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特許拒絶査定不服審判

2017-008704

電動工具

審判番号
2017-008704
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-136235外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年06月14日
審決日
2018年12月10日
公報発行日
2019年03月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (B25F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-136235「電動工具」拒絶査定不服審判事件〔平成27年1月19日出願公開、特開2015-9316〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成25年6月28日の特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 平成27年12月15日  :審査請求 平成28年 9月15日付け:拒絶理由通知 平成29年 1月23日  :意見書及び手続補正書の提出 同   年 1月24日付け:却下理由通知 同   年 2月17日  :弁明書の提出 同   年 4月 4日付け:手続却下処分 同   年 4月21日付け:拒絶査定 同   年 6月14日  :審判請求書、手続補正書の提出 平成30年 7月30日付け:拒絶理由通知 同   年 8月22日  :応対記録 同   年 9月27日  :意見書及び手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出 第2 本願発明 本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本件補正発明」という。)は、以下のとおりである。 「  【請求項1】 ブラシレスモータによって駆動される交流式電動工具であって、 前記ブラシレスモータの出力を制御する複数のスイッチング素子を一体化した回路素子であるインテリジェントパワーモジュールと、 前記ブラシレスモータの回転子の回転位置を検出する磁気センサと、 スイッチレバーの操作に基づくスイッチ本体からのスイッチ操作信号、並びに前記磁気センサからの検出信号を受けて、前記インテリジェントパワーモジュールに制御信号を供給する制御回路と、 商用電源からの交流電流を整流回路により全波整流して直流電流に変換し、前記スイッチング素子を介して前記ブラシレスモータに供給する電源回路とを備え、 前記磁気センサは、前記ブラシレスモータに取り付けられたセンサ回路基板に搭載されており、 前記インテリジェントパワーモジュールは、前記ブラシレスモータから分離され、且つ前記センサ回路基板とは別のIPM回路基板に搭載されており、 前記電源回路から前記スイッチング素子に直流電流を供給する陰陽両極間には、サージ電流吸収用のコンデンサが接続されていることを特徴とする交流式電動工具。 【請求項2】 請求項1において、 前記電源回路及び前記コンデンサは、前記IPM回路基板に搭載されていることを特徴とする交流式電動工具。 【請求項3】 請求項2において、 前記制御回路は、前記IPM回路基板に搭載されていることを特徴とする交流式電動工具。 【請求項4】 請求項1又は2において、 前記IPM回路基板の一面には、前記インテリジェントパワーモジュールが搭載され、前記IPM回路基板の他面には、前記整流回路が搭載されていることを特徴とする交流式電動工具。 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかにおいて、 前記インテリジェントパワーモジュールは、前記ブラシレスモータを起動させるための前記スイッチ本体と、前記電源回路を商用電源に接続するための電源コードとの間に配置されていることを特徴とする交流式電動工具。」 第3 拒絶の理由 平成30年7月30日付けで当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。 