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特許拒絶査定不服審判

2017-000031

反射防止膜付基材の製造方法および光電気セル

審判番号
2017-000031
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-143396
請求日
2017年01月04日
審決日
2018年03月05日
公報発行日
2018年04月27日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
  • 【請求人】日揮触媒化成株式会社
  • 【請求人代理人】特許業務法人SSINPAT
審判長/審判官
  • 審判長 中田 誠
  • 審判官 宮澤 浩
  • 審判官 清水 康司
分類
P18 .121-WY (G02B) / P18 .537-WY (G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2012-143396「反射防止膜付基材の製造方法および光電気セル」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月16日出願公開、特開2014-  6443、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 1 手続の経緯 本願は、平成24年6月26日の出願であって、平成27年6月1日に手続補正がなされ、平成28年2月15日付けで拒絶理由が通知され、同年4月25日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年9月26日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し平成29年1月4日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。 その後、当審において、平成29年11月13日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知し、その応答期間中の平成30年1月12日に意見書の提出とともに手続補正がなされた。 2 本件発明 本願の請求項1~11に係る発明は、平成30年1月12日付けの手続補正の特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。 「  【請求項1】 基材上に形成された高屈折率層と、該高屈折率層上に形成された低屈折率層とからなる反射防止膜付基材の製造方法であって、 (a)基材上に、塩基性窒素化合物を1~1000ppm含む、屈折率が1.50~2.40の金属酸化物粒子の分散液を塗布する工程、 (b)前記塩基性窒素化合物の沸点未満、且つ50~120℃の温度で前記分散液の分散媒を除去する工程、 (c)低屈折率層形成成分分散液を塗布する工程、 (d)前記低屈折率層形成成分分散液の分散媒を除去する工程 (e)前記基材を300~650℃で加熱する工程、を順に備える反射防止膜付基材の製造方法。 【請求項2】 前記低屈折率層形成成分がシリカ前駆体または、シリカ前駆体およびシリカゾルであることを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜付基材の製造方法。 【請求項3】 前記シリカ前駆体が有機ケイ素化合物の部分加水分解物、加水分解物、加水分解縮重合物、ポリシラザン、ポリシラン、酸性珪酸液から撰ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の反射防止膜付基材の製造方法。 【請求項4】 前記低屈折率層形成成分分散液の濃度が、固形分として0.5~10重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜付基材の製造方法。 【請求項5】 前記塩基性窒素化合物の沸点が40~250℃の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜付基材の製造方法。 【請求項6】 前記金属酸化物粒子がTiO2、ZrO2、Al2O3、ZnO、SnO2、Sb2O5、In2O3、Nb2O5から撰ばれる1種以上の金属酸化物、これらの混合物、複合酸化物からなることを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜付基材の製造方法。 【請求項7】 前記金属酸化物粒子の平均粒子径が5~100nmの範囲にあることを特徴とする請求項6に記載の反射防止膜付基材の製造方法。 【請求項8】 前記塩基性窒素化合物を含む金属酸化物粒子分散液中の金属酸化物粒子の濃度が固形分として0.5~20重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜付基材の製造方法。 【請求項9】 前記塩基性窒素化合物を含む金属酸化物粒子分散液がさらにマトリックス形成成分を含み、マトリックス形成成分の濃度が固形分として0.1~4重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜付基材の製造方法。 【請求項10】 前記基材が表面に凹凸を有し、表面粗さ(RaA)が30nm~1μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜付基材の製造方法。 【請求項11】 前記基材がガラス基材であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜付基材の製造方法。」 (以下、請求項1~11に係る発明を、それぞれ、「本件発明1」~「本件発明11」という。) 3 引用刊行物の記載及び引用発明 (1)引用文献1 ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2012-86477号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。(下線は合議体が付与した。