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特許拒絶査定不服審判

2018-007270

靴の中敷

審判番号
2018-007270
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-168655外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年05月29日
審決日
2019年03月22日
公報発行日
2019年05月31日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (A43B) / P18 .575-WY (A43B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第126条第7項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2017-168655「靴の中敷」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月22日出願公開、特開2019- 42144、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 1.手続の経緯 本願は、平成29年9月1日の出願であって、平成29年9月27日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成29年10月3日)、これに対し、平成29年10月18日付で意見書及び手続補正書が提出され、これに対し、平成29年12月26日付で最後の拒絶の理由が通知され(発送日:平成30年1月9日)、これに対し、平成30年2月19日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年3月28日付で平成30年2月19日付の手続補正を却下するとともに拒絶査定がなされ(発送日:平成30年4月4日)、これに対し、平成30年5月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2.平成30年3月28日付の補正の却下の決定の適否 平成30年3月28日付で平成30年2月19日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下しているが、請求人は審判請求書で、この補正の却下の決定は取り消されるべきである旨主張しているので、当該決定について検討する。 (1)補正の内容 本件補正により特許請求の範囲は、以下のとおり補正された(以下、本件補正後の請求項1に係る発明を「本願補正発明1」、以降請求項順に「本願補正発明2」~「本願補正発明5」という。)。 「【請求項1】 踵側の後端から土踏まず部を経てつま先側の先端まで延びるインソール本体部を有する靴の中敷であって、 前記インソール本体部は、つま先部の内側が外側よりも高さが低く形成され、前記つま先部の表面が外側から内側に向けて下向きに傾斜する傾斜面に形成されていて、前記インソール本体部の横断面が、つま先部から踵部の間で底面が下向きに凸の湾曲形状であり、土踏まず部から踵部の間で表面が下向きに凹の湾曲形状に形成され、前記インソール本体部の表面は、前記踵側の後端が高く、前記踵側の後端から前記土踏まず部に向けてなだらかに下向きに傾斜する傾斜面に形成されていることを特徴とする靴の中敷。 【請求項2】 請求項1において、 前記つま先部の傾斜面の傾斜角度は、10度以下であることを特徴とする靴の中敷。 【請求項3】 請求項2において、 前記つま先部の傾斜面の傾斜角度は、4.7度以上であることを特徴とする靴の中敷。 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか1項において、 前記中敷はカップインソールタイプであることを特徴とする靴の中敷。 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか1項において、 前記インソール本体部は、三次元立体形状に形成されていることを特徴とする靴の中敷。」 本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「インソール本体部」について「前記踵側の後端が高く、前記踵側の後端から前記土踏まず部に向けてなだらかに下向きに傾斜する傾斜面に形成されている」との限定をするものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲を減縮するものに該当する。 そこで、本願補正発明1が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 補正の却下の決定及び原査定の拒絶の理由に引用された特表2017-523016号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。 a「ユーザの歩行を修正するための履物用インソールであって、 前記履物用インソールは、ユーザの足の下に延在し、0度より大きく5.0度までの背屈サポート、及び、0度より大きく5.0度までの外反サポートを提供する、履物用インソール。」(【請求項1】) b「本発明は、一般に、ユーザの歩行を修正するための履物用インソールに関する。修正された歩行は、ウォーキングなどの移動運動中に起こり得る負傷を低減できる。本発明は、(移動運動に関連する関節の長期間の損傷による結果として発症し得る)転倒、急性の足首関節捻挫、及び変形性膝関節炎に関連している負傷を低減するために特に適用可能である。本発明を、これらの例示的な適用に関連して以下に開示することが好都合であろう。しかしながら、本発明は、その適用に限定されず、他の足装具の複数の用途にも用いられ得ることが理解されるべきである。」(【0002】) c「本発明は、人の歩行を修正する履物用インソール(「インソール」)のための生体力学的な技術を提供する。本発明のインソールは、履物用インソールの接触面に特定の傾斜を提供し、履物(例えば、靴)内部での足首関節の向きを修正する。歩行は、従って、ウォーキングなどの移動運動中のつまづき、(例えば、バランスを失うことによる)転倒、及び、下肢負傷によって生じる負傷リスクを低減できるような態様で制御され得る。