特許拒絶査定不服審判
2017-009229
車両
- 審判番号
- 2017-009229
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-151499外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年06月23日
- 審決日
- 2018年07月30日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】トヨタ自動車株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人深見特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (B60K) / P18 .537-WY (B60K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-151499「車両」拒絶査定不服審判事件〔平成27年2月2日出願公開、特開2015-20651、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年7月22日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年10月21日付け:拒絶理由通知書
平成28年12月19日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年5月23日付け :拒絶査定
平成29年6月23日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年3月12日付け :拒絶理由通知書
平成30年4月17日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、平成30年4月17日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
エンジンおよびモータジェネレータの少なくとも一方の出力で走行可能であり、前記エンジンおよび前記モータジェネレータの双方の出力を用いて走行するハイブリッド走行と、前記エンジンを停止して前記モータジェネレータの出力を用いて走行するモータ走行との切り替えが可能な車両であって、
前記モータジェネレータとの間で電力を授受可能な蓄電装置と、
前記蓄電装置の蓄電量を保持する保持モードを要求する信号をユーザの操作に応じて出力する保持スイッチと、
前記蓄電量を制御可能な制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記保持スイッチの出力信号に応じて前記保持モードに切換えられた際に、前記蓄電量がしきい値よりも多いときは前記蓄電量を現在の値に保持するための第1保持制御を行ない、前記蓄電量が前記しきい値よりも少ないときは前記蓄電量を現在の値よりも大きい第1目標値まで回復させるための第2保持制御を行ない、
前記第1目標値は、前記保持モードが解除された後、前記モータ走行により所定の距離走行可能な蓄電量であり、
前記第2保持制御は、前記蓄電量が前記第1目標値に回復するまで前記モータ走行への切り替えを禁止する制御を含む、車両。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第2保持制御を行なう際、前記車両の運動エネルギを用いて前記モータジェネレータで回生発電することを許容し、前記エンジンの出力を用いて前記モータジェネレータで発電することを禁止する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記車両は、前記蓄電量を回復させる回復モードを要求する信号をユーザの操作に応じて出力する回復スイッチをさらに備え、
前記制御装置は、前記回復スイッチの出力信号に応じて前記回復モードで前記蓄電量を制御する場合、前記蓄電量を前記第1目標値よりも大きい第2目標値まで回復させるための回復制御を行なう、請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記第1保持制御は、前記保持モードでなくかつ前記回復モードでない通常モードが設定されている時よりも前記モータ走行への切り替えを制限する制御を含み、
前記回復制御は、前記蓄電量が前記第2目標値に達するまで前記モータ走行への切り替えを禁止する制御を含む、請求項3に記載の車両。」
(下線は、請求人による補正箇所を示す。)
第3 引用文献、引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された国際公開第2011/161814号(以下「引用文献1」という。)には、「電動車両およびその制御方法」に関して、図面(特に、図1及び図6参照。)とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)
ア 「【0040】
ハイブリッド車5の走行時において、動力分割機構22は、エンジン18の作動によって発生する駆動力を二分割し、その一方をモータジェネレータMG1側へ配分するとともに、残部をモータジェネレータMG2へ配分する。動力分割機構22からモータジェネレータMG1側へ配分された駆動力は、発電動作に用いられる。一方、モータジェネレータMG2側へ配分された駆動力は、モータジェネレータMG2で発生した駆動力と合成されて、駆動輪24Fの駆動に使用される。
【0041】
このように、ハイブリッド車5では、エンジン18を停止してモータジェネレータMG2の出力のみを用いた車両走行(以下、「モータ走行」とも称する)と、エンジン18を作動させてエンジン18およびモータジェネレータMG2の両方の出力を用いた車両走行(以下、「ハイブリッド走行」とも称する)とを選択できる。
【0042】
再び図1を参照して、ハイブリッド車5は、電力制御ユニット20をさらに備える。電力制御ユニット20は、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2と、蓄電装置10との間で双方向に電力変換可能に構成される。電力制御ユニット20は、コンバータ(CONV)6と、モータジェネレータMG1およびMG2にそれぞれ対応付けられたインバータ(INV1)8-1およびインバータ(INV2)8-2とを含む。」
イ 「【0044】
