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特許拒絶査定不服審判

2017-009873

半導体装置及びその製造方法、電源装置、高周波増幅器

審判番号
2017-009873
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-006459外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年07月04日
審決日
2018年04月23日
公報発行日
2018年06月29日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .113-WY (H01L) / P18 .121-WY (H01L) / P18 .537-WY (H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-  6459「半導体装置及びその製造方法,電源装置,高周波増幅器」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月28日出願公開,特開2014-138110,請求項の数(10)〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は,平成25年1月17日の出願であって,平成28年8月2日付けで拒絶理由通知がされ,同年10月6日付けで手続補正がされ,平成29年3月27日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年7月4日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,同年10月20日に上申書が提出され,平成30年2月8日付けで拒絶理由通知がされ,同年3月22日付けで手続補正がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし10に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明10」という。)は,平成30年3月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 半導体基板上に積層され,電子走行層及び電子供給層を含む複数の化合物半導体層からなる化合物半導体積層構造と, 前記化合物半導体積層構造の表面を覆い,表面側に部分的に設けられ,かつ,窒素元素をストイキオメトリ比率よりも多く含有する第1領域を含む窒化珪素膜である第1絶縁膜と, 前記化合物半導体積層構造の上方に,ゲート電極,並びに,前記ゲート電極を挟んで両側に設けられたソース電極及びドレイン電極とを備え, 前記第1領域は,前記第1絶縁膜表面に,前記ゲート電極から離間して設けられていることを特徴とする半導体装置。」 なお,本願発明2-4の概要は以下のとおりである。 本願発明2ないし6は,本願発明1を減縮した発明である。 本願発明7は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。 本願発明8は,本願発明7を減縮した発明である。 本願発明9,10は,本願発明1に対応する物の発明であり,本願発明1の「半導体装置」を,それぞれ「トランジスタ」として含む「電源装置」及び「高周波増幅器」に係る発明である。 第3 引用文献,引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2009-164300号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【請求項1】 半導体基板上に積層された複数の化合物半導体層からなる化合物半導体積層構造と, 少なくとも前記化合物半導体積層構造を構成する化合物半導体層の表面に露出している部分を覆う第1絶縁膜と, 前記第1絶縁膜上に形成された第2絶縁膜とを備え, 前記第2絶縁膜は,前記第1絶縁膜よりも水素を多く含んでいることを特徴とする半導体装置。 【請求項2】 前記第1絶縁膜は,ストイキオメトリ絶縁膜であることを特徴とする,請求項1記載の半導体装置。 【請求項3】 前記第2絶縁膜は,非ストイキオメトリ絶縁膜であることを特徴とする,請求項1又は2記載の半導体装置。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 ところで,化合物半導体表面を保護する化合物半導体装置用絶縁膜(例えばシリコン窒化膜)に要求される性能としては,化合物半導体表面に対する安定化作用,及び,絶縁膜自体の良好な絶縁特性の2点がある。 ここで,化合物半導体表面に対する安定化作用とは,化合物半導体表面に絶縁膜を形成することによって,化合物半導体表面の化学的変化現象の抑制及びこれに伴う表面電位の変化を抑制する作用を言う。 【0006】 例えば,化合物半導体表面に対する安定化作用に優れた絶縁膜とは,絶縁膜内部に水素(H)終端されたボンド等を多く含む絶縁膜を言う。このような絶縁膜は化合物半導体表面に対する化学的作用が大きく,場合によっては,化合物半導体表面に存在する不安定な原子結合状態を正常に戻す作用が期待される。 一方,絶縁膜自体の良好な絶縁特性とは,高電界印加時であっても絶縁膜中を流れるリーク電流が少ない特性を言う。特に,SiN膜においては,珪素(Si)及び窒素(N)原子の化学結合状態によって膜中リーク電流が大きく変化する。 【0007】 例えば,それ自体が良好な絶縁特性を有する絶縁膜とは,絶縁膜内部の結合手に空きが無い状態の絶縁膜を言う。このような絶縁膜は,絶縁膜内部を流れる電流が微小であるため,絶縁膜を通してのリーク電流が抑制され,膜中通電による膜質の変化を緩和できることになる。 しかしながら,絶縁膜の化合物半導体表面に対する安定化作用が十分でないと,デバイス動作時の電流変動などデバイス特性に影響を与えることになる。 【0008】 また,絶縁膜自体の良好な絶縁特性が得られないと,リーク電流が流れてしまい,化合物半導体装置の性能を低下させることになる。 このような絶縁膜の化合物半導体表面に対する安定化作用を向上させることと絶縁膜自体の良好な絶縁特性が得られるようにすることは,絶縁膜の化学結合の観点から本質的に両立が難しい。 【0009】 本発明は,このような課題に鑑み創案されたもので,デバイス特性の向上及び性能変動を抑制させることができるようにした,半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 このため,本半導体装置は,半導体基板上に積層された複数の化合物半導体層からなる化合物半導体積層構造と,少なくとも前記化合物半導体積層構造を構成する化合物半導体層の表面に露出している部分を覆う第1絶縁膜と,第1絶縁膜上に形成された第2絶縁膜とを備え,第2絶縁膜は,第1絶縁膜よりも水素を多く含んでいることを要件とする。 また,本半導体装置の製造方法は,半導体基板上に複数の化合物半導体層を積層させて化合物半導体積層構造を形成し,少なくとも化合物半導体積層構造を構成する化合物半導体層の表面に露出している部分が覆われるように第1絶縁膜を形成し,第1絶縁膜上に前記第1絶縁膜よりも含有水素量の大きい第2絶縁膜を形成することを要件とする。 【発明の効果】 【0011】 したがって,本半導体装置及びその製造方法によれば,デバイス特性の向上及びデバイス性能変動を抑制させることができるという利点がある。」 「[第1実施形態] まず,本発明の第1実施形態にかかる半導体装置及びその製造方法について,図1~図5を参照しながら説明する。 