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特許拒絶査定不服審判

2018-004197

粒子ビームシステム及びTEM試料を加工する方法

審判番号
2018-004197
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-216630外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年03月28日
審決日
2018年11月27日
公報発行日
2019年06月28日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H01J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-216630「粒子ビームシステム及びTEM試料を加工する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月15日出願公開、特開2014- 89956〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成25年10月17日(パリ条約による優先権主張2012年10月18日(以下、「優先日」という。)、独国)の出願であって、平成29年6月5日付けの拒絶理由の通知に対し、同年9月13日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年11月22日付け(同月28日送達)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して平成30年3月28日に審判の請求(同年4月23日に審判請求書の手続補正がなされている。)がなされると同時に手続補正がなされ、その後、同年8月7日に上申書が提出されたものである。 第2 平成30年3月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年3月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「粒子ビームシステムであって、 第1方向から対象物領域に入射する第1粒子ビームを発生するよう構成した第1粒子ビームコラムであり、前記第1粒子ビームはイオンビームである第1粒子ビームコラムと、 第2方向から前記対象物領域に入射する第2粒子ビームを発生するよう構成した第2粒子ビームコラムと、 対象物を前記対象物領域に取り付けるよう構成した対象物台であり、前記第1粒子ビームコラムに対して回転軸を中心に回転可能なシャフトを備えた対象物台とを備え、以下の関係: 35°≦α≦55°; 70°≦β≦90°;及び 20°≦γ≦90° を満たし、ここで、αは、前記対象物領域に取り付けられた前記対象物の被加工表面上における、前記第1方向と前記回転軸との間の第1角度を示し、βは前記回転軸と前記第2方向との間の第2角度を示し、γは前記第1方向と前記第2方向との間の第3角度を示す、 粒子ビームシステム。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、平成29年9月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「 粒子ビームシステムであって、 第1方向から対象物領域に入射する第1粒子ビームを発生するよう構成した第1粒子ビームコラムであり、前記第1粒子ビームはイオンビームである第1粒子ビームコラムと、 第2方向から前記対象物領域に入射する第2粒子ビームを発生するよう構成した第2粒子ビームコラムと、 対象物を前記対象物領域に取り付けるよう構成した対象物台であり、前記第1粒子ビームコラムに対して回転軸を中心に回転可能なシャフトを備えた対象物台と を備え、以下の関係: 35°≦α≦55°; 70°≦β≦90°;及び 20°≦γ≦90° を満たし、ここで、αは前記第1方向と前記回転軸との間の第1角度を示し、βは前記回転軸と前記第2方向との間の第2角度を示し、γは前記第1方向と前記第2方向との間の第3角度を示す、 粒子ビームシステム。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、第1粒子ビームの第1方向とシャフトの回転軸の「第1角度」について、「前記対象物領域に取り付けられた前記対象物の被加工表面上における」ものであることを特定しようとする限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2009-109236号公報(以下「引用文献」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線部は当審が付与した。以下同じ。)。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、アトムプローブ用針状試料の加工方法及びアトムプローブ用針状試料を加工する集束イオンビーム装置に関する。」 (イ)「【発明を実施するための最良の形態】 【0011】 以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の集束イオンビーム装置100の側面断面図、図2は図1における要部断面図である。 