本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1ないし4に記載された発明及び事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2012-139749号公報 引用文献2:特表2012-528565号公報 引用文献3:特開2006-333587号公報 引用文献4:米国特許公開第2012/0074878号明細書 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 引用文献1には、以下の事項が記載されている。(ただし、下線は当審で付与したものである。) (1)「【0032】 以下、本発明の電動工具の一例として、本発明の実施の形態によるインパクトドライバ1の構成について、図1から図13に基づき説明する。 【0033】 図1に示すように、インパクトドライバ1は、ハウジング2と、モータ3と、ギヤ機構4と、ハンマ5と、アンビル6と、ライト7と、制御部8と、電源コード9と、から主に構成されている。 ・・・(中略)・・・ 【0037】 基板収容部25には、制御部8が収容されており、電源コード9が下方に延出している。基板収容部25は、アンビル6から先端工具10が突出する方向(前方)に突出する突出部25Aを有している。突出部25Aのハンドル部24側の面(上面)には、後述の打撃力表示パネル81が設けられている。 【0038】 モータ3は、ブラシレスモータであって、前後方向に延びる出力軸31と、出力軸31に固定され複数の永久磁石を有するロータ32と、ロータ32を囲むように配置され複数のコイル33を備えるステータ34と、出力軸31に固定された冷却ファン35と、を有する。詳細なモータ3の構成は後述する。」 (2)「【0047】 モータ3とハウジング2に形成された吸気口23aとの間(モータ3の後側)には、インバータ回路基板39が上下方向に延びるように配置されている。図7A~7Cに示すように、インバータ回路基板39上には、コイル33に供給する電力を制御する略直方体の6つのスイッチング素子39Aが、長手方向が出力軸31の軸方向と平行になるように配置されている。インバータ回路基板39の略中央部分には、出力軸31が貫通する貫通穴39aが形成されている。インバータ回路基板39のスイッチング素子39Aが設けられている側とは反対側の面(モータ側の面)には、ロータ32の位置を検出するための3つのホール素子39Bが60°の間隔を隔てて配置されている。図7B及び7Cにおける配線に示された矢印は、電気の流れを示している。つまり、図7Bであれば、インバータ回路基板39にはスイッチ機構27から電力が供給されていることを示している。図3Bに示すように、スイッチング素子39Aは、出力軸31の軸方向視において吸気口23aと重複するような位置に設けられている。」 (3)「【0053】 制御回路基板82は、基板収容部25内であって、ハンドル部24に最も近い位置に配置されている(図1)。また、打撃力表示パネル81は制御回路基板82の直上に位置している。図11A、Bに示すように、制御回路基板82は、ハンマ5とアンビル6との衝突回数検出のためのショックセンサー82Aと、インパクトドライバ1全体を制御するマイクロコンピュータ82Bと、打撃力表示パネル81に対応したパネル制御部82Cとを備えている。パネル制御部82Cは、複数のボタンとLEDとを備えており、各素子の配置が打撃力表示パネル81における各ボタン及び表示部の配置(図10)と対応している。制御回路基板82は、絶縁のために表面がシリコンで覆われている。図13に示すように、マイクロコンピュータ82Bは、スイッチ機構27と接続されており、スイッチ機構27から入力されたトリガ26の引き代に応じてモータ3の回転数を制御している。具体的には、ホール素子39Bからの信号を受信して、インバータ回路基板39のスイッチング素子39Aを駆動するためのPWM(Pulse Width Modulation)制御信号をインバータ回路基板39のスイッチング素子39Aに出力している。 【0054】 電源回路基板83は、基板収容部25内であって電源コード9と制御回路基板82との間に配置されている(図1)。電源回路基板83は、図12A及び12Bに示すように、電源コード9から供給される交流電源を全波整流するためのダイオードブリッジ83Aと、電源コード9から供給されるAC100V電源から発生するノイズを除去するためのチョークコイル83Bと、スイッチング素子39Bによって発生するノイズを除去するための第1コンデンサ83Cと(図13)、全波整流された電流を平滑化するための第2コンデンサ83Dと、制御回路基板82に供給する電源を作るためのIPD素子83Eと、を備えている。図12A及び12Bにおける配線に示された矢印は、電気の流れを示している。