【0013】 本実施形態にかかる半導体装置は,化合物半導体からなる化合物半導体装置[ここでは,ショットキー型の電界効果トランジスタ(FET;Field Effect Transistor)(ショットキーゲートFET)]であって,例えば図1に示すように,半導体基板6上に積層された複数の化合物半導体層7~10からなる化合物半導体積層構造1と,化合物半導体積層構造1にショットキー接触しているゲート電極2と,化合物半導体積層構造1にオーミック接触しているオーミック電極3と,少なくとも化合物半導体積層構造1の表面に露出している部分を覆う第1絶縁膜4と,第1絶縁膜4上に形成された第2絶縁膜5とを備える。 【0014】 ここで,化合物半導体積層構造1は,例えば図1に示すように,半絶縁性のSiC基板(半導体基板)6上に,バッファ層7,GaN電子走行層8,AlGaN電子供給層9,GaN表面層(キャップ層)10を順に積層させた構造になっている。そして,GaN表面層10上にゲート電極2が形成されており,AlGaN電子供給層9上にソース電極/ドレイン電極として機能する一対のオーミック電極3が形成されている。なお,図1中,符号11は素子分離領域を示している。 【0015】 第1絶縁膜4は,図1に示すように,絶縁性に優れた絶縁膜であり,少なくとも化合物半導体積層構造1を構成する化合物半導体層(ここではGaN表面層10)の表面に露出している部分に接するように形成されている。 ここでは,第1絶縁膜4は,例えばシリコン窒化膜(SiN膜)である。 本実施形態では,第1絶縁膜4としてのSiN膜(第1SiN膜)は,絶縁性に優れた絶縁膜,即ち,Si-H結合の数とN-H結合の数を足した合計が少なく(Si-H結合の濃度とN-H結合の濃度を足した合計濃度が低く),かつ,化学的量性比の正しい(N/Si比が4/3になっている)ストイキオメトリ絶縁膜として構成されている。 <途中省略> 【0019】 このようにストイキオメトリ絶縁膜として構成される第1SiN膜4は,結合状態が脆弱な結合が少なく,電気伝導に寄与するイオンの量が少ないため,優れた絶縁性を有する。このため,第1SiN膜4によって,ゲート電極2から化合物半導体積層構造1へのリーク電流経路が遮断されることになる。 第2絶縁膜5は,図1に示すように,化合物半導体表面に対する安定化作用に優れた絶縁膜であり,第1絶縁膜4の表面に接するように形成されている。 【0020】 ここでは,第2絶縁膜5は,シリコン窒化膜(SiN膜)である。 本実施形態では,この第2絶縁膜5としてのSiN膜(第2SiN膜)は,化合物半導体表面に対する安定化作用に優れた絶縁膜,即ち,Si-H結合の数とN-H結合の数を足した合計が多く(Si-H結合の濃度とN-H結合の濃度を足した合計濃度が高く),かつ,化学的量性比がずれている(N/Si比が4/3からずれている)非ストイキオメトリ絶縁膜として構成されている。 【0021】 この第2SiN膜5の屈折率(波長633nmの光に対する屈折率)は,2.0又はその近傍の範囲(即ち,1.9よりも大きく2.1よりも小さい範囲)外になっている。つまり,第2SiN膜5は,屈折率としてはストイキオメトリからずれた絶縁膜として構成されている。 この場合,第2SiN膜5の屈折率を2.0又はその近傍の範囲外にするには,屈折率を2.0又はその近傍の範囲よりも高めにする方法と,屈折率を2.0又はその近傍の範囲よりも低めにする方法とがある。 【0022】 屈折率を2.0又はその近傍の範囲よりも高めにすると,第2SiN膜5中に含まれるSi-H結合が増大し,第2SiN膜5は,化合物半導体表面に対して化学的作用を生じさせうる水素を多く含むものとなる。 一方,屈折率を2.0又はその近傍の範囲よりも低めにすると,第2SiN膜5中に含まれるN-H結合が増大し,第2SiN膜5は,化合物半導体表面に対して化学的作用を生じさせうる水素を多く含むものとなる。 【0023】 このように,第2SiN膜5の屈折率が2.0又はその近傍の範囲外になっていれば,第2SiN膜5は,化合物半導体表面に対して化学的作用を生じさせうる水素を多く含むものとなる。 しかしながら,N-H結合の結合エネルギはSi-H結合の結合エネルギよりも大きいため,反応性の観点からは,Si-H結合を多く含む方が有利である。 【0024】 このため,第2SiN膜5の屈折率は2.0又はその近傍の範囲よりも高めにするのが好ましい。 <途中省略> 【0026】 このように構成される第2SiN膜5は,多くの水素を含有し,これらの水素がSi又はNと結合しており,また,N/Si比が4/3のストイキオメトリSiN膜(Si3N4膜)と比較して,化学的安定性が低下したものとなる。 なお,ここでは,上述の考察に基づいて,第2SiN膜5の屈折率を2.0又はその近傍の範囲よりも高めにするようにしているが,これに限られるものではなく,屈折率を2.0又はその近傍の範囲よりも低めにする(即ち,1.9以下にする)ようにしても良い。 <途中省略> 【0027】 ところで,化合物半導体表面には,結晶構成元素の酸化物や水素終端及び水酸基終端されたボンドが多く存在する。 このような化合物半導体表面上に,上述の第1SiN膜4を介して,上述のように構成される第2SiN膜5を設けると,第1SiN膜上に形成された第2SiN膜中に含まれる水素が,成膜中の熱エネルギ等によって化合物半導体表面に拡散し,あるいは,成膜時に反応炉内部に存在するラジカル水素が第1絶縁膜を透過して化合物半導体表面に拡散し,例えば化合物半導体表面の酸素と反応して脱水反応を起こしたり,化合物半導体表面の水素又は水酸基と反応を起こしたりする。 【0028】 このような反応が進行することで,化合物半導体表面に存在する不安定な原子結合状態が安定化されるため,第2SiN膜5を設けない場合(即ち酸化物やボンドが多く存在する場合)と比較して,化合物半導体表面の化学的変化現象及びこれに伴うデバイス動作中の表面電位の変化が抑制され,デバイス特性を向上させることができる。 なお,第2SiN膜5の膜厚が厚くなると膜内をリーク電流が流れてしまうおそれがあるため,2層構造絶縁膜全体の絶縁性能を維持するために,第2絶縁膜5は,化合物半導体表面の改質を成し遂げることができる程度に薄い膜厚にするのが好ましい。この膜厚は,半導体材料及び変性の度合いで異なる。 【0029】 このように,本実施形態では,化合物半導体積層構造1の表面を覆う保護膜として,性質の異なる絶縁膜を積層させた2層構造の絶縁膜(複層絶縁膜;積層構造絶縁膜)が設けられている。つまり,図1に示すように,化合物半導体側に,第1絶縁膜4として,絶縁性に優れたストイキオメトリ絶縁膜を設け,表面側に,第2絶縁膜5として,化合物半導体表面に対する安定化作用に優れた非ストイキオメトリ絶縁膜を設けている。これにより,絶縁膜の絶縁性向上(低ゲートリーク電流化)と化合物半導体表面の化学的安定性の向上の両立を可能とし,デバイス特性の向上及びデバイス性能変動が抑制させた高性能な半導体装置を実現している。 【0030】 このような構成は,以下のような考察に基づいて見出されたものである。 化合物半導体装置の化合物半導体表面には,トラップ等に代表される結合状態の不安定なボンドが存在する。 例えば,結晶種に依存するが,多くの場合,化合物半導体表面は結晶構成元素の酸化物で覆われている。この酸化物は,電子に対してトラップとして働くことがあり,デバイス特性を低下させる。 【0031】 また,例えば,化合物半導体表面が酸化することなく,結合手が切れた状態,もしくは,水素(H)で終端された状態になっていることも想定される。この場合も,酸化物が形成されている場合と同様に,電子に対するトラップとして作用することがあり,デバイス特性を低下させる。 この場合,不安定状態を解消してデバイス特性を向上させるために,化合物半導体表面上に成膜する絶縁膜として,非ストイキオメトリ絶縁膜(例えばSi-H結合及びN-H結合を多く含むSiN膜)を使用することが考えられる。 