特許拒絶査定不服審判
2017-000654
静電像現像用トナー、現像剤
- 審判番号
- 2017-000654
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-185439外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年01月17日
- 審決日
- 2018年01月05日
- 公報発行日
- 2018年02月23日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .113-WY (G03G) / P18 .121-WY (G03G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-185439「静電像現像用トナー,現像剤」拒絶査定不服審判事件〔平成27年3月19日出願公開,特開2015-52712,請求項の数(5)〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は,特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2013-185439号(以下「本件出願」という。)は,平成25年9月6日の特許出願であって,その手続等の経緯は,以下のとおりである。
平成28年 6月29日 :手続補正書の提出
平成28年 7月19日付け:拒絶理由の通知
平成28年 9月20日 :意見書の提出
平成28年 9月20日 :手続補正書の提出
平成28年10月18日付け:拒絶の査定(以下「原査定」という。)
平成29年 1月17日 :審判請求書の提出
平成29年 1月17日 :手続補正書の提出
(この手続補正書による補正を,以下「本件補正」という。)
2 本願発明
本件出願の請求項1-請求項5に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-請求項5に記載された事項によって特定されるとおりの,以下のものである。
「【請求項1】
非晶質樹脂,及び着色剤を含むトナーであって,
前記非晶質樹脂中に非晶質樹脂部位と結晶性ポリエステル樹脂部位とを含む共重合性樹脂が分散してなり,
前記共重合性樹脂における前記結晶性ポリエステル樹脂部位が,結晶性ポリエステル樹脂相としてミクロ分散して存在し,
かつトナー粒子中の前記結晶性ポリエステル樹脂相の体積平均径Dvと個数平均径Dnが,以下の関係式(1)を満たすことを特徴とするトナー。
1.00≦Dv/Dn≦2.25かつ0.07μm≦Dv≦0.20μm
・・・・・・・関係式(1)
【請求項2】
前記トナー粒子の個数平均粒径Pnに対する体積平均粒径Pvの比(Pv/Pn)が1.00以上1.28以下であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記トナーのパルスNMR解析のハーンエコー法で得られた90℃におけるスピン-スピン緩和時間(T2)が0.20msec以上2.00msec以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記トナーの動的粘弾性特性(温度掃引(40℃から掃引),周波数1Hz,ひずみ量制御0.1%,昇温速度2℃/分の条件で測定)において,100℃における貯蔵弾性率(Pa)の対数logG’が,3.5~4.5であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のトナー。
【請求項5】
少なくとも請求項1乃至4のいずれかに記載のトナーと磁性を有するキャリアとを含有することを特徴とする二成分現像剤。」
3 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は,概略,[A]本件補正前の請求項1-請求項5に係る発明は,本件出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない,[B]本件補正前の請求項1-請求項5に係る発明は,本件出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
なお,原査定において引用された文献は,以下のとおりであり,引用文献2及び引用文献3は,「本件出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明」が記載された文献として,引用文献4及び引用文献5は,周知技術を示す文献として引用されている。
引用文献2:特開2005-181848号公報
引用文献3:特開2012-63496号公報
引用文献4:特開2006-235585号公報
