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特許拒絶査定不服審判

2024-006009

異方導電性フィルム及び接続構造体

審判番号
2024-006009
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-098047外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2024年04月09日
審決日
2025年03月26日
公報発行日
2025年05月30日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H01R) / P18 .56 -Z (H01R) / P18 .575-Z (H01R)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第50条の2、特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022- 98047「異方導電性フィルム及び接続構造体」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 9月13日出願公開、特開2022-133317〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成26年10月28日(優先権主張 平成25年11月19日、平成26年9月22日)に出願した特願2014-219793号の一部を平成29年3月28日に新たな特許出願(特願2017-63281号)とし、その一部を平成30年7月17日に新たな特許出願(特願2018-134336号)とし、その一部を令和2年4月27日に新たな特許出願(特願2020-78370号)とし、さらにその一部を令和4年6月17日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、以下のとおりである。

令和5年 8月28日付け:拒絶理由通知(特許法第50条の2の通知

を伴う拒絶理由通知)

令和5年11月 6日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年12月26日付け:補正の却下の決定
同日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和6年 4月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和6年4月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和6年4月9日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「絶縁接着剤層と、該絶縁接着剤層に格子状に配置された導電粒子を含む異方導電性フィルムであって、
任意の導電粒子と、該導電粒子に隣接する導電粒子との中心間距離につき、任意の導電粒子と最も短い距離を第1中心間距離とし、その次に短い距離を第2中心間距離とした場合に、
第1中心間距離及び第2中心間距離が、それぞれ導電粒子の粒子径の1.5~5倍であり、
任意の導電粒子P0と、任意の導電粒子P0と第1中心間距離にある導電粒子P1と、任意の導電粒子P0と第1中心間距離又は第2中心間距離にある導電粒子P2で形成される鋭角三角形について、導電粒子P0、P1の中心を通る直線の方向を第1配列方向とし、導電粒子P1、P2の中心を通る直線の方向を第2配列方向とし、導電粒子P0、P2の中心を通る直線の方向を第3配列方向とした場合に、第1配列方向、第2配列方向及び第3配列方向のうち、少なくとも2つの配列方向が異方導電性フィルムの長手方向に対して傾いており、
前記導電粒子は、各配列方向に沿ってピッチを持つように格子状に配置されている異方導電性フィルム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の、出願時の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「絶縁接着剤層と、該絶縁接着剤層に格子状に配置された導電粒子を含む異方導電性フィルムであって、
任意の導電粒子と、該導電粒子に隣接する導電粒子との中心間距離につき、任意の導電粒子と最も短い距離を第1中心間距離とし、その次に短い距離を第2中心間距離とした場合に、
第1中心間距離及び第2中心間距離が、それぞれ導電粒子の粒子径の1.5~5倍であり、
任意の導電粒子P0と、任意の導電粒子P0と第1中心間距離にある導電粒子P1と、任意の導電粒子P0と第1中心間距離又は第2中心間距離にある導電粒子P2で形成される鋭角三角形について、導電粒子P0、P1を通る直線の方向を第1配列方向とし、導電粒子P1、P2を通る直線の方向を第2配列方向とし、導電粒子P0、P2を通る直線の方向を第3配列方向とした場合に、第1配列方向、第2配列方向及び第3配列方向のうち、少なくとも2つの配列方向が異方導電性フィルムの長手方向に対して傾いている異方導電性フィルム。」

2 補正の適否

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「導電粒子P0、P1を通る直線」、「導電粒子P1、P2を通る直線」、及び「導電粒子P0、P2を通る直線」に関して、「導電粒子P0、P1の中心を通る」、「導電粒子P1、P2の中心を通る」、「導電粒子P0、P2の中心を通る」との限定を付加し、さらに、「導電粒子」に関して、「前記導電粒子は、各配列方向に沿ってピッチを持つように格子状に配置されている」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項

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ア 引用文献1

(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開平9-320345号公報(平成9年12月12日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は注目箇所を示すために当審で付したものである。)

「【請求項2】 シート状の絶縁性接着フィルムと、該フィルムの1面に沿って多数列に配列された導電粒子とを具え、該導電粒子の列の延出方向が前記フィルムの1辺に直交する方向に対して所定角度傾斜することを特徴とする異方導電性フィルム。」

