特許拒絶査定不服審判
2017-008153
希土類ガーネット・シンチレータおよびその製造方法
- 審判番号
- 2017-008153
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-086181外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年06月06日
- 審決日
- 2018年06月26日
- 公報発行日
- 2018年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
- 【請求人代理人】荒川 聡志
- 分類
- P18 .536-WZ (C09K) / P18 .537-WZ (C09K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013- 86181「希土類ガーネット・シンチレータおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月 7日出願公開、特開2013-227575〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、平成25年4月17日(パリ条約による優先権主張 2012年(平成24年)4月17日 米国(US))の出願であって、平成28年4月11日に手続補正書が提出され、平成28年10月14日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月17日に意見書及び手続補正書が提出され、同年1月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月6日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同時に手続補正がされ、同年7月3日付けで前置報告がされ、同年11月21日付けで、当審により、拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成30年2月28日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1~請求項13に係る発明(以下、項番号に対応して、「本願発明1」などといい、これらをまとめて「本願発明」という。)は、平成30年2月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~請求項13に記載された事項により特定されるところ、その請求項1には、次のように記載されている。
「ガーネット構造を伴う発光物質であって、
ガドリニウム、イットリウム、セリウム、ガリウム、およびアルミニウムを含み、
前記発光物質は、(Gd1-x-y-zYxAyCez)3+u(Ga1-m-nAlmDn)5-uO12:wFOで表され、
Aはルテチウム、ランタン、テルビウム、ジスプロシウム、またはそれらの組み合わせであり、
Dはインジウム、スカンジウム、またはそれらの組み合わせであり、
Fはカルシウムの二価イオンであり、
0<x<0.2、0<y<0.5、0.001<z<0.05、0<u<0.1、0<n<0.2、0.3<m<0.6、およびw=50ppm(質量)であり、y/x>1である発光物質。」
3.当審拒絶理由
当審拒絶理由の要旨は、概ね次のものを含む。
「(サポート要件)本願発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が本願発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいうことはできず、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(実施可能要件)発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものではなく、この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」
4.当審の判断
(1)特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)についての検討
本願発明1が特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たすかどうかを、いわゆる大合議判決(平成17年(行ケ)10042号、知財高裁平成17年11月11日判決)の観点、すなわち、「特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か」に照らして、検討する。
ア まず、本願発明の課題について検討する。
(ア)本願明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある(下線は当審が付与した。「・・・」は中略を表す)。
「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は一般的に、X線検出用のシンチレータ、より詳細には、高性能の希土類ガーネット・シンチレータ組成物、およびその製造方法に関する。」
「【0007】
