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特許拒絶査定不服審判

2017-002915

粘着剤層付偏光フィルムおよび画像表示装置

審判番号
2017-002915
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-191786外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年02月28日
審決日
2018年10月02日
公報発行日
2018年11月30日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (G02B) / P18 .537-WY (G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2012-191786「粘着剤層付偏光フィルムおよび画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月17日出願公開、特開2014- 48497、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成24年8月31日の出願であって、平成28年5月6日付けで拒絶理由が通知され、同年7月8日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年12月5日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、平成29年2月28日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。 その後、平成30年3月20日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)を通知し、同年5月16日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、さらに同年6月13日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)を通知し、これに対し、同年7月5日に意見書の提出とともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされた。 第2 本件発明 本願の請求項1~18に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明18」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~18に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明は以下のとおりである。 「 偏光フィルムと、当該偏光フィルムに設けられた粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルムであって、 前記偏光フィルムは、偏光子の片側にのみ透明保護フィルムを有し、前記粘着剤層は、前記透明保護フィルムを有しない側の偏光子に設けられており、かつ 前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、オニウム-アニオン塩(B1)0.2~10重量部およびアルカリ金属塩(B2)0.05~5重量部を含有する粘着剤組成物(但し、前記粘着剤組成物は、 下記化学式1: 【化1】 [式中、R1及びR2は、それぞれ独立的に炭素数1~20のアルキル基またはアリル基を示し、R3は、水素またはメチル基を示して、nは、2~20の整数である]で表される少なくとも一つ以上のエーテル結合を有したエステル系可塑剤を含む場合、前記オニウム-アニオン塩(B1)として、4級アンモニウム系塩を含む場合、および(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対してベンゾトリアゾール基を有する化合物3~20重量部を含む場合を除く。)から形成されたものであり、前記アルカリ金属塩(B2)のアニオン部は下記一般式(1)乃至(4)、 (1):(CnF2n+1SO2)2N- (但し、nは1~10の整数)、 (2):CF2(CmF2mSO2)2N- (但し、mは1~10の整数)、 (3):-O3S(CF2)lSO3- (但し、lは1~10の整数)、 (4):(CpF2p+1SO2)N-(CqF2q+1SO2)、(但し、p、qは1~10の整数)、で表わされるものであり、かつ、 前記粘着剤層は、60℃95%RHの恒温恒湿機の条件下に500時間投入前と投入後に測定した偏光度から求められる 式:変化量ΔP(%)=(投入前の偏光度(%))-(投入後の偏光度(%))、 で表される変化量ΔP(%)が0.05以下を満足することを特徴とする粘着剤層付偏光フィルム。」 なお、本件発明2~17は、本件発明1に限定を付した発明であり、本件発明18は、本件発明1の粘着剤層付偏光フィルムを用いた画像表示装置に係る発明である。 第3 引用文献の記載事項及び引用発明 1 引用文献1 (1)引用文献の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特表2008-506833号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載事項がある。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 アクリル系粘着剤組成物において、 a)アクリル系共重合体; b)下記化学式1: 【化1】 [式中、R1及びR2は、それぞれ独立的に炭素数1~20のアルキル基またはアリル基を示し、R3は、水素またはメチル基を示して、nは、2~20の整数である] で表される少なくとも一つ以上のエーテル結合を有したエステル系可塑剤; c)アルカリ金属塩;及び d)4級アンモニウム系塩; を含むことを特徴とする、アクリル系粘着剤組成物。 