「【0002】
【従来の技術】厚み方向に導電性を有し、面に沿った方向に絶縁性を示す異方導電性フィルム(AnisotropicConductive Film、以下単にACFという)は、高密度な電気接続、例えばフィルムキャリア又はFPC(可撓性回路基板)とLCD(液晶表示装置)との間の接続等に用いられている。接続すべき対向電極間にACFを挟んで加熱、加圧することにより、ACF内に互いに離間して配置された導電粒子が対向電極間に挟まれて電気的な接続を担い、周囲の接着剤を硬化させることによりその接続を保持する。導電粒子同士は互いに接触していないので、隣接する電極間は絶縁性が保たれる。
【0003】ACF(100)内の導電粒子(102)は、ランダムに分散配置される(特開昭59-93323号公報参照)か、又は図6に示される如く格子状に配列される(特開平1-124977号公報参照)のが一般的である。前者は、電極上の導電粒子の個数密度が不均一なために接続すべき対向電極間の良好な導電性を確保するのが困難であると共に、隣接電極間において導電粒子の個数密度が部分的に高い場所が生じるため導電粒子間又は隣接する電極間の絶縁性を確保するのが困難である。他方、後者は、対向電極間の通電容量及び導電粒子間の絶縁性が確保できる点で前者より優れている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】導電粒子を格子状に配列することにより上述の利点が得られるものの、隣接する導電粒子の中心間の距離(配列ピッチ)を単位長さとした場合、単位面積当りの導電粒子の数は1個であり、配列密度は決して高くない。このため、比較的通電量の多いIC(集積回路)及び基板間の相互接続には、格子状に配列された導電粒子を有するACFは不適合である。
【0005】また、配列ピッチPの整数倍の値と電極幅の値とが一致する場合、図7に示される如く、電極110の両側の辺112上に導電粒子102が位置することがありうる。この場合、当該辺上の導電粒子は電極と確実に接触するものではないので、実質的に通電に寄与せず、通電容量が低下してしまうという問題がある。
【0006】従って、本発明は、導電粒子の配列密度が高く、通電容量の大きいACFを提供することを目的とする。」
「【0011】図1において、ACF1は、シート状に形成されたエポキシ系又はアクリル系等の絶縁性接着剤フィルム2の主面に沿って多数のニッケル等の金属製導電粒子3を後述する如く配列させたものである。ACF1の寸法はACFが使用される応用例に依存するが、PDP(プラズマ ディスプレー パネル)に用いられる本実施形態のACF1の場合、縦(Y方向)2mm、厚さ20~25μmであり、横(X方向)150mmを単位とする。
【0012】導電粒子3の各列は接着剤フィルム2の長手辺5に直交する方向(Y方向)に対して所定角度αだけ傾斜して延びると共に、隣接する導電粒子列が互いに千鳥(スタガ)配列されている。本実施形態において特徴的なのは、任意の導電粒子3aは、その周囲の6個の導電粒子3b、3c、3d、3e、3f、3gのいずれとも等距離に配置されている点である。本明細書では、この配置を六方配置と称する。この六方配置によれば、最も近接する3個の導電粒子3a、3b、3cの各中心が正三角形6の各頂点に配置されることになる。このため、正三角形6の1辺の長さを単位長さとすると、正三角形6の面積0.25√3内に0.5個の導電粒子3が存在するので、導電粒子3の密度は約1.15個となる。従って、六方配置の密度は、格子配列の密度(1個)より常に大きくなるばかりでなく、後述する如く近接する導電粒子3、3間の距離を一定にする条件下では最も大きくなる。」
「【0014】図3は、本発明の第3実施形態のACF20をPDP等の電極8上に重ねた状態を示す平面図である。ACF20の導電粒子23の配列はスタガ配列であるが、第1実施形態のACF1との相違点は、導電粒子23の配置パターン設計の容易化のために任意の導電粒子23fのY座標と、その導電粒子23fの2列隣りの導電粒子23bのY座標とを同じ値にしている。このため、導電粒子23aとその周囲の各導電粒子23b、23c、23d、23e、23f、23gとの距離は全て等しくなることはなく、正確な六方配列ではない。しかし、最短である導電粒子23aと23b(又は23e)との間の距離が最長である導電粒子23aと23c(又は23f)との間の距離と著しく相違するものではないので、第1実施形態に近似した高い配列密度が得られることが理解されよう。
【0015】さて、ACF20の各導電粒子列は、接着剤フィルム22の長手辺25に直交する方向に所定角度αだけ傾斜しており、長手辺25は電極8の側辺8a、8bと直交して配置されるので、側辺8a、8bに対して角度α傾くことになる。このため、側辺8a、8b上に配置される導電粒子23b、23fに対して各導電粒子列の延長方向に沿って隣接する導電粒子23c、23hは側辺8a、8b上に位置することはない。従って、ごく一部の導電粒子(23b、23f等)を除き、電極8上に配置された導電粒子は全て導電を担うので、通電容量が著しく低下することはない。よって、電極8によって通電量がばらつくことはない。
【0016】角度αは、電極8の側辺8a、8b上に配置される導電粒子23の個数が最少になるように設定すべきであり、導電粒子23の外径R及び同一列内の導電粒子23間のピッチLに依存する。側辺8a、8b上に配置される導電粒子23b、23fに対して各導電粒子列の延長方向に沿って隣接する導電粒子23c、23hが側辺8a、8b上に位置しないことが望ましいのであるから、導電粒子23c、23hは、導電粒子23b,23fに対して導電粒子の外径RだけX方向にシフトすることが要求される。従って、角度αはsinα=R/Lを満たす角度以上であるのが好適である。尚、角度αは0°より大きければ上記式を満足する角度未満であっても通電容量を従来の最悪値より大きくすることはできる。しかし、側辺8a、8b上に位置する導電粒子23の数が上記好適角度の場合より多くなるので、通電容量増大の効果は半減する。また、上述の角度αについての議論は、第1実施形態のACF1及び第2実施形態のACF10に適用できるばかりでなく、単純な格子配列のACFにも適用できることは勿論である。」
「【図3】
[図:0001422172000001.jpg]
」

