特許拒絶査定不服審判
2017-012832
熱硬化性光反射用樹脂組成物およびその製造方法
- 審判番号
- 2017-012832
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-156303外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年08月30日
- 審決日
- 2018年07月18日
- 公報発行日
- 2018年10月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .536-Z (H01L) / P18 .537-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条、特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-156303「熱硬化性光反射用樹脂組成物およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年1月5日出願公開、特開2017-5260〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成19年4月24日(優先権主張 平成18年11月15日)に出願した特願2007-114227号の一部を、平成24年3月16日に新たな出願(特願2012-60714号)とし、その一部を、平成26年5月19日に新たな出願(特願2014-103155号)とし、その一部を平成28年8月9日に新たな特許出願としたものであって、平成29年2月8日付け(同年同月14日発送)の拒絶理由(以下、「原審拒絶理由」という。)の通知に対し、同年3月30日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年5月23日付け(同年同月30日送達)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して同年8月30日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、同年10月11日に審判請求書の手続補正書が提出されたものである。
第2 原査定における拒絶の理由の概要
本願に対する原査定における拒絶の理由は、平成29年2月8日付け拒絶理由通知書に記載した次の理由3及び理由4を含むものである。
「3.(実施可能要件) この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
4.(サポート要件) この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
●理由3(実施可能要件)について
・請求項1-16
・備考
請求項1-3に規定された発明特定事項1-3は、原材料の配合比が規定されておらず、また、具体的な原材料の組み合わせが多岐に亘るから、極めて広い範囲のものを包含するものである。
したがって、上記発明特定事項1-3を備える全てのものが、請求項1-3に規定されたバリ長さに関する構成を備えるものとは認められない。
一方、本願の発明の詳細な説明には、バリ長さに関する構成を備えるものとして、数例の具体例しか記載されてない。
また、原材料の配合比や具体的な原材料の組み合わせが異なれば、得られる組成物の特性が大きく異なり得ることは、技術常識である。
そうすると、当業者は、発明の詳細な説明に具体的に記載された数例以外の、極めて広範な範囲のものについては、上記バリ長さに関する構成を備えるものを、過度な試行錯誤なくして実施できない。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-16に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
●理由4(サポート要件)について
・請求項1-16
・備考
上述したとおり、請求項1-3に規定された発明特定事項1-3を備える全てのものが、請求項1-3に規定されたバリ長さに関する構成を備えるものとは認められない。
また、本願の発明の詳細な説明には、バリ長さに関する構成を備えるものとして、数例の具体例しか記載されてない。
さらに、原材料の配合比や具体的な原材料の組み合わせが異なれば、得られる組成物の特性が大きく異なり得ることは、技術常識である。
したがって、出願時の技術常識に照らしても、請求項1-3に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
よって、請求項1-16に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。」
第3 本願発明
平成29年8月30日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1には、以下の事項(以下、「本願発明」という。)が記載されている(下線は、審判請求人が付加した。)。
「【請求項1】
金属配線と、
熱硬化性光反射用樹脂組成物の硬化物からなり、前記金属配線上に少なくとも一つの光半導体素子搭載領域を残して形成されたリフレクターと、
前記光半導体素子搭載領域に搭載されたLEDチップと、
を備え、前記LEDチップと前記金属配線とが電気的に接続されているLED装置の、前記リフレクターを形成するための熱硬化性光反射用樹脂組成物であって、
トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂を含み、かつ、
