特許拒絶査定不服審判
2018-008534
EMG気管内チューブのための柔軟性電極
- 審判番号
- 2018-008534
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-502632外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年06月21日
- 審決日
- 2019年10月08日
- 公報発行日
- 2020年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (A61B) / P18 .536-WZ (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-502632「EMG気管内チューブのための柔軟性電極」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月25日国際公開、WO2014/152808、平成28年 4月25日国内公表、特表2016-512150〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)3月14日(パリ条約による優先権主張 2013年3月14日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年7月4日付けで拒絶理由が通知され、同年9月29日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成30年2月16日付けで拒絶査定されたところ、同年6月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。その後当審において令和元年5月7日付けで拒絶理由が通知され、同年9月6日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~9に係る発明は、令和元年9月6日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 【請求項1】
患者のEMG信号を監視するための装置であって、
気管内チューブと、
前記気管内チューブに沿って延在する導管と、
第1の直径を画定する外部表面を有し、前記導管に流体結合される第1のカフであって、前記第1のカフが、前記導管内に加圧流体があるときに前記第1の直径を第1の距離まで膨張させるような第1の伸展性を有する、第1のカフと、
第2の直径を画定する外部表面を有し、前記第1のカフよりも遠位側に配置され、前記導管に流体結合される第2のカフであって、前記第2のカフが、前記導管内に加圧流体があるときに前記第2の直径を前記第1の距離より大きい第2の距離まで膨張させるように画定される、前記第1の伸展性と等しい第2の伸展性を有する、第2のカフと、
前記第1のカフの前記外部表面上に形成される導電性インク電極と
を備え、
前記導管内に提供される流体により前記第1のカフおよび前記第2のカフが膨らんだとき、前記第1のカフがその前記外部表面上の第1の壁張力を有し、前記第2のカフがその前記外部表面上に第2の壁張力を有し、前記第1の壁張力が前記第2の壁張力より小さい、装置。」
第3 拒絶の理由
令和元年5月7日付けで当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。
1 (委任省令要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が、「カフ116」の伸展性に関しては、患者の声帯ヒダに「カフ116」が接触することを原因として外傷が発生するのを防止するように選択されなければならないことは理解できるものの、「カフ114」の伸展性を「カフ116」の伸展性と等しくすることにより、どのような課題が解決されるのか理解できないし、このことにより、請求項1~9に係る発明に、どのような技術上の意義があるのかも理解することができないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
2 (進歩性)この出願の請求項1~9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特表2013-506507号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審に付した。)
(引1a)「【0015】
[0056]図11は、1つの実施形態による、一次カフ1114と二次カフ1130を備えるEMG気管内挿入管1100を示している。図12Aは、図11に示されている気管内挿入管の二次カフ1130において、1つの実施形態により導電性インク電極1132が印刷されている二次カフ1130を近接視した図を示している。図12Bは、図11に示されている気管内挿入管の二次カフ1130において、別の実施形態による二次カフ1130を近接視した図を示している。図12Aに示されている二次カフ1130の実施形態は、参照番号1130-1により識別されており、図12Bに示されている実施形態は、参照番号1130-2により識別されている。気管内挿入管1100は、PVC管1110、一次カフ1114、及び二次カフ1130を含んでおり、二次カフ上には導電性インク電極1132が形成されている。管1110は、肺に入る気体及び肺から出る気体を輸送する。少なくとも1つのカフ膨張用導管(不図示)が、カフ1114及び1130を膨らませるための圧縮空気の供給源(不図示)に接続されるように構成されている。気管内挿入管1100が患者の気管の中へ挿入された後、二次カフ1130が膨らまされると、導電性インク電極1132が声帯襞と接触して、声帯襞からのEMG信号を感知する。感知された信号は、EMG処理機(例えばNIMデバイス120)へ、電極1132に接続されているワイヤを介して出力される。1つの実施形態では、二次カフ1130は、伸展性又は半伸展性の材料で作られており、導電性インク電極1132は、銀充填ポリマー導電性インクを二次カフ1130上に敷き写すか又は印刷することによって形成されている。銀インクが印刷されている二次カフ1130は、声帯襞に亘って膨らまされると、更に良好な電極接触を確立させる支援をする。電極1132は、二次カフ1130又は管1110に吹き付けられていてもよいし、二次カフ1130の実質的に表面全体を覆っていてもよい。電極1132は、図12Aに示されている以外の様々な形状又は形態をとっていてもよく、例えば本開示の他の図面の何れかに示されている形状又は形態或いは他の形状のうちの何れかであってもよい。他の実施形態では、EMG挿入管1100は、3つ又はそれ以上のカフを含んでいてもよい。」
