特許無効審判
2016-800114
光安定性の向上した組成物
- 審判番号
- 2016-800114
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2014-031177
- 登録番号
- 特許第5689192号(P5689192)
- 請求日
- 2016年09月30日
- 審決日
- 2017年06月20日
- 公報発行日
- 2019年01月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エルメッドエーザイ 株式会社
- 【請求人代理人】田中 克郎
- 【請求人代理人】中村 勝彦
- 【請求人代理人】根本 浩
- 【請求人代理人】鈴木 優
- 【請求人代理人】石堂 瑠威
- 【請求人代理人】中野 亮介
- 【請求人代理人】内藤 和彦
- 【請求人代理人】山田 拓
- 【被請求人】大日本住友製薬 株式会社
- 【被請求人代理人】細田 芳徳
- 【被請求人代理人】細田 芳弘
- 審判長/審判官
- 審判長 内藤 伸一
- 審判官 蔵野 雅昭
- 審判官 松澤 優子
- 分類
- P1123.121-YAA(A61K) / P1123.537-YAA(A61K) / P1123.4 -YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第123条第1項第2号、特許法第134条の2第9項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第134条の2第1項第4号、特許法第134条の2第1項第3号、特許法第123条第1項第4号、特許法第39条第2項、特許法第134条の2第3項、特許法第126条第7項、特許法第134条の2第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第5689192号発明「光安定性の向上した組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5689192号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[14、18~28]、[17、29~37]について訂正することを認める。
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第5689192号(請求項の数17)は、平成17年4月27日を出願日とする特願2005-129150号の一部を、平成20年10月6日に新たな出願とした特願2008-260095号の一部を、平成23年12月26日に新たな出願とした特願2011-283072号の一部を、平成26年2月21日に新たな出願とした特願2014-31177号に係るものであり、平成27年2月6日に特許権の設定登録がなされた(以下、その特許を「本件特許」という。)ものである。
これに対し、エルメッドエーザイ株式会社(以下「請求人」という。)から、平成28年9月30日付け審判請求書によって、本件特許の請求項1、3、14~16に係る発明の特許を無効にすることを求める旨の、本件特許無効審判が請求された。
本件審判の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成28年 9月30日付け 審判請求書(請求人)
同年12月16日付け
審判事件答弁書及び訂正請求書(被請求人)
平成29年 2月15日付け 審理事項通知書
同年 4月13日付け 口頭審理陳述要領書(請求人)
口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 4月27日
第1回口頭審理、及び、第1回口頭審理調書
口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)
同年 5月26日付け 上申書(請求人)
第2 訂正請求
本件訂正請求の趣旨、及び、訂正の内容は、上記平成28年12月16日付け訂正請求書の記載によれば、それぞれ以下のとおりのものである。
1.訂正請求の趣旨
特許第5689192号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項14~37について訂正することを求める。
2.訂正の内容
訂正事項1
本件訂正前の請求項14の「請求項1~10いずれか記載の経口固形組成物の調製における、光による変色が抑制された組成物とするための酸化鉄の使用。」 について、
請求項1を引用するものを独立形式に改め、
「(a) ベシル酸アムロジピン、(b) 酸化鉄、(c) 炭酸カルシウム及び結晶セルロースからなる群より選ばれる少なくとも一つの賦形剤、並びに(d) デンプンを含有し、デンプンの含有量が30重量%以下であり、かつ被覆層を有しない経口固形組成物(但し、マンニトールを含まない組成物である)の調製における、光による変色が抑制された組成物とするための酸化鉄の使用。」
と訂正し、本件訂正後の請求項14とする。
訂正事項2
本件訂正前の請求項14の「請求項1~10いずれか記載の経口固形組成物の調製における、光による変色が抑制された組成物とするための酸化鉄の使用。」 について、
請求項2を引用するものを、
「経口固形組成物が酸化チタンを含有しない経口固形組成物である、請求項14に記載の使用。」
と訂正し、本件訂正後の請求項18とする。
訂正事項3
本件訂正前の請求項14の「請求項1~10いずれか記載の経口固形組成物の調製における、光による変色が抑制された組成物とするための酸化鉄の使用。」 について、
請求項3を引用するものを、
「経口固形組成物が口腔内崩壊型製剤である、請求項14又は18に記載の使用。」
と訂正し、本件訂正後の請求項19とする。
訂正事項4
本件訂正前の請求項14の「請求項1~10いずれか記載の経口固形組成物の調製における、光による変色が抑制された組成物とするための酸化鉄の使用。」 について、
請求項4を引用するものを、
「経口固形組成物における(d) デンプンの含有量が1~30重量%である、請求項14、18又は19に記載の使用。」
と訂正し、本件訂正後の請求項20とする。
訂正事項5
本件訂正前の請求項14の「請求項1~10いずれか記載の経口固形組成物の調製における、光による変色が抑制された組成物とするための酸化鉄の使用。」 について、
請求項5を引用するものを、
「経口固形組成物における(d) デンプンがトウモロコシデンプンである、請求項14及び18~20いずれか1項記載の使用。」
と訂正し、本件訂正後の請求項21とする。
訂正事項6
本件訂正前の請求項14の「請求項1~10いずれか記載の経口固形組成物の調製における、光による変色が抑制された組成物とするための酸化鉄の使用。」 について、
請求項6を引用するものを、
「経口固形組成物が、さらに、(e) フマル酸ステアリルナトリウムを含有する、請求項14及び18~21いずれか1項記載の使用。」
と訂正し、本件訂正後の請求項22とする。
訂正事項7
本件訂正前の請求項14の「請求項1~10いずれか記載の経口固形組成物の調製における、光による変色が抑制された組成物とするための酸化鉄の使用。」 について、
請求項7を引用するものを、
「(a) ベシル酸アムロジピンの経口固形組成物中含量がアムロジピンとして2~5重量%であり、
(b) 酸化鉄の経口固形組成物中含量が0.03~2重量%であり、
(d) デンプンの経口固形組成物中含量が2~30重量%であり、かつ
(e) フマル酸ステアリルナトリウムの経口固形組成物中含量が1~3重量%である、
請求項22記載の使用。」
と訂正し、本件訂正後の請求項23とする。
訂正事項8
本件訂正前の請求項14の「請求項1~10いずれか記載の経口固形組成物の調製における、光による変色が抑制された組成物とするための酸化鉄の使用。」 について、
請求項8を引用するものを、
「酸化鉄が黄色三二酸化鉄である、請求項14及び18~23いずれか1項記載の使用。」
と訂正し、本件訂正後の請求項24とする。
訂正事項9
本件訂正前の請求項14の「請求項1~10いずれか記載の経口固形組成物の調製における、光による変色が抑制された組成物とするための酸化鉄の使用。」 について、
請求項9を引用するものを、
「経口固形組成物が、(a) ベシル酸アムロジピン、および(b) 酸化鉄の混合物を含有する、請求項14及び18~24いずれか1項記載の使用。」
と訂正し、本件訂正後の請求項25とする。
訂正事項10
本件訂正前の請求項14の「請求項1~10いずれか記載の経口固形組成物の調製における、光による変色が抑制された組成物とするための酸化鉄の使用。」 について、
請求項10を引用するものを、
「経口固形組成物が、(a) ベシル酸アムロジピン、および(b) 酸化鉄の混合物を造粒して得られる組成物を含有する、請求項14及び18~25いずれか1項記載の使用。」
と訂正し、本件訂正後の請求項26とする。
訂正事項11
本件訂正前の請求項15を削除する。
また、本件訂正前の請求項15の「経口固形組成物が口腔内崩壊型製剤である、請求項14記載の使用。」
を、
「経口固形組成物が口腔内崩壊型製剤である、請求項14及び18~26いずれか1項記載の使用。」
と訂正し、本件訂正後の請求項27とする。
訂正事項12
本件訂正前の請求項16を削除する。
また、本件訂正前の請求項16の「酸化鉄が黄色三二酸化鉄である、請求項14又は15記載の使用。」
を、
「酸化鉄が黄色三二酸化鉄である、請求項14及び18~27いずれか1項記載の使用。」
と訂正し、本件訂正後の請求項28とする。
訂正事項13
本件訂正前の請求項17の「請求項1~10のいずれか記載の経口固形組成物において、光による変色を抑制するための、酸化鉄からなる光変色抑制剤。」 について、
請求項1を引用するものを独立形式に改め、
「(a) ベシル酸アムロジピン、(b) 酸化鉄、(c) 炭酸カルシウム及び結晶セルロースからなる群より選ばれる少なくとも一つの賦形剤、並びに(d) デンプンを含有し、デンプンの含有量が30重量%以下であり、かつ被覆層を有しない経口固形組成物(但し、マンニトールを含まない組成物である)において、光による変色を抑制するための、酸化鉄からなる光変色抑制剤。」
と訂正し、本件訂正後の請求項17とする。
訂正事項14
本件訂正前の請求項17の「請求項1~10のいずれか記載の経口固形組成物において、光による変色を抑制するための、酸化鉄からなる光変色抑制剤。」 について、
請求項2を引用するものを、
「経口固形組成物が酸化チタンを含有しない経口固形組成物である、請求項17に記載の光変色抑制剤。」
と訂正し、本件訂正後の請求項29とする。
訂正事項15
本件訂正前の請求項17の「請求項1~10のいずれか記載の経口固形組成物において、光による変色を抑制するための、酸化鉄からなる光変色抑制剤。」 について、
請求項3を引用するものを、
「経口固形組成物が口腔内崩壊型製剤である、請求項17又は29に記載の光変色抑制剤。」
と訂正し、本件訂正後の請求項30とする。
訂正事項16
本件訂正前の請求項17の「請求項1~10のいずれか記載の経口固形組成物において、光による変色を抑制するための、酸化鉄からなる光変色抑制剤。」 について、
請求項4を引用するものを、
「経口固形組成物における(d) デンプンの含有量が1~30重量%である、請求項17、29又は30に記載の光変色抑制剤。」
と訂正し、本件訂正後の請求項31とする。
訂正事項17
本件訂正前の請求項17の「請求項1~10のいずれか記載の経口固形組成物において、光による変色を抑制するための、酸化鉄からなる光変色抑制剤。」 について、
請求項5を引用するものを、
「経口固形組成物における(d) デンプンがトウモロコシデンプンである、請求項17及び29~31いずれか1項記載の光変色抑制剤。」
と訂正し、本件訂正後の請求項32とする。
訂正事項18
本件訂正前の請求項17の「請求項1~10のいずれか記載の経口固形組成物において、光による変色を抑制するための、酸化鉄からなる光変色抑制剤。」 について、
請求項6を引用するものを、
「経口固形組成物が、さらに、(e) フマル酸ステアリルナトリウムを含有する、請求項17及び29~32いずれか1項記載の光変色抑制剤。」
と訂正し、本件訂正後の請求項33とする。
訂正事項19
本件訂正前の請求項17の「請求項1~10のいずれか記載の経口固形組成物において、光による変色を抑制するための、酸化鉄からなる光変色抑制剤。」 について、
請求項7を引用するものを、
「(a) ベシル酸アムロジピンの経口固形組成物中含量がアムロジピンとして2~5重量%であり、
(b) 酸化鉄の経口固形組成物中含量が0.03~2重量%であり、
(d) デンプンの経口固形組成物中含量が2~30重量%であり、かつ
(e) フマル酸ステアリルナトリウムの経口固形組成物中含量が1~3重量%である、
請求項33記載の光変色抑制剤。」
と訂正し、本件訂正後の請求項34とする。
訂正事項20
本件訂正前の請求項17の「請求項1~10のいずれか記載の経口固形組成物において、光による変色を抑制するための、酸化鉄からなる光変色抑制剤。」 について、
請求項8を引用するものを、
「酸化鉄が黄色三二酸化鉄である、請求項17及び29~34いずれか1項記載の光変色抑制剤。」
と訂正し、本件訂正後の請求項35とする。
訂正事項21
本件訂正前の請求項17の「請求項1~10のいずれか記載の経口固形組成物において、光による変色を抑制するための、酸化鉄からなる光変色抑制剤。」 について、
請求項9を引用するものを、
「経口固形組成物が、(a) ベシル酸アムロジピン、および(b) 酸化鉄の混合物を含有する、請求項17及び29~35いずれか1項記載の光変色抑制剤。」
と訂正し、本件訂正後の請求項36とする。
訂正事項22
本件訂正前の請求項17の「請求項1~10のいずれか記載の経口固形組成物において、光による変色を抑制するための、酸化鉄からなる光変色抑制剤。」 について、
請求項10を引用するものを、
「経口固形組成物が、(a) ベシル酸アムロジピン、および(b) 酸化鉄の混合物を造粒して得られる組成物を含有する、請求項17及び29~36いずれか1項記載の光変色抑制剤。」
と訂正し、本件訂正後の請求項37とする。
3.訂正の適否の判断
訂正事項1~10に係る訂正は、全体として、本件訂正前の請求項14が請求項1~10を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して請求項1~10のそれぞれを引用しない独立形式請求項へ改めるための訂正であって、本件訂正前の請求項14を、本件訂正後の請求項14、18~26へ改めるための訂正であるので、特許法第134条の2第1項第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正事項1~10は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないので、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。
訂正事項11は、本件訂正前の請求項15が請求項14を引用する記載であったところ、訂正事項1~10によって本件訂正前の請求項14が本件訂正後の請求項14、18~26に対応するものとなることに対応し、引用する請求項を14、18~26に改めるための訂正、及び、この訂正にともない、本件訂正後の請求項15が当該請求項より後に記載されている請求項18~26を引用することになり、請求項15の記載が明確ではなくなるので、請求項15の記載を請求項26よりも後に記載するための訂正であるので、特許法第134条の2第1項第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。
また、訂正事項11は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないので、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。
訂正事項12は、本件訂正前の請求項16が請求項14又は15を引用する記載であったところ、訂正事項1~10によって本件訂正前の請求項14が本件訂正後の請求項14、18~26に対応するものとなり、また、訂正事項11によって本件訂正前の請求項15が本件訂正後の請求項27に対応するものとなることに対応し、引用する請求項を14、18~27に改めるための訂正、及び、この訂正にともない、本件訂正後の請求項16が当該請求項より後に記載されている請求項18~27を引用することになり、請求項16の記載が明確ではなくなるので、請求項16の記載を請求項27よりも後に記載するための訂正であるので、特許法第134条の2第1項第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。
また、訂正事項12は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないので、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。
そして、訂正事項1~12に係る訂正前の請求項14~16は、請求項15が請求項14を引用し、請求項16が請求項14又は15を引用するものであるから、訂正事項1~12に係る訂正は、一群の請求項ごとになされたものであり、特許法第134条の2第3項に規定する要件に適合するものである。
訂正事項13~22に係る訂正は、全体として、本件訂正前の請求項17が請求項1~10を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して請求項1~10のそれぞれを引用しない独立形式請求項へ改めるための訂正であって、本件訂正前の請求項17を、本件訂正後の請求項17、29~37へ改めるための訂正であるので、特許法第134条の2第1項第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正事項13~22は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないので、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
なお、訂正事項13~22は、本件無効審判の対象とされていない請求項17に係るものであるが、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものではないので、特許法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第7項(独立特許要件)の規定は、適用されない。