以下同様。) (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 仮支持体と、その少なくとも一つの表面に形成されている微粒子積層膜とを備える薄膜転写材であって、 (1)前記積層膜は、微粒子を含む微粒子層の1層又は2層以上の積層であり、各微粒子層の少なくとも一箇所の微粒子間に空隙を有し、 (2)前記積層膜は、屈折率及び微粒子の平均一次粒子径の少なくともいずれかが異なる二種類以上の微粒子層の積層であるか、または一種類の微粒子層の1層又は2層以上であり、 前記微粒子積層膜中に(A)アミン化合物と、(B)重合性不飽和二重結合を一つ以上有するシリコーンオリゴマーとが付着していることを特徴とする薄膜転写材。 【請求項2】 微粒子表面の水酸基の一部と、シリコーンオリゴマー内の水酸基と反応性の基のすくなくとも一部とが、縮合反応して結合している請求項1に記載の薄膜転写材。 【請求項3】 前記微粒子が、無機酸化物である請求項1または2に記載の薄膜転写材。 【請求項4】 前記無機酸化物が、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ニオブ、亜鉛、錫、セリウム及びマグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含む酸化物からなるものである請求項3に記載の薄膜転写材。 【請求項5】 前記微粒子が、表面または内部に中空または多孔質構造を有するものである請求項1~4のいずれかに記載の薄膜転写材。 【請求項6】 前記微粒子の平均一次粒子径が、10~500nmの範囲内である請求項1~5のいずれかに記載の薄膜転写材。 【請求項7】 前記アミン化合物が直鎖の一級アミンを持つ化合物である請求項1~6のいずれかに記載の薄膜転写材。 【請求項8】 前記アミン化合物の炭素数が1~3である請求項7に記載の薄膜転写材。 【請求項9】 前記微粒子層が、微粒子と高分子電解質との積層であるか、または微粒子に高分子電解質を混合した層である請求項1~8のいずれかに記載の薄膜転写材。 【請求項10】 微粒子が1次粒子がつながった形状である請求項1~9のいずれか記載の薄膜転写材。 【請求項11】 前記微粒子積層膜が反射防止膜である請求項1~10のいずれかに記載の薄膜転写材。 【請求項12】 仮支持体を、(1)イオン性の表面電荷を有する微粒子の分散液と、前記微粒子の表面電荷と反対符号の電荷を有する高分子電解質溶液とに交互に一度以上浸漬する工程、または(2)高分子電解質溶液と、前記高分子電解質の電荷と反対符号の表面電荷を有する微粒子の分散液に交互に一度以上浸漬する工程、のいずれか一方を行う微粒子積層膜形成工程と、 次いで、アミン化合物を含む液に浸漬する第一の浸漬工程と、 さらにシリコーンオリゴマーを含む液に浸漬する第二の浸漬工程とを含み、 前記形成工程により仮支持体上に少なくとも一箇所の微粒子間に空隙を有する微粒子積層膜を形成したのち、 第一の浸漬工程により微粒子積層膜中にアミン化合物を導入し、 その後、第二の浸漬工程により微粒子積層膜中にシリコーンオリゴマーを導入することを特徴とする薄膜転写材の製造方法。 【請求項13】 浸漬する工程の各々のすぐ後、かつ次の工程の前に、リンスする工程を含む請求項12記載の薄膜転写材の製造方法。 【請求項14】 仮支持体に、微粒子の分散液を一度以上塗布する微粒子積層膜形成工程と、 アミン化合物を塗布する工程と シリコーンオリゴマーを塗布する工程とを含み、 前記形成工程により仮支持体上に少なくとも一箇所の微粒子間に空隙を有する微粒子積層膜を形成し、アミン及びシリコーンオリゴマーの塗布により微粒子積層膜中にアミン化合物を導入し、微粒子にシリコーンオリゴマーを付着させる ことを特徴とする薄膜転写材の製造方法。 【請求項15】 仮支持体に、微粒子の分散液と、高分子電解質溶液とを交互に一度以上塗布する微粒子積層膜形成工程と、 アミン化合物を塗布する工程と、 シリコーンオリゴマーを塗布する工程とを含み、 前記微粒子積層膜形成工程により仮支持体上に少なくとも一箇所の微粒子間に空隙を有する微粒子積層膜を形成し、アミン及びシリコーンオリゴマーの塗布により微粒子積層膜中にアミン化合物を導入し、微粒子にシリコーンオリゴマーを付着させることを特徴とする薄膜転写材の製造方法。 【請求項16】 1次粒子がつながった形状の微粒子を用いる請求項12~15のいずれか記載の薄膜転写材の製造方法。 【請求項17】 前記微粒子の分散液及びアミン化合物を含む液に替えて微粒子及びアミン化合物を含む液を塗布することにより仮支持体上に微粒子積層膜を形成する請求項14~16のいずれかに記載の薄膜転写材の製造方法。 【請求項18】 前記シリコーンオリゴマーが分子内に水酸基と反応する官能基一つ以上と重合性不飽和二重結合一つ以上を有するシリコーンオリゴマーである請求項12~17のいずれかに記載の薄膜転写材の製造方法。 【請求項19】 成形体の表面に請求項1~11のいずれかに記載の薄膜転写材の微粒子積層膜を転写することにより、前記成形体表面に微粒子積層膜が埋没固定化された薄膜付き成形体。 【請求項20】 成形体が、その表面に永久支持層を有するものである請求項19記載の薄膜付き成形体。 【請求項21】 前記永久支持層が、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂または活性エネルギー線硬化樹脂のいずれかを少なくとも含むものである請求項20記載の薄膜付き成形体。 【請求項22】 成形体の表面に請求項1~11のいずれかに記載の薄膜転写材の微粒子積層膜を転写することにより、前記成形体表面に前記微粒子積層膜を埋没させることを特徴とする薄膜付き成形体の製造方法。 【請求項23】 成形体が、その表面に永久支持層を有するものである請求項22記載の薄膜付き成形体の製造方法。 【請求項24】 永久支持層が、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂または活性エネルギー線硬化樹脂のいずれかを少なくとも含むものである請求項23記載の薄膜付き成形体の製造方法。 【請求項25】 薄膜転写材を射出成形金型内に挟み込む工程、前記薄膜転写材の微粒子積層膜側に溶融材料を射出することにより成形体を形成すると同時に、前記成形体の表面に前記薄膜転写材の微粒子積層膜を埋没させる工程、その後、仮支持体を剥離する工程を含む請求項22記載の薄膜付き成形体の製造方法。 