特許拒絶査定不服審判
2017-001898
非接触充電システム及び非接触充電システムのペアリング方法
- 審判番号
- 2017-001898
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-238208外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年02月08日
- 審決日
- 2019年01月31日
- 公報発行日
- 2019年05月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】トヨタ自動車株式会社
- 【請求人代理人】恩田 誠
- 【請求人代理人】恩田 博宣
- 分類
- P18 .536-WZ (H02J) / P18 .537-WZ (H02J) / P18 .55 -WZ (H02J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-238208「非接触充電システム及び非接触充電システムのペアリング方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月28日出願公開、特開2015-100173〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、平成25年11月18日の出願であって、平成28年10月28日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成28年11月8日)、これに対し、平成29年2月8日に拒絶査定不服審判の請求がなさるとともに手続補正がなされ、当審により平成30年1月5日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成30年1月9日)、これに対し、平成30年3月9日付で意見書及び手続補正書が提出され、当審により平成30年7月5日付で最後の拒絶の理由が通知され(発送日:平成30年7月10日)、これに対し、平成30年9月7日付で意見書が提出されたものである。
2.特許請求の範囲
平成30年3月9日の手続補正で特許請求の範囲は以下のように補正された。
「【請求項1】
車両が配置される領域である充電エリアに設けられた送電部から、充電対象機器としての車両に非接触で電力を供給する複数の送電部と、前記車両から送信される情報を取得可能な通信部と、前記複数の送電部から送電する電力を送電部の別に制御する給電制御部とを備える非接触充電システムであって、
前記給電制御部は、前記車両の存在が検知されることに応じて、前記送電部から送電する電力の電力供給時間を前記送電部の別に相違する特定の時間長に設定し、
前記通信部は、前記車両から送信された、前記車両が電磁的に誘起されることにより受電した電力から取得した特定の時間長に関する情報を受信し、
前記給電制御部は、前記送電部と該送電部に対応する車両とを、前記設定した特定の時間長と前記受信した特定の時間長に関する情報とが対応することに基づいてペアリングする
ことを特徴とする非接触充電システム。
【請求項2】
前記給電制御部は、前記送電部から送電する電力の電力供給時間を前記送電部の別に相違させた特定の時間長に設定する部分に加え、前記送電部から送電する電力のパターンを、前記車両の受電部を前記送電部に位置合わせさせるための位置合わせ用のパターンに設定する部分を有し、
前記位置合わせ用のパターンは、強度が一定に維持されている電力である
請求項1に記載の非接触充電システム。
【請求項3】
前記位置合わせ用のパターンは、前記特定の時間長で送電される電力とは相違するパターンである
請求項2に記載の非接触充電システム。
【請求項4】
前記給電制御部は、前記位置合わせの終了をもって、前記送電部と該送電部に対応する車両とのペアリングを開始する
請求項2又は3に記載の非接触充電システム。
【請求項5】
前記給電制御部は、前記位置合わせの終了を前記送電部に生じる電気的変化に基づいて検出する
請求項4に記載の非接触充電システム。
【請求項6】
前記給電制御部は、前記設定した特定の時間長の電力を前記複数の送電部から各特定の時間長の電力の出力時期の少なくとも一部が重なるタイミングで出力させる
請求項1~5のいずれか一項に記載の非接触充電システム。
【請求項7】
蓄電池に充電させる電力を電磁的に誘起されることにより受電する受電部と、外部の装置と通信可能な通信部とを備えた充電対象機器としての車両と、
前記車両との相互通信が可能な通信部を備える給電制御部と、
車両が配置される領域である充電エリアに設けられた送電部であって、前記充電対象機器に非接触で電力を送電する前記送電部から送電する電力が前記給電制御部により制御される複数の送電部とを備える非接触充電システムであって、
