特許拒絶査定不服審判
2017-013042
スパッタリングターゲット
- 審判番号
- 2017-013042
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-104383外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年09月04日
- 審決日
- 2018年04月23日
- 公報発行日
- 2018年06月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】古河電気工業株式会社
- 【請求人代理人】永田 元昭
- 分類
- P18 .113-WY (C23C) / P18 .121-WY (C23C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-104383「スパッタリングターゲット」拒絶査定不服審判事件〔平成28年9月1日出願公開、特開2016-156097、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本願は、平成24年3月9日に出願した特願2012-53267号の一部を平成28年5月25日に新たな特許出願としたものであって、平成29年2月17日付けで拒絶理由が通知され、平成29年4月21日に手続補正がされ、この手続補正が平成29年5月26日付けで却下されるとともに拒絶査定(原査定)がされ、これに対して、平成29年9月4日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
なお、平成29年5月8日付けで刊行物等提出書が提出されている。
2 原査定の概要
原査定(平成29年5月26日付けの拒絶査定)の概要は以下のとおりである。
(1)本願請求項1及び2に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
(2)本願請求項1及び2に係る発明は、引用文献2及び引用文献3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
(3)本願請求項1及び2に係る発明は、引用文献4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、引用文献4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
(4)本願請求項1及び2に係る発明は、引用文献5に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、引用文献5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
(引用文献等一覧)
引用文献1 特開平10-60632号公報
引用文献2 特開平10-330923号公報
引用文献3 特開2001-152266号公報
引用文献4 国際公開第2010/038642号
引用文献5 加藤正憲,高純度銅の特性と用途,伸銅技術研究会誌,1996年,第35巻、第28~35頁
なお、平成29年5月26日付けの補正の却下の決定は、平成29年4月21日付けの手続補正は特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるところ、当該補正後の本願請求項1に係る発明は、引用文献1及び引用文献6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、独立特許要件を満たさないから、当該補正を却下する、というものである。
(引用文献等一覧)
引用文献1 特開平10-060632号公報
引用文献6 国際公開第2011/024909号
3 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年9月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりの発明である。
【請求項1】
純度が99.9質量%以上の銅が主成分であるスパッタリングターゲットであって、
5ppm以上10ppm以下の硫黄(S)、及び、1ppm以上2ppm以下の鉛(Pb)が含有され、
スパッタ面の平均結晶粒径が200μm以下であるとともに、
ターゲット表面において、疵の幅が0.003mm以上である割れが50個/100mm2以下である
スパッタリングターゲット。
4 引用文献について
(1)引用文献1の記載事項(下線は当審が付した。以下、同様である。)
ア 「【0009】
【発明が解決しようとする課題】成膜配線の銅中にガス状、分子状、あるいは化合物として存在するガス成分、すなわち、酸素、水素、硫黄等のガス成分元素が存在した場合、ガス成分は、LSIのパッケージ部の外部より侵入してくる水分等との反応により、腐食の原因となる。また成膜中に放出される微量な酸素は、膜を酸化させ抵抗率を上昇させると共に、酸化による腐食発生の原因となる。