引用文献5:特開2011-18030号公報
第2 当合議体の判断
1 引用文献3の記載及び引用発明
(1) 引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献3には,以下の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,複写機,ファクシミリ,プリンタ等の画像形成装置に使用されるトナー,トナーを含有する現像剤,現像剤容器,プロセスカートリッジ,これらを用いる画像形成装置及び画像形成方法に関するものである。」
イ 「【背景技術】
【0002】
従来,電子写真方式や静電記録方式の画像形成装置では,電気的潜像又は磁気的潜像をトナーによって顕像化して画像形成を行っている。
…(省略)…
【0003】
また,近年,トナーには,出力画像の高品質化のための小粒径化や,省エネルギー化のための低温定着性の向上が要求されている。
従来の混練粉砕法により得られるトナーは,小粒径化が困難であり,その形状は不定形で,その粒径分布はブロードである。
…(省略)…
【0004】
一方,混練粉砕法による問題点を克服するために,重合法によるトナーの製造方法が提案されている。
…(省略)…
【0006】
さらに,特許文献1には,結晶性ポリエステルの分散液を用いて,トナー中に結晶性ポリエステルを導入するものが開示されている。」
ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら,特許文献1の結晶性ポリエステルの分散液の製造方法では,分散される結晶性ポリエステルの粒径をシャープにすることが難しく,結果としてトナーの粒径分布の悪化を招いてしまう。
一方,本発明者が,結晶性ポリエステルを導入したトナーについて鋭意検討したところ,トナーの粒径分布のうち,小さい粒径のトナーは低温定着性に優れるものの耐熱保存性が悪化する傾向にあり,大きい粒径のトナーは耐熱保存性に優れるが低温定着性が悪化する傾向があることを見出した。このため,結晶性ポリエステルを導入したトナーがある程度の粒径分布を有していても,トナー全体として,良好な耐熱保存性と低温定着性を安定して兼ね備えるためには,粒径分布に応じて結晶性ポリエステルを導入する量を最適化することが必要と考えられる。
【0009】
本発明は,以上の背景に鑑みなされたものであり,その目的は,良好な低温定着性,耐熱保存性を安定して兼ね備えたトナー,トナーを含有する現像剤,現像剤容器,プロセスカートリッジ,これらを用いる画像形成装置及び画像形成方法を提供することである。」
エ 「【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために,請求項1の発明は,結着樹脂,離型剤及び着色剤を含有する静電荷像現像用のトナーであって,前記結着樹脂として少なくとも結晶性ポリエステルと非結晶性ポリエステルを含有したものであり,前記トナーの体積平均粒径をDvとしたとき,前記トナーの示差走査熱量測定における一回目の昇温時の結晶性ポリエステルの吸熱量Aと,前記トナーを4/5Dvに分級したときの示差走査熱量測定における一回目の昇温時の結晶性ポリエステルの吸熱量Bと,前記トナーを6/5Dvに分級したときの示差走査熱量測定における一回目の昇温時の結晶性ポリエステルの吸熱量Cとが,以下の関係を満たすことを特徴とするものである。
50<(B/A)×100<90
110<(C/A)×100<150
…(省略)…
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば,良好な低温定着性,耐熱保存性を安定して兼ね備えたトナー,トナーを含有する現像剤,現像剤容器,プロセスカートリッジ,これらを用いる画像形成装置及び画像形成方法を提供することができるという優れた効果がある。」
オ 「【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態を説明する。
本発明のトナーは,結着樹脂及び離型剤,着色剤,帯電制御剤を含有する静電荷像現像用のトナーである。結着樹脂として少なくとも結晶性ポリエステルおよび非結晶性ポリエステルを含有するものである。
…(省略)…
【0022】
上記関係を満たす,小粒径のトナー粒子に結晶性ポリエステルが少なく,大粒径トナー粒子に結晶性ポリエステルが多く含まれるトナーの調整方法としては,例えば,以下のものが上げられる。