前記給電制御部は、前記車両の存在が検知されることに応じて、前記送電部の別に電力供給時間の時間長が相違するように設定した電力を各送電部から送電させ、
前記車両は、該当する送電部から前記受電部を介して受電した電力から取得した電力供給時間の特定の時間長に関する情報を前記通信部を介して前記給電制御部に送信し、
前記給電制御部は、前記送電部と充電対象機器とを、前記設定した特定の時間長と前記送信された特定の時間長に関する情報とが対応することに基づいてペアリングする
ことを特徴とする非接触充電システム。
【請求項8】
車両が配置される領域である充電エリアに設けられた送電部から、充電対象機器としての車両に非接触で電力を供給する複数の送電部と、前記車両から送信される情報を取得可能な通信部と、前記複数の送電部から送電する電力を送電部の別に制御する給電制御部とを備える非接触充電システムに用いられる非接触充電システムのペアリング方法であって、
前記車両の存在が検知されることに応じて、前記送電部から送電する電力の電力供給時間を前記給電制御部が前記送電部の別に相違する時間長に設定する設定工程と、
前記車両から送信された、前記車両が電磁的に誘起されることにより受電した電力から取得した特定の時間長に関する情報を通信部にて受信する受信工程と、
前記送電部と該送電部に対応する車両とを、前記設定した特定の時間長と前記受信した特定の時間長に関する情報とが対応することに基づいて前記給電制御部にてペアリングするペアリング工程と
を備えることを特徴とする非接触充電システムのペアリング方法。
【請求項9】
車両が配置される領域である充電エリアに設けられた送電部から、充電対象機器としての車両に非接触で電力を供給する複数の送電部と、前記車両から送信される情報を取得可能な通信部と、前記複数の送電部から送電する電力を送電部の別に制御する給電制御部とを備える非接触充電システムであって、
前記給電制御部は、前記車両の存在が検知されることに応じて、前記送電部から送電する電力の電力供給時間を前記送電部の別に相違する1つの特定の時間長に設定し、
前記通信部は、前記車両から送信された、前記車両が電磁的に誘起されることにより受電した電力から取得した特定の時間長に関する情報を受信し、
前記給電制御部は、前記送電部と該送電部に対応する車両とを、前記設定した特定の時間長と前記受信した特定の時間長に関する情報とが対応することに基づいてペアリングするとともに、
前記給電制御部はさらに、前記送電部から送電する電力のパターンを、前記車両の受電部を前記送電部に位置合わせさせるための位置合わせ用のパターンに設定する部分を有し、前記位置合わせ用のパターンは、前記特定の時間長で送電される電力とは相違するパターンである
ことを特徴とする非接触充電システム。」
3.拒絶の理由
平成30年7月5日付の当審の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「平成30年3月9日付でした手続補正(以下、「本件補正」という。)は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
記
(1)本件補正後の請求項1には、「前記送電部から送電する電力の電力供給時間を前記送電部の別に相違する特定の時間長に設定」、「前記車両が電磁的に誘起されることにより受電した電力から取得した特定の時間長」、「前記設定した特定の時間長と前記受信した特定の時間長」とあるから、送電する電力と受信する電力は、供給を開始してから停止するまでの電力供給時間の時間長が特定されれば、電力供給の形態(波形)は「パルス状」に限られず任意となる。
そこで、当該補正が、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
当初明細書等には、
a「【請求項7】
前記特定のパターンは電力のパルス変化により生成されるパルスであり、
前記特定のパターンに関する情報は前記特定のパターンから検出されるパスルの特性に関する情報である
請求項1~6のいずれか一項に記載の非接触充電システム。
【請求項8】
前記電力のパルスの特性に関する情報は、該パルスのパルス幅である
請求項7に記載の非接触充電システム。
【請求項9】
前記特定のパターンは、1つのパルスのみから構成されるパターンである
請求項1~8のいずれか一項に記載の非接触充電システム。」
b「好ましくは、前記特定のパターンは電力のパルス変化により生成されるパルスであり、前記特定のパターンに関する情報は前記特定のパターンから検出されるパスルの特性に関する情報である。
このような構成によれば、電力の出力/停止などで送電部から電力のパルスを出力することは比較的容易であることから、パルス変化する電力によればこうしたペアリングを行うことが容易になる。
好ましくは、前記電力のパルスの特性に関する情報は、該パルスのパルス幅である。