インバータ8-1およびインバータ8-2は、正母線MPLおよび負母線MNLの直流電力と、モータジェネレータMG1およびMG2に入出力される交流電力との間の双方向の電力変換を実行する。主として、インバータ8-1は、制御装置100からのスイッチング指令PWM1に応じて、モータジェネレータMG1で発生する交流電力を直流電力に変換し、正母線MPLおよび負母線MNLへ供給する。一方、インバータ8-2は、制御装置100からのスイッチング指令PWM2に応じて、正母線MPLおよび負母線MNLを介して供給される直流電力を交流電力に変換して、モータジェネレータMG2へ供給する。すなわち、ハイブリッド車5において、モータジェネレータMG2は、蓄電装置10からの電力を受けて車両駆動力を発生するように構成される。また、モータジェネレータMG1は、エンジン18の出力によって蓄電装置10の充電電力を発生するように構成される。」
ウ 「【0069】
図6を参照して、ハイブリッド車5は、車両走行開始時(時刻t1)には、蓄電装置10はSOC上限値Smaxの近傍まで外部充電されている。イグニッションスイッチがオンされてハイブリッド車5の走行が開示されると、SOC推定値(♯SOC)がモード判定値Sthよりも高いため、EVモードが選択される。なお、各タイミングでの、SOC制御範囲は、制御下限値SOCl~制御上限値SOCuの範囲である。制御下限値SOClおよび制御上限値SOCuの中間値が、制御中心値SOCrである。上述のように、SOCが制御範囲よりも低下すると、車両走行中の蓄電装置10の充電が要求される。
【0070】
EVモードでの走行によって、蓄電装置10のSOCは徐々に低下する。EVモードの間は、SOC制御範囲の制御中心値SOCrは、現時点のSOC推定値(♯SOC)に対応して設定される。すなわち、EVモードでは、SOCの低下に伴ってSOC制御範囲も低下することになる。この結果、EVモードの間は、蓄電装置10の充電を目的としてエンジン18が始動されることはない。
【0071】
そして、SOC推定値(♯SOC)が、モード判定値Sthまで低下すると(時刻t2)、走行モードはEVモードからHVモードに移行する。HVモードに移行すると、制御中心値SOCrは、HVモード用の一定値に設定される。これにより、制御下限値SOClも一定に維持される。この結果、HVモードでは、SOCが低下すると、エンジン18(図1)が作動を開始して、モータジェネレータMG1による発電電力によって蓄電装置10が充電される。この結果、SOCは増加し始めて、SOC制御範囲内(SOCl~SOCu)に維持される。
【0072】
なお、EVモード中(♯SOC>Sth)に選択スイッチ26の操作によって、強制的にHVモードが選択された場合には、その時点でのSOCを維持するように、蓄電装置10の充放電が制御される。すなわち、制御中心値SOCrを、選択スイッチ26の操作時におけるSOC推定値(♯SOC)に固定するように、SOC制御範囲が設定される。」
上記アないしウ並びに図1及び図6の図示内容を総合すると、引用文献1には、「ハイブリッド車5」に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
〔引用発明〕
「エンジン18並びにモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2の出力で走行可能であり、前記エンジン18並びに前記モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2の両方の出力を用いて走行するハイブリッド走行と、前記エンジン18を停止して前記モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2の出力を用いて走行するモータ走行との選択が可能なハイブリッド車5であって、
前記モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2との間で双方向に電力変換可能な蓄電装置10と、
HVモードを選択する選択スイッチ26と、
SOCを制御可能な制御装置100とを備え、
前記制御装置100は、前記選択スイッチ26の操作によってHVモードが選択された場合に、その時点でのSOCを維持するための制御を行なう、ハイブリッド車5。」
第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「エンジン18」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明における「エンジン」に相当し、以下同様に、「モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2」は「モータジェネレータ」に、「両方」は「双方」に、「ハイブリッド走行」は「ハイブリッド走行」に、「モータ走行」は「モータ走行」に、「選択」は「切り替え」に、「ハイブリッド車5」は「車両」に、「双方向に電力変換可能」は「電力を授受可能」に、「蓄電装置10」は「蓄電装置」に、「SOC」は「蓄電量」に、「制御装置100」は「制御装置」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「エンジン18並びにモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2の出力で走行可能であり」は、本願発明1における「エンジンおよびモータジェネレータの少なくとも一方の出力で走行可能であり」に、相当する。
引用発明における「HVモードを選択する選択スイッチ26」と、本願発明1における「前記蓄電装置の蓄電量を保持する保持モードを要求する信号をユーザの操作に応じて出力する保持スイッチ」とは、「信号をユーザの操作に応じて出力するスイッチ」という限りにおいて一致する。
引用発明における「選択スイッチ26の操作によってHVモードが選択された場合」と、本願発明1における「保持スイッチの出力信号に応じて前記保持モードに切換えられた際」とは、「スイッチの出力信号に応じて切換えられた際」という限りにおいて一致する。
引用発明における「その時点でのSOCを維持するための制御」と、本願発明1における「前記蓄電量がしきい値よりも多いときは前記蓄電量を現在の値に保持するための第1保持制御」とは、「蓄電量を現在の値に保持するための制御」という限りにおいて一致する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。
〔一致点〕