【0010】本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、スパッタリング法によって銅をスパッタリングターゲットとして配線を形成する場合、耐酸化性、耐腐食性、耐エレクトロマイグレーション性、耐ストレスマイグレーション性に優れたスパッタリングターゲット及びこのスパッタリングターゲットにより配線された銅配線を持つ半導体素子及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。」
イ 「【0018】
【発明の実施の形態】発明者らの研究により、ガス成分(O,N,C,H)を除いた純度99.9999重量%以上の銅を基体金属として酸素濃度を0.01容量ppm以下の雰囲気で溶解、鋳造された鋳塊からスパッタリングターゲットを作成することで、スパッタリングターゲットに含まれるガス成分を低減させることができ、ガス成分は、酸素(O)が0.001重量ppm以上0.03重量ppm以下、硫黄(S)が0.001重量ppm以上0.05重量ppm以下、水素が1重量ppm未満となることが分かった。このスパッタリングターゲット及びこのスパッタリングターゲットにより成膜された銅配線を用いることで、耐酸化性、耐腐食性、耐エレクトロマイグレーション性、耐ストレスマイグレーション性に優れた銅薄膜配線を得ることができた。」
ウ 「【0046】(比較例1)本実施例は、ガス成分(O,N,C,H)を除いた純度99.99重量%の銅からバッチ式鋳造炉を用いてスパッタリングターゲットを作成したときの例を示すものである。
・・・
【0049】得られた鋳塊を鍛造により厚さ3cmに加工した。次に硝酸により鋳塊の表面の汚染層を除去した後、高純度アルゴン雰囲気中で、350°Cで30分間焼鈍し加工歪を除去した。焼鈍後の鋳塊の結晶粒径は1mm以下であった。(次にクロス圧延をおこなって厚さ7mmの板に加工した。)得られた圧延板の表面研削及び外形加工を行って、直径6インチ、厚さ5mmの円盤にした。次に有機溶剤による円盤の洗浄後、希硝酸を用いて円盤にエッチングを行いスパッタリングターゲットとした。
【0050】スパッタリングターゲットの不純物分析はグロー放電質量分析法により行った。このときの不純物金属とガス不純物の分析結果を図3の表に併せて示した。」(当審注:「図3」は「図2」の誤記と認める。)
エ 「【図2】
」
(2)引用文献2の記載事項
ア 「【請求項1】高純度銅スパッタリングターゲットにおいて、NaおよびK含有量がそれぞれ0.1ppm以下、Fe,Ni,Cr,Al,Ca,Mg含有量がそれぞれ1ppm以下、炭素および酸素含有量がそれぞれ5ppm以下、UおよびTh含有量がそれぞれ1ppb以下、ガス成分を除いた銅の含有量が99.999%以上であることを特徴とする高純度銅スパッタリングターゲット。
【請求項2】スパッタ面における平均粒径が250μm以下であり、かつ場所による平均粒径のばらつきが±20%以内であることを特徴とする請求項1記載の高純度銅スパッタリングターゲット。」
イ 「【0009】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、本発明者等は鋭意研究を行った結果、電気抵抗の低い膜を実現するためには、ターゲット中の不純物含有量を一定値以下に抑える必要があり、また、これまでは、合金化するために添加していた元素も一定レベル以下に下げる必要があること、膜厚均一性を実現するためには、ターゲットの結晶粒径・結晶配向性のばらつきを抑えることが必要であるとの知見を得た。」
ウ 【0027】
【実施例】以下、実施例および比較例に基づいて説明する。実施例1~4及び比較例2,3は電気銅を硝酸浴中で電解精製し真空誘導溶解した高純度銅インゴットから作製した。比較例1については、低純度銅インゴットから作製した。ターゲット形状はいずれも直径12.98インチ、厚さ6.35mmの円盤状である。
【0028】(実施例1)ターゲットA
・・・
【0037】ターゲットの特性
前記A~Gのターゲットは表2に示す結晶粒径とそのばらつき及び(111)面と(200)面の回折ピーク強度比とそのばらつきを有していた。
【0038】
【表2】
【0039】測定は表1の各々のターゲットについて図1に示す9つの位置からサンプルの切り出しを行い、結晶粒径の測定はJIS・H501に記載される切断法により行った。
【0040】成膜試験
前記A~Gのターゲットを用いて直径8インチSi基板上に、Arガス圧:5mTorr、スパッタパワー:3kW、基板-ターゲット距離:50mmで成膜し、膜の比抵抗と膜厚分布分散を評価した。表3に比抵抗と膜厚分布分散及びダミーランの必要な成膜厚さを示す。なお、ダミーランの厚さとは、膜厚分布分散が表3の値になるまでに要するウエハー上の積算膜厚を意味している。
【0041】
【表3】