このような構成によれば、特定のパターンに関する情報をパルス幅とすれば、電力の出力/停止などのタイミングを変更するだけで特定のパターンを生成することができるため、相違する特定のパターンの電力であれ容易に作成することができる。
好ましくは、前記特定のパターンは、1つのパルスのみから構成されるパターンである。
このような構成によれば、特定のパターンが1つのパルスのみからなれば、特定のパターンの検出に要する時間を短くすることができるためペアリングに要する時間の短縮化も図られるようになる。また、1つのパルスであれば、送電部からの出力も容易である。」(【0020】-【0023】)
c「電力制御部321は、給電コントローラ10からの制御に応じて送電する交流電力の電圧、電流、周期、位相などを調整することができる。これにより、送電コイルL1からの送電に適した電力が生成され、これが送電コイルL1に供給される。また、電力制御部321は、電力の供給と停止とを切り替えることによって、パルス状に変化する電力を送電コイルL1に供給することができる。例えば、電力制御部321は、供給を停止している状態から1秒間だけ供給するように電力の供給と停止を制御することで「1秒」のパルス状の電力を送電コイルL1に供給することができる。なお、電力制御部321は、パルス状の電力のパルスの時間的な長さ(パスル幅)を、送電電力の波長の数十倍~数千倍に設定することができるが、少なくとも2~3倍以上の長さに設定することができる。また、各種規制などに対応しうるように、例えば高周波の放射が少ないパルス幅が設定されることが好ましい。」(【0056】)
d「図5に示すように、本実施形態では、ペアリング用の特定のパターンは、ステップ状のパターン、いわゆる矩形状のパルスである。なお、送電する電力は交流であるため、検出される電力からはパターンが上下に現れるが、説明の便宜上、上側のみを示す。また、特定のパターンは、第1のパターンから第nのパターンまでの複数のパターンが設定されており、各パターンはそれぞれ、その時間の長さ(パルス幅)が相違するように設定されている。例えば、第1パターンのステップの長さは時間t0~時間t1までの長さとして設定され、第2パターンのステップの長さは時間t0~時間t2までの長さとして設定され、第3パターンのステップの長さは時間t0~時間t3までの長さとして設定されている。また例えば、第4パターンのステップの長さは時間t0~時間t4までの長さとして設定され、第nパターンのステップの長さは時間t0~時間tnまでの長さとして設定されている。そして、時間t0からの経過時間をt1<t2<t3<t4<・・・<tnとすることで、第1パターンから第nパターンまでの各パターンのステップの時間の長さが相違するようになっている。例えば、時間t0を「0秒」としたとき、時間t1を「1秒」、時間t2を「2秒」、時間t3を「3秒」、時間t4を「4秒」、時間tnを「n秒」と設定することができる。なおパルス幅は、1秒より短くても、5秒より長くてもよいが、1秒以上のパルス幅であれば、高周波の放射を少なくすることができる。」(【0073】)
e「第1及び第2スタンド301,302へ割り当てる特定のパターンが定まると、給電コントローラ10は、第1及び第2スタンド301,302に対して、ペアリング用の特定のパターンを通知する送電パターン信号M300を出力する(図9のステップS302)。そして、送電パターン信号M300が入力された第1及び第2スタンド301,302は、割り当てられた送電パターンに応じての送電を開始する。例えば、「1秒」の長さのステップからなるパターンを割り当てられた第1スタンド301は、「1秒」の長さのステップからなる電力をその送電コイルL1から送電(出力)する(図9のステップS310)。また、例えば、「2秒」の長さのステップからなるパターンを割り当てられた第2スタンド302は、「2秒」の長さのステップからなる電力をその送電コイルL1から送電(出力)する(図9のステップS320)。つまり、第1スタンド301の送電コイルL1からはパルス幅が1秒のパルスが1つ出力され、第2スタンド302の送電コイルL1からはパルス幅が2秒のパルスが1つ出力される。」(【0098】)
f「(8)特定のパターンに関する情報をパルス幅とすれば、電力の出力/停止などのタイミングを変更するだけで特定のパターンを生成することができるため、相違する特定のパターンの電力であれ容易に作成することができる。
(9)特定のパターンが1つのパルスのみからなれば、特定のパターンの検出に要する時間を短くすることができるためペアリングに要する時間の短縮化も図られるようになる。また、1つのパルスであれば、送電装置31からの出力も容易である。」(【0119】-【0120】)