本発明は、「装具」として分類されてよく、具体的に設計された履物用インソールである。」(【0011】) d「本発明は、つまづき及び横のバランスを失うことを最小化することによって、転倒リスクを最小化するべく機能し得る。それは、背屈を改善し、足首関節の動作に外反サポートを提供することによる。従って、本発明の第2の態様は、つまづき又はバランスを失うこと、好ましくは横のバランスを失うこと、のうちの少なくとも1つによる、移動運動での又は移動運動中の転倒リスクを低減する履物用インソールを提供する。履物用インソールは、ユーザの足の下に延在し、0度より大きく5.0度までの背屈サポート、及び、0度より大きく5.0度までの外反サポートを提供するべく構成される。」(【0034】) e「本発明は、ウォーキング時に起こり得る負傷を低減するための履物用インソールを提供する。履物用インソールは、ユーザの足の下に延在するように構成され、さまざまな背屈サポート(0度より大きく5.0度まで)、及び、外反サポート(0度より大きく5.0度まで)を提供する。転倒リスクの低減、及び、力学的エネルギー効率の向上による歩行改善のための背屈サポート及び外反サポートのような足首関節の複数のサポート機能は、履物のインソールに、これまで適用又はテストされていない。本発明に係る背屈サポート及び外反サポートの両方を有するインソールは、最適な歩行制御において、インソールの接触面の傾斜の効果を初めて考察するものである。 図1において、履物用インソール100が示される。このケースでは、本発明の1つの実施形態に係る右足のインソールである。インソール100は、平坦な底部102及び上面104を有する、一般的に足の形を成す要素を備える。上面104は、底部102に対して傾斜され、必要とされる背屈サポート及び外反サポートを提供する。底部102は、インソール100の平坦な底面を提供し、上面104は、ユーザの足がその上に載せられ角度をつけられる傾斜面を提供して、必要な背屈サポート及び外反サポートを提供する。本発明のインソール100は、従って、履物用インソールの接触面に特定の傾斜を提供し、履物(例えば、靴)内部での足首関節の向きを修正する。歩行は、従って、つまづき及び転倒リスクを低減できる態様で、制御され得る。 必須ではないながら、背屈サポート及び外反サポートを提供している上面104の底部102に対する傾斜は、インソール100の上面104にわたって、実質的に一定であることが好ましい。しかしながら、インソール100の面上の背屈角及び外反角は、インソール100のある部分で僅かに変化してよく、これは、個人特有の足形成形、土踏まずサポート、快適さ、足の形、状態、又は同様のものなどの複数の要因に起因することを理解されたい。 図1に示されているように、上面104は、かかとの内側部分からつま先の外側に向かって傾斜を提供し、着用者の足の状態、快適さ、及び、好みに応じて最大5度の背屈及び外反をサポートする。かかとの内側でのベースラインの高さは、0.1cmから3cmまで変化する。 この傾斜は、インソール100上の複数の特定の位置に対して測定され得る。図1に示されているインソール100において、マーク付けされた複数の基準位置は以下の通りである。 A=インソール100の後方部から5分の1の範囲において、インソール100の最も中央内側部。 B=インソール100の前方部から5分の1の範囲において、インソール100の最も中央内側部。 C=インソール100の後方部から5分の1の範囲において、インソール100の最も横方向外側部。 D=インソール100の前方部から5分の1の範囲において、インソール100の最も横方向外側部。 P=インソール100の上面104の最も後方部。 F=インソール100の上面104の最も前面(前方)部。 背屈角(α)及び外反角(β)はどちらも、0度より大きく5度より小さい範囲にある。A-Bの背屈角(α)は、C-Dの角度にほぼ等しく、A-Cの外反角(β)は、B-Dの角度にほぼ等しい。底部102に対して同一の傾斜が上面104全体に適用されるが、上面104の背屈角及び外反角は、インソール100のある部分で僅かに変化してよく、これは、個人特有の足形成形、快適さ、足の形、及び、状態のような複数の要因に起因する。」(【0065】-【0069】) 上記記載及び図面を参照すると、インソールは踵側の後端から土踏まず部を経てつま先側の先端まで延びており、底部は平坦な形状であり、上面の底部に対する傾斜は一定である。 上記記載事項からみて、引用例1には、 「踵側の後端から土踏まず部を経てつま先側の先端まで延びるインソールであって、 前記インソールは、0度より大きく5.0度までの外反サポートを提供し、 前記インソールが、つま先側から踵側の間で底部が平坦な形状であり、 前記インソールが、前記上面の前記底部に対する傾斜は一定であり、 前記上面は、0度より大きく5.0度までの背屈サポートを提供しているインソール。」 との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 補正の却下の決定及び原査定の拒絶の理由に引用された実願昭55-029859号(実開昭56-132909号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。 f「靴用中底(インソール本体部)の横断面が、つま先部から踵部の間で底面が下向きに凸の湾曲形状であり、土踏まず部から踵部の間で表面が下向きに凹の湾曲形状に形成されている点。」(特に明細書第4頁6行-第5頁17行、図面参照。)が記載されている。 補正の却下の決定に引用された実用新案登録第3067446号公報(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。 e「EVA製インソール2(インソール本体部)の表面は、踵側の後端が高く、踵側の後端から土踏まず部に向けてなだらかに下向きに傾斜する傾斜面に形成されている点。」(特に【0013】-【0018】、図面参照。)が記載されている。 (3)対比 そこで、本願補正発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「インソール」は、本願補正発明1の「インソール本体部」又は「靴の中敷」に相当する。 引用発明の「前記インソールは、0度より大きく5.0度までの外反サポートを提供し」は、本願補正発明1の「前記インソール本体部は、つま先部の内側が外側よりも高さが低く形成され、前記つま先部の表面が外側から内側に向けて下向きに傾斜する傾斜面に形成されていて」に相当する。 