【請求項2】 e)多官能性架橋剤を追加に含むことを特徴とする、請求項1に記載のアクリル系粘着剤組成物。 【請求項3】 アクリル系粘着剤組成物において、 a)アクリル系共重合体100重量部; b)化学式1で表される少なくとも一つ以上のエーテル結合を有したエステル系可塑剤0.01~15重量部; c)アルカリ金属塩0.001~7重量部; d)4級アンモニウム系塩最大10重量部;及び e)多官能性架橋剤0.01~10重量部; を含むことを特徴とする、請求項2に記載のアクリル系粘着剤組成物。 (中略) 【請求項15】 請求項1に記載のアクリル系粘着剤組成物を偏光フィルムの片面または両面の粘着剤層に含むことを特徴とする、粘着偏光板。 【請求項16】 粘着偏光板は、保護層、反射層、防眩層、位相差板、広視野角補償フィルム、及び輝度向上フィルムからなる群から選択される1種以上の層をさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載の粘着偏光板。」 イ 「【技術分野】 【0001】 本発明は、帯電防止性能に優れたアクリル系粘着剤組成物に関するものであって、さらに詳細には、耐久信頼性に優れていると同時に、帯電防止性能に優れているアクリル系粘着剤組成物に関するものである。 (中略) 【発明が解決しようとする課題】 【0012】 上記のような従来の問題点を解決するために鋭意努力した結果、粘着剤に、分子中に少なくとも一つ以上のエーテル結合を有するエステル系可塑剤と、アルカリ金属塩と、4級アンモニウム系塩とを同時に使用する場合、相乗効果により帯電防止性能をさらに向上させることができて、静電気発生を十分抑えることができることを見出した。 【0013】 この場合、分子中に少なくとも一つ以上のエーテル結合を有するエステル系可塑剤及びアルカリ金属塩のみを使用する場合に比べ、4級アンモニウム系塩を添加すると、耐久信頼性が向上するだけではなく、さらに向上された帯電防止性能を付与することができた。特に、弱く配位するアニオンが含まれた4級アンモニウム系塩の添加により、耐久信頼性に優れていながら、帯電防止性能に優れているアクリル系粘着剤組成物を提供する。 【0014】 本発明の目的は、耐久信頼性に優れていると同時に、帯電防止性能に優れているアクリル系粘着剤組成物を提供することにある。 【0015】 本発明の他の目的は、上記特性を有するアクリル系粘着剤組成物を利用して製造された偏光板、及びこの偏光板の適用された液晶表示装置を提供することにある。 【0016】 本発明の上記目的は、以下説明する本発明により全て達成できる。 【課題を解決するための手段】 【0017】 本発明は、分子中に少なくとも一つ以上のエーテル結合を有するエステル系可塑剤と、アルカリ金属塩と、4級アンモニウム系塩とを含むアクリル系粘着剤組成物を提供する。」 (2)引用文献に記載された発明 引用文献1の記載事項アに基づけば、引用文献1には、請求項16に記載された発明として、次の発明が記載されていると認められる。 「a)アクリル系共重合体; b)下記化学式1: 【化1】 [式中、R1及びR2は、それぞれ独立的に炭素数1~20のアルキル基またはアリル基を示し、R3は、水素またはメチル基を示して、nは、2~20の整数である] で表される少なくとも一つ以上のエーテル結合を有したエステル系可塑剤; c)アルカリ金属塩;及び d)4級アンモニウム系塩; を含むアクリル系粘着剤組成物を偏光フィルムの片面または両面の粘着剤層に含む粘着偏光板であって、 粘着偏光板は、保護層、反射層、防眩層、位相差板、広視野角補償フィルム、及び輝度向上フィルムからなる群から選択される1種以上の層をさらに含む粘着偏光板。」(以下、「引用発明1」という。) 2 引用文献2 (1)引用文献の記載事項 当審拒絶理由1に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2010-150396号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載事項がある。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、粘着剤組成物およびこれを用いた光学部材に関する。さらに詳細には、本発明は、光学シートとしての光学特性を阻害することがなく、良好な帯電防止性能を有する粘着層を形成することができる粘着剤組成物およびこれを用いた光学部材に関する。さらにより詳細には、本発明は、光学シートとしての光学特性を阻害することがなく、良好な帯電防止性能及び金属腐食性を有する粘着層を形成することができる粘着剤組成物およびこれを用いた光学部材に関する。 (中略) 【0009】 したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、光学シートの光学特性を阻害することがなく、良好な帯電防止性能を有する粘着層を形成することができる粘着剤組成物およびこれを備えた光学部材を提供することを目的とする。 【0010】 また、本発明の他の目的は、良好な帯電防止性能(低い表面抵抗値)及び金属腐食抑制・防止性(防錆作用)双方を具備する粘着層を形成することができる粘着剤組成物およびこれを備えた光学部材を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明者らは、上記の目的を達成すべく、鋭意研究を行った。その結果、帯電防止剤としてイオン化合物および/またはリチウム塩、ならびにベンゾトリアゾール基を有する化合物を、(メタ)アクリル酸エステル系の粘着剤組成物に添加することによって、優れた帯電防止能(低い表面抵抗値)を有しかつ優れた金属腐食抑制・防止性(防錆作用)を発揮する粘着剤層を形成することができることを知得した。上記知見に基づいて、本発明を完成するに至った。 