g「・上記各実施形態では、電力強度が、例えば電力の電圧の大きさである場合について例示した。しかしこれに限らず、送電装置にパルスの電圧や電流、周期、位相を制御可能な機能を備えさせ、電力から得られるパルスの特性に関する情報として電圧や電流、周期、位相の違いを用いるようにしてもよい。これにより、非接触充電システムの設計自由度の向上が図られる。」(【0163】)
と記載されており、送電する電力と受信する電力は、パルス又はパルス状であることは記載はあるが、電力供給の形態(波形)が任意であることは記載も示唆も無い。
なお、請求人は、平成28年8月5日付意見書で、
「符号列による通信を行う場合、1つの符号の長さはあらかじめ規定されていることを前提とし、通信内容の設定に際し、その都度各符号の長さを決めるようなことはせず、符号列を示す数列だけを設定します。また、検出する側でも、あらかじめ規定された長さの符号が幾つあるかを検出するのであって、その都度それぞれの符号の長さを取得することを目的として符号を検出しているわけではありません。つまり、引用文献1に開示される符号列からなる「電力パターン信号」は1つの符号の長さ、いわゆるパルス幅を設定する信号ではないことが明らかです。
これに対し、本願の請求項1に係る発明は、「前記送電部から送電するパルス状の電力のパルス幅を前記送電部の別に相違する特定のパルス幅に設定」するものであります。本願の請求項1に係る発明は、パルス幅を設定し、その設定したパルス幅が「充電対象機器」で受信されます。
上述のように引用文献1に記載の技術は、符号列を通信する技術である以上、本願の請求項1に係る発明を開示するものでないことは明らかであります。また、このように、引用文献1に記載の技術が符号列を通信する技術である以上、本願の請求項1に係る発明を示唆するものでないことも明らかであります。よって、引用文献1に接した当業者であれ、本願の請求項1に係る発明に想到するのは困難であります。」
と主張しており、本願はパルス幅を設定するものであることを主張している。
したがって、本件補正後の請求項1の上記記載事項は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。請求項7-9も同様である。」
4.最後の拒絶の理由に対する当審の判断
平成30年3月9日付でした手続補正(以下、「本件補正」という。)の請求項1には、「前記送電部から送電する電力の電力供給時間を前記送電部の別に相違する特定の時間長に設定」、「前記車両が電磁的に誘起されることにより受電した電力から取得した特定の時間長」、「前記設定した特定の時間長と前記受信した特定の時間長」とあるから、ペアリングのために送電する電力と受信する電力は、供給を開始してから停止するまでの電力供給時間の時間長が特定されれば、電力供給の形態(波形)は「パルス」又は「パルス状」に限られず任意となる。
そこで、当該補正が、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
当初明細書等には、
A「【請求項7】
前記特定のパターンは電力のパルス変化により生成されるパルスであり、
前記特定のパターンに関する情報は前記特定のパターンから検出されるパスルの特性に関する情報である
請求項1~6のいずれか一項に記載の非接触充電システム。
【請求項8】
前記電力のパルスの特性に関する情報は、該パルスのパルス幅である
請求項7に記載の非接触充電システム。
【請求項9】
前記特定のパターンは、1つのパルスのみから構成されるパターンである
請求項1~8のいずれか一項に記載の非接触充電システム。」
B「好ましくは、前記特定のパターンは電力のパルス変化により生成されるパルスであり、前記特定のパターンに関する情報は前記特定のパターンから検出されるパスルの特性に関する情報である。
このような構成によれば、電力の出力/停止などで送電部から電力のパルスを出力することは比較的容易であることから、パルス変化する電力によればこうしたペアリングを行うことが容易になる。
好ましくは、前記電力のパルスの特性に関する情報は、該パルスのパルス幅である。
このような構成によれば、特定のパターンに関する情報をパルス幅とすれば、電力の出力/停止などのタイミングを変更するだけで特定のパターンを生成することができるため、相違する特定のパターンの電力であれ容易に作成することができる。
好ましくは、前記特定のパターンは、1つのパルスのみから構成されるパターンである。
このような構成によれば、特定のパターンが1つのパルスのみからなれば、特定のパターンの検出に要する時間を短くすることができるためペアリングに要する時間の短縮化も図られるようになる。また、1つのパルスであれば、送電部からの出力も容易である。」(【0020】-【0023】)