したがって、両者は、 「踵側の後端から土踏まず部を経てつま先側の先端まで延びるインソール本体部を有する靴の中敷であって、 前記インソール本体部は、つま先部の内側が外側よりも高さが低く形成され、前記つま先部の表面が外側から内側に向けて下向きに傾斜する傾斜面に形成されている靴の中敷。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 〔相違点1〕 本願補正発明1は、インソール本体部の横断面が、つま先部から踵部の間で底面が下向きに凸の湾曲形状であるのに対し、引用発明は、インソールが、つま先側から踵側の間で底部が平坦な形状である点。 〔相違点2〕 本願補正発明1は、インソール本体部の横断面が、土踏まず部から踵部の間で表面が下向きに凹の湾曲形状に形成されるのに対し、引用発明は、インソールが、上面の前記底部に対する傾斜は一定である点。 〔相違点3〕 本願補正発明1は、インソール本体部の表面は、踵側の後端が高く、前記踵側の後端から土踏まず部に向けてなだらかに下向きに傾斜する傾斜面に形成されているのに対し、引用発明は、上面は、0度より大きく5.0度までの背屈サポートを提供している点。 (4)判断 相違点3について 引用発明が0度より大きく5度より小さい範囲の背屈角の傾斜を提供しているのは、つまづき及び横のバランスを失うことを最小化することによって、転倒リスクを最小化するべく機能させるためであるから(c参照)、背屈角の傾斜を除去すれば転倒リスクを最小化するという解決すべき課題を解決できなくなるので、引用例3に記載された上記事項が仮に周知のものであったとしても、引用発明の背屈角の傾斜に代えて、踵側の後端が高く前記踵側の後端から土踏まず部に向けてなだらかに下向きに傾斜する傾斜面とすることには阻害要因がある。 そうであれば、引用発明において、背屈角の傾斜に代えて相違点3の構成を採用し本願補正発明1のようにすることは当業者が容易に考えられたものとすることはできない。 相違点3の検討が上記のとおりであるので、相違点1、2については検討するまでもなく、本願補正発明1は引用発明及び引用例2、3に記載の事項に基づいて当業者が容易に考えられたものとすることはできない。 したがって、本願補正発明1は、引用発明及び引用例2、3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、本願補正発明1が特許出願の際独立して特許を受けることができないとすることはできない。本件補正後の請求項2~5は本件補正後の請求項1の従属項であるから、本願補正発明1が引用発明及び引用例2、3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないので、同様に本願補正発明2~3は引用発明及び引用例2、3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、本願補正発明4~5は引用発明並びに引用例2、3に記載の事項及び補正の却下の決定及び原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-187306号公報(以下、「引用例4」という。)に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないとすることはできない。 (5)むすび したがって、本願補正発明1~3は引用発明及び引用例2、3に記載の事項に基づいて、また、本願補正発明4~5は、引用発明及び引用例2~4に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、本願補正発明1~5が特許出願の際独立して特許を受けることができないとすることはできず、本件補正の却下の決定は取り消すべきものである。 3.本願発明 上述のように、本件補正の却下の決定は取り消されたので、本願の請求項1~5に係る発明(以下、請求項順に「本願発明1」~「本願発明5」という。)は、本願補正発明1~5と同じ上記した平成30年2月19日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるとおりのものである。 4.平成29年12月26日付の最後の拒絶理由 最後の拒絶理由の概要は以下のとおりである。 「この出願の請求項1~5に係る発明は、引用例1(特表2017-523016号公報)に記載された発明及び引用例2(実用新案登録第3067446号公報)、引用例4(特開平9-187306号公報)に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」 5.対比、判断 「2.」で検討したように、本願補正発明1は引用発明及び引用例2、3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、最後の拒絶理由で本願発明1に対して引用例1、2が通知され引用例3は通知されていないが、仮に引用例3が本願発明1に対して通知されていても、上述のように本願発明1は引用発明及び引用例2、3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、当然に本願発明1は引用発明及び引用例2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、請求項2~5は請求項1の従属項であるから、本願発明1が引用発明及び引用例2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないので、同様に、本願発明2~3は引用発明及び引用例2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、本願発明4~5は引用発明及び引用例2、4に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。 6.むすび したがって、本願発明1~5は、引用発明及び引用例2、4に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2018-007270

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