電源回路基板83は、断面形状が略C字状の上方が開放した容器84に外表面を覆われており、容器84はウレタンで満たされている。つまり、電源回路基板83及び電源回路基板83上の各素子は、ウレタンによって固定されていると同時に絶縁、防振、防水されている。容器84はウレタンで満たされていることにより、他の基板と比較すると重くなっている。 【0055】 ダイオードブリッジ83Aは、直方体であってその長手方向が電源回路基板83と平行になるように電源回路基板83上に配置されている。これにより、基板収容部25内に占める電源回路基板83のスペースを最小限に抑えることができる。チョークコイル83B及び第1コンデンサ83Cは、他の素子と比較するとその体積及び重量が大きくなっており、ハンドル部24に収容されている(図1)。本実施の形態では、ハンドル部24の温度上昇を防止するために、第1コンデンサ83Cは発熱しにくいフィルムコンデンサを採用している。インパクトドライバ1では、作業者が把持するハンドル部24の一端側(上側)にモータ3やギヤ機構4などの金属製の部材を配置し、他端(下側)に基板の中でも重量のある電源回路基板83及び制御回路基板82を配置し、ハンドル部24内の基板収容部25側寄りの位置に重い素子であるチョークコイル83B及び第1コンデンサ83Cを配置してインパクトドライバ1全体の重量バランスを良好に保っている。具体的には、作業者が把持するハンドル部24の直上に重心が位置するように各部材が配置されている。 【0056】 電源コード9から供給された交流100V電源は、ダイオードブリッジ83Aによって整流された後に一部はIPD素子83Eによって18Vまで降圧されて制御回路基板82に駆動用電源として供給される。残りは、モータ3駆動用電源として140Vまで昇圧されて、スイッチ機構27を介してインバータ回路基板39に供給される。ハウジング2内では、下から上に向かって電源コード9、電源回路基板83、制御回路基板82、スイッチ機構27、インバータ回路基板39の順番で収容されている。このように、電源コード9からモータ3までの電気の流れとハウジング2内の各部材の配置とが一致していることから、各基板間の配線を効率的に行うことができる。」 (3)「【0061】 このような構成によると、電源コード9からの電力は電源回路基板83によって直流電源に変換されて制御回路基板82に供給されており、電源コード9、電源回路基板83、制御回路基板82の順番で基板収容部25内に収容されているため、電力が供給される順番通りに配置されている。これにより、基板収容部内25の配線を最小限に抑えることができ、基板収容部25内のスペースを有効に活用することができる。さらに、基板収容部25を小型化することが可能となる。さらに、作業者が把持するハンドル部24の一端側に重量のあるモータ3やギヤ機構4などが配置され、他端側にも比較的質量の大きい素子を備える電源回路基板83や制御回路基板82を配置したことにより、作業者がハンドル部24を把持した際の重量バランスが良好となって、長時間作業時の作業でも疲れにくいインパクトドライバ1を実現することができる。 【0062】 このような構成によると、制御回路基板82にはマイクロコンピュータ82Bが搭載されているため、マイクロコンピュータ82Bによってモータ3の回転数を制御することが可能となり、状況に応じて打撃力の強さを変更することができる。」 2 引用発明 したがって、引用文献1には、段落【0032】に記載のように電動工具の一例としてインパクトドライバを構成する場合として、以下の発明が記載されている。(以下「引用発明」という。) 「ブラシレスモータによって駆動される交流100Vを電源とする電動工具であって、 インバータ回路基板39上に配置された6つのスイッチング素子39Aと、 前記ブラシレスモータのロータ32の位置を検出するための3つのホール素子39Bと、 制御回路基板82と、 電源回路基板83とを備え、 スイッチ機構27のトリガ26からの引き代、並びに前記ホール素子39Bからの信号は、各々前記制御回路基板82のマイクロコンピュータ82Bに入力され、 前記交流100V電源は、前記電源回路基板83上のダイオードブリッジ83Aによって整流して、モータ3駆動用電源として140Vまで昇圧されて、前記インバータ回路基板39へ供給され、 前記スイッチング素子39Aを制御するPWM制御信号がマイクロコンピュータ82Bにて制御されてモータへの電力量の調整が行われることで前記ブラシレスモータの回転数が制御され、 前記ホール素子39B及び前記スイッチング素子39Aは、モータ3とハウジング2に形成された吸気口23aとの間(モータ3の後側)におかれた前記インバータ回路基板39の表裏に搭載されており、 前記電源回路基板83には、スイッチング素子39Bによって発生するノイズを除去するための第1コンデンサ83Cが前記ダイオードブリッジ83Aの交流電源入力側に接続されている、電動工具。」 