特許拒絶査定不服審判
2018-006073
フルボ酸を利用した放射性物質の除染方法
- 審判番号
- 2018-006073
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-130259
- 請求日
- 2018年05月02日
- 審決日
- 2019年11月11日
- 公報発行日
- 2020年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】国土防災技術株式会社
- 【請求人代理人】磯野 政雄
- 【請求人代理人】とこしえ特許業務法人
- 審判長/審判官
- 審判長 瀬川 勝久
- 審判官 井上 博之
- 審判官 野村 伸雄
- 分類
- P18 .121-WZ (G21F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-130259「フルボ酸を利用した放射性物質の除染方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月11日出願公開、特開2018- 4386〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成28年6月30日の出願であって、平成29年5月10日付けで拒絶理由が通知され、平成29年7月14日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年9月25日付けで拒絶理由が通知され、平成29年11月27日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年1月25日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は平成30年2月6日に請求人に発送された。これに対して、平成30年5月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その後、当審において、平成30年11月27日付けで拒絶理由が通知され、平成31年2月1日に意見書及び手続補正書が、平成31年2月4日に上申書及び手続補正書が提出され、平成31年4月23日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、令和元年7月19日に意見書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~3に係る発明は、平成31年2月4日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項3】
放射性セシウムが付着した土壌に対して,木の未分解の有機物を,炭の製造過程で産出されるpH5以下の有機酸である木酢液に漬け込み,養生することによって製造されるフルボ酸を希釈した溶液に5時間以上浸潤させることにより,汚染された放射性セシウムが付着した土壌を除染することで再利用できることを可能としたフルボ酸を利用した放射性物質の除染方法。」
第3 引用文献に記載された事項
平成31年4月23日付けの拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された引用文献は、次のとおりである。
1.特開2014-41066号公報
2.特開平6-51096号公報
3.特開2014-1160号公報
4.特開2014-145723号公報
5.特開2013-49659号公報
6.FUBO BLOG フルボ酸と放射能、[online]、日本、2011年7月4日、p.1-4、[検索日 平成29年5月9日]、URL、http://fubosc0510.blog100.fc2.com/blog-entry-165.html
1 引用文献1
(1)引用文献1に記載の事項
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は審決にて付与。以下同様。)。
ア 「【請求項1】
放射性物質で汚染された除染対象物を酸性の溶離溶媒に導入して溶出し、該溶離溶媒から放射性物質を濃縮し分離する土壌等の除染方法において、前記除染対象物は汚染土壌と汚染液体とを含み、これらの一方または両方を採取して溶離溶媒に導入し、溶離溶媒に溶出した放射性物質と前記除染対象物とを固液分離し、溶離溶媒から分離した土壌を回収するとともに、土壌から分離し放射性物質を溶出した溶離溶媒を濃縮することを特徴とする土壌等の除染方法。
