特許拒絶査定不服審判
2018-010101
光学ガラス及び光学素子
- 審判番号
- 2018-010101
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-194368外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年07月24日
- 審決日
- 2019年06月24日
- 公報発行日
- 2019年08月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .113-WY (C03C) / P18 .121-WY (C03C) / P18 .536-WY (C03C) / P18 .537-WY (C03C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条の2、特許法第36条第4項第1号、特許法第50条の2
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-194368「光学ガラス及び光学素子」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月23日出願公開、特開2017- 39640、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年12月20日(優先権主張 平成23年12月28日 平成24年 8月30日)を出願日とする特願2012-278571号(以下、「親出願」という。)の一部を、平成28年 9月30日に新たな特許出願としたものであって、平成29年 9月 8日付けで、特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由通知がされ、同年11月16日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成30年 3月12日付で刊行物等提出書が提出され、同年 4月19日付けで、平成29年11月16日付け手続補正書でした補正を却下する旨の補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定がされ、同年 7月24日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年12月17日付けで刊行物等提出書が提出され、平成31年 1月21日付けで上申書が提出され、当審より同年 2月27日付けで拒絶理由通知がされ、令和 1年 5月 7日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~6に係る発明は、令和 1年 5月 7日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、「本願発明1」~「本願発明6」といい、まとめて「本願発明」という。)。
「【請求項1】
質量%で
B2O3成分を1.0~13.90%、
La2O3成分を39.0~56.0%、
Y2O3成分を1.80~20.0%%、
Nb2O5成分を1.0%超15.0%以下
TiO2成分を9.20%以上20.0%以下、及び
WO3成分を0.5%以上15.0%以下、
含有し、
Gd2O3成分の含有量が2.80%以下、
Yb2O3成分の含有量が2.80%以下、
SiO2成分の含有量が15.0%以下
であり、
Ta2O5成分を含有せず、
Gd2O3成分及びYb2O3成分の含有量の和が2.80%以下であり、
B2O3成分及びSiO2成分の含有量の和が13.88%以上21.0%以下であり、
Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の質量和が54.0%以上65.0%以下であり、
1.75以上の屈折率(nd)を有し、23以上50以下のアッベ数(νd)を有する
光学ガラス。
【請求項2】
Nb2O5成分及びWO3成分の含有量の和が5.50%以上11.14%以下である請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
質量比(Nb2O5+WO3)/(B2O3+SiO2)が0.387以上0.803以下である請求項1又は2に記載の光学ガラス。
【請求項4】
1300℃以下の液相温度を有する請求項1から3のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか記載の光学ガラスを母材とする光学素子。
【請求項6】
請求項5記載の光学素子を備える光学機器。」
(当審注:請求項1の「Y2O3成分を1.80~20.0%%、」の記載は、「Y2O3成分を1.80~20.0%、」の誤記と認める。)
第3 当審で通知した拒絶理由の概要
当審で通知した平成31年 2月27日付けの拒絶理由の概要は、次のとおりである。
1 特許法第29条第2項(進歩性)について
引用文献1:特開2010-83705号公報
引用文献2:特開2010-30879号公報
引用文献3:特開2008-137877号公報
審判請求時の請求項1~12に係る発明は、その親出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1に記載された発明及び引用文献1、3の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、審判請求時の請求項1~12に係る発明は、その親出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用文献2に記載された発明及び引用文献2、3の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
本願発明の課題は、審判請求時の明細書の【0008】に記載されるとおり、「屈折率及びアッベ数が所望の範囲内にあり、且つ光学機器の軽量化に寄与しうる安定なガラスを、より安価に得ること」であると認められるが、審判請求時の請求項1は、ガラス組成を部分的に特定するものであって、請求項に記載のない比重の大きい成分の含有も許容し得る、いわゆるオープンクレームであり、審判請求時の請求項1において特定される「光学ガラス」の組成から、審判請求時の請求項1に係る発明が、軽量化された「光学ガラス」であることが自明のものとはいえないし、審判請求時の請求項1に、「光学ガラス」の比重が特定されるものでもない。
してみると、審判請求時の請求項1に係る発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえないから、特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するといえない。
このことは、審判請求時の請求項1を引用する請求項2~12についても同様である。
3 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)、第6項第1号(サポート要件)について
