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特許拒絶査定不服審判

2017-004752

二次電池用正極及び二次電池

審判番号
2017-004752
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-502412外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年04月05日
審決日
2018年07月20日
公報発行日
2018年10月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .537-WZ (H01M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2014-502412「二次電池用正極及び二次電池」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 6日国際公開、WO2013/129658〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2013年(平成25年)3月1日(優先権主張 平成24年3月2日 日本国(JP))を国際出願日とする出願であって、平成28年5月31日付けの拒絶理由が通知され、同年7月29日に意見書の提出とともに特許請求の範囲の手続補正がなされたが、同年12月28日付けで拒絶査定がなされたものであり、そして、この査定を不服として平成29年4月5日付けで拒絶査定不服審判が請求され、当審において、同年10月17日付けで拒絶理由が通知され、同年12月21日に意見書の提出とともに特許請求の範囲の手続補正がなされ、平成29年12月21日に提出の前記意見書での主張に関し、平成30年3月30日付けで審尋をし、期間を定めて回答書の提出を求めたが、定めた期間内に回答書の提出はなされなかったものである。 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1~5に記載された発明(以下、それぞれ、「本願発明1」~「本願発明5」といい、これらをまとめて「本願発明」ということがある。)は、平成29年12月21日に提出された手続補正書によって補正された、次のとおりのものである。 「【請求項1】 集電体と、前記集電体上に積層され、正極活物質、導電材およびバインダーを含有してなる正極活物質層とからなり、 前記正極活物質層中のバインダーの含有量は、正極活物質100質量部に対して0.1~10質量部であり、 前記バインダーが第一の重合体及び第二の重合体を含んでなり、 前記第一の重合体がフッ素含有重合体であり、 前記第二の重合体が、ニトリル基を有する重合単位2~50質量%、親水性基を有する重合単位0.05~20質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位5~50質量%、及び炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位20~70質量%を含有してなり、 前記バインダーにおける前記第一の重合体と前記第二の重合体との比率が、質量比で95:5~60:40であり、 前記第二の重合体のガラス転移温度が25℃以下であることを特徴とする二次電池用正極。 【請求項2】 前記第一の重合体がポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体の中から選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載の二次電池用正極。 【請求項3】 前記第二の重合体における前記(メタ)アクリル酸エステル重合単位の非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が4~10である請求項1または2に記載の二次電池用正極。 【請求項4】 前記第二の重合体のヨウ素価が、3~60mg/100mgである請求項1~3のいずれかに記載の二次電池用正極。 【請求項5】 正極、負極、セパレーター及び電解液を有する二次電池であって、 前記正極が、請求項1~4のいずれかに記載の二次電池用正極である二次電池。」 第3 当審拒絶理由 当審は、平成29年10月17日付けで拒絶理由を通知したが、その理由の一つは要するに以下のとおりである。(なお、「・・・」は記載の省略を表す。) 「               理 由 ・・・ 2) この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 ・・・ ア. 平成28年 7月29日付けの手続補正書によって特許請求の範囲の記載は、以下のとおりのものとなった。 「【請求項1】 集電体と、前記集電体上に積層され、正極活物質、導電材およびバインダーを含有してなる正極活物質層とからなり、 前記バインダーが第一の重合体及び第二の重合体を含んでなり、 前記第一の重合体がフッ素含有重合体であり、 前記第二の重合体が、ニトリル基を有する重合単位2~50質量%、親水性基を有する重合単位0.05~20質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位5~50質量%、及び炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位20~70質量%を含有してなり、 前記バインダーにおける前記第一の重合体と前記第二の重合体との比率が、質量比で95:5~5:95であり、 前記バインダーにおける、前記第一の重合体及び前記第二の重合体と異なる結着剤成分の含有割合が、前記第一の重合体、前記第二の重合体及び前記結着剤成分の合計100質量%に対して80質量%以下であることを特徴とする二次電池用正極。 【請求項2】 前記第一の重合体がポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体の中から選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載の二次電池用正極。 【請求項3】 前記第二の重合体における前記(メタ)アクリル酸エステル重合単位の非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が4~10である請求項1または2に記載の二次電池用正極。 【請求項4】 前記第二の重合体のヨウ素価が、3~60mg/100mgである請求項1~3のいずれかに記載の二次電池用正極。 【請求項5】 前記第二の重合体のガラス転移温度が25℃以下である請求項1~4のいずれかに記載の二次電池用正極。 【請求項6】 正極、負極、セパレーター及び電解液を有する二次電池であって、 前記正極が、請求項1~5のいずれかに記載の二次電池用正極である二次電池。」 ・・・ 2)の拒絶理由について サ. 発明の詳細な説明によれば、本願発明は、「高密度・高厚みの設計においても高い柔軟性と結着性を有し、かつプレス前においても高い密度を有する正極、及び優れたサイクル特性(特に高温サイクル特性)を有する二次電池を提供すること」を、発明が解決しようとする課題(以下、単に「課題」という。)とするものとされている(【0002】~【0014】)。 シ. そして、発明の詳細な説明によれば、上記サ.に示した課題は、実施例1~11の二次電池用正極を用いた場合に解決できるとされているところ(【0178】~【0258】)、これらの二次電池用正極は、いずれも、「プレス前の正極活物質層の密度が2.28g/cm3以上である」との事項を備えていると認められる。 ス. 上記シ.に示したことは、発明の詳細な説明における、「また、本発明において、集電体上に形成されたプレス(加圧処理)前の正極活物質層の密度は、好ましくは2.2~2.8g/cm3であり、より好ましくは2.4~2.8g/cm3である。プレス前の正極活物質層の密度が上記範囲にあることにより、加圧処理で加える力を低減することができると共に、プレス前後における正極活物質層の密度変化量を低減することができる。これにより、プレス後の正極活物質層において割れや欠けを有効に防止することができる。」(【0150】)等の記載とも整合する。 また、発明の詳細な説明によれば、プレス前の正極活物質層の密度が2.18g/cm3である比較例4の二次電池用正極を用いた場合、電極柔軟性、結着性、高温サイクル特性についての評価は、それぞれ、E、D、Eとされている(【0178】~【0258】)ところ、当該二次電池用正極について、例えば、比較例2で用いた結着剤の添加により、プレス前の正極活物質層の密度が、0.02g/cm3だけ上昇した、2.20g/cm3となるように調整した場合に、その調整によってもたらされる、プレス前後における正極活物質層の密度変化量を低減することができ、プレス後の正極活物質層において割れや欠けを有効に防止することができるということは、技術常識からして、プレス前の正極活物質層の密度の上昇の程度に応じて生ずるのであって、臨界的に生ずるわけではないから、その調整によってもたらされる、電極柔軟性、結着性、高温サイクル特性についてのそれぞれのE、D、Eという評価からの向上に関しても、上記サ.に示した課題が解決できると認識できるまでに、向上できるとは認められない等、発明の詳細な説明には、二次電池用正極において、プレス前の正極活物質層の密度が2.28g/cm3未満である場合に、上記サ.に示した課題が解決できるまでの開示は見当たらない。 ・・・ ソ. 上記サ.~セ.の検討を踏まえると、上記シ.に示したような発明の詳細な説明に記載された発明を、請求項1に係る発明の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない。 タ. したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。また、請求項1を引用する請求項2~6に係る発明も、請求項1に係る発明と同様の理由で、発明の詳細な説明に記載したものではない。 」 第4 当審の判断 上記第3に示した当審拒絶理由の通知に対して、請求人は平成29年12月21日に意見書とともに手続補正書を提出して、特許請求の範囲の記載を上記第2に示したとおりとしたが、当審は、上記第3に示した当審拒絶理由が依然として解消されていない、と判断する。 以下、その判断理由につき詳述する。 1. はじめに 特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に係る規定(いわゆる「明細書のサポート要件」)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるから、以下、当該観点に立って検討する。 2. 