特許拒絶査定不服審判
2017-005290
盗難自己検知システム、利用者端末、盗難自己検知方法、及びプログラム
- 審判番号
- 2017-005290
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-018636外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年04月13日
- 審決日
- 2018年05月24日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (G06F) / P18 .536-WY (G06F) / P18 .537-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013- 18636「盗難自己検知システム、利用者端末、盗難自己検知方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月21日出願公開、特開2014-149729、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成25年2月1日の出願であって,平成28年10月25日付けで拒絶理由通知がされ,平成28年12月21日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,平成29年1月11日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成29年4月13日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,平成30年1月29日付けで拒絶理由通知がされ,平成30年3月20日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。
第2 本願発明
本願請求項1-12に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明12」という。)は,平成30年3月20付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1-12は以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
シンクライアントシステムの利用者端末と,
前記利用者端末に対して認証を行う認証サーバと
を含み,
前記利用者端末は,自機の起動時に,自機の位置を確認し,事前に登録されたエリア外に自機があると認識すると起動を中止し,事前に登録されたエリア内に自機があると認識すると前記認証サーバへの接続を試み,前記認証サーバに接続できないと起動を中止し,自機が使用状態である時に,自機の移動を検知した場合,自己判断にて異常と判断し,異常時の処置として事前に登録されたサーバに端末のデータの送信を行い,前記利用者端末に割り当てられたサーバ上の仮想デスクトップを消去する
盗難自己検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の盗難自己検知システムであって,
前記利用者端末は,前記異常時の処置として,前記利用者端末をロックして,ユーザ認証を行い,正常に認証された場合,前記利用者端末のロックを解除し,正常に認証されなかった場合,前記利用者端末の内部のデータを消去する
盗難自己検知システム。
【請求項3】
請求項1に記載の盗難自己検知システムであって,
前記利用者端末は,前記異常時の処置として,前記利用者端末の停止又は再起動を行う
盗難自己検知システム。
【請求項4】
請求項1に記載の盗難自己検知システムであって,
前記利用者端末は,前記異常時の処置として,前記認証サーバに接続できるか確認し,前記認証サーバに接続できない場合,前記利用者端末の停止又は再起動を行う
盗難自己検知システム。
【請求項5】
請求項1に記載の盗難自己検知システムであって,
前記利用者端末は,前記異常時の処置として,事前に登録されたエリア内に自機があるか確認し,事前に登録されたエリア内に自機がない場合,前記利用者端末の停止又は再起動を行う
盗難自己検知システム。
【請求項6】
自機の起動時に,自機の位置を確認し,事前に登録されたエリア外に自機があると認識すると起動を中止する手段と,
前記エリア内に自機があると認識すると認証サーバへの接続を試み,前記認証サーバに接続できないと起動を中止する手段と,
自機が使用状態である時に,自機の移動を検知した場合,自己判断にて異常と判断し,異常時の処置として事前に登録されたサーバに端末のデータの送信を行い,自機に割り当てられたサーバ上の仮想デスクトップを消去する手段と
を具備する
シンクライアントシステムの利用者端末。
【請求項7】
請求項6に記載の利用者端末であって,