・・・
【請求項6】
前記溶離溶媒は炭酸水である請求項1記載の土壌等の除染方法。
・・・
【請求項11】
前記放射性物質はセシウムである土壌等の除染方法。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば放射性物質に汚染された田畑等の土壌や水を現地で確実かつ速やかに除染し、精密な除染と除染の能率向上を図るとともに、除染後の土壌に土壌活性剤を添加して土壌を改良し、これを元の田畑に速やかに戻して農耕の再開を促す一方、土壌に付着ないし沈着した放射性物質を土壌から精密に分離・濃縮し、汚染土壌の減容化と放射性物質の安全な処理を図るようにした、土壌等の除染方法および土壌等の除染システムに関する。」
ウ 「【0015】
請求項1の発明は、放射性物質で汚染された除染対象物を酸性の溶離溶媒に導入して溶出し、該溶離溶媒から放射性物質を濃縮し分離する土壌等の除染方法において、前記除染対象物は汚染土壌と汚染液体とを含み、これらの一方または両方を採取して溶離溶媒に導入し、溶離溶媒に溶出した放射性物質と前記除染対象物とを固液分離し、溶離溶媒から分離した土壌を回収するとともに、土壌から分離し放射性物質を溶出した溶離溶媒を濃縮し、除染対象を汚染土壌と汚染液体に広範囲に適用可能にし、その利用の利便性を確保するとともに、分離槽の溶離溶媒に溶出した放射性物質と土壌や汚染液体とを固液分離し、このうち溶離溶媒から分離し放射性物質を含有しない土壌を回収して、除染土壌の再使用と農耕の再開を図るようにしている。
請求項2の発明は、放射性物質の濃縮ないし分離を除染対象物の採取地で行ない、汚染土壌を離隔した除染処理場へ搬送することなく、これらの除染作業を採取地で合理的かつ速やかに行なうようにしている。」
エ 「【0036】
前記給水後の分離槽10にガス導管38から二酸化炭素を供給し、分離槽10にセシウムの溶離溶媒として、所定酸性濃度の炭酸水56を作製し維持可能にしている。
実施形態では分離槽10の炭酸水56の酸性濃度をpH3~7に設定している。
そして、分離槽10でのセシウム分離後、分離槽10から濃縮槽13へ炭酸水56が送り込まれ、その炭酸水56の酸性濃度が低下した際、或いはこの後炭酸水56を電解液として濃縮槽13で電気分解が行なわれ、炭酸水56の酸性濃度が低下した際、ガス導管41から濃縮槽13へ二酸化炭素を供給し、濃縮槽13内の炭酸水56の酸性濃度を一定に維持可能にしている。」
(2)上記(1)によれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「放射性物質で汚染された除染対象物を酸性の溶離溶媒に導入して溶出し、該溶離溶媒から放射性物質を濃縮し分離する土壌等の除染方法において、前記除染対象物は汚染土壌と汚染液体とを含み、これらの一方または両方を採取して溶離溶媒に導入し、溶離溶媒に溶出した放射性物質と前記除染対象物とを固液分離し、溶離溶媒から分離した土壌を回収するとともに、土壌から分離し放射性物質を溶出した溶離溶媒を濃縮し、除染土壌の再使用と農耕の再開を図るようにし、
溶離溶媒は炭酸水であり、酸性濃度をpH3~7に設定し、
放射性物質はセシウムである、
土壌等の除染方法」
2 引用文献2
(1)引用文献2に記載の事項
引用文献2には、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】 1種以上のアクチニドもしくはその放射性崩壊生成物もしくは核分裂生成物又は他の重金属又はその化合物で汚染しているか又は汚染している疑いのある物質の処理方法であって、使用前には重金属イオンを含まず且つ熱もしくは紫外線のような温和な物理的補助手段の存在下又は不在下で非毒性生成物に自然に分解可能な成分を含有する水溶液からなる液体媒体と前記物質とを接触させる方法であり、前記水溶液が(a)炭酸水、(b)コンディショニング剤及び(c)2~6個の炭素原子を有するカルボン酸のアニオンを含む錯生成剤とを含有しており、前記方法が土地改善のための土壌処理に用いられ、汚染サイト又は汚染の疑いのあるサイトから土壌を採取する段階と、土壌を処理サイトに輸送する段階と、土壌を前記液体媒体で洗浄し、汚染物質を錯体として前記液体媒体に溶解させる段階とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】 コンデイショニング剤が過酸化水素、オゾン、酸素高含有空気、過マンガン酸カリウム、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンから選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】 錯生成剤がクエン酸、酢酸、蓚酸及びエチレンジアミン四酢酸から選択されるカルボン酸のアニオンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。」
