特許拒絶査定不服審判
2018-001638
害虫防除用エアゾール、及びこれを用いた害虫防除方法
- 審判番号
- 2018-001638
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-004476外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年02月06日
- 審決日
- 2018年09月26日
- 公報発行日
- 2018年11月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】大日本除蟲菊株式会社
- 【請求人代理人】沖中 仁
- 分類
- P18 .55 -WY (A01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-4476「害虫防除用エアゾール、及びこれを用いた害虫防除方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年2月12日出願公開、特開2015-27982、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
この出願は、平成26年1月14日(優先権主張 平成25年7月1日)の出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。
平成29年 2月 8日付け 拒絶理由通知
平成29年 6月 9日 意見書提出・手続補正
平成29年 6月26日付け 最後の拒絶理由通知
平成29年 9月 6日 意見書提出
平成29年11月 2日付け 拒絶査定
平成30年 2月 6日 審判請求
第2 原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶の理由は、平成29年6月26日付け最後の拒絶理由通知における理由1であり、理由1の概要は、平成29年6月9日付けの手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしていないというものである。
具体的には、補正前の請求項1の「しかも、1回の噴霧処理における害虫防除成分噴出量を4.5~8畳あたり5.0~30mgとなし、その処理空間を12時間以上にわたり害虫を防除可能にせしめる」を、補正後の請求項1において「前記定量噴霧用エアゾールバルブを通した1回の噴霧処理により7.5~24.5mgのトランスフルトリンを噴出させる」とした補正について、願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲の記載及び技術常識を参酌しても、トランスフルトリンの噴射量が「7.5~24.5mg」であるという記載があったと認められないというものである。
第3 平成29年6月9日付けの手続補正について
1 平成29年6月9日付けの手続補正は、平成29年2月8日付け拒絶理由通知で明確でないと指摘された、補正前の請求項1に記載した「1回の噴霧処理における害虫防除成分噴出量を4.5~8畳あたり5.0~30mgとなし」について、補正後の請求項1において、本願明細書の実施例1(【0023】)及び実施例2(【0025】)の記載、並びに、当該実施例に記載の方法で実施した、【表1】(【0026】)に示される、本発明1、2、5及び6として記載された事項に基づき、「前記定量噴霧用エアゾールバルブを通した1回の噴霧処理により7.5~24.5mgのトランスフルトリンを噴出させる」と補正することを含むものである。
2 検討
(1)この出願の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、あわせて「当初明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0014】本発明は、メトフルトリン及び/又はトランスフルトリンを含む害虫防除用エアゾールを屋内で一定量、好ましくは一回当たり空中に向けて0.1~0.9mLで噴霧し、所定量の噴霧粒子を気中に浮遊残存させる一方、その噴霧粒子の所定量を壁面に付着するようになして、その処理空間を12時間、好ましくは14時間以上にわたり害虫、特に蚊類を防除可能ならしめることに特徴を有する。ここで所定の壁面付着量とは全体の噴霧粒子に対して1%以上が目安となる。
このために、本発明の害虫防除用エアゾールは、エアゾール原液/噴射剤比率が10~50/50~90(容量比)であり、しかも、1回の噴霧処理におけるメトフルトリン及び/又はトランスフルトリンの噴出量が4.5~8畳あたり5.0~30mgであることを必須とする。
・・・・・
また、メトフルトリン及び/又はトランスフルトリンの噴出量が4.5~8畳あたり5.0mg未満の場合、壁面への付着量が不足するし、一方、30mgを超えるようになしても壁面付着量は必ずしも噴出量に相応せず経済的デメリットが避けられない。」(審決注:下線は当審が付与。以下同様。)