発明の詳細な説明は、審判請求時の請求項1~12において下記(i)~(viii)について特定される範囲において、「1.75以上の屈折率(nd)」及び「23以上50以下のアッベ数(νd)」とすることについて、過度の試行錯誤を要せずに実施し得るように説明されたものでない。
(i)「B2O3成分」、「SiO2成分」、「B2O3成分及びSiO2成分の含有量の和」
(ii)「La2O3成分」、「Y2O3成分」、「Yb2O3成分」、「Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の質量和」
(iii)「質量比(Gd2O3+Yb2O3)/(La2O3+Y2O3)」
(iv)「Nb2O5成分」、「WO3成分」、「TiO2成分」、「Nb2O5成分及びWO3成分の含有量の和」
(v)「質量比(Nb2O5+WO3)/(B2O3+SiO2)」
(vi)「MgO成分」、「CaO成分」、「SrO成分」、「BaO成分」、「RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)の質量和」
(vii)「Li2O成分」、「Na2O成分」、「K2O成分」、「Cs2O成分」、「Rn2O成分(式中、RnはLi、Na、K、Csからなる群より選択される1種以上)の質量和」
(viii)「P2O5成分」、「GeO2成分」、「ZrO2成分」、「ZnO成分」、「Al2O3成分」、「Ga2O3成分」、「Bi2O3成分」、「TeO2成分」、「SnO2成分」、「Sb2O3成分」
言い換えると、発明の詳細な説明の記載からは、「光学ガラス」における各成分の含有量、含有量の和、質量比を、審判請求時の請求項1~12において上記(i)~(viii)について特定される範囲にまで拡張することはできない。
4 特許法第36条第6項第2号(明確性)について
審判請求時の請求項1における、「Ta2O5成分を含有せず」との記載と、「Gd2O3成分、Yb2O3成分及びTa2O5成分の含有量の和」との記載は、「Ta2O5成分」の含有について記載事項が整合していないので、審判請求時の請求項1に係る発明は不明確である。
このことは、審判請求時の請求項1を直接的又は間接的に引用する審判請求時の請求項2~12についても同様である。
第4 当審で通知した拒絶理由についての判断
1 特許法第29条第2項(進歩性)について
(1)引用文献の記載事項
(1-1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%表示で、
SiO2およびB2O3を合計で5~32%、
La2O3、Gd2O3およびY2O3を合計で45~65%、
ZnOを0.5~10%、
TiO2およびNb2O5を合計で1~20%、
ZrO2を0~15%、
WO3を0~2%、
Yb2O3を0~20%、
Li2O、Na2OおよびK2Oを合計で0~10%、
MgO、CaO、SrOおよびBaOを合計で0~10%、
Ta2O5を0~12%、
GeO2を0~5%、
Bi2O3を0~10%、
Al2O3を0~10%、
含み、
B2O3の含有量に対するSiO2の含有量の質量比(SiO2/B2O3)が0.3~1.0、La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量に対するGd2O3およびY2O3の合計含有量の質量比(Gd2O3+Y2O3)/(La2O3+Gd2O3+Y2O3)が0.05~0.6であり、
屈折率ndが1.89~2.0、アッベ数νdが32~38、かつ着色度λ70が430nm以下であることを特徴とする光学ガラス。」
(1b)「【0032】
TiO2の含有量は、屈折率を高め、化学的耐久性および耐失透性をより改善する上から0.1%以上とすることが好ましいが、液相温度およびガラス転移温度を低く抑える上から15%以下とすることが好ましい。したがって、TiO2の含有量の好ましい範囲は0.1~15%、より好ましい範囲は1~15%、さらに好ましい範囲は2~13%、一層好ましい範囲は2~9%である。」
(1c)「【実施例】
【0101】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって何等限定されるものではない。
【0102】
(実施例1)
まず、表1~表6に示す組成を有するガラスNo.1~22が得られるように、原料として炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物、ホウ酸などを用い、各原料粉末を秤量して十分混合し、調合原料とし、この調合原料を白金製坩堝に入れて1200~1400℃で1~3時間、加熱、熔融し、清澄、撹拌して均質な熔融ガラスした。この熔融ガラスを予熱した鋳型に流し込んで急冷し、ガラス転移温度近傍の温度で2時間保持した後、徐冷してガラスNo.1~22の各光学ガラスを得た。いずれのガラス中にも結晶の析出は認められなかった。
【0103】
なお、各ガラスの特性は、以下に示す方法で測定した。測定結果を表1~表6に示す。
(1)屈折率ndおよびアッベ数νd
1時間あたり30℃の降温速度で冷却した光学ガラスについて測定した。
(2)ガラス転移温度Tg
熱機械分析装置を用いて、昇温速度4℃/分の条件下で測定した。
(3)液相温度LT
ガラスを所定温度に加熱された炉内に入れて2時間保持し、冷却後、ガラス内部を100倍の光学顕微鏡で観察し、結晶の有無から液相温度を決定した。
・・・
【0104】
【表1】
」
(ア)上記(1a)、(1c)によれば、引用文献1には、「光学ガラス」に係る発明が記載されており、上記(1c)のガラスNo.3の「光学ガラス」に注目すれば、引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる。
「質量%表示で、
SiO2を7.54%、
B2O3を11.47%、
La2O3を44.32%、
Gd2O3を10.43%、
Y2O3を2.36%、
ZnOを5.54%、
TiO2を6.27%、
Nb2O5を6.33%、
ZrO2を5.74%含み、
Yb2O3、WO3、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、BaO、Ta2O5、GeO2、Bi2O3、Al2O3の含有量はいずれも0.00%であり、
La2O3、Gd2O3およびY2O3の合計含有量に対するGd2O3およびY2O3の合計含有量の質量比(Gd2O3+Y2O3)/(La2O3+Gd2O3+Y2O3)が0.22であり、
屈折率ndが1.90928、アッベ数νdが35.3であり、液相温度が1190℃である、光学ガラス。」(以下、「引用発明1」という。)
(1-2)引用文献2の記載事項
引用文献2には、以下の記載がある。
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物ガラスであって、カチオン%表示で、
Si4+ 0~30%、
B3+ 10~55%、
Li+、Na+およびK+を合計で5%未満、
Mg2+、Ca2+およびSr2+を合計で5%未満、
Ba2+ 0~8%、
Zn2+ 0.1~15%、
La3+ 10~50%、
Gd3+ 0~20%、
Y3+ 0~15%、
Yb3+ 0~10%、
Zr4+ 0~20%、
Ti4+ 0.1~22%、
Nb5+ 0~20%、
Ta5+ 0~8%、