(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

a 引用文献1に記載された技術は、異方導電性フィルム(Anisotropic Conductive Film、以下単に「ACF」という。)に関するものであり(【0002】)、導電粒子の配列密度が高く、通電容量の大きいACFを提供することを課題としたものである(【0006】)。

b 第3実施形態のACF20と第1実施形態のACF1の相違点は導電粒子23の配置パターンであるから、ACF20は、ACF1と同様に、絶縁性接着フィルム2と、絶縁性接着フィルム2に千鳥(スタガ)配列に配置された導電粒子23を具えている(【請求項2】、【0011】、【0014】)。

c 図3において、導電粒子23aと該導電粒子23aの周囲の各導電粒子23b、23c、23d、23e、23f、23gとの距離につき、導電粒子23aと導電粒子23b(又は23e)との距離は最短であり、導電粒子23aと導電粒子23c(又は23f)との距離は最長であり、導電粒子23aと導電粒子23d(又は23g)との距離は最短の距離の次に短い距離である(【0014】)。

d 図3において、導電粒子23aと、導電粒子23aと最短の距離にある導電粒子23bと、導電粒子23aと最短の距離の次に短い距離にある導電粒子23gで形成される鋭角三角形について、導電粒子23a、導電粒子23bを通る直線の方向を第1配列方向、導電粒子23b、導電粒子23gを通る直線の方向を第2配列方向、導電粒子23a、導電粒子23gを通る直線の方向を第3配列方向とした場合に、第1配列方向、第2配列方向及び第3配列方向がACF20の長手方向に対して傾いている。