前記異常時の処置を行う手段は,前記利用者端末をロックして,ユーザ認証を行い,正常に認証された場合,前記利用者端末のロックを解除し,正常に認証されなかった場合,前記利用者端末の内部のデータを消去する
利用者端末。
【請求項8】
請求項6に記載の利用者端末であって,
前記異常時の処置を行う手段は,前記利用者端末の停止又は再起動を行う
利用者端末。
【請求項9】
請求項6に記載の利用者端末であって,
前記異常時の処置を行う手段は,前記認証サーバに接続できるか確認し,前記認証サーバに接続できない場合,前記利用者端末の停止又は再起動を行う
利用者端末。
【請求項10】
請求項6に記載の利用者端末であって,
前記異常時の処置を行う手段は,事前に登録されたエリア内に自機があるか確認し,事前に登録されたエリア内に自機がない場合,前記利用者端末の停止又は再起動を行う
利用者端末。
【請求項11】
シンクライアントシステムの計算機により実施される盗難自己検知方法であって,
自機の起動時に,自機の位置を確認し,事前に登録されたエリア外に自機があると認識すると起動を中止することと,
前記エリア内に自機があると認識すると認証サーバへの接続を試み,前記認証サーバに接続できないと起動を中止することと,
自機が使用状態である時に,自機の移動を検知した場合,自己判断にて異常と判断し,異常時の処置として事前に登録されたサーバに端末のデータの送信を行い,自機に割り当てられたサーバ上の仮想デスクトップを消去することと
を含む
盗難自己検知方法。
【請求項12】
自機の起動時に,自機の位置を確認し,事前に登録されたエリア外に自機があると認識すると起動を中止するステップと,
前記エリア内に自機があると認識すると認証サーバへの接続を試み,前記認証サーバに接続できないと起動を中止するステップと,
自機が使用状態である時に,自機の移動を検知した場合,自己判断にて異常と判断し,異常時の処置として事前に登録されたサーバに端末のデータの送信を行い,自機に割り当てられたサーバ上の仮想デスクトップを消去するステップと
をシンクライアントシステムの計算機に実行させるための
プログラム。」
第3 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2010-160795号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同じ。)
A.「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
たとえ既存のプラットフォームが,電源オン・パスワード,スクリーンセーバー・パスワード,及びネットワークログイン・チャレンジを有する保護下にあるとしても,何らもユーザ判断の意図的でない過失からプラットフォームを保護することはできない。パスワードが盗まれ,又は捕らえられて,権限のない者がデバイスにアクセスすることを許すことがある。判断の過失の例は,無人のラップトップ型コンピュータの盗難や,ユーザが適当なパスワード保護手段を用いることを選択しないこと等に関するものである。
【0004】
本発明は,このような問題を鑑みなされたものであり,場所に基づくデータにより更なる安全性をプラットフォームに提供可能なシステム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために,本発明の実施形態に係るシステムは,不正アクセスからコンピュータプラットフォームを保護するシステムであって,ポジショニング装置からロケーションベースの情報を受け取るよう第1の無線通信装置へ結合されるホストプロセッサと,前記コンピュータプラットフォームが少なくとも前記ポジショニング装置から受け取ったロケーションベースの情報と所定のプラットフォームポリシーとに基づいて動作のために権限を付与されることを確認するようにブート中に実行されるよう構成されるファームウェアサービスと,ブート後に実行されるよう構成され,前記コンピュータプラットフォームが少なくとも前記ポジショニング装置から受け取ったロケーションベースの情報と所定のプラットフォームポリシーとに基づいて動作のために権限を付与されることを確認するよう構成されるランタイムサービスとを有する。」
B.「【0015】
図1は,本発明の実施形態に従う,場所に基づくコンポーネントを伴うプラットフォームを有する極めて高レベルのシステムを表すブロック図である。実施形態で,プラットフォーム101はRF装置103へ結合されている。RF装置103は,グローバルポジショニング衛星(GPS)システム107からロケーション情報を受け取るよう構成されてよい。他の実施形態で,例えば,プラットフォームが安全な建物内に置かれている場合に,その建物内の一部の部屋でしかプラットフォームが使用されないことが重要であることがある。従って,ロケーションは依然として重要である。この場合に,RF装置103は,建物内に置かれており且つ衛星107より限定された範囲を有する更なる局所ポジショニング装置と通信を行ってよい。いずれの場合にも,RF装置103は,ポジショニング装置からロケーションベースの情報を受け取る。