【請求項26】 薄膜転写材の微粒子積層膜側を成形体に重ねて熱圧着することにより、未硬化のまたは軟化した成形体の表面に前記薄膜転写材の微粒子積層膜を埋没させる工程、その後、仮支持体を剥離する工程を含む請求項22記載の薄膜付き成形体の製造方法。 【請求項27】 永久支持層が表面に形成された成形体を用い、薄膜転写材の微粒子積層膜側を成形体上に形成した前記永久支持層に重ねて、熱圧着又は活性光線の照射を行う工程により、前記永久支持層の未硬化のまたは軟化した表面に前記薄膜転写材の微粒子積層膜を埋没させる請求項23に記載の薄膜付き成形体の製造方法。」 (イ)「【0010】 そこで、交互積層法で形成した単層の微粒子膜(無機膜)を、粘着性の透明樹脂に付着させる、または溶融性のある透明樹脂と融着させ、接着させる方法(特許文献1参照)、または、基材上に交互積層法で形成した微粒子積層膜の上面に透明基板を付着させて、基材を取り除くことで、微粒子積層膜を転写することで光学機能材を作製する方法が提案されている。(特許文献2参照) 一方、微粒子を用いた膜強度の高い反射防止膜を得る方法として、まず離型フィルムに機能性微粒子層を形成し、最終的に反射防止膜を形成する透明プラスチック基材に、硬化前のハードコート樹脂層を形成して、機能性微粒子層とハードコート樹脂層の双方が面するように圧着し、機能性微粒子層をハードコート樹脂層に埋没させて、ハードコート樹脂層を硬化(活性光線などにより)させ、離型フィルムを剥がすことによって、膜強度の高い反射防止膜を得る方法(特許文献3参照)、また、機能性超微粒子層、例えば、低屈折率超微粒子層又は高屈折率超微粒子層を、ハードコート層に埋没させて透明機能性膜を得る方法(特許文献4及び特許文献5参照)が提案されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0011】 【特許文献1】特開2002-6108号公報 【特許文献2】特開2002-361767号公報 【特許文献3】特開平7-156326号公報 【特許文献4】特開平7-225302号公報 【特許文献5】特開2009-113476号公報 【非特許文献】 【0012】 【非特許文献1】ラングミュアー(Langmuir)、第13巻、1997年、6195-6203頁 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0013】 しかし、特許文献1や特許文献2の発明は機能性微粒子膜の片方の面が、透明樹脂層に完全に埋没されておらず、十分な膜強度を得ることは困難であった。また、表面の微粒子と微粒子との空間に脂などが入り込むと、屈折率が変化して、光学機能が劣化するという課題があった。 【0014】 また、特許文献3や特許文献4の方法では、機能性超微粒子層(例えば、低屈折率超微粒子層、高屈折率超微粒子層)の形成方法は、超微粒子の分散液自体、又は、超微粒子にバインダー樹脂と混ぜた超微粒子の分散液を塗布する方法により、超微粒子膜を形成する方法であったため、十分な膜強度を得ることは困難であった。バインダー樹脂と混ぜた超微粒子層は、また、微粒子と微粒子の間に空隙を有しておらず、超微粒子層の超微粒子間の間隙に樹脂が入り込むように、ハードコート樹脂層へ、超微粒子層を埋没させることは困難であり、十分な膜強度を得ることは難しいという問題がある。また、超微粒子に混ぜて塗布するバインダー樹脂自体が、ハードコート樹脂と同じ素材の場合でも、界面が発生するためにその密着強度を得るために、表面処理などの工程が必要となることがある。 【0015】 特許文献5の方法では、微粒子と微粒子の間に形成される空隙量が高いため、膜強度を向上させることが可能であるが、微粒子膜の形成されていないハードコート樹脂と比較すると機械強度が著しく劣ることがある。さらに、前記機能性超微粒子とハードコート樹脂とは物理的な結合であるため、この点でも充分な膜強度や機械特性を得ることは困難であった。 【0016】 本発明は、上記の問題に鑑みなされたもので、成形体の表面に、前記成形体と化学的に結合できる微粒子層を埋没、転写させることにより十分な膜強度、密着性及び機械特性が得られる微粒子膜を形成することができる薄膜転写材及びその製造方法並びにこの機薄膜付き成形体及びその製造方法を提供するものである。」 (ウ)「【発明の効果】 【0045】 本発明の薄膜転写材によれば、密着性、膜強度及び機械強度の優れた薄膜を成形体の表面に容易に形成することができる。本発明の薄膜付き成形体は、成形体の表面に、前記成形体と化学的に結合できる微粒子積層膜が埋没されているために、密着性や機械特性、膜強度に優れる薄膜を有する。」 (エ)「【0048】 また、適応される工業製品の分野としては、センサ、記録・記憶、光ディスク、光磁気ディスク、磁気テープ、光テープ、記録紙、太陽電池、ディスプレイ、フィルムLCD、PDP、タッチパネル、反射防止フィルム、光学部品、透明光学部品、光導波路部材、機械部材、粘着ラベルなどが挙げられる。」 (オ)「【0051】 本発明の薄膜転写材における微粒子積層膜は、微粒子間に空隙が形成されており、好ましくは、さらに仮支持体表面付近の微粒子積層膜中の微粒子間には大きな空隙が形成されている。前記薄膜転写材を成形体表面に転写することにより、成形体表面材料が微粒子積層膜に入り込み、成形体の最表面層における成形体表面材料の微粒子に対する割合を多くすることが可能となる。その結果、機械特性、膜強度に優れる薄膜を有する成形体を得ることができる。」 (カ)「【0056】 微粒子積層膜中に含まれる微粒子は無機微粒子が好ましく無機酸化物、無機フッ化物がより好ましく、特に、金属酸化物、金属フッ化物等の金属含有微粒子が好ましい。具体的には、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、シリカ(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニア(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化ニオブ(Nb2O5)、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、セリア(CeO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ビスマス(Bi2O3)などが挙げられる。