有機溶媒中に,結着樹脂成分として少なくとも結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂とを含んでなる油相を水系媒体中に分散させ,得られた分散液から有機溶媒を除去することによってトナーを得るトナーの製造方法において,結晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒中で加熱溶解し,冷却することで再結晶化させることで結晶性ポリエステル分散液が得られる。冷却過程で析出する結晶性ポリエステル樹脂の分散径は溶液の冷却速度によって決まり,冷却速度が速いと到達粒径は小さくなり,冷却速度が遅いと大きくなる。
…(省略)…
【0023】
微分散化された結晶性ポリエステルはトナーの粒度に関わらずトナー中に均一に分散される傾向にあるが,結晶性ポリエステルの分散径が0.5μm以上のものは大粒径のトナーに集まりやすく,特に分散径が1.0μm以上の粒子の割合が23パーセント以下であると,小粒子径のトナー粒子に結晶性ポリエステルが少なく,大粒子径トナー粒子に結晶性ポリエステルが多く含まれるトナーとなる。
…(省略)…
【0028】
トナーの製造方法としては,有機溶媒中に,少なくとも着色剤,離型剤,結晶性ポリエステル分散液,変性ポリエステル系樹脂から成る結着樹脂前駆体,これら以外の結着樹脂成分を溶解させて得られる油相に,結着樹脂前駆体と伸長または架橋する化合物を溶解させた後,前記油相を微粒子分散剤の存在する水系媒体中に分散させて乳化分散液を得,前記乳化分散液中で前記結着樹脂前駆体を架橋反応及び/又は伸長反応させ,有機溶剤を除去する製造方法が好ましい。
…(省略)…
【0031】
結晶性ポリエステルとしては,特に制限はなく,目的に応じて適宜選択することができるが,炭素数2~20のジオール化合物及びこれらの誘導体を含有するアルコール成分と,脂肪族ジカルボン酸,芳香族ジカルボン酸,脂環式ジカルボン酸等の多価カルボン酸化合物及びこれらの誘導体を含有する酸成分と,を用いて合成されるものが好ましい。
…(省略)…
【0033】
結着樹脂は,良好な低温定着性が得られることから,ポリエステル樹脂を含有するが,未変性ポリエステル樹脂(変性されていないポリエステル樹脂)を含有することがさらに好ましい。
…(省略)…
【0037】
また,結着樹脂は,活性水素基と反応可能な官能基を有するポリエステル樹脂(以下,ポリエステルプレポリマーという)を含有することが好ましい。ポリエステルプレポリマーとしては,イソシアネート基を有するものを用いることができる。このようなポリエステルプレポリマーは,例えば,活性水素基を有するポリエステル樹脂をポリイソシアネートと反応させることにより得られる。
…(省略)…
【0039】
ポリエステル樹脂及びポリエステルプレポリマーは,低温定着性,耐ホットオフセット性の面で,少なくとも一部が相溶していることが好ましい。したがって,ポリエステル樹脂及びポリエステルプレポリマーの組成が類似していることが好ましい。
…(省略)…
【0041】
水酸基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートを反応させる際の水酸基に対するイソシアネート基の当量比は,通常,1~5であり,1.2~4が好ましく,1.5~2.5がさらに好ましい。この当量比が5を超えると,低温定着性が低下することがあり,1未満では,後述する架橋及び/又は伸長反応により得られる変性ポリエステル樹脂中のウレア含量が低下して,耐ホットオフセット性が低下することがある。
…(省略)…
【0043】
また,ポリエステルプレポリマー1分子当たりのイソシアネート基数(平均値)は,通常,1個以上であり,1.5~3個が好ましく,1.8~2.5個がさらに好ましい。このイソシアネート基数が1個未満では,架橋及び/又は伸長後の変性ポリエステル樹脂の分子量が低くなり,耐ホットオフセット性が低下することがある。
…(省略)…
【0045】
また,水系媒体中で,ポリエステルプレポリマーと,活性水素基を有する化合物(以下,架橋剤及び/又は伸長剤という)を反応(以下,架橋及び/又は伸長反応という)させることが好ましい。
【0046】
架橋剤及び/又は伸長剤としては,アミン類を用いることができる。アミン類としては,2価のアミン,3価以上のアミン,アミノアルコール,アミノメルカプタン,アミノ酸等が挙げられる。…(省略)…また,アミン類としては,アミノ基をブロックしたもの(例えば,ケトン類(例えば,アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン等)でブロックしたケチミン化合物,オキサゾリン化合物)を用いてもよい。
…(省略)…
【0048】
架橋及び/又は伸長反応させる際のポリエステルプレポリマーのイソシアネート基に対するアミン類のアミノ基の当量比は,1/3~3であることが好ましくは,1/2~2がさらに好ましく,2/3~1.5が特に好ましい。