W6+ 0~5%、
Ge4+ 0~8%、
Bi3+ 0~10%、
Al3+ 0~10%、
を含み、B3+の含有量に対するSi4+の含有量のカチオン比Si4+/B3+が1.0未満、
酸化物に換算してNb2O5とTa2O5の合計含有量が14質量%未満であり、
屈折率ndが1.92~2.2、アッベ数νdが25~45であることを特徴とする光学ガラス。」
(2b)「【0029】
W6+は、屈折率を高め、液相温度を低下させ、耐失透性の改善に寄与する任意成分であるが、その量が5%を越えると液相温度が上昇し、耐失透性が悪化するとともに、ガラスの着色も強まる。したがって、W6+の含有量を0~5%とする。W6+の含有量の好ましい範囲は0~4%、より好ましい範囲は0~3%、さらに好ましい範囲は0~2%、一層好ましい範囲は0~1%であり、W6+を含有しないことがより一層好ましい。」
(2c)「【0080】
(実施例1)
まず、表1-1~表1-4に示す組成(カチオン%表示)を有する酸化物ガラスNo.1~36が得られるように、原料として硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物、ホウ酸などを用い、各原料粉末を秤量して十分混合し、調合原料とし、この調合原料を白金製坩堝に入れて1400℃で加熱、熔融し、清澄、撹拌して均質な熔融ガラスした。この熔融ガラスを予熱した鋳型に流し込んで急冷し、ガラス転移温度近傍の温度で2時間保持した後、徐冷して酸化物ガラスNo.1~36の各光学ガラスを得た。いずれのガラス中にも結晶の析出は認められなかった。
【0081】
なお、酸化物ガラスNo.1~36のアニオン成分は全量、O2-である。また、表2-1~表2-3は、酸化物ガラスNo.1~36の質量%表示による組成、表3-1~表3-3はモル%表示による組成である。
【0082】
各ガラスの特性は、以下に示す方法で測定した。測定結果を表1-5に示す。
(1)屈折率ndおよびアッベ数νd
1時間あたり30℃の降温速度で冷却した光学ガラスについて測定した。
・・・
(4)液相温度
ガラスを所定温度に加熱された炉内に入れて2時間保持し、冷却後、ガラス内部を100倍の光学顕微鏡で観察し、結晶の有無から液相温度を決定した。
・・・
【0086】
【表1-4】
【0087】
【表1-5】
【0088】
【表2-1】
【0089】
【表2-2】
【0090】
【表2-3】
」
(ア)上記(2a)、(2c)によれば、引用文献2には、「光学ガラス」に係る発明が記載されており、上記(2c)の酸化物ガラスNo.6の「光学ガラス」に注目すれば、引用文献2には、以下の発明が記載されているといえる。
「質量%表示で、
SiO2を6.36%、
B2O3を9.77%、
BaOを4.74%、
ZnOを2.83%、
La2O3を41.54%、
Gd2O3を9.15%、
Y2O3を2.28%、
ZrO2を5.98%
TiO2を10.55%、
Nb2O5を6.80%含み、
Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、Yb2O3、Ta2O5、WO3、GeO2、Bi2O3、Al2O3の含有量はいずれも0.00%であり、
屈折率ndが1.94831、アッベ数νdが31.56であり、液相温度が1180℃未満である、光学ガラス。」(以下、「引用発明2」という。)
(2)対比・判断
(2-1)引用文献1を主引用例とする場合
ア 対比
(ア)本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1に係る「光学ガラス」は、質量%表示で、SiO2を7.54%、B2O3を11.47%、La2O3を44.32%、Nb2O5を6.33%、ZnOを5.54%、Y2O3を2.36%、Yb2O3、WO3、Ta2O5、Li2Oの含有量がいずれも0.00%であるから、「質量%でB2O3成分を1.0~13.90%、La2O3成分を39.0~56.0%、Y2O3成分を1.80~20.0%、Nb2O5成分を1.0%超15.0%以下、含有し、Yb2O3成分の含有量が2.80%以下、SiO2成分の含有量が15.0%以下」であり、「Ta2O5成分」を含有しない点で、本願発明1と一致している。
(イ)また、引用発明1に係る「光学ガラス」は、更に、「B2O3成分及びSiO2成分の含有量の和」が11.47%(B2O3)+7.54%(SiO2)=19.01%となるものであり、「Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の質量和」が44.32%(La2O3)+10.43%(Gd2O3)+2.36%(Y2O3)+0.00%(Yb2O3)=57.11%となるものであり、屈折率ndが1.90928、アッベ数νdが35.3であるから、「B2O3成分及びSiO2成分の含有量の和が13.88%以上21.0%以下であり、Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の質量和が54.0%以上65.0%以下」であり、「1.75以上の屈折率(nd)を有し、23以上50以下のアッベ数(νd)を有する」点で、本願発明1と一致している。
(ウ)上記(ア)~(イ)によれば、本願発明1と引用発明1とは、
「質量%で
B2O3成分を1.0~13.90%、
La2O3成分を39.0~56.0%、
Y2O3成分を1.80~20.0%%、
Nb2O5成分を1.0%超15.0%以下、
含有し、
Yb2O3成分の含有量が2.80%以下、
SiO2成分の含有量が15.0%以下
であり、
Ta2O5成分を含有せず、
B2O3成分及びSiO2成分の含有量の和が13.88%以上21.0%以下であり、
Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の質量和が54.0%以上65.0%以下であり、
1.75以上の屈折率(nd)を有し、23以上50以下のアッベ数(νd)を有する
光学ガラス。」である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1-1:本願発明1においては、「光学ガラス」の「Gd2O3成分の含有量が2.80%以下」であり、「Gd2O3成分及びYb2O3成分の含有量の和が2.80%以下」であるのに対して、引用発明1においては、「光学ガラス」が「Gd2O3」を10.43%含み、「Gd2O3成分及びYb2O3成分の含有量の和」が10.43%である点。
相違点1-2:本願発明においては、「光学ガラス」が「TiO2成分を9.20%以上20.0%以下」含有するのに対して、引用発明1においては、「TiO2を6.27%」含む点。
相違点1-3:本願発明においては、「光学ガラス」が「WO3成分を0.5%以上15.0%以下」含有するのに対して、引用発明1においては、「WO3の含有量」が0.00%である点。
イ 判断
(ア)事案に鑑み、上記相違点1-2から検討すると、上記(1)(1-1)(1b)によれば、引用文献1に記載される発明におけるTiO2の含有量の最も好ましい範囲は2~9%であり、引用発明1の「TiO2」の含有量である「6.27%」は、最も好ましい範囲に含まれるものである。
