特許拒絶査定不服審判
2017-003533
像振れ補正装置と像振れ補正方法および撮像装置
- 審判番号
- 2017-003533
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-524680外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年03月09日
- 審決日
- 2018年10月23日
- 公報発行日
- 2018年12月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (G03B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-524680「像振れ補正装置と像振れ補正方法および撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月16日国際公開、WO2014/010303、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件出願は、2013年5月15日(優先権主張 平成24年7月12日(以下、「優先日」という。))を国際出願日とする出願であって、平成28年9月14日付けで拒絶理由が通知され、同年10月31日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月21日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、平成29年3月9日付けで本件拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。
その後、当審において平成30年1月23日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)が通知され、同年3月23日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年6月15日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)が通知され、同年8月6日付けで意見書及び手続補正書が提出された。
第2 原査定の概要
原査定の概要は、以下のとおりである。
本件出願の請求項1~8に係る発明は、本件出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(引用文献等一覧)
引用文献A.特開2006-349953号公報
引用文献B.特開2011-138166号公報
引用文献C.特開2011-137982号公報
引用文献D.特開平11-142903号公報
第3 当審拒絶理由1及び2の概要
当審拒絶理由1及び2の概要は次のとおりである。
1 当審拒絶理由1の概要
本件出願の請求項1~8に係る発明は、本件出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(引用文献等一覧)
引用文献E.特開昭62-8668号公報
引用文献F.特開2006-349953号公報(拒絶査定時の引用文献A)
引用文献G.特開平7-274056号公報
引用文献H.特開平4-129480号公報
引用文献I.特開2011-137982号公報(拒絶査定時の引用文献C)
2 当審拒絶理由2の概要
理由1
本件出願は、請求項1~6の記載が簡潔でないので、特許法第36条第6項第3号に規定する要件を満たしていない。
理由2
本件出願の請求項1、5~8に係る発明は、本件出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(引用文献等一覧)
引用文献1.特開昭62-8668号公報(当審拒絶理由1の引用文献E)(主引用例)
引用文献2.特開2006-53358号公報
引用文献3.特開平4-104666号公報
引用文献4.特開2012-103376号公報
引用文献5.米国特許出願公開第2012/0099201号明細書
引用文献6.特開平4-129480号公報(当審拒絶理由1の引用文献H)
第4 本件発明
本件出願の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明7」という。)は、平成30年8月6日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるとおりの、以下のものである。
「 【請求項1】
撮像光学系と撮像画像の画像信号を生成する撮像部を有してヨーイング方向およびピッチング方向に回転可能に支持されているレンズユニットと、
前記レンズユニットに加わる振れを検出する振れ検出部と、
前記レンズユニットの位置を検出する位置検出部と、
前記レンズユニットの重心位置を算出する重心位置算出部と、
前記レンズユニットの後端面に設けたマグネットの磁界と、前記レンズユニットを保持するユニット保持部における前記レンズユニットの後端面との対向面に設けた駆動コイルで発生させた磁界とによって、前記レンズユニットをヨーイング方向およびピッチング方向に回転駆動する駆動部と、
前記画像信号の生成時に、前記振れ検出部で振れ検出と前記位置検出部で位置の検出を繰り返し行い、前記レンズユニットで重心位置の変化を生じる動作が行われたことを判別したとき、前記重心位置算出部で前記レンズユニットの重心位置の算出を行い、前記重心位置算出部で算出された前記レンズユニットの重心位置に応じて設定したパラメータを用いて、前記振れ検出部で検出された振れに基づいて算出した前記レンズユニットの目標位置と前記位置検出部で検出された前記レンズユニットの位置との偏差、および前記レンズユニットの重心位置に応じて、比例制御と微分制御と積分制御を組み合わせて行い、前記レンズユニットの位置が目標位置と一致するように前記駆動部の駆動動作を制御して、前記撮像画像の像振れを補正する振れ補正制御部と
を備える像振れ補正装置。
【請求項2】
前記積分制御では、前記レンズユニットの重心位置に応じた補正値を用いて前記積分制御を行う
請求項1に記載の像振れ補正装置。
【請求項3】
前記補正値は、前記レンズユニットの重心位置によって変化する荷重を打ち消すように設定する
請求項2に記載の像振れ補正装置。
【請求項4】