シンチレータの材料特性は、シンチレータの具体的な化学組成に基づいて大きく変化する。これらの特性には、シンチレータ効率、主減衰時間、残光、ヒステリシス、発光スペクトル、X線阻止能、および放射線損傷に対する耐性が含まれる。発光体の効率とは、吸収された励起放射のエネルギーのうち、冷光として放出される割合である。励起放射が終了すると、シンチレータからの発光出力は、2段階で減少する。これらの段階の第1は、フル発光出力から、低いが通常は非ゼロの値への急速な減衰であり、この値における減衰勾配は、実質的により遅い減衰レートへと変化する。この低い強度(通常は、長い減衰時間の発光)は、残光として知られている。具体的には、残光は、X線励起が止まってから100ミリ秒後にシンチレータから放出される光強度であり、シンチレータが放射線によって励起される間に放出される光の割合として発表されている。残光はバックグラウンド発光強度であり、光検出器出力に対するノイズ寄与である。ある場合には、残光は不純物の存在によって増加し、別の場合には、残光は不純物の存在によって減少する。
【0008】
最初の急速な減衰は、主減衰または主速度として知られている。・・・CTシステムの走査時間(CTシステムが観察下の対象を走査して対象のスライスの画像を取得するのに必要な時間)は、シンチレータの主減衰時間のおよそ1,000倍である。・・・したがって、CT走査時間を短くするためには、シンチレータ減衰時間を短くする必要がある。・・・したがって、減衰時間の測定可能な比率減少が、現在の世代のセラミック・シンチレータが示すものからわずかでも生じた場合には、明らかな改善であろう。・・・
【0009】
シンチレータに対する別の重要な考慮すべき事柄は、シンチレータを高エネルギー放射線に繰り返して暴露したときにシンチレータ上に生じる損傷を減らすことである。・・・シンチレータにおける放射線損傷の特徴は、放射線に長期に渡って暴露されたことに伴う、光出力の変化および/またはシンチレータ・ボディの色彩の暗化である。放射線損傷は、前の走査からの「ゴースト像」をもたらす可能性があり、その結果、画像解像度が低下する。・・・
【0010】
また、CTスキャナなどのシステムにおいては、シンチレータはX線阻止能が高いことが望ましい。X線阻止能とは、材料の放射線を吸収する能力(一般に、減衰または吸収と言われる)を指す。材料の阻止能が高いと、通過する放射線がほとんどないかまたはまったくない。X線阻止能と、高品質の患者画像を得るために必要な患者放射線量とは反比例する関係にあるため、シンチレータのX線阻止能が高ければ、発光体中の入射X線を実質的にすべて吸収することができ、CT画像を得るために患者が浴びなければならないX線量を最小限にすることができる。また、必要なシンチレータ材料の量が少なくなるため、阻止能はやはり高い方が好ましい。・・・
【0011】
また、典型的な医療用および工業用の放射線撮影用途においては、シンチレータは、フォトダイオードによって検出される電磁スペクトルの領域において、X線放射(または他の高エネルギー放射線)を光放射に変換する効率的な変換器でなければならない。本明細書で用いる場合、用語「光出力」は、X線パルスによって励起された後に個々のシンチレータ素子から放出される可視光の量である。
【0012】
したがって、シンチレータ材料として、減衰時間が短く(走査時間を最小限にする)、残光が少なく、光出力が高く、高エネルギー放射線(シンチレータを必要とする用途で通常用いられる)に繰り返してさらされた際に示す損傷が小さく(測定値の再現性を高める)、X線阻止能が高いものを開発することが求められている。また、製造に対する費用対効果の高いシンチレータを開発することが求められている。
【0013】
前述したように、シンチレータの特性は、シンチレータの材料組成に基づいて大きく変化する。したがって、ある希土類元素を別のものに置換することまたはシンチレータの組成物中のある元素の濃度をわずかに変化させることでさえ、シンチレータの性能に対して著しい影響をもたらす可能性がある。ある元素の組み合わせがどのようにシンチレータ性能に影響するのかを特定する研究が行われているが、具体的な元素が、正確にどのようにまたはどのような理由で相互作用してシンチレータ性能に影響を与えるのかは、十分には分かっていない。そのため、従来技術では、シンチレータの結果として生じる特性を、化学組成だけから正確に予測することはできない。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、残光が少なく、効率が改善され、放射線下の安定性が高く、望ましいX線阻止能を有するシンチレータを開発することが望ましいであろう。」
(イ)本願発明の課題(本願発明が解決しようとする課題)について
上記(ア)から、X線検出用のシンチレータ(【0001】)(以下、単に「シンチレータ」という。)において、励起放射が終了すると、シンチレータからの発光出力は、2段階で減少するところ(【0007】)、最初の急速な減衰は、主減衰または主速度として知られており、CTシステムの走査時間は、シンチレータの主減衰時間のおよそ1,000倍であるから、CT走査時間を短くするためにはシンチレータ減衰時間を短くする必要があり(【0008】)、この最初の急速な減衰の減衰勾配は、実質的により遅い減衰レートへと変化し、この低い強度(通常は、長い減衰時間の発光)は、残光として知られていて、この残光は、X線励起が止まってから100ミリ秒後にシンチレータから放出される光強度であって、X線バックグラウンド発光強度であり、光検出器出力に対するノイズ寄与であるから(【0007】)、残光は少なくする必要がある(【0012】、【0015】)ことが理解できる。