成形温度180℃、成形圧力6.9MPa、及び成形時間90秒の条件でトランスファー成形した時に生じるバリ長さが5mm以下である、
熱硬化性光反射用樹脂組成物。」
第4 原審拒絶理由の理由3に対する当審の判断
1 本願発明の前提となる事項について
(1) 本願発明の前提となる事項
本願発明は、「熱硬化性光反射用樹脂組成物」という物の発明であり、
ア 「金属配線と、
熱硬化性光反射用樹脂組成物の硬化物からなり、前記金属配線上に少なくとも一つの光半導体素子搭載領域を残して形成されたリフレクターと、
前記光半導体素子搭載領域に搭載されたLEDチップと、
を備え、前記LEDチップと前記金属配線とが電気的に接続されているLED装置の、前記リフレクターを形成するための」と、その用途が限定され、
「熱硬化性光反射用樹脂組成物」の構成として、
イ 「トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂を含み」、かつ、
ウ 「成形温度180℃、成形圧力6.9MPa、及び成形時間90秒の条件でトランスファー成形した時に生じるバリ長さが5mm以下である」ものである。
2 本願の発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明の段落【0024】~【0027】、【0036】、【0039】~【0040】、【0045】~【0054】に、次の記載がされている。
(1) 「【0024】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)無機充填剤、(E)白色顔料および(F)カップリング剤を含むものである。
【0025】
上記(A)エポキシ樹脂としては、電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料で一般に使用されているものを用いることができ、特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換ビフェノール等のジグリシジエーテル、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、及び脂環族エポキシ樹脂等があり、これらは単独
でも、2種以上併用してもよい。また、使用するエポキシ樹脂は比較的着色のないものであることが好ましく、そのようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレートを挙げることができる。
【0026】
また、上記(A)エポキシ樹脂として、少なくとも(A’)エポキシ樹脂および(B’)硬化剤、必要に応じてさらに(C’)硬化促進剤を配合してなり、なおかつ100~150℃における粘度が100~2500mPa・sの範囲である(G)オリゴマーを用いることが好ましい。なお、上記(A’)エポキシ樹脂、上記(B’)硬化剤、上記(C’)硬化促進剤は、本発明における(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤と同様のものを用いることができる。
【0027】
上記(G)オリゴマーは、例えば、(A’)エポキシ樹脂および(B’)硬化剤を、当該(A’)エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、当該エポキシ基と反応可能な当該(B’)硬化剤中の活性基(酸無水物基や水酸基)が0.3当量以下となるように配合し、粘土状になるまで混練することで得ることができ、好ましくは、さらに、粘土状組成物を温度25~60℃の範囲で1~6時間にわたってエージングする。また、(C’)硬化促進剤を配合する場合には、(A’)エポキシ樹脂と(B’)硬化剤の総和100重量部に対し、0.005~0.05重量部となるように配合する。このように作製された(G)オリゴマーは、本発明の樹脂組成物のバリ発生を抑制する観点から、100~150℃における粘度が100~2500mPa・sの範囲にあることが好ましく、100℃における粘度が100~2500mPa・sの範囲にあることがより好ましい。(G)オリゴマーの粘度が100mPa・s未満であるとトランスファー成形時にバリが発生しやすくなり、2500mPa・sを越えると成形時の流動性が低下し、成形性に乏しくなる。また、(G)オリゴマーは、その粒径が1mm以下になるまで粉砕し、温度0℃以下の環境で保存すると粘度の上昇を抑制または停止させることができる。なお、粉砕方法については陶器製乳鉢等を用いるなど公知のいかなる手法を用いても良い。」
(2) 「【0036】
また、本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物には、溶融粘度調整を目的として(H)増粘剤を添加しても良い。(H)増粘剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、トクヤマ(株)で販売されているレオロシールCP-102を用いることができる。(H)増粘剤の添加量としては、樹脂組成物の総体積の0.15体積%以下であることが好ましい。(H)増粘剤を0.15体積%よりも多く添加すると樹脂組成物の溶融時の流動性が損なわれるとともに硬化後に充分な材料強度が得られない恐れがある。また、(H)増粘剤は、中心粒径が1nm~1000nmであるようなナノ粒子フィラーであることが好ましく、中心粒径が10nm~1000nmであるようなナノ粒子フィラーであることがより好ましい。中心粒径1nmよりも小さいフィラーは、粒子が凝集しやすく分散性が低下する傾向にあり特性上好ましくない。一方、1000nmよりも大きなフィラーを添加するとバリが低減しない傾向にあり特性上好ましくない。」