前記重心位置算出部は、前記レンズユニットのレンズ位置および前記レンズユニットの鏡筒の繰り出し状態に基づいて前記重心位置を算出する
請求項1に記載の像振れ補正装置。
【請求項5】
前記レンズユニットに対するアクセサリの装着を検出するアクセサリ検出部をさらに備え、
前記振れ補正制御部は、前記アクセサリ検出部の検出結果を用いて前記駆動部の駆動動作を制御する
請求項1に記載の像振れ補正装置。
【請求項6】
撮像光学系と撮像画像の画像信号を生成する撮像部を有してヨーイング方向およびピッチング方向に回転可能に支持されているレンズユニットに加わる振れを検出する工程と、
前記レンズユニットの位置を検出する工程と、
前記レンズユニットの重心位置を算出する工程と、
前記レンズユニットの後端面に設けたマグネットの磁界と、前記レンズユニットを保持するユニット保持部における前記レンズユニットの後端面との対向面に設けた駆動コイルで発生させた磁界とによって、前記レンズユニットをヨーイング方向およびピッチング方向に回転駆動する工程と、
前記画像信号の生成時に、前記振れ検出と前記位置の検出を繰り返し行い、前記レンズユニットで重心位置の変化を生じる動作が行われたことを判別したとき、前記レンズユニットの重心位置の算出を行い、算出された前記レンズユニットの重心位置に応じて設定したパラメータを用いて、前記振れ検出で検出された振れに基づいて算出した前記レンズユニットの目標位置と前記位置の検出で検出された前記レンズユニットの位置との偏差、および前記レンズユニットの重心位置に応じて、比例制御と微分制御と積分制御を組み合わせて行い、前記レンズユニットの位置が目標位置と一致するように前記レンズユニットの回転駆動動作を制御して、前記撮像画像の像振れを補正する工程と
を含む像振れ補正方法。
【請求項7】
撮像光学系と撮像画像の画像信号を生成する撮像部を有してヨーイング方向およびピッチング方向に回転可能に支持されているレンズユニットと、
前記レンズユニットに加わる振れを検出する振れ検出部と、
前記レンズユニットの位置を検出する位置検出部と、
前記レンズユニットの重心位置を算出する重心位置算出部と、
前記レンズユニットの後端面に設けたマグネットの磁界と、前記レンズユニットを保持するユニット保持部における前記レンズユニットの後端面との対向面に設けた駆動コイルで発生させた磁界とによって、前記レンズユニットをヨーイング方向およびピッチング方向に回転駆動する駆動部と、
前記画像信号の生成時に、前記振れ検出部で振れ検出と前記位置検出部で位置の検出を繰り返し行い、前記レンズユニットで重心位置の変化を生じる動作が行われたことを判別したとき、前記重心位置算出部で前記レンズユニットの重心位置の算出を行い、前記重心位置算出部で算出された前記レンズユニットの重心位置に応じて設定したパラメータを用いて、前記振れ検出部で検出された振れに基づいて算出した前記レンズユニットの目標位置と前記位置検出部で検出された前記レンズユニットの位置との偏差、および前記レンズユニットの重心位置に応じて、比例制御と微分制御と積分制御を組み合わせて行い、前記レンズユニットの位置が目標位置と一致するように前記駆動部の駆動動作を制御して、前記撮像画像の像振れを補正する振れ補正制御部と、
前記振れ補正制御部の動作を制御する制御部と
を備える撮像装置。」
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1に記載された事項
当審拒絶理由2において引用された引用文献1(当審拒絶理由1の引用文献E)には、次の事項が記載されている。
(1) 「2、特許請求の範囲
(1) 被写体からの光を光学的に結像させるレンズ部と、前記レンズ部により得られる光学像を電気的情報に変換する撮像素子と、前記レンズ部と前記撮像素子を機械的に結合し光軸を形成する鏡胴部と、前記鏡胴部を所定の回動軸に対して回動可能に支持する支持体と、前記鏡胴部と前記支持体との間に回転力を発生するアクチュエータ手段と、前記鏡胴部の慣性座標に対する前記回動軸まわりの角速度を検出する慣性角速度検出手段と、前記鏡胴部と前記支持体の相対位置関係を検出する相対角度検出手段と、前記慣性角速度検出手段の出力信号と前記相対角度検出手段の出力信号を合成する合成手段と、前記合成手段の合成信号に応じて前記アクチュエータ手段に電力を供給する駆動手段と、前記レンズ部の光学的調定状態の変化によって移動する前記鏡胴部の重心位置を検出する重心位置検出手段と、前記重心位置検出手段の出力に応じて前記相対角度検出手段の検出利得を変化させる利得可変手段とを備える撮影装置。
(2) ・・・略・・・
(3) ・・・略・・・
(4)重心位置検出手段として、レンズ部の調整位置を検出するレンズ位置検出手段を使用することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の撮影装置。」(1頁左下欄4行~右下欄20行)
(2) 「3、発明の詳細な説明
産業上の利用分野
本発明は、ビデオテープレコーダ等の録画装置と組み合わせて使用されるビデオカメラ等の撮影装置で、特に撮影装置の揺動にかかわらず安定した画像を得ることのできる防振機能を有する撮影装置に関するものである。
従来の技術
近年、映像機器の性能の向上はめざましく、高品位な映像が極めて容易に得られるようになってきている。それにともない、撮影技術にも高度なものが要求されている。その1つが従来、安定した画像を得ることができなかった場所、例えば、走行中の自動車,航空機,馬上等からの撮影である。
以下、図面を参照しながら従来の防振機能を有する撮影装置について説明する。第15図は従来の防振機能を有する撮影装置の構成図であり、701はレンズ部と撮像素子を含む撮像部であり、702はカウンタウェイトであり、703は連結棒であり、704は支持棒であり、705は継手である。
以上のように構成された撮影装置についてその動作を説明する。連結棒703は、支持棒704と継手705によって回動可能に結合されている。そして、撮像部701,連結棒703,カウンタウェイト702とで構成される可動部706の重心Gが、継手705の付近に来るように、カウンタウェイト702が調整される。このような構成にすると、可動部706は継手705のまわりに大きな慣性モーメントをもつことになる。従って、この撮影装置の操作者が支持する支持棒704が揺動しても、可動部706の慣性モーメントの作用により、可動部706、つまり撮像部701の姿勢は一定に保たれる。