発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」ということがある。)には、次の記載がある(なお、「…」は記載の省略を表す。)。 (2-1) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、リチウムイオン二次電池等の二次電池に使用される正極に関する。」 (2-2) 「【背景技術】 … 【0005】 リチウムイオン二次電池に用いられる電極は、通常、電極活物質層が集電体に積層された構造を有しており、電極活物質層には、電極活物質の他に、電極活物質同士及び電極活物質と集電体とを結着させるためポリマーバインダー(以下において「バインダー」と記載することがある。)が用いられている。電極は、通常、水や有機液体等の液状媒体にバインダーとなる重合体を分散または溶解させたバインダー組成物に活物質および必要に応じて導電性カーボン等の導電剤を混合してスラリー組成物を得、このスラリー組成物を集電体に塗布し、乾燥して製造される。 【0006】 ポリマーバインダーには、特に正極用のポリマーバインダーとして、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素系のポリマーが、有機電解液に対して溶解しにくいため、これまで好適なものとして使用されている。 しかしながら、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマーは、集電体に対する接着力が弱く、充放電を繰り返すうちに電極活物質層と集電体との間の電気的接合が劣化して電池容量が減少する問題があった。また、集電体との接着力を高める目的でポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマーの量を多くすると、電池の内部抵抗が上昇して容量が低下する問題があった。 【0007】 特許文献1では、バインダーとして、活物質に対する絶縁被覆作用の少ないポリビニリデンフルオライド系ポリマーのようなフッ素系ポリマーと、接着性に優れたアクリロニトリル-ブタジエンゴムまたは水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム(H-NBR)とを併用することによって、電池のエネルギー密度とサイクル特性を改善することが提案されている。 【0008】 また、特許文献2では、正極の電極活物質層中における導電剤の含率を、アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムの含率の1~25倍とすることによって柔軟な電子伝導網を形成し、大電流放電でも電池容量の減少が少なく、かつ、充放電を繰り返しても電池容量の減少が少なくなることが提案されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0009】 【特許文献1】特開平9-63590号公報 【特許文献2】特開2005-123047号公報」 (2-3) 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 特許文献1および2ではバインダーとしてPVDFならびにH-NBRを用いることでサイクル特性及び出力特性が向上することが例示されている。 【0011】 しかしながら、最近では電池のエネルギー高密度化に向けて、正極の高密度化・高厚み化が進んでおり、本発明者らの検討によれば、特許文献1および2のバインダーを用いると、高密度・高厚みの電極設計においては優れた柔軟性と結着性を維持することが難しいことが判明した。また、正極の捲回時に電極活物質層の割れ・欠けが問題となることも判明した。そのため、高密度・高厚みの設計においても高い柔軟性と結着性を有し、かつプレス前においても高い密度を有する電極活物質層を有する正極が強く求められている。 【0012】 また、電池の出力特性を上げるためには、比表面積が大きく粒子径の小さい正極活物質を使用することが多い。このような正極活物質を用いる場合には、バインダーと結着する面積が増えるために更に多くのバインダー量が必要とされる。その為、絶縁成分であるバインダー量が増えることで電極の抵抗が上がり、電池の出力特性・サイクル特性が共に悪化するおそれがあった。 … 【0014】 本発明の目的は上記事情を鑑み、高密度・高厚みの設計においても高い柔軟性と結着性を有し、かつプレス前においても高い密度を有する正極、及び優れたサイクル特性(特に高温サイクル特性)を有する二次電池を提供することにある。」 (2-4) 「【課題を解決するための手段】 【課題を解決するための手段】 【0015】 このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下の通りである。 〔1〕集電体と、前記集電体上に積層され、正極活物質、導電剤およびバインダーを含有してなる正極活物質層とからなり、 前記バインダーが第一の重合体及び第二の重合体を含んでなり、 前記第一の重合体がフッ素含有重合体であり、 前記第二の重合体が、ニトリル基を有する重合単位、親水性基を有する重合単位、(メタ)アクリル酸エステル重合単位、及び炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位を含有してなり、 前記バインダーにおける前記第一の重合体と前記第二の重合体との比率が、質量比で95:5~5:95であることを特徴とする二次電池用正極。 【0016】 〔2〕前記第一の重合体がポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体の中から選ばれる少なくとも一つである上記〔1〕に記載の二次電池用正極。 【0017】 〔3〕前記第二の重合体における前記ニトリル基を有する重合単位の含有割合が2~50質量%である上記〔1〕または〔2〕に記載の二次電池用正極。 【0018】 〔4〕前記第二の重合体における前記親水性基を有する重合単位の含有割合が0.05~20質量%である上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の二次電池用正極。 【0019】 〔5〕前記第二の重合体における前記(メタ)アクリル酸エステル重合単位の非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が4~10である上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の二次電池用正極。 【0020】 〔6〕前記第二の重合体のヨウ素価が、3~60mg/100mgである上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の二次電池用正極。 【0021】 〔7〕前記第二の重合体のガラス転移温度が25℃以下である上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の二次電池用正極。 【0022】 〔8〕正極、負極、セパレーター及び電解液を有する二次電池であって、 前記正極が、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の二次電池用正極である二次電池。」 (2-5) 「【発明を実施するための形態】 【0024】 〔二次電池用正極〕 本発明の二次電池用正極(「正極」と記載することがある。)は、集電体と、該集電体上に積層された正極活物質層とからなる。正極活物質層は、正極活物質、導電剤およびバインダーからなり、必要に応じて添加される他の成分を含有してもよい。 … 【0037】 (バインダー) 本発明に用いるバインダーは、後述する第一の重合体と第二の重合体を含んでなる。本発明においては、第一の重合体及び第二の重合体を含むバインダーを用いることで、高い柔軟性と結着性を有し、かつプレス前においても高い密度を有する二次電池用正極を形成することができる。 【0038】 第一の重合体 バインダー中の前記第一の重合体は、フッ素含有重合体を含有することを特徴とする。フッ素含有重合体を含むことで、電解液に対するバインダーの膨潤を抑制し、その結果、高温サイクル特性の良好な二次電池を得ることができる。 【0039】 本発明に用いるフッ素含有重合体は、フッ素含有モノマーの重合単位を含む重合体である。… 【0040】 フッ素含有モノマーとしては、…フッ化ビニリデンが好ましい。 フッ素含有重合体における、フッ素含有モノマーの重合単位の割合は、通常70質量%以上100質量%以下、好ましくは80質量%以上100質量%以下である。 【0041】 … フッ素含有重合体における、フッ素含有モノマーと共重合可能なモノマーの重合単位の割合は、通常0質量%以上30質量%以下、好ましくは0質量%以上20質量%以下である。 フッ素含有重合体の中でも、フッ素含有モノマーとしてフッ化ビニリデンを含む重合体、具体的には、フッ化ビニリデンの単独重合体、フッ化ビニリデンとこれと共重合可能な他のフッ素含有モノマーとの共重合体、フッ化ビニリデンとこれと共重合可能な他のフッ素含有モノマーとこれらと共重合可能なモノマーとの共重合体が好ましい。 【0042】 上記のようなフッ素含有重合体の中でも、本発明に用いる第一の重合体としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体が好ましい。 … 【0049】 第二の重合体 バインダー中の前記第二の重合体は、ニトリル基を有する重合単位、親水性基を有する重合単位、(メタ)アクリル酸エステル重合単位、及び炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位を含有することを特徴とする。 ニトリル基を有する重合単位とは、ニトリル基を有する重合単位を形成し得る単量体を重合して形成される構造単位のことをいう。親水性基を有する重合単位とは、親水性基を有する重合単位を形成し得る単量体を重合して形成される構造単位のことをいう。(メタ)アクリル酸エステル重合単位とは、(メタ)アクリル酸エステル重合単位を形成し得る単量体を重合して形成される構造単位のことをいう。炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位とは、炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位を形成し得る単量体を重合して形成される構造単位のことをいい、具体的には、炭素数4以上の共役ジエンモノマーを重合することにより形成される構造単位の、炭素-炭素二重結合の少なくとも一部を、水素添加することにより直鎖アルキレン構造とした構造単位をいう。ここで、バインダーにおける各重合単位の割合は、通常、バインダーの重合に用いる全単量体における、各重合単位を形成しうる上記単量体の比率(仕込み比)に一致する。