…(省略)…」
カ 「【実施例】
【0112】
以下,本発明の実施例について説明するが,本発明は実施例に何ら限定されるものではない。なお,部は,重量部を意味する。
【0113】
~結晶性ポリエステル樹脂1の合成~
窒素導入管,脱水管,攪拌器及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに1,12-デカンジオール2500g,1,8-オクタン二酸2330g,ハイドロキノン4.9gを入れ,180℃で20時間反応させた後,200℃に昇温して6時間反応させ,さらに8.3kPaにて10時間反応させて結晶性ポリエステル樹脂1を得た。
【0114】
~非結晶性ポリエステル(低分子ポリエステル)樹脂の合成~
窒素導入管,脱水管,攪拌器及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに,ビスフェノールAエチレンオキサイドサイド2モル付加物229部,ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物529部,イソフタル酸100部,テレフタル酸108部,アジピン酸46部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ,常圧で230℃で10時間反応し,さらに10~15mmHgの減圧で5時間反応した後,反応容器に無水トリメリット酸30部を入れ,180℃,常圧で3時間反応し,[非結晶性ポリエステル]を得た。[非結晶性ポリエステル1]は,数平均分子量1800,重量平均分子量5500,Tg50℃,酸価20であった。
【0115】
<実施例1>
(溶解懸濁法)
~ポリエステルプレポリマーの合成~
冷却管,撹拌機および窒索導入管の付いた反応容器中に,ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部,ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部,テレフタル酸283部,無水トリメリット酸22部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ,常圧で230℃で8時間反応し,さらに10~15mmHgの減圧で5時間反応した[中間体ポリエステル1]を得た。[中間体ポリエステル1]は,数平均分子量2100,重量平均分子量9500,Tg55℃,酸価0.5,水酸基価51であった。
次に,冷却管,撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に,[中間体ポリエステル1]410部,イソホロンジイソシアネート89部,酢酸エチル500部を入れ100℃で5時間反応し,[プレポリマー1]を得た。[プレポリマー1]の遊離イソシアネート重量%は,1.53%であった。
【0116】
~ケチミンの合成~
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に,イソホロンジアミン170部とメチルエチルケトン75部を仕込み,50℃で5時間反応を行い,[ケチミン化合物1]を得た。[ケチミン化合物1]のアミン価は418であった。
【0117】
~マスターバッチ(MB)の合成~
水1200部,カーボンブラック(Printex35デクサ製)〔DBP吸油量=42ml/100mg,pH=9.5〕540部,ポリエステル樹脂1200部を加え,ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し,混合物を2本ロールを用いて150℃で30分混練後,圧延冷却しパルペライザーで粉砕,[マスターバッチ1]を得た。
【0118】
~結晶性ポリエステルの分散液の作製~
金属製2L容器に結晶性ポリエステル1を100g,酢酸エチル400gを採り,70℃で加熱溶解させた後,氷水浴中で20℃/分の速度で急冷した。冷却後分散液に非結晶性ポリエステル1を100g溶解させ,これにガラスビーズ(3mmφ)500mlを加え,バッチ式サンドミル装置(カンペハピオ社製)で平均液温20℃以下を保ちながら10時間粉砕を行い[結晶性ポリエステル分散液1]を得た。
【0119】
~油相の作成~
撹拌棒および温度計をセットした容器に,[非結晶性ポリエステル1]を378部,マイクロクリスタリンワックス110部(Hi-Mic-1090:日本精蝋製),CCA(サリチル酸金属錯体E-84:オリエント化学工業)22部,酢酸エチル947部を仕込み,撹拌下80℃に昇温し,80℃のまま5時間保持した後,1時問で30℃に冷却した。次いで容器にマスターバッチ500部,酢酸エチル500部を仕込み,1時間混合し[原料溶解液1]を得た。