発明が解決しようとする問題点
しかしながら、撮像部701に含まれるレンズは、焦点距離調整,画角調整のために、前後に移動する。たとえば、第13図aに示すように、レンズ600は、固定レンズ保持部601,固定レンズ602a,602bと、焦点距離調整用移動レンズ603a,603b,焦点距離調整用移動レンズ保持部604,画角調整用移動レンズ605a,605b,画角調整用移動レンズ保持部606によって構成されている。焦点距離調整のためには、第13図a,bに示すように、焦点距離調整用移動レンズ603a,603b、及び焦点距離調整用移動レンズ保持部604が前後に移動する。画角調整のためには、第14図a,bに示すように、画角調整用移動レンズ605a,605b、及び画角調整用移動レンズ保持部606が前後に移動する。従って、焦点距離あるいは画角の光学調整を行なうと、第15図の撮像部701の重心の位置が移動することになる。その結果、可動部706の重心Gが継手705の回動軸より大幅にずれてしまうと、重力の作用によって継手705の回動軸まわりに回転力を発生させることとなり、第15図の撮像部701の姿勢が変化し、結果として撮像部701により得られる画像がすれてしまうことになる。従って、第15図の構成においてこの光学調整にともなう撮像部701の姿勢の変化を小さくさせるためには、撮像部701の重心が移動しても、可動部706全体の重心の移動が小さいように構成する必要がある。すなわち、カウンタウェイト702を撮像部701よりもかなり重くしていた。その結果、この従来の撮影装置全体の重量は非常に重く、操作者に多大の無理がかかっていた。
本発明はかかる点に鑑みてなされたもので、カウンタウェイトを用いることなく、光学調整による撮影部の姿勢の変化による画像のずれの少ない、防振機能を有する撮影装置を提供することを目的としている。」(2頁左上欄1行~右下欄13行)
(3) 「問題点を解決するための手段
本発明の装置は、レンズ部と撮像素子を含む鏡胴部と、鏡胴部を回動可能に支持する支持体と、供給電力に応じて鏡胴部と支持体との間に回転力を発生するアクチュエータ手段と、鏡胴部の慣性角速度を検出する慣性角速度検出手段と、鏡胴と支持体の相対位置関係を検出する相対角度検出手段と、焦点距離調整または画角調整によって移動する鏡胴部の重心位置を検出する重心位置検出手段と、重心位置検出手段の出力信号に応じて相対角度検出手段の検出利得を変化させる利得可変手段と、慣性角速度検出手段の出力信号と相対角度検出手段の出力信号を合成する合成手段と、合成手段の合成信号に応じてアクチュエータ手段に電力を供給する駆動手段とを備えることにより、上記の目的を達成したものである。
作用
本発明は上記の構成とすることにより、慣性角速度検出手段と、駆動手段と、アクチュエータ手段とによって支持体の揺動の鏡胴部への伝達を小さくする、防振機能を実現すると共に、レンズ部の調整による鏡胴部の重心の移動に伴って発生する鏡胴部の傾きを検出し、その補正を行なうことができる。」(2頁右下欄14行~3頁左上欄17行)
(4) 「実施例
以下本発明の撮影装置の一実施例について、図面を参照しながら説明する。第1図は本発明の実施例を示す構成図である。第1図において、102はレンズ部であり、移動レンズ103を含んでいる。104は撮像素子であり、鏡胴部101はレンズ部102と撮像素子104とで構成されている。105は鏡胴部101を回動軸106まわりに回動自在に支持する支持体である。107は鏡胴部101と支持体105の間に回転力を発生するアクチュエータである。108は鏡胴部101にとりつけられ、鏡胴部101の慣性角速度を検出する慣性角速度検出素子であり、109は慣性角速度検出素子108の出力信号を処理して慣性角速度信号を出力する慣性角速度検出器である。111は鏡胴部101と支持体105の相対角度を検出する相対角度検出素子であり、112は相対角度信号を出力する相対角度検出器である。
113は移動レンズ103の位置を検出するレンズ位置検出器であり、114はレンズ位置検出器113の出力信号を処理することにより、鏡胴部101の重心の位置を検出する重心位置検出器である。115は重心位置検出器114の出力信号aによりその利得が変化し、相対角度検出器112の出力信号bを増幅する可変増幅器である。116は慣性角速度検出器109の出力信号cと、可変増幅器115の出力信号dを合成する合成器であり、117は合成器116によって合成された信号に応じてアクチュエータ107に電力を供給する駆動器である。
次にそれぞれの構成要素の動作を説明する。まず第2図は慣性角速度検出手段の具体的な構成を示すものであって、慣性角速度検出素子108と、慣性角速度検出器109から成る。・・・略・・・鏡胴部101の回動軸106まわりの慣性角速度に比例する信号cが得られる。
第3図は相対角度検出手段の具体的な構成を示すものであって、相対角度検出素子111と、相対角度検出器112とから成る。相対角度検出素子111はホール素子であり、支持体105に取付られる。・・・略・・・電圧を検出することにより、鏡胴部101と支持体105の相対角度を検出することができる。相対角度検出器112は・・・略・・・相対角度検出素子111の出力を所定倍に差動増幅し、出力信号bを得ている。
第5図は重心位置検出手段の具体的な構成を示すもので、レンズ位置検出器113と重心位置検出器114からなる。第5図にはレンズ部102の一部が示されており、移動レンズ103を保持し、移動レンズ103と一体となって動く移動レンズ保持部213と、固定レンズを保持する固定レンズ保持部214が示されている。
移動レンズ保持部213の円筒の内側と、固定レンズ保持部214の円筒の外側に設けられたらせん状の溝のかみ合いにより、移動レンズ保持部213は、光軸215を回転軸として回転しながら光軸上を移動する。レンズ位置検出器113は、第5図に図示するように絶縁体基板上にパターンで導電体膜を設けた基板216(ハッチング部分が導電体膜を示す)と、基板216上の導電体膜と接触するように配置されたブラシ217a,217b,217c,217dとで構成される。・・・略・・・ディジタルアナログ変換器219は、ブラシ217a,217b,217c,217dの電位の組み合わせを、移動レンズ103の位置に応じた大きさの出力信号aに変換する。ところが、鏡胴部101の重心移動は、移動レンズ103の移動によって生じるので、移動レンズ103の位置を検出することによって、鏡胴部101の重心位置を検出することができる。従って、ディジタルアナログ変換器219の出力信号aは、移動レンズ103の位置を表わすと同時に、鏡胴部101の重心位置を表わしている。