なお、炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位を、上記の共役ジエンモノマーを重合して形成される構造単位の水素添加により形成する場合には、後述する水素添加反応率により、炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位の割合は制御される。したがって、炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位を形成しうる単量体の比率(仕込み比)は、バインダーにおける共役ジエンモノマーを重合して形成される構造単位を水素添加した重合単位と、水素添加していない重合単位を合計したものの比率に一致する。 【0050】 …第二の重合体は、(メタ)アクリル酸エステル重合単位を好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~40質量%、特に好ましくは20~35質量%含む。… 【0051】 …第二の重合体は、親水性基を有する重合単位を好ましくは0.05~20質量%、より好ましくは0.05~10質量%、さらに好ましくは0.1~8質量%、特に好ましくは1~6質量%含む。… … 【0054】 前記ニトリル基を有する重合単位の含有割合は、好ましくは2~50質量%、より好ましくは10~30質量%、特に好ましくは10~25質量%である。… … 【0057】 上記の直鎖アルキレン重合単位の含有割合は、好ましくは20~70質量%、より好ましくは25~60質量%、特に好ましくは30~60質量%である。 【0058】 上記のように、本発明に用いるバインダーを構成する第二の重合体は、ニトリル基を有する重合単位、(メタ)アクリル酸エステル重合体単位、親水性基を有する重合単位及び炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位を有する。このような第二の重合体は、ニトリル基を有する重合単位を形成し得る単量体、親水性基を有する重合単位を形成し得る単量体、(メタ)アクリル酸エステル重合単位を形成し得る単量体、炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位を形成し得る単量体を重合反応させて得られる。なお、炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位は、不飽和結合を有する構造単位(例えば、炭素数4以上の共役ジエンモノマーを重合することにより形成される構造単位)を有する重合体を得た後に、これを水素添加反応して形成することができる。 … 【0077】 本発明に用いる第二の重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは25℃以下、より好ましくは15℃以下、特に好ましくは0℃以下である。第二の重合体のTgの下限は特に限定されないが、好ましくは-50℃以上、より好ましくは-45℃以上、特に好ましくは-40℃以上である。第二の重合体のTgが上記範囲にあることにより、本発明の二次電池用正極が優れた強度と柔軟性を有するため、正極の製造工程における粉落ちを抑制し、該正極を用いた二次電池のサイクル特性を向上させることができる。… … 【0082】 前記第二の重合体のヨウ素価は、好ましくは3~60mg/100mg程度であり、より好ましくは3~20mg/100mg、更に好ましくは8~10mg/100mgである。第二の重合体のヨウ素価が上記範囲にあることにより、高電位に対して第二の重合体が化学構造的に安定であり、長期サイクルにおいても電極構造を維持することができ、サイクル特性に優れる。ヨウ素価はJIS K6235;2006に従って求められる。 … 【0130】 本発明に用いるバインダーは、上記第一の重合体と第二の重合体を含んでなる。本発明においては、第一の重合体及び第二の重合体を含むバインダーを用いることで、高い柔軟性と結着性を有し、かつプレス前においても高い密度を有する二次電池用正極を形成することができる。 … 【0132】 前記バインダーにおける第一の重合体と第二の重合体との比率は、質量比で、95:5~5:95であり、好ましくは90:10~40:60、より好ましくは90:10~60:40である。第一の重合体に対する第二の重合体の割合を上記範囲とすることにより、高密度・高厚みの設計においても高い柔軟性と結着性を有し、かつプレス前においても高い密度を有する正極が得られる。その結果、該電極のプレス時にかける力を低減することができ、該電極の割れ・欠けを有効に防止することができる。 … 【0136】 正極活物質層中の全結着剤(第一および第二の重合体量とその他の結着剤)の含有量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部である。本発明の二次電池用正極における正極活物質層中の全結着剤の含有量が前記範囲にあることで、正極活物質同士や正極活物質と集電体との結着性に優れ、更に正極の柔軟性を維持しながらも、Liの移動を阻害せず抵抗が増大することがない。 … 【0148】 (二次電池用正極の製造方法) 本発明の二次電池用正極を製造する方法としては、前記集電体の少なくとも片面、好ましくは両面に正極活物質層を層状に結着させる方法であればよい。例えば、後述する二次電池用正極スラリーを集電体に塗布、乾燥し、次いで、必要に応じて120℃以上で1時間以上加熱処理して正極を形成する。… 【0149】 本発明の二次電池用正極を製造するに際して、集電体上に上記正極スラリーからなる正極活物質層を形成後、金型プレスやロールプレスなどを用い、加圧処理により正極活物質層の空隙率を低くする工程を有することが好ましい。… 【0150】 また、本発明において、集電体上に形成されたプレス(加圧処理)前の正極活物質層の密度は、好ましくは2.2~2.8g/cm3であり、より好ましくは2.4~2.8g/cm3である。プレス前の正極活物質層の密度が上記範囲にあることにより、加圧処理で加える力を低減することができると共に、プレス前後における正極活物質層の密度変化量を低減することができる。これにより、プレス後の正極活物質層において割れや欠けを有効に防止することができる。 【0151】 なお、プレス後の二次電池用正極の正極活物質層の密度は、好ましくは3.5~4.1g/cm3であり、より好ましくは3.6~4.0g/cm3である。正極活物質層の密度が上記範囲にあることにより、高容量の電池を得ることができる。 … 【0154】 (二次電池用正極スラリー) 本発明の二次電池用正極スラリーは、上記正極活物質、導電剤、バインダーおよび分散媒を含有する。… 【0155】 (分散媒) 分散媒としては、正極活物質、導電剤およびバインダーを均一に分散または溶解し得るものであれば、特に制限されない。… … 【0161】 〔二次電池〕 本発明の二次電池は、正極、負極、セパレーター及び電解液を備えてなり、前記正極が、前記二次電池用正極である。 … 【実施例】 【0178】 以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、本実施例における部および%は、特記しない限り質量基準である。実施例および比較例において、各種物性は以下のように評価する。 【0179】 <ガラス転移温度> 第一の重合体および第二の重合体のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析計(ナノテクノロジー社製 DSC6220SII)を用いて、JIS K 7121;1987に基づいて測定した。なお、示差走査熱量分析計を用いた測定において、ピークが2つ以上現れた場合には、高温側のピークをTgとした。 【0180】 <ヨウ素価> 第二の重合体のNMP溶液100グラムをメタノール1リットルで凝固した後、60℃で一晩真空乾燥した。乾燥したバインダーのヨウ素価をJIS K6235;2006に従って測定した。 【0181】 <スラリー固形分濃度> スラリーの固形分濃度は下記計算式より算出した。 スラリー固形分濃度(%) =100×全固形分(活物質、導電剤、バインダー)の重量(g)/(全固形分+溶媒)の重量(g) 【0182】 <プレス前電極密度> ロールプレス前の正極原反を、直径16mmφの円形の打ち抜き機を用いて、直径16mmφの電極を作製する。得られた電極を用いて以下の計算よりロールプレス前の正極活物質層の密度を算出した。これをプレス前電極密度とした。 正極活物質層の密度(g/cm3)=正極活物質層の重量(g)/正極活物質層の体積(cm3) 正極活物質層の重量(g)=電極の重量-集電体の重量 正極活物質層の体積(cm3)=正極活物質層の厚さ(cm)×正極活物質層の面積(cm2) 【0183】 <電極柔軟性> 正極の正極活物質層側に径の異なる棒を載置し、正極を棒に巻き付けて正極活物質層が割れるかどうかを評価した。棒の直径が小さいほど、正極の捲回性に優れることを示す。捲回性に優れると、正極活物質層の剥がれを抑制することができるため、二次電池のサイクル特性に優れる。 A:1.2mmφで割れない B:1.5mmφで割れない C:2mmφで割れない D:3mmφで割れない E:4mmφで割れない 【0184】 <結着性> 正極活物質層を形成した正極を、幅1.0×長さ10cmの矩形に切って試験片とし、正極活物質層面を上にして固定する。試験片の正極活物質層表面にセロハンテープを張り付けた後、試験片の一端からセロハンテープを50mm/分の速度で180°方向に引き剥がしたときの応力を測定した。測定を10回行い、その平均値を求めて、これをピール強度(N/m)とし、以下の基準で評価した。ピール強度が大きいほど正極活物質層の結着性に優れることを示す。 A:80N/m以上 B:40N/m以上80N/m未満 C:10N/m以上40N/m未満 D:10N/m未満 【0185】 <高温サイクル特性> 実施例、比較例で製造した5セルリチウムイオン二次電池を、45℃雰囲気下、0.5Cの定電流法によって4.2Vに充電し、3.0Vまで放電する充放電を、200サイクル繰り返した。200サイクル終了時の電気容量と5サイクル終了時の電気容量の比(=200サイクル終了時の電気容量/5サイクル終了時の電気容量×100)(%)で表される充放電容量保持率を求めた。これらの測定を、電池5セルについて行い、各セルの充放電容量維持率の平均値を、充放電容量保持率として、以下の基準で評価した。この値が大きいほど高温サイクル特性に優れることを示す。 A:85%以上 B:80%以上85%未満 C:70%以上80%未満 D:60%以上70%未満 E:40%以上60%未満 F:40%未満 (実施例1) 〔第一の重合体の製造〕 第一の重合体としては、ポリフッ化ビニリデン(KFポリマー#7200、株式会社クレハ社製、Tg132℃)を用いた。 