【0042】(結果)本発明の、高純度銅スパッタリングターゲットを用いて形成した膜は、比抵抗が2μΩ・cm以下と極めて低い抵抗値を有するものであった。さらに、平均粒径が250μm以下、粒径のばらつきが20%以内のもの、X線回折強度比I(111)/I(200)が2.4以上、ピーク強度比のばらつきが±20%以内のターゲットを用いて形成した膜は、膜厚分布の均一性に優れるものであった。また、(111)面ピークの半値幅が0.3deg以内のターゲットを用いて成膜を行った場合には、ダミーランに必要な膜厚が小さくて済むことが確認された。」
(3)引用文献3の記載事項
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱間加工性に難のある銅や銅合金、特に析出型銅合金やSn,Ni,Zn等を添加元素として含む銅合金鋳塊における熱間加工性を改良する技術に関するものである。」
イ 「【0024】
【実施例】銅合金としてCu-0.1%Fe-0.03%P-2.0%Sn合金を用い、雰囲気を制御した高周波溶解炉を用いて各元素を溶解し、最後に溶湯温度を1220℃(融点+140℃)に保持した。この時点で、溶湯のサンプリングを行なって酸素濃度を測定したところ、7~12ppmであった。次いで、溶湯中にCe,La,Nd,Pr,Sm,Gd等を個別に若しくはミッシュメタルとして添加し、攪拌後直ちに鋳造して厚さ:50mm、幅:80mm、長さ:150mmの鋳塊を得た。下記表1に、上記主成分(Cu,Fe,PおよびSn)以外の構成元素における組成を示す。
【表1】
」
ウ 「【0040】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、S,Se,Te,Bi,As,Sb,Pb等の不物物が或る程度存在していたとしても、この不純物含有量に応じて適切な量の希土類元素を含有させることによって熱間加工性が改善された銅または同銅合金が実現できた。」
(4)引用文献4の記載事項
ア 「[請求項1] 純度6N以上、P、S、O、Cの各成分の含有量がそれぞれ1ppm以下である高純度銅又は高純度銅合金スパッタリングターゲットであって、粒径0.5μm以上20μm以下の非金属介在物が30,000個/g以下であることを特徴とする高純度銅又は高純度銅合金スパッタリングターゲット。」
(5)引用文献5の記載事項
ア 「3.1 不純物含有量
6Nという純度表示は、H、C、N、O等のガス成分を除いた不純物の含有量を加算して100から差し引いた値が、99.9999と6桁の9が並ぶことに基づいている。Table 2に、CDMS法によって分析された4N銅(OFC)、5N銅、6N銅の不純物の含有量の例を示す。4N銅は、Sを5.5ppm、Feを1.9ppm含有している。・・・
」(第29~30頁)
イ 「5.3 LSI配線材
LSI用配線材料としてアルミニウム合金が一般的に用いられているが、・・・ウィスカーやボイドの発生による配線の信頼性低下が起こる。
これらの問題を解決するために、銅による配線が検討されている。・・・Fig.10にCuターゲットを採用したスパッタリングの概略を示す。高純度銅はガス成分元素が少ないので、成膜条件が良い。・・・」(第33~34頁)
(6)引用文献6の記載事項
ア 「[請求項1] 純度が99.99%以上である高純度銅からなり、スパッタリングを行う面における{111}面、{200}面、{220}面、および{311}面の各々のX線回折のピーク強度、I{111}、I{200}、I{220}、およびI{311}が下記式(1)を満たし、結晶粒の粒径が100~200μmであることを特徴とする、スパッタリングターゲット用銅材料。」
イ 「[0017] 本発明は、上述の従来の問題点に鑑みて、TFT液晶パネルなどに使用される大型の基板に対してスパッタリング工程で配線を作成する際に、従来以上に均一に粒子を発生し、且つ、使用中においてもその粒子の発生頻度の変化が起こりにくいスパッタリングターゲット用銅材料を提供することを課題とする。」
ウ 「[0042]・・・
[4]スパッタリング特性
得られた銅材料板から、図3に示す位置31、32、33にて直径φ6インチ(15.24cm)、厚さ8mmに切り出し、研磨を行ってスパッタリングターゲットを作成した。ターゲット面の粗さの影響を除外するため、粗さは全て最大粗さRaを0.5~0.8μmに研磨して揃えた。上述のように作成したスパッタリングターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング装置にて、膜厚0.7mmの日本電気硝子社製OA-10ガラス基板にスパッタリングを実施し0.3μm膜厚の銅配線を作成した。スパッタリング条件はArガス圧力を0.4Pa、放電電力を12W/cm2とした。その後真空中にて300℃、30minの熱処理を行った。熱処理後の銅配線の膜厚を10点測定して、最大膜厚および最小膜厚のレンジが±7%になったものを「良」、それ以上のバラつきが存在したものを「不良」とした。」