また、図3には、導電粒子の中心間距離をピッチLとし、導電粒子の中心を通る直線からなる配列が示されており、導電粒子23a、23d、23gは、この配列と同一方向の配列内にあるから、第3配列方向の直線は、導電粒子23a、23gの中心を通る直線である(【0016】、図3)。

e 図3において、導電粒子23は、第3配列方向に沿ってピッチを持つように千鳥(スタガ)配列に配置されている(【0014】、【0016】)。

(ウ)引用発明

上記(ア)、(イ)から、引用文献1には第3実施形態として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「絶縁性接着フィルム2と、該絶縁性接着フィルム2に千鳥(スタガ)配列に配置された導電粒子23を具えているACF20であって、
導電粒子23aと、該導電粒子23aの周囲の各導電粒子23b、23c、23d、23e、23f、23gとの距離につき、導電粒子23aと導電粒子23bとの距離は最短であり、導電粒子23aと導電粒子23gとの距離は最短の距離の次に短い距離であり、
導電粒子23aと、導電粒子23aと最短の距離にある導電粒子23bと、導電粒子23aと最短の距離の次に短い距離にある導電粒子23gで形成される鋭角三角形について、導電粒子23a、導電粒子23bを通る直線の方向を第1配列方向とし、導電粒子23b、導電粒子23gを通る直線の方向を第2配列方向とし、導電粒子23a、導電粒子23gの中心を通る直線の方向を第3配列方向とした場合に、第1配列方向、第2配列方向及び第3配列方向がACF20の長手方向に対して傾いており、
導電粒子23は、第3配列方向に沿ってピッチを持つように千鳥(スタガ)配列に配置されているACF20。」

イ 引用文献2

原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2011-231136号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。(下線は注目箇所を示すために当審で付したものである。)

「【0001】
本発明は、微細パターンの電気的接続において、微小面積の電極の電気的接続性に優れると共に、微細な配線間の絶縁破壊(ショート)が起こりにくく、絶縁層を介して圧痕観察した際に明瞭な圧痕が観察可能な異方導電性接着フィルム及びその製造方法に関する。」
「【0008】
本発明が解決しようとする課題は、微細パターンの電気的接続において、微小面積の電極の電気的接続性に優れると共に、微細な配線間の絶縁破壊(ショート)が起こりにくく、絶縁層を介して圧痕観察した際に明瞭な圧痕が観察可能な異方導電性接着フィルム及びその製造方法を提供することである。」
「【0023】
導電粒子の中心間距離の平均は、導電粒子の平均粒径の1.5倍以上5倍以下であることが好ましく、より好ましくは1.55倍以上4.6倍以下、更に好ましくは1.6倍以上4.3倍以下、更に好ましくは1.65倍以上4.0以下である。該中心間距離の平均を導電粒子の平均粒径の1.5倍以上にすることで、面方向の絶縁性、即ち、隣接する電極間の絶縁性を高レベルで維持できる。また、該中心間距離の平均を導電粒子の平均粒径の5倍以下にすることで、厚さ方向の導電性、即ち接続電極間の電気的接続性を維持できる導電粒子密度を良好に得ることができ、異方導電性接着フィルムとしての高い性能が発揮される。」

ウ 引用文献3

本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2007-9176号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。(下線は注目箇所を示すために当審で付したものである。)

「【0001】
本発明は、微細パターンの電気的接続において、微小面積の電極の電気的接続性に優れると共に、微細な配線間の絶縁破壊(ショート)を起こしにくく、異なる電極パターンの半導体チップに対しても接続可能で、長期に渡り接続安定性を保持できる異方導電性接着フィルムに関する。」
「【0006】
本発明は、微細パターンの電気的接続において、微小面積の電極の電気的接続性に優れると共に、微細な配線間の絶縁破壊(ショート)を起こしにくく、異なる電極パターンの半導体チップに対しても接続可能で、長期に渡り接続安定性を保持できる異方導電性接着フィルムの提供を目的とする。」
「【0013】
本発明の異方導電性接着フィルムは、導電粒子が特定の中心間距離で、更にその中心間距離が特定の変動係数を有して配列されることによって、高い異方導電性を有している。即ち、本発明の異方導電性接着フィルムは、その導電粒子の中心間距離の平均が2μm以上20μm以下であり、かつ、導電粒子の平均粒径の1.5倍以上5倍以下である。2μm以上の中心間距離でかつ導電粒子の平均粒径の1.5倍以上にすることで、面方向の絶縁性、即ち、隣接する電極間の絶縁性を高レベルで維持できる。一方、中心間距離を20μm以下でかつ導電粒子の平均粒径の5倍以下にすることで、厚さ方向の導電性、即ち接続電極間の電気的接続性を維持できる導電粒子密度を得ることができ、異方導電性接着フィルムとして高い性能を発揮する。導電粒子の中心間距離の平均は、好ましくは2.5μm以上18μm以下、更に好ましくは3μm以上16μm以下、更に好ましくは3.5μm以上15μm以下であり、更に好ましくは4μm以上13μm以下であり、導電粒子の平均粒径に対して、好ましくは1.55倍以上4.5倍以下、更に好ましくは1.6倍以上4倍以下、更に好ましくは1.65倍以上3.5倍以下である。導電粒子の中心間距離の変動係数は、導電粒子の中心間距離の標準偏差をその平均値で割った値であり、本発明においては、0.025以上0.5以下である。好ましくは0.05以上0.45以下、更に好ましくは0.07以上0.4以下、更に好ましくは0.08以上0.35以下、更に好ましくは0.1以上0.3以下である。0.025以上にすることで、異なる電極パターンの半導体チップであっても安定した接続が可能であり、一方、0.5以下とすることで、接続電極間に捕捉される導電粒子数が安定し、電極ごとの接続抵抗のバラツキが小さく、安定した接続が得られる。」