イ 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は土地改善に係り、特に重金属、アクチニド又はその化合物等で汚染しているか又は汚染している疑いのある土壌の処理に適した方法に係る。」
ウ 「【0007】本発明の方法は、土壌に含まれる汚染物質を溶液Xを含む前記液体媒体に溶解させることにより土壌から浸出させるように土壌を処理し、こうして土壌を実質的により安全な状態に復元する方法を提供する。本発明の方法により処理される土壌は、核物質処理、貯蔵もしくは他の原子力プラントの付近から採取した土壌、又は重金属が土壌を汚染している工業ゾーンから採取した土壌であり得る。また、下水スラッジ又はシルトもしくは泥の浚渫から得た固体の使用により汚染した土壌の処理にも適用できる。
【0008】上記の如く、汚染された土壌から本発明の方法により分離すべき汚染物質としては、(i)アクチノイドまたはその放射性崩壊生成物及びその化合物、(ii)核分裂生成物、並びに(iii)重金属及びその化合物が挙げられる。
【0009】アクチノイドは、周期率表の原子番号89~104の元素である。溶液Xは、特にプルトニウムまたはアクチノイドとその化合物のプルトニウム-含有混合物を溶解するのに有用である。
【0010】本明細書中で使用する「核分裂生成物」という用語は、核燃料の核分裂中、直接生成物(direct product)(即ち、所謂「核分裂破片」)として形成されるそれらの元素及びβ崩壊によるこのような直接生成物から形成した生成物を指す。核分裂生成物としては、例えば56Ba、40Zr及び52Te、55CS、58Ceなどの元素を含むセレンからセリウムの範囲の元素が挙げられる。」
エ 「【0026】本発明の方法に於いて、溶液Xを含む水性媒体及び洗浄すべき土壌は、土壌の粒子と水性媒体とを好適に密接させるために、ミキサー中で混ぜたりまたは攪拌することにより一緒に混合するのが好ましい。洗浄は、粒径に基づく分離を先行し、実質的に「清浄な」土壌画分に分離してもよい。汚染物質を、水性媒体を含む溶液で洗浄し、これを好適な分離方法(例えば、デカンテーション及び/または排水及び濾過など)により土壌から分離する。1種以上の種々の公知の濾過システム(例えば、真空フィルター、加圧フィルター及び限外濾過など)により濾過してもよい。濾過の代わりに、ハイドロサイクロン(hydrocyclone)または遠心分離を使用して分離してもよい。
【0027】混合工程の代わりに、水性媒体を、土壌にくまなく浸透させて土壌を洗浄してもよい。媒体は、例えば噴霧により土壌に適用してもよい。
【0028】土壌は、水性媒体と洗浄すべき土壌を接触させるために使用する容器内で、連続する別個のバッチで洗浄しても良い。あるいは、土壌を、連続して容器に供給し、抽出してもよい。」
オ 「【0033】本発明の方法を使用する目的は、土壌洗浄プロセスを行なった後の土壌をより安全な状態にすることである。通常は、処理済み土壌を土壌立地に再度運搬して敷設する。土壌が未処理土壌と接触することによって再汚染されないように十分な配慮が必要である。多くの場合、処理済み土壌の状態は処理直後においても適当な期間の経過後も、公衆が出入りする土地に敷設できるほど十分に安全でなければならない。」
カ 「【0038】実施例4
本発明方法で使用される上記に定義のSolution Xを構成する3成分溶液中の成分の組み合わせ効果を証明するために、固体アクチニド汚染物質を含む土壌スラッジのサンプルを、グローブボックス内で以下の3つの試験溶液サンプルで処理した:
溶液A;0.005Mのクエン酸ナトリウムと0.89MのH2O2とを含む水溶液に炭酸ガスを飽和まで吹込んだ溶液;
溶液B;0.005Mのクエン酸ナトリウムを含む水溶液に炭酸ガスを飽和まで吹込んだ溶液;