エ 「[0047] (実施例2)
・・・厚さ20mm×幅200mm×長さ約12mの平板のスパッタリングターゲット用銅材料を製造した。また実施例1と同様、結晶方位分布、結晶粒径、硬さおよびスパッタリング特性を調査した。
[0048] 結果を表5、6に示す。本発明例で製造された銅材料は何れも特性を満足している。比較例Gで製造された銅材料は、結晶配向度は本発明の規定の範囲内にあるが、結晶粒径は100μmを下回り、スパッタリング特性は部分的に不良となった。比較例Hで製造された銅材料は、結晶配向度は本発明の規定の範囲内にあるが、結晶粒径は200μmを上回り、スパッタリング特性は部分的に不良となった。・・・
・・・
[0050][表5]
[0051][表6]
」
5 原査定についての判断
(1)引用文献1に記載された発明を主発明とした場合について
ア 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、上記4(1)ウ及びエによれば、9.9ppmのS(硫黄)及び2ppmのPb(鉛)を含有した、純度99.99重量%の銅スパッタリングターゲットが記載され、硫黄及び鉛の含有量の単位ppmは、上記4(1)イによれば、重量ppmであることが記載されているといえるから、引用文献1には、「純度99.99重量%の銅スパッタリングターゲットであって、9.9重量ppmのS(硫黄)及び2重量ppmのPb(鉛)を含有したスパッタリングターゲット。」の発明(以下、「引用1発明」という。)が記載されているといえる。
イ 本願発明と引用1発明の対比
本願発明と引用1発明を対比すると、両者は「純度が99.9質量%以上の銅が主成分であるスパッタリングターゲットであって、5ppm以上10ppm以下の硫黄(S)、及び、1ppm以上2ppm以下の鉛(Pb)が含有されたスパッタリングターゲット」で一致し、以下の点で相違している。
(相違点1-1)
本願発明は、「スパッタ面の平均結晶粒径が200μm以下である」ことを特定しているのに対して、引用1発明は、スパッタ面の平均結晶粒径が示されていない点。
(相違点1-2)
本願発明は、「ターゲット表面において、疵の幅が0.003mm以上である割れが50個/100mm2以下である」ことを特定しているのに対して、引用1発明は、スパッタ面の割れの量が示されていない点。
ウ 相違点の検討
上記相違点1-1について検討すると、引用文献6には、上記4(6)ア~エによれば、高純度銅スパッタリングターゲットのスパッタリングを行う面の平均結晶粒径を100~200μmとすることによって、作成した銅配線の膜厚均一性が向上することが記載されている。また、引用文献2にも、上記4(2)ア~ウによれば、高純度銅スパッタリングターゲットのスパッタ表面の平均結晶粒径を250μm以下、例えば150μm(実施例1)とすることによって、成膜した銅膜の膜厚均一性が向上することも記載されている。
しかしながら、引用文献1に記載された課題は、上記4(1)アで摘示したとおり、形成する銅配線の耐腐食性を向上させるスパッタリングターゲットを提供することであり、形成する銅膜の膜厚均一性を課題とするものでないから、引用1発明において、引用文献2及び6に記載されたように、スパッタ表面の平均結晶粒径を200μm以下とすることは、当業者が容易になし得たことといえない。
次に、相違点1-2について検討すると、本願発明は、硫黄(S)及び鉛(Pb)の含有量によって、所定サイズ以上の疵の低減が図れる(本願明細書段落【0046】及び【0048】)ものではあるが、スパッタ面の疵(割れ)がターゲット製造時の熱履歴の影響を受けることも技術常識であることから、引用1発明の硫黄(S)及び鉛(Pb)の含有量が本願発明の数値範囲に入ることのみをもって、引用1発明のターゲット表面における疵の幅が0.003mm以上である割れが50個/100mm2以下となっているといえない。
さらに、銅が主成分であるスパッタリングターゲットにおいて、ターゲット表面における疵の幅が0.003mm以上である割れを50個/100mm2以下とすることは、引用文献2~6のいずれにも記載されていないし示唆もされていない。
したがって、引用1発明において、ターゲット表面における疵の幅が0.003mm以上である割れを50個/100mm2以下とすることは、当業者が容易になし得たことといえない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明といえないし、引用文献1に記載された発明及び引用文献2~6に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(2)引用文献2に記載された発明を主発明とした場合について
ア 引用文献2に記載された発明