【0012】 すなわち、本発明は、(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体成分を重合してなる重合体(A)100質量部に対し、イオン性化合物および/またはリチウム塩を含む帯電防止剤(B)0.01~3質量部、シランカップリング剤(C)0~1質量部、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)3~20質量部、ならびに架橋剤(E)0.05~5質量部、または多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)3~30質量部および活性エネルギー線開始剤(G)0~5質量部、を含む、粘着剤組成物である。 【発明の効果】 【0013】 本発明の粘着剤組成物は、帯電防止性能(低い表面抵抗値)及び金属腐食抑制・防止性(防錆作用)に優れる。したがって、本発明の粘着剤組成物を用いることにより、光学シートの光学特性を阻害することがなく、良好な帯電防止性能及び金属腐食抑制・防止能を有する粘着層を形成することができる。このため、本発明の粘着剤組成物は、各種プラスチックフィルムなどの被着体の接着に有効であり、特に偏光板に用いた場合、優れた耐光漏れ性、帯電防止性および防錆性を得ることができる。」 イ 「【0049】 [ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)] 本発明の粘着剤組成物は、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を含む。ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を使用することで、金属腐食を抑制・防止でき、また、表面抵抗値を低下して帯電防止能を付与することができる。 【0050】 帯電防止剤(B)としてのイオン性化合物は、金属腐食性をある程度有するものの、一般的に高価であり、また、配合量が多くなりすぎると、粘着性が低下することがある。このため、帯電防止剤としてイオン性化合物を使用する場合には、イオン性化合物の配合量は可能な限り少ないことが好ましい。本発明では、表面抵抗値を低下して帯電防止能を付与することができるベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を配合しているため、イオン性化合物の配合量を低減することができ、このような場合であっても、粘着剤組成物の表面抵抗値を所望の程度にまで低下して、所望の帯電防止性能を達成することができる。また、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を配合することにより高価なイオン性化合物の配合量を減らすことができるため、粘着性の低下を抑えることができ、優れた粘着性を達成できる上、コスト面でも好ましい。したがって、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を添加することによって、少量のイオン性化合物であっても、優れた帯電防止性、金属腐食抑制・防止性、粘着性を発揮でき、また、粘着剤組成物のコストをも抑えられる。 【0051】 また、帯電防止剤(B)としてのリチウム塩は、コスト面ではイオン性化合物に比して好ましいものの、金属腐食性にやや難点があり、また、配合量が多くなりすぎると、粘着性が低下することがある。このため、帯電防止剤としてリチウム塩を使用する場合にも、リチウム塩の配合量は可能な限り少ないことが好ましい。本発明では、金属腐食を抑制・防止することができるベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を配合しているため、リチウム塩の配合量を低減することができ、このような場合であっても、粘着剤組成物の金属腐食を有意に抑制・防止することができる。このため、本発明の粘着剤組成物を用いる場合には、たとえ金属と接触する部位に使用されても粘着剤成分による金属腐食が起こりにくい。また、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を配合することにより高価なリチウム塩の配合量を減らすことができるため、粘着性の低下を抑えることができる。したがって、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を添加することによって、少量のリチウム塩であっても、優れた帯電防止性、金属腐食抑制・防止性、粘着性を発揮でき、また、粘着組成物のコストをも抑えられる。」 ウ 「【0067】 本発明において、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)の配合量は、重合体(A)100質量部に対して、3~20質量部である。この範囲であれば、本発明の粘着剤組成物が優れた金属腐食の抑制・防止効果、および優れた帯電防止能(表面抵抗値低下能)を発揮しうる。該配合量は、重合体(A)100質量部に対して、好ましくは5~18質量部、より好ましくは7~15質量部である。この範囲にあれば、優れた金属腐食の抑制・防止効果、および帯電防止能(表面抵抗値低下能)がさらに達成しうる。上記ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)の配合量が3質量部未満であると、帯電防止性能や金属腐食の抑制・防止効果が十分得られない場合がある。一方、20質量部を超えると、基材に対する密着性が悪くなり、被着体の汚染性が増加したり、低温安定性が悪くなる場合がある。」 エ 「【0115】 (合成例1) 還流器および攪拌機を備えたフラスコに、n-ブチルアクリレート(株式会社日本触媒製)99質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(株式会社日本触媒製)1質量部、および酢酸エチル120質量部を投入した。