【0186】 〔第二の重合体の製造〕 撹拌機付きのオートクレーブに、イオン交換水240部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5部、アクリロニトリル20部、ブチルアクリレート30部、メタクリル酸5部をこの順で入れ、ボトル内を窒素で置換した後、1,3-ブタジエン45部を圧入し、過硫酸アンモニウム0.25部を添加して反応温度40℃で重合反応させ、ニトリル基を有する重合単位、(メタ)アクリル酸エステル重合単位、親水性基を有する重合単位及び共役ジエンモノマー由来の重合単位を含んでなる重合体を得た。… … 【0189】 …第二の重合体は、重合体全量に対して、ニトリル基を有する重合単位(アクリロニトリル由来の重合単位)を20質量%、1,3-ブタジエン由来の重合単位を45質量%、親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位(メタクリル酸由来の重合単位)を5質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位(ブチルアクリレート由来の重合単位)を30質量%含んでいた。ここで、前記1,3-ブタジエン由来の重合単位は炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位38.8質量%と未水添ブタジエン重合単位2.1質量%と1,2-付加重合単位4.1質量%とから形成されていた。また、第二の重合体のガラス転移温度は-30℃であった。なお、第二の重合体のヨウ素価は10mg/100mgであった。 【0190】 〔バインダーの製造〕 前記第一の重合体のNMP溶液と、前記第二の重合体のNMP溶液とを、バインダーにおける第一の重合体と第二の重合体との比率が、質量比で80:20となるように、プラネタリーミキサーにて、攪拌して、バインダーのNMP溶液を調整した。 【0191】 〔正極スラリーおよび正極の製造〕 正極活物質として層状構造を有するコバルト酸リチウム(LiCoO2)(粒子径:12μm)100部と、アセチレンブラック(HS-100:電気化学工業)2.0部と、前記バインダーのNMP溶液を固形分相当量で1.0部(固形分濃度8.0%)と、適量のNMPとをプラネタリーミキサーにて攪拌し、正極スラリーを調製した。作製した正極スラリーを用いてスラリー固形分濃度の評価を行った。結果を表1に示す。 【0192】 集電体として、厚さ20μmのアルミ箔を準備した。上記正極スラリーをコンマコーターでアルミ箔上に乾燥後の膜厚が65μm程度になるように塗布し、60℃で20分、120℃で20分間乾燥後、150℃、2時間加熱処理して、正極原反を得た。正極原反のプレス前の電極密度は、2.42g/cm3であった。この正極原反をロールプレスで圧延し、密度が3.7g/cm3の正極活物質層とアルミ箔とからなる正極を作製した。なお、正極の厚みは70μmであった。作製した正極を用いて電極柔軟性、結着性、密度の測定を行った。結果を表1に示す。 【0193】 〔負極用のスラリー組成物および負極の製造〕 ディスパー付きのプラネタリーミキサーに、負極活物質として比表面積4m2/gの人造黒鉛(平均粒子径:24.5μm)を100部、分散剤としてカルボキシメチルセルロースの1%水溶液(第一工業製薬株式会社製「BSH-12」)を固形分相当で1部加え、イオン交換水で固形分濃度55%に調整した後、25℃で60分混合した。次に、イオン交換水で固形分濃度52%に調整した。その後、さらに25℃で15分混合し混合液を得た。 【0194】 上記混合液に、スチレン-ブタジエン共重合体(ガラス転移点温度:-15℃)を含む40%水分散液を固形分相当量で1.0部、及びイオン交換水を入れ、最終固形分濃度が50%となるように調整し、さらに10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して、流動性の良い負極用のスラリー組成物を得た。 【0195】 上記負極用のスラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して負極原反を得た。この負極原反をロールプレスで圧延して、厚み80μmの負極活物質層を有する負極を得た。 【0196】 〔セパレーターの用意〕 単層のポリプロピレン製セパレーター(幅65mm、長さ500mm、厚さ25μm、乾式法により製造、気孔率55%)を、5×5cm2の正方形に切り抜いた。 【0197】 〔リチウムイオン二次電池の製造〕 電池の外装として、アルミニウム包材外装を用意した。上記で得られた正極を、4×4cm2の正方形に切り出し、集電体側の表面がアルミニウム包材外装に接するように配置した。正極の正極活物質層の面上に、上記で得られた正方形のセパレーターを配置した。さらに、上記で得られた負極を、4.2×4.2cm2の正方形に切り出し、これをセパレーター上に、負極活物質層側の表面がセパレーターに向かい合うよう配置した。さらに、ビニレンカーボネート(VC)を1.5%含有する、濃度1.0MのLiPF6溶液を充填した。このLiPF6溶液の溶媒はエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒(EC/EMC=3/7(体積比))である。さらに、アルミニウム包材の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミニウム外装を閉口し、リチウムイオン二次電池を製造した。 得られたリチウムイオン二次電池について、高温サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。 【0198】 (実施例2) 第二の重合体として、下記の重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極スラリーおよび正極を得、電池を作製した。各評価の結果を表1に示す。 … 【0202】 …第二の重合体は、重合体全量に対して、ニトリル基を有する重合単位(アクリロニトリル由来の重合単位)を5質量%、1,3-ブタジエン由来の重合単位を60質量%、親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位(メタクリル酸由来の重合単位)を5質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位(ブチルアクリレート由来の重合単位)を30質量%含んでいた。ここで、前記1,3-ブタジエン由来の重合単位は炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位52.5質量%と未水添ブタジエン重合単位2.1質量%と1,2-付加重合単位5.4質量%とから形成されていた。また、第二の重合体のガラス転移温度は-48℃であった。なお、第二の重合体のヨウ素価は13mg/100mgであった。 【0203】 (実施例3) 第二の重合体として、下記の重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極スラリーおよび正極を得、電池を作製した。各評価の結果を表1に示す。 … 【0207】 …第二の重合体は、重合体全量に対して、ニトリル基を有する重合単位(アクリロニトリル由来の重合単位)を10質量%、1,3-ブタジエン由来の重合単位を55質量%、親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位(メタクリル酸由来の重合単位)を5質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位(ブチルアクリレート由来の重合単位)を30質量%含んでいた。ここで、前記1,3-ブタジエン由来の重合単位は炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位47.9質量%と未水添ブタジエン重合単位2.1質量%と1,2-付加重合単位5.0質量%とから形成されていた。また、第二の重合体のガラス転移温度は-43℃であった。なお、第二の重合体のヨウ素価は11mg/100mgであった。 【0208】 (実施例4) 第二の重合体として、下記の第二の重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極スラリーおよび正極を得、電池を作製した。各評価の結果を表1に示す。 … 【0212】 …第二の重合体は、重合体全量に対して、ニトリル基を有する重合単位(アクリロニトリル由来の重合単位)を40質量%、1,3-ブタジエン由来の重合単位を25質量%、親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位(メタクリル酸由来の重合単位)を5質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位(ブチルアクリレート由来の重合単位)を30質量%含んでいた。ここで、前記1,3-ブタジエン由来の重合単位は炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位20.6質量%と未水添ブタジエン重合単位2.1質量%と1,2-付加重合単位2.3質量%とから形成されていた。また、第二の重合体のガラス転移温度は-10℃であった。なお、第二の重合体のヨウ素価は8mg/100mgであった。 【0213】 (実施例5) 第二の重合体として、下記の重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極スラリーおよび正極を得、電池を作製した。各評価の結果を表1に示す。 … 【0217】 …第二の重合体は、重合体全量に対して、ニトリル基を有する重合単位(アクリロニトリル由来の重合単位)を20質量%、1,3-ブタジエン由来の重合単位を35質量%、親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位(メタクリル酸由来の重合単位)を15質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位(ブチルアクリレート由来の重合単位)を30質量%含んでいた。ここで、前記1,3-ブタジエン由来の重合単位は炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位29.7質量%と未水添ブタジエン重合単位2.1質量%と1,2-付加重合単位3.2質量%とから形成されていた。また、第二の重合体のガラス転移温度は-5℃であった。なお、第二の重合体のヨウ素価は9mg/100mgであった。 