C「電力制御部321は、給電コントローラ10からの制御に応じて送電する交流電力の電圧、電流、周期、位相などを調整することができる。これにより、送電コイルL1からの送電に適した電力が生成され、これが送電コイルL1に供給される。また、電力制御部321は、電力の供給と停止とを切り替えることによって、パルス状に変化する電力を送電コイルL1に供給することができる。例えば、電力制御部321は、供給を停止している状態から1秒間だけ供給するように電力の供給と停止を制御することで「1秒」のパルス状の電力を送電コイルL1に供給することができる。なお、電力制御部321は、パルス状の電力のパルスの時間的な長さ(パスル幅)を、送電電力の波長の数十倍~数千倍に設定することができるが、少なくとも2~3倍以上の長さに設定することができる。また、各種規制などに対応しうるように、例えば高周波の放射が少ないパルス幅が設定されることが好ましい。」(【0056】)
D「図5に示すように、本実施形態では、ペアリング用の特定のパターンは、ステップ状のパターン、いわゆる矩形状のパルスである。なお、送電する電力は交流であるため、検出される電力からはパターンが上下に現れるが、説明の便宜上、上側のみを示す。また、特定のパターンは、第1のパターンから第nのパターンまでの複数のパターンが設定されており、各パターンはそれぞれ、その時間の長さ(パルス幅)が相違するように設定されている。例えば、第1パターンのステップの長さは時間t0~時間t1までの長さとして設定され、第2パターンのステップの長さは時間t0~時間t2までの長さとして設定され、第3パターンのステップの長さは時間t0~時間t3までの長さとして設定されている。また例えば、第4パターンのステップの長さは時間t0~時間t4までの長さとして設定され、第nパターンのステップの長さは時間t0~時間tnまでの長さとして設定されている。そして、時間t0からの経過時間をt1<t2<t3<t4<・・・<tnとすることで、第1パターンから第nパターンまでの各パターンのステップの時間の長さが相違するようになっている。例えば、時間t0を「0秒」としたとき、時間t1を「1秒」、時間t2を「2秒」、時間t3を「3秒」、時間t4を「4秒」、時間tnを「n秒」と設定することができる。なおパルス幅は、1秒より短くても、5秒より長くてもよいが、1秒以上のパルス幅であれば、高周波の放射を少なくすることができる。」(【0073】)
E「そして、こうしたペアリング用の電力のパターンが車両20に受電されると、車両20の充電制御部22は、受電した電力のステップの長さを検出し、当該ステップの長さを受電した電力のパターンに関する情報として、車両IDなど車両を特定することができる情報とともに給電コントローラ10へ送信する。」(【0079】)
F「第1及び第2スタンド301,302へ割り当てる特定のパターンが定まると、給電コントローラ10は、第1及び第2スタンド301,302に対して、ペアリング用の特定のパターンを通知する送電パターン信号M300を出力する(図9のステップS302)。そして、送電パターン信号M300が入力された第1及び第2スタンド301,302は、割り当てられた送電パターンに応じての送電を開始する。例えば、「1秒」の長さのステップからなるパターンを割り当てられた第1スタンド301は、「1秒」の長さのステップからなる電力をその送電コイルL1から送電(出力)する(図9のステップS310)。また、例えば、「2秒」の長さのステップからなるパターンを割り当てられた第2スタンド302は、「2秒」の長さのステップからなる電力をその送電コイルL1から送電(出力)する(図9のステップS320)。つまり、第1スタンド301の送電コイルL1からはパルス幅が1秒のパルスが1つ出力され、第2スタンド302の送電コイルL1からはパルス幅が2秒のパルスが1つ出力される。」(【0098】)
G「(7)電力の出力/停止などで送電装置31から電力のパルスを出力することは比較的容易であることから、パルス変化する電力によればこうしたペアリングを行うことが容易になる。
(8)特定のパターンに関する情報をパルス幅とすれば、電力の出力/停止などのタイミングを変更するだけで特定のパターンを生成することができるため、相違する特定のパターンの電力であれ容易に作成することができる。
(9)特定のパターンが1つのパルスのみからなれば、特定のパターンの検出に要する時間を短くすることができるためペアリングに要する時間の短縮化も図られるようになる。また、1つのパルスであれば、送電装置31からの出力も容易である。」(【0118】-【0120】)
H「・上記各実施形態では、ペアリング用の特定のパターンは、ステップ状のパターンである場合について例示した。しかしこれに限らず、特定のパターンとして検出可能な態様であれば、波形の形状は三角や弧状などステップ以外の形状であってもよい。これにより、非接触充電システムの設計自由度の向上を図ることができるようになる。」(【0156】)