3 引用文献2の記載 引用文献2には、【0025】-【0026】に、DCモータに対して3相PWM制御を行うコントローラと、該モータの3相PWM用のパワードライバとしてセミクロン社の6個入りIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)モジュール20とを備えることが記載されている。 4 引用文献4の記載 引用文献4は電動工具に関する発明であって、該文献4には、FIG.1の図示及び[0020]に記載されているとおり、ハウジング組立体(housing assembly)102の上部にモータ組立体104が位置し、FIG.1でハンドル(handle)112の部分に位置する制御ユニット(control unit)106は、[0025]及び[0028]に記載され、FIG.2Bに図示されているように、スマートパワーモジュール("SPM", also referred to as intelligent power module)822が配置されていることが記載されている。 第5 対比 本件補正発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。 引用発明の「交流100Vを電源とする電動工具」は、本件補正発明の「交流式電動工具」に相当する。 以下、同様に、 「6つのスイッチング素子39A」は「複数のスイッチング素子」に、「前記ブラシレスモータのロータ32の位置を検出するための3つのホール素子39B」は「前記ブラシレスモータの回転子の回転位置を検出する磁気センサ」に、各々相当する。 また、引用発明の「制御回路基板82」上の「マイクロコンピュータ82B」は、「前記スイッチング素子39Aを制御するPWM制御信号がマイクロコンピュータ82Bにて制御され」かつ「スイッチ機構27のトリガ26からの引き代、並びに前記ホール素子39Bからの信号は、各々前記制御回路基板82のマイクロコンピュータ82Bに入力され」るものであるから、本件補正発明の「制御回路」に相当し、 同様に、 引用発明の「電源回路基板83」上の「ダイオードブリッジ83A」や「第2コンデンサ83D」で組まれる回路は、100V交流を整流・平滑化する回路を構成することでモータ駆動用直流電流を得るものとされるから、本件補正発明の「電源回路」に相当する。 更に、引用発明の「前記ホール素子39B」が「モータ3とハウジング2に形成された吸気口23aとの間(モータ3の後側)におかれた前記インバータ回路基板39」に「搭載されて」いることは、当該インバータ回路基板39の他面にスイッチング素子が搭載されている点を除き、本件補正発明の「前記磁気センサは、前記ブラシレスモータに取り付けられたセンサ回路基板に搭載されて」いることに相当する。 そうすると、本件補正発明と引用発明は、以下の構成において一致する。 「ブラシレスモータによって駆動される交流式電動工具であって、 前記ブラシレスモータの出力を制御する複数のスイッチング素子と、 前記ブラシレスモータの回転子の回転位置を検出する磁気センサと、 スイッチレバーの操作に基づくスイッチ本体からのスイッチ操作信号、並びに前記磁気センサからの検出信号を受けて、前記複数のスイッチング素子に制御信号を供給する制御回路と、 商用電源からの交流電流を整流回路により全波整流して直流電流に変換し、前記スイッチング素子を介して前記ブラシレスモータに供給する電源回路とを備え、 前記磁気センサは、前記ブラシレスモータに取り付けられた回路基板に搭載されており、 前記電源回路には、サージ電流吸収用のコンデンサが接続されていることを特徴とする交流式電動工具。」 また、本件補正発明と引用発明は、以下の点で相違する。 1 相違点1 「複数のスイッチング素子」について、本件補正発明は、「複数のスイッチング素子を一体化した回路素子であるインテリジェントパワーモジュール」として電動工具が備えるとし、当該モジュールは「前記インテリジェントパワーモジュールは、前記ブラシレスモータから分離され、且つ前記センサ回路基板とは別のIPM回路基板に搭載されており」としているのに対して、引用発明は、複数のスイッチング素子は備えるものの、一体化されてインテリジェントパワーモジュールとして備えているかは明らかでなく、「6つのスイッチング素子39A」が搭載される基板の位置についても、「モータ3の後側」におかれた「インバータ回路基板39」に搭載されている点。 