特許拒絶査定不服審判
2017-002262
ターミナルの製造方法およびターミナル
- 審判番号
- 2017-002262
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-207438外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年02月16日
- 審決日
- 2018年04月02日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】マブチモーター株式会社
- 【請求人代理人】森下 賢樹
- 【請求人代理人】村田 雄祐
- 【請求人代理人】三木 友由
- 分類
- P18 .121-Z (H01R) / P18 .575-Z (H01R)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-207438号「ターミナルの製造方法およびターミナル」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月10日出願公開、特開2014- 63613号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年9月20日の出願であって、平成28年4月22日付けで拒絶理由が通知され、同年6月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年2月16日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。
第2 平成29年2月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成29年2月16日付けの手続補正を却下する。
〔理由〕
1.本願補正発明
平成29年2月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1及び5を補正するものであり、その前後の記載は次のとおりである。
なお、下線部は補正箇所を示す。
(1)本件補正前の請求項1及び5の記載
「【請求項1】
2つのアームの一部に設けられた挟持部により他の板状部品を挟持することで該板状部品との電気的接続を図るターミナルの製造方法であって、
2つの挟持部の間に第1の隙間を形成する第1の工程と、
アームの一部を塑性変形させることで前記挟持部同士の間の隙間を、前記第1の隙間よりも小さな第2の隙間とする第2の工程と、
を含み、
前記狭持部は、他の板状部品を挟持する際に該板状部品と当接する当接部を有し、
前記当接部は、凸状の曲面を有し、
前記第2の工程は、前記第2の隙間の大きさがターミナルの厚みの1/3以下となるようにアームの一部を塑性変形させるターミナルの製造方法。
【請求項5】
他の板状部品を挟持することで該板状部品との電気的接続を図るターミナルであって、
一対の挟持部と、
前記挟持部がそれぞれ設けられている一対のアームと、
前記一対のアームを連結している連結部と、を有し、
前記挟持部は、該一対の挟持部の隙間を調整する隙間調整部と、他の板状部品を挟持する際に該板状部品と当接する当接部と、を有し、
前記当接部は、凸状の曲面を有し、
前記一対の挟持部の隙間は、前記挟持部の厚みの1/3以下であることを特徴とするターミナル。」
(2)本件補正後の請求項1及び5の記載
「【請求項1】
自動車用電装機器に用いられる、2つのアームの一部に設けられた挟持部により他の板状部品を挟持することで該板状部品との電気的接続を図るターミナルの製造方法であって、
2つの挟持部の間に第1の隙間を形成する第1の工程と、
アームの一部を塑性変形させることで前記挟持部同士の間の隙間を、前記第1の隙間よりも小さな第2の隙間とする第2の工程と、
を含み、
前記狭持部は、他の板状部品を挟持する際に該板状部品と当接する当接部を有し、
前記当接部は、凸状の曲面を有し、
前記第2の工程は、前記第2の隙間の大きさがターミナルの厚みの1/3以下となるようにアームの一部を塑性変形させるターミナルの製造方法。
【請求項5】
自動車用電装機器に用いられる、他の板状部品を挟持することで該板状部品との電気的接続を図るターミナルであって、
一対の挟持部と、
前記挟持部がそれぞれ設けられている一対のアームと、
前記一対のアームを連結している連結部と、を有し、
前記挟持部は、該一対の挟持部の隙間を調整する隙間調整部と、他の板状部品を挟持する際に該板状部品と当接する当接部と、を有し、
前記当接部は、凸状の曲面を有し、
前記一対の挟持部の隙間は、前記挟持部の厚みの1/3以下であることを特徴とするターミナル。」
2.補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無について
本件補正は、補正前の請求項1及び5に係る発明の「ターミナルの製造方法」及び「ターミナル」に関して、ターミナルが「自動車用電装機器に用いられる」との限定を付すものであり、かつ、補正の前後において発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
また、本件補正により付加された事項は、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0002】に記載されているので、特許法第17条の2第3項の規定に適合するとともに、同条第4項に違反するところはない。
3.独立特許要件について