【0016】
実施例で,プラットフォーム101は,自身が既知のネットワーク109へ接続され,又はその範囲内にあるのかどうかを検出することができる。メカニズムは,プラットフォーム101が既知のネットワーク109の存在下でブーティングを行うことを確かにすることができる。すなわち,このような既知の/なじみの環境の欠如は,プラットフォーム101に,追加のユーザ105の照合を必要としうる代替のブート経路へとブートさせる。
【0017】
実施例で,プラットフォーム101は,帯域外通信111が可能な管理可能性エンジン又はマイクロプロセッサ(例えば,インテル(登録商標)・アクティブ・マネージメント・テクノロジ(IAMT))を備えられてよい。この帯域外ネットワーク接続性は,権限付与を伴わずにブートされるよう試みているシステムに関連する潜在的な安全性の問題を,遠く離れた当局に警告することができる。
【0018】
プラットフォームに基づくヒューリスティックス(heuristics)(例えば,パスワード確認によらない侵入検出,場所に基づく動作,等)を用いることによって,プラットフォーム101は,プラットフォームの使用を阻止するよう代替のブート経路を自動的に立ち上げるとともに,場合によっては,プラットフォームが権限なく使用されていることを中央の当局に警告するように,自身の動作を変更してよい。ヒューリスティックスには,ネットワーク109の検出,ポジショニング・ソース107からのロケーション,又はRFIDを有するセキュリティ装置120(例えば,権限のあるユーザを検出するためのキーフォッブ121若しくはバッジ123又はバイオメトリック読取器125)が含まれうる。他の受動的又は能動的なセキュリティ装置が使用されてよい。プラットフォームポリシーは,検出されたパラメータに基づいて,どの代替ブート経路が開始すべきかと,警告が送られるべきかどうか,又はユーザによるチャレンジが実行されるべきかどうかとを決定づける。
・・・(中略)・・・
【0021】
これと同じ解決法は様々なタイプのプラットフォームに適用可能である。移動体システムについて,共通のシナリオは,ラップトップ型コンピュータが(例えば,自動車,空港等から)盗難されたとしても,窃盗犯がシステムを使用しようとした場合に,システムが適切な近接応答識別の欠如によりブートしないことである。デスクトップ型システムについて,プラットフォームポリシーは,ユーザがユーザ自身の作業スペース若しくはオフィス又は旅行者のワークステーションエリアにあるコンピュータを操作する権限を与えられるが,他のユーザの作業領域にあるコンピュータを操作する権限は与えられないことを定めてよい。例えば,2段階のIDが利用されてよい。1つは,サーバが局所的に操作されることを可能にするアテンダント(attendant)のIDであり,一方,部屋自体にある第2のIDは,サーバが正常に動作することを可能にしてよい。第1のサーバIDの例で,アテンダントが立ち去る場合に,サーバは自動的にロックアップし,ユーザ入力を禁止してよいが,そうでない場合は,依然として動作可能なままであってよい。他のポリシーは,アテンダントが近傍から離れる場合に,サーバを他のブート経路へとリブートさせてよい。第2のIDの例で,サーバは,権限のない場所へ動かされたことを検出する場合に,動作を中止してよい。
【0022】
図2は,本発明の実施形態に従う場所センサについて基本ロジックを表す。他のプラットフォームポリシーは,潜在的な安全性の問題に係る所望の効果に基づいて使用されてよい。このロジックで,Powerrは,セキュリティ装置の検出された強さ若しくは電力,又は距離/場所の閾値を表す。例えば,キーフォッブがプラットフォームの所定範囲内で検出される場合は,Powerrは閾値より大きい。幾つかの実施形態で,Powerrは,プラットフォームが特定のロケーションの一定範囲内にあることを示す。
【0023】
実施例で,Powerrが閾値より大きく且つ識別子が正確である場合(例えば,バッジ又はキーフォッブにある識別子)は,行201に示されるように,正常な動作が許可される。Powerrが閾値より大きく且つ識別子が正確でなく(例えば,バッジ若しくはキーフォッブにある無許可の識別子,又はその欠如),更に,プラットフォームがブートしようとしている場合は,行203に示されるように,ブートは禁止され,あるいは代替のブート経路についてのみ許可されてよい。Powerrが閾値より大きく且つ識別子が正確でなく,更に,プラットフォームがプリブート(pre-boot)フェーズにない場合は,ポリシーは,行205に示されるように,セッションがロックアップされることを定めてよい(例えば,ユーザ入力若しくは出力の無効化,又はスクリーンセーバーの強制実行,等)。幾つかの場合では,シャットダウンが行われてよい。