引用文献2には、上記4(2)アによれば、銅の含有量が99.999%以上であり、スパッタ面における平均粒径が250μm以下である高純度銅スパッタリングターゲットが記載され、上記4(2)ウによれば、実施例1のターゲットAとして、スパッタ面における平均粒径が150μmである高純度銅スパッタリングターゲットが記載されているから、引用文献2には、「銅の含有量が99.999%以上であり、スパッタ面における平均粒径が150μmである高純度銅スパッタリングターゲット。」の発明(以下、「引用2発明」)が記載されているといえる。
イ 本願発明と引用2発明の対比
本願発明と引用2発明を対比すると、両者は「純度が99.9質量%以上の銅が主成分であるスパッタリングターゲットであって、スパッタ面の平均結晶粒径が200μm以下であるスパッタリングターゲット」で一致し、以下の点で相違している。
(相違点2-1)
本願発明は、「5ppm以上10ppm以下の硫黄(S)、及び、1ppm以上2ppm以下の鉛(Pb)が含有」することを特定しているのに対して、引用1発明は、硫黄(S)及び鉛(Pb)の含有量が示されていない点。
(相違点2-2)
本願発明は、「ターゲット表面において、疵の幅が0.003mm以上である割れが50個/100mm2以下である」ことを特定しているのに対して、引用2発明は、スパッタ面の割れの量が示されていない点。
ウ 相違点の検討
上記相違点2-1について検討すると、引用文献3には、上記4(3)イによれば、8原子ppmのS、1原子ppmのPbを含む銅合金(表1のJ参照)が記載されているが、上記4(3)ア及びウに摘示したとおり、引用文献3に記載された銅合金は、熱間加工性が改善された銅または銅合金を提供することを課題としており、そもそもスパッタリングターゲットに使用するものでないから、引用文献3に記載された技術的事項を引用2発明と組み合わせる動機付けがない。
また、引用文献1には、上記4(1)ウ及びエによれば、比較例として、9.9ppmのS、2ppmのPbを含む銅スパッタリングターゲットが記載されているが、引用文献1には、上記4(1)ア及びイに摘示したとおり、形成する銅配線の耐腐食性を向上させるために、スパッタリングターゲットの硫黄含有量を0.001重量ppm以上0.05重量ppm以下とするものである。
さらに、引用文献4には、上記4(4)アによれば、純度6N以上、S(硫黄)含有量が1ppm以下である高純度銅または高純度銅合金スパッタリングターゲットが記載され、引用文献5には、上記4(5)ア及びイによれば、5.5ppmのS(硫黄)及び0.3ppmのPb(鉛)を含有する純度99.99%の高純度スパッタリングターゲットが記載され、引用文献6には、上記4(6)ア及びイによれば、純度99.99%以上の高純度銅スパッタリングターゲットが記載されているものの、引用文献4~6には、銅スパッタリングターゲットに、5ppm以上10ppm以下の硫黄(S)、及び、1ppm以上2ppm以下の鉛(Pb)を含有させることは記載も示唆もされていない。
したがって、引用文献1、2、4~6を参酌しても、引用2発明において、5ppm以上10ppm以下の硫黄(S)、及び、1ppm以上2ppm以下の鉛(Pb)を含有させることは、当業者が容易になし得たことといえない。
次に、相違点2-2について検討すると、上記(1)の相違点1-2で検討したと同様に、引用2発明のターゲット表面における疵の幅が0.003mm以上である割れが50個/100mm2以下となっているといえないし、引用文献1、3~6に記載された事項を参酌しても、疵の幅が0.003mm以上である割れを50個/100mm2以下とすることを当業者が容易になし得たことといえない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献2に記載された発明及び引用文献1、3~6に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(3)引用文献4に記載された発明を主発明とした場合について
ア 引用文献4に記載された発明
引用文献4には、上記4(4)アによれば、「純度6N以上、P、S、O、Cの各成分の含有量がそれぞれ1ppm以下である高純度銅又は高純度銅合金スパッタリングターゲット。」の発明が記載されているといえる。
イ 本願発明と引用4発明の対比
本願発明と引用4発明を対比すると、両者は「純度が99.9質量%以上の銅が主成分であるスパッタリングターゲット」で一致し、以下の点で相違している。
(相違点3-1)
本願発明は、「5ppm以上10ppm以下の硫黄(S)、及び、1ppm以上2ppm以下の鉛(Pb)が含有」することを特定しているのに対して、引用4発明は、硫黄(S)の含有量が1ppm以下であり、鉛(Pb)の含有量が示されていない点。
(相違点3-2)
本願発明は、「スパッタ面の平均結晶粒径が200μm以下である」ことを特定しているのに対して、引用4発明は、スパッタ面の平均結晶粒径が示されていない点。
(相違点3-3)