次いで、窒素置換を行いながら65℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.04質量部を加え、65℃を維持しつつ6時間重合を行った。重合反応終了後、重合溶液を室温まで冷却して、これに酢酸エチル 280質量部を加えて希釈を行い、重合体(A-1)の溶液を得た。得られた重合体(A-1)溶液の固形分は20質量%、粘度は4500mPa・sであった。また、得られた重合体(A-1)の重量平均分子量は160万であった。 【0116】 (合成例2~17) 合成例1において、単量体成分の組成を、表1に示されるような組成に変更する以外は、合成例1と同様の操作を行なうことによって、重合体(A-2)~(A-17)の溶液を得た。また、得られた重合体(A-2)~(A-17)溶液の固形分、粘度、重量平均分子量を測定し、その結果を下記表3に示す。なお、下記表3において、「BA」は、ブチルアクリレートであり;「2EHA」は、2-エチルヘキシルアクリレートであり;「HEA」は、2-ヒドロキシエチルアクリレートであり;「4HBA」は、4-ヒドロキシブチルアクリレートであり;および「AA」は、アクリル酸である。 【0117】 【表3】 【0118】 (実施例1) 下記表4に示されるような組成になるように、重合体(A-1)100質量部に対して、帯電防止剤(B)としての1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロフォスフェート(東京化成工業(株)製)0.01質量部、シランカップリング剤(C)としての3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名信越シリコーンKBM-403)0.1質量部、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)としての1,2,3-ベンゾトリアゾール(東京化成工業(株)製、商品名B0094)5質量部、架橋剤(E)としてのトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名コロネートL)0.1質量部、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)としてのトリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学(株)製、商品名ライトアクリレートTMP-A)5質量部、および活性エネルギー線開始剤(G)としてのジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン(株)製、商品名DAROCUR TPO)を添加して、充分に混合して、粘着剤組成物(1)を得た。 【0119】 このようにして得られた粘着剤組成物(1)を、剥離PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製、MRF38、厚み:38μm)上に、乾燥後の厚さが25μmとなるように、ベーカーアプリケーターを用いて塗布した後、偏光板に貼り合わせをした。貼り合わせてから30分後に、剥離PETフィルム側から紫外線(UV)を下記の条件で、照射し、粘着剤層つき偏光板(1)を作製した。」 オ 「【0130】 (実施例10) 下記表4に示されるように、重合体(A)、帯電防止剤(B)、シランカップリング剤(C)、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)、架橋剤(E)、多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)および活性エネルギー線開始剤(G)を添加して、充分に混合して、それぞれ、粘着剤組成物(10)を得た。 【0131】 このようにして得られた粘着剤組成物(10)について、実施例1と同様の操作を行なって、粘着剤層つき偏光板(10)を作製した。」 カ 「【0138】 上記のようにして得られた実施例1~10の粘着剤層つき偏光板(1)~(10)および比較例1~7の比較用粘着剤層つき偏光板(1)~(7)について、下記の方法に従って、表面抵抗値、金属腐食抑制・防止性、耐光漏れ性、耐久性、粘着力、基材に対する密着性、被着体汚染性、低温安定性、リワーク性、およびゲル分率を評価した。結果を、下記表4に示す。 【0139】 なお、下記表4中、「A」は重合体(A)を;「B」は帯電防止剤(B)を;「C」はシランカップリング剤(C)を;「D」はベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を;「E」は架橋剤(E)を;「F」は多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)を;および「G」は活性エネルギー線開始剤(G)を、それぞれ、示す。また、下記表4中の各成分は、下記のとおりである。また、下記表4中、各粘着剤組成物の組成は、それぞれ、「質量部」で表わされる。 【0140】 [重合体(A)] 各実施例1~10及び比較例1~7で使用した重合体を重合体(A-1)~(A-17)で示す。 