したがって、本件訂正請求による訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第3項及び第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものであるので、訂正後の請求項14~37について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
本件訂正の結果、本件特許第5689192号の特許請求の範囲の請求項1~37に係る発明は、平成28年12月16日付け訂正請求書に添付された、訂正特許請求の範囲の、請求項1~37に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
なお、以下、本件訂正後の請求項1~37に係る各発明をそれぞれの請求項の番号に対応させて、「本件訂正発明1」~「本件訂正発明37」、あるいは、これら各請求項に係る発明をまとめて単に「本件訂正発明」ともいうことがある。
また、本件無効審判の対象である、本件訂正前の請求項1、3、14~16は、本件訂正後の請求項1、3、14、18~28に対応するところ、本件訂正発明1、3、14、18~28は、以下のとおりのものである。
【請求項1】
(a)ベシル酸アムロジピン、(b)酸化鉄、(c)炭酸カルシウム及び結晶セルロースからなる群より選ばれる少なくとも一つの賦形剤、並びに(d)デンプンを含有し、デンプンの含有量が30重量%以下であり、かつ被覆層を有しない経口固形組成物(但し、マンニトールを含まない組成物である)。
【請求項3】
口腔内崩壊型製剤である、請求項1又は2記載の経口固形組成物。
【請求項14】
(a)ベシル酸アムロジピン、(b)酸化鉄、(c)炭酸カルシウム及び結晶セルロースからなる群より選ばれる少なくとも一つの賦形剤、並びに(d)デンプンを含有し、デンプンの含有量が30重量%以下であり、かつ被覆層を有しない経口固形組成物(但し、マンニトールを含まない組成物である)の調製における、光による変色が抑制された組成物とするための酸化鉄の使用。
【請求項18】
経口固形組成物が酸化チタンを含有しない経口固形組成物である、請求項14に記載の使用。
【請求項19】
経口固形組成物が口腔内崩壊型製剤である、請求項14又は18に記載の使用。
【請求項20】
経口固形組成物における(d)デンプンの含有量が1~30重量%である、請求項14、18又は19記載の使用。
【請求項21】
経口固形組成物における(d)デンプンがトウモロコシデンプンである、請求項14及び18~20いずれか1項記載の使用。
【請求項22】
経口固形組成物が、さらに、(e)フマル酸ステアリルナトリウムを含有する、請求項14及び18~21いずれか1項記載の使用。
【請求項23】
(a)ベシル酸アムロジピンの経口固形組成物中含量がアムロジピンとして2~5重量%であり、
(b)酸化鉄の経口固形組成物中含量が0.03~2重量%であり、
(d)デンプンの経口固形組成物中含量が2~30重量%であり、かつ
(e)フマル酸ステアリルナトリウムの経口固形組成物中含量が1~3重量%である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
酸化鉄が黄色三二酸化鉄である、請求項14及び18~23いずれか1項記載の使用。
【請求項25】
経口固形組成物が、(a)ベシル酸アムロジピン、および(b)酸化鉄の混合物を含有する、請求項14及び18~24いずれか1項記載の使用。
【請求項26】
経口固形組成物が、(a)ベシル酸アムロジピン、および(b)酸化鉄の混合物を造粒して得られる組成物を含有する、請求項14及び18~25いずれか1項記載の使用。
【請求項27】
経口固形組成物が口腔内崩壊型製剤である、請求項14及び18~26いずれか1項記載の使用。
【請求項28】
酸化鉄が黄色三二酸化鉄である、請求項14及び18~27いずれか1項記載の使用。
第4 当事者の主張、及び、提出した証拠方法
1.請求人の主張する無効理由、及び、提出した証拠方法
請求人は、「特許第5689192号を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、」との審決を求め、その理由として、以下の無効理由1~5を主張し、証拠方法として、甲第1~31号証を提出している。
無効理由1
本件訂正発明1、3、14、18~28は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明並びに技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、これらの発明に係る本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
無効理由2
本件訂正発明1、3、14、18~28は、甲第15号証に記載された発明及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、これらの発明に係る本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
無効理由3
本件特許に係る出願は、適法な分割出願ではないから、原出願である特願2005-129150号の出願の時にしたものとはみなされない。
したがって、本件訂正発明1、3、14、18~28は、原出願の公開公報に記載された発明であるか、当該発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
無効理由4
発明の詳細な説明に、具体的な実施態様として記載されているのは、マンニトールを含む組成物のみであり、このマンニトールを含む組成物は、本件訂正発明1、3、14、18~28に該当しないから、これらの発明は、発明の詳細な説明において裏付けられた範囲を超える発明を含むものである。
したがって、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、3、14、18~28の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
無効理由5
原出願に係る発明におけるマンニトールを結晶セルロース等及び所定量のデンプンに置換することは、単なる周知慣用技術の転換に過ぎないから、本件訂正発明1、3、14、18~28は、原出願に係る発明と同一である。
したがって、本件訂正発明1、3、14、18~28は、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、これらの発明に係る本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
証拠方法
甲第1号証:ノルバスク(R)錠の医薬品インタビューフォーム 11、12、14、16頁:2003年8月発行(新様式第5版)(注 上記(R)は、○内にRの文字が記された記号である。)
甲第2号証:特開平2000-191516号公報
甲第3号証:タケプロン(R)の医薬品インタビューフォーム 1、9、11、14頁:2015年8月改訂(第16版)(注 上記(R)は、○内にRの文字が記された記号である。)
甲第4号証:岡野定輔編著、「新・薬剤学総論(改訂第3版)」、南江堂、1987年4月10日発行、148,149,347~350及び415頁
甲第5号証:日本医薬品添加剤協会編、「医薬品添加物事典 2000」、株式会社薬事日報社、2000年4月28日発行、64,180,及び181頁
甲第6号証:日本医薬品添加剤協会編、「医薬品添加物事典 2005」、株式会社薬事日報社、2005年12月10日発行、68及び189頁
甲第7号証:特願2014-31177号(本件特許)に係る平成26年10月27日付け意見書
甲第8号証:「Remington‘s Pharmaceutical Sciences 18」、Mack publishing company、1990年発行、1637頁
甲第9号証:国際公開第98/02185号
甲第10号証:特開2001-122785号公報
甲第11号証:特開2000-86537号公報
甲第12号証:杉原正泰、「視点 製剤を使用性から考える」、ファルマシア、25巻9号1989年、895~900頁
甲第13号証:杉原正泰、「セミナー 高齢者に適した新規剤形および包装容器」、ファルマシア、30巻12号1994年、1396~1400頁
甲第14号証:山口正彦、「高齢者の薬物療法 第10回 服薬困難者向け速崩性の錠剤の開発」、月刊GPnet、49巻1号2002年、54~57頁
甲第15号証:特開2003-34655号公報
甲第16号証:特開2001-58944号公報
甲第17号証:国際公開第00/078292号
甲第18号証:特開平10-298062号公報
甲第19号証:国際公開第00/47233号
甲第20号証:矢崎義雄・遠藤政夫編、「全面改訂 カルシウム拮抗薬」、医薬ジャーナル社,2001年8月1日発行 246~250頁
甲第21号証:国際公開第03/097045号
甲第22号証:D.S. Desaiet. al., Photostabilization of uncoated tablets of sorivudine and nifedipine by incorporation of synthetic iron oxides, International Journal of Pharmaceutics,103巻1号1994年、69~76頁
甲第23号証:Gaetano Ragno et. al., Photodegradation monitoring of amlodipine by derivative spectrophotometry, Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,27巻1-2号2002年、19~24頁
甲第24号証:特開2003-104888号公報
甲第25号証:無効審判第2010-800164号に係る平成24年2月22日付け審決
甲第26号証:特願2005-129150号の願書に最初に添付した特許請求の範囲及び明細書
甲第27号証:特願2014-31177号(本件特許)に係る平成26年8月27日付け拒絶理由通知書
甲第28号証:タケプロン(R)OD錠15の添付文書情報、2002年9月改訂(第3版)(注 上記(R)は、○内にRの文字が記された記号である。)
甲第29号証:「第15改正 日本薬局方 改正内容に関して 「ヒプロメロース」,「メチルセルロース」 -試験方法の変更に関して-」、信越化学工業株式会社セルロース部,2006年3月
甲第30号証:特許第5689192号公報
(以上、審判請求書に添付。)
甲第31号証:特願2005-129150号に係る平成20年6月19日付け意見書
(以上、平成29年4月13日付けの口頭審理陳述要領書に添付。)
甲第32号証:「2016年版16716の化学商品」,化学工業日報社,128,129,1604及び1605頁,2016年1月26日
(以上、平成29年5月26日付けの上申書に添付。)
2.被請求人の主張、及び、提出した証拠方法
被請求人が提出した審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書によれば、被請求人は、「訂正を認める、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、その理由として、本件特許には、上記無効理由は存在しない点を主張し、証拠方法として、乙第1~7号証を提出している。
証拠方法
乙第1号証:ノルバスク(R)錠の医薬品インタビューフォーム 1、2、14~16頁:2003年8月発行(新様式第5版)(注 上記(R)は、○内にRの文字が記された記号である。)
乙第2号証:特願2014-31177号(本件特許)に係る平成26年8月8日付け早期審査に関する事情説明書
乙第3号証:一番ケ瀬尚 監修、「新しい製剤学」、廣川書店発行、平成5年9月10日発行、378~383頁
乙第4号証:吉岡澄江著、「医薬品の安定性」、南江堂、1995年2月15日発行、52~53頁
乙第5号証の1:特願2014-31177号(本件特許)に係る平成26年10月27日付けの意見書
乙第5号証の2:特願2014-31177号(本件特許)に係る平成26年10月27日付けの手続補足書(実験成績証明書)
(以上、答弁書に添付。)
乙第6号証:Hayase et al., The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 275巻2号1995年、813-821頁
(以上、平成29年4月13日付け口頭審理陳述要領書に添付。)
乙第7号証:厚生労働省医薬局審査管理課長からの「安定性試験ガイドラインの改定について」と題する通達、「2.2.7. 保存条件」の項の中の「2.2.7.1. 一般的な製剤」の欄、平成15年6月3日
(以上、平成29年4月26日作成の口頭審理陳述要領書(2)に添付。)
以下、書証は、その証拠番号により、甲第1号証を「甲1」、乙第1号証を「乙1」などともいう。
第5 証拠の記載事項
甲第1号証ないし甲第29号証、甲第31号証、及び、甲第32号証には、以下の記載がある。なお、原文が外国語で記載されているものについては、邦訳を示す。
ア 甲第1号証:ノルバスク(R)錠の医薬品インタビューフォーム 11、12、14、16頁:2003年8月発行(新様式第5版)
甲第1号証には,以下の記載がある。
(1A)「ベシル酸アムロジピンの固体状態における安定性試験では、室温長期保存において変化は認められず加熱並びに加湿化の保存において外観のわずかな黄色化傾向が認められたが、含量低下並びに分解物の生成は認められなかった。室内散光下の保存において、含量の低下はほとんど認められなかったものの、光曝表面は黄色に着色し、わずかに分解物が生成した。」(11頁 III-3.有効成分の各種条件下における安定性)
(1B)
「
」(12頁 III-3.有効成分の各種条件下における安定性 (1)固体状態における安定性 苛酷試験)(当審注:「(1)」は、○の中に1が記載されて表記されている。)
(1C)「
」(14頁 IV-1.剤型)
(1D)「(1)有効成分(活性成分)の含量
ノルバスク錠2.5mg、5mgは1錠中にそれぞれベシル酸アムロジピン3.47mg、6.93mg(アムロジピンとして2.5mg、5mg)を含有する。
(2)添加物
結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酸化チタン、タルク、カルナウバロウを含有する。」(14頁 IV-2.製剤の組成)
(1E)「
*本試験での30日間での積算光照射量は720000ルクス・時間であり、JISの 照明基準に適合した病院での室内散光下の120~300日間に相当する。
」(16頁 IV-3.製剤の各種条件下における安定性)
イ 甲第2号証:特開2000―191516号公報(公開日 平成12年7月11日)
甲第2号証には,以下の記載がある。
(2A)「本発明は,光に対して色変,定量値の低下をおこす薬物を含有し薬物の色変,定量値の低下が防止された経口固形組成物,および光に対して色変,定量値の低下をおこす薬物の光安定化に関する。」(段落0001 発明の属する技術分野)
(2B)「…本発明は…光に不安定な薬物を含有した粉体に着色剤を混合することを特徴とする経口固形組成物及び光に不安定な薬物の光安定化方法である。」(段落0005 課題を解決するための手段)
(2C)「本発明における着色剤は250~500nmの波長領域の光を吸収する性質を有する着色剤であり…黄色三二酸化鉄,三二酸化鉄…等が挙げられる。…」(段落0007)
(2D)「光に不安定な薬物が…ニフェジピン…である請求項1~5のいずれかに記載の経口固形組成物。」(請求項6)
ウ 甲第3号証:医薬品インタビューフォーム(プロトンポンプインヒビター タケプロンカプセル15,30,タケプロンOD錠15,30),2015年8月改訂(第16版)
甲第3号証には,以下の記載がある。
(3A)「…2002 年3 月に水なしでも服用可能な口腔内崩壊錠であるタケプロンOD 錠15及び30 が承認された。…」(1頁 I,1.開発の経緯)
(3B)「
」(9頁 I,2.有効成分の各種条件下における安定性,黄色ハイライトは請求人によるもの。以下同じ。)
(3C)「2-2 添加物
◇タケプロンOD錠
ポリソルベート80,アスパルテーム,香料,乳糖水和物,結晶セルロース,炭酸マグネシウム,低置換度ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒプロメロース,タルク,酸化チタン,D ?マンニトール,メタクリル酸コポリマーLD,アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー,ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル,クエン酸トリエチル,マクロゴール6000,モノステアリン酸グリセリン,黄色三二酸化鉄,三二酸化鉄,無水クエン酸,クロスポビドン,ステアリン酸マグネシウム」(11頁 I,2.製剤の組成)
(3D)「
」(14頁 I,4.製剤の各種条件下における安定性(4)苛酷試験)
エ 甲第4号証:岡野定輔編著『新・薬剤学総論(改訂第3版)』(南江堂,1987年4月10日発行)148,149,347~350,及び415頁
甲第4号証には,以下の記載がある。
(4A)「d)崩壊剤
錠剤,…などが服用後胃腸管内において水分や消化液によって崩壊するのをたすける目的で用いる。崩壊剤は製剤の内部に侵入した水分によって,膨潤し,その圧力で崩壊を促進する。…崩壊剤としてはデンプン(製剤の10~30%を用いる)が最も一般的に使用される…」(148頁下から3行~149頁 3行)
(4B)「c)光分解 Photolysis
光分解は物質が光を吸収して,はじめて起きる現象であるから…」(348頁 下から2及び末行)
(4C)「光にはいろいろの波長のものがあるが,医薬品の光化学的変化に最も強い影響をおよぼすのは波長290~450nmの光線…である」(349頁 6~8行)
(4D)「…デンプン,Sodium starch glycolate…」(415頁 「B:医薬品添加物一覧」と題する表の「分類」が「補助剤」の中の「崩壊剤」である行の「薬品例」の欄)
オ 甲第5号証:日本医薬品添加剤協会編『医薬品添加物事典 2000』(薬事日報社,2000年4月28日発行)64,180,及び181頁
甲第5号証には,以下の記載がある。
(5A)「カルボキシメチルスターチナトリウム
…化学名 Sodium starch glycolate…
…概要…水を加えるとき,膨潤し…
…用途…賦形剤,崩壊剤…」(64頁 左欄8行,及び同欄下から6行)
(5B)「トウモロコシデンプン
…用途…賦形剤,…崩壊剤…」(180頁 右欄下から6行,並びに181頁左欄13及び14行)