(引1b)「【図11】
」
2 引用文献1に記載された発明
(1)上記(引1b)より、「一次カフ1114」及び「二次カフ1130」は、それぞれ、外表面を有し、「一次カフ1114」の直径は「二次カフ1130」の直径より大きく、「一次カフ1114」は「二次カフ1130」よりも遠位側に配置されている点が見て取れる。
(2)上記(1)を踏まえると、上記(引1a)及び(引1b)より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「EMG気管内挿入管1100において、
気管内挿入管1100は、PVC管1110、一次カフ1114、及び二次カフ1130を含み、
二次カフ上には導電性インク電極1132が形成され、
管1110は、肺に入る気体及び肺から出る気体を輸送し、
カフ1114及び1130を膨らませるための圧縮空気の供給源に接続されるカフ膨張用導管を備え、
二次カフ1130が膨らまされると、導電性インク電極1132が声帯襞と接触して、声帯襞からのEMG信号を感知し、感知された信号は、EMG処理機へ、出力され、
二次カフ1130は、伸展性の材料で作られ、
一次カフ1114及び二次カフ1130は、それぞれ、外表面を有し、
一次カフ1114の直径は二次カフ1130の直径より大きく、
一次カフ1114は二次カフ1130よりも遠位側に配置された
EMG気管内挿入管1100。」
第5 対比
1 本願発明と引用発明とを対比する。
(1) 引用発明の「EMG気管内挿入管1100」は、「二次カフ1130が膨らまされると、導電性インク電極1132が声帯襞と接触して、声帯襞からのEMG信号を感知し、感知された信号は、EMG処理機へ、出力され」るものであるから、本願発明の「患者のEMG信号を監視するための装置」に相当する。
(2)引用発明の「PVC管1110」は、本願発明の「気管内チューブ」に相当する。そして、引用発明の「カフ1114及び1130を膨らませるための圧縮空気の供給源に接続されるカフ膨張用導管」は「PVC管1110」に沿って延在していることは明らかであるから、本願発明の「前記気管内チューブに沿って延在する導管」に相当する。
(3)引用発明の「一次カフ1114は二次カフ1130よりも遠位側に配置され」ているから、引用発明の「二次カフ1130」は、本願発明の「第1のカフ」に相当し、引用発明の「二次カフ1130よりも遠位側に配置され」る「一次カフ1114」は、本願発明の「前記第1のカフよりも遠位側に配置され」る「第2のカフ」に相当する。
(4)引用発明の「二次カフ1130」の「外表面」は、「圧縮空気の供給源に接続されるカフ膨張用導管」により膨らまされた状態での「二次カフ1130の直径」を画定することは明らかであり、「二次カフ1130は、伸展性の材料で作られ」ているから、引用発明の「二次カフ1130」と、本願発明の「第1カフ」とは、「第1の直径を画定する外部表面を有し」、「前記第1のカフが、前記導管内に加圧流体があるときに前記第1の直径を第1の距離まで膨張させる伸展性を有している」点で一致する。
(5)引用発明の「一次カフ1114」の「外表面」は、「圧縮空気の供給源に接続されるカフ膨張用導管」により膨らまされた状態での「一次カフ1114の直径」を画定することは明らかであるから、引用発明の「一次カフ1114」と、本願発明の「第2カフ」とは、「第2の直径を画定する外部表面を有し」、「前記第2のカフが、前記導管内に加圧流体があるときに前記第2の直径を前記第1の距離より大きい第2の距離まで膨張させるように画定される」点で一致する。
(6)引用発明の「圧縮空気の供給源に接続されるカフ膨張用導管」は、「カフ1114及び1130を膨らませるための」ものであるから、「カフ1114及び1130」は、「カフ膨張用導管」と流体結合されていることは明らかであるから、引用発明の「一次カフ1114」及び「二次カフ1130」は、それぞれ、本願発明の「前記導管に流体結合される第2のカフ」及び「前記導管に流体結合される第1のカフ」に相当する。
(7)引用発明の「二次カフ上に」「形成され」た「導電性インク電極1132」は、本願発明の「前記第1のカフの前記外部表面上に形成される導電性インク電極」に相当する。
2 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「 患者のEMG信号を監視するための装置であって、
気管内チューブと、
前記気管内チューブに沿って延在する導管と、
第1の直径を画定する外部表面を有し、前記導管に流体結合される第1のカフであって、前記第1のカフが、前記導管内に加圧流体があるときに前記第1の直径を第1の距離まで膨張させるような第1の伸展性を有する、第1のカフと、
第2の直径を画定する外部表面を有し、前記第1のカフよりも遠位側に配置され、前記導管に流体結合される第2のカフであって、前記第2のカフが、前記導管内に加圧流体があるときに前記第2の直径を前記第1の距離より大きい第2の距離まで膨張させるように画定される、第2のカフと、
前記第1のカフの前記外部表面上に形成される導電性インク電極と
を備える
装置。」