溶液C;0.89MのH2O2を含む水溶液に炭酸ガスを飽和まで吹込んだ溶液。
【0039】室温でスラッジサンプルを溶液Aと72時間接触させた後、溶液に溶解していたウラン、プルトニウム、アメリシウム、マグネシウム、アンチモン及びセシウム(すべて出発スラッジ中に存在)のパーセンテージは夫々、98、93、87、100、100、99%であることが判明した(接触時間の延長及び/またはクエン酸濃度の増加によってすべての値は100%まで上がるであろう)。
【0040】室温でスラッジサンプルを溶液Bと72時間接触させた後、U、Pu、Am、Mg、Sb、Csのパーセンテージは夫々、70、62、76、100、94、62%であることが判明した。
【0041】これは、汚染土壌を処理するため、特に、土地再生作業で存在すると特に有害な元素であるPu及びAmを溶解するために、クエン酸塩/H2O2/CO2から成る3成分溶液が、3つの成分の内の2成分だけを含む溶液に比較して驚異的な効果を発揮することを証明する。」
(2)上記(1)によれば、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「土地改善に係り、特に重金属、アクチニド又はその化合物等で汚染しているか又は汚染している疑いのある土壌の処理に適した方法に関し、
核分裂生成物で汚染しているか又は汚染している疑いのある物質の処理方法であって、使用前には重金属イオンを含まず且つ熱もしくは紫外線のような温和な物理的補助手段の存在下又は不在下で非毒性生成物に自然に分解可能な成分を含有する水溶液からなる液体媒体と前記物質とを接触させる方法であり、
前記水溶液が(a)炭酸水、(b)コンディショニング剤及び(c)2~6個の炭素原子を有するカルボン酸のアニオンを含む錯生成剤とを含有しており、
前記方法が土地改善のための土壌処理に用いられ、汚染サイト又は汚染の疑いのあるサイトから土壌を採取する段階と、
土壌を処理サイトに輸送する段階と、
土壌を前記液体媒体で洗浄し、汚染物質を錯体として前記液体媒体に溶解させる段階とを含み、
土壌は、水性媒体と洗浄すべき土壌を接触させるために使用する容器内で、連続する別個のバッチで洗浄しても良く、
核分裂生成物としては、55CSなどの元素を含むセレンからセリウムの範囲の元素が挙げられ、
処理済み土壌を土壌立地に再度運搬して敷設する、
方法。」
3 引用文献3
(1)引用文献3に記載の事項
引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
木または草または残滓からなる未分解の有機物を炭の製造過程で産出される極強酸性の酢液に適量漬け込み,長時間にわたって養生をすることを特徴とする動植物の生理活性を促す腐植液の製造方法。
【請求項2】
酢液を漬け込む有機物に対して容量換算で50%以上混合することによって,漬け込む有機物全体に酢液を浸透,接触できるようにした請求項1記載の動植物の生理活性を促す腐植液の製造方法。
【請求項3】
自然由来の酢液を水分が80%以上,有機酸含有量が1.0%以上の資材を用いるようにした請求項1記載の動植物の生理活性を促す腐植液の製造方法。
【請求項4】
自然由来の酢液をpH(H2O)5.0以下で電気伝導度が1.0mS/cm以上のものを用いるようにした請求項1記載の動植物の生理活性を促す腐植液の製造方法。
・・・
【請求項10】
製造した腐植液は,酢液単独時よりもキレート作用が高いことから,糞尿や残滓や汚れた水域に対して混合及び散布することで消臭及び凝集が進み環境改善する効果を発揮するようにした請求項7記載における動植物の生理活性を促す腐植液の使用方法。
【請求項11】
製造した腐植液は,植物に対しては希釈して散布し,その植物が生長している土壌に対しては液体や固体に染み込ませた状態で散布混合することで生長促進作用を有するのみならず,発芽の促進または耐病性の向上及び耐乾燥性の向上及び光合成の促進及び代謝の促進及び植物性酵素の活性化及び殺菌作用を有する請求項7記載における動植物の生理活性を促す腐植液の使用方法。
【請求項12】
