特許拒絶査定不服審判
2018-007344
多方向ハンドピース
- 審判番号
- 2018-007344
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-538027外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年05月30日
- 審決日
- 2019年08月27日
- 公報発行日
- 2020年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】デンツプライ シロナ インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】結田 純次
- 【請求人代理人】竹林 則幸
- 分類
- P18 .121-Z (A61C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-538027「多方向ハンドピース」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月18日国際公開、WO2015/089239、平成28年12月22日国内公表、特表2016-539734〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)12月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年(平成25年)12月10日、米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成29年 4月17日付け:拒絶理由通知書
平成29年10月20日 :意見書・手続補正書の提出
平成30年 1月25日付け:拒絶査定
平成30年 5月30日 :審判請求書の提出
平成30年 7月 5日 :手続補正書(方式)の提出
第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成29年10月20日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし29に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「多方向ハンドピースであって:
本体軸に沿って延び、かつ本体軸のまわりを回転するように構成されているモータ駆動装置を含み、該モータ駆動装置は:
モータ駆動装置の近位端のモータ歯車装置と;
回転および軸方向運動を加工物に伝達するためのモータ歯車装置と係合しているファイル歯車装置と;
加工物のハウジングと
を有し;
ここで、モータ駆動装置の回転によって、加工物は回転しながら軸方向の振動運動で動き、加工物は往復して回転する、前記多方向ハンドピース。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由3は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知の技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献1:実願昭48-64988号(実開昭50-15193号)のマイクロフィルム
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
(1)引用文献1の明細書の2ページ3行ないし5ページ10行には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付与。以下同様。)
「従来歯科治療用ハンドピースにおいてはリーマを軸方向に固定した状態で保持し回転せしめるようにしている。このためリーマを軸方向に往復動せしめることが必要な治療例えば根管を拡大せしめる場合等において操作が非常に困難である欠点がある。又偏心突子の回転を利用してリーマを軸方向に往復動せしめるようにしたハンドピースもあるが、このものはリーマが回転せず軸方向往復動に伴つて一定角度内で往復回動するのみであるため、切削屑その他を外部に排出することができず又治療効果も少ない等の欠点がある。
本考案は以上のような欠点を除くようにしたものであつて、以下図面によつて本考案実施の一例を説明する。
本考案においては、第1図及び第2図に示すように、ハンドピースの軸部1内を走る回転シヤフト(図示せず。)により回転される減速用ウオームギヤ2をハンドピースの頭部3の側方に位置せしめ、前記ハンドピースの頭部3における縦方向軸線4の周りに回転されるよう筒状歯車5を前記ウオームギヤ2と噛合せしめて設ける。この筒状歯車5は第3図に示すようにその貫通孔6が六角孔のものとする。斯かる筒状歯車5内にはリーマ保持用の回転筒体7を挿通せしめる。この回転筒体7は第4図に示すように一部に前記筒状歯車5の貫通孔6と略適合する六角柱部分8を有するものとし、挿通されたとき筒状歯車5に対して前記軸線4方向に摺動自在ならしめる。又前記回転筒体7の外周面にはその中心軸と斜めに交叉する一平面に沿つて案内溝9を形成し、前記六角柱部分8が前記筒状歯車5内に挿通された状態で前記案内溝9と摺動自在に係合する突子10を前記ハンドピースの頭部3に固定して設ける。11は前記回転筒体7の内周面にその一端側から螺合するリーマ固定部材であつて前記回転筒体7内にその他端側から挿入されたリーマ12の基部を挾持し回転筒体7に一体に固定するものである。