これらの微粒子から選択された1種類もしくは、2種以上の金属酸化物微粒子の混合物を組み合わせて用いることができる。」 (キ)「【0075】 微粒子積層膜は、微粒子を含む微粒子層の1層又は2層以上の積層であり、各微粒子層の少なくとも一箇所の微粒子間に空隙を有する。」 (ク)「【0077】 転写後は成形体の表面に位置するのは一種類目の微粒子層であるため、例えば一種類目の微粒子層は屈折率を所定の値とし、二種類目の微粒子層は成形体表面材料に埋没しやすいよう所定の平均一次粒子径の微粒子を用いることにより、多機能の微粒子積層膜を得ることができる。これら種類の物性の違いは、これら二種類以上の微粒子層は、屈折率、微粒子の平均一次粒子径の少なくともいずれかのが異なっているもので、微粒子の元素成分、数珠状の有無、微粒子同士の混合比等でも調整できる。三種類目以降の微粒子層も同様である。積層膜が二種類以上の場合、本発明において、仮支持体に近い種類から順に「一種類目」「二種類目」・・・とする。 【0078】 微粒子が、表面または内部に中空または、多孔質構造を有することは、空隙が多くなるため、特に低屈性率の薄膜を作製する上で好ましい。成形体の一部または成形体の表面に形成された永久支持層が微粒子積層膜の粒子間の空隙に十分入り込んで、微粒子との密着性や耐擦傷性などの機械的特性を向上させながら、微粒子自体の内部の空隙によって、低屈折率化された薄膜が形成できる。特に、前記一種類目である一層以上の微粒子層を構成する微粒子は、成形体と一体化したときに表面になるので、空隙率が大きいことが好ましい。」 (ケ)「【0084】 仮支持体上に形成する第二種以降の微粒子積層膜を構成する微粒子は、粒子の形状は特に限定されないが、平均一次粒子径は、10~500nmが好ましく、さらに好ましくは15~50nmである。その理由は、微粒子の平均一次粒子径が小さすぎると、微粒子と微粒子の空隙の大きさが小さくなり、成形体表面に転写する際に、微粒子が成形体表面材料に埋没することが困難になる傾向があるためであり、また、微粒子の平均一次粒子径が50nmより大きいと、ミー散乱のため膜の白化が起こる場合があるので透明な光学薄膜用途には不向きであるためである。500nm以上の粒子は、水分散が困難であるため、コーティング中に沈殿しやすい傾向があり、本発明には不向きである。」 (コ)「【0088】 前記微粒子積層膜の微粒子に、アミン化合物、次いでシリコーンオリゴマーを付着させることにより、薄膜転写材を構成する微粒子積層膜と薄膜付き成形体を構成する樹脂とを化学的に結合させることができ、機械特性、膜強度(耐擦傷性)に優れる薄膜付き成形体を得ることができる。」 (サ)「【0091】 アミン化合物で微粒子積層膜を処理する方法は、特に制限されないが、(1)微粒子積層膜が形成された仮支持体をアミン化合物水溶液に浸漬する方法、(2)微粒子積層膜にアミン化合物水溶液を塗布する方法、(3)積層用の微粒子分散液にアミン化合物を添加したものを仮支持体上に塗工する方法等が挙げられる。前記塗布、塗工にはディップコート、スプレーコート、バーコート、ダイコート等が好適に用いられる。アミン化合物の微粒子積層膜への付着量は、0.01~5重量%の範囲が好ましく、より好ましくは、0.05~2重量%である。付着量が0.01重量%未満では機械強度の向上効果は得にくく、5重量%を超えると、微粒子積層膜の膜強度が著しく劣化する恐れがある。」 (シ)「【0125】 薄膜が反射防止膜である場合、成形体として透明なものを用い、この表面に薄膜を形成したものは、それ自体、反射防止材料として、応用範囲が広い。また、LCDディスプレイに用いる偏光板に反射防止機能を有する薄膜を形成してもよい。例えば、ワープロ、コンピュータ、テレビ、ディスプレイパネル、携帯電話等の各種のディスプレイの前面板、液晶表示装置等に用いる導光板の表面、透明プラスチック類からなるサングラスレンズ、度付きめがねレンズ、カメラのファインダーレンズ等の光学レンズ、各種計器の表示部、自動車、電車等の窓ガラス等が挙げられる。なお、これらの成形体は、樹脂以外の材料、例えば、ガラス等により形成されている場合であっても、樹脂と同様の効果を発揮することができる。」 (ス)「【実施例1】 【0175】 以下、実施例により本発明を説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。 (中略) 【0179】 3.アミン化合物水溶液の塗布 アミン化合物水溶液としてモノエタノールアミン水溶液0.1重量%を用意した。このモノエタノールアミン水溶液に前記で得た微粒子積層膜を有する仮支持体を30秒浸漬し、2mm/秒で引き上げ、自然乾燥しモノエタノールアミンの付着した微粒子積層膜を得た。 【0180】 4.シリコーンオリゴマーの塗布 攪拌装置、温度計を備えたガラスフラスコに、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503、信越化学工業(株)製)30g及びメタノール30gを配合した溶液を入れ、次いで、酢酸0.23g及び純水6.5gを添加し、室温(25℃)で1時間攪拌した。得られたシリコーンオリゴマーは、シロキサン単位の重合度が3(GPCによる重量平均分子量から換算、以下同じ)であり、水酸基と反応する末端官能基としてシラノール基を有するものである。」 (セ)「【実施例4】 【0195】 片面に易接着層とよばれる極性基を付与された樹脂層があるPETフィルム(A4100、東洋紡績(株)製、150mm×150mm×125μm厚)を用いた。 【0196】 微粒子として、BET法で測定した平均一次粒子径が21.5nmの数珠状シリカ微粒子が分散したシリカ水分散液(スノーテックス(ST)PSM、日産化学工業(株)製、シリカゾル)を用意した。微粒子分散液としては0.5重量%の微粒子分散液を調製し、界面活性剤として、ポリオキシエチレンデシエーテルを0.1重量%添加した。