【0032】 非ストイキオメトリ絶縁膜を使用することによって,結合手が完全に結ばれていない系では,空いた結合手がエネルギ的に安定な状態に遷移しようとする。この遷移が,化合物半導体表面を安定な状態に変化させると考えられる。また,このような非ストイキオメトリ絶縁膜に多く含まれる水素(H)や成膜中のラジカル水素(ラジカルH)が化合物半導体表面に到達し,化合物半導体表面を安定な状態に変化させると考えられる。 【0033】 この結果,化合物半導体表面の化学的変化現象及びこれに伴うデバイス動作中の表面電位の変化が抑制され,デバイス特性が向上する。 しかしながら,このような非ストイキオメトリ絶縁膜(SiN膜)は,原子の結合手が安定な状態で結ばれていないため,絶縁性能が低く,リーク電流が流れてしまう。例えば,このような絶縁膜(SiN膜)を用いてMIMキャパシタを形成した場合,絶縁膜を介して電流が流れてしまう。 【0034】 ここで,ショットキーゲート型の化合物半導体装置(ショットキーゲートFET)では,ゲート電極は化合物半導体積層構造の表面にショットキー接合されている(例えば図3参照)。なお,一定のゲート印加電圧以下では,ショットキー接合を通じて流れる電流は微小である。 しかしながら,例えば絶縁膜に高い電圧が印加されると,絶縁膜を介してゲート電極から化合物半導体積層構造へリーク電流経路が形成される場合がある。 【0035】 このリーク電流経路を流れるゲートリーク電流量は,デバイスの信頼性に影響を与える。 このような点を考慮すると,ゲートリーク電流を抑制して信頼性を向上させるために,化学的量性比の正しい絶縁膜(ストイキオメトリ絶縁膜)を使用することが考えられる。 しかしながら,ストイキオメトリ絶縁膜は,化学的に極めて安定であり,上述のような化合物半導体表面の安定化作用(改質作用)はほとんど期待できない。 【0036】 そこで,化合物半導体表面に対する安定化作用(改質作用)によるデバイス特性の向上と,低ゲートリーク電流化を両立させるべく,図3(A),(B)に示すように,非ストイキオメトリ絶縁膜(SiN膜)とストイキオメトリ絶縁膜(SiN膜)の2層構造にすることが考えられる。 しかしながら,例えば図3(A)に示すように,ストイキオメトリSiN膜を表面側に配置し,非ストイキオメトリSiN膜を化合物半導体側に配置すると,図3(A)中,矢印で示すように,リーク電流経路が形成されてしまう。一般に,この部分には大きな電界が集中し,電流が流れやすい状態になっており,この部分に電流が流れると,絶縁膜内部及び絶縁膜と化合物半導体との接触部が破壊されてしまうおそれがあり,ひいてはデバイスの破壊につながるおそれがある。 【0037】 これに対し,図3(B)に示すように,非ストイキオメトリSiN膜を表面側に配置し,ストイキオメトリSiN膜を化合物半導体側に配置した場合,リーク電流経路は形成されない。 このような点を考慮して,上述のように,化合物半導体側に,第1絶縁膜4として,絶縁性に優れたストイキオメトリ絶縁膜を設け,表面側に,第2絶縁膜5として,化合物半導体表面に対する安定化作用に優れた非ストイキオメトリ絶縁膜を設けている。」 したがって,上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「半導体基板6上に積層された複数の化合物半導体層7~10からなる化合物半導体積層構造1と,化合物半導体積層構造1にショットキー接触しているゲート電極2と,化合物半導体積層構造1にオーミック接触しているオーミック電極3と,少なくとも化合物半導体積層構造1の表面に露出している部分を覆う第1絶縁膜4と,第1絶縁膜4上に形成された第2絶縁膜5とを備えるショットキー型の電界効果トランジスタ(FET;Field Effect Transistor)(ショットキーゲートFET)であって, 前記化合物半導体積層構造1は,半絶縁性のSiC基板(半導体基板)6上に,バッファ層7,GaN電子走行層8,AlGaN電子供給層9,GaN表面層(キャップ層)10を順に積層させた構造であり,前記GaN表面層10上にゲート電極2が形成され,前記AlGaN電子供給層9上にソース電極/ドレイン電極として機能する一対のオーミック電極3が形成されており, 前記第1絶縁膜4は,絶縁性に優れた絶縁膜であり,少なくとも化合物半導体積層構造1を構成する化合物半導体層(ここではGaN表面層10)の表面に露出している部分に接するように形成されたシリコン窒化膜(第1SiN膜4)であって,Si-H結合の数とN-H結合の数を足した合計が少なく(Si-H結合の濃度とN-H結合の濃度を足した合計濃度が低く),かつ,化学的量性比の正しい(N/Si比が4/3になっている)ストイキオメトリ絶縁膜として構成されており, 前記第2絶縁膜5は,化合物半導体表面に対する安定化作用に優れた絶縁膜であり,第1絶縁膜4の表面に接するように形成されているシリコン窒化膜(第2SiN膜5)であって,Si-H結合の数とN-H結合の数を足した合計が多く(Si-H結合の濃度とN-H結合の濃度を足した合計濃度が高く),かつ,化学的量性比がずれている(N/Si比が4/3からずれている)非ストイキオメトリ絶縁膜として構成されており, この第2SiN膜5の屈折率(波長633nmの光に対する屈折率)は,屈折率を2.0又はその近傍の範囲よりも高めにする方法と,屈折率を2.0又はその近傍の範囲よりも低めにする方法とによって,2.0又はその近傍の範囲(即ち,1.9よりも大きく2.1よりも小さい範囲)外になっており, ここで,屈折率を2.0又はその近傍の範囲よりも高めにすると,第2SiN膜5中に含まれるSi-H結合が増大し,第2SiN膜5は,化合物半導体表面に対して化学的作用を生じさせうる水素を多く含むものとなり, 他方,屈折率を2.0又はその近傍の範囲よりも低めにすると,第2SiN膜5中に含まれるN-H結合が増大し,第2SiN膜5は,化合物半導体表面に対して化学的作用を生じさせうる水素を多く含むものとなって,第2SiN膜5は,化合物半導体表面に対して化学的作用を生じさせうる水素を多く含むものとなるが, N-H結合の結合エネルギはSi-H結合の結合エネルギよりも大きいため,反応性の観点からは,Si-H結合を多く含む方が有利であるから,第2SiN膜5の屈折率は2.0又はその近傍の範囲よりも高めにするのが好ましい, ショットキー型の電界効果トランジスタ。」 また,上記引用文献1には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。 ・結晶構成元素の酸化物や水素終端及び水酸基終端されたボンドが多く存在する化合物半導体表面上に,化学的量性比の正しい第1SiN膜4を介して,化学的量性比がずれている第2SiN膜5を設けると,第1SiN膜上に形成された第2SiN膜中に含まれる水素が,成膜中の熱エネルギ等によって化合物半導体表面に拡散し,あるいは,成膜時に反応炉内部に存在するラジカル水素が第1絶縁膜を透過して化合物半導体表面に拡散し,例えば化合物半導体表面の酸素と反応して脱水反応を起こしたり,化合物半導体表面の水素又は水酸基と反応を起こしたりすることで,化合物半導体表面に存在する不安定な原子結合状態が安定化されるため,第2SiN膜5を設けない場合(即ち酸化物やボンドが多く存在する場合)と比較して,化合物半導体表面の化学的変化現象及びこれに伴うデバイス動作中の表面電位の変化が抑制され,これにより,絶縁膜の絶縁性向上(例えば絶縁膜に高い電圧が印加された場合における,絶縁膜を介してゲート電極から化合物半導体積層構造へ形成されるリーク電流経路によるゲートリーク電流の低減)と化合物半導体表面の化学的安定性の向上の両立を可能とし,デバイス特性の向上及びデバイス性能変動が抑制させた高性能な半導体装置を実現していること。 