2 相違点2 「サージ電流吸収用のコンデンサ」の接続について,本件補正発明は、「前記電源回路から前記スイッチング素子に直流電流を供給する陰陽両極間」としているのに対して、引用発明は「前記ダイオードブリッジ83Aの交流電源入力側」としている点。 第6 判断 1 相違点1について 複数のスイッチング素子の形態として、三相インバータ回路用として一体化したモジュールの仕様を採用することは、当審が通知した拒絶の理由に引用された引用文献2の記載に見られるとおり、本願の出願日前に周知技術であった。 また、電動工具でのホール素子搭載基板やスイッチング素子搭載基板の扱いについて、ホール素子搭載基板のみモータ近傍に配置し、スイッチング素子搭載基板をホール素子搭載基板と分離するとした設計配置は、同じく当審が通知した拒絶の理由に引用された引用文献4の記載に見られるとおり、本願の出願日前に周知技術であった。 したがって、引用発明において、6つのスイッチング素子を一体化した公知のモジュール仕様とすること、及び、6つのスイッチング素子を搭載する基板の設計配置を、モータ近傍に置かれるホール素子用基板とは分離した公知の別基板への搭載とすることは、引用文献1の記載の範囲内で、具体の仕様や設計配置として当業者に周知の上記周知技術を適用することによって、当業者が容易にできたことである。 2 相違点2について スイッチング素子のスイッチング動作に伴い発生するサージ対策として、直流電源線の陰陽両極間にコンデンサを接続することは、本願の出願日前に周知技術であった。(要すれば、特開平4-87594号公報の第3図中のサージ吸収用コンデンサ2や、特開平2-30448号公報の第7図中のサージ吸収用コンデンサCを参照。) したがって、引用発明において、例えば図13の回路図の電源回路基板83とインバータ回路基板39とが接続されている交流-直流変換後の直流電源線の陰陽両極間に、当業者に周知のサージ吸収用コンデンサを接続することは、求められるサージ対策の程度等に応じて当業者が容易にできたことである。 3 効果について 発明の効果に関して、請求人は平成30年7月31日に提出した意見書の「4.本願発明と引用文献との対比」にて、以下のアないしエの効果が本件補正発明にはある旨述べている。 ア.「電動工具のブラシレスモータの駆動回路をインテリジェントパワーモジュール(以下、IPMという)により構成しています。それにより駆動回路の電動工具内における搭載面積を抑制しています。」 イ.「電動工具において大きな発熱源であるブラシレスモータと、駆動回路としてのIPMとを電動工具内で互いに分離配置しています。この様に分離配置することにより、まず、ブラシレスモータとIPMとの間接的な接触に伴う熱の双方向への移動が行われる事がありません。従って、ブラシレスモータとIPMとを個々に放熱させて放熱性を良好にしています。また、センサ回路基板と、IPM回路基板は別のものになっています。このため、回路基板を介した熱の双方向への移動が行われる事がありません。」 ウ.「一方、IPMではスイッチング動作のサージ電流に伴うノイズ電波が発生する問題もあり、IPMがブラシレスモータから離れていて、それらの間が電線にて接続されていると、その電線からノイズ電波が外部に放出されてしまう可能性が高まります。そこで、本願発明では、IPMのスイッチング動作に伴うサージ電流を吸収するコンデンサをIPMの陰陽両極間に接続して対策しています。」 エ.「センサ回路基板に、もしも駆動回路を搭載してしまうと、ブラシレスモータ部が非常に大きくなってしまう事になります。このような事があり、IPM回路基板をセンサ回路基板から離間する様に構成しております。この様にすれば、IPM回路基板についての配置を様々と工夫することができる様になります。 実際に出願人の製品で、IPMを使用した電動工具の製造・販売をしている物があります。この製品では、センサ回路基板から離間したIPM回路基板を有しております。本願発明は、この様に、コンパクト化に寄与する有益なものです。」 これらの諸効果について検討したが、アは周知技術として挙げた引用文献2のモジュール化されたスイッチング素子にも小型化が当然期待できるし、イも周知技術として挙げた引用文献4の分離設計でも当然に期待できる効果と考えられ、ウも周知技術の回路構成が同一であることから当然に期待される効果といえるし、エも引用文献4の[0024]に「The location of the control unit 106 also reduces the overall length of the tool as compared to configuration where location of control unit is behind or in the vicinity of the motor 104.」