン性界面活性剤を含有するシャンプー組成物」あるいは「(ア)育毛有効成分を含有する育毛剤組成物」と同じ記号及び類似の表現を用いているから、両者で用いた組成物の異同が不明であって、明確ではない。
(6) 請求項10について
請求項10の処理方法において、「(但し、・・・は除く)」と記載されている。
請求項10に係る処理方法には、プレシャンプー型毛髪処理組成物による処理、続いて、(a)アニオン性界面活性剤を含有するシャンプー組成物での洗髪の処理、続いて育毛剤組成物による処理を行うものであり、この点について本願明細書等をみても、3つの処理の間にこれ以外の毛髪用組成物又は剤による処理工程を含むような記載や示唆は見当たらない。
そうすると、請求項10に係る処理方法は、そもそも上記3つの工程以外は含まないから、「(但し・・・は除く)」と記載することにより、何を除くことを意図しているのかが明確ではない。」
2 当審の判断
(理由(1)、(2)について)
請求項2の「請求項2」との記載及び請求項3の「請求項1又は2」との記載が「請求項1」と補正されたことにより、これらの理由は解消した。
(理由(3)について)
本件補正前の請求項7が削除されたことにより、この理由は解消した。
(理由(4)について)
請求項8(本件補正前の請求項9に対応)において育毛有効成分の配合量の規定が削除されたことにより、この理由は解消した。
(理由(5)について)
請求項9(本件補正前の請求項10に対応)において「シャンプー組成物」及び「育毛剤組成物」が、請求項1に記載のものであることが規定されたことにより、この理由は解消した。
(理由(6)について)
請求項9において「(但し・・・を塗布する処理方法を除く)。」との規定が削除されたことにより、この理由は解消した。
以上のとおり、本件補正により、当審が通知した拒絶理由は全て解消した。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由及び当審が通知した拒絶理由のいずれによっても、本願を拒絶することはできない。
また、他の本願を拒絶すべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-011827