(3) 「【0039】
また、本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物は、上記した各種成分を均一に分散混合することで得ることができ、その手段や条件等は特に限定されないが、一般的な手法として、所定配合量の成分をミキサー等によって十分均一に撹拌、混合した後、ミキシングロール、押出機、ニーダー、ロール、エクストルーダー等によって(溶融)混練し、さらに、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。(溶融)混練の条件は、成分の種類や配合量により適宜決定すればよく、特に限定されないが、15~100℃の範囲で5~40分間(溶融)混練することが好ましく、20~100℃の範囲で10~30分間(溶融)混練することがより好ましい。(溶融)混練温度が15℃未満であると、各成分を(溶融)混練させることが困難であり、分散性も低下する傾向にあり、100℃よりも高温であると、樹脂組成物の高分子量化が進行し、樹脂組成物が硬化してしまう恐れがある。また、(溶融)混練時間が5分未満であると、バリの発生を効果的に抑制することができない傾向にあり、40分よりも長いと、樹脂組成物の高分子量化が進行し、樹脂組成物が硬化してしまう恐れがある。
【0040】
また、本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物は、上記各成分を配合、混練した後、成形時の溶融粘度を上昇させることを目的として熟成放置(エージング)することが好ましく、0℃~30℃で1~72時間にわたってエージングすることがより好ましく、15℃~30℃で12~72時間にわたって熱エージングすることがさらに好ましく、25℃~30℃で24~72時間にわたって熱エージングすることが特に好ましい。1時間よりの短時間のエージングでは、バリの発生を効果的に抑制できない傾向にあり、72時間より長くエージングすると、トランスファー成形時に充分な流動性を確保できない恐れがある。
また、0℃未満の温度でエージングした場合には、(C)硬化促進剤が不活性化されて、樹脂組成物の三次元架橋反応が十分に進行せず、溶融時の粘度が上昇しない恐れがあり、30℃よりも高温でエージングした場合には、樹脂組成物が水分を吸収してしまい、硬化物の強度や弾性率などの機械的物性が悪くなる傾向にある。」
(4) 「【0045】
以下、本発明を実施例により詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
<熱硬化性光反射用樹脂組成物の作製>
(実施例1~11、比較例1~8)
表1および表2に示した配合表に従って各材料を配合し、ミキサーによって十分混練した後、ミキシングロールにより所定条件で溶融混練し、必要に応じて熱エージングを行い、冷却、粉砕を行い、実施例1~11および比較例1~8の熱硬化性光反射用樹脂組成物を作製した。なお、表中の各成分の配合量の単位は重量部であり、空欄は配合無しまたは工程無しを表す。また、実施例1~5はそれぞれ、特定の(G)オリゴマーを使用する手法;(A)エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対する硬化剤中の活性基を0.5~0.
7当量の範囲とする手法;(H)増粘剤としてナノフィラーを追加する手法;組成物を所定条件で熱エージングする手法;および溶融混練条件を調整する手法(混練時間を15分から30分);を適用した場合であり、実施例6~11は、上記手法のうちいずれか2つの手法を併用した場合である。また、実施例1、6、7および9において用いたオリゴマーは、下記のようにして作製したものであり、100℃における粘度が1000mPa・sのものである。
【0047】
(オリゴマーの作製方法)
表1で示した配合表に従って各材料を配合(エポキシ基1当量に対し酸無水物基0.1当量)し、ミキシングロールにより25℃で10分間溶融混練を行った後、得られた粘土状組成物を温度55℃で4時間にわたって熱エージングした。ついで、口径300mmの陶器製乳鉢を用いて、粒径が1mm以下になるまで粉砕し、温度0℃以下の環境で保存した。
【0048】
<熱硬化性光反射用樹脂組成物の評価>
各実施例及び各比較例の樹脂組成物を下記の各種特性試験によりそれぞれ評価した。結果を表1および表2に示す。
【0049】
(光反射率)
各実施例及び各比較例の樹脂組成物を、成形型温度180℃、成形圧力6.9MPa、キュア時間90秒の条件でトランスファー成形した後、150℃で2時間ポストキュアすることにより、厚み1.0mmのテストピースを作製した。ついで、積分球型分光光度計V-750型(日本分光株式会社製)にて波長400nmにおける光反射率を測定し、下記の評価基準により各テストピースの光反射率を評価した。
・評価基準
○:光波長400nmにおいて光反射率80%以上
△:光波長400nmにおいて光反射率70%以上80%未満
×:光波長400nmにおいて光反射率70%未満
【0050】
(バリ評価)
各実施例及び各比較例の光反射樹脂組成物を、ポットより、深さがそれぞれ75、50、30、20、10、2μmのスリットを設けた成形型に流し込み成形した。その後、成形型の上型と下型の隙間内を流れて生じた樹脂バリの長さの最大値をノギスで求めた。バリ測定用金型と生じた樹脂バリの模式図を図4に示す。なお、バリ長さの最大値が5mm未満である場合を良好とし、5mm以上である場合をNGとした。評価結果を表1に示す。また、評価基準は下記のとおりである。
