特許異議申立
2017-700676
軽油燃料組成物
- 審判番号
- 2017-700676
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-273324外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月11日
- 審決日
- 2018年02月01日
- 公報発行日
- 2018年05月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】昭和シェル石油株式会社
- 【権利者代理人】宮部 岳志
- 【権利者代理人】小森 栄斉
- 【異議申立人】三田 翔
- 分類
- P1651.113-YAA(C10L) / P1651.121-YAA(C10L) / P1651.536-YAA(C10L) / P1651.537-YAA(C10L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6057509号発明「軽油燃料組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6057509号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
特許第6057509号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯等
1 本件特許異議申立に係る特許
本件特許異議申立に係る特許第6057509号は、特許権者である昭和シェル石油株式会社より、平成23年12月14日、特願2011-273324号として出願され、平成28年12月16日、発明の名称を「軽油燃料組成物」、請求項の数を「1」として特許権の設定登録を受けたものである。
2 手続の経緯
本件特許異議申立における手続の経緯は、おおよそ次のとおりである。
平成29年 7月11日 三田翔より特許異議の申立て
同年10月 4日付 取消理由通知
同年11月24日 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
同年12月28日 意見書の提出(特許異議申立人)
第2 訂正の適否
1 訂正事項
前記平成29年11月24日提出の訂正請求書による、本件明細書及び特許請求の範囲についての訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「炭素数19~23のノルマルパラフィン分が7.5mass%以下」と記載されているのを「炭素数19~23のノルマルパラフィン分が4.0mass%以上7.5mass%以下」に訂正する。
(2) 訂正事項2
明細書の【0009】に「炭素数19~23のノルマルパラフィン分が7.5mass%以下」と記載されているのを「炭素数19~23のノルマルパラフィン分が4.0mass%以上7.5mass%以下」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、明細書の【0019】の記載に基づいて、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「炭素数19~23のノルマルパラフィン分」の含有量を、「4.0mass%以上7.5mass%以下」に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものと認められる。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、前記訂正事項1に係る特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものといえる。
3 小括
前記「2」のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項1について訂正することを認める。
第3 本件特許請求の範囲の記載
前記「第2」のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件特許請求の範囲の記載は、本件訂正後の特許請求の範囲に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
1種または2種以上の軽油基材とEV系低温流動性向上剤とからなり、
直留軽油に分解軽油を混合し水素化脱硫した軽油基材を含有し、
炭素数19~23のノルマルパラフィン分が4.0mass%以上7.5mass%以下、シクロパラフィン類が34mass%以上、芳香族分が18vol%以上、アルキルベンゼン類が10mass%以上、2環シクロパラフィン類が11mass%以上、及び硫黄分が10massppm以下であることを特徴とする軽油燃料組成物。」
(以下、上記請求項1に係る特許及び発明を、単に「本件特許」及び「本件発明」という。また、本件訂正後の明細書を「本件特許明細書」という。)
第4 平成29年10月4日付け取消理由通知に記載した取消理由(記載不備)について
1 取消理由(記載不備)の概要
標記取消理由(記載不備)は、要するに、本件訂正前の特許は、特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)、同法同条第6項第1号(サポート要件)及び同法同条第6項第2号(明確性要件)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4号に該当するため、取り消すべきものである、というものである。
