特許訂正審判
2017-390068
バイオディーゼル燃料の製造方法及びバイオディーゼル燃料組成物
- 審判番号
- 2017-390068
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2010-058335
- 登録番号
- 特許第5756972号(P5756972)
- 請求日
- 2017年07月18日
- 審決日
- 2017年11月09日
- 公報発行日
- 2018年02月23日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】国立研究開発法人 産業技術総合研究所
- 【請求人代理人】江幡 敏夫
- 審判長/審判官
- 審判長 冨士 良宏
- 審判官 川端 修
- 審判官 日比野 隆治
- 分類
- P141 .852-Y (C10L) / P141 .854-Y (C10L) / P141 .856-Y (C10L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5756972号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5756972号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第5756972号発明(以下「本件特許」という。)は、平成22年2月24日に出願された特許出願(特願2010-58335号)に対し、平成25年11月11日付けで手続補正書が提出され、平成26年6月16日付けで拒絶理由が通知され、同年7月30日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月2日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成27年1月16日付けで意見書及び手続補正書が提出された後に、平成27年6月12日にその請求項1~9に係る発明について特許権の設定登録がなされたものであって、平成29年7月18日に、本件訂正審判の請求がなされ、同年9月7日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年10月6日に意見書が提出された。
第2 請求の趣旨及び理由
本件訂正審判請求の趣旨は、「特許第5756972号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおりに訂正することを認める、との審決を求める。」というものであって、本件特許に係る願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を下記訂正事項1~3のとおりに訂正することを求めるというものである。
1.訂正事項1
特許請求の範囲請求項3の一部に「パラジウム/アルミニウム水素化触媒共存下」と記載されているのを、「パラジウム/アルミナ水素化触媒共存下」に訂正する(請求項3を引用する請求項4~9も同様に訂正する)。
2.訂正事項2
明細書の段落【0015】に、「パラジウム/アルミニウム水素化触媒共存下」と記載されているのを、「パラジウム/アルミナ水素化触媒共存下」に訂正する。
3.訂正事項3
明細書の段落【0032】【表1】に「5質量%バイオディーゼル混合経由」と記載されているのを、「5質量%バイオディーゼル混合軽油」に訂正する。
第3 当審の判断
1.訂正の目的、新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更について
ア 訂正事項1、2について
本件請求項3に係る発明は、「(1)エステル交換反応処理した油脂及び/又は廃食用油から調製した脂肪酸アルキルエステル、及び/又は(2)脂肪酸エステル化反応処理した脂肪酸アルキルエステル」を、「水素化触媒共存下」、「水素化処理する」「バイオディーゼル燃料の製造方法」に関するものであるところ、上記訂正事項1は、上記「水素化触媒」に含まれる物質に関して、「アルミニウム」を「アルミナ」と訂正するものと認められる。
一方、上記「(1)エステル交換反応処理した油脂及び/又は廃食用油から調製した脂肪酸アルキルエステル、及び/又は(2)脂肪酸エステル化反応処理した脂肪酸アルキルエステル」は、「バイオディーゼル燃料」に含まれた水分により加水分解され、脂肪酸が生じることがあること、及び、「バイオディーゼル燃料」に含まれるリノール酸メチルやリノレン酸メチルに代表される多不飽和脂肪酸が、空気中の酸素により酸化され、脂肪酸が生じることがあることは、当業者にとって技術常識である。
そして、生じた「脂肪酸」は、アルミニウムと容易に反応し、アルミニウムを変性、劣化させるものであることも、当業者にとって技術常識である。
なお、平成29年9月7日付けの訂正拒絶理由で引用された特開昭63-291642号公報には、「(従来技術とその問題点)」の欄に「従来から金属アルミニウムや金属亜鉛を担体とする貴金属触媒が各種化学反応に広く使用されている。」(1頁右下欄13~16行)と記載されているものの、該公報に記載された貴金属触媒を具体的にどのような化学反応に用いるかについては記載されておらず、また、同特表2008-505103号公報に記載された水素化触媒は、「マレイン酸」(【0002】)に対して用いられるものであり、同特開平2-202856号公報に記載された水素化触媒は、「DCH(ジシアノシクロヘキサン)類」(2頁右下欄16行)に対して用いられるものであり、同特開平2-157251号公報に記載された水素化触媒は、「長鎖不飽和あるいは飽和脂肪族ニトリル」(2頁左下欄7~8行)に対して用いられるものであり、いずれの触媒も、「(1)エステル交換反応処理した油脂及び/又は廃食用油から調製した脂肪酸アルキルエステル、及び/又は(2)脂肪酸エステル化反応処理した脂肪酸アルキルエステル」に対して用いられるものではない。
そうすると、「脂肪酸」と反応し、変性、劣化する「アルミニウム」を、本件請求項3に係る発明の「バイオディーゼル燃料の製造方法」に使用することは、該製造方法における「水素化触媒」として、「アルミニウム」がどのように機能するのかを予測し得ないものとなることから、該製造方法においては「アルミニウム」は使用しないということができ、本件請求項3の記載に接した当業者は、「アルミニウム」は、明らかな誤記と解するものと認められる。そして、これに関して、明細書の段落【0024】及び【0045】(実施例8)等を参酌すれば、「アルミナ」の誤記と理解するというべきである。
また、訂正事項2は、請求項3に対応する発明の詳細な説明について、明細書の段落【0015】の「パラジウム/アルミニウム水素化触媒共存下」と記載されているのを、「パラジウム/アルミナ水素化触媒共存下」に訂正するものであり、「水素化触媒」に含まれる物質について、「アルミニウム」を「アルミナ」と訂正するものであるから、訂正事項1と同様な理由から、明細書の段落【0015】の上記記載に接した当業者は、「アルミニウム」は、「アルミナ」の誤記と理解するというべきである。
したがって、上記訂正事項1、2は、本来その意であることが、明細書又は特許請求の範囲の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すものであり、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものといえ、「誤記の訂正」に該当する。
よって、上記訂正事項1及び2は、誤記の訂正を目的とするものであり、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものである。
そして、上記訂正事項1及び2に係る訂正は、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかであって、特許法第126条第5項の規定に適合する。
また、上記訂正事項1及び2に係る訂正によって、特許請求の範囲の技術的事項はなんら変更されるものではないことから、該訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
イ 訂正事項3について
上記訂正事項3は、明細書の段落【0032】【表1】の「5質量%バイオディーゼル混合経由」という記載の「経由」を、同じ「けいゆ」という読みであって、「ディーゼル燃料」を表す「軽油」と訂正するものであり、上記「経由」という記載に接した当業者は、「ディーゼル燃料」に関する技術についての記載であるから、「経由」は、「軽油」の誤記と理解するというべきである。
したがって、上記訂正事項3に係る訂正も、本来その意であることが、明細書又は特許請求の範囲の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すものであり、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものといえ、「誤記の訂正」に該当する。
そして、上記訂正事項3に係る訂正は、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかであって、特許法第126条第5項の規定に適合する。
また、上記訂正事項3に係る訂正によって、特許請求の範囲の技術的事項はなんら変更されるものではないことから、該訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ まとめ
上記訂正事項1~3に係る訂正は、誤記の訂正を目的とするものであり、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、新たな技術的事項を導入しないものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
2.独立特許要件にいて
上記訂正事項1~3に係る訂正によって、訂正訂正後の請求項1~9に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明であるという理由は見当たらず、上記訂正事項1~3は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
第4 むすび
したがって、上記訂正事項1~3は、特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第126条第5ないし7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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