本願発明は、「ターゲット表面において、疵の幅が0.003mm以上である割れが50個/100mm2以下である」ことを特定しているのに対して、引用4発明は、スパッタ面の割れの量が示されていない点。
ウ 相違点の検討
上記相違点3-1について検討すると、上記(2)の相違点2-1で検討したと同様に、引用4発明において、硫黄(S)を5ppm以上10ppm以下、及び、鉛(Pb)を1ppm以上2ppm以下含有させることは、当業者が容易になし得たことといえない。
次に、相違点3-3について検討すると、上記(1)の相違点1-2で検討したと同様に、引用4発明のターゲット表面における疵の幅が0.003mm以上である割れが50個/100mm2以下となっているといえないし、引用文献1~3、5及び6に記載された事項を参酌しても、疵の幅が0.003mm以上である割れを50個/100mm2以下とすることを当業者が容易になし得たことといえない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、相違点3-2について検討するまでもなく、本願発明は、引用文献4に記載された発明といえないし、引用文献4に記載された発明及び引用文献1~3、5及び6に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(4)引用文献5に記載された発明を主発明とした場合について
ア 引用文献5に記載された発明
引用文献5には、上記4(5)アによれば、S(硫黄)を5.5ppm及びPb(鉛)を0.3ppm含有する純度99.99%の高純度銅が記載され、さらに、上記4(5)イによれば、この高純度銅をCuターゲットに用いることも記載されているから、引用文献5には、「純度99.99%の高純度銅のスパッタリングターゲットであって、5.5ppmのS(硫黄)及び0.3ppmのPb(鉛)を含有したスパッタリングターゲット。」の発明(以下、「引用5発明」という。)が記載されているといえる。
イ 本願発明と引用5発明の対比
本願発明と引用5発明を対比すると、両者は「純度が99.9質量%以上の銅が主成分であるスパッタリングターゲットであって、5ppm以上10ppm以下の硫黄(S)が含有されたスパッタリングターゲット」で一致し、以下の点で相違している。
(相違点4-1)
本願発明は、「1ppm以上2ppm以下の鉛(Pb)が含有」することを特定しているのに対して、引用5発明の鉛(Pb)の含有量は0.3ppmである点。
(相違点4-2)
本願発明は、「スパッタ面の平均結晶粒径が200μm以下である」ことを特定しているのに対して、引用5発明は、スパッタ面の平均結晶粒径が示されていない点。
(相違点4-3)
本願発明は、「ターゲット表面において、疵の幅が0.003mm以上である割れが50個/100mm2以下である」ことを特定しているのに対して、引用5発明は、スパッタ面の割れの量が示されていない点。
ウ 相違点の検討
上記相違点4-1について検討すると、上記(2)の相違点2-1で検討したと同様に、引用5発明において、硫黄(S)を5ppm以上10ppm以下、及び、鉛(Pb)を1ppm以上2ppm以下含有させることは、当業者が容易になし得たことといえない。
次に、相違点4-3について検討すると、上記(1)の相違点1-2で検討したと同様に、引用5発明のターゲット表面における疵の幅が0.003mm以上である割れが50個/100mm2以下となっているといえないし、引用文献1~4、6に記載された事項を参酌しても、疵の幅が0.003mm以上である割れを50個/100mm2以下とすることを当業者が容易になし得たことといえない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、相違点4-2について検討するまでもなく、本願発明は、引用文献5に記載された発明といえないし、引用文献5に記載された発明及び引用文献1~4、6に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
6 情報提供に対する判断
平成29年5月8日付けの刊行物等提出書において、資料1(再公表WO2011/024909号公報)及び資料2(伸銅品データブック,日本伸銅協会,平成9年8月1日,第236~238頁)が提出された。
資料1は、引用文献6として引用した国際公開第2011/024909号の再公表公報であり、上記5で検討したとおりである。
また、資料2には、Cuが99.99wt%であって、Pbが1.4ppm、Sが6ppm含有する銅(C1020)が記載されているが、銅(C1020)をスパッタリングターゲット材料に用いることは記載されていないし、スパッタ面における疵の幅が0.003mm以上である割れを50個/100mm2以下とすることも記載されていない。
したがって、資料1及び資料2の記載を考慮しても、本願発明の新規性及び進歩性を否定することはできない。
7 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-013042