第6図は利得可変手段の具体的な構成を示すものである。可変増幅器115の出力信号dは重心位置検出器114の出力信号aと相対角度検出器112の出力信号bの積となる。相対角度検出器112の出力信号bから可変増幅器115の出力信号dへの伝達を考えると、その伝達利得は重心位置検出器114の出力信号bにより制御されることになる。
第7図は合成手段の具体的な構成を示すもので、・・・略・・・可変増幅器115の出力信号dと、慣性角速度検出器109の出力信号cとが合成される。
第8図は駆動器117の具体的な構成を示すもので、・・・略・・・アクチュエータ107のコイル229には合成器116の出力信号に比例した電流が流れることになる。
第9図はアクチュエータ手段の具体的な構成を示すもので、・・・略・・・第9図の構成のもとでは、回動軸106まわりに、電流の大きさに応じた回転力を生じる。」(3頁左上欄下から3行~5頁左上欄14行)
(5) 「次に、本発明の撮影装置の防振機能について説明する。慣性座標(絶対空間から見た座標系)から見た鏡胴部101の回動軸106まわりの角度をθm、慣性角速度をωm、同じく慣性座標から見た支持体105の角度をθ0とし、アクチュエータ107以外の原因により鏡胴部101に加わる回転力をTdとする時、第1図の構成の撮影装置の防振機能の制御ブロック図は第10図のようになる。鏡胴部101と支持体105の相対角度θ0-θmは、相対角度検出素子111により検出される。相対角度検出素子111と相対角度検出器112は、第10図のブロック301で表わされ、相対角度θ0-θmのB倍の信号b(相対角度検出器の出力信号)を得る。さらにブロック302で表わされる可変増幅器115によって信号bのC倍の信号dを得る。一方、鏡胴部101の慣性角速度ωmは慣性角速度検出素子108と慣性角速度検出器109によって検出される。慣性角速度検出素子108と慣性角速度検出器109は、ブロック303で表わされ鏡胴部101の慣性角速度ωmのA倍の信号c(慣性角速度検出器109の出力信号)を得ている(なお、平滑化に使用するローパスフィルタ205の影響は、その通過周波数帯域を適当に選ぶことにより無視することができる)。信号dと信号cは加算点304(合成器116)において加算,合成され、信号eを得る。駆動器117とアクチュエータ107はブロック305で表わされ、合成器116の出力信号eの大きさに比例した回転力Taを鏡胴部101,支持体105の間に発生する。ここにgmは駆動器117の電圧-電流変換利得、ktはアクチュエータ107のトルク定数である。アクチュエータ107の発生した回転力Taはアクチュエータ107以外の原因により発生する回動軸106まわりの回転力Tdと加算され、回動軸106まわりの回転力Tmとなって鏡胴部101に加わる。ブロック306は機械的な慣性モーメントJmによる回転力Tmから角速度ωmへの伝達を表わし、ブロック307はωmとθmの関係を表わす。ここにSはラプラス演算子を意味している。
いま、
D=B・gm・kt/Jm ・・・ ・・・(1)
F=A・gm・kt/Jm ・・・ ・・・(2)
とすると、支持体の角度θ0から鏡胴θmへの伝達関数は、
G(S)=θm(S)/θ0(S)
=(D・C)/(S2+FS+D・C)・・・ ・・・(3)
となる。ここで、
ω1=2π・f1
=(D・C)/F ・・・ ・・・(4)
ω2=2π・f2
=F ・・・ ・・・(5)
とおくときに、
ω1≪ω2 ・・・ ・・・(6)
となしている。従って周波数伝達関数G(jω)の折線近似ボード線図は第11図のようになる。すなわち、慣性座標から見た支持体105の角度θ0に対する鏡胴部101の角度θmの伝達特性G(jω)は、第一の折点周波数f1以下の周波数範囲においては1(0dB)となり(線1)、f1以上で第二の折線周波数f2以下の周波数範囲では、-6dB/octで減衰し(線2)、f2以上の周波数範囲では-12dB/octで減衰している(線3)。第11図より、f1以上の周波数範囲においてθ0の振動からθmの振動への伝達量は小さくなる。その程度は、0dB(線1)と特性線の間の差Zによって表わされる。
次に、光学的調定状態が変化した場合について説明する。特定の光学的調定状態、すなわち、移動レンズ103が特定の位置にある時に、鏡胴部101の重心が回動軸106上にくるように機械的に調整すると、鏡胴部101の重心は、移動レンズ103の移動に伴い回動軸上106からはずれた位置に移動する。いま、鏡胴部101全体の質量をM、回動軸106と鏡胴部101の重心との間の距離をlとすると、重力作用によって第7式に示す回転力Tdが鏡胴部101に加わる。
Td=M・g・l ・・・ ・・・(7)
ここにgは重力加速度である。
一方、第10図の制御ブロック図において、回転力Tdから、鏡胴部101の角度θmへの伝達関数は、第8式で表わされる。
G′(S)=θm(S)/Td(S)
=1/{Jm・(S2+F・S+D・C)}
・・・ ・・・(8)
鏡胴部101の重心の移動、すなわちTdの変化は緩慢であるので、第8式の直流利得に対応した偏差が生じる。
直流利得は、
G0′=1/(Jm・D・C) ・・・ ・・・(9)
となり、第7式のTdによる鏡胴部101の角度θmへの影響は、
Δθm=(M・g・l)/(Jm・D・C) ・・・ ・・・(10)
となる。ここにΔθmは、第7式のTdによるθmのずれである。前述のようにこのΔθmは撮影画像のずれとなって表われるので、できるだけ小さいことが望ましい。