本考案歯科用ハンドピースは上記のような構成であるから、前記ウオームギヤ2が回転すると筒状歯車5が回転され、その六角孔である貫通孔6と六角柱部分8との係合により回転筒体7が回転される。而してこの回転筒体7は前記筒状歯車5に対して軸線4方向には摺動自在であり、しかも案内溝9が突子10により案内されるため、回転筒体7が回転するとその1回転につき軸線4方向に1回往復動せしめられることとなる。この結果前記リーマ固定部材11によつて回転筒体7に固定されたリーマ12を回転せしめながらその軸方向に往復動せしめることができる。
尚上記実施例において突子10を螺着せしめることにより設ける等して脱着自在とすれば、当該突子10を除去した状態では回転筒体7が交換可能となる。従つて他の形状の案内溝を有する回転筒体を使用することによりリーマの往復動距離を変え或いは往復動を制限することができる。
又上記実施例においては回転筒体7を筒状歯車5に対して摺動自在ならしめるようにしたが、筒状歯車5を回転筒体7と一体にしてウオームギヤ2との噛合面を摺動面として軸線4方向に移動自在ならしめ、同様の往復動機構を用いるようにしても上記実施例と同様の効果を得ることができる。
以上のように本考案歯科治療用ハンドピースによれば極めて簡単な構成により、リーマを回転せしめつつ軸方向に往復動せしめることができると共に形状を極めて小型のものとすることができ、根管拡大用リーマを使用する場合を始め種々の歯科治療に極めて便利で高い治療効果が得られる等大きな利益がある。」
(2)上記(1)の記載からみて、回転シヤフトからウオームギア2及び回転歯車5を介して回転筒体7に伝達された回転力が、回転筒体7に設けられた案内溝9及び突子10に作用することで、リーマ固定部材11によって回転筒体7に固定されたリーマ12に回転及び縦方向軸線4の方向の往復動を与えることから、筒状歯車5、回転筒体7、案内溝9、突子10、リーマ固定部材11は、リーマ12に回転と往復動を与える機構(以下「回転・往復動機構」という。)を構成するといえる。ここで、上記(1)の「ハンドピースの軸部1内を走る回転シヤフト(図示せず。)により回転される減速用ウオームギヤ2をハンドピースの頭部3の側方に位置せしめ、前記ハンドピースの頭部3における縦方向軸線4の周りに回転されるよう筒状歯車5を前記ウオームギヤ2と噛合せしめて設ける。」という記載からみて、回転・往復動機構は、回転及び縦方向軸線4の方向の往復動をリーマ12に伝達するためのウオームギア2と噛合しているといえる。
(3)第1図及び第2図には、上記回転・往復動機構がハンドピースの頭部3に備えられている点が、それぞれ記載されている。
2 引用発明
上記1からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「歯科治療用ハンドピースであって、
ハンドピースの軸部1内を走る回転シヤフトにより回転される減速用ウオームギヤ2と、
回転及び縦方向軸線4の方向の往復動をリーマ12に伝達するためのウオームギヤ2と噛合している回転・往復道機構と、
リーマ12を保持する回転・往復動機構を備えたハンドピースの頭部3と
を有し、
回転シヤフトの回転によって、リーマは回転しながら縦方向軸線4の方向に往復動せしめる、歯科治療用ハンドピース。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「歯科治療用ハンドピース」は、その構造及び機能からみて、本願発明の「多方向ハンドピース」に相当し、以下同様に、「縦方向軸線4の方向の往復動」は「軸方向運動」に、「リーマ12」は「加工物」に、「噛合」は「係合」に、「回転・往復動機構」は「ファイル歯車装置」に、「リーマ12を保持する回転・往復動機構を備えたハンドピースの頭部3」は「加工物のハウジング」に、それぞれ相当する。
(2)引用発明の「ハンドピースの軸部1」は軸を有しており、「回転シヤフト」は当該軸のまわりを回転するように構成されていること、及び、「減速用ウオームギア2」が回転シヤフトの先端側に取り付けられていることはいずれも、技術常識からみて明らかであることから、引用発明の「ハンドピースの軸部1内を走る回転シヤフトにより回転される減速用ウオームギヤ2」は、本願発明の「本体軸に沿って延び、かつ本体軸のまわりを回転するように構成されているモータ駆動装置」及び「モータ駆動装置の近位端のモータ歯車装置」に相当する。