製造した腐植液は,液体で頭皮に散布するとキレート効果によって,汚れが凝集することから毛上損傷を軽減し,縮毛矯正またはパーマ液に使用するようにした請求項7記載における動植物の生理活性を促す腐植液の使用方法。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は,有機酸を用いた腐植液の製造方法およびその腐植液の使用方法に関するものであり,動植物の生理活性を促す腐植液(ヒューミン,腐植酸,フルボ酸)を腐植が進行していない有機物に炭の製造する過程で産出される酢液を長期間養生することで,有機物にあるリグニン等の難溶性物質を縮合,重合して酢液に溶出させ腐植液に変えることを可能としたものである。また,作られた腐植液を利用する段階では,吸水性のある資材であれば腐植液を染み込ませることが可能である。
ちなみに、本発明において、生理活性とは化学物質が生体の特定の生理的調整機能に対して作用する性質のことを意味するものである。」
ウ 「【実施例】
【0022】
次に,本発明の実施例を説明する。
図1において,1は木または草または残滓(野菜屑等)の未分解の有機物,2は自然由来の極強酸性の酢液であり,当該有機物1が十分に漬け込めるようにするために有機物1.0対酢液0.5の割合で適量を水槽3に収容している。
【0023】
上記の未分解の有機物1を水槽3に入っている自然由来の酢液2に漬け込む。自然由来の酢液は,水分が80%以上,有機酸含有量が1.0%以上でpH(H2O)5.0以下,電気伝導度が1.0mS/cm以上のものを利活用する。
【0024】
上記の極強酸性の酢液2において,極強酸性とは,pH4.4以下のことを意味し,且つその程度は,通常の酸性(5.5~5.9)又は強酸性(4.5~4.9)に比較して低い値を指す。その酢液を採取するには,炭を作る過程で炭焼き釜の排煙口上部の温度が80~150℃までが最適である。
なお,炭を作る過程は色々あり,白炭である備長炭では釜の温度が800~1200℃にも達して硬質な炭が生み出されるものの酢液を採取するには不向きである。本発明の酢液は,着火時こそ釜の温度は350℃と高温になるが,15~20分程すると燻製温度が中心部で300℃以下となることによって炭の製法時に産出されるものである。
また、上記の自然由来の酢液2において,自然由来とは,木,草,残滓等の未分解の有機物1を炭の製造過程で産出されるものをいう。
【0025】
有機物1に対する酢液2の割合は次のとおりである。すなわち,容量比で有機物1.0に対して酢0.5以上の割合である。
【0026】
粉末をマイクロカプセル封入する状態は,次のとおりである。すなわち,粉末を高分子の重合による物や無機質で作られた極小のマイクロカプセルに内包して使用する。
【0027】
腐植液は,アルギン酸類と混ぜ合わせることでゲル状となるようにして腐植液の成分の溶出をコントロールでき,動植物の生理活性を促す効果を持続させながら使用できる。
【0028】
また,腐植液は,炭に染み込ませることにより固形化できるようにして,腐植液の成分の溶出をコントロールでき,動植物の生理活性を促す効果を持続させながら使用できる。
【0029】
次いで,腐植液は,酢液単独時よりもキレート作用が高いことから,糞尿や残滓に対して混合,散布することで消臭効果を発揮するように使用することができる。
【0030】
そして,腐植液は,植物に対しては希釈して散布し,その植物が生長している土壌に対して液体や固体に染み込ませた状態で散布,混合することで生長促進作用を有するのみならず,発芽の促進,耐病性の向上,耐乾燥性の向上,光合成の促進,代謝の促進,植物性酵素の活性化などの効果や,殺菌作用を有する。
【0031】
さらに,腐植液は,液体で頭皮に散布するとキレート効果によって,汚れが凝集することから毛上損傷を軽減し,縮毛矯正,パーマ液に使用できる。」
エ 上記ア、ウによれば、腐植液は希釈して散布する旨、記載されているから、引用文献3には、腐植液を希釈した溶液が記載されているといえる。
(2)上記(1)によれば、引用文献3には、以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「木または草または残滓からなる未分解の有機物を炭の製造過程で産出される極強酸性の酢液に適量漬け込み,長時間にわたって養生して製造した腐植液であって,
自然由来の酢液は水分が80%以上,有機酸含有量が1.0%以上、pH(H2O)5.0以下のものを用い、
製造した腐植液は,酢液単独時よりもキレート作用が高い、
腐植液を希釈した溶液。」
4 引用文献4
引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
