特許拒絶査定不服審判
2017-015977
圧延機用ロールチョックの補修方法
- 審判番号
- 2017-015977
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-037328外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年10月27日
- 審決日
- 2018年12月17日
- 公報発行日
- 2019年02月22日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】JFEスチール株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人酒井国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (B21B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-37328「圧延機用ロールチョックの補修方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年9月5日出願公開、特開2016-159304、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月26日の出願であって、平成29年7月21日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年9月11日に意見書が提出されると共に手続補正がされ、平成29年10月4日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年10月27日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成29年10月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1、2に係る発明は、以下の引用文献1~3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開昭49-111292号公報
2.特開2013-7465号公報(周知技術を示す文献)
3.国際公開第2013/164580号(周知技術を示す文献)
第3 本願発明
本願請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成29年9月11日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
ロール軸部支持面が摩耗した圧延機用ロールチョックの補修方法において、
前記圧延機用ロールチョックのロール軸部支持面を、摩耗前と同じ中心位置、かつ同じ真円度で、摩耗前よりも大きな内径となるように加工する加工ステップと、
加工後の前記圧延機用ロールチョックの内径と同じ外径を有する軸受部材を、加工後の前記圧延機用ロールチョックのロール軸部支持面に嵌め合わせる嵌合ステップと、
を含み、
前記加工ステップは、予め定められた摩耗前の前記圧延機用ロールチョックの寸法、中心位置および真円度を基に、前記圧延機用ロールチョックのロール軸部支持面において最も摩耗している部分である最大摩耗部の摩耗量を算出し、摩耗前の内径に前記最大摩耗部の摩耗量を加えた内径となるように、前記圧延機用ロールチョックのロール軸部支持面を加工することを特徴とする圧延機用ロールチョックの補修方法。
【請求項2】
前記加工ステップの前に、加工前の前記圧延機用ロールチョックのロール軸部支持面に既に嵌め合わされている古い軸受部材を取り外す取外ステップを含み、
前記嵌合ステップは、前記取外ステップで取り外した前記古い軸受部材に替えて、新たな軸受部材を加工後の前記圧延機用ロールチョックのロール軸部支持面に嵌め合わせることを特徴とする請求項1に記載の圧延機用ロールチョックの補修方法。」
第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線部は理解の便のため当審で付与した。)
「第1図において四重圧延機ではスタンド1に補強ロール2と作業ロール3とが縦に配置され、更に作業ロール3に対し前後位置にガイドロール4が設けられている。
ガイドロール4は第2図に示すようにベアリングチヨツク5を介してスタンド1に回転可能に支持されている。ガイドロール4の一端はカツプリング12により駆動用スピンドル6と連結されている。
ガイドロール4は作業ロール3に最も接近したロールであるため圧延時の衝撃によりスタンド1とベアリングチヨツク5との間には繰返しの打撃を生じスタンド1のベアリングチヨツク5を支持する穴は磨耗を生ずる。しかも一部に磨耗を生ずると隙間を生じるため打撃作用が一層増大し磨耗が急激に進行し、その結果破損を生じることになる。
破損を防ぐために穴が若干摩耗したときにその穴を修正する必要がある。
第3図において磨耗を生じた穴においてはガイドロール4が取外され、加工装置Aが装着される。
加工装置Aはカツプリング12によりロールの駆駆スピンドル6と連結可能な切削用スピンドル7と、該スピンドルに摺動可能に装着されたバイトホルダー8と、該バイトホルダーにより夫々スタンド1の穴の位置に保持されるバイト9と、該バイトに切削用スピンドル8の軸方向の送りを与える送り装置10とよりなる。
ガイドロール4を取りはずした後切削用スピンドル7を当該ガイドロール4を支持していた穴に挿入し、切削スピンドル支持装置11によりスタンド1に取付ける。切削スピンドル支持装置11は第4図の如くロール穴に挿入しベアリングチヨツク固定用締付ボルトで固定される。斯くして切削用スピンドル7はガイドロール4の軸心と同一軸線のまわりに回転可能にスタンド1に支持される。
駆動スピンドル6の回転駆動により切削スピンドル7が回転されてバイトホルダー8がキー7’を介して回転する。すなわちバイト9が回転しながらスタンド1の穴の加工を行なう。切削スピンドル7の回転にしたがい第5図の自動送り回転板13が切削スピンドル軸を中心として回転し回転板受け14に当り自動送り回転板13を回転さす。自動送り回転板13を回転さすことによつて送りネジ10を回転させ、バイトネルダー8すなわちバイト9がスピンドルの軸方向の送りを与えられる。
このようにして切削加工されたチヨツクを支持する穴は設計寸法に復元することによつて従来のチヨツクをそのまま使用し嵌込むことが出来る。