(イ)そして、引用発明1において、「TiO2」の含有量を、最も好ましい範囲から外れる「9.20%以上20.0%以下」とする合理的な動機付けは存在しないのであって、このことは、引用文献1及び3の記載事項に左右されるものではない。
(ウ)したがって、引用発明1において、「光学ガラス」を、「TiO2成分を9.20%以上20.0%以下」含有するものとして、上記相違点1-2に係る本願発明1の発明特定事項とすることを、引用文献1及び3の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るものとはいえないから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明1を、引用発明1及び引用文献1、3の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
ウ 本願発明2~6について
(ア)本願発明2~6は、いずれも、本願発明1を直接的又は間接的に引用するものであって、本願発明2~6と引用発明1とを対比すると、いずれの場合であっても、少なくとも上記相違点1-2の点で相違するものである。
(イ)そして、引用発明1において、「光学ガラス」を、「TiO2成分を9.20%以上20.0%以下」含むものとして、上記相違点1-2に係る本願発明1の発明特定事項とすることを、引用文献1及び3の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るものとはいえないから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明1を、引用発明1及び引用文献1、3の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないことは、上記イ(ウ)に記載のとおりであって、同様の理由により、本願発明2~6を、引用発明1及び引用文献1、3の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(2-2)引用文献2を主引用例とする場合
ア 対比
(ア)本願発明1と引用発明2とを対比すると、引用発明2に係る「光学ガラス」は、質量%表示で、SiO2を6.36%、B2O3を9.77%、La2O3を41.54%、Y2O3を2.28%、Nb2O5を6.80%、TiO2を10.55%を含み、Yb2O3、Ta2O5の含有量がいずれも0.00%であるから、質量%でB2O3成分を1.0~13.90%、La2O3成分を39.0~56.0%、Y2O3成分を1.80~20.0%、Nb2O5成分を1.0%超15.0%以下、TiO2成分を9.20%以上20.0%以下、含有し、Yb2O3成分の含有量が2.80%以下、SiO2成分の含有量が15.0%以下であり、Ta2O5成分を含有しない点で、本願発明1と一致している。
(イ)また、引用発明2に係る「光学ガラス」は、更に、「B2O3成分及びSiO2成分の含有量の和」が9.77%(B2O3)+6.36%(SiO2)=16.13%となるものであり、屈折率ndが1.94831、アッベ数νdが31.56であるから、「B2O3成分及びSiO2成分の含有量の和が13.88%以上21.0%以下」であり、「1.75以上の屈折率(nd)を有し、23以上50以下のアッベ数(νd)を有する」点で、本願発明1と一致している。
(ウ)上記(ア)~(イ)によれば、本願発明1と引用発明2とは、
「質量%で
B2O3成分を1.0~13.90%、
La2O3成分を39.0~56.0%、
Y2O3成分を1.80~20.0%、
Nb2O5成分を1.0%超15.0%以下、
TiO2成分を9.20%以上20.0%以下、
含有し、
Yb2O3成分の含有量が2.80%以下、
SiO2成分の含有量が15.0%以下
であり、
Ta2O5成分を含有せず、
B2O3成分及びSiO2成分の含有量の和が13.88%以上21.0%以下であり、
1.75以上の屈折率(nd)を有し、23以上50以下のアッベ数(νd)を有する光学ガラス。」である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点2-1:本願発明1においては、「光学ガラス」が「WO3成分を0.5%以上15.0%以下」含有するのに対して、引用発明2においては、「光学ガラス」の「WO3」の含有量が0.00%である点。
相違点2-2:本願発明1においては、「光学ガラス」の「Gd2O3成分の含有量が2.80%以下」であって、「Gd2O3成分及びYb2O3成分の含有量の和が2.80%以下」であるのに対して、引用発明2においては、「光学ガラス」が「Gd2O3」を9.15%含み、「Gd2O3成分及びYb2O3成分の含有量の和」が9.15%(Gd2O3)+0.00%(Yb2O3)=9.15%である点。
相違点2-3:本願発明1においては、「Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の質量和が54.0%以上65.0%以下」であるのに対して、引用発明2においては、「「Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の質量和」が41.54%(La2O3)+9.15%(Gd2O3)+2.28%(Y2O3)+0.00%(Yb2O3)=52.97%である点。
イ 判断
(ア)まず、上記相違点2-1から検討すると、上記(1)(1-2)(2b)によれば、引用文献2に記載される発明においては、W6+は任意成分であって、含有しないことが最も好ましいものであって、引用発明2においては、「光学ガラス」の「WO3」の含有量が0.00%であるから、最も好ましいものとなっているものである。
(イ)すると、引用発明2において、「WO3」の含有量を「0.5%以上15.0%以下」とする合理的な動機付けは存在しないのであって、このことは、引用文献2及び3の記載事項に左右されるものではない。
(ウ)したがって、引用発明2において、「光学ガラス」を、「WO3成分を0.5%以上15.0%以下」含有するものとして、上記相違点2-1に係る本願発明1の発明特定事項とすることを、引用文献2及び3の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るものとはいえないから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明1を、引用発明2及び引用文献2、3の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
ウ 本願発明2~6について
(ア)本願発明2~6は、いずれも、本願発明1を直接的又は間接的に引用するものであって、本願発明2~6と引用発明2とを対比すると、いずれの場合であっても、少なくとも上記相違点2-1の点で相違するものである。
