特許拒絶査定不服審判
2017-006245
仮想空間を提供する方法、プログラム、および記録媒体
- 審判番号
- 2017-006245
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-093196外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年04月28日
- 審決日
- 2018年02月13日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社コロプラ
- 【請求人代理人】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
- 分類
- P18 .121-WY (G06T)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016- 93196「仮想空間を提供する方法、プログラム、および記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月 9日出願公開、特開2017-201477、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成28年5月6日の出願であって、平成28年10月27日付けで拒絶理由が通知され、平成28年12月16日付けで手続補正がなされたが、平成29年1月27日付けで、拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、これに対し、平成29年4月28日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。
第2 原査定の概要
原査定の概要は次の通りである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 1-7
・引用文献等 1-4
引用文献等一覧
1.特開2015-95045号公報 (周知技術を示す文献)
2.特開2014-203153号公報 (周知技術を示す文献)
3.特開2011-128220号公報 (周知技術を示す文献)
4.特許5869177号公報
第3 本願発明
本願の請求項1-7に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、平成29年4月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)を装着したユーザに仮想空間を提供する方法であって、
基準座標系における前記HMDに対する仮想カメラの相対的な傾きまたは前記基準座標系に対する前記仮想空間の空間座標系の相対的な傾きを、前記仮想空間において再生されるコンテンツに予め規定される傾き補正値に応じて異ならせた状態で、前記仮想空間における前記仮想カメラの向きに応じた視界画像を生成するステップと、
前記視界画像を前記HMDに表示させるステップとを有する、方法。
【請求項2】
前記基準座標系に平行な前記空間座標系を有する前記仮想空間を規定するステップと、
前記仮想空間に前記仮想カメラを配置するステップと、
前記コンテンツに予め規定される傾き補正値に基づき、前記仮想カメラを前記基準座標系において前記HMDに対して相対的に傾けることによって、前記仮想空間における前記仮想カメラの向きを設定するステップとを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンテンツに予め規定される傾き補正値に基づき、前記基準座標系に対して相対的に傾いた前記空間座標系を有する前記仮想空間を規定するステップと、
前記仮想空間に前記仮想カメラを配置するステップと、
前記基準座標系における前記仮想カメラの傾きを前記HMDの傾きに一致させることによって、前記仮想空間における前記仮想カメラの向きを設定するステップとを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記仮想カメラの向きを設定するステップにおいて、水平方向に対する前記HMDの傾きが前記傾き補正値に一致する場合、前記仮想カメラの向きを、前記仮想空間におけるXZ平面に対して平行に設定する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記ユーザの基準視線を特定するステップと、
前記基準視線に基づいて、前記仮想カメラの向きを更新すると共に、視界領域を特定するステップと、
前記視界領域に基づいて、前記視界画像を更新するステップとをさらに有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法の各ステップを、コンピュータに実行させるプログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。」
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献4について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4(特許5869177号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。
a 「【0009】
(項目1) ユーザが没入する仮想空間をヘッドマウント・ディスプレイに提供する方法であって、前記ユーザが没入する仮想空間を構成する仮想空間画像のうち、前記ユーザが視認する視野画像を生成する視野画像計算ステップと、前記視野画像が更新される過渡期に前記ユーザが視認する画像を生成する過渡期画像生成ステップと、前記視野画像および前記過渡期画像を前記ヘッドマウント・ディスプレイに表示させる表示ステップと、を含み、前記過渡期画像生成ステップは、前記ヘッドマウント・ディスプレイの動きと同期して前記視野画像を更新する第一視野画像更新ステップと、前記ヘッドマウント・ディスプレイの動きと同期せずに、前記視野画像を更新する第二視野画像更新ステップと、を含み、前記第二視野画像更新ステップは、前記視野画像が更新される過渡期に前記ユーザが視認する画像として、前記ユーザが視認する情報量を低減させる過渡期画像を生成することを含む、方法。」