第10式において、M,lはレンズ部102の光学設計によって決まり、Jmを大きくすることは、撮影装置全体の体積,重量の増大を伴なうので望ましくない。従ってこのΔθmを小さくするためには、D・Cを大きくする必要がある。ところが、D・Cを大きく選ぶと、第4式で表わされるω1(=2π・f1)が大きくなる。すなわち、支持体105の振動から鏡胴部101の振動への伝達が減衰しはじめる周波数が上昇するため、防振効果が小さくなる。そこで鏡胴部101の重心が、回動軸106上にあるときは可変増幅器115の利得cを所定の小さな値とし、鏡胴部101の重心が、回動軸106上からはずれるに従い可変増幅器115の利得cが大きくなるように、レンズ位置検出器113,重心位置検出器114,可変増幅器115を動作させる。周波数伝達関数G′(jω)の折線近似ボード線図を第12図に示す。鏡胴部101の重心が回動軸106の上にあるとき、言いかえれば第7式のTdが0のときには、可変増幅器115の利得cを小さくしている。その特性は第12図の線4となり、その折点周波数f1が小さくなるから、大きな防振効果を得ることができる。逆に、鏡胴部101の重心が回動軸106上からはずれた時には、可変増幅器115の利得cを大きくしているので、折点周波数はf1からf1′へ上昇し、Tdからθmへ伝達は可変増幅器115の利得cの増加分に対応して、-kdB低下する(線5)。従って前述のΔθmを小さくすることができる。
以上のように本実施例によれば、レンズ部102の光学的調定状態の変化によって移動する鏡胴部101の重心位置を検出する重心位置検出手段と、その出力信号に応じて相対角度検出利得を変化させる利得可変手段を設けることにより、鏡胴部101の重心位置の変化によって生じる鏡胴部101の角度の変化を減少させることができる。」(5頁左上欄15行~6頁右下欄7行)
(6) 「発明の効果
以上のように本発明は、鏡胴部の重心位置を検出する重心位置検出手段と、重心位置検出手段の出力信号に応じて、鏡胴部と支持体の相対角度検出利得を変化させる利得可変手段とを設けることにより、支持体の振動にかかわらず安定した画像を得ることのできる防振機能を有すると共に、レンズの調定状態の変化による鏡胴部の角度の変化を少なくしている。従って本発明により、軽量かつ小型の防振機能を有する撮影装置を実現することが可能となる。」(7頁左下欄1~11行)
(7) 「4、図面の簡単な説明
第1図は本発明の撮影装置の実施例における構成図、・・・略・・・、第5図はレンズ位置検出器と重心位置検出器を示す図、・・・略・・・、第10図は本発明の実施例における制御ブロック図、・・・略・・・である。
101・・・鏡胴部、102・・・レンズ部、103・・・移動レンズ、104・・・撮像素子、105・・・支持体、106・・・回動軸、107・・・アクチュエータ、108・・・慣性角速度検出素子、109・・・慣性角速度検出器、111・・・相対角度検出素子、112・・・相対角度検出器、113・・・レンズ位置検出器、114・・・重心位置検出器、115・・・可変増幅器、116・・・合成器、117・・・駆動器。」(7頁左下欄12行~右下欄19行)
(8) 「第1図
」
(9) 「第5図
」
(10)「第10図
」
2 引用発明
上記1(1)~(10)より、引用文献1には、特許請求の範囲の請求項1の記載を引用する請求項4に記載された撮影装置であって、上記1(2)の「作用」を奏するものとして、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用発明」という。)。
「被写体からの光を光学的に結像させるレンズ部と、
前記レンズ部により得られる光学像を電気的情報に変換する撮像素子と、
前記レンズ部と前記撮像素子を機械的に結合し光軸を形成する鏡胴部と、
前記鏡胴部を所定の回動軸に対して回動可能に支持する支持体と、
前記鏡胴部と前記支持体との間に回転力を発生するアクチュエータ手段と、
前記鏡胴部の慣性座標に対する前記回動軸まわりの角速度を検出する慣性角速度検出手段と、
前記鏡胴部と前記支持体の相対位置関係を検出する相対角度検出手段と、
前記慣性角速度検出手段の出力信号と前記相対角度検出手段の出力信号を合成する合成手段と、
前記合成手段の合成信号に応じて前記アクチュエータ手段に電力を供給する駆動手段と、
前記レンズ部の光学的調定状態の変化によって移動する前記鏡胴部の重心位置を検出する重心位置検出手段と、
前記重心位置検出手段の出力に応じて前記相対角度検出手段の検出利得を変化させる利得可変手段とを備え、
重心位置検出手段として、レンズ部の調整位置を検出するレンズ位置検出手段を使用し、
慣性角速度検出手段と、駆動手段と、アクチュエータ手段とによって支持体の揺動の鏡胴部への伝達を小さくする、防振機能を実現すると共に、レンズ部の調整による鏡胴部の重心の移動に伴って発生する鏡胴部の傾きを検出し、その補正を行なう撮影装置。」
第6 対比・判断
1 本件発明1について
(1) 対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。
ア 「レンズユニット」
(ア) 引用発明の「撮像素子」は、「被写体からの光を光学的に結像させるレンズ部」「により得られる光学像を電気的情報に変換する」ものである。
技術的にみて、引用発明の「撮像素子」は、「レンズ部」「により得られる」「光学像」を入力画像としてCCDあるいはCMOS等により撮像して得られた撮像画像を電気的情報に変換することによって、撮像画像の画像信号を生成するものである。
そうすると、引用発明の「撮像素子」は、本件発明の「撮像部」に相当し、引用発明は、本件発明1の「撮像画像の画像信号を生成する」「撮像素子」という構成を具備している。
(イ) 「被写体からの光を光学的に結像させる」「レンズ部」は、本件発明1の「撮像光学系」に相当する。
(ウ) 引用発明の「鏡胴部」は、「レンズ部」と「撮像素子」を「機械的に結合し」、「光軸を形成する」ものである。そうすると、引用発明の「鏡胴部」は、「レンズ部」と「撮像素子」を保持している、すなわち、有しているということができる。
(エ) 引用発明の「鏡胴部」は、「支持体」により「前記鏡胴部」を「所定の回動軸に対して」「回動可能に支持」されている。
(オ) 上記(ア)~(エ)より、引用発明の「鏡胴部」は、本件発明1の「レンズユニット」に相当する。
また、引用発明の「鏡胴部」と、本件発明1の「レンズユニット」は、「撮像光学系と撮像画像の画像信号を生成する撮像部を有して」「回転可能に支持されている」点で共通している。
イ 「振れ検出部」
引用発明の「慣性角速度検出手段」は、「鏡胴部」の「慣性座標に対する前記回動軸まわりの角速度」を検出するものである。
ここで、「鏡胴部」の「慣性座標に対する前記回動軸まわりの角速度」を検出するということは、技術的にみて、回転軸周りの「鏡胴部」の動き、すなわち、「鏡胴部」の振れを検出するということであるから、「鏡胴部」に加わる振れを検出しているということができる。