「【実施例1】【0023】トランスフルトリンをミリスチン酸イソプロピルに溶解してトランスフルトリン26.7w/v%のエアゾール原液を調製した。このエアゾール原液9mLと液化石油ガス21mL[エアゾール原液/噴射剤比率:30/70(容量比)]を定量噴霧(0.2mL)用エアゾールバルブ付きエアゾール容器に加圧充填して、本発明の害虫防除用エアゾールを得た。
このエアゾールの噴射距離20cmにおける噴射力(25℃)は3.5g・fで、噴霧粒子の体積積算分布での90%粒子径は56μmであった。また、1回の噴霧処理におけるトランスフルトリン噴出量は4.5~8畳あたり15.8mgであった。
・・・・・
【実施例2】【0025】実施例1に準じて表1に示す各種害虫防除用エアゾールを調製し、下記に示す試験を行った。その試験結果を纏めて表2に示す。なお、表中のAI噴出量は、メトフルトリン及び/又はトランスフルトリンの噴出量で示す。
(1)25m3の部屋での蚊成虫に対する防除効果
閉めきった25m3の部屋の中央で供試エアゾールを斜め上方に向けて0.2mL(・・・)噴霧した。・・・・・
・・・・・
【0026】【表1】
【0027】【表2】
【0028】本発明1、比較例1ないし比較例3に係る試験の結果、害虫防除成分として、メトフルトリン及び/又はトランスフルトリンが有効で、プロフルトリンは防除効果が幾分劣ることが認められた。また、トランスフルトリンと配合される有機溶剤としては、ミリスチン酸イソプロピルのような炭素数の総数が16~20の高級脂肪酸エステルが有効持続時間を延長させるうえで効果的であり、エタノールや炭化水素系溶剤を用いた場合、KT50値は20分を越え、14時間を超える有効持続時間の延長は困難であった。なお、炭素数の総数が16~20の高級脂肪酸エステルの中では、ミリスチン酸イソプロピルが特に好適であった。更に、噴霧粒子の体積積算分布での90%粒子径としては10~80μmであることが要求されるものの、本発明6及び本発明7の結果を考慮すると、25~70μmの範囲が好ましかった。
これに対し、エアゾール原液/噴射剤比率が10~50/50~90(容量比)の範囲を外れるもの(比較例4及び比較例5)、並びに比較例6のように、トランスフルトリンの噴出量が25m3の部屋(6畳)あたり5.0mg未満のものは、蚊成虫に対する防除効果が14時間まで持続しなかった。」
(2)実施例中の【表1】(【0026】)には、害虫防除成分としてトランスフルトリン又はトランスフルトリンとメトフルトリンを用い且つ有機溶剤である高級脂肪酸エステルとして、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル又はパルミチン酸イソプロピルを用いた実施例である、本発明1、2、5及び6では、25m3の(6畳)において、1回の噴霧処理におけるトランスフルトリンの噴出量が15.8mg、16.0mg、24.5mg、6.2mg(=7.5mg×32.0/(32.0+6.5))であることが記載されている。そして、【表2】(【0027】)には、本発明1、2、5及び6の害虫防除用エアゾールが顕著な蚊成虫防除効果を奏していることが示されている。
段落【0014】の記載より、「1回の噴霧処理におけるメトフルトリン及び/又はトランスフルトリンの噴出量が4.5~8畳あたり5.0~30mg」の範囲内であれば、所定量の噴霧粒子を気中に浮遊残存させる一方、その噴霧粒子の所定量を壁面に付着するようになして、その処理空間を12時間以上にわたり害虫、特に蚊類を防除可能ならしめるものと理解される。
そして、実施例において、本発明1、2、5及び6として、1回の噴霧処理におけるトランスフルトリンの噴出量について、具体的には離散的な量で実施されていたとしても、当該実施例は【0014】に記載された4.5~8畳あたり5.0~30mgに該当する条件で行われており、25m3の(6畳)において、1回の噴霧処理によるトランスフルトリンの噴出量が6.2mg、15.8mg、16.0mg、24.5mgである例において、蚊類防除効果があることが示されていることから、6.2~24.5mgの範囲内である7.5~24.5mgの範囲内であれば連続した数値の範囲内で蚊類防除効果を有するものと理解される。
そうすると、1回の噴霧処理におけるトランスフルトリンの噴出量が「前記定量噴霧用エアゾールバルブを通した1回の噴霧処理により7.5~24.5mg」であることは、当初明細書等に記載されていた範囲内のものであり、新たな技術的事項を導入するものではないといえる。
3 他に、平成29年6月9日付けの手続補正が当初明細書等に記載した範囲内においてしたものではないという理由もない。
4 したがって、平成29年6月9日付けの手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないとはいえない。
第4 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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