[原料溶解液1]1324部を容器に移し,ビーズミル(ウルトラビスコミル,アイメックス社製)を用いて,送液速度1kg/hr,ディスク周速度6m/秒,0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填,3パスの条件で,カーボンブラック,WAXの分散を行った。次いで,[非結晶性ポリエステル1]の65%酢酸エチル溶液1042.3部加え,上記条件のビーズミルで1パスし,[顔料・WAX分散液1]を得た。[顔料・WAX分散液1]の固形分濃度(130℃,30分)は50%であった。
【0120】
~有機微粒子エマルションの合成~
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に,水683部,メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS-30:三洋化成工業製)11部,スチレン138部,メタクリル酸138部,過硫酸アンモニウム1部を仕込み,400回転/分で15分間撹拌したところ,白色の乳濁液が得られた。加熱して,系内温度75℃まで昇温し,5時間反応させた。さらに,1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え,75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液1]を得た。[微粒子分散液1]をLA-920で測定した体積平均粒径は,0.14μmであった。[微粒子分散液1]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。
【0121】
~水相の調整~
水990部,[微粒子分散液1]83部,ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON-7:三洋化成工業製)37部,酢酸エチル90部を混合撹拌し,乳白色の液体を得た。これを[水相1]とする。
【0122】
~乳化・脱溶剤~
[顔料・WAX分散液1]664部,[プレポリマー1]を109.4部,[結晶性ポリエステル分散液1]を73.9部,[ケチミン化合物1]4.6部を容器に入れ,TKホモミキサー(特殊機化製)で5,000rpmで1分間混合した後,容器に[水相1]1200部を加え,TKホモミキサーで,回転数11,000rpmで5分間混合し[乳化スラリー1]を得た。
撹拌機および温度計をセットした容器に,[乳化スラリー1]を投入し,30℃で8時間脱溶剤した後,45℃で4時間熟成を行い,[分散スラリー1]を得た。
【0123】
~洗浄・乾燥~
[分散スラリー1]100部を減圧濾過した後,
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え,TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え,TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後,減圧濾過した。
(3):(2)の濾過ケーキに10%塩酸100部を加え,TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え,TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過する操作を2回行い[濾過ケーキ1]を得た。
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し,目開き75μmメッシュで篩い,トナー100部に疎水性シリカ0.7部と,疎水化酸化チタン0.3部をヘンシェルミキサーにて混合し,[トナー1]を得た。
【0124】
トナー1をエルボージェット分級機によりカットポイントを4.6μmとして分級し,体積平均粒径が4.0μmのトナー1-1を得た。また,トナー1をエルボージェット分級機によりカットポイント5.6μmとして分級し,体積平均粒径が6.0μmのトナー1-2を得た。トナー1,トナー1-1およびトナー1-2を示差走査熱量計(DSC)にて前述の測定方法で測定したところ,結晶性ポリエステルの吸熱ピークから,吸熱量Aは10.7J/g,吸熱量Bは7.4J/g,吸熱量Cは13.1J/gとなり,(B/A)×100は69.2,(C/A)×100は122.4と算出された。また離型剤の発熱ピークから,発熱量Dは11.0J/g,発熱量Eは8.3J/g,発熱量Fは13.1J/gとなり,(E/D)×100は75.8,(F/D)×100は119.6と算出された。TEMにより結晶性ポリエステルの分散径を確認したところ,0.4μmであった。また示差走査熱量測定により測定したトナーの熱物性を表1に示す。