・評価基準
◎:バリ長さ3mm未満
○:バリ長さ5mm未満
×:バリ長さの最大値が5mm以上
【0051】
(ワイヤボンディング性)
各実施例及び各比較例の樹脂組成物を用い、光反射率評価のために作製したテストピースと同様の成形、硬化条件で、図2の手順に従い光半導体素子搭載用基板を作製した。ついで、当該基板の光半導体素子搭載領域(凹部)に半導体素子を搭載した後、当該光半導体素子と基板の配線を、ワイヤボンダ(HW22U-H、九州松下電器株式会社製、商品名)と直径28μmのボンディングワイヤを用い、ワイヤボンディングし、電気的に接続した。ワイヤボンディング時の基板加熱温度は180℃とした。ついで、ワイヤボンディングした金線の引っ張り強度をプルテスターPTR-01(株式会社レスカ製、商品名)を用いて測定し、下記の評価基準によりワイヤボンディング性を評価した。
・評価基準
◎:10g以上
○:4g以上10g未満
△:4g未満
×:ボンディング不可
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
*1:トリグリシジルイソシアヌレート
(エポキシ当量100、日産化学社製、商品名TEPIC-S)
*2:ヘキサヒドロ無水フタル酸(和光純薬社製)
*3:テトラヒドロ無水フタル酸(アルドリッチ社製)
*4:メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(日立化成工業社製、商品名HN5500)
*5:日本化学工業社製、商品名PX-4ET)
*6:トリメトキシエポキシシラン(東レダウコーニング社製、商品名A-187)
*7:脂肪酸エステル(クラリアント社製、商品名 ヘキストワックスE)
*8:脂肪族エーテル(東洋ペトロライト社製、商品名 ユニトックス420)
*9:溶融シリカ(電気化学工業社製、商品名FB-301)
*10:溶融シリカ(電気化学工業社製、商品名FB-950)
*11:溶融シリカ(アドマテックス社製、商品名SO-25R)
*12:中空粒子(住友3M社製、商品名S60-HS)
*13:アルミナ(アドマテックス社製、商品名AO-25R)
*14:ナノシリカ(トクヤマ社製、商品名 レオロシールCP-102)
【0054】
表1と表2に示したように、実施例の硬化性光反射用樹脂組成物は、光反射特性に優れ、また、トランスファー成形によるバリの発生を抑制し、ワイヤボンディング性を向上させることが可能である。結果として、本発明の硬化性光反射用樹脂組成物を用いて光半導体素子搭載用基板や光半導体装置の製造する場合、バリを除去する工程が不要となるめ、コストや製造時間など生産性の面で非常に有利となる。」
3 判断
発明の詳細な説明には、上記「2」(1)~(3)からみて、「熱硬化性光反射用樹脂組成物」は、「トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂」以外にも(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)無機充填剤、(E)白色顔料、(F)カップリング剤、(H)増粘剤等を含むことが記載され、各々の構成が、「バリ」の発生に影響することが読み取れる。
そして、上記「2」(4)からみて、「トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂」を含む「熱硬化性光反射用樹脂組成物」において、配合成分が異なるものを用いて作製した実施例1~11、比較例1~8が記載されており、実施例1~11は、本願発明の「成形温度180℃、成形圧力6.9MPa、及び成形時間90秒の条件でトランスファー成形した時に生じるバリ長さが5mm以下で」あることを満たすが、比較例1~8は満たさないことが読み取れる。
すなわち、「熱硬化性光反射用樹脂組成物」において、「トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂」であって、「成形温度180℃、成形圧力6.9MPa、及び成形時間90秒の条件でトランスファー成形した時に生じるバリ長さが5mm以下で」あることを満たすものは、「トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂」のみではなく、それ以外の配合成分により決まることが読み取れる。
しかしながら、「トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂」を含む「熱硬化性光反射用樹脂組成物」において、上記「2」(1)~(4)において、実施例1~11に記載されたもの以外において、「熱硬化性光反射用樹脂組成物」がどのような配合成分であれば、「成形温度180℃、成形圧力6.9MPa、及び成形時間90秒の条件でトランスファー成形した時に生じるバリ長さが5mm以下」となるかに関して、当該配合成分を決定するための基準となる説明が記載されておらず、自明ともいえない。
よって、「金属配線と、
熱硬化性光反射用樹脂組成物の硬化物からなり、前記金属配線上に少なくとも一つの光半導体素子搭載領域を残して形成されたリフレクターと、
前記光半導体素子搭載領域に搭載されたLEDチップと、
を備え、前記LEDチップと前記金属配線とが電気的に接続されているLED装置の、前記リフレクターを形成するための熱硬化性光反射用樹脂組成物」において、
「トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂」、以外に(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)無機充填剤、(E)白色顔料、(F)カップリング剤、(H)増粘剤等を含むことは、当業者であれば、適宜設計し得ることといえる。
しかしながら、上記(B)~(H)と前記エポキシ樹脂との配合成分を「成形温度180℃、成形圧力6.9MPa、及び成形時間90秒の条件でトランスファー成形した時に生じるバリ長さが5mm以下」となるように設計することに関して、発明の詳細な説明には、前記配合成分を設計するために必要な条件等の記載がなく、自明ともいえない。
そして、各実施例をもとに他の配合成分を設計することが一義的に導出され得るものともいえない。
そうすると、「成形温度180℃、成形圧力6.9MPa、及び成形時間90秒の条件でトランスファー成形した時に生じるバリ長さが5mm以下」となる当該配合成分を設計することは、当業者にとって、過度な試行錯誤が要求されるといわざるを得ない。
4 審判請求人の主張及び当該主張についての当審の判断
審判請求人は、平成29年10月11日付けの審判請求書の手続補正書の「(3-2)本願発明の実施可能要件について(理由3)」の「イ」~「エ」で、
「 イ 御庁審査基準には、実施可能要件を満たすためには、『一般に物の構造や名称からその物をどのように作り、どのように使用するかを理解することが比較的困難な技術分野(例:化学物質)に属する発明については、通常、一つ以上の代表的な実施例が必要である。また、物の性質等を利用した用途発明(例:医薬等)においては、通常、用途を裏付ける実施例が必要である。』旨、記載されている。これに対し、本願明細書には11例もの実施例が、その特定の用途に即して記載されており、この点からみても、当業者において本願明細書の記載に照らし、本願発明に係る熱硬化性光反射用樹脂組成物を作り且つ使用できることは明らかである。
そして、バリ長さの低減に関し、本願明細書には次の記載が認められる。
・・・(略)・・・
ウ 上記のとおり、本願明細書には、豊富な実施例と共に、バリを低減させるための種々の技術的手法が具体的に記載されている。これに関し、御庁審査基準には、『なお、物の発明についての発明特定事項として、物の形状、構造、組成等(以下この部において『構造等』という。)の具体的な手段を用いるのではなく、その物が有する作用、機能、性質又は特性(以下この部において『機能、特性等』という。)を用いることができるが、この場合においても、発明の詳細な説明においては、物の構造等の具体的な手段が記載されていなければならない。』(下線は強調のため追加)と示されているところ、本願明細書には上記のとおり、バリ長さの特性を実現するための、物の構造等の具体的な複数の手段が記載されており、バリ長さの具体的測定方法も記載されている(段落0050等)。
したがって、当業者は、本願明細書の記載に基づき、本願発明である熱硬化性光反射用樹脂組成物を作り、かつ使用することができ、その製造方法により物を生産することができる。つまり、バリ長さに関する構成を備える組成物を調製することに、当業者の過度な試行錯誤は不要である。
エ 以上述べたところにより、本願発明は実施可能要件を満たしていると確信する。」と主張している。
しかしながら、上記2のとおり、「熱硬化性光反射用樹脂組成物」において、「トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂」と他の配合成分とを、「成形温度180℃、成形圧力6.9MPa、及び成形時間90秒の条件でトランスファー成形した時に生じるバリ長さが5mm以下」となるように設計することに関し、実施例1~11が記載されているものの、前記配合成分を決定するための条件等に関する記載がなく、各実施例から一義的に導出され得るものともいえないため、「熱硬化性光反射用樹脂組成物」において、「トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂」を含むものにおいて、どのような配合成分を有するものが、「成形温度180℃、成形圧力6.9MPa、及び成形時間90秒の条件でトランスファー成形した時に生じるバリ長さが5mm以下」となるかについて、明確かつ十分に記載したものであるということができない。
よって、上記主張は採用できない。
5 小括
本件出願の発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができないから、本件出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
第5 原審拒絶理由の理由4に対する当審の判断
1 本願発明の前提となる事項について
上記「第4 1(1)」のとおり。
2 本願の発明の詳細な説明の記載
上記「第4 2」のとおり。
3 判断
本願発明の「熱硬化性光反射用樹脂組成物」は、配合成分として「トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂を含」み、かつ、
当該組成物を用いて「成形温度180℃、成形圧力6.9MPa、及び成形時間90秒の条件でトランスファー成形した時に生じるバリ長さが5mm以下」であるものである。
そして、本願発明は、発明の詳細な説明の段落【0004】~【0005】からみて、
「熱硬化性光反射用樹脂組成物を用いて光半導体素子搭載用基板をトランスファー成形により製造する場合、当該組成物が成形型の上型と下型の隙間に染み出し、樹脂バリが生じ易いという課題があった。バリが発生すると光半導体素子搭載領域の開口部(凹部)にバリが張り出して、光半導体素子を搭載する際の障害になる。さらに、光半導体素子を搭載できたとしても、光半導体素子と金属配線とをボンディングワイヤなどの公知の方法により電気的に接続する際の障害になる。このような障害が発生すると、光半導体素子搭載用基板の製造工程においてバリを除去する工程が必須となりコストや製造時間のロスとなる。」ことを課題とし、