この微粒子分散液を上記PETフィルムの易接着層がない面上にアプリケータを用いて乾燥膜厚0.1μmとなるように塗工することで、シリカ微粒子積層膜を作製した。塗膜の乾燥は、乾燥機(ヤマト科学製、80℃、10分間)を用いた。 【0197】 次いで、動的光散乱法で測定した平均一次粒子径が20nmのチタニア微粒子が分散したチタニア水分散液を用意した。微粒子分散液としては1.0重量%の微粒子分散液を調製し、界面活性剤として、ポリオキシエチレンデシエーテルを0.1重量%添加した。前記シリカ微粒子積層膜上にアプリケータを用いて乾燥膜厚0.1μmとなるように塗工することで、無機薄膜転写材を作製した。塗膜の乾燥は、乾燥機(ヤマト科学製、80℃、10分間)を用いた。 【0198】 前記の微粒子積層膜を有する仮支持体を用いた以外は、実施例1に準じて、アミン化合物及びシリコーンオリゴマーを塗布し、無機薄膜転写材を得た。次いで、前記の無機薄膜転写材を用いた以外は、実施例1に準じて、微粒子積層膜が転写された成形体を作製した。」 (ソ)「【実施例7】 【0207】 片面に易接着層とよばれる極性基を付与された樹脂層があるPETフィルム(A4100、東洋紡績(株)製、150mm×150mm×125μm厚)を用いた。 【0208】 微粒子として、BET法で測定した平均一次粒子径が21.5nmの数珠状シリカ微粒子が分散したシリカ水分散液(スノーテックス(ST)PSM、日産化学工業(株)製、シリカゾル)を用意した。微粒子分散液としては0.5重量%の微粒子分散液を調製した。前記の微粒子分散液に、アミン化合物として、モノアミノエタノールを0.05重量%添加し、界面活性剤として、ポリオキシエチレンデシエーテルを0.1重量%添加した。この微粒子分散液を上記PETフィルムの易接着層がない面上にアプリケータを用いて乾燥膜厚0.1μmとなるように塗工することで、シリカ微粒子積層膜を作製した。塗膜の乾燥は、乾燥機(ヤマト科学製、80℃、10分間)を用いた。 【0209】 次いで、動的光散乱法で測定した平均一次粒子径が20nmのチタニア微粒子が分散したチタニア水分散液を用意した。微粒子分散液としては1.0重量%の微粒子分散液を調製した。前記の微粒子分散液に、アミン化合物として、モノアミノエタノールを0.05重量%添加し、界面活性剤として、ポリオキシエチレンデシエーテルを0.1重量%添加した。前記シリカ微粒子積層膜上にアプリケータを用いて乾燥膜厚0.1μmとなるように塗工することで、2種類の微粒子積層膜を有する仮支持体を作製した。塗膜の乾燥は、乾燥機(ヤマト科学製、80℃、10分間)を用いた。 【0210】 実施例1で用いたシリコーンオリゴマー処理液に、前記で得た微粒子積層膜を有する仮支持体を30秒浸漬し、2mm/秒で引き上げ、100℃で30分乾燥して無機薄膜転写材を得た。次いで、前記の無機薄膜転写材を用いた以外は、実施例1に準じて、微粒子積層膜が転写された成形体を作製した。 【0211】 微粒子積層膜が転写された成形体の微粒子転写層の鉛筆硬度は4Hであり、耐スチールウール性は200gの荷重では傷がつかず、300gで傷がついた。 【0212】 微粒子積層膜が転写された成形体の表面反射スペクトルを実施例1と同様に測定したところ、最小の表面反射率は0.2%であることから、上記微粒子転写層は反射防止膜として機能することがわかった。」 イ 引用文献1の記載事項(ス)及び(ソ)に基づけば、引用文献1には、実施例7として、以下の発明が記載されている。 「微粒子として、BET法で測定した平均一次粒子径が21.5nmの数珠状シリカ微粒子が分散したシリカ水分散液(スノーテックス(ST)PSM、日産化学工業(株)製、シリカゾル)を用意し、0.5重量%の微粒子分散液を調製し、アミン化合物として、モノアミノエタノールを0.05重量%添加し、界面活性剤として、ポリオキシエチレンデシエーテルを0.1重量%添加した微粒子分散液を、片面に易接着層とよばれる極性基を付与された樹脂層があるPETフィルムの易接着層がない面上にアプリケータを用いて乾燥膜厚0.1μmとなるように塗工することで、シリカ微粒子積層膜を作製し、乾燥機を用いて80℃、10分間、塗膜を乾燥し、 次いで、動的光散乱法で測定した平均一次粒子径が20nmのチタニア微粒子が分散したチタニア水分散液を用意し、1.0重量%の微粒子分散液を調製し、アミン化合物として、モノアミノエタノールを0.05重量%添加し、界面活性剤として、ポリオキシエチレンデシエーテルを0.1重量%添加し、前記シリカ微粒子積層膜上にアプリケータを用いて乾燥膜厚0.1μmとなるように塗工し、乾燥機を用いて80℃、10分間、塗膜を乾燥することで、2種類の微粒子積層膜を有する仮支持体を作製し、 3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン30g及びメタノール30gを配合した溶液を入れ、次いで、酢酸0.23g及び純水6.5gを添加し、室温(25℃)で1時間攪拌して得られた、シロキサン単位の重合度が3であり、水酸基と反応する末端官能基としてシラノール基を有するシリコーンオリゴマー処理液に、前記で得た微粒子積層膜を有する仮支持体を30秒浸漬し、2mm/秒で引き上げ、100℃で30分乾燥して無機薄膜転写材を得る方法。」(以下、「引用発明」という。) (2)引用文献2 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2006-72315号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 親水性樹脂系フィルムから形成された偏光膜の両側に、保護フィルムとしてセルロースアシレートフィルムが設けられ、且つ偏光膜の一方の側のセルロースアシレートフィルム上に、多層構造の反射防止膜が塗設されてなる長尺の偏光板において、該セルロースアシレートフィルムの偏光膜側表面にアルカリ鹸化処理が施され、且つ該偏光膜側表面の凹凸の、JIS B-0601-1994に基づく算術平均粗さ(Ra)が0.0002μm~0.3μm、十点平均粗さ(Rz)が0.0002μm~0.5μm、最大高さ(Ry)が、0.002μm~1.0μm、及び表面凹凸の平均間隔(Sm)が0.001μm~5μmであることを特徴とする偏光板。」 