b 「【0016】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、仮想空間は3次元仮想空間としているが、必ずしもそれに限られる必要はない。
また、図中、同一の構成要素には同一の符号を付してある。
図1は、本発明を適用するHMDを用いたシステムの構成の概要を示す図である。
図1に示すように、HMDシステム100は、HMD110、制御回路部120、動きセンサとしてのポジション・トラッキング・カメラ(位置センサ)130および/またはセンサ114、並びに外部コントローラ140を備える。
【0017】
HMD110は、ディスプレイ112、センサ114およびヘッドフォン116を具備する。なお、HMD110にヘッドフォン116を設けずに、HMD110とは独立したスピーカやヘッドフォンを用いてよい。
【0018】
ディスプレイ112は、HMDの装着者の視野を完全に覆うよう構成された非透過型の表示装置を備え、HMDの装着者はディスプレイ112に表示される画面のみを観察することができる。そして、HMD110を装着した装着者は、外界の視野を全て失うため、制御回路部120において実行されるアプリケーションにより表示される仮想空間に完全に没入する。」
c 「【0024】
仮想カメラ300は、HMD110の動きに基づいて制御される。具体的には、ユーザが視認する視野は仮想カメラの視軸によって定義され、当該視軸がHMD110のZ軸方向に対応するように、現実空間におけるHMD110の動きとVR空間における仮想カメラの動きが対応付けられる。また、ユーザが視認する視野はHMD110の動きに基づかずに制御されてもよく、例えば、外部コントローラ140への入力によって制御される。なお、VR空間を用いているコンテンツによっては、HMD110の動き、外部コントローラ140への入力が無い状態で、自動的に仮想カメラ300が仮想空間内で動く場合もある。」
d 「【0027】
本実施形態においては、VR空間における仮想カメラが動くことに対応して視野画像を更新する。このとき、HMD110の動きと仮想カメラ300の動きを同期させる場合と、HMD110の動きと仮想カメラの動きを同期させないときで、視野画像を更新する手法を異ならせる。後者の場合には、仮想カメラ300をA地点からB地点へと移動させる過渡期に、HMD110の装着者が視認する情報量を抑える過渡期画像を生成しつつ、視野画像を更新する。」
e 「【0031】
なお、VR空間を用いているコンテンツによっては、仮想カメラ300の移動を規定する入力によらず、自動的に仮想カメラ300が仮想空間内で動く場合もある。この場合、当該入力によらず移動後の仮想カメラの新たな位置、方向を計算し、上記視野画像計算ステップが実行される。」
f 「【0038】
このような過渡期画像は仮想カメラ300が仮想空間内で、以下の動きをした場合に生成されることが好ましい。
・Z軸方向に移動した場合
・Z軸を軸としたロール角について回転する動きをした場合
生成された仮想カメラ300の移動先の視野画像および過渡期画像は、HMD110に送られてディスプレイ112で表示される(ステップS508:画像表示ステップ)。これにより、第一視野画像更新ステップS506が実行された場合には、過渡期画像を表示すること無く視野画像が更新され、第二視野画像更新ステップS507が実行された場合には、過渡期画像を表示しつつ視野画像を更新する。これにより、HMD110の動きに同期せずに視野画像を更新する場合に、ユーザが頭部の動きに同期しない過渡期画像を視認したとしても、当該過渡期画像からユーザが認識する情報量が低下されるため、映像酔いを起こしにくくすることができる。」
上記a~d、fより、引用文献4には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献4の記載箇所を示す。)。
「HMD110を装着したユーザが没入する仮想空間をヘッドマウント・ディスプレイに提供する方法であって(【0009】、【0018】)、
HMD110は、ディスプレイ112を具備し(【0017】)、
ユーザが視認する視野は仮想カメラの視軸によって定義され、当該視軸がHMD110のZ軸方向に対応するように、現実空間におけるHMD110の動きとVR空間における仮想カメラの動きが対応付けられ(【0024】)、VR空間における仮想カメラが動くことに対応して視野画像を更新し(【0027】)、
生成された仮想カメラ300の移動先の視野画像は、HMD110に送られてディスプレイ112で表示される(【0038】)、方法。」
2 引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(特開2015-95045号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0041】
図5は、ヘッドマウントディスプレイ100に表示されるパノラマ画像500を説明する図である。パノラマ画像500に対して、ユーザが左前方を向いている場合、ヘッドマウントディスプレイ100aの方向で画角150aの範囲にある画像510aが表示され、ユーザが首を回して右前方を向いている場合、ヘッドマウントディスプレイ100bの方向で画角150bの範囲にある画像510bが表示される。
【0042】
このように頭部の動きに応じてヘッドマウントディスプレイ100に表示されるパノラマ画像を見る視点と視線方向も変わるため、パノラマ画像に対する没入感を高めることができる。」
3 引用文献2について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2(特開2014-203153号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0082】
また、加速度センサ16や電子コンパス17により、表示部11の傾きや表示の向きに関する情報を更に取得し、演算処理部15は、傾きや表示の向きに関する情報に更に基づいて、AR画像50を表示させているので、表示部11が例えば光学透過ヘッドマウントディスプレイ装置など、使用者が装着するような機器の場合に、その表示部11の向きにある電子機器30に対応する接続情報や付加情報を表示させることができる。」