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2010-232452号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【背景技術】 【0002】 近年,化合物半導体装置,特にGaN系化合物半導体を主な材料とした高電子移動度トランジスタ(HEMT:high electron mobility transistor)の高出力高周波用デバイスへの適用について検討がなされている。GaN系化合物半導体を主な材料としたHEMT(以下,GaN系HEMTともいう)では,表面に,電気的な特性及び化学的な特性の安定のために,シリコン窒化膜が表面保護膜として形成されている。GaN系HEMTの表面には電流コラプスとよばれる電流変動を引き起こすトラップが多く存在しており,シリコン窒化膜はこのようなトラップの不活性化に効果的である。 【0003】 表面保護膜には,化合物半導体層の表面に対する安定化作用及び絶縁性が要求される。安定化作用の一つとして,外的要因による化合物半導体層の表面の化学的変化の抑制が挙げられる。化合物半導体層は2種類以上の元素から構成されており,水分等の浸入により腐食しやすい。表面保護膜には,このような腐食の抑制が要求される。また,安定化作用の他の一つとして,化合物半導体層の表面準位の形成の抑制が挙げられる。化合物半導体層の表面に自然酸化膜等の酸化膜が存在すると,表面準位が形成され,表面の電位が変化する。表面保護膜には,このような表面準位の形成の抑制が要求される。 【0004】 水素により終端された結合等を多く含むシリコン窒化膜は,化合物半導体層の表面に対する化学的作用が大きく,表面に存在する不安定な原子結合状態を安定化する作用も有している。但し,このようなシリコン窒化膜の電気伝導性は比較的高く,表面保護膜として用いると,十分な絶縁性を確保しにくい。 【0005】 そこで,Si-H結合を多く有するシリコン窒化膜を形成した後に,その上に絶縁性の高いシリコン窒化膜を形成することにより,表面保護膜を2層構造とすることが提案されている。 【0006】 その一方で,GaN系HEMTの高周波特性の向上にはゲート電極の微細化が効果的である。 【0007】 しかしながら,従来のGaN系HEMTでは,ゲート電極の微細化に伴って,2層構造の表面保護膜を用いても電流コラプスを十分に抑制することができなくなってきている。このような問題点は,GaN系HEMT等の高出力高周波デバイスだけでなく,他の化合物半導体装置にも存在する。 <途中省略> 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明の目的は,ゲート電極が微細化されても電流コラプスを抑制することができる化合物半導体装置及びその製造方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0010】 化合物半導体装置の製造方法の一態様では,化合物半導体積層構造上方に,ソース電極,ドレイン電極及びゲート電極を形成し,前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の前記化合物半導体積層構造上に,表面保護膜を形成する。また,前記表面保護膜を形成する際に,前記化合物半導体積層構造上に第1の絶縁膜を形成し,前記第1の絶縁膜の表面に,酸素原子又は窒素原子の少なくとも一方を前記第1の絶縁膜よりも多く含む第2の絶縁膜を形成し,前記第2の絶縁膜の上方に,前記第1の絶縁膜よりもSi-H結合を少なく含み,前記第1の絶縁膜よりも高い絶縁性を示す第3の絶縁膜を形成する。 【0011】 化合物半導体装置の一態様には,化合物半導体積層構造と,前記化合物半導体積層構造上方に形成されたソース電極,ドレイン電極及びゲート電極と,前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の前記化合物半導体積層構造上に形成された表面保護膜と,が設けられている。前記表面保護膜には,前記化合物半導体積層構造上に形成された第1の絶縁膜と,前記第1の絶縁膜上に形成され,酸素原子又は窒素原子の少なくとも一方を前記第1の絶縁膜よりも多く含む第2の絶縁膜と,前記第2の絶縁膜の上方に形成され,前記第1の絶縁膜よりもSi-H結合を少なく含み,前記第1の絶縁膜よりも高い絶縁性を示す第3の絶縁膜と,が設けられている。 【発明の効果】 【0012】 上記の化合物半導体装置の製造方法等によれば,電流コラプスを引き起こす電子のトラップを低減することができる。このため,ゲート電極が微細化されても電流コラプスを抑制することできる。 <途中省略> 【発明を実施するための形態】 【0014】 (表面保護膜について) 本願発明者は,2層構造の表面保護膜を用いても電流コラプスを十分に抑制することができなくなってきている原因について検討を行った。この結果,表面保護膜内にもトラップとして機能する部分が存在し,この部分が,ゲート電極の微細化に伴う電界強度の増加によって電流コラプスを引き起こしていることを見出した。 【0015】 表面保護膜としてシリコン窒化膜をプラズマCVD(chemical vapor deposition)法により形成する場合には,例えば,シリコンの原料としてSiH4ガスを用い,窒素の原料としてN2ガス又はNH3ガスを用いる。この場合,高周波電力により,これらの原料ガスの一部から水素原子が脱離及びプラズマ化し,乖離原料ガス(プリカーサ)が化合物半導体層の表面に到達する。そして,プリカーサが化合物半導体層の表面上に存在するシリコン原子及び窒素原子と結合し,水素が離脱する。つまり,化合物半導体層の表面上に存在する不完全な結合は,後続のプリカーサにより安定な状態に変化していく。このようにしてシリコン窒化膜が形成されていくと考えられる。 【0016】 ところが,シリコン窒化膜の形成の終了段階では,不完全な結合が安定にならないまま残留してしまう。つまり,不完全なSi-N結合及びSi-H結合がシリコン窒化膜の表面に多く残留してしまう。これは,高周波電力の切断に伴ってプリカーサが十分な反応をする前にエネルギの供給が絶たれ,また,原料ガスの供給の切断に伴って後続のプリカーサが供給されなくなるからであると考えられる。このような現象は,Si-H結合を多く有する下側のシリコン窒化膜において顕著に生じる。また,その上に絶縁性の高い上側のシリコン窒化膜を形成しても,絶縁性の高いシリコン窒化膜の組成は化学量論組成に極めて近いため,不完全な結合を形成しにくいと考えられる。そして,不完全な結合が残留してしまうと,これらが電子のトラップとして作用し,電流コラプスを引き起こすと考えられる。 【0017】 本願発明者は,このように不完全な結合によって電流コラプスが引き起こされていることを見出し,更に鋭意検討を行った。この結果,下側のSi-H結合を多く有するシリコン窒化膜を形成した後で,上側の絶縁性の高いシリコン窒化膜を形成する前に,下側のシリコン窒化膜の表面に対してプラズマ処理等を行うことにより,不完全な結合を低減して電流コラプスを抑制することができることに想到した。」 「【0018】 (第1の実施形態) 先ず,第1の実施形態について説明する。図1A乃至図1Bは,第1の実施形態に係るGaN系HEMT(化合物半導体装置)を製造する方法を工程順に示す断面図である。 【0019】 第1の実施形態では,先ず,図1A(a)に示すように,例えば半絶縁性のSiC基板等の基板1上に,例えば有機金属気相成長(MOVPE:metal organic vapor phase epitaxy)法により,バッファ層2a,電子走行層2b,電子供給層2c及び表面層2dをこの順でエピタキシャル成長させる。バッファ層2a及び電子走行層2bとしては,例えば不純物がドーピングされていないGaN層(i-GaN層)を形成し,これらの総厚は3μm程度とする。バッファ層2aは,基板1の表面に存在する格子欠陥の電子走行層2bへの伝播を防止している。