本発明に係る加工装置によりガイドロールの駆動装置をそのまま利用し、ガイドロールの代りに簡単に取付けることができるので、複雑な工作機械を必要とせずに圧延機のスタンドの穴の修正加工が可能になった。」(1ページ右下欄下から2行-2ページ左下欄12行)
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ベアリングチョック5を支持する穴が磨耗した圧延機のスタンド1の穴の修正加工において、
前記圧延機のスタンド1のベアリングチョック5を支持する穴を、ガイドロール4の軸心と同一軸線のまわりに回転する切削用スピンドル7に装着されたバイトホルダー8に保持されるバイト9により切削加工するステップと、
切削加工されたチョックを支持する穴を設計寸法に復元することによって従来のチョックをそのまま使用し嵌込むステップと、
を含む、圧延機のスタンド1の穴の修正加工。」
2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0007】
長年のアクチュエータの駆動により、枢着軸がブッシュに対して繰り返し摺動すると、ブッシュは摩耗する。このため、ブッシュを交換する必要がある。具体的には、上記の孔部に対して、ブッシュをスラスト方向に付勢し、ブッシュを孔部から取り外す。この際、ブッシュの外周面は、孔部の内周面に強い力で擦れるため、荒らされてしまう。そこで、新品のブッシュを孔部に圧入する前に、孔部の内周面を磨いて均し、その後、ブッシュを孔部に圧入する作業が必要である。このため、孔部の内径が大きくなり、新品のブッシュの外径は、交換前のブッシュの外径よりも大きいものにする必要がある。すなわち、交換前のブッシュに対してオーバーサイズのブッシュを、新品のブッシュとして用いる必要がある。このため、交換用のブッシュとして、孔部に当初取り付けられていたのとは異なる大きさの異なるブッシュを用意する必要があり、メンテナンスの費用が高くついてしまう。さらに、ブッシュの脱着にプレス機を用いた工程が必要なため、ブッシュの交換に手間がかかる。」
したがって、上記引用文献2には、「枢着軸を保持するブッシュの交換時に、交換前のブッシュを孔部から取り外す際、孔部の内周が擦られて荒れるので、孔部の内周面を磨いて均し、孔部の内径が大きくなるため、交換前のブッシュより外径が大きい新品のブッシュを孔部に圧入する」という技術的事項が記載されていると認められる。
3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「A bush may be fitted in a bore in a component to provide an inner surface within the bore. The inner surface may, for example, provide a bearing surface for receiving a rod or shaft which passes through or into the component. The bush may have a flange which locates the bush within the bore and covers the interface between the bush and the bore surface.
Over time, the performance of the bush may be reduced, for example due to degradation of the bush and/or the bore surface. Degradation of the interface between the bush and the bore may occur due to contamination, for example by water, oil, dirt or debris, resulting in surface corrosion of the bush and/or bore. The flange may act to reduce contamination of the interface between the bush and the bore, and a layer of sealant may be applied over the bush flange and the surface of the component to seal the bush. However, contamination/corrosion of the bush may still occur, particularly if the layer of sealant becomes damaged or degraded, for example due to mechanical wear, corrosion or age hardening.
In some cases, it may become necessary to replace the bush, or to re-bore the component and fit a new bush having a larger outside diameter to fit the new bore, or even to replace the component entirely if extensive corrosion has occurred.」(1ページ11-27行)
(ブッシュは、構成要素のボア内に嵌められ、ボア内の内側面を提供することができる。内側面は例えば、構成要素を通るか若しくは構成要素に入るロッド又はシャフトを受け入れる支承面を提供することができる。ブッシュは、ブッシュをボア内に位置付けるとともにブッシュとボアの表面との間の境界面を覆うフランジを有することができる。
経時にわたって、例えばブッシュ及び/又はボアの表面の劣化に起因してブッシュの性能が低下する可能性がある。ブッシュとボアとの間の境界面の劣化は、例えば水、油、塵埃又はデブリによる汚染に起因して生じる可能性があり、結果としてブッシュ及び/又はボアの表面が腐食する。フランジは、ブッシュとボアとの間の境界面の汚染を低減するように働くことができ、シーラントの層が、ブッシュのフランジ及び構成要素の表面にわたって適用され、ブッシュを封止することができる。しかし、特に例えば機械的な摩耗、腐食又は時効硬化に起因してシーラントの層が損傷を受けるか又は劣化すると、ブッシュの汚染/腐食が依然として生じる可能性がある。