カ 甲第6号証:日本医薬品添加剤協会編『医薬品添加物事典 2005』(薬事日報社,2005年12月10日発行)68及び189頁
甲第6号証には,以下の記載がある。
(6A)「カルボキシメチルスターチナトリウム
…化学名 Sodium starch glycolate…
…概要…水を加えるとき,膨潤し…
…用途…賦形剤,崩壊剤…」(68頁 左欄7行,及び同欄下から5行)
(6B)「トウモロコシデンプン
…用途…賦形剤,…崩壊剤…」(189頁 左欄下から6行,並びに右欄13及び14行)
キ 甲第7号証:被請求人作成にかかる平成26年10月27日付け特許庁 近藤政克審査官宛て「意見書」
甲第7号証には,以下の記載がある。
(7A)「本発明で奏される所望の効果は,酸化鉄により解決するものでありますが,一方,本願明細書の実施例で用いられたマンニトールやデンプンは酸化鉄の作用を阻害しない添加剤の一つとして使用されています。このことは,本願明細書の段落〔0027〕に,『製剤分野において通常使用される無毒性かつ不活性な添加剤を添加することもできる。』との記載からも窺えます。…本発明に用いる『炭酸カルシウム』,『結晶セルロース』,『デンプン』は,製剤素材としては,一般にアミノ化合物および酸化鉄には反応しない不活性な成分として知られており,酸化鉄に対して何らかの作用があるとの特段の報告はないと理解しています。…当業者であれば,本発明の実施例において,マンニトールに代えて,本願の段落〔0027〕で添加できると記載した,同様に不活性な『炭酸カルシウム』,『結晶セルロース』を既に実施例で配合され,不活性であることが明白な『デンプン』と共に使用しても,これらが酸化鉄に対して作用を阻害するとは到底想定できませんので,同様に所望の効果が奏されるであろうことは,十分に推認することができます。」(4頁 14~28行)
ク 甲第8号証:Remington‘s Pharmaceutical Sciences 18 (1990年発行) 1637頁
甲第8号証には,以下の記載がある。
(8A)「The oldest and still the most popular disintegrants are corn and potato starch which have been well-dried and powdered.(最も古く,また未だ最も普及している崩壊剤はよく乾燥され,粉末化されたトウモロコシとジャガイモデンプンである。)」(1637頁 左欄下から24~22行)
(8B)「Starch, 5%, is suggested, but if more rapid disintegration is desired, this amount may be increase to 10 or 15%.(デンプンについては,5%が推奨される,しかし,もし,より速い崩壊が望まれる場合には,この添加量は10又は15%に増量してもよい。)」(1637頁 左欄下から17~15行)
ケ 甲第9号証:国際公開第98/02185号再公表特許(国際公開日 平成10年1月22日)
甲第9号証には,以下の記載がある。
(9A)「本発明は,医薬品,食品などの分野において,製剤の取り扱い上,通常の錠剤と同様に実用上十分な強度を有し,かつ,口中に含んだ時あるいは水の中に入れた時,速やかな崩壊性,溶解性を有する速崩壊性圧縮成型物及びその製造法に関する。」(5頁 4~7行 技術分野)
(9B)「医薬品,食品の分野における経口用固形製剤の剤形として,錠剤,カプセル剤,トローチ剤,チュアブル錠,顆粒剤,散剤などが知られているが,患者の服用のし易さを考慮した剤形は少ない。特に,老人,小児や嚥下困難な患者にも適した,取り扱いが容易で服用のし易い剤形の開発が望まれている。錠剤やカプセル剤では,服用時に水を必要とし,また,大きい製剤や服用数量が多い場合には,飲み込みにくく,咽頭や食道につかえる等の問題がある。…これらの背景より,老人や小児もしくは嚥下困難な患者などにも適する剤形として,口中に含んだ時あるいは水の中に入れた時,速やかに崩壊もしくは溶解する剤形がいくつか知られている。」(5頁9~14行,末行~6頁2行 背景技術)
(9C)「
」(22頁 表4 処方)
(9D)「
」(24頁 表7 処方)
(9E)「
」(25頁 表9 処方)
コ 甲第10号証:特開2001-122785号公報(公開日 平成13年5月8日)
甲第10号証には,以下の記載がある。
(10A)「錠剤は,患者が水と一緒に飲み込むか又は噛まなければならないものである。しかしながら,錠剤に対する年配者のコンプライアンスは,特に夜間において及び/又は水と一緒に服用すべき頻度を減少させることが分かった。…本発明は,本発明のブロチゾラム錠剤により上述の欠点を解決する新規なブロチゾラム組成物に関する。本発明は,口腔内の唾液により良好に崩壊し,水を使用せずに飲み込めるブロチゾラム錠剤に関する。」(2頁 段落0001 従来の技術)
(10B)「【実施例】実施例1
ブロチゾラム 0.250 mg
ラクトース 86.820 mg
結晶セルロース 30.000 mg
コーンスターチ 30.000 mg
アスパルテーム 0.225 mg
フマル酸一ナトリウム 0.750 mg
軽質無水ケイ酸 1.500 mg
l-メントール 0.007 mg
マグネシウムステアレート 0.450 mg
全質量 150 mg」(3頁 段落0006)
(10C)「実施例 2
ブロチゾラム 0.250 mg
ラクトース 88.320 mg
結晶セルロース 30.000 mg
コーンスターチ 30.000 mg
アスパルテーム 0.225 mg
フマル酸一ナトリウム 0.750 mg
l-メントール 0.007 mg
マグネシウムステアレート 0.450 mg
全質量 150 mg」(3頁 段落0007)
(10D)「実施例 3
ブロチゾラム 0.250 mg
ラクトース 89.070 mg
結晶セルロース 30.000 mg
コーンスターチ 30.000 mg
アスパルテーム 0.225 mg
l-メントール 0.007 mg
マグネシウムステアレート 0.450 mg
全質量 150 mg」(3及び4頁 段落0008)
サ 甲第11号証:特開2000-86537号公報(公開日 平成12年3月28日)
甲第11号証には,以下の記載がある。
(11A)「従来,経口用製剤としては,錠剤,カプセル剤,顆粒剤,散剤,トローチ剤,チュアブル錠等が知られているが,それぞれ,取り扱いの容易性,服用のし易さ等に問題があった。例えば,錠剤又はカプセル剤は服用時に水を必要とし,製剤が大きいと老人,小児等が飲みにくいという問題等があった。…そこで,水に溶けやすく,例えば口中に含んだとき,速やかに崩壊もしくは溶解し,粉立のない剤形として口腔内溶解型製剤が開発され,いくつか知られている。」(2頁 段落0002 従来の技術)
(11B)「…本発明は,医薬品,食品等に用いることができる…錠剤等の形態で,口腔内或いは水中に入れたとき,速やかな崩壊性,溶解性を有し…速崩壊性圧縮成型物である。」(3頁 段落0009)
(11C)「実施例3
実施例1の組成物75重量%,結晶セルロース〔商品名,アビセルPH101,旭化成(株)製〕16重量%,コーンスターチ〔日本コーンスターチ(株)製〕3重量%,CMS-Na〔商品名DST-SF,永日化学(株)製〕5重量%,ステアリン酸マグネシウム〔日本油脂(株)製〕1重量%を総量が8gとなるように秤量した。この各成分を吸湿しないようにして充分に混合後,タブレッチングテスタ-SK-02〔三協パイオテク(株)製〕を用いて打錠し,打錠圧と硬度の関係を求めた。」(7頁 段落0060)
(11D)「実施例4
実施例2の組成物75重量%,結晶セルロース(アビセルPH101)16重量%,コーンスターチ〔日本コーンスターチ(株)製〕5重量%,CMS-Na〔商品名DST-SF〕3重量%,ステアリン酸マグネシウム〔日本油脂(株)製〕1重量%を総量が8gとなるように秤量した。この各成分を吸湿しないようにして充分に混合後,タブレッチングテスタ-SK-02〔三協パイオテク(株)製〕を用いて打錠し,打錠圧と硬度の関係を求めた。」(7頁 段落0061)
シ 甲第12号証:杉原正泰「視点 製剤を使用性から考える」『ファルマシア』25巻9号895~900頁(日本薬学会,1989年9月1日発行)
甲第12号証には,以下の記載がある。
(12A)「近年,高齢化に伴い,高齢者にとって長期服薬が必要な薬剤,たとえば循環器官用薬…などの薬剤が繁用されている。従来,剤形は,成人を中心として開発されているため,高齢者が服薬する際困難を伴うことが多く見受けられる。内服薬を服薬する際,介添を必要とする患者…高齢者に不適な剤形等がみられ,高齢者に適した剤形…の開発が必要となる。
老人患者では,複数の合併症を有することが多く…必然的に多種類の医薬品を併用する。そこで,服薬の困難を減少する面からも,なんらかの形で服薬しやすい剤形及び配合剤の開発が必要となろう。」(899頁 右欄11~23行)
ス 甲第13号証:杉原正泰「セミナー 高齢者に適した新規剤形および包装容器」『ファルマシア』30巻12号1396~1400頁(日本薬学会,1994年12月1日発行)
甲第13号証には,以下の記載がある。
(13A)「…高齢者は医薬品の服用において,剤形の面から多くの問題点を抱えていることが明らかである。また,現在用いられている剤形の多くは一般成人向けのものであることから,介添えを必要とする身体不自由な高齢者でも容易に服薬でき,更に服薬しにくさから服用拒否を示す高齢者のためにも服用しやすい剤形の開発が望まれている。」(1397頁 右欄3~10行)
(13B)「高齢者における投与薬剤の実態調査の結果を踏まえると,高齢者用の剤形として…新規剤形の開発が考えられたが,これらの剤形での薬物の安定性や味が問題となる。そこで新規な剤形として,口腔溶解型製剤…の開発を行った。」(1397頁 右欄12~17行)
(13C)「3.口腔内速溶型経口製剤
…服用時瞬時に口腔液に溶解することから,嚥下障害を有する者や液剤を摂取できない者,特に小児や高齢者などに適した剤形である。」(1398頁 左欄29~35行)
セ 甲第14号証:山口正彦「高齢者の薬物療法 第10回 服薬困難者向け速崩性の錠剤の開発」『月刊GP net』49巻1号54~57頁(厚生科学研究所,2002年1月発行)
甲第14号証には,以下の記載がある。
(14A)「今までの製剤は薬が飲める患者さんを想定して製造されている。嚥下障害などにより,薬が飲みにくいなどの患者さんのことをあまり想定をしていない。…服用しやすい高齢者向けの製剤があってもよいのではないかと確信を深めた。」(55頁 右欄13~20行)
(14B)「速崩錠は少量の水ですぐに崩壊する服用しやすい錠剤である。」(56頁 右欄7及び8行)
(14C)「服薬困難に対応できる製剤としては,現在エルメッドエーザイでは速崩性の錠剤10成分11製剤…の販売である。」(57頁 右欄12~16行)
ソ 甲第15号証:特開2003-34655号公報(公開日 平成15年2月7日)
甲第15号証には,以下の記載がある。
(15A)「a)活性成分,b-1)糖および/または糖アルコールおよびc-1)セルロース類を含有してなる群1とb-2)糖および/または糖アルコールおよびc-2)セルロース類を含有してなる群2とを含有してなり,群1および/または群2にd)溶出補助剤を含有する速崩壊性固形製剤。」(2頁 請求項1)
(15B)「活性成分が塩酸マニジピンである請求項1記載の製剤。」(2頁 請求項20)
(15C)「従来より,薬剤の嚥下が困難な患者,高齢者あるいは小児のために,服用しやすい剤形として,口腔内で迅速に崩壊・溶解する固形製剤の開発が進められている。」(3頁 段落0002 従来の技術)
(15D)「本発明で用いられる活性成分としては…例えば滋養強壮保健薬,解熱鎮痛消炎薬,向精神薬,抗不安薬,抗うつ薬,催眠鎮静薬,鎮痙薬,中枢神経作用薬,脳代謝改善剤,脳循環改善剤,抗てんかん剤,交感神経興奮剤,胃腸薬,制酸剤,抗潰瘍剤,鎮咳去痰剤,鎮吐剤,呼吸促進剤,気管支拡張剤,アレルギー用薬,歯科口腔用薬,抗ヒスタミン剤,強心剤,不整脈用剤,利尿薬,血圧降下剤,血管収縮薬,冠血管拡張薬,末梢血管拡張薬,高脂血症用剤,利胆剤,抗生物質…血圧降下剤としては,例えば…ニフェジピン,…ベシル酸アムロジピン…塩酸マニジピンなどのCa拮抗薬…などが挙げられる。」(4~6頁 段落0005)
(15E)「…本発明で用いられる糖アルコールとしては,例えばD-マンニトール,エリスリトール,キシリトール,マルチトール,ソルビトールなどが挙げられ,D-マンニトールなどが好ましく用いられる。」(6及び7頁 段落0006)
(15F)「…着色剤としては,例えば…三二酸化鉄などが挙げられる。」(8頁 段落0009)
(15G)「実施例1
塩酸マニジピン4480g,乳糖造粒粉末(フロイント産業)13156g,トウモロコシデンプン660g,低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業:LH-31)3300gを流動造粒乾燥機(パウレック社,FD-S2型)に仕込み,ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達)440gおよび黄色三二酸化鉄44gを含む精製水9284gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物Aを得た。次に,造粒物Aをパワーミル(昭和化学機械工作所,P-3S)を用い,スクリーンサイズ(1.2mmφ)にて整粒し,整粒物Aを得た。一方,D―マンニトール(東和化成:マンニットS)8614g, D-マンニトール(メルク社:1.05980)4514g,低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業:LH-11)1438gを流動造粒乾燥機(パウレック社,FD-S2型)に仕込み,D-マンニトール460g,無水クエン酸144gおよび黄色三二酸化鉄11.5gを含む精製水5215gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物Bを得た。次に,造粒物Bをパワーミルを用い,スクリーンサイズ(1.2mmφ)にて整粒し,整粒物Bを得た。整粒物A1800g,整粒物B2376g,結晶セルロース248g,アスパルテーム9.0g,ステアリン酸マグネシウム67.5gを混合した。この混合末を1錠当たり250mgで打錠した(菊水製作所,コレクト19KAWC,錠剤サイズ9.5mmφ,圧縮圧5.4kN/cm2 )。」(9頁 段落0015)
(15H)「実施例2
塩酸マニジピン2660g,乳糖造粒粉末13111g,トウモロコシデンプン559g,低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH-31)1995gを流動造粒乾燥機(パウレック社,FD-S2型)に仕込み,ヒドロキシプロピルセルロース266gおよび黄色三二酸化鉄13gを含む精製水7727gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物Cを得た。次に,造粒物Cをパワーミルを用い,スクリーンサイズ(1.2mmφ)にて整粒し,整粒物Cを得た。一方,D―マンニトール(マンニットS)9585g,D-マンニトール(メルク社:1.05980)5053g,低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業:LH-11)1418gを流動造粒乾燥機(パウレック社,FD-S2型)に仕込み,D-マンニトール540g,無水クエン酸142gおよび黄色三二酸化鉄6.8gを含む精製水6089gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物Dを得た。次に,造粒物Dをパワーミルを用い,スクリーンサイズ(1.2mmφ)にて整粒し,整粒物Dを得た。整粒物C1259g,整粒物D2233g,結晶セルロース224g,アスパルテーム7.6g,ステアリン酸マグネシウム56.7gを混合した。この混合末を1錠当たり210mgで打錠した(菊水製作所,コレクト19KAWC,錠剤サイズ9.0mmφ,圧縮圧6.5kN/cm2 )。」(9頁 段落0016)
(15I)「実施例3
塩酸マニジピン600g,乳糖造粒粉末1644g,トウモロコシデンプン90g,低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH-31)600gを流動造粒乾燥機(富士産業,FD-5S型)に仕込み,ヒドロキシプロピルセルロース60gおよび黄色三二酸化鉄6gを含む精製水1266gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物Eを得た。次に,造粒物Eをパワーミルを用い,スクリーンサイズ(0.8mmφ)にて整粒し,整粒物Eを得た。一方,D―マンニトール(マンニットS)2121g,D-マンニトール(メルク社:1.05980)1121g,カルボキシメチルセルロース(五徳薬品:NS-300)563gを流動造粒乾燥機(富士産業,FD-5S型)に仕込み,D-マンニトール120g,無水クエン酸30gおよび黄色三二酸化鉄6gを含む精製水1356gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物Eを得た。次に,造粒物Fをパワーミルを用い,スクリーンサイズ(0.8mmφ)にて整粒し,整粒物Fを得た。整粒物E10g,整粒物F13.2g,結晶セルロース1.38g,アスパルテーム0.05g,ステアリン酸マグネシウム0.38gを混合した。この混合末を1錠当たり250mgで打錠した(万能試験機,錠剤サイズ9.5mmφ,圧縮圧5.3kN/cm2 )。」(9頁 段落0017)
タ 甲第16号証:特開2001-58944号公報(公開日 平成13年3月6日)
甲第16号証には,以下の記載がある。
(16A)「a)活性成分,b)平均粒子径が30μm~300μmの糖または糖アルコール,c)崩壊剤およびd)セルロース類を含有してなる速崩壊性固形製剤。」(2頁 請求項1)
(16B)「活性成分が塩酸マニジピンである請求項1記載の製剤。」(2頁 請求項14)
(16C)「従来より,薬剤の嚥下が困難な患者,高齢者あるいは小児のために,服用しやすい剤形として,口腔内で迅速に崩壊・溶解する固形製剤の開発が進められている。」(2及び3頁 段落0002 従来の技術)
(16D)「本発明で用いられる活性成分としては…例えば滋養強壮保健薬,解熱鎮痛消炎薬,向精神薬,抗不安薬,抗うつ薬,催眠鎮静薬,鎮痙薬,中枢神経作用薬,脳代謝改善剤,脳循環改善剤,抗てんかん剤,交感神経興奮剤,胃腸薬,制酸剤,抗潰瘍剤,鎮咳去痰剤,鎮吐剤,呼吸促進剤,気管支拡張剤,アレルギー用薬,歯科口腔用薬,抗ヒスタミン剤,強心剤,不整脈用剤,利尿薬,血圧降下剤としては,例えば…塩酸マニジピン…などが挙げられる。」(4及び5頁 段落0005)