【0218】 (実施例6) 第二の重合体として、下記の重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極スラリーおよび正極を得、電池を作製した。各評価の結果を表1に示す。 … 【0222】 …第二の重合体は、重合体全量に対して、ニトリル基を有する重合単位(アクリロニトリル由来の重合単位)を20質量%、1,3-ブタジエン由来の重合単位を45質量%、親水性基(スルホン酸基)を有する重合単位(アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸由来の重合単位)を5質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位(ブチルアクリレート由来の重合単位)を30質量%含んでいた。ここで、前記1,3-ブタジエン由来の重合単位は炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位38.8質量%と未水添ブタジエン重合単位2.1質量%と1,2-付加重合単位4.1質量%とから形成されていた。また、第二の重合体のガラス転移温度は-29℃であった。なお、第二の重合体のヨウ素価は10mg/100mgであった。 【0223】 (実施例7) 第二の重合体として、下記の重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極スラリーおよび正極を得、電池を作製した。各評価の結果を表1に示す。 … 【0227】 …第二の重合体は、重合体全量に対して、ニトリル基を有する重合単位(アクリロニトリル由来の重合単位)を20質量%、1,3-ブタジエン由来の重合単位を60質量%、親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位(メタクリル酸由来の重合単位)を5質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位(ブチルアクリレート由来の重合単位)を15質量%含んでいた。ここで、前記1,3-ブタジエン由来の重合単位は炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位52.5質量%と未水添ブタジエン重合単位2.1質量%と1,2-付加重合単位5.4質量%とから形成されていた。また、第二の重合体のガラス転移温度は-38℃であった。なお、第二の重合体のヨウ素価は13mg/100mgであった。 【0228】 (実施例8) 第二の重合体として、下記の重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極スラリーおよび正極を得、電池を作製した。各評価の結果を表1に示す。 … 【0232】 …第二の重合体は、重合体全量に対して、ニトリル基を有する重合単位(アクリロニトリル由来の重合単位)を20質量%、1,3-ブタジエン由来の重合単位を45質量%、親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位(メタクリル酸由来の重合単位)を5質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位(エチルアクリレート由来の重合単位)を30質量%含んでいた。ここで、前記1,3-ブタジエン由来の重合単位は炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位38.8質量%と未水添ブタジエン重合単位2.1質量%と1,2-付加重合単位4.1質量%とから形成されていた。また、第二の重合体のガラス転移温度は-22℃であった。なお、第二の重合体のヨウ素価は10mg/100mgであった。 【0233】 (実施例9) 第二の重合体として、下記の重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極スラリーおよび正極を得、電池を作製した。各評価の結果を表1に示す。 … 【0237】 …第二の重合体は、重合体全量に対して、ニトリル基を有する重合単位(アクリロニトリル由来の重合単位)を20質量%、1,3-ブタジエン由来の重合単位を45質量%、親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位(メタクリル酸由来の重合単位)を5質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位(2-エチルヘキシルアクリレート由来の重合単位)を30質量%含んでいた。ここで、前記1,3-ブタジエン由来の重合単位は炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位38.8質量%と未水添ブタジエン重合単位2.1質量%と1,2-付加重合単位4.1質量%とから形成されていた。また、第二の重合体のガラス転移温度は-36℃であった。なお、第二の重合体のヨウ素価は10mg/100mgであった。 【0238】 (実施例10) 第二の重合体として、下記の重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極スラリーおよび正極を得、電池を作製した。各評価の結果を表1に示す。 … 【0242】 …第二の重合体は、重合体全量に対して、ニトリル基を有する重合単位(アクリロニトリル由来の重合単位)を25質量%、1,3-ブタジエン由来の重合単位を34質量%、親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位(メタクリル酸由来の重合単位)を2質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位(ブチルアクリレート由来の重合単位)を39質量%含んでいた。ここで、前記1,3-ブタジエン由来の重合単位は炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位28.8質量%と未水添ブタジエン重合単位2.1質量%と1,2-付加重合単位3.1質量%とから形成されていた。また、第二の重合体のガラス転移温度は-23℃であった。なお、第二の重合体のヨウ素価は9mg/100mgであった。 【0243】 (実施例11) 第二の重合体として、下記の重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極スラリーおよび正極を得、電池を作製した。各評価の結果を表1に示す。 【0244】 〔バインダーの製造〕 前記第一の重合体のNMP溶液と、前記第二の重合体のNMP溶液とを、第一の重合体に対する第二の重合体の固形分比が50:50となるように、プライマリーミキサーにて、攪拌して、バインダーを調整した。 【0245】 (比較例1) 正極用バインダーとして、下記のバインダーを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極スラリーおよび正極を得、電池を作製した。各評価の結果を表1に示す。 【0246】 〔バインダーの製造〕 前記第二の重合体は用いずに、前記第一の重合体のNMP溶液からなるバインダーを制作した。 【0247】 (比較例2) 正極用バインダーとして、下記のバインダーを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極スラリーおよび正極を得、電池を作製した。各評価の結果を表1に示す。 【0248】 〔バインダーの製造〕 前記第一の重合体は用いずに、前記第二の重合体のNMP溶液からなるバインダーを制作した。 【0249】 (比較例3) 第二の重合体として、下記の重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極スラリーおよび正極を得、電池を作製した。各評価の結果を表1に示す。 … 【0251】 …第二の重合体には、重合体全量に対して、ニトリル基を有する重合単位(アクリロニトリル由来の重合単位)を20質量%、親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位(メタクリル酸由来の重合単位)を5質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位(ブチルアクリレート由来の重合単位)を75質量%含んでいた。また、第二の重合体のガラス転移温度は-20℃であった。なお、第二の重合体のヨウ素価は0mg/100mgであった。 【0252】 (比較例4) 第二の重合体として、下記の重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、正極スラリーおよび正極を得、電池を作製した。各評価の結果を表1に示す。 … 【0256】 …第二の重合体は、重合体全量に対して、ニトリル基を有する重合単位(アクリロニトリル由来の重合単位)を15質量%、1,3-ブタジエン由来の重合単位を80質量%、親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位(メタクリル酸由来の重合単位)を5質量%含んでいた。ここで、前記1,3-ブタジエン由来の重合単位は炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位70.7質量%と未水添ブタジエン重合単位2.1質量%と1,2-付加重合単位7.2質量%とから形成されていた。また、第二の重合体のDSCを測定したところ、ピークが二つ見られ、ガラス転移温度は105℃であった。なお、第二の重合体のヨウ素価は20mg/100mgであった。 【0257】 【表1】 【0258】 表1の結果に示すように、実施例1~11の正極を用いた場合には、比較例1~4の正極を用いた場合に比べ、電極柔軟性、結着性および高温サイクル特性のバランスに優れた二次電池を得ることができる。」 3. 検討 上記1.に示した観点に立って、上記第2に示した本願発明が、上記2.に示した発明の詳細な説明に記載された発明で、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かにつき、検討を行うこととする。 (3-1) 本願発明が解決すべき課題 ア. 上記(2-1)~(2-2)に示したように、発明の詳細な説明には、【背景技術】について、「リチウムイオン二次電池等の二次電池に使用される正極は、通常、電極活物質層が集電体に積層された構造を有しており、電極活物質層には、電極活物質の他に、電極活物質同士及び電極活物質と集電体とを結着させるためポリマーバインダー(以下において「バインダー」と記載することがある。)