電子供給層2cとしては,例えばn型のAlGaN層(n-AlGaN層)を形成し,その厚さは10nm程度とする。表面層2dとしては,例えばn型のGaN層(n-GaN層)を形成し,その厚さは10nm以下とする。バッファ層2a,電子走行層2b,電子供給層2c及び表面層2dが化合物半導体領域2(化合物半導体積層構造)に含まれる。 【0020】 次いで,図1A(b)に示すように,化合物半導体領域2に向けて選択的にArを注入することにより,活性領域を画定する素子分離領域3を化合物半導体領域2及び基板1の表層部に形成する。 【0021】 その後,ソース電極を形成する予定の領域及びドレイン電極を形成する予定の領域を開口するレジストパターンを化合物半導体領域2上に形成する。続いて,レジストパターンをマスクとして用い,不活性ガス及びCl2ガス等の塩素系ガスを用いたドライエッチングを表面層2dに対して行うことにより,図1A(c)に示すように,表面層2dに2個の開口部を形成する。なお,開口部の深さに関し,表面層2dの一部を残してもよく,また,電子供給層2cの一部を除去してもよい。つまり,開口部の深さは表面層2dの厚さと一致している必要はない。 【0022】 次いで,同じく図1A(c)に示すように,一方の開口部内にソース電極4を形成し,他方の開口部内にドレイン電極5を形成する。ソース電極4及びドレイン電極5の形成に当たっては,例えば,先ず,蒸着法によりTi層を形成し,その上に蒸着法によりAl層を形成する。Ti層の厚さは20nm程度,Al層の厚さは200nm程度とする。そして,開口部の形成に用いたレジストパターンを除去する。つまり,ソース電極4及びドレイン電極5の形成では,例えば蒸着及びリフトオフの技術を用いる。その後,550℃程度での熱処理を行うことにより,ソース電極4及びドレイン電極5と化合物半導体領域2の表面(電子供給層2cの表面)との間をオーミックコンタクトさせる。なお,開口部の形成後にレジストパターンを除去し,ソース電極4及びドレイン電極5の形成用に新たにレジストパターンを形成してもよい。 【0023】 続いて,図1A(d)に示すように,化合物半導体領域2上の全面に,ソース電極4及びドレイン電極5を覆う表面保護膜10を形成する。 【0024】 ここで,表面保護膜10を形成する方法について説明する。図2は,表面保護膜10を形成する方法を工程順に示す断面図である。 【0025】 先ず,図2(a)に示すように,全面にシリコン窒化膜10aを,例えばプラズマ化学気相成長(CVD:chemical vapor deposition)法により形成する。シリコン窒化膜10aの厚さは,例えば20nm程度とする。また,シリコン窒化膜10aの組成は,化学量論組成(Si3N4)よりもシリコンの割合が多いものとする。従って,シリコン窒化膜10aのSi-H結合の濃度は,化学量論組成のシリコン窒化膜のそれよりも高くなる。このようなシリコン窒化膜10aは,次のようにして形成することができる。例えば,原料ガスを乖離させるプラズマ励起周波数は13.56MHzとし,高周波出力は50Wとする。また,原料ガスに関し,SiH4ガスの流量,N2ガスの流量,Heガスの流量は,夫々,3sccm,150sccm,1000sccmとする。シリコン窒化膜10aの屈折率は2.0よりも高いことが好ましい。 【0026】 次いで,シリコン窒化膜10aの表面のプラズマ処理を行うことにより,図2(b)に示すように,シリコン窒化膜10aの表層部をシリコン含有絶縁膜10bに変化させる。このプラズマ処理では,例えば,プラズマCVD装置を用いて酸素プラズマへの曝露を行う。この場合,酸素ガスを乖離させるプラズマ励起周波数は13.56MHzとし,高周波出力は50Wとする。また,原料ガスに関し,O2ガスの流量を300sccmとする。この条件下で3分間程度のプラズマ処理を行えば,厚さが最大で10nm程度のシリコン含有絶縁膜10bが得られる。このようなプラズマ処理により形成されたシリコン含有絶縁膜10b中のSi-H結合の濃度は,シリコン窒化膜10aのそれよりも極めて低いものとなる。つまり,シリコン含有絶縁膜10bの表面に存在する不完全な結合手は,シリコン窒化膜10aの表面に存在する不完全な結合手よりも著しく少ない。 【0027】 その後,図2(c)に示すように,全面にシリコン窒化膜10cを,例えばプラズマCVD法により形成する。シリコン窒化膜10cの厚さは,例えば30nm程度とする。また,シリコン窒化膜10cの組成は,少なくともシリコン窒化膜10aよりも化学量論組成に近いものとし,化学量論組成にすることが好ましい。従って,シリコン窒化膜10cのSi-H結合の濃度は,シリコン窒化膜10aのそれよりも低くなり,また,シリコン窒化膜10cの絶縁性は,シリコン窒化膜10aのそれよりも高くなる。このようなシリコン窒化膜10cは,次のようにして形成することができる。例えば,プラズマ励起周波数は13.56MHzとし,高周波出力は50Wとする。また,原料ガスに関し,SiH4ガスの流量,N2ガスの流量,Heガスの流量は,夫々,2sccm,150sccm,1000sccmとする。シリコン窒化膜10cの屈折率は2.0と同程度であることが好ましい。 【0028】 なお,シリコン含有絶縁膜10bの形成に当たり,酸素プラズマへの曝露に代えて窒素プラズマへの曝露を行ってもよい。この場合,窒素ガスを乖離させるプラズマ励起周波数は13.56MHzとし,高周波出力は50Wとする。また,原料ガスに関し,H2ガスの流量を1000sccmとする。この条件下で5分間程度のプラズマ処理を行えば,厚さが10nm程度のシリコン含有絶縁膜10bが得られる。このようなプラズマ処理により形成されたシリコン含有絶縁膜10b中のSi-H結合の濃度は,シリコン窒化膜10aのそれよりも極めて低いものとなる。つまり,シリコン含有絶縁膜10bの表面に存在する不完全な結合手は,シリコン窒化膜10aの表面に存在する不完全な結合手よりも著しく少ない。 【0029】 また,プラズマ処理(酸素プラズマ又は窒素プラズマへの曝露)に代えて熱処理を行うことにより,熱酸化膜をシリコン含有絶縁膜10bとして形成してもよい。 【0030】 このようにして表面保護膜10を形成することができる。 【0031】 表面保護膜10の形成後には,図1B(e)に示すように,ゲート電極用の開口部10gを形成する予定の領域に整合する開口部21aを備えたレジストパターン21を表面保護膜10上に形成する。そして,レジストパターン21をマスクとしたドライエッチングを行うことにより,表面保護膜10に開口部10gを形成する。このドライエッチングでは,例えばSF6ガスを用いる。続いて,レジストパターン21を除去する。 【0032】 その後,図1B(f)に示すように,ゲート電極を形成する予定の領域に整合する開口部22aを備えた下層レジストパターン22及び開口部22aより狭い開口部23aを備えた上層レジストパターン23をシリコン窒化膜10上に形成する。 【0033】 これらの下層レジストパターン22及び上層レジストパターン23の形成に当たっては,先ず,アルカリ可溶性樹脂(ポリメチルグルタルイミド(PMGI)(例えば,米国マイクロケム社製))を,例えばスピンコート法により塗布し,熱処理することにより,レジスト膜を形成する。更に,感光性レジスト剤(商品名PFI32-A8:住友化学社製)を,例えばスピンコート法により塗布し,熱処理を行うことにより,レジスト膜を形成する。次いで,紫外線露光により幅が0.8μm程度の開口部23aを上層のレジスト膜に形成する。この結果,開口部23aを備えた上層レジストパターン23が得られる。その後,上層レジストパターン23をマスクとして,アルカリ現像液を用いて下層のレジスト膜をウェットエッチングする。この結果,開口部22aを備えた下層レジストパターン22が得られる。