…(省略)…
【0131】
<実施例8>
金属製2L容器に結晶性ポリエステル1を100g,酢酸エチル400gを採り,70℃で加熱溶解させた後,氷水浴中で25℃/分の速度で急冷した。冷却後分散液に低分子ポリエステル(当合議体注:【0114】の記載からみて,「非結晶性ポリエステル」と同旨と解される。)100gを溶解させ,これにガラスビーズ(3mmφ)500mlを加え,バッチ式サンドミル装置(カンペハピオ社製)で平均液温20℃以下を保ちながら10時間粉砕を行い,[結晶性ポリエステル分散液7]を得た。結晶性ポリエステル分散液1の代わりに結晶性ポリエステル分散液7を用いた以外は,実施例1と同様にしてトナー8を得た。TEMにより結晶性ポリエステルの分散径を確認したところ,0.2μmであった。また示差走査熱量測定により測定したトナーの熱物性を表1に示す。
…(省略)…
【表1】
…(省略)…
【0145】
以上より,本発明によれば,良好な低温定着性,耐熱保存性を安定して兼ね備えたトナー,トナーを含有する現像剤,現像剤容器,プロセスカートリッジ,これらを用いる画像形成装置及び画像形成方法を提供することができる。」
(2) 引用発明
引用文献3の【0131】に実施例8として記載されたトナー8は,結晶性ポリエステル分散液1の代わりに結晶性ポリエステル分散液7を用いた以外は,実施例1と同様にして作製されたトナーである。
ここで,実施例1のトナー1は,【0122】に記載の方法(乳化重合法)により製造された分散スラリー1を,【0123】に記載のとおり洗浄・乾燥させて得たものである。また,分散スラリー1は,【0113】-【0121】及び【0131】に記載の方法により調製されたものであるところ,その材料である[A]顔料・WAX分散液1は,非結晶性ポリエステル1,マイクロクリスタリンワックス,荷電制御剤及びマスターバッチ1を含み,マスターバッチ1は,カーボンブラック及びポリエステル樹脂を含み,[B]プレポリマー1は,遊離イソシアネート重量が1.53%のイソホロンジイソシアネート変性ポリエステルを含み,[C]結晶性ポリエステル分散液7は,結晶性ポリエステル1及び非結晶性ポリエステルを含み,[D]ケチミン化合物1は,イソホロンジアミンのアミノ基をメチルエチルケトンでブロックした,アミン価が418のものであり,[E]水相1は,微粒子分散液1を含み,微粒子分散液1は,スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体であるビニル系樹脂を含むものである。そして,【0113】の記載からみて,結晶性ポリエステル1は,1,12-デカンジオール及び1,8-オクタン二酸が交互に共重合した重合体といえる。
そうしてみると,引用文献3には,「複写機,ファクシミリ,プリンタ等の画像形成装置に使用されるトナー」(【0001】)として,以下のトナー8の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「 顔料・WAX分散液1(664部),プレポリマー1(109.4部),結晶性ポリエステル分散液7(73.9部),ケチミン化合物1(4.6部)を容器に入れ,TKホモミキサーで,5,000rpmで1分間混合した後,容器に水相1(1200部)を加え,TKホモミキサーで回転数11,000rpmで5分間混合し乳化スラリー1を得て,
次に,撹拌機および温度計をセットした容器に,乳化スラリー1を投入し,30℃で8時間脱溶剤した後,45℃で4時間熟成を行い,分散スラリー1を得て,
分散スラリー1を洗浄・乾燥させて得た,複写機,ファクシミリ,プリンタ等の画像形成装置に使用されるトナー8であって,
顔料・WAX分散液1は,非結晶性ポリエステル1,マイクロクリスタリンワックス,荷電制御剤及びマスターバッチ1を含み,マスターバッチ1は,カーボンブラック及びポリエステル樹脂を含み,
プレポリマー1は,遊離イソシアネート重量が1.53%のイソホロンジイソシアネート変性ポリエステルを含み,
結晶性ポリエステル分散液7は,結晶性ポリエステル1及び低分子ポリエステルを含み,
ケチミン化合物1は,イソホロンジアミンのアミノ基をメチルエチルケトンでブロックした,アミン価が418のものであり,
水相1は,微粒子分散液1を含み,微粒子分散液1は,スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体であるビニル系樹脂を含み,
結晶性ポリエステル1は,1,12-デカンジオール及び1,8-オクタン二酸が交互に共重合した重合体であり,その分散径は0.2μmである,
トナー8。」
(3) 対比
本願発明1と引用発明を対比する。