場合によっては、ブッシュを交換するか若しくは構成要素にボアを再びあけ、より大きい外径を有する新たなブッシュを新たなボアに嵌める必要が生じるか、又は、広範な腐食が生じている場合には構成要素の全体的な交換が必要となる可能性がある。)
したがって、上記引用文献3には、「経時にわたって、ブッシュ及び/又はボアの表面の劣化によりブッシュ及び/又はボアの表面が腐食するため、構成要素にボアを再びあけ、より大きい外径を有する新たなブッシュを新たなボアに嵌めて交換する」という技術的事項が記載されていると認められる。
第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明における「ベアリングチョック5を支持する穴が磨耗した圧延機のスタンド1の穴の修正加工」は、本願発明1における「ロール軸部支持面が摩耗した圧延機用ロールチョックの補修方法」と対比すると、「圧延機の摩耗した軸部支持面の補修方法」という事項を限度として一致する。
イ 引用発明における「ガイドロール4の軸心と同一軸線のまわりに回転する切削用スピンドル7に装着されたバイトホルダー8に保持されるバイト9により切削加工する」という事項は、バイト9をガイドロール4の軸心と同一軸線を中心に回転させて穴の内面を切削加工することであり、穴の内径は加工により大きくなることも自明であるから、本願発明1における「摩耗前と同じ中心位置、かつ同じ真円度で、摩耗前よりも大きな内径となるように加工する」という事項に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点及び相違点1~3があるといえる。
<一致点>
「圧延機の摩耗した軸部支持面の補修方法において、
前記圧延機の磨耗した軸部支持面を、摩耗前と同じ中心位置、かつ同じ真円度で、摩耗前よりも大きな内径となるように加工する加工ステップと、
軸受部材を、加工後の前記圧延機の軸部支持面に嵌め合わせる嵌合ステップと、
を含む、圧延機の摩耗した軸部支持面の補修方法。」
<相違点1>
補修方法を施す「圧延機の摩耗した軸部支持面」が、本願発明1では、「圧延機用ロールチョックのロール軸部支持面」であるのに対し、引用発明では、「圧延機のスタンド1のベアリングチョック5を支持する穴」である点。
<相違点2>
嵌合ステップについて、本願発明1では、「加工後の前記圧延機用ロールチョックの内径と同じ外径を有する軸受部材を」「嵌め合わせる」のに対し、引用発明では、切削加工されたチョックを支持する穴を設計寸法に復元することによって従来のチョックをそのまま使用し嵌込む点。
<相違点3>
本願発明1では、「前記加工ステップは、予め定められた摩耗前の前記圧延機用ロールチョックの寸法、中心位置および真円度を基に、前記圧延機用ロールチョックのロール軸部支持面において最も摩耗している部分である最大摩耗部の摩耗量を算出し、摩耗前の内径に前記最大摩耗部の摩耗量を加えた内径となるように、前記圧延機用ロールチョックのロール軸部支持面を加工する」のに対し、引用発明では、最大磨耗部の磨耗量についての考慮は不明である点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
上記第4の2.に記載のとおり、引用文献2には「枢着軸を保持するブッシュの交換時に、交換前のブッシュを孔部から取り外す際、孔部の内周が擦られて荒れるので、孔部の内周面を磨いて均し、孔部の内径が大きくなるため、交換前のブッシュより外径が大きい新品のブッシュを孔部に圧入する」という技術的事項が記載されている。
しかしながら、引用文献2に記載された「枢着軸を保持するブッシュ」は、交換するために孔部から取り外すことが前提となっているものであり、その取り外しの際に擦られて荒れた孔部内周面を磨いて均し、外径が大きい新品のブッシュを嵌め込むものである。そうすると、引用文献2に記載された技術的事項は、使用時の磨耗により真円度が保たれずに偏芯した軸部支持面の内面を真円になるように補修するという、本願発明1や引用発明の技術とは、そもそも目的が異なる技術であって、引用発明と組み合わせる動機があるとは認められない。
また、上記第4の3.に記載のとおり、引用文献3には「経時にわたって、ブッシュ及び/又はボアの表面の劣化によりブッシュ及び/又はボアの表面が腐食するため、構成要素にボアを再びあけ、より大きい外径を有する新たなブッシュを新たなボアに嵌めて交換する」という技術的事項が記載されている。そうすると、引用文献3に記載された技術的事項は、ボア表面の劣化を除去するためにボアを大きくし、より大きい外径を有する新たなブッシュを嵌めて交換することであるから、上記相違点2に係る本願発明1の構成に相当するものとはいえる。
しかしながら、引用発明は、「切削加工されたチョックを支持する穴を設計寸法に復元することによって従来のチョックをそのまま使用し嵌込む」ものであるから、切削加工されて外径が大きくなった穴を、何らかの公知の手段により元の径寸法に戻すものであり、そのため従来のチョックをそのまま使用することができるものである。そうすると、切削加工後の穴を元の外径に戻して元のチョックを嵌込む引用発明に対し、外径を大きくしたボアに対応するより大きい新たなブッシュを嵌めるという、引用文献3に記載された技術的事項を適用することに対し、阻害する要因があるというべきである。
よって、当業者といえども、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項から、相違点2に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。
したがって、上記相違点1及び3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2.本願発明2について
本願発明2も、本願発明1の「圧延機用ロールチョックの補修方法」と同一の構成を備え、さらに構成を限定したものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1、2は、当業者が引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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