上記のとおり、本件補正の請求項1及び5に関する補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから、本件補正後の請求項5に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記「1.(2)本件補正後の請求項1及び5の記載」の【請求項5】に記載したとおりのものと認める。
(2)引用文献、引用文献に記載された事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である実願平2-123599号(実開平4-81366号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付したものである。
ア
「相対向する圧接片を板状の連通部から延設し、両圧接片の間に圧接用のスロットを形成する圧接端子において、
前記圧接片に圧延部を形成することにより、スロツト幅を狭くしたことを特徴とする圧接端子。」(実用新案登録請求の範囲、明細書1頁5~9行)
イ
「【産業上の利用分野】
本考案は圧接端子に関し、特に圧接端子の板厚に対してスロット幅の狭いものを形成する技術に関するものである。
【従来の技術】
第3図に示すように従来の圧接端子1は、金属板からプレス加工等によって一体成形されるもので、・・・(中略)・・・
このような圧接端子1は、タブ状端子6がスロット5内に圧入されると、圧接片4,4の弾性力によって把持し、電気的な接続をするものである。・・・」(明細書1頁11行~2頁7行)
ウ
「第1図(a)はプレス等によって打ち抜き成形された圧接端子10を示すが、連通部3の両側から圧接片4,4が延設され、圧接片の先端拡大部4a,4a間にスロット5が形成される点では、従来例と同様である。しかし、このままでは前述のようにスロット5の幅H2が広すぎることになる。
そこで、本考案においては、第1図(b)に示すように先端拡大部4aの一部に圧延部7を形成し、この部分の板厚を薄くすることによって、スロット5の幅をH2からH1へと狭めている。
圧延部7の形成は、たとえば、第1図(c)に示すプレス加工によって行われる。
まず、両圧接片4,4を下金型の溝8に挿入する。溝8の幅は、第1図(a)に示す両圧接片4,4間の外側の幅と同一に形成し、次のプレス工程で圧接片4が外側に拡がるのを防止する。また、溝8の底部には、突起部8a,8aを形成しておく。この状態に置かれた圧接端子10に、ポンチ9,9を圧接する。各ポンチ9の先端9aと前記各突起部8aとは相互に対向するように形成されているので、拡大部4aの突起8aとポンチの先端9aとの間に挟まれる部分は押しつぶされ、板厚の薄い圧延部7が形成され、その分スロット5の幅が狭められることになる。したがって、圧延部7の幅や厚さを適当に設定することにより、所望のスロット幅H1を得ることができる。」(明細書5頁7行~6頁12行)
エ
「第2図(a)から(c)は本考案の他の実施例を示す。この実施例では、圧接片4の拡大部4aの先端が丸く形成され、圧延部7′もその内側に沿って丸く形成されている。かかる構成とすることによって、圧延部7′の周囲に圧延されない厚い部分を残し、スロット5の強度を低下させることなく、幅だけを狭くすることができる。また、タブ端子6(第3図)と接触する部分の板厚が変化しないので、タブ端子との接触圧が低下することもない。」(明細書6頁13行~7頁1行)
引用文献には、上記ア~エの記載及び第1図、第2図の記載からみて、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明〕
「相対向する圧接片4,4を板状の連通部3から延設し、両圧接片4,4の先端拡大部4a,4a間にスロット5が形成され、タブ状端子6がスロット5内に圧入されると、圧接片4,4の弾性力によって把持し、電気的な接続をする圧接端子10において、
前記先端拡大部4a,4aに圧延部7′,7′を形成することにより、スロット5の幅を狭くし、
前記先端拡大部4a,4aの先端が丸く形成されている、圧接端子10。」
(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
後者の「タブ状端子6」は、前者の「他の板状部品」に相当し、後者の「タブ状端子6がスロット5内に圧入されると、圧接片4,4の弾性力によって把持」されることは、前者の「他の板状部品を挟持する」ことに相当する。そうすると、後者の「タブ状端子6がスロット5内に圧入されると、圧接片4,4の弾性力によって把持し、電気的な接続をする圧接端子10」は、前者の「他の板状部品を挟持することで該板状部品との電気的接続を図るターミナル」に相当する。
後者の「両圧接片4,4の先端拡大部4a,4a」は、前者の「一対の挟持部」に相当し、後者の「相対向する圧接片4,4」は、先端拡大部4a,4aが設けられるものなので、前者の「挟持部がそれぞれ設けられている一対のアーム」に相当する。
後者の「板状の連通部3」は、そこから相対向する圧接片4,4が延設するものであるので、前者の「一対のアームを連結している連結部」に相当する。
後者の「圧延部7′,7′」は、先端拡大部4a,4aに形成されることでスロット5の幅を狭くし、スロット5の幅を調整するものといえるので、前者の「一対の挟持部の隙間を調整する隙間調整部」に相当し、後者の「先端拡大部4a,4aに圧延部7′,7′を形成する」構成は、前者の「挟持部は、該一対の挟持部の隙間を調整する隙間調整部と」「を有し」との構成に相当する。
後者の「先端拡大部4a,4a」は、その間に形成されるスロット5内にタブ状端子6が圧入されるものであるので、先端拡大部4a,4aの先端でタブ状端子6に当接しているといえ、前者の「挟持部は、」「他の板状部品を挟持する際に該板状部品と当接する当接部と、を有し」との構成を備えているといえる。