が用いられており、特に正極用のポリマーバインダーとして、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素系のポリマーが、有機電解液に対して溶解しにくいため、これまで好適なものとして使用されている。 しかしながら、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマーは、集電体に対する接着力が弱く、充放電を繰り返すうちに電極活物質層と集電体との間の電気的接合が劣化して電池容量が減少するとの問題があり、また、集電体との接着力を高める目的でポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマーの量を多くすると、電池の内部抵抗が上昇して容量が低下する問題があったことから、特許文献1では、バインダーとして、活物質に対する絶縁被覆作用の少ないポリビニリデンフルオライド系ポリマーのようなフッ素系ポリマーと、接着性に優れたアクリロニトリル-ブタジエンゴムまたは水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム(H-NBR)とを併用することによって、電池のエネルギー密度とサイクル特性を改善することが提案されており、また、特許文献2では、正極の電極活物質層中における導電剤の含率を、アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムの含率の1~25倍とすることによって柔軟な電子伝導網を形成し、大電流放電でも電池容量の減少が少なく、かつ、充放電を繰り返しても電池容量の減少が少なくなることが提案されている。」(【0005】~【0009】)旨の記載がある。 イ. 上記(2-3)に示したように、発明の詳細な説明には、【発明が解決しようとする課題】について、「特許文献1および2には、バインダーとしてPVDFとH-NBRを用いることでサイクル特性及び出力特性が向上することが例示されているが、最近では電池のエネルギー高密度化に向けて、正極の高密度化・高厚み化が進んでおり、本発明者等の検討によれば特許文献1および2のバインダーを用いると、高密度・高厚みの電極設計においては優れた柔軟性と結着性を維持することが難しいことが判明し、また、正極の捲回時に電極活物質層の割れ・欠けが問題となることも判明した。そのため、高密度・高厚みの電極設計においても高い柔軟性と結着性を有し、かつプレス前においても高い密度を有する電極活物質層を有する正極が強く求められている。 本発明の目的は上記事情に鑑み、高密度・高厚みの電極設計においても高い柔軟性と結着性を有し、かつプレス前においても高い密度を有する正極、及び優れたサイクル特性(特に高温サイクル特性)を有する二次電池を提供することにある。」(【0010】~【0011】)旨の記載がある。 ウ. 上記ア.~イ.によれば、リチウムイオン二次電池等の二次電池に使用される正極は、通常、電極活物質層が集電体に積層された構造を有しており、その電極活物質層には、電極活物質同士及び電極活物質と集電体とを結着させるためのバインダーが用いられており、そのバインダーとして、活物質に対する絶縁被覆作用の少ないポリビニリデンフルオライド系ポリマーのようなフッ素系ポリマーと、接着性に優れたアクリロニトリル-ブタジエンゴムまたは水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム(H-NBR)とを併用することによって、電池のエネルギー密度とサイクル特性を改善するとの提案が、特許文献1および2により、なされているが、その提案によっては、最近の電池のエネルギー高密度化に向けた、高密度・高厚みの電極設計においては優れた柔軟性と結着性を維持することが難しいことが判明し、また、正極の捲回時に電極活物質層の割れ・欠けが問題となることも判明したため、本発明の目的は、高密度・高厚みの電極設計においても高い柔軟性と結着性を有し、かつプレス前においても高い密度を有する正極、及び優れた高温サイクル特性を有する二次電池を提供することにあるとされている。 エ. ここで、発明の詳細な説明の記載によれば、「柔軟性」とは、「正極の正極活物質層側に径の異なる棒を載置し、正極を棒に巻き付けて正極活物質層が割れるかどうかを評価し、棒の直径が小さいほど優れる」(【0183】)旨の正極特性であるし、「結着性」とは、「正極活物質層を形成した正極を幅1.0×長さ10cmの矩形に切って試験片とし、正極活物質層面を上にして固定し、試験片の正極活物質層表面にセロハンテープを張り付けた後、試験片の一端からセロハンテープを50mm/分の速度で180°方向に引き剥がしたときに測定されるピール強度(N/m)で評価され、ピール強度が大きいほど優れる」(【0184】)旨の正極特性であるし、「プレス前における電極密度」とは、「ロールプレス前の正極原反を、直径16mmφの円形の打ち抜き機を用いて、直径16mmφの電極を作製して得られた電極を用いて算出される、ロールプレス前の正極活物質層の密度」(【0182】)であるし、「高温サイクル特性」とは、「製造したリチウムイオン二次電池を、45℃雰囲気下、0.5Cの定電流法によって4.2Vに充電し、3.0Vまで放電する充放電を、200サイクル繰り返し、200サイクル終了時の電気容量と5サイクル終了時の電気容量の比(=200サイクル終了時の電気容量/5サイクル終了時の電気容量×100)(%)で表される充放電容量保持率で評価され、この値が大きいほど優れる」(【0185】)旨の電池特性であるとされている。 オ. 上記ア.~エ.の検討を踏まえると、本願発明が目的としている、正極が、高い柔軟性を有することと、高い結着性を有することと、プレス前において高い密度を有することと、二次電池が優れた高温サイクル特性を有することは、互いに、別異の目的ではあるものの、いずれも、最近の電池のエネルギー高密度化に向けた目的であって、電池のエネルギー密度とサイクル特性を改善するための特許文献1および2による提案において問題となることが判明した、一体的な目的である。 してみると、本願発明が解決しようと課題(以下、単に「課題」ということがある。)は、高い柔軟性と結着性を有し、かつプレス前においても高い密度を有する正極、及び優れた高温サイクル特性を有する二次電池を提供することであると認められる。 (3-2) 課題を解決できると認識できる発明 ア. 上記(2-4)に示したように、発明の詳細な説明には、【課題を解決するための手段】について、「このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下の通りである。 〔1〕集電体と、前記集電体上に積層され、正極活物質、導電剤およびバインダーを含有してなる正極活物質層とからなり、 前記バインダーが第一の重合体及び第二の重合体を含んでなり、 前記第一の重合体がフッ素含有重合体であり、 前記第二の重合体が、ニトリル基を有する重合単位、親水性基を有する重合単位、(メタ)アクリル酸エステル重合単位、及び炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位を含有してなり、 前記バインダーにおける前記第一の重合体と前記第二の重合体との比率が、質量比で95:5~5:95であることを特徴とする二次電池用正極。 〔2〕前記第一の重合体がポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体の中から選ばれる少なくとも一つである上記〔1〕に記載の二次電池用正極。 〔3〕前記第二の重合体における前記ニトリル基を有する重合単位の含有割合が2~50質量%である上記〔1〕または〔2〕に記載の二次電池用正極。 〔4〕前記第二の重合体における前記親水性基を有する重合単位の含有割合が0.05~20質量%である上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の二次電池用正極。 〔5〕前記第二の重合体における前記(メタ)アクリル酸エステル重合単位の非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が4~10である上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の二次電池用正極。 〔6〕前記第二の重合体のヨウ素価が、3~60mg/100mgである上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の二次電池用正極。 〔7〕前記第二の重合体のガラス転移温度が25℃以下である上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の二次電池用正極。 〔8〕正極、負極、セパレーター及び電解液を有する二次電池であって、 前記正極が、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の二次電池用正極である二次電池。」(【0015】~【0022】)との記載がある。 イ. しかしながら、上記ア.に示した【課題を解決するための手段】では、課題を解決し得ないことは、発明の詳細な説明の記載からして、明らかである。その理由は、以下の(イ-1)~(イ-13)のとおりである。 すなわち、 (イ-1) 上記(2-5)における【実施例】の記載(【0178】~【0258】)によれば、電極柔軟性、結着性および高温サイクル特性の評価は、実施例1~11の正極を用いた場合には、それぞれ、A~C、A~C、A~Bであるのに対し、比較例1の正極を用いた場合には、それぞれ、E、C、Aであり、比較例2の正極を用いた場合には、それぞれ、A、B、Cであり、比較例3の正極を用いた場合には、それぞれ、D、D、Cであり、比較例4の正極を用いた場合には、それぞれ、E、D、Eであることから、実施例1~11の正極を用いた場合には、比較例1~4の正極を用いた場合に比べ、電極柔軟性、結着性および高温サイクル特性のバランスに優れた二次電池を得ることができるとされている。 (イ-2) また、上記(2-5)における【実施例】の記載(【0178】~【0258】)によれば、プレス前電極密度についても、比較例1の正極を用いた場合の2.12g/cm3や比較例4の正極を用いた場合の2.18g/cm3に比べ、比較例2、実施例1~11の正極を用いた場合には2.28g/cm3以上の高い密度となるとされている。 (イ-3) 上記(イ-1)~(イ-2)の検討によれば、実施例1~11の正極を用いた場合には、プレス前電極密度の高い正極を得ることができ、また、電極柔軟性、結着性および高温サイクル特性のバランスに優れた二次電池を得ることができることから、本願発明が解決しようとする課題を解決できることが把握できる。 