これらの処理により,図1B(f)に示すように,庇構造の多層レジストが得られる。 【0034】 下層レジストパターン22及び上層レジストパターン23の形成後,同じく図1B(f)に示すように,開口部22a内にゲート電極6を形成する。ゲート電極6の形成に当たっては,例えば,蒸着法によりNi層を形成し,その上に蒸着法によりAu層を形成する。Ni層の厚さは10nm程度,Au層の厚さは300nm程度とする。 【0035】 次いで,図1B(g)に示すように,加温した有機溶剤を用いてレジストパターン22及び23を除去する。つまり,ゲート電極6の形成でも,例えば蒸着及びリフトオフの技術を用いる。 【0036】 その後,保護膜及び配線等を形成して,GaN系HEMT(半導体装置)を完成させる。 【0037】 このようにして製造されたGaN系HEMTでは,図2(c)に示すように,表面保護膜10が,シリコン窒化膜10a,シリコン含有絶縁膜10b及びシリコン窒化膜10cの3層構造となっている。そして,シリコン窒化膜10a中のSi-H結合の濃度はシリコン窒化膜10cのそれよりも高く,シリコン窒化膜10cの絶縁性はシリコン窒化膜10aのそれよりも高い。従って,化合物半導体領域2の表面のトラップが低減され,また,高い絶縁性を確保することができる。更に,本実施形態では,シリコン窒化膜10aとシリコン窒化膜10cとの間にシリコン含有絶縁膜10bが存在しているため,表面保護膜10中の不完全な結合手が極めて少ない。従って,従来のものと比較して電子のトラップとして機能する部分が極めて少なく,電流コラプスをより効果的に抑制することができる。 【0038】 ここで,シリコン含有絶縁膜10bの特徴について説明する。先ず,酸素プラズマへの暴露により形成された場合の特徴について説明し,次に,窒素プラズマへの曝露により形成された場合の特徴について説明する。 【0039】 シリコン窒化膜10aの表面を酸素プラズマに曝すと,活性な酸素原子がシリコン窒化膜10aの表面に到達し,不完全なSi-N結合及びSi-H結合が,結合エネルギが低く安定なSiO,SiO2又はSiONに変化する。このようにして不完全Si-N結合及びSi-H結合が大幅に減少する。 【0040】 また,シリコン窒化膜10aの表面を窒素プラズマに曝すと,活性な窒素原子がシリコン窒化膜10aの表面に到達し,不完全なSi-N結合及びSi-H結合が,結合エネルギが低く安定なSiN(窒素リッチ窒化珪素)に変化する。このようにして不完全Si-N結合及びSi-H結合が大幅に減少する。 【0041】 また,これらのプラズマ処理によってシリコン含有絶縁膜10bが形成されるだけでなく,残存するシリコン窒化膜10a内部のトラップが低減されるという効果も得られる。上述のように,シリコン窒化膜10aとしては,Si-H濃度が高いものを形成する。これは,化合物半導体領域2の表面に存在する自然酸化膜等の不安定な結合を安定状態に遷移させ,化合物半導体領域2の表面を改質するためでもある。但し,Si-H結合の一部はこのような遷移及び改質に用いられず,そのまま残留する。このような残留したSi-H結合の多くはシリコン窒化膜10aの形成時に後続のプリカーサとの結合により消滅していくが,それでも残留するものもあり,また,この過程で不完全なSi-H結合が生じることもある。そして,この不完全なSi-H結合はトラップとして作用し得る。また,この不完全なSi-H結合の存在に伴って絶縁性が低くなる。このような不完全なSi-H結合が存在していても,シリコン含有絶縁膜10bの形成時に上述のようなプラズマ処理を行うと,活性酸素原子又は活性窒素原子の浸透により,不完全なSi-H結合が安定なSiO,SiN等に変換される。このようにして,シリコン窒化膜10a内部のトラップも低減される。」 したがって,上記引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「半絶縁性のSiC基板1上に,バッファ層2a,電子走行層2b,電子供給層2c及び表面層2dを含む化合物半導体領域2(化合物半導体積層構造)をこの順でエピタキシャル成長させた構造を有するGaN系HEMT(化合物半導体装置)であって, 前記GaN系HEMTは, 前記表面層2dに形成した2個の開口部の一方の開口部内に形成したソース電極4,及び,他方の開口部内に形成したドレイン電極5と, 前記化合物半導体領域2上の全面に,ソース電極4及びドレイン電極5を覆うように形成した表面保護膜10と, 前記表面保護膜10に形成した開口部10gに形成したゲート電極6と, 保護膜及び配線等を備え, 前記表面保護膜10が, 全面に形成した,化学量論組成(Si3N4)よりもシリコンの割合が多く,従って,Si-H結合の濃度が,化学量論組成のシリコン窒化膜のそれよりも高い,シリコン窒化膜10aと, 前記シリコン窒化膜10aの表面を,窒素プラズマへの曝露を行うことで,活性な窒素原子がシリコン窒化膜10aの表面に到達し,不完全なSi-N結合及びSi-H結合が,結合エネルギが低く安定なSiN(窒素リッチ窒化珪素)に変化し,このようにして,前記シリコン窒化膜10aの表層部のSi-H結合の濃度が,前記シリコン窒化膜10aのそれよりも極めて低くなり,その表面に存在する不完全な結合手が,シリコン窒化膜10aの表面に存在する不完全な結合手よりも著しく少ないものとなったシリコン含有絶縁膜10bと, その後,全面に形成された,化学量論組成にすることが好ましいシリコン窒化膜10cであって,Si-H結合の濃度が,前記シリコン窒化膜10aのそれよりも低く,また,絶縁性が,前記シリコン窒化膜10aのそれよりも高いシリコン窒化膜10cとからなる3層構造である, GaN系HEMT。」 また,上記引用文献2には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。 ・GaN系化合物半導体を主な材料としたHEMT(以下,GaN系HEMTともいう)の表面に形成される,前記HEMTの化合物半導体領域2の表面に存在する自然酸化膜等の不安定な結合を安定状態に遷移させ,化合物半導体領域2の表面を改質するための表面保護膜であるシリコン窒化膜10aとして,Si-H濃度が高いものを形成した場合に,当該Si-H結合の一部はこのような遷移及び改質に用いられず,そのまま残留し,この不完全なSi-H結合がトラップとして作用し,また,この不完全なSi-H結合の存在に伴って絶縁性が低くなるが,このような不完全なSi-H結合が存在していても,シリコン含有絶縁膜10bの形成時に,前記シリコン窒化膜10aの表面を窒素プラズマに曝すことで,活性な窒素原子がシリコン窒化膜10aの表面に到達し,不完全なSi-N結合及びSi-H結合が,結合エネルギが低く安定なSiN(窒素リッチ窒化珪素)に変化し,このようにして不完全Si-N結合及びSi-H結合が大幅に減少することでシリコン窒化膜10a内部のトラップも低減するので,従来のものと比較して電子のトラップとして機能する部分が極めて少なく,電流コラプスをより効果的に抑制することができること。 3.引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2012-124436号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0113】 (第4の実施形態) 本実施形態では,第1及び第2の実施形態,並びにこれらの諸変形例から選ばれた1種のAlGaN/GaN・HEMTを備えた電源装置を開示する。 図16は,第4の実施形態による電源装置の概略構成を示す結線図である。 【0114】 本実施形態による電源装置は,高圧の一次側回路81及び低圧の二次側回路82と,一次側回路81と二次側回路82との間に配設されるトランス83とを備えて構成される。 