また、上記(ア)から、該シンチレータは、吸収された励起放射のエネルギーのうち、冷光として放出される割合である効率(【0007】)を改善すること(【0015】)、高エネルギー放射線に繰り返して暴露したときに生じる損傷を減らすこと(【0009】)、及び、X線阻止能が高いこと(【0010】)が望ましいことも理解できる。
そうすると、本願発明の課題は、端的に言えば、【0015】に記載されているように、残光が少なく、効率が改善され、放射線下の安定性が高く、望ましいX線阻止能を有するシンチレータを提供することであるといえる。
イ これに対し、本願の請求項1には、上記「2.」で記載したように、次のように記載されている。
「ガーネット構造を伴う発光物質であって、
ガドリニウム、イットリウム、セリウム、ガリウム、およびアルミニウムを含み、
前記発光物質は、(Gd1-x-y-zYxAyCez)3+u(Ga1-m-nAlmDn)5-uO12:wFOで表され、
Aはルテチウム、ランタン、テルビウム、ジスプロシウム、またはそれらの組み合わせであり、
Dはインジウム、スカンジウム、またはそれらの組み合わせであり、
Fはカルシウムの二価イオンであり、
0<x<0.2、0<y<0.5、0.001<z<0.05、0<u<0.1、0<n<0.2、0.3<m<0.6、およびw=50ppm(質量)であり、y/x>1である発光物質。」
ウ そして、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の課題を解決することが確認された、本願発明1に含まれるシンチレータに用いられる発光物質についての具体例は見出すことができず、しかも、本願発明1に係る発光物質が、残光、効率、放射線下の安定性、及び、X線阻止能について、具体的にどの程度のものとなるのかについては、発明の詳細な説明に何ら記載されていない。
また、本願の発明の詳細な説明には、「シンチレータの材料特性は、シンチレータの具体的な化学組成に基づいて大きく変化する。」(【0007】)、「ある希土類元素を別のものに置換することまたはシンチレータの組成物中のある元素の濃度をわずかに変化させることでさえ、シンチレータの性能に対して著しい影響をもたらす可能性がある。・・・具体的な元素が、正確にどのようにまたはどのような理由で相互作用してシンチレータ性能に影響を与えるのかは、十分には分かっていない」(【0013】)と記載されているところ、技術常識に照らせば、シンチレータに使用される発光物質の物性に関し、発光物質が、どの程度の、残光、効率、放射線下の安定性、及び、X線阻止能を有するものであるかは、それらが、発光物質の組成のみならず、その結晶の状態にも影響されるものであることから、発光物質に含まれる個々の物質を増減した場合の発光物質の物性が変化する傾向についてある程度の予測できるとしても、特定の組成の発光物質の具体的な、組成、製造例、物性測定例等が全て示されない限り、その残光、効率、放射線下の安定性、及び、X線阻止能等の物性は、予測することは困難であることは明らかである。
そうすると、本願発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が本願発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいうことはできず、本願の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
エ 次に、特許出願時において、具体例の開示がなくとも、発明の詳細な説明に、本願発明1が、本願発明の課題を解決できることを当業者が理解できる程度に記載されているかどうかについて、念のため、検討しておく。
事案に鑑み、発明の詳細な説明の記載から、本願発明1は、「効率が改善され」、「放射線下の安定性が高」いシンチレータであると認識できるかどうかについて、まず、検討する。
(ア)明細書の記載について
本願明細書の発明の詳細な説明には次の記載がある。
なお、「効率」について、「発光体の効率とは、吸収された励起放射のエネルギーのうち、冷光として放出される割合である。」(【0007】)という記載があり、「光出力」について、「用語『光出力』は、X線パルスによって励起された後に個々のシンチレータ素子から放出される可視光の量である。」(【0011】)という記載があって、「発光体」から放出される「冷光」とは、「シンチレータ素子から放出される可視光」のことを意味することは明らかであるから、以下の【0031】等に記載される「光出力」が低下することは、効率が改善されないことと解される。
「【0031】
イットリウム、ルテチウム、ジスプロシウム、および/またはテルビウムがシンチレータ組成物に含まれることによって、立方晶ガーネット構造の安定性が、ガドリニウム・シンチレータの場合よりも向上する。ガドリニウムは、イオン半径がイットリウム、ルテチウム、ジスプロシウム、またはテルビウムよりも大きく、ペロブスカイト構造(GdAlO3)を助長する傾向がある。シンチレータ組成物中のペロブスカイト相が多すぎると、望ましくないシンチレータ特性の原因となる。たとえば、透明度の低下、光散乱による光出力の低下、および材料均一性の低下である。イオン半径が小さい1または複数の元素(たとえば、イットリウム、ルテチウム、テルビウム、またはジスプロシウム)を添加することによって、ガーネット構造の維持および安定化に役立つ。」