I「・上記各実施形態では、電力強度が、例えば電力の電圧の大きさである場合について例示した。しかしこれに限らず、送電装置にパルスの電圧や電流、周期、位相を制御可能な機能を備えさせ、電力から得られるパルスの特性に関する情報として電圧や電流、周期、位相の違いを用いるようにしてもよい。これにより、非接触充電システムの設計自由度の向上が図られる。」(【0163】)
と記載されており、ペアリングのために送電する電力と受信する電力は、「パルス」、「パルス状」、「ステップ状のパターン」、「矩形状のパルス」「三角」、「弧状」であることは記載はあるが、電力の供給を開始してから停止するまでの電力供給時間の時間長が特定されれば、電力供給の形態(波形)が当該形態(波形)に限られず任意であることは記載も示唆も無い。
請求項7-9も同様である。
なお、請求人は、平成30年9月7日付意見書において、
「また、当初明細書等の段落[0056]では、次のように記載している。
「電力制御部321は、給電コントローラ10からの制御に応じて送電する交流電力の電圧、電流、周期、位相などを調整することができる。これにより、送電コイルL1からの送電に適した電力が生成され、これが送電コイルL1に供給される。また、電力制御部321は、電力の供給と停止とを切り替えることによって、パルス状に変化する電力を送電コイルL1に供給することができる。例えば、電力制御部321は、供給を停止している状態から1秒間だけ供給するように電力の供給と停止を制御することで「1秒」のパルス状の電力を送電コイルL1に供給することができる。なお、電力制御部321は、パルス状の電力のパルスの時間的な長さ(パルス幅)を、送電電力の波長の数十倍~数千倍に設定することができるが、少なくとも2~3倍以上の長さに設定することができる。また、各種規制などに対応しうるように、例えば高周波の放射が少ないパルス幅が設定されることが好ましい。」(下線は、審判請求人が付与。)
上記の記載から明らかなとおり、本願の発明の詳細な説明では、送電コイルL1に交流電力が供給されることで電力が送電される旨、説明している。そして、電力の供給と停止とを切り替えることによって、パルス状に変化する電力を送電コイルに供給できることを説明している。すなわち、本願の発明の詳細な説明では、交流電力を供給することによりパルスが生じ(立ち上がり)、交流電力の供給を停止することで、パルスが消失する(たち下がる)ことを説明している。しかも、そのパルス幅が、送電電力の波長の数十倍~数千倍に設定できることを説明している。換言すれば、送電電力が特定の波長を有する交流電力であり、その交流電力が波長の数十倍~数千倍のパルス幅のパルスであることを説明している。その一方で、本願の発明の詳細な説明では、送電コイルL1に直流電力を供給して送電することは、示唆すらしていない。これらの記載によれば、本願の発明の詳細な説明でいう「パルス幅」が、例えば、電圧が一定のレベルから立ち上がって一定のレベルに立ち下がるまでの幅ではなく、交流電力を供給してから停止するまでの時間長であることは明らかである。」
と主張するが、明細書【0056】は、「電力制御部321は、給電コントローラ10からの制御に応じて送電する交流電力の電圧、電流、周期、位相などを調整することができる。これにより、送電コイルL1からの送電に適した電力が生成され、これが送電コイルL1に供給される。」の部分で、交流電力を送電コイルに与えることを意図して記載され、「また」とあって、「また」以前の部分とはほかに、「電力制御部321は、電力の供給と停止とを切り替えることによって、パルス状に変化する電力を送電コイルL1に供給することができる。例えば、電力制御部321は、供給を停止している状態から1秒間だけ供給するように電力の供給と停止を制御することで「1秒」のパルス状の電力を送電コイルL1に供給することができる。」の部分でパルス状に変化する電力を送電コイルに与えることを意図して記載されているから、両方の記載を合わせて、交流電力を供給することによりパルスが生じると解釈することはできず、請求人の上記主張は採用できない。
したがって、本件補正後の請求項1に記載された「前記送電部から送電する電力の電力供給時間を前記送電部の別に相違する特定の時間長に設定」、「前記車両が電磁的に誘起されることにより受電した電力から取得した特定の時間長」、「前記設定した特定の時間長と前記受信した特定の時間長」は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。請求項7-9も同様である。
5.むすび
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしていない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-001898