一次側回路81は,交流電源84と,いわゆるブリッジ整流回路85と,複数(ここでは4つ)のスイッチング素子86a,86b,86c,86dとを備えて構成される。また,ブリッジ整流回路85は,スイッチング素子86eを有している。 二次側回路82は,複数(ここでは3つ)のスイッチング素子87a,87b,87cを備えて構成される。 【0115】 本実施形態では,一次側回路81のスイッチング素子86a,86b,86c,86d,86eが,第1及び第2の実施形態,並びにこれらの諸変形例から選ばれた1種のAlGaN/GaN・HEMTとされている。一方,二次側回路82のスイッチング素子87a,87b,87cは,シリコンを用いた通常のMIS・FETとされている。 【0116】 本実施形態では,ゲート電極の高いゲート耐圧を実現しつつも,ゲート絶縁膜における電荷トラップ(特に,ゲート絶縁膜のゲート電極との界面及びその近傍部位または,ゲート絶縁膜の化合物半導体層2との界面およびその近傍部位の電荷トラップ)を更に大幅に低減し,電気特性変動を抑えた信頼性の高いAlGaN/GaN・HEMTを高圧回路に適用する。これにより,信頼性の高い大電力の電源回路が実現する。 【0117】 (第5の実施形態) 本実施形態では,第1及び第2の実施形態,並びにこれらの諸変形例から選ばれた1種のAlGaN/GaN・HEMTを備えた高周波増幅器を開示する。 図17は,第5の実施形態による高周波増幅器の概略構成を示す結線図である。 【0118】 本実施形態による高周波増幅器は,ディジタル・プレディストーション回路91と,ミキサー92a,92bと,パワーアンプ93とを備えて構成される。 ディジタル・プレディストーション回路91は,入力信号の非線形歪みを補償するものである。ミキサー92aは,非線形歪みが補償された入力信号と交流信号をミキシングするものである。パワーアンプ93は,交流信号とミキシングされた入力信号を増幅するものであり,第1及び第2の実施形態,並びにこれらの諸変形例から選ばれた1種のAlGaN/GaN・HEMTを有している。なお図17では,例えばスイッチの切り替えにより,出力側の信号をミキサー92bで交流信号とミキシングしてディジタル・プレディストーション回路91に送出できる構成とされている。 【0119】 本実施形態では,ゲート電極の高いゲート耐圧を実現しつつも,ゲート絶縁膜における電荷トラップ(特に,ゲート絶縁膜のゲート電極との界面及びその近傍部位または,ゲート絶縁膜の化合物半導体層2との界面およびその近傍部位の電荷トラップ)を更に大幅に低減し,電気特性変動を抑えた信頼性の高いAlGaN/GaN・HEMT高周波増幅器に適用する。これにより,信頼性の高い高耐圧の高周波増幅器が実現する。」 したがって,上記引用文献3には,HEMTを含む電源装置及び高周波増幅器に係る技術的事項が記載されていると認められる。 第4 対比・判断 1.本願発明1について (1)引用発明1を主引例とした検討 ア 対比 本願発明1と引用発明1とを対比すると,次のことがいえる。 引用発明1における「『半絶縁性のSiC基板(半導体基板)6上に,バッファ層7,GaN電子走行層8,AlGaN電子供給層9,GaN表面層(キャップ層)10を順に積層させた構造』である『複数の化合物半導体層7~10からなる化合物半導体積層構造1』」は,本願発明1における「半導体基板上に積層され,電子走行層及び電子供給層を含む複数の化合物半導体層からなる化合物半導体積層構造」に相当する。 引用発明1における「『少なくとも化合物半導体積層構造1を構成する化合物半導体層(ここではGaN表面層10)の表面に露出している部分に接するように形成されたシリコン窒化膜(第1SiN膜4)』である『第1絶縁膜4』」及び「『第1絶縁膜4の表面に接するように形成されているシリコン窒化膜(第2SiN膜5)』である『第2絶縁膜5』」からなる積層膜は,一体として,化合物半導体積層構造1を構成する化合物半導体層の表面に露出している部分に接するように形成されたシリコン窒化膜であると認められる。 そして,「非ストイキオメトリ絶縁膜として構成されて」いる前記「第2絶縁膜5」(「第2SiN膜5」)において,「屈折率を2.0又はその近傍の範囲よりも低めにすると,第2SiN膜5中に含まれるN-H結合が増大し,第2SiN膜5は,化合物半導体表面に対して化学的作用を生じさせうる水素を多く含むものとなって,第2SiN膜5は,化合物半導体表面に対して化学的作用を生じさせうる水素を多く含むものと」したものは,当該「第2SiN膜5」の領域が,窒素元素をストイキオメトリ比率よりも多く含有していると理解される。 そうすると,引用発明1の「『第1絶縁膜4』及び『第2絶縁膜5』からなる積層膜」は,本願発明1における,「化合物半導体積層構造の表面を覆い,かつ,窒素元素をストイキオメトリ比率よりも多く含有する第1領域を含む窒化珪素膜である第1絶縁膜」に相当する。 技術常識に照らして,引用発明1の「ソース電極/ドレイン電極として機能する一対のオーミック電極3」は,本願発明1の「前記ゲート電極を挟んで両側に設けられたソース電極及びドレイン電極」に相当する。 したがって,本願発明1と引用発明1との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「半導体基板上に積層され,電子走行層及び電子供給層を含む複数の化合物半導体層からなる化合物半導体積層構造と, 前記化合物半導体積層構造の表面を覆い,かつ,窒素元素をストイキオメトリ比率よりも多く含有する第1領域を含む窒化珪素膜である第1絶縁膜と, 前記化合物半導体積層構造の上方に,ゲート電極,並びに,前記ゲート電極を挟んで両側に設けられたソース電極及びドレイン電極とを備え, 前記第1領域は,前記第1絶縁膜表面に設けられている半導体装置。」 (相違点) (相違点1)本願発明1の第1領域は,第1絶縁膜の「表面側に部分的に設けられ」,かつ,「ゲート電極から離間して設けられている」という構成を備えるのに対し,引用発明1はそのような構成を備えていない点。 イ 相違点についての判断 上記相違点1について検討すると,相違点1に係る構成は,上記引用文献2,3には記載されていない。 したがって,本願発明1は,引用文献1に記載された発明ではなく,また,当業者であっても引用発明,引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 (2)引用発明2を主引例とした検討 ア 対比 本願発明1と引用発明2とを対比すると,次のことがいえる。 引用発明2における「『半絶縁性のSiC基板1上に』エピタキシャル成長させた『バッファ層2a,電子走行層2b,電子供給層2c及び表面層2dを含む化合物半導体領域2(化合物半導体積層構造)』」は,本願発明1における「半導体基板上に積層され,電子走行層及び電子供給層を含む複数の化合物半導体層からなる化合物半導体積層構造」に相当する。 引用発明2における「『全面に形成した,化学量論組成(Si3N4)よりもシリコンの割合が多く,従って,Si-H結合の濃度が,化学量論組成のシリコン窒化膜のそれよりも高い,シリコン窒化膜10aと,前記シリコン窒化膜10aの表面を,窒素プラズマへの曝露を行うことで,活性な窒素原子がシリコン窒化膜10aの表面に到達し,不完全なSi-N結合及びSi-H結合が,結合エネルギが低く安定なSiN(窒素リッチ窒化珪素)に変化し,このようにして,前記シリコン窒化膜10aの表層部のSi-H結合の濃度が,前記シリコン窒化膜10aのそれよりも極めて低くなり,その表面に存在する不完全な結合手が,シリコン窒化膜10aの表面に存在する不完全な結合手よりも著しく少ないものとなったシリコン含有絶縁膜10bと,その後,全面に形成された,化学量論組成にすることが好ましいシリコン窒化膜10cであって,Si-H結合の濃度が,前記シリコン窒化膜10aのそれよりも低く,また,絶縁性が,前記シリコン窒化膜10aのそれよりも高いシリコン窒化膜10cとからなる3層構造である』『表面保護膜10』」は,化合物半導体領域2上の全面に,ソース電極4及びドレイン電極5を覆うように形成されており,かつ,前記「『結合エネルギが低く安定なSiN(窒素リッチ窒化珪素)に変化し』た『シリコン含有絶縁膜10b』」は,「窒素リッチ」,すなわち,窒素元素をストイキオメトリ比率よりも多く含有する領域であると解されるから,引用発明2の「表面保護膜10」は,本願発明1における,「前記化合物半導体積層構造の表面を覆い,かつ,窒素元素をストイキオメトリ比率よりも多く含有する第1領域を含む窒化珪素膜である第1絶縁膜」に相当する。 