そして、その理由については、特許異議申立書第13、14ページの「(4)」の項に記載のとおりであるとした上で、以下の点を指摘した。
(1) サポート要件違反について
本件訂正前の請求項1には、軽油燃料組成物を構成する各成分の含有割合として、炭素数19~23のノルマルパラフィン分が「7.5mass%以下」、シクロパラフィン類が「34mass%以上」、芳香族分が「18vo1%以上」、アルキルベンゼン類が「10mass%以上」、2環シクロパラフィン類が「11mass%以上」であることが規定されている。
上記規定によれば、炭素数19~23のノルマルパラフィン分の含有割合は「0mass%」であってもよいし、シクロパラフィン類、芳香族分、アルキルベンゼン類及び2環シクロパラフィン類の含有割合は、各々「100%」であってもよいものと解される。
一方、本件訂正前の明細書には、実施例として、僅か2点の軽油燃料組成物の組成が示されるのみであり、上記各成分の含有範囲全体に亘ってサポートするものでなく、また上記各成分の含有範囲全体に亘って上記請求項1に係る発明の効果を奏し得るものとは到底認めることはできないことから、上記請求項1に係る発明は、上記明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を超える範囲まで規定するものとなっており、このために、上記請求項1に係る発明は上記明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない。
(2) 明確性要件違反について
上述したとおり、本件訂正前の請求項1の記載からは、炭素数19~23のノルマルパラフィン分の含有割合は「0mass%」であってもよいことから、係る成分が必須成分であるか任意成分であるのかさえ明確でなく、また、必須成分である、シクロパラフィン類、芳香族分、アルキルベンゼン類及び2環シクロパラフィン類の含有割合は、各々「100%」であってもよいことから、これらいずれかの必須成分の含有割合が「100%」である場合、各成分の合計が100%を超えると解され、係る観点からも請求項の記載が不明確である。
(3) 実施可能要件違反について
本件訂正前の請求項1に係る発明において、炭素数19~23のノルマルパラフィン分、シクロパラフィン類、芳香族分、アルキルベンゼン類及び2環シクロパラフィン類の含有割合が、上記請求項1に係る発明が効果を奏する範囲を超えて広く記載されていることから、当業者は、上記各成分をどのように配合した場合に上記請求項1に係る発明の効果を発揮し得るのか理解することができず、このために、本件訂正前の明細書の発明の詳細な説明には、上記請求項1に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分な記載がなされていない。
2 前記取消理由(記載不備)についての判断
当審は、本件訂正後の特許請求の範囲の記載及び本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に記載不備は存しないので、本件特許に対して、前記取消理由(記載不備)は妥当しないと判断する。
その理由は以下のとおりである。
(1) 前記取消理由(記載不備)の論拠の整理
前記取消理由(記載不備)の論拠は、整理すると、次の2点に集約することができる。
(i)特許請求の範囲に記載された「炭素数19~23のノルマルパラフィン分」の含有割合が形式上「0mass%」である場合を含むこと(明確性要件違反の論拠)
(ii) 特許請求の範囲に記載された「シクロパラフィン類」、「芳香族分」、「アルキルベンゼン類」及び「2環シクロパラフィン類」の含有割合は上限値を規定するものではないから、形式上、各々が「100%」である場合を含むこと(サポート要件違反及び実施可能要件違反の論拠)
(2) 前記(i)について
本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、前記「第3」に示したとおりであり、そこには、本件発明に係る軽油燃料組成物を構成する上記各成分の含有割合について、「炭素数19~23のノルマルパラフィン分が4.0mass%以上7.5mass%以下」、「シクロパラフィン類が34mass%以上」、「芳香族分が18vo1%以上」、「アルキルベンゼン類が「10mass%以上」及び「2環シクロパラフィン類が11mass%以上」であることが規定されている。
そうすると、前記(i)については、「炭素数19~23のノルマルパラフィン分」の含有割合の下限値が「4.0mass%以上」と規定されているのであるから、形式上「0mass%」である場合を含むことはないため、本件訂正後の特許請求の範囲の記載に対しては当てはまらない。
(3) 前記(ii)について
前記(ii)について検討すると、そもそも、本件発明に係る軽油燃料組成物は前記成分のすべてを構成成分として含むのであるから、各成分の含有割合が「100%」を超えることはあり得ない。加えて、当該軽油燃料組成物は、シクロパラフィン類などの成分のほかにも、炭素数が19未満あるいは23超のノルマルパラフィン分であるとか、イソパラフィン分を、少なからず含有するものと解される上、本件発明が特定する「軽油燃料組成物」という枠組みの中にあっては、当該枠組みを超えるような構成成分の含有割合は、おのずと規制されるのであるから(例えば、シクロパラフィン類や芳香族分などの含有割合が高すぎれば、所定のセタン価は得られないため、おのずとそれらの上限は制限される。)、シクロパラフィン類などの上限値についての規定がなくとも、それらの含有割合が、極端に高い数値となるとは考えにくい。したがって、本件発明は、確かにシクロパラフィン類などの含有割合の上限値について規定するものではないが、その値は、「軽油燃料組成物」という枠組みの中で、適正な範囲(極端に高くない数値)に帰するものと解するのが合理的である。そうである以上、前記 (ii)の論拠にも理由がないといわざるを得ない。