汚染物処理車に一次加熱器及び二次加熱器を搭載して、放射性汚染区域内を走行しながら汚染物を収集し、収集した汚染物を前記一次加熱器に投入し、該一次加熱器内で放射性物質の沸点以下の温度で一次加熱処理して炭化し、前記一次加熱器から取出した炭を前記二次加熱器にて一次加熱処理よりも高温で二次加熱処理して灰化し、その灰化により生じた排ガス及び灰をそれぞれ洗浄液に混合して洗浄した後、その洗浄済液から放射性物質を収集することを特徴とする放射性汚染物の処理方法。
【請求項2】
前記洗浄済液に凝集剤を添加することにより前記放射性物質を凝集させることを特徴とする請求項1記載の放射性汚染物の処理方法。
【請求項3】
前記洗浄済液を電気分解することにより前記放射性物質を凝集させることを特徴とする請求項1又は2記載の放射性汚染物の処理方法。
【請求項4】
前記洗浄済液にフルボ酸又はフミン酸を添加することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の放射性汚染物の処理方法。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、地震、津波等の災害や事故等により発生した放射性セシウム含有土壌などの放射性汚染物を処理する方法に関する。」
ウ 「【0008】
本発明の放射性汚染物の処理方法は、汚染物処理車に一次加熱器及び二次加熱器を搭載して、放射性汚染区域内を走行しながら汚染物を収集し、収集した汚染物を前記一次加熱器に投入し、該一次加熱器内で放射性物質の沸点以下の温度で一次加熱処理して炭化し、前記一次加熱器から取出した炭を前記二次加熱器にて一次加熱処理よりも高温で二次加熱処理して灰化し、その灰化により生じた排ガス及び灰をそれぞれ洗浄液に混合して洗浄した後、洗浄済液内の放射性物質を収集処理することを特徴とする。
【0009】
放射性汚染区域内を汚染物処理車が走行しながら汚染物を収集して、加熱処理することができるので、広い範囲の汚染区域であってもオンサイトにて容易に作業することができる。
また、放射性物質除去の前処理として、放射性セシウム等の放射性物質の沸点以下の温度での一次加熱処理で汚染物を炭化することにより汚染物を減容するとともに、その際の放射性物質の揮発を抑制し、次いで、減容した汚染物から放射性物質の除去処理を行うようにしており、放射性物質除去のための大規模な設備を必要とせず、簡便な装置で処理することが可能になる。
さらに、高温の二次加熱処理にて炭を排ガスと灰にして、最後に、これらを洗浄液により混合洗浄した後の洗浄済液から放射性物質を凝集して除去するので、放射性物質を効率的に除去することができる。
なお、一次加熱器、二次加熱器は、一台の汚染処理車に搭載してもよいし、二台の汚染処理車に搭載してもよい。
【0010】
この放射性汚染物の処理方法において、前記洗浄済液に凝集剤を添加することにより前記放射性物質を凝集させるとよい。
あるいは、前記洗浄済液を電気分解することにより前記放射性物質を凝集させることもできる。
洗浄済液に凝集剤を添加することにより、放射性物質を凝集させて沈殿させる、あるいは洗浄済液を電気分解することにより、電極付近に放射性物質を凝集させることができ、これらの方法により放射性物質の凝集を促進することができる。凝集剤の添加と電気分解とを併用してもよい。
【0011】
また、この放射性汚染物の処理方法において、前記洗浄済液にフルボ酸又はフミン酸を添加するとよい。
洗浄済液にフルボ酸又はフミン酸を添加すると、砂等の微細な孔に入り込んだ放射性物質を溶かして外部に排出する作用があり、放射性物質を確実に凝集させることができる。フルボ酸又はフミン酸は土壌由来の物質で、無害であり、取り扱い容易である。」
エ 「【0034】
また、二次加熱処理された後の固形物は、高温処理によりほとんどが灰になっており、灰となって排出口18から排出される。灰となっているので、当初の汚染物の例えば1/500の量に減容される。この灰は、別途待機している汚染物処理車7における固形物処理用の排出物処理器11にて処理され、タンク41内で洗浄され、洗浄済液が他のタンク42に移送され、凝集剤Fが添加されることにより、汚濁粒子が凝集し、その中に放射性セシウム等の放射性物質が閉じ込められる。
この場合、タンク41,42の洗浄液にフルボ酸又はフミン酸を添加するとよく、これらフルボ酸又はフミン酸を添加すると、砂等の微細な孔に入り込んだ放射性物質を溶かして外部に排出する作用があり、放射性物質を確実に凝集させることができる。フルボ酸又はフミン酸は土壌由来の物質で、無害であり、取り扱い容易である。」