イ 「【0085】 前記セルロースアシレートフィルムの反射防止層を設ける側の表面は、JIS B-0601-1994に基づくフィルムの表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.0001~0.3μm、さらには0.0001~0.1μm、特には0.0002~0.015μm;十点平均粗さ(Rz)が0.0001~0.5μm、さらには0.0001~0.3μm、特には0.002~0.05μm;且つ最大高さ(Ry)が1.0μm以下、さらには0.8μm以下、特には0.05μm以下;であることが好ましい。これらの範囲内において、塗布ムラの無い均一な塗布面状で、偏光膜の保護フィルムとしてアルカリ鹸化処理する際に処理液との濡れが均一になり、表面の鹸化がムラなく進行し、さらに鹸化処理された面と偏光膜と貼り合せた場合に、粘着剤のアンカー効果により密着性が向上する。」 ウ 「【0608】 低屈折率層は120℃で150秒乾燥の後、更に140℃で8分乾燥させてから、窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ[アイグラフィックス(株)製]を用いて、照度400mW/cm2、照射量900mJ/cm2の紫外線を照射した。屈折率1.43、厚さ90nmの低屈折率層(LL-1)を形成し、セルローストリアセテートフィルムの一方の表面上に反射防止膜(AF-1)を作製した。」 (3)引用文献3 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2011/070714号(以下、「引用文献3」という。には、以下の事項が記載されている。 ア 「[0016] また、ガラス板の表面凹凸は、上記範囲の平均間隔Smとともに、0.1μm~10μm、特に0.5μm~5.0μm、さらに0.5μm~2.0μm、とりわけ0.5μm~1.0μmの算術平均粗さRaを有することが好ましい。最大高さRyおよび算術平均粗さRaは、平均間隔Smとともに、JIS B0601-1994に規定されている。これらの指標で表される粗度が小さすぎると、表面凹凸による防眩効果が十分に得られない。他方、これらの指標で表される粗度が大きすぎると、反射色調の面内での色ムラが現れたり、凸部の頂部に膜が形成されず、反射率が上昇してしまう。」 イ 「[0027] 微粒子含有膜(反射抑制膜)は、シリカ微粒子とバインダーの供給源となる化合物とを含むコーティング液をガラス板の表面に供給し、その後乾燥させ、さらに加熱することによって、成膜できる。コーティング液の供給は、例えば、コーティング液にガラス板を浸すこと(ディッピング)によって行うことができるが、コーティング液をガラス板上に噴霧(スプレー)する方法が製造効率に優れており、量産に適している。」 ウ 「[0040] (実施例1) <コーティング液の調製> シリカ微粒子分散液(扶桑化学工業(株)、PL-7、平均粒径100nm、固形分濃度23重量%)36.96重量部、エチルセロソルブ56.84重量部、1N塩酸(加水分解触媒)1.0重量部を撹拌混合し、さらに撹拌しながらテトラエトキシシラン5.2重量部を添加し、引き続き40℃に保温しながら8時間撹拌して原液を得た。この原液における固形分濃度は10重量%であり、固形分中の微粒子とバインダー(酸化物換算)との比率は、重量基準で85:15である。なお、上記シリカ微粒子は、中実の(言い換えれば中空ではない)微粒子である。 [0041] 原液13.0重量部、プロピレングリコール5.0重量部、2-プロパノール81.98重量部、シリコーン系界面活性剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社、CoatOSil1211)0.02重量部を撹拌混合し、コーティング液を得た。このコーティング液における固形分濃度は1.3重量%であり、界面活性剤濃度は0.02重量%である。 [0042]<反射抑制膜の形成> ソーダライムシリケート組成からなる型板ガラス(日本板硝子製、100mm×300mm、厚さ3.2mm)をアルカリ超音波洗浄し、反射抑制膜を形成するための基板として準備した。この型板ガラスの表面形状は、表面凹凸の算術平均粗さRa0.76μm、最大高さRy4.54μm、平均間隔Sm1120μm、平均傾斜角θ0.156度であった。なお、この型板ガラスの反射および透過特性を上述の方法により測定したところ、平均反射率4.54%、平均透過率91.68%であった。 [0043] スプレー法により、コーティング液を型板ガラス上に塗布した。スプレー法は、市販のスプレーガンを用い、水平に保持された型板ガラスの上方からコーティング液を噴霧して行った。この際、スプレーガンを型板ガラスとの距離を一定に保ったまま、スプレーガンと型板ガラスとの間で相対的に移動させた。次いで、この型板ガラスを、300℃の電気炉に1分間入れてコーティング液の溶媒を除去し、さらに610℃の電気炉に8分間入れて反射抑制膜を焼成し、カバーガラスを得た。こうして得たカバーガラスについて、上記各特性を評価した。評価の結果を表1に示す。また、作製した反射抑制膜をFE-SEMを用いて断面を観察した結果を図1(頂部)、図2(底部)に示す。」 エ 「[0056] [表1] 」 オ 「請求の範囲 [請求項1] 表面凹凸を有するガラス板を備えた光電変換装置用カバーガラスであって、 前記ガラス板の前記表面凹凸上に形成された反射抑制膜をさらに備え、 前記反射抑制膜が、シリカ微粒子と前記シリカ微粒子のバインダーとから構成され、 前記表面凹凸の頂部においては前記シリカ微粒子が1層に配置され、前記表面凹凸の底部においては前記シリカ微粒子が少なくとも3層に相当する厚さに積層して配置されており、 前記ガラス板の表面凹凸が0.4mm以上2.5mm以下の平均間隔Sm、および0.5μm~5μmの算術平均粗さRaを有し、 前記反射抑制膜が形成された側から入射する光についての反射率が、波長380nm~780nmの全域において、1.5%以上3%以下である光電変換装置用カバーガラス。 [請求項2] 前記ガラス板の前記表面凹凸が0.5μm~10μmの最大高さRyを有する請求項1に記載の光電変換装置用カバーガラス。 [請求項3] 前記ガラス板の前記表面凹凸が0.5μm~1.0μmの算術平均粗さRaを有する請求項1に記載の光電変換装置用カバーガラス。」 (4)引用文献4 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-227901号公報(以下、「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 屈折率が1.65~2.40である高屈折率層と、屈折率が1.20~1.55である低屈折率層とを有する反射防止膜であって、前記高屈折率層が架橋反応性基を含有するポリマーによって分散された1~200nmの平均粒径を有する無機微粒子を含む塗布液組成物を塗設、硬化させて形成されたことを特徴とする反射防止膜。」 イ 「【0024】(架橋反応性基含有ポリマー)次に本発明において無機微粒子の分散に有用な架橋反応性基を含有するポリマーについて説明する。該ポリマーは無機微粒子の分散剤としての機能及び架橋皮膜形成としての機能を併せ持つ必要がある。分散剤としての機能を発現するためには一般に良く知られた界面活性剤ポリマーと同様の設計が有効であり、アニオン性基(以下に説明)、カチオン性基(4級アンモニウム塩構造等)、アニオン性基およびカチオン性基を併せ持つ構造(アミノ酸構造等)、ポリエチレンオキシド鎖等のノニオン性基をポリマー中に有しているものが有効である。これらいずれも有用であるが本発明に用いられる無機微粒子の分散においては特にアニオン性基をポリマー中に有した構造が好ましい。」 ウ 「【0078】(高屈折率層用塗布液の調製)上記二酸化チタン分散物110.0gに、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA(商品名)、日本化薬(株)製)を6.29g、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)を0.520g、光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)を0.173gおよびメチルエチルケトンを230.0gおよびシクロヘキサノンを460.0g添加して撹拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率層の塗布液を調製した。」 (5)引用文献5 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2010-127951号公報(以下、「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0068】 ここで言う、ハードコート性高屈折率層のハードコート性とは、JIS K5600-5-4(1999年)で定義される鉛筆硬度が、H以上であることを意味し、該鉛筆硬度が2H以上であることが好ましい。上限は9H程度である。」 4 対比・判断 (1)本件発明1 ア 対比 本件発明1と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「PETフィルム」は、その上に2種類の微粒子積層膜が形成されるものである。したがって、引用発明の「PETフィルム」は、本件発明1の「基材」に相当する。 引用発明の「2種類の微粒子積層膜」は、記載事項(ソ)の段落【0212】に基づけば、転写後、「反射防止層」として機能するものである。ここで、引用発明の「シリカ微粒子積層膜」は、引用文献1の記載事項(ク)に基づけば「低屈性率の薄膜」である。したがって、引用発明の「シリカ微粒子積層膜」は、「低屈折率層」であるといえる。また、引用発明の「チタニア水分散液」を「シリカ微粒子積層膜上にアプリケータを用いて乾燥膜厚0.1μmとなるように塗工し、乾燥機を用いて80℃、10分間、塗膜を乾燥する」ことで得られる「微粒子積層膜」は、上記「シリカ微粒子積層膜」と比較して「高屈折率層」であるといえる。そうすると、引用発明の「2種類の微粒子積層膜」は、「低屈折率層」と「高屈折率層」とからなる「反射防止層」といえる。そして、引用発明の「無機薄膜転写材」は、「PETフィルム」の上に上記「2種類の微粒子積層膜」が形成された材である。 したがって、引用発明の「無機薄膜転写材を得る方法」と本件発明1の「基材上に形成された高屈折率層と、該高屈折率層上に形成された低屈折率層とからなる反射防止膜付基材の製造方法」とは、「基材上に形成された高屈折率層と、低屈折率層とからなる反射防止膜付基材の製造方法」である点で共通する。 (イ)引用発明の「チタニア微粒子」は、本件発明1の「金属酸化物粒子」に相当する。 また、引用発明の「モノアミノエタノール」は、弱い塩基として作用するものであるから、本件発明1の「塩基性窒素化合物」に相当する。そして、0.05重量%は、500ppmに相当することから、引用発明の「0.05重量%添加」されたモノアミノエタノールを含む「チタニア水分散液」は、本件発明1の「金属酸化物粒子の分散液」が「塩基性窒素化合物を1~1000ppm含む」とする要件を満たしている。 そうすると、引用発明の「動的光散乱法で測定した平均一次粒子径が20nmのチタニア微粒子が分散したチタニア水分散液を用意し、1.0重量%の微粒子分散液を調製し、アミン化合物として、モノアミノエタノールを0.05重量%添加し、界面活性剤として、ポリオキシエチレンデシエーテルを0.1重量%添加し、前記シリカ微粒子積層膜上にアプリケータを用いて乾燥膜厚0.1μmとなるように塗工」する工程と本件発明1の「(a)基材上に、塩基性窒素化合物を1~1000ppm含む、屈折率が1.50~2.40の金属酸化物粒子の分散液を塗布する工程」とは、「(a)基材の上方に、塩基性窒素化合物を1~1000ppm含む金属酸化物粒子の分散液を塗布する工程」である点で共通する。 (ウ)モノアミノエーテルの沸点は170℃である。そうすると、引用発明の「乾燥機を用いて80℃、10分間、塗膜を乾燥することで、2種類の微粒子積層膜を有する仮支持体を作製」する工程は、本件発明1の「(b)前記塩基性窒素化合物の沸点未満、且つ50~120℃の温度で前記分散液の分散媒を除去する工程」に相当する。 (エ)引用発明の「シリカ微粒子積層膜」は、引用文献1の記載事項(ク)に基づけば、転写後に成形体の表面に位置する微粒子層であり、低屈折率化された薄膜を形成するものである。そうすると、引用発明の「シリカ水分散液」は、「低屈折率層形成成分分散液」であるといえる。 したがって、引用発明の「微粒子として、BET法で測定した平均一次粒子径が21.5nmの数珠状シリカ微粒子が分散したシリカ水分散液(スノーテックス(ST)PSM、日産化学工業(株)製、シリカゾル)を用意し、0.5重量%の微粒子分散液を調製し、アミン化合物として、モノアミノエタノールを0.05重量%添加し、界面活性剤として、ポリオキシエチレンデシエーテルを0.1重量%添加した微粒子分散液を、片面に易接着層とよばれる極性基を付与された樹脂層があるPETフィルムの易接着層がない面上にアプリケータを用いて乾燥膜厚0.1μmとなるように塗工する」工程は、本件発明1の「(c)低屈折率層形成成分分散液を塗布する工程」に相当する。 (オ)引用発明のシリカ微粒子積層膜について「乾燥機を用いて80℃、10分間、塗膜を乾燥」する工程は、本件発明1の「(d)前記低屈折率層形成成分分散液の分散媒を除去する工程」に相当する。 (カ)以上より、本件発明1と引用発明とは、 「基材上に形成された高屈折率層と、低屈折率層とからなる反射防止膜付基材の製造方法であって、 (a)基材の上方に、塩基性窒素化合物を1~1000ppm含む金属酸化物粒子の分散液を塗布する工程、 (b)前記塩基性窒素化合物の沸点未満、且つ50~120℃の温度で前記分散液の分散媒を除去する工程、 (c)低屈折率層形成成分分散液を塗布する工程、 (d)前記低屈折率層形成成分分散液の分散媒を除去する工程 を備える反射防止膜付基材の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1]本件発明1は、反射防止膜の低屈折率層が基材上に形成された高屈折率層上に形成されるものであり、工程(a)~(d)を順に備える反射防止膜付基材の製造方法であって、基材上に直接金属酸化物微粒子の分散液を塗布するのに対し、引用発明は、反射防止膜を構成する低屈折率層及び高屈折率層がPETフィルム上に低屈折率層、高屈折率層の順に形成されるものであり、工程(c)及び(d)の後に工程(a)及び(b)が行われる転写材を得る方法であって、PETフィルム上のシリカ微粒子積層膜上にチタニア水分散液を塗布する点。 [相違点2]本件発明1は、金属酸化物粒子の屈折率が1.50~2.40のであるのに対し、引用発明は、チタニア微粒子の屈折率を特定していない点。 [相違点3]本件発明1は、基材を300~650℃で加熱する工程を備えるのに対し、引用発明は、基材を300~650℃で加熱する工程を備えていない点。 イ 判断 [相違点1]について検討すると、引用発明は、「無機薄膜転写材」を得る方法であって、成形体の表面に、前記成形体と化学的に結合できる微粒子層を埋没、転写させることにより十分な膜強度、密着性及び機械特性が得られる微粒子膜を形成することができるようにしたものである。そして、引用発明の無機薄膜は、PETフィルムから成形体への転写後に、成形体、高屈折率層、低屈折率層の順で積層され、反射防止膜として機能するようにするために、PETフィルム上では、PETフィルム、低屈折率層、高屈折率層の順で積層しているものである。 そうすると、引用発明においてその工程の順序を置き換えることには、阻害要因があるといわざるを得ないから、本件発明1において特定される順序とすることは、当業者といえども容易に想到し得ないものである。 次に、[相違点3]について検討すると、引用文献1の記載事項(イ)に基づけば、引用発明の微粒子積層膜は、転写する成形体と化学的に結合できるものである。そうすると、引用発明は、転写後に微粒子積層膜と成形体との化学的な結合を生じさせるものであって、転写前の無機薄膜転写材の微粒子積層膜を化学的に結合させる動機はない。そうすると、たとえ、微粒子積層膜を加熱する工程が本件出願前に知られていたとしても、引用発明において無機薄膜転写材を300~650℃で加熱するとは考えられない。 したがって、[相違点2]について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2~5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 (2)本件発明2~11 本件発明2~11も、本件発明1の「工程(a)~(d)を順に備える反射防止膜付基材の製造方法」及び「基材を300~650℃で加熱する工程」と同一の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2~5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定は、請求項1~11に係る発明について、上記引用文献1~5に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 しかしながら、前記4(1)イ及び前記4(2)に記載したとおり、本件発明1~11と引用発明とは、何れも[相違点1]及び[相違点3]において相違するものであり、本件発明1~11の当該相違点に係る構成とする動機付けを見いだせないものである。 したがって、原査定を維持することはできない。 6 当審拒絶理由について 当審拒絶理由は、本件明細書に開示された比較例2及び比較例3は、本件出願の請求項1~11に係る発明の構成要件を満たすものであるが、課題を解決しないものであるから、サポート要件を満たしていないというものであった。 これに対し、平成30年1月4日付けの手続補正によって、(b)分散媒を除去する工程の温度範囲を50~120℃としたことにより、請求項1~11に係る発明に比較例3が含まれないものとし、矛盾した記載がなされていた比較例2に関する記載が削除された。 この結果、当審拒絶理由は解消した。 7 むすび 以上のとおり、本件発明1~11は、当業者が引用発明及び引用文献2~5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2017-000031

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