【0024】
Powerrが閾値より小さく(例えば,範囲外又は無許可のロケーション)且つプラットフォームがプリブートフェーズを試みている場合は,ポリシーは,行207に示されるように,プラットフォームがブートすることを禁止されることを定めてよい。Powerrが閾値より小さく(例えば,範囲外又は無許可のロケーション)且つプラットフォームがプリブートフェーズにない場合は,ポリシーは,行209に示されるように,セッションがロックアップされることを定めてよい(例えば,ユーザ入力若しくは出力の無効化,又はスクリーンセーバーの強制実行,等)。幾つかの場合では,シャットダウンが行われてよい。」
C.「【0026】
図4は,本発明の実施形態に従う,プラットフォームを保護するために場所に基づく情報を使用する例となる方法を示すフロー図である。ブート処理の間,プラットフォームはブロック401で起動を開始する。ポリシーエンジンが実行されるブート中の時点は,処理がオペレーティングシステム(OS)の立ち上げ前に実行される限り,様々であってよい。言い換えると,以下で論じられる当該処理は,OSの立ち上げ前に,ファームウェア又はBIOSによって実行されてよい。ブロック403で,プラットフォームが場所に基づくセキュリティを有効にしたかどうかについての判断がされる。セキュリティ機能が有効にされていない場合は,ブロック405で,プラットフォームはターゲットへとブートする。
・・・(中略)・・・
【0031】
ブロック417で,強制的なチャレンジ応答セキュリティが有効にされているかどうかについての判断がされる。このセキュリティ対策が有効にされていない場合は,ブロック419で,ブートターゲットはOS又はアプリケーションを立ち上げてよい。セキュリティ対策が有効にされている場合は,処理はブロック421に続く。実施例で,各プラットフォームは,認可されたネットワークに知られている一意の識別子を有する。ブロック412で,プラットフォーム識別子(ID)は,要求パケットとともにネットワークへ送信されてよい。要求パケットは,単に,ネットワークに応答を求めるものであってよい。ブロック423で決定されるように応答が現れる場合は,ブロック427で,ネットワークサーバは認証してよい。ブロック429で決定されるようにIDが有効である場合は,ブロック419で,ブートターゲットは,OS又はアプリケーションを立ち上げるよう実行されてよい。」
したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「不正アクセスからコンピュータプラットフォームを保護するシステムであって,
ポジショニング装置からロケーションベースの情報を受け取るよう第1の無線通信装置へ結合されるホストプロセッサと,前記コンピュータプラットフォームが少なくとも前記ポジショニング装置から受け取ったロケーションベースの情報と所定のプラットフォームポリシーとに基づいて動作のために権限を付与されることを確認するようにブート中に実行されるよう構成されるファームウェアサービスと,ブート後に実行されるよう構成され,前記コンピュータプラットフォームが少なくとも前記ポジショニング装置から受け取ったロケーションベースの情報と所定のプラットフォームポリシーとに基づいて動作のために権限を付与されることを確認するよう構成されるランタイムサービスとを有し,
プラットフォームは,自身が既知のネットワークへ接続され,又はその範囲内にあるのかどうかを検出することができ,既知の/なじみの環境の欠如は,上記プラットフォームに,追加のユーザの照合を必要としうる代替のブート経路へとブートさせるものであり,
適用可能な様々なタイプのプラットフォームとして,ラップトップ型コンピュータである場合は,(例えば,自動車,空港等から)盗難されたとしても,窃盗犯がシステムを使用しようとした場合に,システムが適切な近接応答識別の欠如によりブートせず,また,デスクトップ型システムである場合は,プラットフォームポリシーは,ユーザがユーザ自身の作業スペース若しくはオフィス又は旅行者のワークステーションエリアにあるコンピュータを操作する権限を与えられるが,他のユーザの作業領域にあるコンピュータを操作する権限は与えられないよう定められ,
場所センサについての基本ロジックとして,セキュリティ装置の検出された強さ若しくは電力,又は距離/場所の閾値を表すPowerrに関し,キーフォッブがプラットフォームの所定範囲内で検出される場合は,Powerrは閾値より大きく,
Powerrが閾値より大きく且つ識別子が正確である場合は,正常な動作が許可され,
Powerrが閾値より大きく且つ識別子が正確でなく,更に,プラットフォームがブートしようとしている場合は,ブートは禁止され,あるいは代替のブート経路についてのみ許可され,