後者の「先端拡大部4a,4aの先端が丸く形成されている」ことは、前者の「当接部は、凸状の曲面を有し」ていることに相当する。
そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
〔一致点〕
「他の板状部品を挟持することで該板状部品との電気的接続を図るターミナルであって、
一対の挟持部と、
前記挟持部がそれぞれ設けられている一対のアームと、
前記一対のアームを連結している連結部と、を有し、
前記挟持部は、該一対の挟持部の隙間を調整する隙間調整部と、他の板状部品を挟持する際に該板状部品と当接する当接部と、を有し、
前記当接部は、凸状の曲面を有した、ターミナル。」
〔相違点1〕
本願補正発明は、ターミナルが「自動車用電装機器に用いられる」と特定されているのに対して、引用発明は、圧接端子10の具体的な用途が特定されていない点。
〔相違点2〕
本願補正発明は、「一対の挟持部の隙間は、挟持部の厚みの1/3以下である」と特定されているのに対して、引用発明は、スロット5の幅と先端拡大部4a,4aの厚みとの関係が数値で特定されていない点。
上記各相違点について以下検討する。
〔相違点1について〕
「他の板状部品を挟持することで該板状部品との電気的接続を図るターミナル」を「自動車用電装機器に用い」ることは、本願出願前周知の事項といえる(例えば、特開2002-315153号公報の段落【0001】及び【図2】の記載、米国特許出願公開第2012/0178315号明細書の段落[0019]及びFig.1の記載、特開平4-109579号公報の1頁右欄1~11行及び第4図の記載、等々を参照。)。
そうしてみると、引用発明を、相違点1に係る本願補正発明のように自動車用電装機器に用いることは、周知の事項に基いて当業者が容易になし得ることといえる。
〔相違点2について〕
引用文献には、
「本考案は圧接端子に関し、特に圧接端子の板厚に対してスロット幅の狭いものを形成する技術に関するものである。」(上記「(2)ア」参照)、
「したがって、圧延部7の幅や厚さを適当に設定することにより、所望のスロット幅H1を得ることができる。」(上記「(2)ウ」参照)
と記載されている。
当該記載によれば、引用発明は、圧接端子の板厚、すなわち先端拡大部4a,4aの厚みに対して、スロット5の幅を狭くしようとするものといえ、また、スロット5の幅は圧延部7′の幅や厚さにより適宜に設定できるものといえ、圧延部7′の周囲の圧延されない部分に対するスロット5の幅を小さくしていくことは技術的に困難性を有するものとも認められない。
そうすると、引用発明において、スロット5の幅を、先端拡大部4a,4aの厚みの1/3以下とすることは、当業者が適宜になし得ることといえる。
また、本願の明細書には、相違点2に係る本願補正発明の構成について、次のとおり記載されている。
「【0040】
通常、金属の板状の部材をプレス機で打ち抜き、隙間のある部品を製造しようとすると、隙間の寸法を板厚の寸法よりも小さくすることは難しい。しかしながら、本実施の形態に係るターミナルの製造方法であれば、厚さtの板状の部材から挟持部同士の隙間がt/3以下のターミナルを製造できる。また、製造条件をより最適化することで、挟持部同士の隙間がt/4程度のターミナルを製造することも可能となる。」
当該記載によれば、相違点2に係る本願補正発明の構成は、厚さtの板状の部材から挟持部同士の隙間がt/3以下のターミナルを製造できることを示しているに留まり、数値を特定したことにより、構造上の格別な作用効果をもたらすものとは認められない。
以上を勘案すると、引用発明を、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることといえる。
そして、本願補正発明の奏する作用及び効果を検討しても、引用発明及び周知の事項から予測できる程度のものであって格別のものではない。
よって、本願補正発明は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~8に係る発明は、平成28年6月28日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 1.(1)本件補正前の請求項1及び5の記載」の【請求項5】に記載されたとおりのものである。
2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献に記載された事項及び引用発明は、上記「第2 3.(2)」に記載したとおりである。
3.対比・判断
本願発明は、上記「第2 3.」で検討した本願補正発明から「自動車用電装機器に用いられる、」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比すると、上記「第2 3.(3)」で示したと同様の相当関係があり、前記〔一致点〕で一致し、前記〔相違点2〕で相違する。
そして、上記「第2 3.(3)」の〔相違点2について〕で検討したと同様の理由により、引用発明を相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることといえる。
よって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4.むすび
以上のとおり、本願の請求項5に係る発明(本願発明)は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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