「エンジンおよびモータジェネレータの少なくとも一方の出力で走行可能であり、前記エンジンおよび前記モータジェネレータの双方の出力を用いて走行するハイブリッド走行と、前記エンジンを停止して前記モータジェネレータの出力を用いて走行するモータ走行との切り替えが可能な車両であって、
前記モータジェネレータとの間で電力を授受可能な蓄電装置と、
信号をユーザの操作に応じて出力するスイッチと、
蓄電量を制御可能な制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記スイッチの出力信号に応じて切換えられた際に、蓄電量を現在の値に保持するための制御を行なう、車両。」
〔相違点〕
本願発明1は、「前記蓄電装置の蓄電量を保持する保持モードを要求する」「保持スイッチ」を備え、「前記制御装置は、前記保持スイッチの出力信号に応じて前記保持モードに切換えられた際に、前記蓄電量がしきい値よりも多いときは前記蓄電量を現在の値に保持するための第1保持制御を行ない、前記蓄電量が前記しきい値よりも少ないときは前記蓄電量を現在の値よりも大きい第1目標値まで回復させるための第2保持制御を行ない、
前記第1目標値は、前記保持モードが解除された後、前記モータ走行により所定の距離走行可能な蓄電量であり、
前記第2保持制御は、前記蓄電量が前記第1目標値に回復するまで前記モータ走行への切り替えを禁止する制御を含む」のに対して、
引用発明は、「HVモードを選択する選択スイッチ26」を備え、「前記制御装置100は、前記選択スイッチ26の操作によってHVモードが選択された場合に、その時点でのSOCを維持するための制御を行なう」点。
(2)判断
上記相違点について検討する。
本願発明1は、「SOC保持モードに切り替えた時のSOCが低いときにそのSOCをそのまま保持してしまうと、その後に電力を使用する際に電力が不足する可能性がある」(本願明細書、段落【0005】)ことを課題とし、当該課題を解決するために、「前記保持スイッチの出力信号に応じて前記保持モードに切換えられた際に、前記蓄電量がしきい値よりも多いときは前記蓄電量を現在の値に保持するための第1保持制御を行ない、前記蓄電量が前記しきい値よりも少ないときは前記蓄電量を現在の値よりも大きい第1目標値まで回復させるための第2保持制御を行な」うものである。
他方、引用発明は、「HVモードが選択された場合に、その時点でのSOCを維持するための制御を行う」ものであり、蓄電装置の蓄電量(SOC)を保持(維持)する点で本願発明1と共通するものの、HVモードが選択された時の蓄電量が低い場合の技術的課題を解決するものではない。また、本願発明1の上記課題は当業者にとって自明ないし周知でもない。
そうすると、引用発明において、本願発明1の上記課題を解決するために、当業者の通常の創作能力の範囲内で、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項とする動機付けは見出せない。
また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2011-131829号公報(以下「引用文献2」という。)、特開2003-235108号公報(以下「引用文献3」という。)及び 特開2011-230662号公報(以下「引用文献4」という。)には、上記課題を開示又は示唆する記載はない。
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明2ないし4について
本願の特許請求の範囲における請求項2ないし4は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して記載されたものであるから、本願発明2ないし4は、本願発明1の発明特定事項をすべて含むものである。
したがって、本願発明2ないし4は、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1について引用文献1に基いて、請求項2について引用文献1及び2に基いて、請求項3について引用文献1ないし3に基いて、請求項4及び5について引用文献1ないし4に基いて、それぞれその発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成30年4月17日の手続補正により補正がされた請求項1ないし4は、「前記保持スイッチの出力信号に応じて前記保持モードに切換えられた際に、前記蓄電量がしきい値よりも多いときは前記蓄電量を現在の値に保持するための第1保持制御を行ない、前記蓄電量が前記しきい値よりも少ないときは前記蓄電量を現在の値よりも大きい第1目標値まで回復させるための第2保持制御を行な」うという発明特定事項を有するものであるから、上記「第4」で検討したとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1ないし4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第6 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第1号について
(1)当審では、発明の詳細な説明には、ユーザが保持モードに切り替えた際に、第1保持制御又は第2保持制御を開始することのみが記載されていると認められ、あらゆるタイミングで第1保持制御又は第2保持制御を開始するものまで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないとの拒絶の理由を通知したが、平成30年4月17日の手続補正により補正がされ、第1保持制御又は第2保持制御を開始するタイミングを、「前記保持スイッチの出力信号に応じて前記保持モードに切換えられた際」とされた結果、この拒絶理由は解消した。
(2)請求項4について通知した拒絶の理由は、平成30年4月17日の手続補正により、補正前の請求項4が削除された結果、この拒絶理由は解消した。
2 特許法第36条第6項第2号について
請求項4について通知した拒絶の理由は、平成30年4月17日の手続補正により、補正前の請求項4が削除された結果、この拒絶理由は解消した。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし4は、いずれも、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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