【0141】 [帯電防止剤(B)] イオン化合物1:1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロフォスフェート(東京化成工業(株)製) イオン化合物2:N-メチル-N-プロピルピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学(株)製) イオン化合物3:1-エチルピリジニウム ブロマイド(東京化成工業(株)製) イオン化合物4:1-ブチル-3-メチルピリジニウム トリフルオロメタンスルホネート(東京化成工業(株)製) リチウム塩1:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(和光純薬工業(株)製) リチウム塩2:トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(和光純薬工業(株)製) リチウム塩3:過塩素酸リチウム(和光純薬工業(株)製) [シランカップリング剤(C)] シランカップリング剤:3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業(株)製 商品名信越シリコーンKBM-403) [ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)] D-1:1,2,3-ベンゾトリアゾール(東京化成工業(株)製、商品名B0094) D-2:1-(メトキシメチル)-1H-ベンゾトリアゾール(東京化成工業(株)製、商品名M1276) D-3:1-(ホルムアミドメチル)-1H-ベンゾトリアゾール(東京化成工業(株)製、商品名F0339) [架橋剤(E)] E-1:トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名コロネートL) E-2:N,N,N’,N’-テトラグリシジルm-キシレンジアミン(三菱ガス化学(株)製、商品名テトラッドX) [多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)] F-1:トリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学(株)製、商品名ライトアクリレートTMP-A) F-2:トリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学(株)製、商品名ライトアクリレート3EG-A) [活性エネルギー線開始剤(G)] 光重合開始剤:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン(株)製、商品名DAROCUR TPO) 次に、表面抵抗値、金属腐食抑制・防止性、耐光漏れ性、耐久性、粘着力、基材に対する密着性、被着体汚染性、低温安定性、リワーク性、およびゲル分率の評価方法は、下記のとおりである。」 キ 「【0153】 【表4】 【0154】 上記表4から、本発明の実施例1~10の粘着剤組成物(1)~(10)およびこれらを用いた粘着剤層つき偏光板(1)~(10)は、比較例1~7のものと比べて、優れた耐久性を有しながら、帯電防止性や金属腐食性にも優れることが分かる。」 (2)引用文献に記載された発明 引用文献2の記載事項エ~キに基づけば、引用文献2には、実施例10として、次の発明が記載されていると認められる。 「ブチルアクリレート(BA)を93.3質量部、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)を5質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)を1質量部、アクリル酸(AA)を0.7質量部を重合して得られた重量平均分子量が140万の重合体(A-10)を100質量部からなる重合体(A)、 1-エチルピリジニウム ブロマイド(イオン化合物3)を0.5質量部及びトリフルオロメタンスルホン酸リチウム(リチウム塩2)を1質量部からなる帯電防止剤(B)、 3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランを0.1質量部からなるシランカップリング剤(C)、 1-(ホルムアミドメチル)-1H-ベンゾトリアゾール(D-3)を15質量部からなるベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)、 トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート(E-1)を0.08質量部からなる架橋剤(E)、 トリエチレングリコールジアクリレート(F-2)を23質量部からなる多官能(メタ)アクリレート系モノマー(F)、 およびジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイドを4重量部からなる活性エネルギー線開始剤(G) を添加して、充分に混合して、得られた粘着剤組成物(10)について、剥離PETフィルム上に、乾燥後の厚さが25μmとなるように、ベーカーアプリケーターを用いて塗布し、偏光板に貼り合わせてから30分後に、剥離PETフィルム側から紫外線(UV)を照射して作製した、粘着剤層つき偏光板。」(以下、「引用発明2」という。) 第4 対比・判断 1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「偏光フィルム」及び「偏光フィルムの片面または両面の粘着剤層」は「粘着偏光板」を構成するものである。したがって、引用発明1の「偏光フィルム」、「粘着剤層」及び「粘着偏光板」は、それぞれ、本件発明1の「偏光フィルム」、「当該偏光フィルムに設けられた粘着剤層」及び「粘着剤層付偏光フィルム」に相当する。 イ 引用発明1の「粘着偏光板」は、「保護層、反射層、防眩層、位相差板、広視野角補償フィルム、及び輝度向上フィルムからなる群から選択される1種以上の層をさらに含む」ものである。そして、引用発明1の「保護層」は、偏光板を構成するものであるから透明であることを要し、技術的にみて偏光子を保護するものであるといえる。そうすると、引用発明1の「保護層」は、本件発明1の「透明保護フィルム」に相当するといえる。そして、引用発明1の「粘着偏光板」は、本件発明1の「前記偏光フィルムは、偏光子の片側にのみ透明保護フィルムを有し、前記粘着剤層は、前記透明保護フィルムを有しない側の偏光子に設けられており」という要件のうち、「前記偏光フィルムは、」「透明保護フィルムを有し、」という要件を満足する。 ウ 引用発明1の「粘着剤層」は、「アクリル系粘着剤組成物」を含むものであって、この「アクリル系粘着剤組成物」は、「a)アクリル系共重合体」及び「c)アルカリ金属塩」を含むものである。