Powerrが閾値より大きく且つ識別子が正確でなく,更に,プラットフォームがプリブートフェーズにない場合は,セッションがロックアップされ,
Powerrが閾値より小さく,例えば,範囲外又は無許可のロケーションであり,且つプラットフォームがプリブートフェーズを試みている場合は,プラットフォームがブートすることを禁止され,
Powerrが閾値より小さく且つプラットフォームがプリブートフェーズにない場合は,セッションがロックアップされる,よう定められ,
プラットフォームが有する認可されたネットワークに知られている一意の識別子は,要求パケットとともにネットワークへ送信されるものであり,要求パケットは,ネットワークに応答を求めるものであり,応答が現れる場合は,ネットワークサーバが認証する,
システム。」
2.引用文献2について
また,原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2(特開2003-242041号公報)の段落【0039】-段落【0044】及び第3図の記載からみて,当該引用文献2には,ノート型パソコンが所定のエリア内にないことを検出すると,現使用者の認証を行い,現使用者が正規の使用者であるとの認証ができなければ,ノート型パソコンのハードディスク内のデータを消去する,という技術的事項が記載されていると認められる。
3.引用文献3について
また,原査定の拒絶の理由において引用された引用文献3(特開2012-234531号公報)の段落【0058】-段落【0059】及び第6図の記載からみて,当該引用文献3には,情報端末において,紛失または盗難が検出されると,情報端末の再起動を行う,という技術的事項が記載されていると認められる。
4.引用文献4について
また,原査定の拒絶の理由において引用された引用文献4(特開2009-109940号公報)の段落【0036】-段落【0038】及び第3図の記載からみて,当該引用文献4には,プロジェクタが所定の使用位置または使用範囲にないと判断されると,管理サーバに情報を送信し,送信が成立しない場合には,プロジェクタの機能を停止させる,という技術的事項が記載されていると認められる。
5.引用文献5について
また,原査定において引用された引用文献5(米国特許出願公開第2013/0019304号明細書)の段落【0059】-段落【0064】及びFIG.1の記載からみて,当該引用文献5には,電子デバイスが自身の盗難等による異常を検出すると,所定の連絡先に通知したり,指定のサーバにデバイス上の情報のバックアップを行ったり,デバイス上の情報を消去する,という技術的事項が記載されていると認められる。
6.引用文献6について
また,原査定において引用された引用文献6(特開2002-216099号公報)の【請求項11】,【請求項13】,段落【0005】の記載からみて,当該引用文献6には,携帯型データ記録端末において,盗難等の異常を検出すると,記録されたデータや現在の操作に関する情報を外部の送信先に転送する,という技術的事項が記載されていると認められる。
第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア.引用発明の「コンピュータプラットフォーム」は,「適用可能な様々なタイプのプラットフォームとして,ラップトップ型コンピュータである場合は,(例えば,自動車,空港等から)盗難されたとしても,窃盗犯がシステムを使用しようとした場合に,システムが適切な近接応答識別の欠如によりブートせず,また,デスクトップ型システムである場合は,プラットフォームポリシーは,ユーザがユーザ自身の作業スペース若しくはオフィス又は旅行者のワークステーションエリアにあるコンピュータを操作する権限を与えられるが,他のユーザの作業領域にあるコンピュータを操作する権限は与えられないよう定められ」るものであることから,ユーザが利用する端末であることは明らかであり,本願発明1の「利用者端末」に相当する。
イ.引用発明は,「プラットフォームが有する認可されたネットワークに知られている一意の識別子は,要求パケットとともにネットワークへ送信されるものであり,要求パケットは,ネットワークに応答を求めるものであり,応答が現れる場合は,ネットワークサーバが認証する」ものであるから,「ネットワークサーバ」は,「コンピュータプラットフォーム」を認証するものであるといえ,本願発明1の「認証サーバ」に相当する。
ウ.引用発明は,「不正アクセスからコンピュータプラットフォームを保護するシステム」であって,「プラットフォームは,自身が既知のネットワークへ接続され,又はその範囲内にあるのかどうかを検出する」ものであるところ,上記ア.のとおり,適用可能なタイプとして,「ラップトップ型コンピュータである場合は,(例えば,自動車,空港等から)盗難されたとしても,窃盗犯がシステムを使用しようとした場合に,システムが適切な近接応答識別の欠如によりブート」しないものであることから,コンピュータプラットフォームの盗難を自身で検出するものであるといえる。