5 引用文献5
引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【背景技術】
【0003】
フルボ酸は米国ミヤモンテ社の製品を輸入して化粧品や農業用成長剤として広く使用されている。
【0004】
日本国内ではリードアップの商品名で工業化され市場が広がりつつある。
【0005】
最近では、米国の科学者による論文の中で、体内被曝や重金属症の原因となる放射性物質、特にヨウ素、セシウム、プルトニウム等をフルボ酸が体外に除去したり除染したりすることが発表されている。
【0006】
特に福島の原発事故による放射能の飛散による被害は大きな問題となっている。
【0007】
フルボ酸、リードアップ類の活用によってこれ以上悲惨な状況にならないようにしたい。
【0008】
フルボ酸原液の10分の1~50分の1ぐらい希釈液を散布すると30年、60年といわれる半減期を早めることと土壌などに散布すると除染効果がありもっと早く半減期を縮めることが可能となります。」
6 引用文献6
引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。
「放射能が・・・高さ1メートルだと0.8前後の数値となっていました。その表土にフルボ酸に水で50倍希釈したものを1m2当たりに2L(審決注;原文は筆記体小文字のL)散布しました。60%低減しました。高さ1メートルで0.2前後となっていて・・・」(「フルボ酸と放射能」欄6行~11行)
第4 対比・判断
1 引用発明1を主引用例とした場合
ア 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1は「放射性物質はセシウムである」「放射性物質で汚染された除染対象物を酸性の溶離溶媒に導入して溶出し、該溶離溶媒から放射性物質を濃縮し分離する土壌等の除染方法」に関するものであるから、当該構成は、本願発明の「放射性セシウムが付着した土壌に」対する「放射性物質の除染方法」に相当する。
(イ)引用発明1は、「除染土壌の再使用と農耕の再開を図るようにし」たものであるから、本願発明の「汚染された放射性セシウムが付着した土壌を除染することで再利用できることを可能とした」との事項を備える。
(ウ)したがって、本願発明と引用発明1とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「放射性セシウムが付着した土壌に対して,汚染された放射性セシウムが付着した土壌を除染することで再利用できることを可能とした放射性物質の除染方法。」
<相違点1>
本願発明が、「木の未分解の有機物を,炭の製造過程で産出されるpH5以下の有機酸である木酢液に漬け込み,養生することによって製造されるフルボ酸を希釈した溶液」を用いるのに対し、引用発明は、「酸性濃度をpH3~7に設定し」た「炭酸水」を用いる点。
<相違点2>
浸潤させる時間が、本願発明では、「5時間以上」であるのに対し、引用発明では、そのような特定がなされていない点。
イ 判断
相違点について、検討する。
(ア)相違点1について
放射性セシウムの除染に様々な種類の酸性の溶液が使用可能であることは、本願の出願前に技術常識であるところ、フルボ酸の溶液についても、例えば、引用文献4~6に記載されているように、本願出願前に周知である。
そうすると、当該周知事項に基づいて、引用発明3の腐植液(フルボ酸)を希釈した溶液が放射性セシウムの除染に使用可能であることは、当業者にとって明らかな事項であるところ、引用発明1の炭酸水に代えて、引用発明3の腐植液(フルボ酸)を希釈した溶液を採用することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
(イ)相違点2について
本願明細書の【0027】、【0028】等の記載によれば、浸潤させる時間を「5時間以上」とする技術上の意義は、汚染土壌をフルボ酸を希釈した溶液に十分に浸潤させることであり、どの程度の時間浸潤させるかは、当業者が適宜設定しうることである。
したがって、引用発明1の炭酸水に代えて、引用発明3の腐植液(フルボ酸)を希釈した溶液を採用するにあたり、その下限となる時間をどの程度に規定するかは、当業者が必要に応じて適宜設定しうる設計事項にすぎない。
また、本願発明においては、「5時間以上」とすることに格別の臨界的意義及び特段の作用効果を認めることもできない。