図1に示すように、本発明の集束イオンビーム装置100は、真空排気されたチャンバー101内に配置された軸線C1を中心に回転するアトムプローブ用の針状試料10を、その先端11をSEM鏡筒150で観察しながらFIB鏡筒120から照射される集束イオンビームBで加工する装置である。 集束イオンビーム装置100は、針状試料10を収容するチャンバー101と、チャンバー101の内部を真空排気させる真空ポンプ102と、チャンバー101の内部に集束イオンビームBを照射させるFIB鏡筒120と、チャンバー101内に配置された試料載置台130と、試料載置台130に設けられたブラケット110と、ブラケット110に設けられ針状試料10を保持するクランプ106と、クランプ106ごと針状試料10をその軸線C1を中心に回転させる試料回転モータ140と、針状試料10を観察するSEM鏡筒150と、各構成を制御する制御手段160とを備えている。 なお、真空ポンプ102は特許請求の範囲の減圧手段に、FIB鏡筒120はビーム発生手段に、試料回転モータ140は回転手段にそれぞれ相当する。 【0012】 ・・・(略)・・・ 【0013】 図1に示すように、真空ポンプ102はチャンバー101の側面に設けられた排気口101aからチャンバー101内の空気を排気する。 また、SEM鏡筒150は、図示しない電子発生源で発生した電子を図示しない電子光学系で細く絞って電子ビームEとした後に照射して、測定対象物である針状試料10を観察する。 【0014】~【0016】 ・・・(略)・・・ 【0017】 試料回転モータ140は取付板116に固定され、試料回転モータ140の図示しない出力軸は、軸線C4を中心に回転する。ブラケット110に設けられたクランプ106は、4方向から針状試料10の基端12を把持し、試料回転モータ140はクランプ106ごと針状試料10をその軸線C1を中心に回転させる。この時、針状試料10の軸線C1と試料回転モータ140の軸線C4が一致するとともに、針状試料10の軸線C1と軸受け113の軸線C2が直交するように針状試料10、ブラケット110等の形状が設定されている。 【0018】 ・・・(略)・・・ 【0019】 図2に示す針状試料10の先端11を加工する時には、クランプ106は、針状試料10を、その先端11側が集束イオンビームBの進行方向D先方を向きかつ基端12側が集束イオンビームBの進行方向D後方を向くように、針状試料10の軸線C1を集束イオンビームBの進行方向Dに対して30°以上45°以下の範囲の角度をなすように傾斜させて保持している。すなわち、図2に示す針状試料10の軸線C1と集束イオンビームBの進行方向Dとのなす傾斜角度θが30°以上45°以下の範囲なるように、クランプ106は針状試料10を保持している。」 (ウ)「【0020】 ・・・(略)・・・ なお、針状試料10は、集積回路等の電子デバイスから集束イオンビーム等を用いて加工して取り出された時には図4に示すように細長いブロック状の針状試料20となっている。そして、集束イオンビーム装置100により、この針状試料20は、図3で示した針状試料10の形状に加工される。 【0021】 まずステップS10において、図4に示すように、集束イオンビーム装置100内のブラケット110に設けられたクランプ106に針状試料20を固定する。・・・(略)・・・ 【0022】 ・・・(略)・・・ 【0023】 次にステップS30では、図6に示すように、SEM鏡筒150で観察しながら制御手段160に指示して試料載置台130を調整して、軸受け113の軸線C2がY軸と平行になり、かつ集束イオンビームBと針状試料20の軸線C3が交わるように配置させる。そして、制御手段160に指示して図示しない回転板モータにより、軸受け113の軸線C2を中心として針状試料20の軸線C3と集束イオンビームBの進行方向Dとのなす傾斜角度θが30°以上45°以下のある角度、例えば45°になるように回転板114を回転させる。・・・(略)・・・ 傾斜角度θが45°に保持されると、ステップS40に移行する。 【0024】 ステップS40では、図7及び図8に示すように、制御手段160に指示して試料回転モータ140を駆動させることにより、針状試料20を軸線C3を中心に回転させる。次に、FIB鏡筒120に集束イオンビームBを照射させながら、偏向器122xに電圧を印加させて集束イオンビームBをX軸方向のうち針状試料20に近づく方向であるX1方向に移動させる。そして、針状試料20の先端21に円錐面24が形成されるまで加工を行う。 先端21の加工が終了すると、針状試料20は図3に示す針状試料10となり、ステップS40が終了して、集束イオンビーム装置100による針状試料10を加工する工程が終了する。」 (エ)「【0009】 また、前記集束イオンビームの進行方向に対する前記針状試料の軸線の傾斜角度が30°以上45°以下の範囲に設定されていることがより好ましい。 この発明によれば、傾斜角度が45°以下なので、加工された針状試料の先端の円錐面の頂点部の角度は45°の2倍の90°以下になる。このため、針状試料をアトムプローブで分析する時に電界蒸発する場所が針状試料の先端の頂点周辺に集中する。従って、針状試料の組成をより正確に分析することができる。 また、傾斜角度が30°以上なので、集束イオンビームを照射させる装置と針状試料を軸線を中心に回転させながら支持する装置との配置位置の干渉が抑えられる。