(4) 小括
以上のとおり、先の取消理由(記載不備)の論拠はいずれも理由がない。 したがって、前記(i)の論拠により、本件特許請求の範囲の記載が不明確であるとして明確性要件違反を認めることはできない。また、本件特許明細書の発明の詳細な説明に実施例が2つしか記載されていないとしても、前記(ii)の論拠をもって、本件特許請求の範囲が広範にすぎるとして、サポート要件違反、さらにはこれに起因する実施可能要件違反を認めることもできない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立人が主張するその他の申立理由(甲1に基づく進歩性)
前記「第4」において検討した取消理由のほかに、特許異議申立人は、甲第1号証(特開2009-292932号公報、以下「甲1」という。)を提出し、これに基づいて特許法第29条第1項第3号及び第2項所定の規定違反(同法第113条第2号に該当)を主張している。
そこで、以下、当該申立理由について検討をする。
2 甲1に基づく特許法第29条第1項第3号及び第2項所定の規定違反について
(1) 甲1発明
甲1には、ディーゼルエンジン用燃料油組成物(発明の名称)に関する発明が記載されているところ、具体的には、実施例2につき、次のように記載されている。
・「【0053】
<実施例2>
脱硫軽油基材90容量%に、ナフテンBを10容量%混合することにより、ディーゼルエンジン用燃料油組成物を得た。そして得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物に、エチレン-酢酸ビニル共重合体から成る流動性向上剤をディーゼルエンジン用燃料油組成物全量に対し300容量ppm、また長鎖アルキルエステルから成る潤滑性向上剤をディーゼルエンジン用燃料油組成物全量に対し100mg/kg添加した。得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物の性状を表3に示す。」
・「【0058】
【表3】
」
そうすると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「【表3】に実施例2として記載されたディーゼルエンジン用燃料油組成物。」
(2) 対比
本件発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ディーゼル用燃料油組成物」は、本件発明の「軽油燃料組成物」に相当するものである。そして、両者の2環シクロパラフィン類(2環ナフテン類)の含有割合についてみると、本件発明は「11mass%以上」であるのに対して、甲1発明では、2環以上のナフテン類含有量が「22.8容量%」であり、3環以上のナフテン類含有量が「9.3容量%」であるから、それらの差分にあたる「13.5容量%」が、当該含有割合であることが分かる。
そうすると、両者は少なくとも次の点で相違するといえる。
・相違点:軽油燃料組成物(ディーゼル用燃料油組成物)における2環シクロパラフィン類(2環ナフテン類)の含有量について、本件発明は「11mass%以上」と特定しているのに対して、甲1発明は「13.5容量%」である点
(3) 相違点の検討
前記相違点について、特許異議申立人は、おおむね次のように主張する(特許異議申立書の12頁3~6行参照)。
すなわち、甲1発明における2環シクロパラフィン類が13.5容量%であるという構成要件は、軽油燃料組成物を構成する炭化水素の密度が炭化水素間で大幅に異なるものではないから、本件発明の2環シクロパラフィン類が11mass%以上であるという構成要件に対応するものである。
そこで、まず、上記主張について検討する。
当該主張は、「軽油燃料組成物を構成する炭化水素の密度が炭化水素間で大幅に異なるものではない」という技術的事項を前提とするものであるが、これを裏付ける事実は、特許異議申立人が提出した証拠をみても見当たらない。また、そのような技術的事項を裏付ける技術常識の存在を認めるに足りる証拠もない。
そうすると、上記主張は、その前提を欠くものといわざるを得ないから、当該主張を採用することはできない。
ほかに、前記相違点が実質的なものではない、あるいは当該相違点に係る本件発明の技術的事項が容易想到のものである、と認めるに足りる証拠も見当たらない。
そして、本件発明は、2環シクロパラフィン類が11mass%以上であるという技術的事項を採用することにより、本件特許明細書記載の効果(例えば、本件特許明細書の【0025】【表1】の実施例1あるいは実施例2と、比較例1との対比から認められる低温性状に関する効果)を奏するものである。
(4) 小括
以上のとおり、前記相違点は実質的なものであるから、本件発明は、甲1発明(甲1に記載された発明)であるはいえない。また、当該相違点に係る本件発明の技術的事項は容易想到のものであるとはいえないから、本件発明は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
したがって、本件発明に、特許法第29条第1項第3号及び第2項所定の規定違反は認められない。
第6 平成29年12月28日提出の意見書における特許異議申立人の主張(特に、サポート要件に関するもの)について
1 主張の概要
標記意見書において、特許異議申立人は、サポート要件違反について特に詳述し、おおむね次の(i)、(ii)の点について主張しているので、一応、ここで触れておく。