(ウ)作用効果について
本願発明が奏する作用効果について、引用発明1、引用発明3及び上記周知事項から当業者が予測し得る範囲のものである。
また、フルボ酸のキレート効果(金属を含む環構造であるキレート化合物を生じさせる効果)や土壌改良等の効果は、当業者にとって自明の効果である。
ウ 小括
したがって、本願発明は、引用発明1、引用発明3及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 引用発明2を主引用例とした場合
ア 対比
本願発明と引用発明2とを対比する。
(ア)引用発明2は、「土地改善に係り、特に重金属、アクチニド又はその化合物等で汚染しているか又は汚染している疑いのある土壌の処理に適した方法に関し、核分裂生成物で汚染しているか又は汚染している疑いのある物質の処理方法であって」「核分裂生成物としては、55CSなどの元素を含むセレンからセリウムの範囲の元素が挙げられ」るものであるから、当該構成は、本願発明の「放射性セシウムが付着した土壌に」対する「放射性物質の除染方法」に相当する。
(イ)引用発明2は、「処理済み土壌を土壌立地に再度運搬して敷設する」ものであるから、本願発明の「汚染された放射性セシウムが付着した土壌を除染することで再利用できることを可能とした」との事項を備える。
(ウ)したがって、本願発明と引用発明2とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「放射性セシウムが付着した土壌に対して、汚染された放射性セシウムが付着した土壌を除染することで再利用できることを可能とした放射性物質の除染方法。」
<相違点3>
本願発明が、「木の未分解の有機物を,炭の製造過程で産出されるpH5以下の有機酸である木酢液に漬け込み,養生することによって製造されるフルボ酸を希釈した溶液」を用いるのに対し、引用発明2では、「(a)炭酸水、(b)コンディショニング剤及び(c)2~6個の炭素原子を有するカルボン酸のアニオンを含む錯生成剤とを含有」する「水溶液からなる液体媒体」を用いる点。
<相違点4>
浸潤させる時間が、本願発明では、「5時間以上」であるのに対し、引用発明2では、そのような特定がなされていない点。
イ 判断
上記相違点3、4は、上記1の相違点1、2と実質的に同じであるから、上記1のイの判断と同様の判断が成り立つ。
(ア)相違点3について
放射性セシウムの除染に様々な種類の酸性の溶液が使用可能であることは、本願の出願前に技術常識であるところ、フルボ酸の溶液についても、例えば、引用文献4~6に記載されているように、本願出願前に周知である。
そうすると、当該周知事項に基づいて、引用発明3の腐植液(フルボ酸)を希釈した溶液が放射性セシウムの除染に使用可能であることは、当業者にとって明らかな事項であるところ、引用発明2の液体媒体に代えて、引用発明3の腐植液(フルボ酸)を希釈した溶液を採用することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
(イ)相違点4について
本願明細書の【0027】、【0028】等の記載によれば、浸潤させる時間を「5時間以上」とする技術上の意義は、汚染土壌をフルボ酸を希釈した溶液に十分に浸潤させることであり、どの程度の時間浸潤させるかは、当業者が適宜設定しうることである。
そして、引用文献2には、室温で溶液と72時間接触させる旨の記載(【0040】等参照)があるように、長時間接触させることも示唆されているところ、引用発明2の液体媒体に代えて、引用発明3の腐植液(フルボ酸)を希釈した溶液を採用するにあたり、その下限となる時間をどの程度に規定するかは、当業者が必要に応じて適宜設定しうる設計事項にすぎない。
また、本願発明においては、「5時間以上」とすることに格別の臨界的意義及び特段の作用効果を認めることもできない。
(ウ)作用効果について
本願発明が奏する作用効果については、引用発明2、引用発明3及び上記周知事項から当業者が予測し得る範囲のものである。
ウ 小括
したがって、本願発明は、引用発明2、引用発明3及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明3及び周知事項に基づいて、または、引用発明2、引用発明3及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-006073