また、上記(イ-1)~(イ-2)の検討によれば、例えば、比較例2の正極を用いた場合には、プレス前電極密度の高い、また、電極柔軟性および結着性に優れた正極を得ることができるものの、高温サイクル特性に優れた二次電池が得られないことから、本願発明が解決しようとする課題を解決できないとされ、また、例えば、比較例1の正極を用いた場合には、高温サイクル特性に優れた二次電池を得ることができるものの、プレス前電極密度の高い、また、電極柔軟性および結着性に優れた正極を得ることができないことから、本願発明が解決しようとする課題を解決できないとされていることも把握できる。 (イ-4) ここで、実施例1の正極は、上記(2-5)における【実施例】の記載(【0185】~【0192】、【0257】)によれば、 「集電体と、前記集電体上に積層され、正極活物質、導電剤およびバインダーを含有してなる正極活物質層とからなり、 前記バインダーが第一の重合体及び第二の重合体からなり、 前記第一の重合体がポリフッ化ビニリデンであり、 前記第二の重合体が、1,3-ブタジエン由来の重合単位を45質量%、アクリロニトリル由来のニトリル基を有する重合単位を20質量%、ブチルアクリレート由来の(メタ)アクリル酸エステル重合単位を30質量%、メタクリル酸由来の親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位を5質量%含有してなり、ガラス転移温度が-30℃の重合体であり、 前記バインダーにおける前記第一の重合体と前記第二の重合体との比率が、質量比で80:20であり、 前記正極活物質100質量部に対して、前記バインダーを1質量部含有する、二次電池用正極」であって、 「プレス前の正極活物質層の密度が2.42g/cm3である、二次電池用正極」である。 なお、以下の検討では、実施例1の正極で用いられた、ポリフッ化ビニリデンである第一の重合体を、「本願発明の第一の重合体」といい、 また、実施例1の正極で用いられた、1,3-ブタジエン由来の重合単位を45質量%、アクリロニトリル由来のニトリル基を有する重合単位を20質量%、ブチルアクリレート由来の(メタ)アクリル酸エステル重合単位を30質量%、メタクリル酸由来の親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位を5質量%含有してなり、ガラス転移温度が-30℃の重合体である第二の重合体を、「本願発明の第二の重合体」ということがある。 (イ-5) また、実施例2~5、7、10の正極は、上記(2-5)における【実施例】の記載(【0198】~【0242】、【0257】)によれば、本願発明の第二の重合体を構成する重合体単位である、1,3-ブタジエン由来の重合単位、アクリロニトリル由来のニトリル基を有する重合単位、ブチルアクリレート由来の(メタ)アクリル酸エステル重合単位、メタクリル酸由来の親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位についての含有割合を、それぞれ、25~60質量%、5~40質量%、15~39質量%、2~15質量%に変更し、それにより、前記本願発明の第二の重合体についてのガラス転移温度を-5℃~-45℃に変更し、プレス前の正極活物質層の密度を2.32~2.41g/cm3に変更した以外は実施例1と同様の正極である。 また、実施例6の正極は、上記(2-5)における【実施例】の記載(【0218】~【0222】、【0257】)によれば、本願発明の第二の重合体を構成する重合体単位の一つである、メタクリル酸由来の親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位を、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸由来の親水性基(スルホン酸基)を有する重合単位に変更し、それにより、前記本願発明の第二の重合体についてのガラス転移温度を-29℃に変更し、プレス前の正極活物質層の密度を2.28g/cm3に変更した以外は実施例1と同様の正極であるし、 実施例9の正極は、上記(2-5)における【実施例】の記載(【0233】~【0237】、【0257】)によれば、本願発明の第二の重合体を構成する重合体単位の一つである、ブチルアクリレート由来の(メタ)アクリル酸エステル重合単位を、2-エチルヘキシルアクリレート由来の(メタ)アクリル酸エステル重合単位に変更し、それにより、前記本願発明の第二の重合体についてのガラス転移温度を-36℃に変更し、プレス前の正極活物質層の密度を2.48g/cm3に変更した以外は実施例1と同様の正極であるし、 実施例11の正極は、上記(2-5)における【実施例】の記載(【0243】~【0244】、【0257】)によれば、本願発明の第一の重合体と本願発明の第二の重合体の比率を、質量比で50:50に変更し、それにより、プレス前の正極活物質層の密度を2.45g/cm3に変更した以外は実施例1と同様の正極である。 (イ-6) そして、二次電池用正極におけるバインダー中の第一の重合体について、上記(2-5)には、「バインダー中の前記第一の重合体は、フッ素含有重合体を含有することを特徴とする」(【0038】)ところ、「本発明に用いるフッ素含有重合体は、フッ素含有モノマーの重合単位を含む重合体であり、フッ素含有モノマーとしては、フッ化ビニリデンが好ましく、本発明に用いる第一の重合体としては、ポリフッ化ビニリデンが好ましい」(【0039】~【0042】)ことが記載されている。 また、二次電池用正極におけるバインダー中の第二の重合体について、上記(2-5)には、「バインダー中の前記第二の重合体は、ニトリル基を有する重合単位、親水性基を有する重合単位、(メタ)アクリル酸エステル重合単位、及び炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位を含有することを特徴とする」(【0049】)こと、「第二の重合体は、(メタ)アクリル酸エステル重合単位を好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~40質量%、特に好ましくは20~35質量%含む」(【0050】)こと、「第二の重合体は、親水性基を有する重合単位を好ましくは0.05~20質量%、より好ましくは0.05~10質量%、さらに好ましくは0.1~8質量%、特に好ましくは1~6質量%含む」(【0051】)こと、「前記ニトリル基を有する重合単位の含有割合は、好ましくは2~50質量%、より好ましくは10~30質量%、特に好ましくは10~25質量%である」(【0054】)こと、「上記の直鎖アルキレン重合単位の含有割合は、好ましくは20~70質量%、より好ましくは25~60質量%、特に好ましくは30~60質量%である」(【0057】)こと、「ガラス転移温度(Tg)は、好ましくは25℃以下」(【0077】)であることが記載されている。 また、二次電池用正極におけるバインダーについて、上記(2-5)には、「二次電池用正極中のバインダーの含有割合は、好ましくは0.5~15質量%、より好ましくは5~15質量%、特に好ましくは8~15質量%である」(【0131】)こと、「前記バインダーにおける第一の重合体と第二の重合体との比率は、質量比で、95:5~5:95であり、好ましくは90:10~40:60、より好ましくは90:10~60:40である」(【0132】)ことも記載されている。 (イ-7) してみると、実施例1~11の記載に基づくと、本願発明が解決しようとする課題を解決できる発明として、次のものを把握することができる。 「集電体と、前記集電体上に積層され、正極活物質、導電剤およびバインダーを含有してなる正極活物質層とからなり、 前記バインダーが第一の重合体及び第二の重合体からなり、 前記第一の重合体がポリフッ化ビニリデンであり、 前記第二の重合体が、ニトリル基を有する重合単位を2~50質量%、親水性基を有する重合単位を0.05~20質量%、(メタ)アクリル酸エステル重合単位を5~50質量%、及び炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位を20~70質量%含有してなり、ガラス転移温度(Tg)が25℃以下であり、 前記バインダーにおける前記第一の重合体と前記第二の重合体との比率が、質量比で90:10~40:60であり、 前記正極活物質100質量部に対して、前記バインダーを0.5~15質量%含有する、二次電池用正極」であって、 「プレス前の正極活物質層の密度が2.28g/cm3以上である、二次電池用正極。」 (イ-8) 他方、比較例1の二次電池用正極は、上記(2-5)における【実施例】の記載(【0178】~【0258】)によれば、正極バインダーとして、前記第二の重合体は用いずに前記第一の重合体のNMP溶液からなるバインダーを製作した以外は実施例1と同様の操作を行って、正極スラリーおよび正極を得、電池を作製したとされていることからして、 バインダーが本願発明の第一の重合体からなる二次電池用正極であり、 前記バインダーにおける前記第一の重合体と前記第二の重合体との比率が、質量比で100:0であり、 プレス前の正極活物質層の密度が2.12g/cm3であること以外は、 実施例1と同様の二次電池用正極であるところ、当該正極は、上記(2-2)の記載によれば、【0005】~【0006】に記載された、従来の二次電池用正極である。 また、比較例2の二次電池用正極は、上記(2-5)における【実施例】の記載(【0178】~【0258】)によれば、正極バインダーとして、前記第一の重合体は用いずに前記第二の重合体のNMP溶液からなるバインダーを製作した以外は実施例1と同様の操作を行って、正極スラリーおよび正極を得、電池を作製したとされていることからして、 バインダーが本願発明の第二の重合体からなる二次電池用正極であり、 前記バインダーにおける前記第一の重合体と前記第二の重合体との比率が、質量比で0:100であり、 プレス前の正極活物質層の密度が2.52g/cm3であること以外は、 実施例1と同様の二次電池用正極である。 また、比較例4の二次電池用正極は、上記(2-5)における【実施例】の記載(【0178】~【0258】)によれば、正極バインダーにおける第二の重合体として、上記第2に示した第一の重合体にも第二の重合体にも該当しない重合体(以下、「第三の重合体」という。)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行って、正極スラリーおよび正極を得、電池を作製したとされていることからして、 バインダーが本願発明の第一の重合体と第三の重合体との比率を、質量比で80:20で併用してなり、 プレス前の正極活物質層の密度が2.18g/cm3であること以外は、 実施例1と同様の二次電池用正極である。 そして、これらの比較例のいずれの二次電池用正極によっても、本願発明が解決しようとする課題は解決できないとされている。 (イ-9) ところで、上記ア.