(i)本件発明の軽油燃料組成物中に含まれるシクロパラフィン類、芳香族分、アルキルベンゼン類または2環シクロパラフィン類は、専ら分解系軽油に由来するものであるから、これらを多量に含むことは、当該軽油燃料組成物の大部分が分解系軽油により構成されることを意味することになる。
そうすると、これらを多量に含む本件発明は、分解系軽油を多く含む軽油燃料組成物における問題点(これまで知られている低温性状の改善に用いる添加剤では十分な効果が得られないこと)にかんがみ、これに代わる軽油燃料組成物を提供するという本件発明の課題との関係で合理性を欠くものである。
さらに、これらを多量に含む本件発明は、所定のセタン価を満たさないことから、そもそも軽油燃料組成物として成立し得るものではない。
(ii)本件発明は、「直留軽油に分解軽油を混合し水素化脱硫した軽油基材」を含む1種又は2種以上の軽油基材を含有することを規定するものであり、例えば、「直留軽油に分解軽油を混合し水素化脱硫した軽油基材」を1%、その他の基材を99%含む軽油燃料組成物を内包するものである。これに対して、本件特許明細書の実施例には、「直留軽油に分解軽油を混合し水素化脱硫した軽油基材」を1種のみ用いた軽油燃料組成物しか開示されていないから、サポート要件を充足しない。
2 前記主張について
(1) 前記(i)の点について
本件発明に係る軽油燃料組成物は、シクロパラフィン類や芳香族分などの分解系軽油に由来する成分を多量に含むものであるが、本件特許明細書に記載された実施例1、2(分解系軽油を含む本件発明に係る軽油燃料組成物)と、比較例1、2(分解系軽油を含む従来の軽油燃料組成物)との比較などからも明らかなように、分解系軽油を含む軽油燃料組成物のなかでも、その構成成分の含有量が、所期の効果を奏するように最適化されたものであるということができる。したがって、本件発明は、分解系軽油を含む従来の軽油燃料組成物に代わるものを提供しているのであるから、本件発明の課題との不整合は何ら存在しない。
また、本件発明は、あくまで「軽油燃料組成物」という枠組みの中に属するものであるから、軽油燃料組成物として成立し得えないものまで、その範疇とするものではない。
以上の点をからみて、当該主張(i)は当を得たものとはいえず、採用することはできない。
(2) 前記(ii)の点について
本件発明は、確かに「直留軽油に分解軽油を混合し水素化脱硫した軽油基材」を含有するものであるが、本件発明の解決課題との関係において、当該軽油基材の含有割合にさほどの意味はないというべきである。そして、当該解決課題との関係において、本件発明が重要視しているのは、あくまで、最終的に得られる軽油燃料組成物の構成成分(その含有割合の最適化)であると考えるべきである。この点は、本件特許明細書に、「【0018】本発明の軽油燃料組成物は、最終的に得られる軽油燃料組成物が規定する特定の性状を有するように1種または2種以上の軽油基材を脱硫装置などの2次装置などで処理し、硫黄分10massppm以下にしたものや、硫黄分値に関わらず、1種または2種以上の軽油基材を混合して調製できる。」、「【0007】・・・これに対し、本発明者は、社会情勢の変化に十分対応しながら軽油燃料組成物の低温性能の向上を図るためには、硫黄含有量の低下や分解軽油の混合比率の増加に伴い、ワックスの性状、析出量に加え、低温で析出したワックスの溶解量に寄与する物質、すなわち分解軽油に多く含まれる芳香族や、脱硫装置内で芳香族を水添処理することにより生成するナフテンの組成、含有量にも着目する必要があることを見出した。」、「【0016】・・・本発明者は、この分析結果をふまえ、炭素数19~23のノルマルパラフィン含有量を調整することで良好な低温流動性を確保できることを見出した。また、炭素数19~23のノルマルパラフィンとその他軽油燃料組成物の組成および低温流動性との関係を調べたところ、炭素数19~23のノルマルパラフィン分のみならず、芳香族分やアルキルベンゼン類及びシクロパラフィン類や2環シクロパラフィン類の組成および比率も低温性能に影響を及ぼす事実を見出した。そして、特定の炭素数のワックス量とアルキルベンゼン類を含む芳香族分、2環シクロパラフィン類を含むシクロパラフィン類を適正にコントロールした基材と特定の添加剤を組み合わせることで、社会情勢にあった状況下でも、適正な低温流動性を確保できることを見出した。本発明は、本発明者によるこれら新たな知見に基づくものである。」などと記載されていることからも明らかである。
そうすると、「直留軽油に分解軽油を混合し水素化脱硫した軽油基材」の含有割合と本件発明の解決課題との間に直接的な関係はないというほかないから、本件特許明細書の実施例に「直留軽油に分解軽油を混合し水素化脱硫した軽油基材」を1種のみ用いた軽油燃料組成物しか開示されていないことをもって直ちに、サポート要件違反と結論付けることはできない。
したがって、前記主張(ii)を採用することはできない。
第7 結び
以上のとおりであるから、本件特許は、特許法同法第36条第4項第1号又は第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとも、同法第29条の規定に違反してされたものであるともいえず、同法第113条第4号又は第2号に該当するとは認められないから、前記取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立の理由によっては、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-700676