「硬化後の、可視光から近紫外光の反射率が高く、耐熱劣化性やタブレット成形性に優れ、なおかつトランスファー成形時にバリが生じ難い熱硬化性光反射用樹脂組成物ならびに当該樹脂組成物を用いた光半導体素子搭載用基板、光半導体装置およびこれらの製造方法を提供することを目的とする」ものである。
一方、発明の詳細な説明には、上記「第4 2(4)」の比較例1~8のように、配合成分として「トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂を含む」、「熱硬化性光反射用樹脂組成物」であっても、「成形温度180℃、成形圧力6.9MPa、及び成形時間90秒の条件でトランスファー成形した時に生じるバリ長さが5mm以下で」あることを満たさないものが存在している。
そのため、原材料の配合比や具体的な原材料の組み合わせが異なれば、得られる組成物の特性が大きく異なるという技術常識のように、「熱硬化性光反射用樹脂組成物」において、「成形温度180℃、成形圧力6.9MPa、及び成形時間90秒の条件でトランスファー成形した時に生じるバリ長さが5mm以下で」あることは、当該組成物が、どのような配合成分であるかに依存するといえる。
しかしながら、上記「第3 3」のとおり、「トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂」を含む「熱硬化性光反射用樹脂組成物」において、発明の詳細な説明の実施例1~11に記載されたもの以外において、「熱硬化性光反射用樹脂組成物」がどのような配合成分であれば、「成形温度180℃、成形圧力6.9MPa、及び成形時間90秒の条件でトランスファー成形した時に生じるバリ長さが5mm以下」となるかに関して、当該配合成分を決定するための基準となる説明が記載されておらず、自明ともいえない。
よって、 本願発明において、「トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂を含む」、「熱硬化性光反射用樹脂組成物」であって、実施例1~11以外において、
どのような配合成分の「熱硬化性光反射用樹脂組成物」であれば、
「成形温度180℃、成形圧力6.9MPa、及び成形時間90秒の条件でトランスファー成形した時に生じるバリ長さが5mm以下で」あるかについて、発明の詳細な説明に十分な説明がなく、自明ともいえない。
したがって、上記課題を解決できるのかまで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
4 審判請求人の主張及び当該主張についての当審の判断
審判請求人は、平成29年10月11日付けの審判請求書の手続補正書の「(3-3)本願発明のサポート要件について(理由4)」の「イ」で、
「イ サポート要件を満たすか否かは、請求項に係る発明が、発明の詳細な説明において『発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲』を超えるものであるか否かにより判断される。そして、その判断は、発明の詳細な説明の記載を検討することにより進め、その際に、『発明の詳細な説明に記載された特定の具体例にとらわれて、必要以上に特許請求の範囲の減縮を求めることにならないようにする。』ことが、『サポート要件についての審査に係る基本的な考え方』として御庁審査基準に明記されている。
これに対し、上記のとおり、本願明細書にはバリ長さの特性を実現するための具体的な複数の手段が記載され、かつ、多くの実施例によりそれらが実証されている。かかる発明の詳細な説明に照らし、本願発明がサポート要件を満たすものであることは明らかである。
したがって、本願発明は、発明の詳細な説明において『発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲』を超えるものではなく、サポート要件を満たしていると確信する。」
しかしながら、上記「3」のとおり、「成形温度180℃、成形圧力6.9MPa、及び成形時間90秒の条件でトランスファー成形した時に生じるバリ長さが5mm以下」にすることは、本願発明の課題を解決するための条件を示しているが、「バリ長さが5mm以下」となるための「熱硬化性光反射用樹脂組成物」がどのような配合成分を有する組成物であるかについては、「トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂」を含むことのみであり、前記条件を満たす配合成分が自明でもない。
したがって、上記課題を解決できるのかまで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、上記主張は採用できない。
5 小括
本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
第6 むすび
以上のとおり、この出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしておらず、その余について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
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2017-012832