に示した【課題を解決するための手段】は、例えば、「〔1〕」のとおりの、「集電体と、前記集電体上に積層され、正極活物質、導電剤およびバインダーを含有してなる正極活物質層とからなり、 前記バインダーが第一の重合体及び第二の重合体を含んでなり、 前記第一の重合体がフッ素含有重合体であり、 前記第二の重合体が、ニトリル基を有する重合単位、親水性基を有する重合単位、(メタ)アクリル酸エステル重合単位、及び炭素数4以上の直鎖アルキレン重合単位を含有してなり、 前記バインダーにおける前記第一の重合体と前記第二の重合体との比率が、質量比で95:5~5:95であることを特徴とする二次電池用正極。」(以下、「〔1〕の解決手段」という。)である。 そして、この〔1〕の解決手段は、例えば、比較例4の二次電池用正極において、その正極で用いられているバインダーのうちの少量を、比較例2で用いられたバインダーで置換した場合まで包含している。 すなわち、上記(イ-8)の検討とおり、比較例4の二次電池用正極は、バインダーが本願発明の第一の重合体と第三の重合体との比率を、質量比で80:20で併用してなり、プレス前の正極活物質層の密度が2.18g/cm3であること以外は、実施例1と同様の二次電池用正極であるところ、比較例2で用いられたバインダーは、本願発明の第二の重合体からなるバインダーであるから、本願発明の第一の重合体と第三の重合体との比率を質量比で80:20で併用してなる比較例4の二次電池用正極において、その正極で用いられているバインダーのうちの少量を、比較例2で用いられたバインダーで置換して、例えば、本願発明の第一の重合体と本願発明の第二の重合体と第三の重合体との比率を、質量比で76:5:19とした場合の二次電池用正極(以下、「検討例の二次電池用正極」という。)は、具体的には、 「集電体と、前記集電体上に積層され、正極活物質、導電剤およびバインダーを含有してなる正極活物質層とからなり、 前記バインダーが第一の重合体及び第二の重合体を含んでなり、 前記第一の重合体がフッ素含有重合体であり、 前記第二の重合体が、1,3-ブタジエン由来の重合単位を45質量%、アクリロニトリル由来のニトリル基を有する重合単位を20質量%、ブチルアクリレート由来の(メタ)アクリル酸エステル重合単位を30質量%、メタクリル酸由来の親水性基(カルボン酸基)を有する重合単位を5質量%含有してなり、ガラス転移温度が-30℃の重合体であり、 前記バインダーにおける前記第一の重合体と前記第二の重合体との比率が、質量比で76:5≒94:6であり、 前記正極活物質100質量部に対して、前記バインダーを1質量部含有する、二次電池用正極」となるから、 検討例の二次電池用正極が、〔1〕の解決手段に包含されていることは、明らかである。 (イ-10) ここで、上記(イ-9)に示した検討例の二次電池用正極では、その正極で用いられているバインダーにおける本願発明の第一の重合体と本願発明の第二の重合体と、それらの重合体には該当しない、第三の重合体との比率が、例えば、質量比で76:5:19であることから、比較例2で用いられたプレス前の正極活物質層の密度を2.52g/cm3とし得る本願発明の第二の重合体によって、プレス前の正極活物質層の密度は、比較例4で得られた2.18g/cm3よりも上昇し、 2.18×(0.76+0.19)+2.52×0.05≒2.20g/cm3程度となるように調整できるとしても、上記第3の当審拒絶理由におけるス.で指摘したとおり、当該調整によってもたらされる、プレス前後における正極活物質層の密度変化量を低減することができ、プレス後の正極活物質層において割れや欠けを有効に防止することができるということは、技術常識からして、プレス前の正極活物質層の密度の上昇の程度に応じておだやかに変化するのであって、急激に変化するわけではないから、その調整によってもたらされる、比較例4で得られた電極柔軟性,結着性,高温サイクル特性についてのそれぞれのE,D,Eという評価からの向上に関しても、比較例2で得られた電極柔軟性,結着性,高温サイクル特性についてのそれぞれのA,B,Cという評価が、5/(76+5+19)=0.05程度の割合で反映されるにすぎないから、前記の検討例の二次電池用正極では、本願発明が解決しようとする課題を解決できると認識できるまでに、向上できるとは認められない。 すなわち、二次電池用正極で得られる電極柔軟性,結着性,高温サイクル特性についての評価に関しては、 バインダーが本願発明の第一の重合体のみからなる比較例1の正極で得られた、それぞれのE,C,Aという評価と、バインダーが本願発明の第二の重合体のみからなる比較例2の正極で得られた、それぞれのA,B,Cという評価とが反映されて、 バインダーが本願発明の第一の重合体と本願発明の第二の重合体とからなるバインダーであって、それらの質量比が80:20である、実施例1の正極では、それぞれA,A,Aという評価が得られ、その質量比が50:50である、実施例11の正極では、それぞれC,A,Bという評価が得られたということが把握できること、 つまり、E,C,Aという評価の比較例1の正極におけるバインダーについて、A,B,Cという評価の比較例2のバインダーを20%の割合で置換させると、電極柔軟性には比較例2の評価Aが反映されやすく、結着性には相乗的に評価が反映され、高温サイクル特性には比較例2の評価Cが反映されにくく、それぞれ、E→A,C→A,A→Aという評価が得られ、また、比較例2のバインダーを50%の割合で置換させると、電極柔軟性は比較例1の評価Eと比較例2の評価Aの中間となり、結着性には相乗的に評価が反映され、高温サイクル特性も比較例1の評価Aと比較例2の評価Cの中間となり、それぞれ、E→C,C→A,A→Bという評価が得られることが把握できることからして、 バインダーが本願発明の第一の重合体と本願発明の第二の重合体と、それらの重合体には該当しない、第三の重合体とからなるバインダーであって、その質量比が80:0:20である、比較例4で得られた、それぞれE,D,Eという評価の正極におけるバインダーについて、例えば、その質量比を76:5:19にするという、前記の検討例の二次電池用正極では、比較例2のA,B,Cという評価が5/(76+5+19)=0.05程度の割合で反映されるにすぎないから、電極柔軟性には比較例2の評価Aが少し反映され、結着性には少し相乗的に評価が反映され、高温サイクル特性には比較例2の評価Cが反映されにくく、E→D,D→C,E→E程度の向上にとどまり、本願発明が解決しようとする課題を解決できると認識できるまでに、向上できるとは認められない。 また、仮に、プレス前の正極活物質層の密度の値自体が、必ずしも、前記の計算のとおりにはならないとしても、二次電池用正極で得られる電極柔軟性,結着性,高温サイクル特性についての評価に関しては前記のとおりのことが把握できることから、比較例4で得られた、それぞれE,D,Eという評価の正極に対して、前記の検討例の二次電池用正極では、本願発明が解決しようとする課題を解決できると認識できるまでに、向上できるとは認められない。 (イ-11) 上記(イ-9)~(イ-10)の検討から、上記ア.に示した【課題を解決するための手段】における〔1〕の解決手段には、本願発明が解決しようとする課題を解決できると認識できない場合が包含されているといえる。 (イ-12) また、上記ア.に示した【課題を解決するための手段】における〔2〕~〔8〕の解決手段にも、上記(イ-9)に示した検討例の二次電池用正極が包含されているから、それらの解決手段についても、上記(イ-10)での検討と同様にして、本願発明が解決しようとする課題を解決できると認識できない場合が包含されているといえる。 (イ-13) 上記(イ-1)~(イ-12)の検討からすると、上記ア.に示した【課題を解決するための手段】は課題を解決できない場合まで包含している、換言すると、実施例1~11に基づく本願発明が解決しようとする課題を解決できる発明についての開示を、上記ア.に示した【課題を解決するための手段】にまで拡張ないし一般化することはできないといえる。 (3-3) 本願発明についての検討 ア. 本願発明1は、上記第2に示したとおりのものであるから、上記(3-2)ア.に示した【課題を解決するための手段】と同様、バインダーが本願の第一の重合体を含んでなる比較例4の二次電池用正極において、当該バインダーのうちの少量を、本願の第二の重合体からなる比較例2で用いられたバインダーで置換したという、上記(イ-9)に示した検討例の二次電池用正極を包含するものである。 イ. してみると、本願発明1は、上記(3-2)の(イ-10)での検討と同様にして、本願発明が解決しようとする課題を解決できると認識できない場合が包含されているといえる。 ウ. また、本願発明2~5も、上記第2に示したとおりのものであり、上記(3-2)ア.に示した【課題を解決するための手段】と同様、上記(イ-9)に示した検討例の二次電池用正極を包含するものであるから、上記(3-2)の(イ-10)での検討と同様にして、本願発明が解決しようとする課題を解決できると認識できるものとはいえない。 エ. したがって、本願発明1~5は、上記第2に示したとおりのものであるところ、いずれも、本願の発明の詳細な説明に記載された発明ではない。 (4) 補足 上記第3に示したような当審拒絶理由に対して、請求人は、平成29年12月21日付けの意見書の(3.2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)において、「…このたびの補正によって、本発明の課題を達成するための必要な構成は明確に規定されました。よって、サポート要件違反とのご指摘は解消されたものと思料致します。」との主張をし、平成29年12月21日付けの手続補正によって、特許請求の範囲を上記第2に示したとおりに補正している。 しかしながら、上記第3に示したような当審拒絶理由に対する、平成29年12月21日付けの意見書での請求人の主張は、前記の主張にとどまり、具体的な意見や反論は明らかではないことから、当審は、上記第3に示したような当審拒絶理由に対して、さらなる意見があるかについて、平成30年3月30日付けで審尋をし、期間を定めて回答書の提出を求めたが、定めた期間内に回答書の提出はなされなかった。 そして、当審は、上記(3-1)~(3-3)の検討のとおり、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨の、上記第3に示した当審拒絶理由が依然として解消されていない、と判断する。 第5 むすび 以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1~5に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2017-004752

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