(イ)そして、引用発明2において、「光学ガラス」を、「WO3成分を0.5%以上15.0%以下」含有するものとして、上記相違点2-1に係る本願発明1の発明特定事項とすることを、引用文献2及び3の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るものとはいえないから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明1を、引用発明2及び引用文献2、3の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないことは、上記イ(ウ)に記載のとおりであって、同様の理由により、本願発明2~6を、引用発明2及び引用文献2、3の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3)小括
以上のとおりであるから、当審で通知した拒絶理由のうち、特許法第29条第2項(進歩性)についての理由はいずれも理由がない。
2 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
(ア)令和 1年 5月 7日付けの手続補正書による補正により補正された【0006】~【0008】によれば、本願発明は、屈折率及びアッベ数が所望の範囲内にある安定なガラスを、より安価に得ることを課題とするものといえる。
(イ)そして、本願発明においては、屈折率が「1.75以上」、アッベ数が「23以上50以下」に特定されるものであって、更に、本願明細書の【0031】、【0041】において高価であるとされる「Gd2O3成分」及び「Yb2O3成分」の含有量がいずれも「2.80%以下」に特定され、「Ta2O5」を含有しないものに特定されているから、当業者は、本願発明によって、屈折率及びアッベ数が所望の範囲内にある安定なガラスをより安価に得る、という上記課題を解決できることを理解できるものである。
(ウ)したがって、本願発明は、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、この点で、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合するものであるので、当審で通知した拒絶理由のうち、上記第3の2の特許法第36条第6項第1号(サポート要件)についての理由は理由がない。
3 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)、第6項第1号(サポート要件)について
(ア)令和 1年 5月 7日付けの手続補正書による補正により、本願発明における上記第3の3(iii)、(vi)~(viii)についての発明特定事項は削除されるものとなった。
(イ)そこで、本願発明において、上記第3の3(i)、(ii)、(iv)、(v)について特定される範囲について検討すると、本願発明においては、「屈折率(nd)」及び「アッベ数(νd)」について、「1.75以上の屈折率(nd)を有し、23以上50以下のアッベ数(νd)を有する」と特定されているのに対して、本願発明1で特定される組成を満足する実施例67、69~72、76~90、95~117、128~132(以下、「本願実施例」という。)における「屈折率(nd)」の最少値は1.9431(実施例97等)であり、本願発明において特定される「屈折率(nd)」の下限値である1.75との間には、0.1931の差があるものである。
また、本願実施例における「アッベ数(νd)」の最小値は28.2(実施例78)であり、本願発明において特定される「アッベ数(νd)」の下限値である23との間には5.2の差があり、本願実施例における「アッベ数(νd)」の最大値は32.2(実施例67)であり、本願発明において特定される「アッベ数(νd)」の上限値である50との間には、17.8の差があるものである。
(ウ)一方、山根 正之ら編,「ガラス光学ハンドブック」,初版第4刷,2007年 3月30日,株式会社朝倉書店,p.526-527(以下、「参考文献」という。)には、以下の記載がある。
「9.2組成
9.2.1 主要特性と組成
a.屈折率と組成
光学ガラスの屈折率ndは1.45~2.00,アッベ数νdは20~95の間に分布する.図9.1に示すように200種類以上のガラスがそれぞれ固有の値をもつ.・・・
実験的に得られた酸化物成分の量とndおよびνdとの関係は図9.2のようになる.この図はある成分からほかの成分に5wt%置換したときのndとνdの変化を表している.・・・この図によれば,たとえば高屈折率低分散ガラスを得るためには,Y2O3,La2O3,Gd2O3,BaOなどを多量に含むガラスにすればよく,高屈折率高分散ガラスを得るためにはTiO2,Nb2O5,PbOを多量に含むガラスにしてやればよいことがわかる.いくつかのガラスの分散曲線を図9.3に示す.」(526頁右欄13行~527頁右欄10行)
「
」(526頁)
「
」(527頁左欄)
上記参考文献の記載によれば、光学ガラスにおける屈折率ndとアッベ数νdの関係及び酸化物成分が屈折率ndとアッベ数νdに及ぼす影響は、ある程度、定量的に、本願の親出願の優先日前に技術常識として知られるものである。
(エ)そして、上記(イ)に記載される、本願発明において特定される「屈折率(nd)」及び「アッベ数(νd)」と本願実施例における「屈折率(nd)」及び「アッベ数(νd)」の数値に差があることと、本願明細書に記載された各成分の定性的な役割と、上記(ウ)に記載される技術常識に基づいてみれば、当業者は、上記第3の3(i)、(ii)、(iv)、(v)について特定される範囲において組成を変更しても、「1.75以上の屈折率(nd)」及び「23以上50以下のアッベ数(νd)」という物性値を達成できることを理解できるものである。
(オ)したがって、本願発明は、物性要件を満たす光学ガラスを得ることができると考えられる各成分の数値範囲が、本願の組成要件に規定された各成分の各数値範囲の全体に及ぶものといえるから、この点で、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合し、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件に適合するものであるので、当審で通知した拒絶理由のうち、上記第3の3の特許法第36条第6項第1号(サポート要件)及び第4項第1号(実施可能要件)についての理由は理由がない。
4 特許法第36条第6項第2号(明確性)について
(ア)令和 1年 5月 7日付けの手続補正書による補正によって、「Gd2O3成分、Yb2O3成分及びTa2O5成分の含有量の和」との記載は、「Gd2O3成分及びYb2O3成分の含有量の和」に補正され、「Ta2O5成分を含有せず」との記載と記載事項が整合するものとなったので、本願発明1は明確であるというべきである。
(イ)したがって、本願は、特許法第36条第6項第2号(明確性)の規定に適合するので、上記第3の4の特許法第36条第6項第2号(明確性)についての理由は理由がない。
第5 原査定について
1 原査定の理由の概要
(1)特許法第29条第1項第3号、第2項について
引用例 1:特開2011-6318号公報
引用例 2:特開2007-63071号公報
引用例 3:特開昭56-5345号公報
引用例 4:特開昭58-125636号公報
引用例 5:特開平5-262533号公報
引用例 6:特開2011-153048号公報