(制御部106の位置はまた、制御部がモータ104の背後あるいは近傍に配置されたものと比較して工具全体の長さを減少させる。)として開示された効果に他ならない。 よって、上記相違点1及び2に係る構成による効果は、いずれも周知技術から自明な効果、あるいは周知技術として掲載した文献に記載された効果そのものであり、いずれも新規あるいは予測不能な効果を呈するものではない。 4 請求人の主張について 請求人は、当審が通知した拒絶理由に対して提出した意見書の「4.本願発明と引用文献との対比」において、 「補正後の請求項1の発明(以下、本願発明という)は、電動工具のブラシレスモータの駆動回路をインテリジェントパワーモジュール(以下、IPMという)により構成しています。それにより駆動回路の電動工具内における搭載面積を抑制しています。ところで、駆動回路にIPMを使用した場合でも駆動回路としての発熱対策が必要であることは変わりありません。そこで、本願発明では、電動工具において大きな発熱源であるブラシレスモータと、駆動回路としてのIPMとを電動工具内で互いに分離配置しています。この様に分離配置することにより、まず、ブラシレスモータとIPMとの間接的な接触に伴う熱の双方向への移動が行われる事がありません。従って、ブラシレスモータとIPMとを個々に放熱させて放熱性を良好にしています。また、センサ回路基板と、IPM回路基板は別のものになっています。このため、回路基板を介した熱の双方向への移動が行われる事がありません。 一方、IPMではスイッチング動作のサージ電流に伴うノイズ電波が発生する問題もあり、IPMがブラシレスモータから離れていて、それらの間が電線にて接続されていると、その電線からノイズ電波が外部に放出されてしまう可能性が高まります。そこで、本願発明では、IPMのスイッチング動作に伴うサージ電流を吸収するコンデンサをIPMの陰陽両極間に接続して対策しています。 また、電動工具は、様々な場所で使用され得ますので、その外形の大きさは、常に気にされるものです。今回、IPMの使用により駆動回路が比較的小さくなったとはいえ、その大きさはそれ相応のものがあります。 ブラシレスモータのセンサ回路基板は、おおよそ、そのステータの外径程度の大きさを有する事が多いです。このようなセンサ回路基板に、もしも駆動回路を搭載してしまうと、ブラシレスモータ部が非常に大きくなってしまう事になります。このような事があり、IPM回路基板をセンサ回路基板から離間する様に構成しております。この様にすれば、IPM回路基板についての配置を様々と工夫することができる様になります。 実際に出願人の製品で、IPMを使用した電動工具の製造・販売をしている物があります。この製品では、センサ回路基板から離間したIPM回路基板を有しております。本願発明は、この様に、コンパクト化に寄与する有益なものです。 これに対し、各引用文献には、本願発明の上述の課題、並びに上述の解決手段が開示されておりません。」 と主張する。 しかしながら、上述の各相違点及び効果に関する判断で示したとおりであるから、請求人の主張は採用できない。 また、相違点2に関して、平成30年8月21日にFAXにて(8月22日の応対記録参照)「一般的に、平滑用コンデンサ・・・不適です。」と主張している。 しかしながら、明細書には「整流回路32aの出力端にはコンデンサ34が接続され、IPM38にサージ電圧が印加されるのを防止している。」と記載されているものの、図面に記載された「コンデンサ34」は、その大きさや形状からして、当業者であれば「アルミ電解コンデンサ」と認識できるものであるし、上記意見書に記載された「その電線からノイズ電波が外部に放出されてしまう可能性」については、明細書に記載されていない。 また、「ノイズ電波が外部に放出され」る課題については、引用文献1にも「スイッチング素子39Bによって発生するノイズを除去するための第1コンデンサ83C」と記載されていることから、引用発明においてもサージ対策は行われているのであるから、当該主張は採用できない。 第7 むすび 以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2017-008704

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