そうすると、引用発明の「慣性角速度検出手段」は、本件発明1の「振れ検出部」に相当する。また、引用発明は、本件発明1の「レンズユニットに加わる振れを検出する」「振れ検出部」という構成を具備している。
ウ 「位置検出部」
(ア) 引用発明の「相対角度検出手段」は、「前記鏡胴部と前記支持体の相対位置関係を検出する」ものである。そうすると、引用発明の「相対角度検出手段」は、「支持体」に対する「鏡胴部」の「相対的」な「位置」を検出しているということができる。
そうすると、引用発明の「相対角度検出手段」は、「鏡胴部」の「位置」を検出しているということができる。
(イ) 上記(ア)と上記ア(オ)より、引用発明の「相対角度検出手段」は、本件発明1の「位置検出手段」に相当し、引用発明は、本件発明1の「前記レンズユニットの位置を検出する」「位置検出部」という構成を具備している。
エ 「重心位置検出部」
(ア) 引用発明の「重心位置検出手段」は、「レンズ部の調整位置を検出するレンズ位置検出手段を使用し」て、「前記レンズ部の光学的調定状態の変化によって移動する」「前記鏡胴部の重心位置」を検出するものである。
(イ) 上記ア(オ)より、引用発明の「前記鏡胴部の重心位置」は、本件発明1の「レンズユニットの重心位置」に相当する。引用発明の「重心位置検出手段」による、「レンズ部の調整位置を検出するレンズ位置検出手段を使用し」て「前記鏡胴部の重心位置」を「検出」することは、本件発明1の[レンズユニット」の「重心位置」を「算出」することに相当する(本件出願の明細書段落【0039】の「重心位置算出部62は、レンズユニット20からフォーカスレンズ311やズームレンズ312の位置および鏡筒21の繰り出し状態を示す情報を取得して、取得した情報に対応する重心位置をテーブルから選択することで、レンズユニット20の重心位置の算出を行う。」との記載によれば、本件発明1における「算出」には、レンズ位置等の情報に基づいて、テーブルに記録された重心位置を選択・取得することなども含んでいることが理解できる。)。
(ウ) したがって、引用発明の「重心位置検出手段」は、本件発明1の「重心位置算出部」に相当し、引用発明は、本件発明1の「前記レンズユニットの重心位置を算出する重心位置算出部」という構成を具備している。
オ 「駆動部」
(ア) 引用発明の「アクチュエータ手段」は、「前記鏡胴部と前記支持体との間に回転力を発生する」ものである。
また、引用発明の「鏡胴部」は、「支持体」により「前記鏡胴部を所定の回動軸に対して回動可能に支持」されている。
そうすると、引用発明の「アクチュエータ手段」は、「所定の回動軸に対して」「鏡胴部」を回転駆動するものであることは明らかである。
引用発明の「アクチュエータ手段」は、本件発明1の「駆動部」に相当する。また、上記ア(オ)より、引用発明の「アクチュエータ手段」と、本件発明1の「駆動部」は、「前記レンズユニットを回転駆動する」点で共通する。
カ 「振れ補正制御」及び「像振れ補正装置」
(ア) 引用発明は、「レンズ部」、「撮像素子」を備えた撮像装置において、「慣性角速度検出手段と、駆動手段と、アクチュエータ手段とによって支持体の揺動の鏡胴部への伝達を小さくする、防振機能を実現する」ものである。
そうすると、技術的にみて、「前記重心位置検出手段の出力に応じて前記相対角度検出手段の検出利得を変化させる利得可変手段」、「前記慣性角速度検出手段の出力信号と前記相対角度検出手段の出力信号を合成する合成手段」及び「前記合成手段の合成信号に応じて前記アクチュエータ手段に電力を供給する駆動手段」からなる構成は、撮像画像の像振れを補正する補正制御を行っているといえる。
そうすると、引用発明の該「利得可変手段」、該「合成手段」及び該「駆動手段」は、撮像画像の像振れを補正する振れ補正制御部を構成しているということができる。
(イ) 引用発明の「利得可変手段」は、「前記重心位置検出手段の出力に応じて前記相対角度検出手段の検出利得を変化させる」ている。また、引用発明の「合成手段」は、「前記慣性角速度検出手段の出力信号と前記相対角度検出手段の出力信号を合成する」ものである。
ここで、引用発明の「相対角度検出手段」は、「鏡胴部」と「支持体」の相対位置関係を検出してその検出信号を出力するものであることは明らかであるから、引用発明の「利得可変手段」は、「前記重心位置検出手段」の出力に応じて変化させられる「検出利得」により、「相対角度検出手段」の該検出信号を増幅(「検出利得」で乗算)して出力信号とするものである。また、「前記重心位置検出手段」の出力とは、「鏡胴部」の「重心位置」に対応するものである。
そうすると、引用発明は、「重心位置検出手段」(重心位置検出部)で検出(算出)された「鏡胴部」(レンズユニット)の「重心位置」に応じて設定される「検出利得」を用いて、「慣性角速度検出手段」(振れ検出部)で検出された「慣性角速度」(レンズユニットに加わる振れ)と、「相対角度検出手段」(位置検出部)で検出された「相対位置関係」(レンズユニットの位置)に基づき、「駆動手段」により、「アクチュエータ手段」(駆動部)の駆動動作を制御しているということができる。
引用発明の「重心位置検出手段」(重心位置検出部)で検出(算出)された「鏡胴部」(レンズユニット)の「重心位置」に応じて設定される「検出利得」は、本件発明1の「パラメータ」に相当し、引用発明の該「利得可変手段」、該「合成手段」及び該「駆動手段」により構成される、撮像画像の像振れを補正する振れ補正制御部(上記(ア))は、本件発明1の「撮像画像の像振れを補正する振れ補正制御部」に対応する。
そうすると、引用発明と、本件発明1は、「前記重心位置算出部で算出された前記レンズユニットの重心位置に応じて設定したパラメータを用いて、前記駆動部の駆動動作を制御して、前記撮像画像の像振れを補正する振れ補正制御部」を備えている点で共通する。
(ウ) 上記(ア)と(イ)より、引用発明(撮像装置)は、像振れ補正制御装置ともいうことができ、引用発明は、本件発明1の「像振れ補正制御装置」に相当する。
キ 上記ア~カより、本件発明1と引用発明とは、
「撮像光学系と撮像画像の画像信号を生成する撮像部を有して回転可能に支持されているレンズユニットと、
前記レンズユニットに加わる振れを検出する振れ検出部と、
前記レンズユニットの位置を検出する位置検出部と、