4 引用文献3について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3(特開2011-128220号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0051】
図8-1は、HMD10を装着したユーザUと、現実空間に存在するテーブルTとの関係を示す図である。同図において、符号DはユーザUの視線方向を表し、テーブルTの机上に向けられているとする。ここで、テーブルTの机上の所定位置に、花瓶を表す仮想オブジェクトを配置することが配置管理テーブル232の配置位置に定義されていたとすると、上述した情報提示処理により、ユーザUの眼前に図8-2に示すような花瓶を表す仮想オブジェクトOB11が提示されることになる。また、テーブルTの机上の所定位置に、キーボードを表す仮想オブジェクトを配置することが配置管理テーブル232に定義されていたとすると、上述した情報提示処理により、ユーザUの眼前に図8-3に示すようなキーボードを表す仮想オブジェクトOB12が提示されることになる。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明は、「ユーザが没入する仮想空間をヘッドマウント・ディスプレイに提供する」ので、「ユーザ」に「仮想空間」を提供しているといえ、引用発明の「HMD110を装着したユーザが没入する仮想空間をヘッドマウント・ディスプレイに提供する方法」は、本願発明1の「ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)を装着したユーザに仮想空間を提供する方法」に相当する。
イ 引用発明は、「ユーザが視認する視野は仮想カメラの視軸によって定義され、当該視軸がHMD110のZ軸方向に対応するように、現実空間におけるHMD110の動きとVR空間における仮想カメラの動きが対応付けられ」ているので、引用発明は、「仮想カメラ」の向き(視軸)に応じてユーザが視認する「視野」が形成されている。
そして、引用発明に「生成された仮想カメラ300の移動先の視野画像」とあるので、引用発明の「仮想カメラが動くことに対応して視野画像を更新」することとは、仮想カメラの向きに応じた視野画像を生成することである。
したがって、引用発明の「VR空間における仮想カメラが動くことに対応して視野画像を更新し」と、本願発明1の「基準座標系における前記HMDに対する仮想カメラの相対的な傾きまたは前記基準座標系に対する前記仮想空間の空間座標系の相対的な傾きを、前記仮想空間において再生されるコンテンツに予め規定される傾き補正値に応じて異ならせた状態で、前記仮想空間における前記仮想カメラの向きに応じた視界画像を生成するステップ」とは、「前記仮想空間における仮想カメラの向きに応じた視界画像を生成するステップ」である点で共通する。
ウ 引用発明の「生成された仮想カメラ300の移動先の視野画像は、HMD110に送られてディスプレイ112で表示される」ことは、本願発明の「前記視界画像を前記HMDに表示させるステップ」に相当する。
すると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)を装着したユーザに仮想空間を提供する方法であって、
前記仮想空間における仮想カメラの向きに応じた視界画像を生成するステップと、
前記視界画像を前記HMDに表示させるステップとを有する、方法。」
(相違点)
仮想空間における仮想カメラの向きに応じた視界画像を生成するステップが、本願発明1は、「基準座標系における前記HMDに対する仮想カメラの相対的な傾きまたは前記基準座標系に対する前記仮想空間の空間座標系の相対的な傾きを、前記仮想空間において再生されるコンテンツに予め規定される傾き補正値に応じて異ならせた状態」で行われるのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(2)判断
上記相違点について検討する。
引用文献4には、VR空間を用いているコンテンツによっては、仮想カメラ300の移動を規定する入力によらず、自動的に仮想カメラ300が仮想空間内で動く場合が例示されているが(上記「第4 1 e(段落【0031】)」)、
仮想カメラ300の相対的な傾きまたは仮想空間の空間座標系の相対的な傾きを、VR空間において再生されるコンテンツに予め規定される傾き補正値に応じて異ならせた状態で、VR空間における仮想カメラ300が動くことに対応して視野画像を更新することは記載されていない。
また、引用文献1-3にも、仮想カメラの相対的な傾きまたは仮想空間の空間座標系の相対的な傾きを、仮想空間において再生されるコンテンツに予め規定される傾き補正値に応じて異ならせた状態で、前記仮想空間における前記仮想カメラの向きに応じた視界画像を生成することは記載されておらず、かつ、周知な事項であるともいえない。
したがって、引用発明の「HMD110を装着したユーザが没入する仮想空間をヘッドマウント・ディスプレイに提供する方法」において、上記相違点に係る本願発明1の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本願発明1は、引用発明、引用文献1-3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明2-7について
本願発明1を直接または間接的に引用する本願発明2-7は、本願発明1をさらに限定した発明であるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明、引用文献1-3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-7は、上記相違点に係る「基準座標系における前記HMDに対する仮想カメラの相対的な傾きまたは前記基準座標系に対する前記仮想空間の空間座標系の相対的な傾きを、前記仮想空間において再生されるコンテンツに予め規定される傾き補正値に応じて異ならせた状態で、前記仮想空間における前記仮想カメラの向きに応じた視界画像を生成するステップ」という構成を有するものとなっており、引用発明、引用文献1-3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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