(3)引用発明との対比

ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「絶縁性接着フィルム2」は本件補正発明の「絶縁接着剤層」に相当し、以下同様に、

「千鳥(スタガ)配列に配置された」という事項は「格子状に配置された」という事項に、

「導電粒子23」は「導電粒子」に、

「具えている」という事項は「含む」という事項に、

「ACF20」は「異方導電性フィルム」に、それぞれ相当する。

引用発明の「導電粒子23a」は、【0014】における「第1実施形態のACF1との相違点は、導電粒子23の配置パターン設計の容易化のために任意の導電粒子23fのY座標と、その導電粒子23fの2列隣りの導電粒子23bのY座標とを同じ値にしている。」との記載から、第1実施形態における「導電粒子3a」と同様に任意の導電粒子である(【0012】)と理解できるから、本件補正発明の「任意の導電粒子」又は「任意の導電粒子P0」に相当する。また、引用発明の「該導電粒子23aの周囲の各導電粒子23b、23c、23d、23e、23f、23g」は本件補正発明の「該導電粒子に隣接する導電粒子」に、それぞれ相当する。

引用発明の「導電粒子23aと、該導電粒子23aの周囲の各導電粒子23b、23c、23d、23e、23f、23gとの距離」は、【0004】における「隣接する導電粒子の中心間の距離(配列ピッチ)を単位長さとした場合」との記載から、導電粒子23aと各導電粒子23b、23c、23d、23e、23f、23gとの中心間の距離であることは明らかであるから、本件補正発明の「任意の導電粒子と、該導電粒子に隣接する導電粒子との中心間距離」に相当する。

引用発明の「導電粒子23aと導電粒子23bとの距離は最短であり」という事項は、本件補正発明の「任意の導電粒子と最も短い距離を第1中心間距離とし」という事項に、以下同様に、「導電粒子23aと導電粒子23dとの距離は最短の距離の次に短い距離であり」という事項は「その次に短い距離を第2中心間距離とした場合に」という事項に相当する。

引用発明の「最短の距離」は本件補正発明の「第1中心間距離」に相当し、以下同様に、

「導電粒子23b」は「導電粒子P1」に、

「最短の距離の次に短い距離」は「第2中心間距離」に、

「導電粒子23g」は「導電粒子P2」に相当する。

引用発明の「導電粒子23a、導電粒子23bを通る直線の方向を第1配列方向とし」という事項と本件補正発明の「導電粒子P0、P1の中心を通る直線の方向を第1配列方向とし」という事項とは、「導電粒子P0、P1を通る直線の方向を第1配列方向とし」という点で共通し、以下同様に、「導電粒子23b、導電粒子23gを通る直線の方向を第2配列方向とし」という事項と「導電粒子P1、P2の中心を通る直線の方向を第2配列方向とし」という事項とは、「導電粒子P1、P2を通る直線の方向を第2配列方向とし」という点で共通する。