(16E)「…本発明で用いられる糖アルコールとしては,D-マンニトール,エリスリトール,キシリトール,マルチトール,ソルビトールなどが挙げられ,D-マンニトールが好ましく用いられる。」(5及び6頁 段落0006)
(16F)「…着色剤としては,例えば…三二酸化鉄などが挙げられる。」(7頁 段落0009)
(16G)「実施例1
塩酸マニジピン40g,D-マンニトール(東和化成:マンニットS,平均粒子径130μm)303.4g,結晶セルロース(旭化成)50g,トウモロコシデンプン(日本コーンスターチ)50gおよび軽質無水ケイ酸(ワイケイエフ)1gを流動造粒乾燥機(パウレック社,LAB-1型)に仕込み,D-マンニトール18gおよび黄色三二酸化鉄(Anstead)0.6gを含む精製水139gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物を得た。造粒物347gにクロスポビドン(ISP)25g,軽質無水ケイ酸1g,ステアリン酸マグネシウム(太平化学)10g,アスパルテーム(味の素)1gを加え,混合末を得た。この混合末を1錠当たり250mgで打錠した(菊水製作所,コレクト12HUK,錠剤サイズ9.5mmφ,圧縮圧9.8kN(1トン)/cm2 )。」(8頁 段落0015)
(16H)「実施例2
塩酸マニジピン180g,D-マンニトール495g(メルク社:1.05980,平均粒子径45μm),トウモロコシデンプン225g,結晶セルロース112.5g,軽質無水ケイ酸2g,クロスポビドン56.3gを流動造粒乾燥機(パウレック社,FD-3SN型)に仕込み,D-マンニトール42.8gおよび黄色三二酸化鉄1.4gを含む精製水540gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物Aを得た。一方,D―マンニトール(東和化成:マンニットS)872.1g,結晶セルロース112.5gおよびクロスポビドン56.3gを流動造粒乾燥機(パウレック社,FD-3SN型)に仕込み,D-マンニトール36.2gおよび黄色三二酸化鉄1.4gを含む精製水540gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物Bを得た。造粒物A1003g,造粒物B971g,軽質無水ケイ酸6.3g,アスパルテーム4.1g,ステアリン酸マグネシウム41gを混合した。この混合末を1錠当たり250mgで打錠した(菊水製作所,コレクト12HUK,錠剤サイズ9.5mmφ,圧縮圧4.9kN,9.8kNおよび19.6kN/cm2 )。」(8頁 段落0016)
(16I)「実施例3
塩酸マニジピン90g,D-マンニトール416g(メルク社:1.05980,平均粒子径45μm),トウモロコシデンプン189g,結晶セルロース94.5g,軽質無水ケイ酸1.7g,クロスポビドン47.3gを流動造粒乾燥機(パウレック社,FD-3SN型)に仕込み,D-マンニトール33.5gおよび黄色三二酸化鉄0.4gを含む精製水423gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物Cを得た。一方,D―マンニトール(東和化成:マンニットS)884g,結晶セルロース105gおよびクロスポビドン52.5gを流動造粒乾燥機(パウレック社,FD-3SN型)に仕込み,D-マンニトール35.7gおよび黄色三二酸化鉄0.4gを含む精製水540gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物Dを得た。造粒物C760g,造粒物D845g,軽質無水ケイ酸5.1g,アスパルテーム3.9g,ステアリン酸マグネシウム33gを混合した。この混合末を1錠当たり210mgで打錠した(菊水製作所,コレクト12HUK,錠剤サイズ9.0mmφ,圧縮圧9.8kN/cm2 )。」(8及び9頁 段落0017)
(16J)「実施例4
塩酸マニジピン80g,D-マンニトール220g(メルク社:1.05980,平均粒子径45μm),トウモロコシデンプン100g,軽質無水ケイ酸1.2gを流動造粒乾燥機(パウレック社,LAB-1型)に仕込み,ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達)6gおよび黄色三二酸化鉄0.4gを含む精製水200gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物Eを得た。一方,D―マンニトール(東和化成:マンニットS)400.5gおよび結晶セルロース100gを流動造粒乾燥機(パウレック社,LAB-1型)に仕込み,,D-マンニトール16.1gおよび黄色三二酸化鉄0.8gを含む精製水180gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物Fを得た。造粒物E203.8g,造粒物F258.8g,クロスポビドン25g,軽質無水ケイ酸1.4g,アスパルテーム1gおよびステアリン酸マグネシウム10gを混合した。この混合末を1錠当たり250mgで打錠した(菊水製作所,コレクト12HUK,錠剤サイズ9.5mmφ,圧縮圧9.8kN/cm2 )。」(9頁 段落0022)
(16K)「実施例8
塩酸マニジピン900g,乳糖造粒粉末(フロイント産業:ダイラクトースS,平均粒子径 80μm)1374.8g,クロスポビドン301.5g,およびトウモロコシデンプン(日本コーンスターチ)211.5gを流動造粒乾燥機(富士産業,FD-5S型)に仕込み,ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達)225gおよび黄色三二酸化鉄2.3gを含む精製水4500gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物Gを得た。次に,造粒物Gをパワーミル(昭和化学機械工作所,P-3)を用い,スクリーンサイズ(1.0mmφ)にて整粒し,整粒物Gを得た。一方,D―マンニトール(東和化成:マンニットS)2856g, D―マンニトール(メルク社:1.05980)1650gおよびクロスポビドン249gを流動造粒乾燥機(富士産業,FD-5S型)に仕込み, D―マンニトール(東和化成:マンニットS)150gおよび黄色三二酸化鉄7.5g及び無水クエン酸37.5gを含む精製水1500gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物Hを得た。造粒物Gをパワーミルを用い,スクリーンサイズ(1.0mm)にて整粒し,整粒物Hを得た。整粒物G737g,整粒物H1815g,結晶セルロース151.3g,アスパルテーム5.5g,ステアリン酸マグネシウム41.3gを混合した。 この混合末を1錠当たり250mgで打錠した(菊水製作所,コレクト12HUK,錠剤サイズ9.5mmφ,圧縮圧7.4kN/cm2)。」(9頁 段落0018)
チ 甲第17号証:国際公開第00/078292号再公表特許(国際公開日 平成12年12月28日)
甲第17号証には,以下の記載がある。
(17A)「a)活性成分,b)平均粒子径が30μm~300μmの糖または糖アルコール,c)崩壊剤およびd)セルロース類を含有してなる速崩壊性固形製剤。」(2頁 請求項1)
(17B)「活性成分が塩酸マニジピンである請求項1記載の製剤。」(2頁 請求項14)
(17C)「従来より,薬剤の嚥下が困難な患者,高齢者あるいは小児のために,服用しやすい剤形として,口腔内で迅速に崩壊・溶解する固形製剤の開発が進められている。」(5頁 7~9行 背景技術)
(17D)「本発明で用いられる活性成分としては…例えば滋養強壮保健薬,解熱鎮痛消炎薬,向精神薬,抗不安薬,抗うつ薬,催眠鎮静薬,鎮痙薬,中枢神経作用薬,脳代謝改善剤,脳循環改善剤,抗てんかん剤,交感神経興奮剤,胃腸薬,制酸剤,抗潰瘍剤,鎮咳去痰剤,鎮吐剤,呼吸促進剤,気管支拡張剤,アレルギー用薬,歯科口腔用薬,抗ヒスタミン剤,強心剤,不整脈用剤,利尿薬,血圧降下剤…などから選ばれた1種または2種以上の成分が用いられる。」(8頁末行~9頁9行 発明の開示)
(17E)「血圧降下剤としては,例えば…塩酸マニジピン…などが挙げられる。」(10頁下から2行~11頁2行)
(17F)「本発明で用いられる糖アルコールとしては,D-マンニトール,エリスリトール,キシリトール,マルチトール,ソルビトールなどが挙げられ,D-マンニトールが好ましく用いられる。」(12頁16~18行)
(17G)「着色剤としては,例えば…三二酸化鉄などが挙げられる。」(16頁14及び15行)
(17H)「実施例1
塩酸マニジピン40g,D-マンニトール(東和化成:マンニットS,平均粒子径130μm)303.4g,結晶セルロース(旭化成)50g,トウモロコシデンプン(日本コーンスターチ)50gおよび軽質無水ケイ酸(ワイケイエフ)1gを流動造粒乾燥機(パウレック社,LAB-1型)に仕込み,D-マンニトール18gおよび黄色三二酸化鉄(Anstead)0.6gを含む精製水139gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物を得た。
造粒物347gにクロスポビドン(ISP)25g,軽質無水ケイ酸1g,ステアリン酸マグネシウム(太平化学)10g,アスパルテーム(味の素)1gを加え,混合末を得た。
この混合末を1錠当たり250mgで打錠した(菊水製作所,コレクト12HUK,錠剤サイズ9.5mmφ,圧縮圧9.8kN(1トン)/cm2 )。」(19頁9~20行)
(17I)「実施例2
塩酸マニジピン180g,D-マンニトール495g(メルク社:1.05980,平均粒子径45μm),トウモロコシデンプン225g,結晶セルロース112.5g,軽質無水ケイ酸2g,クロスポビドン56.3gを流動造粒乾燥機(パウレック社,FD-3SN型)に仕込み,D-マンニトール42.8gおよび黄色三二酸化鉄1.4gを含む精製水540gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物Aを得た。
一方,D-マンニトール(東和化成:マンニットS)872.1g,結晶セルロース112.5gおよびクロスポビドン56.3gを流動造粒乾燥機(パウレック社,FD-3SN型)に仕込み,D-マンニトール36.2gおよび黄色三二酸化鉄1.4gを含む精製水540gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物Bを得た。
造粒物A1003g,造粒物B971g,軽質無水ケイ酸6.3g,アスパルテーム4.1g,ステアリン酸マグネシウム41gを混合した。
この混合末を1錠当たり250mgで打錠した(菊水製作所,コレクト12HUK,錠剤サイズ9.5mmφ,圧縮圧4.9kN,9.8kNおよび19.6kN/cm2 )。」(19頁21行~20頁8行)
(17J)「実施例3
塩酸マニジピン90g,D-マンニトール416g(メルク社:1.05980,平均粒子径45μm),トウモロコシデンプン189g,結晶セルロース94.5g,軽質無水ケイ酸1.7g,クロスポビドン47.3gを流動造粒乾燥機(パウレック社,FD-3SN型)に仕込み,D-マンニトール33.5gおよび黄色三二酸化鉄0.4gを含む精製水423gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物Cを得た。
一方,D-マンニトール(東和化成:マンニットS)884g,結晶セルロース105gおよびクロスポビドン52.5gを流動造粒乾燥機(パウレック社,FD-3SN型)に仕込み,D-マンニトール35.7gおよび黄色三二酸化鉄0.4gを含む精製水540gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物Dを得た。
造粒物C760g,造粒物D845g,軽質無水ケイ酸5.1g,アスパルテーム3.9g,ステアリン酸マグネシウム33gを混合した。
この混合末を1錠当たり210mgで打錠した(菊水製作所,コレクト12HUK,錠剤サイズ9.0mmφ,圧縮圧9.8kN/cm2 )。」(20頁9~24行)
(17K)「実施例4
塩酸マニジピン80g,D-マンニトール220g(メルク社:1.05980,平均粒子径45μm),トウモロコシデンプン100g,軽質無水ケイ酸1.2gを流動造粒乾燥機(パウレック社,LAB-1型)に仕込み,ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達)6gおよび黄色三二酸化鉄0.4gを含む精製水200gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物Eを得た。
一方,D-マンニトール(東和化成:マンニットS)400.5gおよび結晶セルロース100gを流動造粒乾燥機(パウレック社,LAB-1型)に仕込み,D-マンニトール16.1gおよび黄色三二酸化鉄0.8gを含む精製水180gを噴霧し,造粒,乾燥工程を経て造粒物Fを得た。
造粒物E203.8g,造粒物F258.8g,クロスポビドン25g,軽質無水ケイ酸1.4g,アスパルテーム1gおよびステアリン酸マグネシウム10gを混合した。
この混合末を1錠当たり250mgで打錠した(菊水製作所,コレクト12HUK,錠剤サイズ9.5mmφ,圧縮圧9.8kN/cm2 )。」(20頁25行~21頁10行)
ツ 甲第18号証:特開平10-298062号公報(公開日 平成10年11月10日)
甲第18号証には,以下の記載がある。
(18A)「本発明において,「口腔内速溶型」とは,人間等の哺乳類に経口投与される際に,水を服用することなく口腔内において2分以内,好ましくは1分以内,更に好ましくは40秒以内に錠剤全量が崩壊・分散する程度の速溶性を示すことをいう。」(2及び3頁 段落0008)
(18B)「(実施例2)…表3に示す配合量にて…混合し…ベシル酸アムロジピン…を粉末添加,混合し,…本発明速溶錠を得た。
表3
」(6頁 段落0047及び0048)
(18C)「((実施例11)表14に示す成分組成により,(実施例2)と同様の方法にて本発明の速溶錠(直径10.5mm,重量500mg)を得た。
表14
」(9頁 段落0064)
テ 甲第19号証:国際公開第00/47233号再公表特許(国際公開日 平成12年8月17日)
甲第19号証には,以下の記載がある。
(19A)「従来より,種々の経口用の医薬品剤形が知られているが,患者の飲み易さを考慮した剤形は少なく,特に薬剤の服用に問題の多い高齢者,小児及び重症患者に適した剤形が望まれている。例えば,錠剤やカプセル剤は…飲み込みにくい,喉につかえる等の理由から服用を嫌がる患者も多い。…最近,…シロップ剤のような飲み込み易さとを併せ持つ剤形として,口腔内で速やかに崩壊する製剤に関する技術が多く開示されている」(3頁 6~17行)
(19B)「実施例5
ベシル酸アムロジピン 5 mg
D-マンニトール 103 mg
トウモロコシデンプン 11 mg
ステアリン酸マグネシウム 1 mg
上記成分を混合した後,油圧式プレス機(理研製)を用いて50kgfの圧力で圧縮し,直径7mm,重量120mgの錠剤を得た。」(8頁 7~13行)
(19C)「実施例6
ベシル酸アムロジピン 5 mg
D-マンニトール 91 mg
トウモロコシデンプン 23 mg
ステアリン酸マグネシウム 1 mg
上記成分を混合した後,油圧式プレス機(理研製)を用いて50kgfの圧力で圧縮し,直径7mm,重量120mgの錠剤を得た。」(8頁 14~20行)
(19D)「実施例7
ベシル酸アムロジピン 5 mg
D-マンニトール 101.9mg
トウモロコシデンプン 11 mg
アスパルテーム 1 mg
香料 0.1mg
フマル酸ステアリルナトリウム 1 mg
上記成分を混合した後,油圧式プレス機(理研製)を用いて50kgfの圧力で圧縮し,直径7mm,重量120mgの錠剤を得た。」(8頁 21~29行)
(19E)「実施例8
ベシル酸アムロジピン 45 g
D-マンニトール 869.4g
トウモロコシデンプン 96.3g
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 32.4g
アスパルテーム 9 g
軽質無水ケイ酸 5.4g
香料 0.9g
フマル酸ステアリルナトリウム 21.6g
上記成分の内,トウモロコシデンプンの一部(6.3g)を取り,精製水に分散後,加温して糊化することで1%でんぷん糊630gを得た。スプレーグラニュレーター(RABO-1,パウレック社製)にベシル酸アムロジピン,D-マンニトール,トウモロコシデンプンの残り(90g),低置換度ヒドロキシプロピルセルロース,アスパルテーム及び軽質無水ケイ酸を仕込み,混合した後,1%でんぷん糊を加えて造粒・乾燥した造粒物をV型混合機(S-5型,筒井理化学機器社製)に取り出し,香料及びフマル酸ステアリルナトリウムを加えて混合し,打錠用顆粒とした。打錠用顆粒をロータリー式打錠機(HT-P15A,畑鉄工所製)を用いて400kgの圧力で圧縮し,直径7mm,重量120mgの錠剤約9000錠を得た。」(9頁 1~19行)
ト 甲第20号証:矢崎義雄・遠藤政夫編『全面改訂 カルシウム拮抗薬』(医薬ジャーナル社,2001年8月1日発行)246~250頁
甲第20号証には,以下の記載がある。
(20A)「…第三世代のCa拮抗薬は血中半減期が長く,副作用も少ない。」(246頁 6行 Summary)
(20B)「Ca拮抗薬はその化学構造の違いから,フェニルアルキルアミン系(PAA),シヒドロピリジン(DHP)系,ベンゾチアゼピン(BTZ)系に大別される1)。…
ニフェジピンを基本薬とするDHP系Ca拮抗薬は,現在使用されているCa拮抗薬の大部分を占める。…光に不安定なものが多く,ニフェジピンは日光に当たると急速に分解される。アムロジピンやフェロジピンは比較的安定である。」(247頁 7~21行)
(20C)「Ca拮抗薬は化学構造による分類のほかに臨床的作用による世代分類がある2)。これは主に血中濃度の経時的変化,解離速度,バイオアベイラビリティ(生体内有効利用率)に基づいている。」(247頁 下から3及び2行)
(20D)「1.第一世代薬
この群には,…ニフェジピン…がある。」(248頁 2及び3行)
(20E)「第二世代薬物は…2つに分類できる。…後者には…マニジピン…などがある。」(248頁 下から2行~250頁4行)
(20F)「第二世代のCa拮抗薬は第一世代薬と比較し,…長時間作用型とはなったが,交感神経系とレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の亢進を抑制できなかった。したがって,神経液性因子の活性を減少させ,圧受容体の反応性を増加させる作用をもつ,さらに持続時間の長い第三世代のCa拮抗薬が開発された。
3.第三世代薬物