前記レンズユニットの重心位置を算出する重心位置算出部と、
前記レンズユニットを回転駆動する駆動部と、
前記重心位置算出部で算出された前記レンズユニットの重心位置に応じて設定したパラメータを用いて、前記駆動部の駆動動作を制御して、前記撮像画像の像振れを補正する振れ補正制御部と
を備える像振れ補正装置。」で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件発明1の「レンズユニット」は、「ヨーイング方向およびピッチング方向に」回転可能に支持されているのに対して、
引用発明の「鏡胴部」は、「所定の回転軸に対して」回転可能に支持されている点。
(相違点2)
本件発明1の「駆動部」は、「前記レンズユニットの後端面に設けたマグネットの磁界と、前記レンズユニットを保持するユニット保持部における前記レンズユニットの後端面との対向面に設けた駆動コイルで発生させた磁界とによって」レンズユニットを回転駆動するのに対して、
引用発明は、「アクチュエータ手段」は、そのようなものとなっていない点。
(相違点3)
本件発明1の「駆動部」は、「ヨーイング方向およびピッチング方向に」「前記レンズユニットを」「回転駆動するのに対して、
引用発明は、「所定の回動軸に対して」「前記鏡胴部」を回転駆動する点。
(相違点4)
本件発明1の「振れ補正制御部」は、「前記画像信号の生成時に、前記振れ検出部で振れ検出と前記位置検出部で位置の検出を繰り返し行い、前記レンズユニットで重心位置の変化を生じる動作が行われたことを判別したとき、前記重心位置算出部で前記レンズユニットの重心位置の算出を行」うものであるのに対して、
引用発明は、そのようなものとなっているかどうか不明である点。
(相違点5)
本件発明1は、「振れ補正制御部」における「前記駆動部の駆動動作」が、「前記重心位置算出部で算出された前記レンズユニットの重心位置に応じて設定したパラメータを用いて」、「前記振れ検出部で検出された振れに基づいて算出した前記レンズユニットの目標位置と前記位置検出部で検出された前記レンズユニットの位置との偏差、および前記レンズユニットの重心位置に応じて、比例制御と微分制御と積分制御を組み合わせて行い、前記レンズユニットの位置が目標位置と一致するように」「制御」されるものであるのに対して、
引用発明は、そのようなものとなっていない点。
(2) 相違点についての判断
事案に鑑み、まず、相違点5について検討する。
ア 引用文献1の「従来の技術」、「発明が解決しよう課題」(上記1(2)参照)、「問題点を解決するための手段」、「作用」(上記1(3)参照)、「発明の効果」(上記1(6)参照)及び「実施例」(上記1(4)及び1(5)参照)の記載からみて、防振機能を有する撮影装置において、焦点距離調整、画角調整のためにレンズが前後に移動すると、レンズと撮像素子を含む撮像部の重心位置が移動することになって、撮像部が、重力の作用によって継手の回転軸まわりに回転し、姿勢が変化し、撮像部により得られる画像が変化することから、従来は、撮像部よりもかなり重いカウンタウェイトを設けて撮像部の姿勢変化を小さくしていたところ、引用発明は、重いカウンタウエイトを用いることなく、光学調整による撮影部の姿勢に変化による画像のずれの少ない、防振機能を有する撮影装置を提供することを目的として、重心位置検出手段の出力信号に応じて相対角速度検出手段の検出利得を変化させる利得可変手段と、慣性角速度検出手段の出力信号と相対角度検出手段の出力信号を合成する合成手段と、合成手段の合成信号に応じてアクチュエータ手段に電力を供給する駆動手段とを備えることにより、慣性角速度検出手段と、駆動手段と、アクチュエータ手段とによって支持体の揺動の鏡胴部への伝達を小さくする、防振機能を実現すると共に、レンズ部の調整による鏡胴部の重心の移動に伴って発生する鏡胴部の傾きを検出し、その補正を行なうことで、上記の目的を達成するものである。
そうすると、引用発明においては、防振機能(振れ補正)を実現するために、「利得可変手段」によって、「重心位置検出手段」の出力信号に応じて「相対角度検出手段」の検出利得を変化させるとともに、「駆動手段」による「アクチュエータ手段」への電力の供給制御を、「慣性角速度検出手段」の出力信号と(「利得可変手段」によって検出利得を変化させた)「相対角度検出手段」の出力信号を合成する合成手段の合成信号に応じて行うような構成としたことがその技術的特徴であり、引用発明の必須の構成であることが理解できる。
してみると、引用発明において、必須の構成としている、「合成手段」により、「慣性角速度検出手段」(振れ検出部)の出力信号(慣性角速度、振れ)と「重心位置」に基づいて検出利得を変化させた「相対角度検出手段」(位置検出部)の出力信号(鏡胴部の相対角度、レンズユニットの位置)とを合成することなく、「慣性角速度検出手段」(振れ検出部)の出力信号(慣性角速度、振れ)に基づいて「鏡胴部」(レンズユニット)の目標位置を求める構成とすること、求めた「鏡胴部」(レンズユニット)の目標位置と、該「相対角度検出手段」(位置検出部)の出力信号(鏡胴部の相対角度、レンズユニットの位置)との偏差を求める構成とすること、そして、「重心位置検出手段」(重心位置算出部)で検出(算出)された「鏡胴部」(レンズユニット)の重心位置に応じて設定したパラメータを用いて、該偏差及び「鏡胴部」(レンズユニット)の重心位置に応じて、比例制御と微分制御と積分制御を組み合わせて行い、「鏡胴部」(レンズユニット)の位置が該目標位置と一致するように「アクチュエータ手段」(駆動部)の制御を行う構成とすることは、「利得可変手段」、「合成手段」を用いて「アクチュエータ手段」への電力の供給制御を行って振れ補正のための制御を行うという引用発明の必須の構成を大きく変えてしまうこととなるから、動機付けが存在しない。
