特許拒絶査定不服審判
2018-011727
冷凍装置
- 審判番号
- 2018-011727
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-141976外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年08月31日
- 審決日
- 2019年03月25日
- 公報発行日
- 2019年05月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
- 【請求人代理人】大場 充
- 【請求人代理人】堀川 美夕紀
- 【請求人代理人】大竹 夕香子
- 【請求人代理人】山下 聖子
- 分類
- P18 .121-WY (F25B) / P18 .57 -WY (F25B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-141976号「冷凍装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月 1日出願公開、特開2016- 17712号、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年7月10日の出願であって、平成30年3月7日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年5月10日付けで手続補正がされ、平成30年7月4日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、平成30年8月31日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 補正の却下の決定
1.補正の却下の決定の結論
平成30年8月31日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。
2.補正の却下の決定の理由
(1)本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものである。
補正前の特許請求の範囲及び補正後の特許請求の範囲は、それぞれ以下のとおりである。
ア 本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機によって圧縮された前記冷媒が放熱して凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器において凝縮された前記冷媒を減圧する膨張機構と、前記膨張機構において減圧された前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、が接続されて前記冷媒の循環回路を構成する主回路と、
前記蒸発器と前記圧縮機の間において、前記主回路に並列に設けられ、前記蒸発器で蒸発された前記冷媒を、前記凝縮器を流れる前記冷媒と熱交換させてから前記主回路に戻す過熱回路と、
冷房運転時には前記凝縮器として機能するとともに、暖房運転時には前記蒸発器として機能する室外熱交換器と、
前記冷房運転時には前記蒸発器として機能するとともに、前記暖房運転時には前記凝縮器として機能する室内熱交換器と、を備え、
前記過熱回路は、
前記冷房運転時に、前記凝縮器として機能する前記室外熱交換器から集熱する第1過熱回路と、
前記暖房運転時に、前記凝縮器として機能する前記室内熱交換器から集熱する第2過熱回路と、
を備えることを特徴とする冷凍装置。
【請求項2】
前記蒸発器で蒸発された前記冷媒が、前記主回路を経由して前記圧縮機に吸入される通常運転と、
前記蒸発器で蒸発された前記冷媒が、前記過熱回路を経由し、前記主回路に戻されてから前記圧縮機に吸入される過熱運転と、を選択的に行う運転切替え機構を備える、
請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記運転切替え機構は、
前記圧縮機に吸入される前記冷媒、及び、前記圧縮機から吐出される前記冷媒の一方又は双方の状態に応じて、前記通常運転と前記過熱運転を切り替える、
請求項2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記過熱回路は、前記凝縮器への送風の下流側に配置され、前記送風を介する前記冷媒からの放熱を受けて、前記主回路に戻す前記冷媒を過熱する熱交換器を備える、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の冷凍装置。」
イ 本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機によって圧縮された前記冷媒が放熱して凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器において凝縮された前記冷媒を減圧する膨張機構と、前記膨張機構において減圧された前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、が接続されて前記冷媒の循環回路を構成する主回路と、
前記蒸発器と前記圧縮機の間において、前記主回路に並列に設けられ、前記蒸発器で蒸発された前記冷媒を、前記凝縮器を流れる前記冷媒と熱交換させてから前記主回路に戻す過熱回路と、
冷房運転時には前記凝縮器として機能するとともに、暖房運転時には前記蒸発器として機能する室外熱交換器と、
前記冷房運転時には前記蒸発器として機能するとともに、前記暖房運転時には前記凝縮器として機能する室内熱交換器と、を備え、
前記過熱回路は、
前記冷房運転時に、前記凝縮器として機能する前記室外熱交換器から集熱する第1過熱回路と、
前記暖房運転時に、前記凝縮器として機能する前記室内熱交換器から集熱する第2過熱回路と、
を備えることを特徴とする冷凍装置。
【請求項2】
前記蒸発器で蒸発された前記冷媒が、前記主回路を経由して前記圧縮機に吸入される通常運転と、
前記蒸発器で蒸発された前記冷媒が、前記過熱回路を経由し、前記主回路に戻されてから前記圧縮機に吸入される過熱運転と、を選択的に行う運転切替え機構を備える、
請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記運転切替え機構は、