第三世代のCa拮抗薬のアムロジピンは,極めて血管選択性とバイオアベイラビリティが高く,…血中半減期が約36時間と長く,血圧の日内変動が少なく,1日1回の投与でよい。急速な血圧低下が起きにくく,高齢者にも使いやすい。…副作用…が少ない。」(250頁 18~27行)
(20G)「
」(249頁 表1)
ナ 甲第21号証:国際公開第03/097045号パンフレット(国際公開日 2003年11月27日)
甲第21号証には,以下の記載がある。
(21A)「…amlodipine is being marketed under the trade name NorvascR.(アムロジピンは,商標名Norvasc[登録商標]で販売されている。)」(12頁末行から13頁1行)
(21B)「Formulation Example 3 : Composition and quantities for a combination of valsartan and amlodipine(製剤例3:バルサルタン及びアムロジピンの組合せの組成及び量)」。
「
」(17頁1~2行,17頁表)
(21C)「The tablet is manufactured e.g. essentially as described in Formulation Example 1.(錠剤は,例えば,製剤例1で本質的に記載されたように,製造される。)」(17頁)
(21D)「Formulation Example 1 : Composition and batch quantities for Diovan(R) tablets(製剤例1:Diovan[登録商標]錠剤の組成及びバッチ重量)。(注 上記(R)は、○内にRの文字が記された記号である。)
」(13頁5~6行,13頁表)
(21E)「Composition of Diolack(Diolackの組成)。」
「
」(14頁1行,14頁表)
ニ 甲第22号証:D.S. Desaiら,Photostabilization of uncoated tablets of sorivudine and nifedipine by incorporation of synthetic iron oxides,International Journal of Pharmaceutics,103巻,1号(1994年2月25日発行),69~76頁
甲第22号証には,以下の記載がある。
(22A)「The synthetic iron oxides are strong absorbers of radiation wavelengths below 400 nm. They also have great hiding power due to their high refractive indices and high tinctorial capacity. These properties of iron oxides were utilized in Photostabilization of two light-sensitive drugs, sorivudine (BV-araU) and nifedipine. Light stability studies on 10 mg potency aqueous wet granulated uncoated tablets of sorivudine and nifedipine formulated with or without 0.2% w/w yellow iron oxide were performed by exposing them directly to room light and/or light of 400 foot candle intensity. Subsequent to exposure, they were assayed for loss in potency and increase in level of degradants due to photodecomposition. Uncoated tablets containing 0.2% w/w yellow iron oxide were found to be more light stable than those without it.(合成酸化鉄は,400 nm以下の波長の放射光の強力な吸収剤である。…これらの性質は,ソリブジン(BV-araU)とニフェジピンという2つの光感応性薬物の光安定化に使われた。…0.2% w/wの黄色酸化鉄を含む無被覆錠剤は,それを含まないものに比べてより安定であることが分かった。)」(69頁 Summary)
(22B)「To study photostabilization effects of synthetic iron oxides on nifedipine, yellow iron oxide was selected and included in uncoated tablets of nifedipine, and then stability was monitored upon exposure to a light source.(合成酸化鉄のニフェジピンに対する光安定化効果を研究するため,黄色酸化鉄が選択され,ニフェジピンの無被覆錠剤に含められ,その後,光源に曝露することで安定性がモニターされた。)」(70頁 左欄11~15行)
(22C)「The formulation composition of the granules used for the manufacture of the tablets used in this study is given below: sorivudine or nifedipine (10.0 or 12.5% w/w in formulation); Iron oxide (yellow, red, or black) (0.2% w/w in formulation)(本研究に用いられた錠剤を作製するのに使用された顆粒の製剤組成は下記の通り:ソリブジンまたはニフェジピン(製剤中,10.0または12.5% w/w),酸化鉄(黄,赤,または黒)(製剤中,0.2% w/w)(70頁 右欄18~20行及び表中)
(22D)「Nifedipine tablets of 10 mg potency, with or without 0.2% yellow iron oxide, were exposed to 400 foot candle light for up to 14 days. After 14 days exposure, only 57% of the initial nifedipine potency was remained in the tablets not containing any iron oxide whereas in tablets with iron oxide, 75% of the initial nifedipine potency was detected (Table 1). Moreover, the degradant concentrations were higher in the nifedipine tablets without iron oxide compared to those with iron oxide indicating that iron oxide reduced the photolytic degradation on nifedipine (Table 1). (0.2%の黄色酸化鉄を含むものと,含まない10 mg力価のニフェジピン錠剤が,400フットカンデラの光に14日間曝露された。14日間の曝露後,黄色酸化鉄を含まない錠剤は初期のニフェジピン力価の57%しか保持できていなかったのに対し,酸化鉄を含む錠剤については,初期のニフェジピン力価の75%が検出された(表1)。加えて,酸化鉄を含まない錠剤における分解物濃度は,酸化鉄を含む錠剤に較べて高かったことから,酸化鉄がニフェジピンの光分解を減らしたことが示唆された(表1)。)」(74頁 左欄1~12行)
(22E)「When the concentration of yellow iron oxide in the tablet was increased from 0.2% to 0.5% w/w, the photostabilization effect also increased slightly (Table 4). (錠剤中の黄色酸化鉄の濃度が0.2から0.5% w/wに増量されると光安定化効果も若干増加する(表4)。)」(74頁 左欄26~29行)
(22F)「Sorivudine has absorption maxima at two wavelengths, 239 and 283 nm and nifedipine has maxima at 237 and 360 nm (Majeed et al. , 1987). (ソリブジンは,239と283 nmの二つの吸収極大波長を有し,ニフェジピンは,237と360 nmに極大を有する(Majeed et al. , 1987)。)」(75頁 左欄4~6行)
(22G)「It is hypothesized, therefore, that because iron oxide are strong absorbers of UV light below 400 nm, they absorb wavelength of light responsible for the photolytic degradation of sorivudine and nifedipine. (したがって,酸化鉄は400 nmより下の紫外光の強力な吸収剤であることにより,それらが,ソリブジンとニフェジピンの光分解の原因である波長の光を吸収するとの仮説が立てられる。)」(75頁 左欄12~16行)
(22H)「The active ingredient (sorivudine or nifedipine) and lactose were screened separately …. Iron oxides were screed separately through a no. 30 mesh screen and were mixed with microcrystalline cellulose…. This mixture was then added to the bowl containing the active ingredient, lactose, and pregelatinised starch. The contents of the bowl were then mixed for 5 min at slow speed and granulated using purified water. (活性成分(ソリブジンまたはニフェジピン)及びラクトースは別々にふるいにかけられ,…。酸化鉄は,30番メッシュのふるいにかけられ微結晶セルロースと混合され…。その後,この混合物は,活性成分,ラクトース及びアルファ化澱粉を入れたボウルに加えられた。ボウルの内容物は,低速で5分間混合され,精製水を用いて造粒された。)」(71頁 左欄1~12行)
(22I)「Nifedipine granules were compressed into 100 mg round tablets of 10 mg potency on the F-press using 1/4 inch round concave tooling. (ニフェジピン顆粒は,1/4インチの円形凹型治工具を用いたF-プレス上で,有効成分10 mgの100 mgの円形錠剤に打錠された。)」(71頁 左欄26~29行)
ヌ 甲第23号証:Gaetano Ragnoら,Photodegradation monitoring of amlodipine by derivative spectrophotometry,Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,27巻,1-2号(2002年1月1日発行),19~24頁
甲第23号証には,以下の記載がある。
(23A)「Amlodipine, R,S-2-[(2-aminoethoxy)methyl]-4-(2-chlorophenyl)-3-ethoxycarbonyl-5-metoxycarbonyl-6-methyl-1,4-dihydropyridine (AML), is a potent, long-lasting calcium antagonist agent, widely used against hypertension and angina [1], belonging to the generally termed ‘1,4-dihydropyridines’ class. With a feature common to all compounds of the class, the drug undergoes oxidation when exposed to light [2-4], so generating the pyridine analogue (AMLOX) (図. 1).(アムロジピン,R,S-2-[(2-アミノエトキシ)メチル]-4-(2-クロロフェニル)-3-エトキシカルボニル-5-メトキシカルボニル-6-メチル-1,4-ジヒドロピリジン (AML)は高血圧症と狭心症[1]に広く用いられる強力な長期持続性のあるカルシウム拮抗剤であり1,4-ジヒドロピリジン類と総称される類に属する。該類の全ての化合物に共通する性質は,光に曝されると薬物が酸化され[2-4],ピリジン類似体(AMLOX)を生成することである(図. 1)。)」(19頁 左欄2~11行)
(23B)「Amlodipine pure powder was kindly provided by Pfizer (Rome, Italy)….Norvasc (Pfizer, Italy), ….(アムロジピンの純粋な粉末は,ファイザー(ローマ,イタリア)から提供を受けた。…ノルバスク(ファイザー,イタリア)…。)」(20頁 左欄17行~右欄1行)
(23C)「図. 2にはAMLについて240 nm付近及び360 nm付近に極大吸収を示すことが記載されている」(21頁 図2)
(23D)「The exposition to natural light was carried out in the period June-July, constantly exposing the samples from 09:00 h to 17:00 h in clear days. The irradiation with artificial light was performed by exposure to 280-360 nm UV lump (30 W, at a distance of 30 cm). (自然光への曝露は,6月~7月の期間で,晴天の日の9時から17時まで連続してサンプルを曝露して行われた。人工光による照射は,280-360 nmのUVランプ(30W,距離30 cm)に曝露して行われた。)」(21頁 左欄14~19行)
(23E)「The pharmaceutical tablets resulted sufficiently stable, with a decrease of AML title of 10% after 46 h of natural light exposure and 30 h under artificial light. (製剤化された錠剤は,十分安定であり,46時間の自然光曝露及び30時間の人工光曝露後,AML表示量の10%減少であった。)」(23頁 右欄21~24行)
ネ 甲第24号証:特開2003-104888号公報(公開日 平成15年4月9日)
甲第24号証には,以下の記載がある。
(24A)「…フィルムコーティング剤皮に酸化鉄を配合することにより,光に安定なジヒドロピリジン誘導体のフィルムコーティング錠剤を提供するものである。」(2頁 段落0009)
(24B)「ジヒドロピリジン誘導体がニソルジピン,ニトレンジピン,ベニジピン,マニジピン,バルニジピン,アムロジピン,エホニジピン,ニルバジピンもしくはその医薬として許容しうる塩である請求項1もしくは請求項2記載のジヒドロピリジン誘導体の錠剤。」(請求項3)
(24C)「ジヒドロピリジン誘導体は,光に対する安定性が低く,水性溶媒への溶解度が非常に低いために経口投与の場合には消化管液中で薬物が製剤から溶出するような工夫が必要である。そのため,ジヒドロピリジンの医薬組成物に関しては多くの特許出願並びに特許が存在する。例えば,…光に対して不安定な薬物の安定性を向上させるために,フィルムコーティング剤皮に酸化チタンを配合することが慣用の技術として利用されている。」(段落0004)
(24D)「これらの従来技術は…作業工程が煩雑となり…必ずしも望ましい技術とは言い難い。…又,酸化チタンをフィルムコーティング剤皮に使用してジヒドロピリジン誘導体のフィルムコーティング錠剤を作成した場合にも必ずしも満足のいく製剤中のジヒドロピリジン誘導体の光安定性を得られるものではなかった。」(段落0005)
(24E)「実施例1
ニソルジピンのフィルムコーティング錠剤
以下の処方及び製法を用いて本発明品1のニソルジピンのフィルムコーティング錠剤を得た。」(3頁 段落0020)
(24F)「
(処方)
成分 含有量(mg)
(素錠部)
1.ニソルジピン 10
…
(フィルムコーティング部)
…
4.三二酸化鉄 0.46
5.黄色三二酸化鉄 0.19」(3及び4頁,段落0021)
(24G)「酸化鉄が三二酸化鉄,黄色三二酸化鉄を単独か,もしくは両者を組み合わせて使用するものである請求項4記載のジヒドロピリジン誘導体のフィルムコーティング錠剤。」(請求項5)
(24H)「実施例2
ニソルジピンのフイルムコーティング錠剤
以下の処方及び製法を用いて本発明品2のニソルジピンのフイルムコーティング錠剤を得た。」との記載に続けて、「(素錠部)」は「実施例1と同一」で,「(フィルムコーティング部)」に「2.酸化チタン,…4.三二酸化鉄(0.13mg)」を用いたニソルジピンのコーティング錠剤が記載されている。(段落0026)
(24I)「比較例2
ニソルジピンのフィルムコーティング錠剤
実施例2のフィルムコーティング部成分4を同量の酸化チタンに代え,実施例2と同様の製法でニソルジピンのフィルムコーティング錠剤を得た。このフィルムコーティング錠剤は実施例2よりも光安定性に劣っていた。」(段落0031)
ノ 甲第25号証:無効2010-800164 平成24年2月22日付け審決
甲第25号証には,以下の記載がある。
(25A)「1.手続の経緯