そうすると、引用発明1の「粘着剤層」と本件発明1の「粘着剤層」とは、「(メタ)アクリル系ポリマー(A)」及び「アルカリ金属塩(B2)」を含有する「粘着剤組成物」「から形成されたもの」である点で共通する。 エ 以上より、本件発明1と引用発明1とは、 「偏光フィルムと、当該偏光フィルムに設けられた粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルムであって、 前記偏光フィルムは、透明保護フィルムを有し、かつ 前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)およびアルカリ金属塩(B2)を含有する粘着剤組成物から形成されたものである粘着剤層付偏光フィルム。」である点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。 [相違点1]本件発明1は、偏光子の片側にのみ透明保護フィルムを有し、前記粘着剤層は、前記透明保護フィルムを有しない側の偏光子に設けられているのに対し、引用発明1はそのような特定がなされていない点。 [相違点2]本件発明1は、粘着剤層を形成する粘着剤組成物が、[A]オニウム-アニオン塩(B1)を含有し、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、オニウム-アニオン塩(B1)0.2~10重量部およびアルカリ金属塩(B2)0.05~5重量部を含有し、[B]但し、化学式1で表される少なくとも一つ以上のエーテル結合を有したエステル系可塑剤を含む場合、前記オニウム-アニオン塩(B1)として、4級アンモニウム系塩を含む場合、および(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対してベンゾトリアゾール基を有する化合物3~20重量部を含む場合を除く粘着剤組成物であるのに対し、引用発明1は、上記[A]のようには特定されておらず、また、[B]の要件は満たさない(化学式1で表される少なくとも一つ以上のエーテル結合を有したエステル系可塑剤を含む)点。 [相違点3]本件発明1は、アルカリ金属塩のアニオン部が一般式(1)乃至(4)で表されるものであるのに対し、引用発明1は、アルカリ金属塩のアニオン部を特定していない点。 [相違点4]本件発明1は、60℃95%RHの恒温恒湿機の条件下に500時間投入前と投入後に測定した偏光度から求められる 式:変化量ΔP(%)=(投入前の偏光度(%))-(投入後の偏光度(%))、で表される変化量ΔP(%)が0.05以下を満足するのに対し、引用発明1は上記変化量ΔP(%)が0.05以下を満足するか否かが明らかでない点。 (合議体注:化学式1及び一般式(1)~一般式(4)は、前記「第2」に記載のとおりである。) (2) 判断 事案に鑑みて、[相違点2]について検討する。引用文献1の記載事項イの段落【0014】における「本発明の目的は、耐久信頼性に優れていると同時に、帯電防止性能に優れているアクリル系粘着剤組成物を提供することにある。」との記載及び、段落【0012】における「粘着剤に、分子中に少なくとも一つ以上のエーテル結合を有するエステル系可塑剤と、アルカリ金属塩と、4級アンモニウム系塩とを同時に使用する場合、相乗効果により帯電防止性能をさらに向上させることができて、静電気発生を十分抑えることができることを見出した。」、段落【0017】「本発明は、分子中に少なくとも一つ以上のエーテル結合を有するエステル系可塑剤と、アルカリ金属塩と、4級アンモニウム系塩とを含むアクリル系粘着剤組成物を提供する。」との記載に基づけば、引用発明1は、課題解決のために、アクリル系粘着剤組成物中に、化学式1で表される少なくとも一つ以上のエーテル結合を有したエステル系可塑剤を必須の成分として含むものであるといえる。 そうすると、引用発明1のアクリル系粘着剤組成物を、化学式1で表されるエーテル結合を有したエステル系可塑剤及び4級アンモニウム系塩を含まないものとすることは、当業者であっても、容易になし得たということはできない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても、引用発明1に基づいて容易に発明できたということはできない。 2 本件発明2~18について 本件発明2~17は、本件発明1に限定を付した発明であり、本件発明18は、本件発明1の粘着剤層付偏光フィルムを用いた画像表示装置に係る発明である。そうすると、本件発明2~18は、本件発明1の「粘着剤層を形成する粘着剤組成物」が、化学式1で表されるエーテル結合を有したエステル系可塑剤を含まないとする構成を備えるものである。したがって、本件発明2~18も、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1に基づいて容易に発明できたということはできない。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件発明1~18は、当業者であっても、引用発明1に基づいて容易に発明できたものではない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 1 原査定の拒絶の理由の概要は、本願の平成28年7月8日付け手続補正の特許請求の範囲の請求項1~20に係る発明は、引用文献1(特表2008-506833号公報)に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 2 しかしながら、本件発明1~18は、「粘着剤層を形成する粘着剤組成物」が、化学式1で表されるエーテル結合を有したエステル系可塑剤を含まないとする構成を備えるものである。これに対し、引用文献1に記載された発明は、その特許請求の範囲に記載されるように、アクリル系粘着剤組成物において、化学式1で表される少なくとも一つ以上のエーテル結合を有したエステル系可塑剤を含むことを必須の要件とするものである。