(イ)検討
本願明細書の【0031】には、「ガドリニウムは、イオン半径がイットリウム、ルテチウム、ジスプロシウム、またはテルビウムよりも大きく、ペロブスカイト構造(GdAlO3)を助長する傾向がある。シンチレータ組成物中のペロブスカイト相が多すぎると、望ましくないシンチレータ特性の原因となる。たとえば、透明度の低下、光散乱による光出力の低下、および材料均一性の低下である。」と記載され、ガドリニウムが多く含まれると、ペロブスカイト相が多すぎるものとなって、「透明度の低下、光散乱による光出力の低下、および材料均一性の低下」を招くことが記載されている。
そして、本願発明1において、該「発光物質」に含まれるガドリニウムの原子の個数は、「(1-x-y-z)」で表され、x、y、zの、それぞれのとり得る値の範囲は、「0<x<0.2、0<y<0.5、0.001<z<0.05、及び、y/x>1」と規定されており、「(1-x-y-z)」のとり得る値の範囲は、x、y、zの上限値〔順に、0.2、0.5、0.05;(1-x-y-z)の値は、0.25〕及び下限値〔順に、0、0、0.001;(1-x-y-z)の値は、0.999〕から、0.25<(1-x-y-z)<0.999と求められ、本願発明1は、ガドリニウムの原子の個数が多いものも含むといえる。
これに対し、発明の詳細な説明には、ペロブスカイト構造(GdAlO3)を助長するガドリニウムがどの程度の個数より少なければ、すなわち、「(1-x-y-z)」がどの値より小さければ、シンチレータ組成物中のペロブスカイト相が多すぎないものとなって、「透明度の低下、光散乱による光出力の低下、および材料均一性の低下」を招かないものとなるのかについては記載されていない。
そうすると、本願発明1は、ガドリニウムによって、「透明度の低下、光散乱による光出力の低下、および材料均一性の低下」を招くものを排除しているとは認めることができない。
さらに、同【0031】には、「イオン半径が小さい1または複数の元素(たとえば、イットリウム、ルテチウム、テルビウム、またはジスプロシウム)を添加することによって、ガーネット構造の維持および安定化に役立つ。」という記載があるところ、本願発明1における「A」として、ランタンを選択した場合、「ルテチウム、テルビウム、ジスプロシウム」のいずれも含まないものとなり、ここで、「ランタン」のイオン半径は、ガドリニウムに比べて小さいとはいえないものであるから、本願発明1に含まれる「発光物質」について、発明の詳細な説明からは、ガーネット構造が維持され、安定化されたものであることを認識できない。
また、本願発明1に係る発光物質は、一般的なYAGガーネット構造に対して、ガドリニウム、A(ルテチウム、ランタン、テルビウム、ジスプロシウム、またはそれらの組み合わせ)、D(インジウム、スカンジウム、またはそれらの組み合わせ)の3元素の置き換え、及び、F(カルシウムの二価イオン)のドープを必須としたものであって、このような元素の置き換えやドープがなされているYAGガーネット構造は、置き換えやドープがなされていないYAGガーネット構造のものと比べて結晶構造が異なり、一般的なYAGガーネット構造のものと同様な特性を有するとはいえないことから、シンチレータとしての最低限の使用に耐える特性を有していることが自明であるとはいえない。
したがって、本願発明1は、効率が改善され、安定性が高いシンチレータとはいえないものも含むといえ、発明の詳細な説明の記載からは、本願発明の課題を解決することを認識できない。
オ まとめ
以上のことから、本願発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が本願発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいうことはできず、本願の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(2)特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)について
上述したように、発明の詳細な説明には、本願発明1に関する具体的な実施例が記載されておらず、また、特定の組成の発光物質の物性を予測することは困難であるから、発明の詳細な説明の記載に基づき、本願発明の課題を解決できるような(所期の効果を奏するような)、発光物質に含まれる物質の各々の具体的な含有量を決定することは、当業者に過度の試行錯誤を要求するものといえる。
したがって、発明の詳細な説明は、当業者が本願発明1を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものであるとは認められず、本願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
5.むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本願発明1について、本願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-008153