(1)本件特許第4509118号の請求項1~12に係る発明についての特許は,平成17年10月5日(優先権主張,特願2004-293771号,平成16年10月6日)を国際出願日として出願され,平成22年5月14日にその発明について特許の設定登録がされたものである。」(2頁 13~17行)
(25B)「(1)本件特許発明
本件特許発明は,訂正特許請求の範囲に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
『【請求項1】
ベシル酸アムロジピンと,黄色三二酸化鉄,三二酸化鉄及びカラギーナンの少なくともいずれかとを含有することを特徴とする医薬組成物(ただし,黄色三二酸化鉄,三二酸化鉄及びカラギーナンの少なくともいずれかをコーティング層中に含有するコーティング錠剤,及び,液剤を除く。)。…」(12頁 下から14~7行)
(25C)「<請求人が提出した証拠方法>
甲第1号証:国際公開第03/097045号パンフレット
…
甲第5号証:International Journal of Pharmaceutics,103,p69-76 (1994)
甲第6号証:Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 27,p19-24 (2002)
甲第7号証:特開2003-104888号公報…」(10頁 4行~11頁 7行)
(25D)「(2)-1 理由1について
ア.甲第1号証
甲第1号証の製剤例3には,1ユニットあたり,ディオバン薬物80.00mg,アムロジピン薬物6.94mgを含有する錠剤処方例が記載されている(p17)。
同製剤例で用いられているアムロジピン薬剤は,ノルバスクとの商品名で市販されている薬物である…。そして,ノルバスクがベシル酸アムロジピンを有効成分とする市販薬であることは本件出願優先権主張日前に周知の事実であったといえる…。また,上記製造例3には,同錠剤は,たとえば製剤例1と同様にして製造されることが記載されている。そこで,製剤例1をみると,ディオバンを含有する粒剤から得られた錠剤に,ディオラック組成物でフィルムコーティングした,フィルムコーティング錠剤が記載されている…から,製剤例3に記載された錠剤も同様にディオラック組成物でフィルムコーティングされた錠剤であると認められる。ここでディオラックとは,黄色酸化鉄と赤色酸化鉄を含有する組成物であり…,また,黄色酸化鉄が黄色三二酸化鉄であり,また,赤色酸化鉄が三二酸化鉄であることは本件出願優先権主張日前に周知の事実である…。
イ.対比・判断
(本件特許発明1について)
ア.で指摘した甲第1号証の記載事項から,甲第1号証には,「ベシル酸アムロジピンと,黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄を含有する医薬組成物であって,黄色三二酸化鉄と三二酸化鉄をコーティング層に含有するコーティング錠剤」が記載されているものと認められる。…」(14頁 1~26行)
(25E)「(3)-2 理由2-2~2-9について
ア.甲第5号証
甲第5号証には,次の通りの記載がある(以下,翻訳文で示す。)。
(5A)「…
(5K)「…」(第76頁左欄第14行~右欄第3行)
イ.甲第6号証
甲第6号証には,次の通りの記載がある(以下,翻訳文で示す。)。
(6A)「…
(6F)「…」(第23頁右欄第14~末行)
ウ.甲第7号証
甲第7号証には,次の通りの記載がある。
(7A)「…
(7H)「…」(段落0031)」(15頁 15行~19頁下から4行)
(25F)「カ.対比・判断
(本件特許発明1について)
甲第5号証には,…「ニフェジピンと黄色酸化鉄とを含有する錠剤であって,黄色酸化鉄がニフェジピンとともに錠剤を構成する組成物中に含有されている錠剤。」の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。そして,甲第5号証には,…当該錠剤が,黄色酸化鉄を含有しない組成物から製造された錠剤に比べて,ニフェジピンの光分解を減少させることができたこと…も記載されている。
本件特許発明1と引用発明1とを対比する。
…両者は,「医薬成分と黄色三二酸化鉄とを含有する医薬品組成物。」である点で一致し,以下の点で相違する。
相違点
(i)医薬成分として,本件特許発明1がベシル酸アムロジピンを含有するのに対し,引用発明1がニフェジピンを含有している点。
以下,上記相違点(i)について検討する。
ニフェジピンが光に不安定な薬物であることは本件出願優先権主張日前に周知の事実である…。そして,このような光に対する不安定性は,ニフェジピンのみならず,ニフェジピンと同じく…ジヒドロピリジン類と総称される全ての化合物に共通する性質であることもまた本件出願優先権主張日前に周知の事実である…。
さらに,甲第6号証には,アムロジピンが…ジヒドロピリジン類に属し,光にさらされると酸化されてピリジン類似体を生成することが記載されている…。そして,市販薬であるノルバスクについて,自然光もしくは人工光を曝露した場合のアムロジピン残存量とその酸化類似体生成量とを同時分析した結果が記載されており…ベシル酸アムロジピンの光安定性についてはいまだ改善の余地があるものと把握される。
そうすると,同じく光不安定な物質であるジヒドロピリジン誘導体である…ベシル酸アムロジピンの光に対する不安定性を改善するために,引用発明1において,ニフェジピンにかえてベシル酸アムロジピンを用いてなる本件特許発明1を当業者が想到することに格別の困難性は見いだせない。
また,甲第7号証には,ジヒドロピリジン誘導体が光に対する安定性が低いことが記載されており,それらジヒドロピリジン誘導体として,アムロジピン若しくはその医薬として許容しうる塩が挙げられている…。…市販のベシル酸アムロジピンは,甲第7号証記載のアムロジピン誘導体の医薬として許容しうる塩に該当するものであり,甲第7号証に記載されているに等しいか,示唆されていたものと認められる。
そして,甲第7号証には,三二酸化鉄,黄色三二酸化鉄を単独か,若しくは両者を組み合わせた酸化鉄をフィルムコーティング剤皮に配合してなる製剤が,ジヒドロピリジン誘導体錠剤の光安定性を改善したことが記載されている。さらに,同号証に酸化鉄が酸化チタンに比べて優れた光安定化作用を有することが記載されているように,酸化鉄を用いた場合には,ジヒドロピリジン誘導体に対し,従来知られている酸化チタンをしのぐ光安定剤を提供し得たものであることが理解できるのであって,その光安定化作用はそこに具体的に記載される製剤形態にのみ発揮される作用であると限定的に解釈されるべきものでないことは明らかである。また,甲第5号証には,…酸化鉄を有効成分に配合してそれを錠剤化することで,コーティングという製剤形態に比べて,より少ない工程からなる簡便な方法で製剤化して有効成分を光安定化しうることが示されているところでもある。
そうすると,ニフェジピンと同じく光不安定なジヒドロピリジン誘導体である…ベシル酸アムロジピンに対して,その光に対する不安定性を改善するために,引用発明1において,ニフェジピンにかえてベシル酸アムロジピンを用いてなる本件特許発明1を当業者が想到することに格別の困難性は見いだせない。
そして,上記のごとき光安定化効果については,甲第5号証,並びに,甲第6号証もしくは甲第7号証の記載から予想しうる範囲内のものである。…
以上のとおりであるから,本件特許発明1は,甲第5号証及び甲第6号証,又は甲第5号証及び甲第7号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。」(20頁 17行~24頁 13行)
ハ 甲第26号証:特願2005-129150号特許出願書類(受付日 平成17年4月27日)
甲第26号証には,以下の記載がある。
(26A)「〔実施例1〕
〔0031〕
錠剤処方(mg)
〔0032〕
1.商品名D-マンニトール(協和発酵工業株式会社)
2.商品名コーンスターチ(XX16)W(日本食品化工株式会社)
3.商品名プルーブ(Penwest Pharmaceuticals社(米国))
4.商品名黄色三二酸化鉄(癸巳化成化成株式会社)
5.商品名三二酸化鉄(キシ化成株式会社)
6.商品名精製脱砒酸化チタン(ザクトレーベンケミエ社(ドイツ))
7.商品名3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール(ナカライテスク株式会社)
8.商品名2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(ナカライテスク株式会社)
9.商品名食用黄色5号(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)
10.商品名食用黄色5号アルミニウムレーキ(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)
11.商品名食用赤色5号(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)
12.商品名食用赤色102号(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)
実施例1~3および比較例1~8に関しては表1の処方に従い,処方の12倍量の各成分を乳鉢にてよく混合した後,1錠処方量を??取して油圧式プレス機(理研製)を用いて50kgfの圧力で圧縮し,直径7mmの錠剤を得た。
〔0033〕
試験例
実施例1~3および比較例1~8の製剤について光安定性試験を実施した。蛍光灯4000ルクス×2週間における外観及び酸化体の生成量の結果を表2に示す。なお,酸化体(2-[(2-アミノエトキシ)メチル]-4-(o-クロロフェニル)-6-メチル-3,5-ピリジンジカルボン酸 3-エチルエステル 5-メチルエステル)の定量は液体クロマトグラフ法により分析した。
HPLC分析法
カラム:オクタデシル基結合型シリカゲル(平均粒径5μm,内径4.6×長さ150mm)(ナカライテスク株式会社 商品名COSMOSIL 5C18)
A液:30mmol/Lリン酸塩緩衝液(pH6.0)/メタノール混液(1:1)
B液:メタノール/30mmolリン酸緩衝液(pH6.0)混液(19:1)
B液:80%→0%のグラジェント
検出器:UV
検出波長:237nm
〔0034〕
(酸化体量は,HPLCの面積百分率値に補正係数の2をかけた数値(酸化体のUV吸収強度がアムロジピンの1/2であるため))
〔0035〕
表2より,比較例1の光安定化を全く行っていない製剤は外観変化が大きく,酸化体の生成量も1%を越えていることがわかる。これに対し,比較例2の酸化チタンを含有する製剤では変色も抑制されないばかりでなく,酸化体生成量が却って増加した。被覆層を施すことによる光安定化としては遮光効果の強い酸化チタンを用いたコーティングが行われるのが通常であるが,コーティングに代えて酸化チタンを主薬や賦形剤等と混合して製造した製剤は,アムロジピンに関してはかえって光安定性が悪くなることが見出された。従って,被覆力の強い物質を主薬や賦形剤等と混合するという手法で光安定化できるという一般的な考えはアムロジピンには適用できないことがわかった。
〔0036〕
また,比較例3および4は抗酸化剤であるブチルヒドロキシアニソールおよびジブチルヒドロキシトルエンを添加した製剤であり,比較例6は食用黄色5号アルミニウムレーキを添加した製剤であるが,いずれも酸化体の生成量は抑制できたが外観変化は抑制できなかった。従って抗酸化剤の添加も色素の添加も効果がないことがわかった。
〔0037〕
その他の黄色,赤色系色素である食用黄色5号,食用黄色3号,および食用赤色102号をそれぞれ添加した製剤である比較例5,7,および8では外観変化及び酸化体生成量とも抑制できなかった。従って,色素の添加は一般には光安定化効果がないことがわかった。
〔0038〕
以上の通り,遮光剤,抗酸化剤,色素のいずれも一般には酸化体の生成および/または外観変化を抑制することができないことが見出されたのに対し,実施例1~3の黄色三二酸化鉄または三二酸化鉄を含有する製剤では外観変化,酸化体生成量とも抑制されることがわかった。従って一般的な方法では外観変化および酸化体生成量の両者を抑制できず,アムロジピンと酸化鉄という特定の組み合わせで初めて外観変化および酸化体生成量の抑制が可能となった。」(段落 0031~0038)
ヒ 甲第27号証:特許庁近藤政克審査官作成にかかる平成26年8月27日付け「拒絶理由通知書」
甲第27号証には,以下の記載がある。
(27A)「本願の請求項1-17に係る発明は,…但し書きの規定からみて,マンニトールを含む組成物を除外するものである。
しかし,発明の詳細な説明に,具体的な実施態様として記載されているのは,マンニトールを含む組成物のみであり…。
したがって,請求項1-17に係る発明は,発明の詳細な説明において裏付けられた範囲を超える発明を含むものであるから,発明の詳細な説明に記載された発明を記載したものとはいえない。
また,その裏返しとして,この出願の発明の詳細な説明は,当業者が請求項1-17に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。」(2頁 5~23行)
フ 甲第28号証:添付文書情報(タケプロンOD錠15,30),2002年9月改訂(第3版)
甲第28号証には,以下の記載がある。
(28A)「〔組成・性状〕
…
添加物:ポリソルベート80,アスパルテーム,香料,乳糖水和物,結晶セルロース,炭酸マグネシウム,低置換度ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒプロメロース,タルク,酸化チタン,D ?マンニトール,メタクリル酸コポリマーLD,アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー,ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル,クエン酸トリエチル,マクロゴール6000,モノステアリン酸グリセリン,黄色三二酸化鉄,三二酸化鉄,無水クエン酸,クロスポビドン,ステアリン酸マグネシウム」(1頁 左欄 〔組成・性状〕,黄色ハイライトは請求人によるもの。)
ヘ 甲第29号証:「第15改正 日本薬局方 改正内容に関して『ヒプロメロース』,『メチルセルロース』-試験方法の変更に関して-」(信越化学工業株式会社セルロース部,2006年3月)
甲第29号証には,以下の記載がある。
(29A)「
」(2頁)
ホ 甲第31号証
(31A)「その課題は,酸化鉄とマンニトールを含有する製剤とすることで解決され,その効果は,実施例1~3において,光による変色が効果的に抑制されていることから明らか」(甲31 3頁22乃至24行。なお,証拠からの引用部分の下線は請求人による。以下,同じ。)
(31B)「B.ベシル酸アムロジピンの場合,酸化鉄により分解抑制効果を有すると共に,着色防止効果があり,この着色防止効果は,酸化鉄+マンニトールで特に顕著となる。」(甲31 3頁下から3及び2行)
マ 甲第32号証
(32A)「食用黄色5号」の「性状」が「橙赤色のつぶまたは粉末」であること((甲32 1604頁)、及び、「酸化鉄(III)」の「別名」が「三二酸化鉄」であり、「性状」が「赤褐色粉末(六方晶系)」であること(128頁)
第6 当合議体の判断
当合議体は、本件訂正発明1、3、14、18~28の特許は、無効理由1~5によって無効にすべきものであるとはいえない、と判断する。その理由は、以下のとおりである。
1.無効理由1について
無効理由1は、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されており、本件訂正発明1と甲1発明の相違点が以下の相違点1~4であるといえることを前提とするものである(審判請求書114頁22行~115頁19行)。
甲1発明
1-a:ベシル酸アムロジピンと,
1-c:結晶セルロース,
1-d-1:カルボキシメチルスターチナトリウムを含有する,
1-e:フィルムコート錠(但し,マンニトールを含まない)。
相違点1
本件訂正発明1は、酸化鉄を含有するのに対し、甲1発明は、酸化鉄を含有しない点。
相違点2
本件訂正発明1は、デンプンを含有するのに対し、甲1発明は、デンプンを含有せず、カルボキシメチルスターチナトリウムを含有する点。
相違点3
本件訂正発明1は、デンプンの含有量が30重量%以下であるのに対し、甲1発明は、そのような限定を有していない点。
相違点4
本件訂正発明1は、被覆層を有しない経口固形組成物であるのに対し、甲1発明は、被覆層(フィルムコート部分)を有する点。
まず、甲1に甲1発明が記載されているといえるか検討する。
甲1は、ノルバスク(R)錠(以下、単に「ノルバスク錠」という。)の医薬品インタビューフォームであり、ノルバスク錠2.5mg及びノルバスク錠5mgについて、「色・剤形」が「白色のフィルムコート錠」であること(記載事項(1C))、「有効成分」が「ベシル酸アムロジピン」であり、ノルバスク錠2.5mg、5mgは1錠中にそれぞれベシル酸アムロジピン3.47mg、6.93mg(アムロジピンとして2.5mg、5mg)を含有すること、「添加物」として「結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酸化チタン、タルク、カルナウバロウを含有する」こと(記載事項(1D))が記載されている。
そうすると、甲1には、1錠中のベシル酸アムロジピンの含有量に関し「3.47mg、又は、6.93mg」との限定を有さないフィルムコート錠や、添加物として「無水リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酸化チタン、タルク、カルナウバロウを含有する」との限定を有さないフィルムコート錠は、記載されていないと認められる。
したがって、1錠中のベシル酸アムロジピンの含有量に関する限定を有さず、また、添加物として「無水リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酸化チタン、タルク、カルナウバロウ」の少なくともいずれかあるいは全部を含有しない場合を包含する甲1発明が、甲1に記載されているとはいえない。
請求人の主張する無効理由1は、甲1に甲1発明が記載されているといえることを前提とするものであるところ、上記のとおり当該前提が誤っていると認められるから、本件訂正発明1の特許は、無効理由1によって無効にすべきものであるとはいえないが、仮に、甲1に甲1発明が記載されているとして、相違点1~4に関する請求人の主張についても以下に検討する。
相違点1について