前記圧縮機に吸入される前記冷媒、及び、前記圧縮機から吐出される前記冷媒の一方又は双方の状態に応じて、前記通常運転と前記過熱運転を切り替える、
請求項2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記過熱回路は、前記凝縮器への送風の下流側に配置され、前記送風を介する前記冷媒からの放熱を受けて、前記主回路に戻す前記冷媒を過熱する熱交換器を備える、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記第1過熱回路は、
前記室外熱交換器を流れる前記冷媒との間で熱交換する第1過熱熱交換器と、一端が前記第1過熱熱交換器に繋がり、他端が前記室内熱交換器と前記圧縮機の間に設けられる第3冷媒配管に繋がる第1冷媒配管と、一端が前記第1過熱熱交換器に繋がり、他端が前記第3冷媒配管に繋がる第2冷媒配管と、を備え、
前記第2過熱回路は、
前記室内熱交換器を流れる前記冷媒との間で熱交換する第2過熱熱交換器と、一端が前記第2過熱熱交換器に繋がり、他端が前記室外熱交換器と前記圧縮機の間に設けられる第6冷媒配管に繋がる第4冷媒配管と、一端が第2過熱熱交換器に繋がり、他端が前記第6冷媒配管に繋がる第5冷媒配管と、を備える、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載
の冷凍装置。」
(2)本件補正の適否の判断
本件補正の目的要件についてみると、新たな請求項5を追加する補正は、特許法17条の2第5項の各目的である「請求項の削除」(1号)、「誤記の訂正」(3号)、「明りょうでない記載の釈明」(4号)に該当しないことは明らかであって、本件補正は、いわゆる増項補正にあたる。
増項補正は、(ア)n項引用形式請求項をn-1以下の請求項に変更する補正、又は(イ)発明特定事項が択一的なものとして記載された一つの請求項について、その択一的な発明特定事項をそれぞれ限定して複数の請求項に変更する補正、という格別な事情のある場合を除き、特許請求の範囲を減縮する補正に該当しないというべきである。そして、本件補正には、前記(ア)又は(イ)に示すような格別な事情は認められない。
(3)むすび
以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願請求項1~4に係る発明は、引用文献1(特開2001-280730号公報)及び引用文献2(実願昭54-155408号(実開昭56-72149号)のマイクロフィルム)に記載された技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 本願発明
本件補正は、上記「第2 補正の却下の決定」のとおり、却下された。
したがって、本願請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明4」という。)は、平成30年5月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される発明である(上記、「第2 2.(1)ア」を参照。)。
第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】 室外ユニットを構成する圧縮機、四方弁、室外熱交換器および膨張弁と、室内ユニットを構成する室内熱交換器とが接続配管により順次接続されてなる空気調和機において、
前記四方弁と前記圧縮機の吸込口とを結ぶ前記接続配管に並列に補助熱交換器を備えた側路を接続し、同側路に冷媒を導入する切換弁を設けるとともに、前記補助熱交換器を前記室外熱交換器の風下側に近接配置し、前記補助熱交換器を冷房運転時または暖房運転時に蒸発器としてなることを特徴とする空気調和機。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、空気調和機に係わり、より詳細には、四方弁と圧縮機の吸込口とを結ぶ接続配管に並列に補助熱交換器を備えた側路を接続することにより冷媒の液バックを防止して暖房能力を向上させるようにした構造に関する。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明においては、上記の問題点に鑑み、四方弁と圧縮機の吸込口とを結ぶ接続配管に並列に補助熱交換器を備えた側路を接続することにより冷媒の液バックを防止して暖房能力を向上させるようにした空気調和機を提供することを目的とする。」
「【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として説明する。図1は本発明による空気調和機の冷凍サイクル図であり、図2は本発明によるの空気調和機を構成する室外ユニットの説明図で、(A)は透過平面図、(B)は要部斜視図である。
【0011】図において、Aは本発明による空気調和機を構成する室外ユニット、1は同室外ユニットAを構成する圧縮機、2は四方弁、3は送風ファン8を対向させた室外熱交換器、4は膨張弁で、Bは本発明による空気調和機を構成する室内ユニット、5は同室内ユニットBを構成する室内熱交換器である。
【0012】次に、上記の基本構成でなる空気調和機において、前記室内熱交換器3と前記圧縮機1の吸込管との間に前記補助熱交換器6を接続することにより冷媒の液バックを防止して暖房能力を向上させるようにした構造について以下に説明する。
【0013】前記四方弁2と前記圧縮機1の吸込口とを結ぶ前記接続配管に並列に補助熱交換器6を備えた側路を接続し、同側路に冷媒を導入する切換弁を設けるとともに、前記補助熱交換器6を前記室外熱交換器3の風下側に近接配置し、前記補助熱交換器6を冷房運転時または暖房運転時に蒸発器としたことにより、前記室外ユニットAを前後に大型化させることなく、冷媒の蒸発が促進されるようになって前記温度差ΔTを効果的に確保できるようになり、冷房運転時または暖房運転時における前記室外ユニットAの熱交換能力を向上できるようになる。