従って、アトムプローブ用針状試料の加工装置の設計を容易に行うことができる。」 (オ)引用文献の図2及び図7は、以下のとおりである。 ・図2 ・図7 そして、上記(エ)、図2及び図7からは、軸線C1、C3、C4は同一の直線上にあること、針状試料20の先端21の加工時において、針状試料20の軸線C3と集束イオンビームBの進行方向Dとのなす傾斜角度θが30°以上45°以下であり、針状試料20の軸線C3とSEM鏡筒150から照射される電子ビームEとの角度が約90°であること、及び、集束イオンビームBの進行方向DとSEM鏡筒150から照射される電子ビームEとの角度が約90°よりも小さいことが把握できる。 (カ)上記(ア)ないし(オ)から、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「集束イオンビームを照射させるFIB鏡筒と、試料載置台と、試料載置台に設けられたブラケットと、ブラケットに設けられ針状試料を保持するクランプと、クランプごと針状試料をその軸線を中心に回転させる試料回転モータと、電子ビームを照射して、測定対象物である針状試料を観察するSEM鏡筒と、を備え、 軸線を中心に回転する針状試料を、その先端をSEM鏡筒で観察しながらFIB鏡筒から照射される集束イオンビームで加工する集束イオンビーム装置であって、 針状試料の先端の加工時において、針状試料の軸線と集束イオンビームの進行方向とのなす傾斜角度が30°以上45°以下であり、 針状試料の軸線とSEM鏡筒から照射される電子ビームの進行方向との角度が約90°であり 集束イオンビームの進行方向とSEM鏡筒から照射される電子ビームの進行方向との角度が約90°よりも小さい、 集束イオンビーム装置。」 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「集束イオンビーム装置」、「集束イオンビーム」、「FIB鏡筒」、「電子ビーム」、「SEM鏡筒」、「針状試料」及び「試料載置台と、試料載置台に設けられたブラケットと、ブラケットに設けられ針状試料を保持するクランプと、クランプごと針状試料をその軸線を中心に回転させる試料回転モータ」は、本件補正発明の「粒子ビームシステム」、「第1粒子ビーム」または「イオンビーム」、「第1粒子ビームコラム」、「第2粒子ビーム」、「第2粒子ビームコラム」、「対象物」及び「対象物を前記対象物領域に取り付けるよう構成した対象物台」にそれぞれ相当する。 (イ)引用発明において、クランプに保持された針状試料に対し、集束イオンビームまたは電子ビームが照射される領域が、本件補正発明の「対象物領域」に相当し、当該集束イオンビームの進行方向及び電子ビームの進行方向が、本件補正発明の「第1方向」及び「第2方向」にそれぞれ相当する。 (ウ)引用発明の「対象物台」は、「クランプごと針状試料をその軸線を中心に回転させる試料回転モータ」を備えているので、本件補正発明と引用発明とは、「前記第1粒子ビームコラムに対して回転軸を中心に回転可能なシャフトを備えた対象物台」を備える点で一致する。 (エ)そして、引用文献の段落0023の「集束イオンビームBと針状試料20の軸線C3が交わるように配置させる」との記載及び図7によれば、集束イオンビームBの進行方向と針状試料20の軸線C3とは、針状試料の加工しようとする部分で交わることは明らかであるから、引用発明における「針状試料の軸線と集束イオンビームの進行方向とのなす傾斜角度」は、「α」または「前記対象物領域に取り付けられた前記対象物の被加工表面上における、前記第1方向と前記回転軸との間の第1角度」に相当する。 また、「針状試料の軸線とSEM鏡筒から照射される電子ビームの進行方向との角度」及び「集束イオンビームの進行方向とSEM鏡筒から照射される電子ビームの進行方向との角度」は、本件補正発明の「β」または「前記回転軸と前記第2方向との間の第2角度」及び「γ」または「前記第1方向と前記第2方向との間の第3角度」にそれぞれ相当する。 イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 ・一致点 「粒子ビームシステムであって、 第1方向から対象物領域に入射する第1粒子ビームを発生するよう構成した第1粒子ビームコラムであり、前記第1粒子ビームはイオンビームである第1粒子ビームコラムと、 第2方向から前記対象物領域に入射する第2粒子ビームを発生するよう構成した第2粒子ビームコラムと、 対象物を前記対象物領域に取り付けるよう構成した対象物台であり、前記第1粒子ビームコラムに対して回転軸を中心に回転可能なシャフトを備えた対象物台と を備え、 αは、前記対象物領域に取り付けられた前記対象物の被加工表面上における、前記第1方向と前記回転軸との間の第1角度を示し、βは前記回転軸と前記第2方向との間の第2角度を示し、γは前記第1方向と前記第2方向との間の第3角度を示す、 粒子ビームシステム。」 ・相違点1 αが、本件補正発明では、35°≦α≦55°であるのに対し、引用発明では、30°以上45°以下である点。 ・相違点2 βが、本件補正発明では、70°≦β≦90°であるのに対し、引用発明では、約90度であるものの、その範囲は不明である点。 ・相違点3 γが、本件補正発明では、20°≦γ≦90°であるのに対し、引用発明では、約90度より小さいものの、その範囲は不明である点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア 相違点1について 引用文献の上記(2)ア(エ)及び(オ)の記載によれば、引用発明においても、加工しようとする針状試料の先端の円錐面の頂点部の角度に適した範囲として、30°以上45°以下との範囲が規定されていることが理解できる。 したがって、引用発明において、加工しようとする針状試料の先端の円錐面の頂点部の角度に応じて、その適切な数値範囲を規定することは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。 また、本願の明細書の段落0035には、「図示の実施形態では、角度αは45°の値となる。結果として、ストリップ形凹部間の角度ε(図1を参照)は90°の値となる。しかしながら、角度αが異なる値となることでストリップ形凹部間の角度εがそれに従って異なる値となる場合、この値からの偏差も可能となる。例えば、角度αは35°~55°の値となり得る。」と記載されていることから見て、本件補正発明も、加工しようとするストリップ形凹部の角度に応じて、αの数値範囲を規定しているものであって、35°≦α≦55°の範囲を規定した点に特段の作用効果を認めることもできない。 この点に関し、審判請求人は、平成30年8月7日に提出された上申書において、「引用文献1に開示された従来技術では、作成する試料の形状は「針状」として特定されています。よって、本願発明と引用文献1に開示された従来技術とでは、目的とする試料形状の点で明確に異なります。」と主張している。しかし、本件補正発明において、「対象物」自体の形状や加工しようとする部分の形状について、何ら特定されていない。 さらに、審判請求人は、同請求の理由において、「本願発明においてシャフトの回転軸と、イオンビームの方向である第一方向とは、180-α°をなしており、αの角度範囲が35°~55°であることを考慮すると、イオンビームとシャフトの回転軸とは略反対方向となる関係となっています。」と主張している。しかし、本件補正発明では、イオンビームとシャフトの回転軸とは略反対方向となる関係となっていることは特定されていない。 したがって、審判請求人の上記主張は、採用できない。 イ 相違点2について 引用発明において、加工しようとする針状試料に対し、適切な角度で観察を行う必要があることは、当業者であれば容易に理解できることであって、そのために、βの適切な数値範囲を設定することは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。 また、本願の明細書の段落0035には、「回転軸89と電子ビームの方向との間の角度βは、電子顕微鏡画像におけるTEM試料101の表面の最大限の投影を可視化するために、図示の実施形態では90°の値となる。しかしながら、角度βの他の値、例えば70°~90°を選択することもできる。」と記載されていることから見て、本件補正発明も、加工しようとする面を上方から観察するのに適した、βの数値範囲を規定しているものであって、70°≦β≦90°の範囲を規定した点に、特段の作用効果を認めることもできない。 この点に関し、審判請求人は、平成30年4月23日に手続補正された審判請求書の請求の理由において、「引用文献1は、針状試料の加工用の装置を開示しているに過ぎないため、得られた試料の加工表面に対する入射角は、回転軸と電子ビームEとがなす角度ではなく、加工表面により形成される針のテーパー表面と電子ビームEとがなす角度となります。このため、引用文献1に従って、針状試料20の軸線C3と集束イオンビームBの進行方向Dとのなす傾斜角度θは、本願発明における角度βの意味するところとは全く異なります。」と主張している。 しかし、上記アでも検討したように、本件補正発明において、「対象物」自体の形状や加工しようとする部分の形状について、何ら特定されていないし、そもそも、βは、集束イオンビームが照射される面を上方から観察できる角度であれば良いのであって、βの数値範囲を観察が容易となる角度の範囲を規定することは、当業者の通常の創作能力の範囲のことである。 ウ 相違点3について 上記ア、イで検討したように、引用発明において、α、βの数値範囲を規定するに際して、SEM鏡筒とFIB鏡筒及び試料台ないし針状試料が、互いに干渉しないような配置とするために、γの角度の数値範囲を規定することは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。 また、本願の発明の詳細な説明を参酌しても、20°≦γ≦90°とした点に、特段の作用効果を認めることができない。 エ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成30年3月28日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年9月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献:特開2009-109236号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、上記第2の2で指摘した限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2018-004197

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