(相違点)本願発明では、「第2のカフ」の伸展性が、「前記第1の伸展性と等しい第2の伸展性」であって、「前記導管内に提供される流体により前記第1のカフおよび前記第2のカフが膨らんだとき、前記第1のカフがその前記外部表面上の第1の壁張力を有し、前記第2のカフがその前記外部表面上に第2の壁張力を有し、前記第1の壁張力が前記第2の壁張力より小さい」のに対し、引用発明は「一次カフ1114」が伸展性であると特定されておらず、また、「一次カフ1114」及び「二次カフ1130」の壁張力に関し特定されていない点。
第6 判断
1 相違点について
上記相違点について検討する。
引用発明の「一次カフ1114」が伸展性を有する旨の特定はないものの、引用発明の「一次カフ1114」が気管内に挿入され、「圧縮空気の供給源」からの空気で膨らまされるものであり、一般に、気管内チューブに接続するカフを伸展性を有する材料で形成することは常套手段にすぎないから(例えば、特表2005-515040号公報【0017】【0018】、特表2008-500081号公報【0020】、特開2011-067596号公報【0025】など参照。)、引用発明の「一次カフ1114」が伸展性を有するものとすること及び伸展性をどの程度のものとするかは設計事項であるといえる。
また、引用発明の「一次カフ1114」は、「EMG気管内挿入管1100」の並進運動及び回転運動を低減又は排除するものである(【0008】)から、気管に十分に接触しなければならないこと、「二次カフ1130」は、気管内において「導電性インク電極1132」を声帯襞と接触させるものであることから、気管に強く接触させると「二次カフ1130」と声帯襞との接触により外傷が発生する恐れがあり、「一次カフ1114」の場合とは逆に気管と強く接触させることができないことは、当業者において、通常考慮されるべきことであり、気管に十分に接触させなければならない「一次カフ1114」の壁内の張力を、気管に強く接触させられない「二次カフ1130」の壁内の張力よりも大きくすることは、当業者が容易に想到しうることである。
そして、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0015】に、「[16]ラプラスの法則によると、壁内の張力は管の半径が増大すると増大する。」と記載されているように、壁内の張力は、カフの伸展性のほかに管の半径によっても変わることも明らかである。
すると、引用発明において、「カフ膨張用導管」に提供される流体により「一次カフ1114」及び「二次カフ1130」が膨らんだとき、「二次カフ1130」の壁張力が、「一次カフ1114」の壁張力より小さくなるように、「一次カフ1114」及び「二次カフ1130」の伸展性及び直径の設計として、「一次カフ1114」の伸展性を「二次カフ1130」の伸展性と等しい伸展性とし、また、「一次カフ1114」の直径を「二次カフ1130」の直径より大きくすることは、当業者が通常の創作力能力を発揮することにより、なし得ることにすぎない。
したがって、本願発明は、引用発明より当業者が容易に想到できたものである。
2 請求人の主張について
請求人は、令和元年9月6日付けの意見書において、
「(3)理由1、2について
審判官殿は、拒絶理由通知書において、「上記理由1及び2を解消するためには、「カフ114」の伸展性を「カフ116」の伸展性と等しくすることにより、どのような課題が解決され、また、このことにより、本願発明について、どのような技術上の意義があるのかを、意見書で主張されたい。」と述べられています。
以下、明細書の段落0013~0016を参照しながら、解決される課題、および技術上の意義について説明いたします。
カフ114の伸展性をカフ116の伸展性と等しくすることによって解決される課題は、カフ114およびカフ116が膨張するとき、カフ114およびカフ116が気管の壁との接触を維持することです。
柔軟なカフは、圧力により膨張し続けるので、カフ114は、電極112を有するカフ116と声帯ヒダとの間の接触により外傷が発生するのを防止するように、気管を拡張することができます。
したがって、カフ114およびカフ116が互いに比較的柔軟であれば、例えば、カフ114の伸展性とカフ116の伸展性とが等しければ、カフ114およびカフ116は常に気管の壁との接触を保ち、一方のカフ(特に、カフ114)が過度に膨張し、他方のカフが気管の壁と接触しなくなることが防止されます。
これにより、カフ116は、カフ116と声帯ヒダとの間の接触により外傷が発生するのを防止するように、膨らんで患者の声帯ヒダに接触することができるという技術上の意義があります。
この結果、理由1、2は、解消したものと思料いたします。」
旨、主張している。上記主張より、請求人は、「カフ114」の伸展性を「カフ116」の伸展性と等しくすることにより解決される課題及び「カフ114」の伸展性を「カフ116」の伸展性と等しくすることの技術上の意義は、一方のカフを気管と十分に接触させると共に、他方のカフは声帯ヒダとの間の接触により外傷が発生するのを防止するように、膨らんで患者の声帯ヒダに接触することであると主張していると認められる。しかしながら、上記請求人の主張する、解決される課題は、上記1で検討したとおり、当該技術分野において通常考慮されるべき課題であって、引用発明においても考慮されるべきものであることは明らかである。
そして、引用発明の「一次カフ1114」の伸展性を「二次カフ1130」の伸展性と異ならせても、「一次カフ1114」の直径と「二次カフ1130」の直径を適切に設計することにより、「一次カフ1114」の壁張力を「二次カフ1130」の壁張力より大きくすることができることを考慮すれば、「一次カフ1114」の伸展性を「二次カフ1130」の伸展性と同じものとすることによる格別の効果も認められず、上記請求人の主張には理由がない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明 は、本願出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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