【0014】また、前記切換弁は、外気温度が所定値(T0)以下であって、且つ温度センサにより検出した前記室内熱交換器5の温度と前記圧縮機1の吸込側の冷媒温度との差異である過熱量が所定値(SH)以下となる運転を所定時間(t) 継続した時に、前記側路に冷媒を導入するようにしたことにより、上記従来技術で説明したように、例えば冷房運転時または除湿運転時に液バックなどにより前記圧縮機1が故障しないように防止するため、同圧縮機1の吸込管と前記室外熱交換器3とにおける冷媒の温度差ΔTを所定値以上に確保する必要があるが、とくに、外気温度が低温である場合の冷房運転時または除湿運転時や容量制御運転時などにおいても、前記温度差ΔTを確保することができるようになる。」
「【0020】
【発明の効果】以上のように本発明によると、四方弁と圧縮機の吸込口とを結ぶ接続配管に並列に補助熱交換器を備えた側路を接続することにより冷媒の液バックを防止して暖房能力を向上させるようにした空気調和機となる。」
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「室外ユニットを構成する圧縮機、四方弁、室外熱交換器および膨張弁と、室内ユニットを構成する室内熱交換器とが接続配管により順次接続されてなる空気調和機において、
前記四方弁と前記圧縮機の吸込口とを結ぶ前記接続配管に並列に補助熱交換器を備えた側路を接続し、同側路に冷媒を導入する切換弁を設けるとともに、前記補助熱交換器を前記室外熱交換器の風下側に近接配置し、前記補助熱交換器を冷房運転時または暖房運転時に蒸発器としてなる空気調和機。」
2.引用文献2について
引用文献2には、以下の技術的事項が記載されている。
「暖房運転時に、暖房用膨張弁の入口側の配管と室外側熱交換器の出口側配管との熱交換を行う熱交換器を備え、暖房運転時に蒸発器の出口側では冷媒が湿り状態となり、熱交換性が向上し、蒸発器の出口側熱交換器によって低圧側の冷媒の過熱度を得るようにし、冷媒が圧縮機に戻るまでの低圧側冷媒回路での圧力損失を小さくし暖房運転時に空気調和機の能力の向上を図ること。」
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「圧縮機」及び「膨張弁」は、その機能、構成からみて、本願発明1における「冷媒を圧縮する圧縮機」、「冷媒を減圧する膨張機構」に相当する。
引用発明における「蒸発器」は、本願発明1における「前記膨張機構において減圧された前記冷媒を蒸発させる蒸発器」に相当する。
引用発明における「室外熱交換器」は、本願発明1における「冷房運転時には前記凝縮器として機能するとともに、暖房運転時には前記蒸発器として機能する室外熱交換器」に相当する。
引用発明における「室内熱交換器」は、本願発明1における「冷房運転時には前記蒸発器として機能するとともに、前記暖房運転時には前記凝縮器として機能する室内熱交換器」に相当する。
引用発明における「前記四方弁と前記圧縮機の吸込口とを結ぶ前記接続配管に並列に補助熱交換器」は、本願発明1における「前記蒸発器と前記圧縮機の間において、前記主回路に並列に設けられ、前記蒸発器で蒸発された前記冷媒を、前記凝縮器を流れる前記冷媒と熱交換させてから前記主回路に戻す過熱回路」及び「前記冷房運転時に、前記凝縮器として機能する前記室外熱交換器から集熱する第1過熱回路」に相当する。
引用発明における「空気調和機」は、本願発明1における「冷凍装置」に相当する。
引用発明の「室外ユニットを構成する圧縮機、四方弁、室外熱交換器および膨張弁と、室内ユニットを構成する室内熱交換器とが接続配管により順次接続され」ている態様は、本願発明1における「冷媒の循環回路を構成する主回路」であるといえる。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機によって圧縮された前記冷媒が放熱して凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器において凝縮された前記冷媒を減圧する膨張機構と、前記膨張機構において減圧された前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、が接続されて前記冷媒の循環回路を構成する主回路と、
前記蒸発器と前記圧縮機の間において、前記主回路に並列に設けられ、前記蒸発器で蒸発された前記冷媒を、前記凝縮器を流れる前記冷媒と熱交換させてから前記主回路に戻す過熱回路と、
冷房運転時には前記凝縮器として機能するとともに、暖房運転時には前記蒸発器として機能する室外熱交換器と、
前記冷房運転時には前記蒸発器として機能するとともに、前記暖房運転時には前記凝縮器として機能する室内熱交換器と、を備え、
前記過熱回路は、
前記冷房運転時に、前記凝縮器として機能する前記室外熱交換器から集熱する第1過熱回路と、
を備える冷凍装置。」
(相違点)
本願発明1は「暖房運転時に、前記凝縮器として機能する前記室内熱交換器から集熱する第2過熱回路」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。
(2)相違点についての判断
上記相違点について検討すると、引用発明は、「補助熱交換器を備えた側路を接続することにより冷媒の液バックを防止して暖房能力を向上させる」(【0004】)ことを課題とする発明である。そして、引用発明において、暖房時に室内熱交換器に補助熱交換器を設けることは、暖房能力の低下を招くことになり、阻害要因があるといえるから、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を採用する動機付けはない。
また、本願発明1は、相違点に係る本願発明1の構成を備えることにより「蒸発器で蒸発された冷媒と高温の冷媒が導入される凝縮器を流れる冷媒とを熱交換させるので、蒸発器で蒸発された冷媒に十分な過熱を与えることができる。」(【0012】)という効果を奏するものであるから、上記相違点は、設計的事項であるともいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
2.本願発明2~4について
本願発明2~4も、本願発明1の全ての構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1~4は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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