そうすると、当業者であったとしても、引用文献1に記載された発明に基づいて、本件発明1~18とすることが、容易になし得たということができない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由1 (1)当審拒絶理由1の理由1(サポート要件)の概要は、本件出願は、平成29年2月28日付け手続補正の特許請求の範囲の請求項1~20に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものであるということができないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないというものである。 しかし、本件発明1~18は、いずれも変化量ΔP(%)が0.05以下を満足するものであり、発明の詳細な説明に記載されたものといえるものとなった。したがって、当該拒絶の理由は解消した。 (2)当審拒絶理由1の理由2(進歩性)の概要は、本件出願の平成29年2月28日付け手続補正の特許請求の範囲の請求項1~20に係る発明は、引用文献2(特開2010-150396号公報)に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 しかしながら、本件発明1~18と、前記第3の2(2)に記載した引用発明2とを対比すると、本件発明1~18は、粘着剤層を形成する粘着剤組成物が、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、オニウム-アニオン塩(B1)0.2~10重量部およびアルカリ金属塩(B2)0.05~5重量部を含有する粘着剤組成物(但し、前記粘着剤組成物は、化学式1で表される少なくとも一つ以上のエーテル結合を有したエステル系可塑剤を含む場合、前記オニウム-アニオン塩(B1)として、4級アンモニウム系塩を含む場合、および(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対してベンゾトリアゾール基を有する化合物3~20重量部を含む場合を除く。)というものであるのに対し、引用発明2は「粘着剤組成物(10)」が「1-(ホルムアミドメチル)-1H-ベンゾトリアゾール(D-3)を15質量部からなるベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)」を含有する点で、少なくとも相違している。 そして、引用文献2の記載事項アの段落【0010】における「良好な帯電防止性能(低い表面抵抗値)及び金属腐食抑制・防止性(防錆作用)双方を具備する粘着層を形成することができる粘着剤組成物およびこれを備えた光学部材を提供すること」との記載に基づけば、引用発明2が解決しようとする課題は、良好な帯電防止性能(低い表面抵抗値)及び金属腐食抑制・防止性(防錆作用)双方を具備する粘着層を形成することができる粘着剤組成物を備えた光学部材を提供することであるといえる。そして、引用文献2の記載事項イの段落【0049】における「本発明の粘着剤組成物は、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を含む。ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を使用することで、金属腐食を抑制・防止でき、また、表面抵抗値を低下して帯電防止能を付与することができる。」との記載や、記載事項ウの段落【0067】における「本発明において、ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)の配合量は、重合体(A)100質量部に対して、3~20質量部である。この範囲であれば、本発明の粘着剤組成物が優れた金属腐食の抑制・防止効果、および優れた帯電防止能(表面抵抗値低下能)を発揮しうる。」、「ベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)の配合量が3質量部未満であると、帯電防止性能や金属腐食の抑制・防止効果が十分得られない場合がある。」との記載に基づけば、本件発明2は、粘着剤組成物(10)に、重合体(A)100質量部に対して、3~20質量部のベンゾトリアゾール基を有する化合物(D)を含有することによって、良好な帯電防止性能及び金属腐食抑制・防止性を具備するという課題を解決しているものといえる。そうすると、当業者であっても、引用発明2における粘着剤組成物(10)を、「(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対してベンゾトリアゾール基を有する化合物3~20重量部を含む場合を除」いたものとすることは、容易になし得たということはできない。 したがって、当審拒絶理由1の理由2(進歩性)を維持することはできない。 2 当審拒絶理由2 当審拒絶理由2の概要は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1~20に係る発明は、明確であるということができないから、本件出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないというものである。 しかし、本件補正により、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~18に係る発明は明確なものとなり、上記拒絶理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、本件発明1~18は、当業者が引用発明1及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2017-002915

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