(3)引用発明の「往復動」とはリーマ12の縦方向軸線4の方向の振動運動を指すことから、引用発明の「回転しながら縦方向軸線4の方向に往復動せしめる」と本願発明の「回転しながら軸方向の振動運動で動き、加工物は往復して回転する」とは、「回転しながら軸方向の振動運動で動」く限りにおいて一致する。
上記(1)ないし(3)を踏まえると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりとなる。
(一致点)
「多方向ハンドピースであって:
本体軸に沿って延び、かつ本体軸のまわりを回転するように構成されているモータ駆動装置を含み、該モータ駆動装置は:
モータ駆動装置の近位端のモータ歯車装置と;
回転および軸方向運動を加工物に伝達するためのモータ歯車装置と係合しているファイル歯車装置と;
加工物のハウジングと
を有し;
ここで、モータ駆動装置の回転によって、加工物は回転しながら軸方向の振動運動で動く、前記多方向ハンドピース。」
(相違点)
加工物の運動について、本願発明では、回転しながら軸方向の振動運動で動き、往復して回転するのに対して、引用発明では、回転しながら軸方向の振動運動で動くものの、往復して回転するという構成を有するか明らかでない点。
第6 判断
引用文献1の明細書2ページ8行ないし13行の「又偏心突子の回転を利用して・・・(中略)・・・切削屑その他を外部に排出することができず又治療効果も少ない等の欠点がある。」という記載からみて、引用発明は切削屑その他を外部に排出するという技術課題を解決するためものであり、引用発明のリーマ12は、回転だけでなく往復動(すなわち、リーマ12の縦方向軸線4の方向の振動運動)も行うことから、ファイルとしての機能も有するものであるといえる。
よって、引用発明には、ファイルとして機能させるための構成を備えるようにすることの動機付けは内在しているものといえる。
また、引用発明のリーマ12の回転・往復動機構の構造は、リーマ12、リーマ固定部材11、筒状歯車5及び回転筒体7の構造だけでなく、案内溝9、突子10及び減速用ウオームギア2の構造をあわせてみても、リーマ12が一方向にしか回転できないような構造とはなっておらず、減速用ウオームギア2を回転させる回転シヤフトが正逆反転すればリーマ12もそれに合わせて正逆反転が可能な構造となっていることは明らかである。
ここで、リーマー、ファイル等の切削工具を装着して用いる歯科用ハンドピースにおいて、歯科の根管施術における切削工具の使用の際の効率性や危険性を踏まえて、モーターを正逆転反復運動させることは周知の技術である(必要とあらば、例えば、特開昭57-180951号公報(以下「文献」という。)の特許請求の範囲(1)、明細書2ページ左上欄6行ないし3ページ左上欄16行、明細書4ページ左下欄1行ないし12行等を参照のこと。)
してみると、引用発明の歯科治療用ハンドピースにおいて、上記周知の技術を適用しようとする動機付けはあり、かつ、適用を阻害する構造上の制約もないことを踏まえると、引用発明に上記周知の技術を適用し、リーマ12の回転について、回転しながら軸方向の振動運動で動き、正逆反復運動させること、すなわち、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって何ら困難性はない。
そして、上記相違点に係る本願発明の作用効果も、引用発明及び上記周知の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
請求人は、審判請求書(平成30年7月5日提出の手続補正書(方式)の11ページ7行ないし11行を参照。)において「引用文献1は、本願発明のように「2重機能により、ファイルに対し生み出されるトルクと、周期性疲労の作用を受けることとを低減しながら、ファイルが効率的にクリーニングおよび成形をすることが可能になる」ようにするという課題について何ら記載も示唆もするところがな」いと主張する。
しかしながら、例えば、文献の明細書2ページ右下欄7行ないし16行の「切削工具は種類の相違により、性質が著しく相違し、・・・(中略)・・・正回転に対し必ず反対方向の逆回転を交える必要がある。」という記載にもあるとおり、歯科治療において、リーマやファイル等の切削工具が施術の際にねじ込まれて食い込んでしまうことによって生じる切削工具の切損(すなわち、切削工具の疲労。)の防止と施術の安全が、本願の優先日前において周知の技術的課題として存在していたことを踏まえると、歯科用ハンドピースの技術の分野に属する当業者であれば、引用発明においてもこれと同じ技術的課題が存在することを当然知得していたといえることから、請求人の主張は当を得たものではなく、採用しない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知の技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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