甲1には、ベシル酸アムロジピンが光に不安定な薬物であるとか、ベシル酸アムロジピンの光による変色を防止するためにフィルムコートをしたとか、その他何らかの製剤上の工夫をしたとか、という記載は見いだせない。してみると、甲1に接した当業者が、甲1発明に、光に不安定な薬物に関する甲2に記載の発明を組み合わせる動機を、格別の創意を要することなくもつものとはいえない。また、光による医薬品の変色防止に酸化鉄を用いることが本件特許発明の出願当時の当業者の周知の技術又は技術常識であったといえる根拠は見いだせないし、仮に、そのような周知の技術又は技術常識があったとしても、甲2に記載の発明の場合と同様に、甲1に接した当業者が、甲1発明に、該周知の技術又は技術常識を組み合わせる動機を、格別の創意を要することなくもつものとはいえない。
ただ、請求人は、相違点1について、以下の主張をしている。
1)
甲第2~4号証の各記載を踏まえると、光による医薬品の変色防止に酸化鉄を用いることは、本件特許発明の出願当時の当業者の周知の技術又は技術常識であったといえる。(審判請求書116頁24~26行)
2)
甲第1号証には、固体状態の「ベシル酸アムロジピン」が「室内散光下の保存において…光曝表面は黄色に着色し」たこと(1A及び1B)、分割錠の分割面が光照射により「わずかに淡黄色に着色」したことが記載されている(1E)。これらの甲第1号証の記載を踏まえると、同号証にはアムロジピンの光による変色防止という課題が記載されているものと考えられることから、甲1発明には、甲第2号証記載の光による変色防止に酸化鉄を用いる発明を組み合わせる動機付けが、存在している。(審判請求書117頁26行~118頁3行)
3)
アムロジピンのフィルムコート錠については、極めて過酷な条件とはいえ、錠剤の分割後に錠剤の分割面が光に曝露されることにより、着色するという課題が存在しており(甲1 16頁)、フィルムコートによる被覆をしない製剤を設計する場合には、光による着色防止の課題に必ず遭遇することを当業者が認識することは明らかであり、光に関して何らの課題も存在していなかったとする被請求人の主張は誤りである。また、甲1に記載の錠剤には分割用の割線が付されていることから(甲1 14頁)、使用方法として錠剤の分割が当然に予定されているのであるから、分割面の光に対する不安定性という課題が存在していたことは明らかである。(口頭審理陳述要領書13頁7~14行)
そこでまず、1)の主張について検討するに、甲2は、(2A)及び(2B)の記載からみて、光に不安定な薬物を含有した粉体に着色剤を混合することを特徴とする、薬物の光安定化に関する発明を開示するものであり、着色剤として黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄等が挙げられることが記載されていると認められる。
しかしながら、甲2は、特許公報であるから、甲2が開示する上記発明は、特許を取得しようとする発明すなわちその出願時の最先端技術であると認められる。そして、甲2が開示する上記発明が、本件特許発明の出願時までに当業者の周知の技術又は技術常識になっていたといえる根拠も見いだせない。しかも、甲2において実際に光安定化させた薬物はソファルコンのみであり、光に不安定な薬物全般について同様の光安定化効果がもたらされることまで明らかにされているわけではない。また甲3には、甲3に記載の錠剤の添加剤の一つとして、黄色三二酸化鉄と三二酸化鉄が記載されているが、これらによって甲3に記載の錠剤の光安定性がもたらされた、とは記載されていない。また甲4には、光による医薬品の変色防止に酸化鉄を用いること自体、何ら記載されていない。
そうすると、これら甲第2~4号証によっては、光による医薬品の変色防止に酸化鉄を用いることは本件特許発明の出願当時の当業者の周知の技術又は技術常識であった、とはいえないから、請求人の1)の主張には理由がなく、採用できない。
次に、2)の主張について検討するに、まず請求人は、甲1には、固体状態の「ベシル酸アムロジピン」が「室内散光下の保存において…光曝表面は黄色に着色し」たこと(1A及び1B)、が記載されている点を指摘する。
しかしながら、甲1の(1A)及び(1B)の記載からみて、固体状態のベシル酸アムロジピンは、医薬品の通常の保存条件である室温では、36か月という長期保存後も変化は認められなかった、とされるものである。また、熱、湿度、光といった保存条件による過酷試験においては、いずれもわずかに黄色化した、とされるから、過酷試験においても、他の過酷条件と比較して特に光により着色しやすいことが示されているわけではない。
そうすると、甲1の(1A)及び(1B)の記載によっては、甲1に、アムロジピンの光による変色防止という課題が示されている、とはいえない。
続いて請求人は、甲1には、分割錠の分割面が光照射により「わずかに淡黄色に着色」したこと(1E)、が記載されている点を指摘する。また、この点に関連して、3)の主張において、「また、甲1に記載の錠剤には分割用の割線が付されていることから(甲1 14頁)、使用方法として錠剤の分割が当然に予定されているのであるから、分割面の光に対する不安定性という課題が存在していたことは明らかである。」とも主張する。
しかしながら、甲1の(1E)の記載からみて、変化なしとされた30日という保存期間は、病院での室内散光下の120~300日間に相当する期間であるとされている。また、そうであれば、分割面がわずかに淡黄色に着色とされた60日という保存期間は、病院での室内散光下の240~600日間に相当する期間であると認められる。ここで、分割された錠剤は、通常、近日中に患者が服用することが予定されているものと認められるから、該分割された錠剤を、240~600日間はおろか、120~300日間もの長期間、しかも、室内散光下、すなわち、容器等から出しっ放しの状態で保存しておくとはおよそ考え難い。してみれば、甲1の(1E)からは、甲1に記載の錠剤が、分割面において、実用上、光に対する安定性に問題はなかったとはいい得ても、光により着色しやすいことが示されている、とはいえない。
そうすると、甲1の(1E)の記載によっては、甲1に、アムロジピンの光による変色防止という課題が示されている、とはいえない。
したがって、請求人の2)の主張にも理由がなく、採用できない。
最後に、3)の主張について検討するに、まず請求人は、「アムロジピンのフィルムコート錠については、極めて過酷な条件とはいえ、錠剤の分割後に錠剤の分割面が光に曝露されることにより、着色するという課題が存在しており(甲1 16頁)、フィルムコートによる被覆をしない製剤を設計する場合には、光による着色防止の課題に必ず遭遇することを当業者が認識することは明らかであり、光に関して何らの課題も存在していなかったとする被請求人の主張は誤りである。」と主張する。
しかしながら、請求人のいう甲1の16頁の記載、すなわち、甲1の(1E)の記載によっては、甲1に、アムロジピンの光による変色防止という課題が示されているとはいえないことは、2)の主張について検討する中で既に説示したところであるから、上記請求人の主張は、その前提を欠くものである。また、続く3)の主張については、2)の主張について検討する中で既に説示したとおりである。
そうすると、請求人の3)の主張にも理由がなく、採用できない。
相違点2~4について
甲1は、市販されている医薬品について説明する文書であることから、甲1発明の医薬品は、規制当局の審査を経て、医薬品としていわば完成されたものといえるものである。現に、甲1に、甲1発明の医薬品に配合された結晶セルロースやカルボキシメチルスターチナトリウムに問題があるとか、フィルムコートに問題があるとか、といった記載は見いだせない。そうすると、これらの配合成分や剤型を変更する動機は、甲1に接した当業者においても乏しいものといえ、該動機を、該当業者が格別の創意を要することなくもつものとはいえない。
なお、請求人は、相違点2~4は、当業者の周知技術または技術常識であったことから実質的な相違点ではないと主張するが、相違点2~4とも明らかな相違点であり、かかる請求人の主張は採用できない。
本件訂正発明1が奏する効果について
甲2は、先に説示したように、光に不安定な薬物を含有した粉体に着色剤を混合することを特徴とする、薬物の光安定化に関する発明を開示するものであるところ、甲2の【0016】~【0019】の実施例1~4の記載によれば、該着色剤として食用黄色5号を使用した、ソファルコン含有製剤の実施例1及び2と、該着色剤として三二酸化鉄を使用した、ソファルコン含有製剤の実施例3及び4が記載され、甲2の【表1】によれば、いずれの実施例でも、外観に変化がなかったことが記載されている。また、甲2の【請求項7】によれば、上記着色剤として食用赤色3号も記載されている。してみると、甲2には、上記光安定化において、ソファルコン含有製剤における三二酸化鉄と食用黄色5号の効果が同等であることが記載され、また、食用赤色3号も同等の効果を有することが示唆されているといえる。
一方、本件特許明細書の【表1】及び【表2】によれば、三二酸化鉄を使用したベシル酸アムロジピン含有製剤の実施例3では、外観にほとんど変化なし、とされているのに対し、食用黄色5号を使用した比較例5や食用赤色3号を使用した比較例7では、外観に著しい変化があった、とされている。ここで、これらの実施例や比較例の製剤は、マンニトールを含み、結晶セルロースやカルボキシメチルスターチナトリウムを含まず、代わりにトウモロコシデンプンを含む点で、本件訂正発明1とは異なるが、これらの成分の異同により、ベシル酸アムロジピンの光安定化が影響を受けるとは考え難いから、上記【表1】及び【表2】は、三二酸化鉄を使用した場合の本件訂正発明1の光安定化効果が、三二酸化鉄に代えて食用黄色5号や食用赤色3号を使用した場合の光安定化効果より優れたものであることを示しているといえる。
そうすると、かかる本件訂正発明1の効果は、三二酸化鉄、食用黄色5号及び食用赤色3号のソファルコンに対する光安定化効果が同等であることが記載または示唆された甲2の記載からは、当業者といえども予測し得たものとはいえない。
また、甲1、3及び4にも、かかる本件訂正発明1の効果は記載も示唆もされていないし、該効果が本件特許発明の出願当時の当業者の周知の技術又は技術常識から予測し得たものともいえない。
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明並びに技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
本件訂正発明3、14、18~28について、
本件訂正発明3は、本件訂正発明1を特定するための事項を全て有し、更に限定したものであるところ、上述のとおり、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明並びに技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないものであるから、本件訂正発明3も、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明並びに技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない
本件訂正発明14は、本件訂正発明1の経口固形組成物の調製における、光による変色が抑制された組成物とするための酸化鉄の使用の発明に係るものであるところ、上述のとおり、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明並びに技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないものであるから、本件訂正発明14も、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明並びに技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない
本件訂正発明18~28は、本件訂正発明14を特定するための事項を全て有し、更に限定したものであるところ、上述のとおり、本件訂正発明14は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明並びに技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないものであるから、本件訂正発明18~28も、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明並びに技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない
2.無効理由2について
無効理由2は、甲第15号証には、以下の発明(以下「甲15発明」という。)が記載されており、本件訂正発明1と甲15発明の相違点が以下の相違点7、8であるといえることを前提とするものである(審判請求書121頁20行~122頁20行)。
甲15発明
15-a:塩酸マニジピンと,
15-b:黄色三二酸化鉄,
15-c:結晶セルロース,
15-d-1:トウモロコシデンプンを含有し,
15-d-2:トウモロコシデンプンの含有量が30重量%以下であり
15-e:かつ,被覆層を有しない口腔内崩壊錠であるD-マンニトールを含有する経口固形組成物。
相違点7
本件訂正発明1は、ベシル酸アムロジピンを含有するのに対し、甲第15発明はベシル酸アムロジピンを含有せず、塩酸マニジピンを含有する点。
相違点8
本件訂正発明1は、D-マンニトールを含有しないのに対し,甲第15発明はD-マンニトールを含有する点。
まず、甲15に甲15発明が記載されているといえるか検討する。
記載事項(15A)は、特許公報の主題といえる請求項1の記載事項であるから、甲15は、該請求項1に記載の「a)活性成分,b-1)糖および/または糖アルコールおよびc-1)セルロース類を含有してなる群1とb-2)糖および/または糖アルコールおよびc-2)セルロース類を含有してなる群2とを含有してなり,群1および/または群2にd)溶出補助剤を含有する速崩壊性固形製剤」なる発明に関するものであるといえる。
そして、記載事項(15B)~(15I)は、いずれも上記発明の具体的態様や実施例を示すものといえるから、上記各記載事項に記載された塩酸マニジピン、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、黄色三二酸化鉄のいずれのものも、上記発明、すなわち、上記群1及び群2を含有してなる発明において含まれるものである。
そうすると、甲15の記載事項(15A)~(15I)から認定できる発明は、必ず、上記群1及び群2を含有するものに限られる。
これに対し、請求人のいう甲15発明は、塩酸マニジピン等を含むものではあるものの、上記群1及び群2を含有する点を発明特定事項として有さないものである。
したがって、甲15発明は、甲15に記載された発明であるとはいえない。
請求人の主張する無効理由2は、甲15に甲15発明が記載されているといえることを前提とするものであるところ、上記のとおり当該前提が誤っていると認められるから、本件訂正発明1の特許は、無効理由2によって無効にすべきものであるとはいえないが、仮に、甲15に甲15発明が記載されているとして、相違点7、8に関する請求人の主張についても以下に検討する。
相違点7、8及び本件訂正発明1が奏する効果について
まず相違点7について検討するに、(15D)の記載からみて、甲15には、(15A)に記載の速崩壊性固形製剤の発明の活性成分として、塩酸マニジピンと並んでベシル酸アムロジピンも記載されているから、塩酸マニジピンを活性成分として含む甲15発明において、塩酸マニジピンに代えてベシル酸アムロジピンを採用することに、当業者が格別の創意を要したものとはいえない。
続いて相違点8について検討するに、(15E)の記載からみて、甲15には、(15A)に記載の速崩壊性固形製剤の発明の糖アルコールとして、D-マンニトールと並んでエリスリトール、キシリトールなどが挙げられているから、D-マンニトールを糖アルコールとして含む甲15発明において、D-マンニトールに代えてエリスリトール、キシリトールなどを採用し、D-マンニトールを含有しないものとすることに、当業者が格別の創意を要したものとはいえない。
そこで進んで、本件訂正発明1が奏する効果について検討するに、本件訂正発明1は、その発明特定事項、とりわけ、経口固形組成物にベシル酸アムロジピンと酸化鉄を含有させることにより、被覆層を有さなくても、ベシル酸アムロジピンの光安定化という効果を奏し得たものである。
これに対し、甲15には、ベシル酸アムロジピンはもとより、いかなる活性成分についても、光に対して不安定であるとか、その光安定化を図ることができることについて何ら記載されていない。また、甲15発明には黄色三二酸化鉄が含まれているが、(15F)の記載からみて、該黄色三二酸化鉄は、単に着色剤として含まれているものに過ぎない。既に説示したように、甲15は、上記速崩壊性固形製剤の発明に関するものであり、該発明においては、活性成分の光安定化を図ることも、活性成分の光安定化のために黄色三二酸化鉄を用いることも、全く意図されていないと認められる。
そうすると、かかる甲15に接した当業者が、仮に甲15発明を認識し、さらに上記相違点7、8を改変して本件訂正発明1に到達できたとしても、本件訂正発明1がベシル酸アムロジピンの光安定化という効果を奏し得ることを甲15の記載から予測できたものとはいえない。また、そのような予測ができたといい得るような、本件特許発明の出願当時の当業者の周知の技術又は技術常識も見いだせない。
なお請求人は、本件訂正発明1に対する無効理由2を以下のとおり主張している。(当審注:「○の中に7又は8が記載されて表記されているところを、(7)、(8)と表記している。)
「(5-5)理由2:特許法第29条第2項(特許法第123条第1項第2号)(甲第15号証を主引例とする進歩性欠如)
ア 甲第15号証記載の発明
上記(5-3)ソに記載の甲第15号証の記載(15A)~(15I)を踏まえると,甲第15号証には以下の発明(以下「甲15発明」という。)が記載されている。
「15-a:塩酸マニジピンと,
15-b:黄色三二酸化鉄,
15-c:結晶セルロース,
15-d-1:トウモロコシデンプンを含有し,
15-d-2:トウモロコシデンプンの含有量が30重量%以下であり
15-e:かつ,被覆層を有しない口腔内崩壊錠であるD-マンニトールを含有する経口固形組成物。」
イ 本件特許発明1との対比
以上より,本件特許発明1と甲15発明とは,以下の点で一致し,以下の点で少なくとも文言上は相違する。
(ア)一致点
黄色三二酸化鉄を含有し(構成要件B及びI),結晶セルロースを含有する(構成要件C),トウモロコシデンプンを含有し(構成要件D-1),トウモロコシデンプンの含有量が30重量%以下であり(構成要件D-2),被覆層を有しない経口固形組成物である口腔内崩壊錠である(構成要件E,F及びH)点。
(イ)相違点