引用発明の「トナー8」は,「複写機,ファクシミリ,プリンタ等の画像形成装置に使用されるトナー8」であるから,本願発明1の「トナー」に相当する。また,引用発明の「トナー8」は,その製造方法からみて,「非結晶性ポリエステル1」及び「カーボンブラック」を含むところ,これらは,それぞれ本願発明1の「非晶質樹脂」及び「着色剤」に相当する。したがって,引用発明の「トナー8」は,本願発明1の「非晶質樹脂,及び着色剤を含むトナー」の構成を具備するといえる。
(4) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明1と引用発明は,次の構成で一致する。
「非晶質樹脂,及び着色剤を含むトナー。」
イ 相違点
本願発明1と引用発明は,次の点で相違する。
(相違点)
本願発明1の「トナー」は,「前記非晶質樹脂中に非晶質樹脂部位と結晶性ポリエステル樹脂部位とを含む共重合性樹脂が分散してなり,前記共重合性樹脂における前記結晶性ポリエステル樹脂部位が,結晶性ポリエステル樹脂相としてミクロ分散して存在し,かつトナー粒子中の前記結晶性ポリエステル樹脂相の体積平均径Dvと個数平均径Dnが,以下の関係式(1)を満たす」トナーであるのに対し,引用発明の「トナー8」は,「結晶性ポリエステル1」が0.2μmの分散径で分散したものであり,また,「結晶性ポリエステル1」は,その名のとおり「共重合性樹脂」とはいえない点。
(当合議体注:関係式(1)は,以下の式である。)
1.00≦Dv/Dn≦2.25かつ0.07μm≦Dv≦0.20μm
(5) 特許法29条1項3号についての判断
本願発明1と引用発明は,上記相違点において相違するから,同一であるということができない。
(6) 特許法29条2項についての判断
本願発明1の「トナー」は,「共重合性樹脂」の構成を具備する。また,この「共重合性樹脂」は,「非晶質樹脂部位と結晶性ポリエステル樹脂部位とを含む共重合性樹脂」であるから,非晶質のブロックと結晶性ポリエステルのブロックが化学的に結合している性状の重合体と解するのが相当である。
これに対して,引用発明の「結晶性ポリエステル1」は,「1,12-デカンジオール及び1,8-オクタン二酸が交互に共重合した重合体」であるから,本願発明1の「共重合性樹脂」に該当しない。また,引用発明の「結晶性ポリエステル1」は,引用文献3の【0131】及び【0122】に記載された製造工程においても,非晶質樹脂と化学的に結合するとはいえない(当合議体注:引用文献3の【0043】及び【0046】の記載からみて,引用発明の「ケチミン化合物1」は「イソホロンジイソシアネート変性ポリエステル」同士を伸長又は架橋するものと考えられる。また,引用文献3の【0122】には,引用発明の「イソホロンジイソシアネート変性ポリエステル」のイソシアネート基を「結晶性ポリエステル1」の水素基と反応させるような分量,温度及び時間条件は記載されていない。)。
そして,引用文献3には,引用発明1の「結晶性ポリエステル1」と非晶質樹脂を化学的に結合させて「共重合性樹脂」とすることについて,記載も示唆もない。
また,原査定の拒絶の理由に引用された,引用文献2,引用文献4及び引用文献5にも,前記相違点に係る本願発明1の構成は,記載も示唆もされていない。
したがって,たとえ当業者といえども,引用発明を,前記相違点に係る本願発明1の構成を具備するもものとすることが容易に発明できたということはできない。
(7) 本願発明2-本願発明5について
本願発明2-本願発明5は,いずれも,前記相違点に係る構成を具備するものである。したがって,本願発明1と同様の理由により,たとえ当業者といえども,引用発明に基づいて本願発明2-本願発明5を容易に発明することができたということはできない。
2 引用文献2について
引用文献2に記載されたトナーは,非晶質樹脂と結晶性ポリエステル樹脂を溶融混練したものであるから,本願発明1-本願発明5と同一ではない。また,引用文献2には,結晶性ポリエステル樹脂を非晶質樹脂と化学的に結合させることについて,記載も示唆もないから,引用文献2に記載されたトナーに基づいて,当業者が本願発明1-本願発明5を容易に発明することができたということはできない。
第3 まとめ
以上のとおり,本願発明1-本願発明5は,引用文献2又は引用文献3に記載された発明と同一でなく,また,引用文献2又は引用文献3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。
したがって,原査定の理由によっては,本件出願を拒絶することはできない。
また,他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-000654