引用例 7:特開2010-30879号公報
引用例 8:特開2009-179510号公報
引用例 9:特開昭52-155614号公報
引用例10:特開昭55-121925号公報
引用例11:特開2002-12443号公報
引用例12:特開2002-284542号公報
引用例13:特開2005-179142号公報
引用例14:特開2008-201646号公報
引用例15:特開2010-83705号公報
引用例16:国際公開第2009/072335号
引用例17:国際公開第2011/065097号
引用例18:特開2002-249337号公報
(ア)引用例1(実施例3、5~7、9、10、12~14、20~28、30~35)、2(実施例1、6、9、14、18、20、21、23)、3(実施例1~4、7、8、10~12、14、15、17、18)、4(実施例5)、5(実施例7)、6(実施例1~30、比較例1)、7(No.1~36)、8(ガラスNo.1~10)には、本願出願時の請求項1~16で特定されるガラス組成範囲を満たすとともに、同請求項17で特定される屈折率及びアッベ数を満たす光学ガラスが記載されている。
引用例1、7、8の光学ガラスは、液相温度が、本願出願時の請求項18で特定される1300℃以下となっている。
また、引用例2~6の光学ガラスも、本願と同程度の液相温度が得られている蓋然性が高い。
光学ガラスを光学素子や光学機器に用いる点は、引用例1、2、4、6~8に記載されており、格別なものではない。
(イ)引用例9(No.3、21、23、27、33、34)、10(実施例25)、11(実施例6、12、21)、12(実施例1~13、比較例1)、13(実施例3~7、9、10)、14(実施例1、3~6、8、10、11)、15(No.1~11、13~22)、16(ex.1~14、17)、17(実施例1~22、比較例2~4)には、本願出願時の請求項1~16で特定されるガラス組成範囲を満たすとともに、同請求項17で特定される屈折率及びアッベ数、および、同請求項18で特定される液相温度を満たす、光学ガラスが記載されている。
また、引用例18(実施例8、9)のガラス組成をモル%から質量%に換算すると、本願出願時の請求項1~16で特定されるガラス組成範囲を満たすとともに、同請求項17で特定される屈折率及びアッベ数、及び同請求項18で特定される液相温度を満たす光学ガラスが記載されている。
(2)特許法第29条の2について
引用例19:特願2011-51005号(特開2012-197217号)
引用例20:特願2011-147181号(特開2013-14454号)
引用例21:特願2011-168013号(特開2013-32232号)
(ア)引用例19(No.9、25、29)、20(No.1、2、5、10、12、13、15~18、20~25、28~30)、21(No.1、2、5、10、12、13、15~18、20~25、28~30)の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面には、本願出願時の請求項1~16で特定されるガラス組成範囲を満たすとともに、同請求項17で特定される屈折率及びアッベ数、および、同請求項18で特定される液相温度を満たす光学ガラスが記載されている。
(3)特許法第36条第6項第1号について
(ア)本願出願時の請求項1には、「質量%でB2O3成分を1.0~30.0%及びLa2O3成分を10.0~60.0%含有し、Y2O3成分の含有量が30.0%以下である光学ガラス」という発明特定事項が記載されているが、上記発明特定事項の数値範囲に亘って、「屈折率及びアッベ数が所望の範囲内にあり、且つ光学機器の軽量化に寄与しうる安定なガラスを、より安価に得る」という本願発明の課題を解決できる「屈折率及びアッベ数が所望の範囲内」を満たす光学ガラスが得られるのかが明らかでなく、出願時の技術常識に照らしても、本願出願時の請求項1に係る発明の範囲まで、明細書に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
(イ)上記「光学機器の軽量化」について、本願明細書には、Y2O3成分を含有させることが記載されているのに対し、本願出願時の請求項1ではY2O3成分の上限値のみが特定されているから、当該Y2O3成分を含有させないガラス組成を包含していることになる。
したがって、本願出願時の請求項1には、明細書に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、同請求項1に係る発明は、明細書に記載した範囲を超えることとなる。
(ウ)そして、上記(ア)、(イ)の事項は、本願出願時の請求項1を引用する請求項2~17にも当てはまる。
2 原査定についての判断
(1)特許法第29条第1項第3号、第2項について
(ア)本願発明1に係る「光学ガラス」は、「Y2O3成分を1.80~20.0%」含有し、「Gd2O3成分の含有量が2.80%以下」、「Gd2O3成分及びYb2O3成分の含有量の和が2.80%以下」であるものである。
これに対して、引用例7は、上記第3の1の引用文献2と同じものであって、引用例7(No.1~36)に記載される発明のうちNo.1~28、30~36に記載される発明は、いずれも、「光学ガラス」の「Gd2O3成分の含有量」が2.80%を超えており、「Gd2O3成分の含有量が2.80%以下」、「Gd2O3成分及びYb2O3成分の含有量の和が2.80%以下」とはならないものである。
また、No.29に記載される発明は、「Y2O3成分」の含有量が0.28%であり、「Y2O3成分を1.80~20.0%」含有するものではないから、本願発明1が、引用例7(No.1~36)に記載される発明であるとはいえない。
そして、引用例7(No.1~36)に記載される発明において、「光学ガラス」を、「Y2O3成分を1.80~20.0%」含有するものとし、又は、「Gd2O3成分の含有量」を「2.80%以下」、「Gd2O3成分及びYb2O3成分の含有量の和」を「2.80%以下」とする合理的な動機付けは存在しないのであって、このことは、引用例1~18の記載事項に左右されるものではない。
また、引用例15は、上記第3の1の引用文献1と同じものであって、引用例15(No.1~11、13~22)に記載される発明は、いずれも、「光学ガラス」の「Gd2O3成分の含有量」が2.80%を超えており、「Gd2O3成分の含有量が2.80%以下」、「Gd2O3成分及びYb2O3成分の含有量の和が2.80%以下」とはならないものであるから、本願発明1が、引用例15(No.1~11、13~22)に記載される発明であるとはいえない。
そして、引用例15(No.1~11、13~22)に記載される発明において、「光学ガラス」を、「Gd2O3成分の含有量」を「2.80%以下」、「Gd2O3成分及びYb2O3成分の含有量の和」を「2.80%以下」とする合理的な動機付けは存在しないのであって、このことは、引用例1~18の記載事項に左右されるものではない。
したがって、本願発明1を、引用例7(No.1~36)、15(No.1~11、13~22)に記載される発明及び引用例1~18の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(イ)本願発明1に係る「光学ガラス」は、「Ta2O5成分」を含有しないものである。