イ そして、像振れ補正制御のために、「重心位置算出部で算出されたレンズユニットの重心位置に応じて設定したパラメータを用いて、振れ検出部で検出された振れに基づいて算出したレンズユニットの目標位置と位置検出部で検出された前記レンズユニットの位置との偏差、およびレンズユニットの重心位置に応じて、比例制御と微分制御と積分制御を組み合わせて行い、レンズユニットの位置が目標位置と一致するように駆動部の駆動動作を制御」することは、当審拒絶理由2において引用された特開2006-53358公報(引用文献2、当審拒絶理由1の引用文献E)、特開平4-104666号公報(引用文献3)、特開2012-103376号公報(引用文献4)、米国特許出願公開第2012/0099201号明細書(引用文献5)、特開平4-129480号公報(引用文献6、当審拒絶理由1の引用文献H)、当審拒絶理由1において引用された特開2006-349953号公報(引用文献F、原査定の引用文献A)、特開平7-274056号公報(引用文献G)、特開2011-137982号公報(引用文献I、原査定の引用文献C)、あるいは原査定において引用された特開2011-138166号公報(引用文献B)、特開平11-142903号公報(引用文献D)のいずれにも記載も示唆もされておらず、また、本件出願の優先日前に周知の技術でもない。
ウ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2~6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
同様に、本件発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献F~Iに記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 本件発明2~5について
本件発明2~5は、いずれも上記相違点5に係る本件発明1の構成を備える発明である。
してみると、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~5は、当業者であっても、引用発明、引用文献2~6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。また、本件発明2~5は、当業者であっても、引用発明、引用文献F~Iに記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 本件発明6について
本件発明6は、本件発明1の像振れ補正装置に対応する像振れ補正方法に係る発明であり、上記相違点5に係る本件発明1の「振れ補正制御部」における「前記駆動部の駆動動作」が、「前記重心位置算出部で算出された前記レンズユニットの重心位置に応じて設定したパラメータを用いて」、「前記振れ検出部で検出された振れに基づいて算出した前記レンズユニットの目標位置と前記位置検出部で検出された前記レンズユニットの位置との偏差、および前記レンズユニットの重心位置に応じて、比例制御と微分制御と積分制御を組み合わせて行い、前記レンズユニットの位置が目標位置と一致するように」「制御」される構成に対応する構成を、「撮像画像の像振れを補正する工程」として備えるものである。
してみると、本件発明1と同様の理由により、本件発明6は、当業者であっても、引用発明、引用文献2~6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。また、本件発明6は、当業者であっても、引用発明、引用文献F~Iに記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 本件発明7について
本件発明7は、本件発明1の像振れ補正装置を備えた撮像装置に係る発明であり、上記相違点5に係る本件発明1の「振れ補正制御部」における「前記駆動部の駆動動作」が、「前記重心位置算出部で算出された前記レンズユニットの重心位置に応じて設定したパラメータを用いて」、「前記振れ検出部で検出された振れに基づいて算出した前記レンズユニットの目標位置と前記位置検出部で検出された前記レンズユニットの位置との偏差、および前記レンズユニットの重心位置に応じて、比例制御と微分制御と積分制御を組み合わせて行い、前記レンズユニットの位置が目標位置と一致するように」「制御」される構成に対応する構成を備えるものである。
してみると、本件発明1と同様の理由により、本件発明7は、当業者であっても、引用発明、引用文献2~6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。また、本件発明7は、当業者であっても、引用発明、引用文献F~Iに記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 当審拒絶理由2の理由1(簡潔性)について
当審拒絶理由2の理由1として、請求項1~6の記載が簡潔でないとの拒絶理由を通知しているが、平成30年8月6日付けの手続補正により、請求項1の記載から「前記レンズユニットをヨーイング方向およびピッチング方向に回転駆動する駆動部と、」との記載が削除された結果、当該拒絶理由は解消した。
第8 原査定についての判断
1 本件発明1について
ア 本件発明1と、原査定において引用した特開2006-349953号公報(引用文献A)の段落【0035】~【0052】及び図3,4に記載された像振れ補正装置とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点5と同じ相違点で相違する。
イ 「第6 1(2)」において述べたとおり、上記相違点5に係る本件発明1の構成については、原査定において引用した引用文献B~D、当審拒絶理由2あるいは当審拒絶理由1において引用した引用文献1~6及び引用文献G、Hのいずれにも記載も示唆もされておらず、また、本件出願の優先日前に周知の技術であるともいえない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても、引用文献A~Dに記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 本件発明2~7について
本件発明2~7は、上記相違点5に係る本件発明1の構成を具備するか、あるいは、上記相違点5に対応する構成を具備する発明である。
そうすると、上記1と同様な理由により、本件発明2~7は、当業者であっても、引用文献A~Dに記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 以上のとおりであるから、原査定を維持することはできない。
第9 むずび
以上のとおり、原査定の理由によって、本件出願を拒絶することはできない。
他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-003533