そうすると,上記ア.およびイ.を踏まえれば,本願発明1である,「シンクライアントシステムの利用者端末と,前記利用者端末に対して認証を行う認証サーバとを含」む「盗難自己検知システム」と,引用発明である,「コンピュータプラットフォーム」および「ネットワークサーバ」を有する「システム」とは,“利用者端末と,前記利用者端末に対して認証を行う認証サーバとを含”む“盗難自己検知システム”である点で共通する。
エ.引用発明は,「Powerrが閾値より小さく,例えば,範囲外又は無許可のロケーションであり,且つプラットフォームがプリブートフェーズを試みている場合は,プラットフォームがブートすることを禁止され」るものであり,この場合の「プリブートフェーズを試みている場合」とは,本願発明1における「自機の起動時」に相当し,また,上記引用発明の,「Powerrが閾値より小さ」いと判断されることは,「範囲外又は無許可のロケーション」であることになるから,本願発明1の,「自機の位置を確認し,事前に登録されたエリア外に自機があると認識」されることに相当する。
そうすると,引用発明の,「Powerrが閾値より小さく,例えば,範囲外又は無許可のロケーションであり,且つプラットフォームがプリブートフェーズを試みている場合は,プラットフォームがブートすることを禁止され」ることは,本願発明1の,「前記利用者端末は,自機の起動時に,自機の位置を確認し,事前に登録されたエリア外に自機があると認識すると起動を中止」することに相当する。
オ.引用発明は,「Powerrが閾値より大きく且つ識別子が正確でなく,更に,プラットフォームがブートしようとしている場合は,ブートは禁止され,あるいは代替のブート経路についてのみ許可され」るものであり,この場合の「Powerrが閾値より大き」いと判断されることは,「キーフォッブがプラットフォームの所定範囲内で検出される場合」であることになるから,本願発明1の,「事前に登録されたエリア内に自機があると認識」されることに相当する。
また,引用発明は,上記のとおり「Powerrが閾値より大きく且つ識別子が正確でなく,更に,プラットフォームがブートしようとしている場合は,ブートは禁止され」るものであるから,「Powerrが閾値より大き」いと判断されると,「プラットフォームがブートしようとし」て,識別子をもとに認証サーバに接続を試み,その上で「識別子が正確でな」いことから,認証サーバに接続できず,「ブートは禁止され」たものと解される。
そうすると,引用発明の,「Powerrが閾値より大きく且つ識別子が正確でなく,更に,プラットフォームがブートしようとしている場合は,ブートは禁止され,あるいは代替のブート経路についてのみ許可され」ることは,本願発明1の,「事前に登録されたエリア内に自機があると認識すると前記認証サーバへの接続を試み,前記認証サーバに接続できないと起動を中止」することに相当する。
したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
(一致点)
「利用者端末と,
前記利用者端末に対して認証を行う認証サーバと
を含み,
前記利用者端末は,自機の起動時に,自機の位置を確認し,事前に登録されたエリア外に自機があると認識すると起動を中止し,事前に登録されたエリア内に自機があると認識すると前記認証サーバへの接続を試み,前記認証サーバに接続できないと起動を中止する,
盗難自己検知システム。」
(相違点)
(相違点1)
利用者端末に関し,
本願発明1は「シンクライアントシステム」の利用者端末であるのに対し,引用発明はそのような構成を備えていない点。
(相違点2)
本願発明1は「自機が使用状態である時に,自機の移動を検知した場合,自己判断にて異常と判断し,異常時の処置として事前に登録されたサーバに端末のデータの送信を行い,前記利用者端末に割り当てられたサーバ上の仮想デスクトップを消去する」という構成を備えるのに対し,
引用発明はそのような構成を備えていない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて,上記相違点2について先に検討すると,相違点2に係る本願発明1の,「自機が使用状態である時に,自機の移動を検知した場合,自己判断にて異常と判断し,異常時の処置として事前に登録されたサーバに端末のデータの送信を行い,前記利用者端末に割り当てられたサーバ上の仮想デスクトップを消去する」という構成は,上記引用文献1-6には記載されておらず,本願出願前において周知技術であるともいえない。
したがって,本願発明1は,相違点1を検討するまでもなく,当業者であっても引用発明,引用文献1-6に記載された技術的事項,および周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2-5について