技術常識に照らして,引用発明2の「ソース電極4及びドレイン電極5」は,本願発明1の「前記ゲート電極を挟んで両側に設けられたソース電極及びドレイン電極」に相当する。 したがって,本願発明1と引用発明2との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「半導体基板上に積層され,電子走行層及び電子供給層を含む複数の化合物半導体層からなる化合物半導体積層構造と, 前記化合物半導体積層構造の表面を覆い,かつ,窒素元素をストイキオメトリ比率よりも多く含有する第1領域を含む窒化珪素膜である第1絶縁膜と, 前記化合物半導体積層構造の上方に,ゲート電極,並びに,前記ゲート電極を挟んで両側に設けられたソース電極及びドレイン電極とを備えた半導体装置。」 (相違点) (相違点2) 本願発明1の第1領域は,第1絶縁膜の「表面側に部分的に設けられ」,かつ,「前記第1領域は,前記第1絶縁膜表面に,前記ゲート電極から離間して設けられている」という構成を備えるのに対し,引用発明2はそのような構成を備えていない点。 イ 相違点についての判断 上記相違点2について検討すると,相違点2に係る構成は,上記引用文献1,3には記載されていない。 したがって,本願発明1は,引用文献2に記載された発明ではなく,また,当業者であっても引用発明2,引用文献1,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2ないし6について 本願発明2ないし6も,本願発明1の「第1領域は,前記第1絶縁膜表面に,前記ゲート電極から離間して設けられている」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,引用文献1,2に記載された発明ではなく,また,当業者であっても,引用発明1と引用文献2,3に記載された技術的事項,あるいは,引用発明2と引用文献1,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3.本願発明7,8について 本願発明7は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明8は,本願発明7を減縮した発明であり,いずれも,本願発明1の「第1領域は,前記第1絶縁膜表面に,前記ゲート電極から離間して設けられている」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,引用文献1,2に記載された発明ではなく,また,当業者であっても,引用発明1と引用文献2,3に記載された技術的事項,あるいは,引用発明2と引用文献1,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4.本願発明9,10について 本願発明9,10は,本願発明1に対応する物の発明であって,本願発明1の「半導体装置」を,それぞれ「トランジスタ」として含む「電源装置」及び「高周波増幅器」に係る発明であり,いずれも,本願発明1の「第1領域は,前記第1絶縁膜表面に,前記ゲート電極から離間して設けられている」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明1と引用文献2,3に記載された技術的事項,あるいは,引用発明2と引用文献1,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定は,請求項1ないし8について,上記引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり,請求項1,3ないし8について,上記引用文献2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し,さらに,請求項1ないし11について上記引用文献1ないし3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 しかしながら,平成30年3月22日付け手続補正により補正された請求項1ないし10は,いずれも「第1領域は,前記第1絶縁膜表面に,前記ゲート電極から離間して設けられている」という事項に対応する構成を有するものとなっており,上記のとおり,本願発明1ないし10は,上記引用文献1,2に記載された発明ではなく,また,上記引用文献1,2に記載された発明及び上記引用文献1ないし3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 1.特許法第36条第6項第2号について (1)当審では,「請求項6の記載は,記載内容が整合しておらず不明瞭である。すなわち,請求項6は,『前記第1領域は,前記第1絶縁膜の表面側の前記第2部分の下方の領域を含む領域に設けられ』るものであって,かつ,前記『第2部分』は,『ゲート電極は,・・・前記ソース電極側及び前記ドレイン電極側へ延び,かつ,前記第1絶縁膜の表面に接するように設けられた第2部分とを有し』と特定するから,請求項6において,ゲート電極は,第1領域に接するように設けられているものと解される。他方,当該請求項6が,直接又は間接に引用する請求項1は,『前記第1領域は,前記ゲート電極から離間した絶縁膜表面に設けられている』と特定する。そして,これら二つの発明特定事項は,両立することができない。したがって,請求項6に係る発明を理解することができない。」との拒絶の理由を通知しているが,平成30年3月22日付けの補正において,補正前の請求項6が削除された結果,この拒絶の理由は解消した。 (2)当審では,「請求項1,8,10及び11の『前記第1領域は,前記ゲート電極から離間した絶縁膜表面に設けられている』は,不明瞭な記載である。すなわち,当該『絶縁膜』と,『第1絶縁膜』との関係が明確でない。また,当該記載が,本願の図13に示すような,『ゲート電極』が,『絶縁膜表面』から『離間』しており,かつ,『第1領域』が,このような『絶縁膜表面』に設けられることを特定しているのか,本願の図1に示すような,前記第1領域は,前記第1絶縁膜表面に,前記ゲート電極から離間して設けられていることを特定しているのか,明確でない。」との拒絶の理由を通知しているが,平成30年3月22日付けの補正において,補正前の当該各請求項の「前記第1領域は,前記ゲート電極から離間した絶縁膜表面に設けられている」が,「前記第1領域は,前記第1絶縁膜表面に,前記ゲート電極から離間して設けられている」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり,本願発明1-10は,引用文献1ないし2に記載された発明ではなく,また,当業者が引用発明1,2及び引用文献1ないし3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。

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2017-009873

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