引用発明の「導電粒子23a、導電粒子23gの中心を通る直線の方向を第3配列方向とした場合に」という事項は本件補正発明の「導電粒子P0、P2の中心を通る直線の方向を第3配列方向とした場合に」という事項に相当し、以下同様に、「第1配列方向、第2配列方向及び第3配列方向がACF20の長手方向に対して傾いており」という事項は「第1配列方向、第2配列方向及び第3配列方向のうち、少なくとも2つの配列方向が異方導電性フィルムの長手方向に対して傾いており」という事項に相当する。

引用発明の「導電粒子23は、第3配列方向に沿ってピッチを持つように千鳥(スタガ)配列に配置されている」という事項と本件補正発明の「前記導電粒子は、各配列方向に沿ってピッチを持つように格子状に配置されている」という事項は、「前記導電粒子は、少なくとも第3配列方向に沿ってピッチを持つように格子状に配置されている」という点で共通する。

イ 一致点及び相違点

以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>

「 絶縁接着剤層と、該絶縁接着剤層に格子状に配置された導電粒子を含む異方導電性フィルムであって、
任意の導電粒子と、該導電粒子に隣接する導電粒子との中心間距離につき、任意の導電粒子と最も短い距離を第1中心間距離とし、その次に短い距離を第2中心間距離とした場合に、
任意の導電粒子P0と、任意の導電粒子P0と第1中心間距離にある導電粒子P1と、任意の導電粒子P0と第1中心間距離又は第2中心間距離にある導電粒子P2で形成される鋭角三角形について、
導電粒子P0、P1を通る直線の方向を第1配列方向とし、導電粒子P1、P2を通る直線の方向を第2配列方向とし、導電粒子P0、P2の中心を通る直線の方向を第3配列方向とした場合に、
第1配列方向、第2配列方向及び第3配列方向のうち、少なくとも2つの配列方向が異方導電性フィルムの長手方向に対して傾いており、
前記導電粒子は、少なくとも第3配列方向に沿ってピッチを持つように格子状に配置されている異方導電性フィルム。」

<相違点1>

本件補正発明では、第1中心間距離及び第2中心間距離が、それぞれ導電粒子の粒子径の1.5~5倍であるのに対して、引用発明では、そのような特定はされていない点。

<相違点2>

第1配列方向及び第2配列方向に関して、本件補正発明では、導電粒子P0、P1の中心及び導電粒子P1、P2の中心を通るのに対して、引用発明では、導電粒子23a、23bの中心及び導電粒子23b、23gの中心を通るか不明である点。

<相違点3>

導電粒子が少なくとも第3配列方向に沿ってピッチを持つ点に関して、本件補正発明では、各配列方向に沿ってピッチを持つのに対し、引用発明では、第3配列方向に沿ってピッチを持つものであり、第1配列方向及び第2配列方向に沿ってピッチを持つかどうか不明である点。

(4)判断

以下、相違点について検討する。

ア 相違点1について

異方導電性フィルムにおいて、隣接する電極間の絶縁性を維持するために導電粒子の中心間距離を導電粒子の粒子径の1.5倍以上とし、接続電極間の導電性を維持するために導電粒子の中心間距離を導電粒子の粒子径の5倍以下とすることは、従来より広く知られており、例えば、引用文献2及び3にも開示されている(以下、「周知技術」という)。

そして、引用発明は、上記周知技術と同様、異方導電性フィルムに関するものであり、隣接する電極間の絶縁性の維持と接続電極間の導電性維持という課題を内在しているといえる。

したがって、当該課題を解決するために、周知技術に倣い、引用発明において導電粒子23aと導電粒子23bとの中心間距離、及び導電粒子23aと導電粒子23dとの距離を導電粒子の粒子径の1.5~5倍とすることで、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは当業者であれば容易に想到し得たことである。

イ 相違点2、3について

相違点2、3は互いに関連するのでまとめて検討する。

上記(2)ア(ア)で摘記した引用文献1の【0014】には、「配置パターン設計の容易化」という課題が示唆されており、同【0016】の記載及び図3には、導電粒子23aと導電粒子23gはその中心を通る直線上に所定のピッチで配置されることが示唆されているから、配置パターン設計を容易にするために、導電粒子23aと導電粒子23b、及び導電粒子23bと導電粒子23gも同様に、導電粒子23aと導電粒子23bをその中心を通る第1配列方向に沿って所定のピッチで配置し、導電粒子23bと導電粒子23gをその中心を通る第2配列方向に沿って所定のピッチで配置することで、相違点2及び3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 本件補正発明が奏する作用効果について