これに対して、引用例1(実施例3、5~7、9、10、12~14、20~28、30~35)、2(実施例1、6、9、14、18、20、21、23)、3(実施例1~4、7、8、10~12、14、15、17、18)、9(No.3、21、23、27、33、34)、11(実施例6、12、21)に記載される発明は、いずれも、「光学ガラス」が「Ta2O5成分」を含有するものであるから、本願発明1が、引用例1(実施例3、5~7、9、10、12~14、20~28、30~35)、2(実施例1、6、9、14、18、20、21、23)、3(実施例1~4、7、8、10~12、14、15、17、18)、9(No.3、21、23、27、33、34)、11(実施例6、12、21)に記載される発明であるとはいえない。
そして、引用例1(実施例3、5~7、9、10、12~14、20~28、30~35)、2(実施例1、6、9、14、18、20、21、23)、3(実施例1~4、7、8、10~12、14、15、17、18)、9(No.3、21、23、27、33、34)、11(実施例6、12、21)に記載される発明において、「光学ガラス」を、「Ta2O5成分を含有」しないものとする合理的な動機付けは存在しないのであって、このことは、引用例1~18の記載事項に左右されるものではない。
したがって、本願発明1を、引用例1(実施例3、5~7、9、10、12~14、20~28、30~35)、2(実施例1、6、9、14、18、20、21、23)、3(実施例1~4、7、8、10~12、14、15、17、18)、9(実No.3、21、23、27、33、34)、11(実施例6、12、21)に記載される発明及び引用例1~18の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(ウ)本願発明1に係る「光学ガラス」は、「WO3成分」を「0.5%以上15.0%以下」含有するものである。
これに対して、引用例4(実施例5)、5(実施例7)、10(No.25)、13(実施例3~7、9、10)に記載される発明は、いずれも、「光学ガラス」が「WO3成分」を含有しないものであるから、本願発明1が、引用例4(実施例5)、5(実施例7)、10(No.25)、13(実施例3~7、9、10)に記載される発明であるとはいえない。
そして、引用例4(実施例5)、5(実施例7)、10(No.25)、13(実施例3~7、9、10)に記載される発明において、「光学ガラス」を、「WO3成分を0.5%以上15.0%以下」含有するものとする合理的な動機付けは存在しないのであって、このことは、引用例1~18の記載事項に左右されるものではない。
したがって、本願発明1を、引用例4(実施例5)、5(実施例7)、10(No.25)、13(実施例3~7、9、10)に記載される発明及び引用例1~18の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(エ)本願発明1に係る「光学ガラス」は、「Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の質量和」が「54.0%以上65.0%以下」であるものである。
これに対して、引用例6(実施例1~30、比較例1)、17(実施例1~22、比較例2~4)に記載される発明においては、「光学ガラス」における「Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の質量和」が最大でも「41.4%」(引用例17実施例4)であるから、引用例6(実施例1~30、比較例1)、17(実施例1~22、比較例2~4)に記載される発明は、いずれも、「光学ガラス」における「Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の質量和」が「54.0%以上65.0%以下」とはならないので、本願発明1が、引用例6(実施例1~30、比較例1)、17(実施例1~22、比較例2~4)に記載される発明であるとはえない。
そして、引用例6(実施例1~30、比較例1)、17(実施例1~22、比較例2~4)に記載される発明において、「光学ガラス」における「Ln2O3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の質量和」を「54.0%以上65.0%以下」とする合理的な動機付けは存在しないのであって、このことは、引用例1~18の記載事項に左右されるものではない。
したがって、本願発明1を、引用例6(実施例1~30、比較例1)、17(実施例1~22、比較例2~4)に記載される発明及び引用例1~18の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(オ)本願発明1に係る「光学ガラス」は、「TiO2成分」を「9.20%以上20.0%以下」含有するものである。
これに対して、引用例8(ガラスNo.1~10)に記載される発明においては、「光学ガラス」における「TiO2成分」の含有量が最大でも「8.1%」(ガラスNo.10)であるから、引用例8(ガラスNo.1~10)に記載される発明は、いずれも、「光学ガラス」における「TiO2成分」の含有量が「9.20%以上20.0%以下」とはならないので、本願発明1が、引用例8(ガラスNo.1~10)に記載される発明であるとはえない。
そして、引用例8(ガラスNo.1~10)に記載される発明において、「光学ガラス」における「TiO2成分」の含有量を「9.20%以上20.0%以下」とする合理的な動機付けは存在しないのであって、このことは、引用例1~18の記載事項に左右されるものではない。
したがって、本願発明1を、引用例8(ガラスNo.1~10)に記載される発明及び引用例1~18の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(カ)引用例18(実施例8、9)においては、ガラス組成がモル%で記載されているが、これを質量%に換算すると、以下のとおりである。
実施例8:B2O3:29.12%、La2O3:32.44%、Gd2O3:12.99%、ZnO:12.97%、Al2O3:2.03%、ZrO2:4.91%、WO3:5.54%
実施例9:B2O3:29.74%、La2O3:33.13%、Gd2O3:7.37%、ZnO:13.24%、Al2O3:2.07%、ZrO2:5.01%、WO3:9.43%
これを踏まえて検討すると、本願発明1に係る「光学ガラス」は、「B2O3成分」を「1.0~13.90%」含有するものであり、「B2O3成分及びSiO2成分の含有量の和」が「13.88%以上21.0%以下」であるものである。