本願発明2-5は,本願発明1を減縮したもので,本願発明1の「自機が使用状態である時に,自機の移動を検知した場合,自己判断にて異常と判断し,異常時の処置として事前に登録されたサーバに端末のデータの送信を行い,前記利用者端末に割り当てられたサーバ上の仮想デスクトップを消去する」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明,引用文献1-6に記載された技術的事項,および周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
3.本願発明6,11,12について
本願発明6,11,12は,本願発明1に対応する利用者端末,方法,プログラムの発明であり,本願発明1の「自機が使用状態である時に,自機の移動を検知した場合,自己判断にて異常と判断し,異常時の処置として事前に登録されたサーバに端末のデータの送信を行い,前記利用者端末に割り当てられたサーバ上の仮想デスクトップを消去する」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても引用発明,引用文献1-6に記載された技術的事項,および周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
4.本願発明7-10について
本願発明7-10は,本願発明6を減縮したもので,本願発明1の「自機が使用状態である時に,自機の移動を検知した場合,自己判断にて異常と判断し,異常時の処置として事前に登録されたサーバに端末のデータの送信を行い,前記利用者端末に割り当てられたサーバ上の仮想デスクトップを消去する」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明,引用文献1-6に記載された技術的事項,および周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は,請求項1-12について上記引用文献1-6に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら,平成29年4月13日付け及び平成30年3月20日付け手続補正により補正された結果,請求項1,6,11,12は,それぞれ「自機が使用状態である時に,自機の移動を検知した場合,自己判断にて異常と判断し,異常時の処置として事前に登録されたサーバに端末のデータの送信を行い,前記利用者端末に割り当てられたサーバ上の仮想デスクトップを消去する」という事項,または対応する構成を有するものとなっており,上記のとおり,本願発明1-12は,上記引用発明,引用文献1-6に記載された技術的事項,および周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。
第6 当審拒絶理由について
1.特許法第36条第6項第1号について
当審では,請求項1に記載の「盗難自己検出システム」は,使用中における電源線の強制引抜等によって端末を持ち去るような場合には,「シンクライアント」端末中にデータが残ることになってデータ不正取得は防ぎ得ないから,本願発明の課題(端末内部のデータの不正取得防止)の解決手段が反映されていないこととなり,発明の詳細な説明に記載の範囲を超えて請求するものであるとの拒絶の理由を通知しているが,平成30年3月20日付けの意見書における,「本願請求項1,6,11,12に記載の利用者端末には,サーバ上の仮想デスクトップが割り当てられ,この仮想デスクトップの演算結果を受信し,表示を行うものであることは明らかです。つまり,仮想デスクトップはサーバ上で動作するため,データはすべてサーバ上に保存されます。言い換えると,利用者端末のハードディスクにはデータは一切存在せず,利用者端末の電源断の後は,利用者端末にデータが残ることはありません。これは,使用中に電源線を強制引抜等した場合も同様です。」との釈明により解消した。
2.特許法第36条第4項第1号について
当審では,発明の詳細な説明の記載についても,上記1.と同様に,使用中における電源線の強制引抜等によって端末を持ち去るような場合に,データの不正取得をどのように防止するかについて,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないとの拒絶の理由を通知しているが,上記1.で引用した平成30年3月20日付けの意見書における釈明により解消した。
第7 むすび
以上のとおり,本願発明1-12は,当業者が引用発明,引用文献1-6に記載された技術的事項,および周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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2017-005290