本件補正発明の奏する作用効果は、相違点1~3を総合的に勘案しても、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ 請求人の主張について

請求人は、審判請求書において「(ニ)また、引例9で開示されている異方性導電フィルムは、樹脂層に導電粒子を散布しブロー処理した後に2軸延伸して形成した異方性導電フィルムですので、本発明のように、第1配列方向、第2配列方向、第3配列方向が対応する導電粒子の中心を結んだ直線の方向であると正確に定義されているものと解することはできません。つまり、引例9では、厳格な配列形状の定義はなされておらず、そもそも本願発明のような厳格な定義での導電粒子の「配列方向」については記載も示唆もありません。更に、引例9には、本発明における隣接導電粒子中心間距離に対応する「導電粒子の中心間距離」についての記載はあるものの、その中心間距離の値(段落0022、0023、0115(測定方法))は平均値である為、実際の中心間距離は均等であるとは限りません。つまり、引例9には、導電粒子をバラツキのない一定のピッチで離間させて格子状に規則配置させることは記載されておらず、従って、引例9を引例1に組合せる動機付けが生じません。」と主張している。(原査定における引例9は、上記(2)イの引用文献2。)

当該主張について検討する。

上記ア及び原査定における周知技術は、異方導電性フィルムにおいて、隣接する電極間の絶縁性を維持するために導電粒子の中心間距離を導電粒子の粒子径の1.5倍以上とし、接続電極間の導電性を維持するために導電粒子の中心間距離を導電粒子の粒子径の5倍以下とすることは、従来より広く知られていることを説示しているのであって、異方導電性フィルムの製造方法、導電粒子をバラツキのない一定のピッチで離間させて格子状に規則配置させることに関する技術的事項を説示しているものではない。

また、隣接する電極間の絶縁性又は導電性を維持するため導電性粒子の中心間距離自体は、異方導電性フィルムの製造方法や、導電粒子の配置の違いによって大きく異なるものではない。

そして、上記アで検討したとおり、引用発明は、上記周知技術と同様、異方導電性フィルムに関するものであり、隣接する電極間の絶縁性の維持と接続電極間の導電性維持という課題を内在しているから、両者を組み合わせる動機付けを有しているといえる。

よって、周知技術に倣い、引用発明において導電粒子23aと導電粒子23bとの中心間距離、及び導電粒子23aと導電粒子23dとの距離を導電粒子の粒子径の1.5~5倍とすることで、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは当業者であれば容易に想到し得たことである。

したがって、請求人の主張は採用できない。

オ 小括

したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび

よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

令和6年4月9日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、出願時の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献8に記載された発明並びに引用文献9及び引用文献2に記載された従来より広く知られている事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、との理由を含むものである。(原査定における引用文献8、引用文献9は、前記第2の2(2)のア、及びイの引用文献1、及び引用文献2。)

引用文献8:特開平9-320345号公報
引用文献9:特開2011-231136号公報(周知技術を示す文献)
引用文献2:特許第3624818号(周知技術を示す文献)

3 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献8、9の記載事項並びに引用発明は、前記第2の2(2)のア(ア)及びイ並びにア(ウ)に記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、本件補正発明の「導電粒子P0、P1を通る直線」、「導電粒子P1、P2を通る直線」、及び「導電粒子P0、P2を通る直線」に関して、「導電粒子P0、P1の中心を通る」、「導電粒子P1、P2の中心を通る」、「導電粒子P0、P2の中心を通る」との限定を削除し、さらに、本願補正発明の「導電粒子」に関して、「前記導電粒子は、各配列方向に沿ってピッチを持つように格子状に配置されている」との限定を削除するものである。

本願発明と引用発明とを対比すると、前記第2の2(3)で検討した相違点1において相違するが、前記第2の2(4)で検討したとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2024-006009

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