これに対して、引用例12(実施例1~13、比較例1)、14(実施例1、3~6、8、10、11)、16(ex.1~14、17)、18(実施例8、9)に記載される発明においては、「光学ガラス」における「B2O3成分」の含有量が最小でも「19.26%」(引用例12実施例2)であり、「B2O3成分及びSiO2成分の含有量の和」が最小でも「21.06%」(引用例12比較例1)であるから、引用例12(実施例1~13、比較例1)、14(実施例1、3~6、8、10、11)、16(ex.1~14、17)、18(実施例8、9)に記載される発明は、いずれも、「光学ガラス」における「B2O3成分」が「1.0~13.90%」とはならず、「B2O3成分及びSiO2成分の含有量の和」が「13.88%以上21.0%以下」ともならないので、本願発明1が、引用例12(実施例1~13、比較例1)、14(実施例1、3~6、8、10、11)、16(ex.1~14、17)、18(実施例8、9)に記載される発明であるとはいえない。
そして、引用例12(実施例1~13、比較例1)、14(実施例1、3~6、8、10、11)、16(ex.1~14、17)、18(実施例8、9)に記載される発明において、「光学ガラス」における「B2O3成分」を「1.0~13.90%」とし、「B2O3成分及びSiO2成分の含有量の和」を「13.88%以上21.0%以下」とする合理的な動機付けは存在しないのであって、このことは、引用例1~18の記載事項に左右されるものではない。
したがって、本願発明1を、引用例12(実施例1~13、比較例1)、14(実施例1、3~6、8、10、11)、16(ex.1~14、17)、18(実施例8、9)に記載される発明及び引用例1~18の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(キ)以上のとおりであるので、本願発明1が、引用例1~18に記載される発明であるとはいえないし、引用例1~18に記載される発明および引用例1~18の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
そして、このことは,本願発明1を引用する本願発明2~6についても同様であるから、原査定の特許法第29条第1項第3号及び第2項についての理由は理由がない。
(2)特許法第29条の2について
(ア)引用例19(No.9、25、29)、20(No.1、2、5、10、12、13、15~18、20~25、28~30)、21(No.1、2、5、10、12、13、15~18、20~25、28~30)の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載される発明に係る「光学ガラス」は、いずれも、「Gd2O3成分の含有量が2.80%以下」のものではないから、本願発明1と対比した場合、少なくとも、「Gd2O3成分の含有量」の点で相違点を有するものである。
(イ)したがって、本願発明1が、引用例19~21の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるとはいえない。
そして、このことは,本願発明1を引用する本願発明2~6についても同様であるから、原査定の特許法第29条の2についての理由は理由がない。
(3)特許法第36条第6項第1号について
(ア)本願発明は、物性要件を満たす光学ガラスを得ることができると考えられる各成分の数値範囲が、本願の組成要件に規定された各成分の各数値範囲の全体に及ぶものといえるから、この点で、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合することは、上記第4の3(オ)に記載のとおりである。
(イ)また、本願発明は、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、この点で、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合するものであることは、上記第4の2(ウ)に記載のとおりである。
(ウ)したがって、原査定の特許法第36条第6項第1号についての理由は理由がない。
第6 平成30年12月17日付け刊行物等提出書について
以下、審判請求時の補正により補正された特許請求の範囲に対して提出された、平成30年12月17日付け刊行物等提出書(以下、「刊行物等提出書」という。)における主張について検討する。
1 刊行物等提出書における主張の概要
刊行物 1:特開2009-179510号公報
刊行物 2:特開2008-001551号公報
刊行物 3:特開2010-083705号公報
刊行物 4:特開昭56-041850号公報
刊行物 5:特開昭60-046948号公報
刊行物 6:特開昭60-122745号公報
刊行物 7:特開昭60-221338号公報
刊行物 8:2005 Minerals Yearbook
刊行物 9:2006 Minerals Yearbook
刊行物10:2007 Minerals Yearbook
刊行物11:2008 Minerals Yearbook
刊行物12:2009 Minerals Yearbook
刊行物13:2010 Minerals Yearbook
刊行物14:2011 Minerals Yearbook
審判請求時の請求項1~12に係る発明は、刊行物等提出書で提出された刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された発明又は刊行物3に記載された発明と、刊行物4~14の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2 刊行物等提出書についての判断
(ア)刊行物1は、上記第5の1(1)の引用例8と同じものであって、引用例8を主引用例とした場合の進歩性の判断は上記第5の2(1)(オ)で検討したとおりであり、刊行物3は、上記第3の1の引用文献1と同じものであって、引用文献1を主引用例とした場合の進歩性の判断は上記第4の1(2)(2-1)で検討したとおりである。
そして、上記検討結果は、刊行物4~14の記載事項に左右されるものではないので、以下、刊行物2を主引用例とした場合について検討する。
(イ)刊行物2の「実験No.24」に注目すると、刊行物2に記載される発明は、「光学ガラス」が「TiO2成分」を含有しないものである。
そして、刊行物2の【0047】によれば、刊行物2に記載される発明における「TiO2成分」の最も好ましい含有量は、0~7%であるから、刊行物2に記載される発明において、「TiO2」の含有量を「9.20%以上20.0%以下」とする合理的な動機付けは存在しないのであって、このことは、刊行物4~14の記載事項に左右されるものではない。
したがって、本願発明1を、刊行物2に記載される発明及び刊行物4~14の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
そして、このことは、本願発明1を引用する本願発明2~6についても同様である。
(ウ)以上のとおりであるから、平成30年12月17日付け刊行物等提出書における特許法第29条第2項(進歩性)についての理由は理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本願は、原査定の拒絶理由及び当審から通知された拒絶理由のいずれを検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-010101