(7)本件特許発明1が,ベシル酸アムロジピンを含有する(構成要件A)のに対し,甲第15発明はベシル酸アムロジピンを含有せず,塩酸マニジピンを含有する点(以下「相違点(7)」という。)。
(8)本件特許発明1が,D-マンニトールを含有しない(構成要件E)のに対し,甲第15発明はD-マンニトールを含有する点(以下「相違点(8)」という。)。
(ウ)相違点の検討
a 相違点(7)について
口腔内崩壊錠に含有される活性成分について,ベシル酸アムロジピンを含む他の活性成分に置換することについては,(5-3)ソ,タ,及びチに記載のとおり,甲第15~17号証には,塩酸マニジピンを含有する口腔内崩壊錠の発明の開示において(15A,15B,16A,16B,17A及び17B)活性成分として降圧薬以外の適応症や作用機序の異なるものが列挙されており(15D,16D,17D,及び17E),また,上記(5-3)ツ及びテに記載のとおり,甲第18及び19号証には,ベシル酸アムロジピンを含有する口腔内崩壊錠の組成が開示されている(18A~C,及び19A~E)。
本件特許発明1のベシル酸アムロジピンは,本件特許明細書に「ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬であるアムロジピンは充分かつ恒常的な血管拡張作用と頻脈をきたし難い性質から,降圧療法の中心的な役割を果たしている。」(段落0002)と記載のとおり,ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬である。甲15発明の塩酸マニジピンも同様に降圧薬でありカルシウム拮抗薬であることが知られている(15D)。
上記(5-3)トに記載のとおり,甲第20号証には,カルシウム拮抗薬が臨床的作用に基づき世代分類されており(20B),甲15発明の塩酸マニジピンが第二世代のカルシウム拮抗薬であること(20E),ベシル酸アムロジピンが第三世代のカルシウム拮抗薬であること(20F),第三世代のカルシウム拮抗薬の方が,第二世代に比べて,血中半減期が長く,副作用も少なく,高齢者にも使いやすいこと(20A及び20E~G)が記載されている。これらの記載からすれば,カルシウム拮抗薬について,第三世代のものは,第二世代のものに比べ高い治療効果が期待できるものであると当業者が認識することは明らかである。
甲第20,第23及び第24号証に記載のとおり,アムロジピンを含むジヒドロピリジン系の化合物は光に対する安定性が低いという共通の性質を有していたことから(20B,23A及び24C),アムロジピンについても,光に対する安定性という課題が存在していた。甲15発明は,上記(5-4)イ(ウ)aで述べたように,化合物の光による化学変化を防止するための周知の解決手段である黄色三二酸化鉄の添加を採用した,光に不安定なジヒドロピリジン系の塩酸マニジピンを活性成分として含む口腔内崩壊錠に関するものであり,上記のアムロジピンの有する光に対する不安定性という課題を解決する手段を示すものである。
これらの記載からすれば,カルシウム拮抗薬の口腔内崩壊錠の製造について,より高い治療効果を有することを期待して,その活性成分を第二世代のものに代えて,第三世代のものを用いることは,当然に当業者であれば試みることである。その際に,第三世代のカルシウム拮抗薬であり,ジヒドロピリジン系の化合物であるベシル酸アムロジピンの有する上記の課題について,第二世代のカルシウム拮抗薬であり同じ基本骨格の化合物である塩酸マニジピンに対して用いられた光安定性解決のための手段たる甲15発明の口腔内崩壊錠を試そうとすることに何ら困難性はなく,当業者が当然に行い得ることである。すなわち,甲15発明の口腔内崩壊錠に含有される活性成分を第二世代の塩酸マニジピンから,より高い治療効果の期待できる第三世代のベシル酸アムロジピンに置換することは容易に想到し得ることであって,特許として保護すべき創作があったとはいえない。
上記に加えて,(5-3)イ及びナ~ネに記載のとおり,甲第2号証及び甲第21~24号証の記載を踏まえると,アムロジピンが有する光安定性の課題の解決に対して,同じくジヒドロピリジン系化合物である第一世代のカルシウム拮抗薬であるニフェジピンで用いられた手段(後述する甲第22号証に記載されたニフェジピンの光安定化の方法をいう。)を用いることについても,容易想到であることは明らかである。
具体的には,まず,甲第21号証の記載。(21A~E)を踏まえると,甲第21号証には,「ベシル酸アムロジピンと,黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄を含有する医薬組成物であって,黄色三二酸化鉄と三二酸化鉄をコーティング層に含有するコーティング錠剤」との発明(以下「甲21発明」という。)が記載されているものと認められる。
甲第2号証及び甲第22~24号証には,ニフェジピンが光に不安定な薬物であること(2D及び22A),このような光に対する不安定性は,ニフェジピンのみならず,ニフェジピンと同じくジヒドロピリジン類と総称される全ての化合物に共通する性質であること(23A及び24A~D),アムロジピンがジヒドロピリジン類に属し,光により酸化されること(23A),ベシル酸アムロジピンを有効成分とする市販薬であるノルバスクについて,自然光もしくは人工光を曝露した場合のアムロジピン残存量等を分析した結果が記載され,それによれば,包装材による包装がなされていない場合にアムロジピンが減少していたことが記載されている(23B,23D,及び23E)。これらの記載から,ベシル酸アムロジピンには光安定性に課題があったことが把握される。
また,甲第22号証には,ジヒドロピリジン類に属する化合物であるニフェジピンの光に対する不安定性を,コーティングによる製剤化ではなく,有効成分に黄色酸化鉄を配合して製剤化することにより,光安定化を図る方法が記載されている(22B~I)。
加えて,甲第24号証には,三二酸化鉄,黄色三二酸化鉄を単独か,若しくは両者を組み合わせた酸化鉄をフィルムコーティング剤皮に配合してなる製剤が,ジヒドロピリジン誘導体錠剤の光安定性を改善したことが記載されている(24E~G)。さらに,同号証には酸化鉄が酸化チタンに比べて優れた光安定化作用を有することが記載され(24H及びI),酸化鉄を用いた場合には,ジヒドロピリジン誘導体に対し,従来から知られている酸化チタンよりも高い有効性を有する光安定剤を提供し得たものであることが示されており,その光安定化作用は甲第24号証に具体的に記載されている製剤形態にのみ発揮される作用であると限定的に解釈されるべきものでないことは明らかである。
以上に示した甲第2号証及び甲第21~24号証における各記載を踏まえると,光不安定な物質であるジヒドロピリジン誘導体であるベシル酸アムロジピンの光に対する不安定性という課題を解決するために,甲第24号証により示された酸化チタンよりも高い有効性を有する酸化鉄の光安定化作用を甲21発明のコーティングによる製剤化ではなく,甲第22号証においてニフェジピンに対して用いられた課題解決手段である有効成分に黄色酸化鉄を配合して製剤化することで光安定化を図る方法(22B~I)を,その製剤の有効成分をニフェジピンに替えてベシル酸アムロジピンを用いることを当業者が想到することに格別の困難性は見いだせない。
上記と同様の判断は,既に,無効2010-800164号の無効審判請求事件の平成24年2月22日付け審決(以下,「平成24年2月22日付け審決」という。)においてもなされている(25A~F)。
すなわち,光に対する安定性に問題を有するジヒドロピリジン系の化合物である第一~三世代の一群のカルシウム拮抗薬については,酸化鉄を用いて光安定性を得るという解決手段は周知のものであり,当該課題解決手段について,各世代のジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬を入れ替えて用いることは,当業者にとっては周知又は容易に相当可能なものであることは明らかである。上述の平成24年2月22日付け審決において審理の対象となった特許の出願優先権主張日が平成16年10月6日であったことからすると(25A),遅くとも平成16年10月頃には,ジヒドロピリジン系化合物の光に対する不安定性の課題に対して酸化鉄を用いることが,周知の課題解決手段となっていたことは明らかである。
以上より,相違点(7)は,当業者にとり周知又は容易に想到可能なものである。
b 相違点(8)について
口腔内崩壊錠におけるD-マンニトールの使用に関しては,上記(5-3)ソ,タ,及びチに記載のとおり,甲第15~17号証には,「本発明で用いられる糖アルコールとしては,例えばD-マンニトール,エリスリトール,キシリトール,マルチトール,ソルビトールなどが挙げられ…」(15E,16E及び17F)と記載があり,D-マンニトール以外の糖アルコールが同列に列挙されている。
また,本件特許発明1については,本件特許明細書の実施例の記載中にD-マンニトール不含有の口腔内崩壊錠の組成を一切開示しないで,D-マンニトール不含の請求項が成立していることから,口腔内崩壊錠の組成物としてD-マンニトールとD-マンニトール以外の組成物(主として糖アルコール)が置換可能であることが当業者の技術常識であることを当然の前提として成立しているものと考えられる。
以上の甲第15~17号証の糖アルコールを列挙した記載と上記の本件特許発明1成立の前提とされた当業者の技術常識を踏まえれば,甲第15~17号証にはD-マンニトール不含有,すなわち,D-マンニトール以外の糖アルコールを使用した口腔内崩壊錠の組成が開示されているのと同然であるから,上記相違点(8)は,当業者の周知の技術又は技術常識である。
加えて,上記(5-3)キで示したように,本件特許発明の出願過程における被請求人の主張「…本件出願人の見解を要約すると,本願明細書の段落〔0027〕には,添加剤に関し,『製剤分野において通常使用される無毒性かつ不活性な添加剤を添加することもできる。』と記載し,…不活性なことが明白な『炭酸カルシウム』,『結晶セルロース』を賦形剤として,マンニトールに代えて使用することで,マンニトールの場合と同様に『デンプン』と併用したとしても酸化鉄による所望の効果が奏されるであろうことは,当業者にとって十分に推認可能なことであります。このように,出願当時の技術常識により推認できるにもかかわらず,ありとあらゆる添加剤を用いた実施例が必要であるとすると,出願人に過度な負担を強いることになり,妥当性を欠くものというべきであります。」(7A)との主張を踏まえれば,「マンニトール」自体は不活性成分であり,剤型を構成する成分から除去した場合でも,酸化鉄による所望の効果が奏されることは,当業者にとり技術常識であったことは被請求人も自認の事項であったことは明らかである。
以上より,相違点(8)は,当業者にとり周知の技術又は技術常識であり,実質的な相違点ではない。
c 小括
以上より,相違点(7)は少なくとも当業者にとって容易想到なものであり,相違点(8)は当業者の周知技術または技術常識であったことから,実質的な相違点ではない。
よって,本件特許発明1は甲第15号証に記載された発明及び本件特許の出願日当時における技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。」(審判請求書121頁16行~127頁9行)
しかしながら、上記「(ウ)相違点の検討」の欄の主張は、本件特許発明1を見た上でのいわゆる後知恵によるものを含むものであり、採用できない。
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲15に記載された発明及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
本件訂正発明3、14、18~28について、
本件訂正発明3は、本件訂正発明1を特定するための事項を全て有し、更に限定したものであるところ、上述のとおり、本件訂正発明1は、甲第15号証に記載された発明及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないものであるから、本件訂正発明3も、甲第15号証に記載された発明及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
本件訂正発明14は、本件訂正発明1の経口固形組成物の調製における、光による変色が抑制された組成物とするための酸化鉄の使用の発明に係るものであるところ、上述のとおり、本件訂正発明1は、甲第15号証に記載された発明及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないものであるから、本件訂正発明14も、甲第15号証に記載された発明及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
本件訂正発明18~28は、本件訂正発明14を特定するための事項を全て有し、更に限定したものであるところ、上述のとおり、本件訂正発明14は、甲第15号証に記載された発明及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないものであるから、本件訂正発明18~28も、甲第15号証に記載された発明及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3.無効理由3について
請求人が主張する無効理由3は以下のとおりである。
「理由3:特許法第44条第1項1号及び第29条第1項,2項(特許法第123条第1項第2号)(分割要件違反)
本件特許発明が解決しようとする課題は,アムロジピンまたはその薬学上許容される塩の光による変色及び分解を簡便に防止し,光安定化した経口固形組成物を提供することであり(本件特許明細書 段落0007),本願の請求項1,3,14乃至16に係る発明は,但し書きの規定からみて,マンニトールを含む組成物を除外するものである。
しかし,本件当初明細書(甲第26号証の発明の詳細な説明に,具体的な実施態様として記載されているのは,マンニトールを含む組成物のみであり(甲第26号証 段落0031乃至0038,特に,段落0032の表1を参照(26A)),組成物から,マンニトールを除外した場合についての実施態様の記載は認められない。
また,本件当初明細書の発明の詳細な説明には,組成物の成分からマンニトールを除外した場合に,いかなる効果を奏するかに関する記載は一切ないことから,そもそも本件原出願に係る発明には,当該発明を構成する組成物の成分からマンニトールを除去するという技術思想自体が含まれていなかったことは明らかである。したがって,本件原出願に基づき分割された本件特許発明は,本件当初明細書に含まれるものではなく,新規事項に該当するため,分割要件違反の発明となり,出願日が原出願日に遡及しないため,結果として,本件原出願との関係において新規性又は進歩性を充足しない発明である。」(審判請求書128頁18行~129頁11行)
そこで検討するに、甲26は、特願2005-129150号の願書に最初に添付した特許請求の範囲及び明細書を含むものであるところ、該特願2005-129150号は、「第1 手続の経緯」で説示したように、本件特許に係る出願の、最先の、もとの特許出願である。してみると、甲26は、本件特許に係る出願の、最先の、もとの特許出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲及び明細書を含むものである。
そして、甲26には、以下の記載がある。
「本発明における口腔内崩壊型製剤においては、服用性の観点から賦形剤として水溶性賦形剤の添加が好ましい。水溶性賦形剤としては、服用の際良好な甘味を有する水溶性糖アルコール、糖類、甘味を有するアミノ酸類及びこれらの混合物が挙げられ、・・・特に好ましくは水溶性糖アルコールが挙げられる。
・・・水溶性糖アルコールの例としてはソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元澱粉糖化物、キシリトール、還元パラチノース、エリスリトールなどが挙げられ、これらはその2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。」(【0021】~【0022】)
この記載によれば、甲26には、マンニトールは、添加が好ましいとされる賦形剤の一つとして記載されているものといえるから、マンニトールを含まない場合の口腔内崩壊型製剤も、甲26の記載内容から除外されているわけではなく、好ましいものとして挙げられてはいないものの、甲26の記載内容に包含されているものといえる。
そうすると、本件訂正発明は、請求人のいう分割要件違反の発明ではなく、出願日が原出願日に遡及しないものでもなく、分割要件違反を根拠とする新規性又は進歩性を充足しないという無効理由は見いだせない。
4.無効理由4について
請求人が主張する無効理由4は以下のとおりである。
「理由4:特許法第36条第6項第1号(特許法第123条第1項第4号)(記載要件違反)
本件特許発明が解決しようとする課題は,アムロジピンまたはその薬学上許容される塩の光による変色及び分解を簡便に防止し,光安定化した経口固形組成物を提供することであり(本件特許明細書 段落0007),本願の請求項1,3,14乃至16に係る発明は,「賦形剤」を「炭酸カルシウム及び結晶セルロースからなる群より選ばれる少なくとも一つの」ものに特定し,かつ,但し書きの規定からみて,マンニトールを含む組成物を除外するものである。
しかし,発明の詳細な説明に,具体的な実施態様として記載されているのは,マンニトールを含む組成物のみであり(本件特許明細書 段落0032乃至0039,特に,段落0033の表1を参照),このマンニトールを含む組成物は,明らかに本願の請求項の但し書きの規定によって除外されている組成物である。
したがって,請求項1,3,14乃至16に係る発明は,発明の詳細な説明において裏付けられた範囲を超える発明を含むものであるから,発明の詳細な説明に記載された発明を記載したものとはいえない。」(審判請求書129頁12~26行)
そこで検討するに、本件特許明細書には、以下の記載がある。
1)「ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬であるアムロジピンは充分かつ恒常的な血管拡張作用と頻脈をきたし難い性質から、降圧療法の中心的な役割を果たしている。しかし、アムロジピンはジヒドロピリジン系化合物の中では光分解を受けにくい化合物ではあるが、曝光量が多い場合には分解を受け、活性物質としての効力が低下することがある。アムロジピン含有経口固形組成物には光に対する安定性を確保するための技術が必要であった。
・・・
一方、特許文献3にはジヒドロピリジン誘導体の錠剤に酸化鉄を配合したフィルムをコーティングしてなる光に対して安定化された錠剤が開示されている。しかしながら、この技術ではコーティングを実施することで工程が増え、これに要する時間及び労力は多大となり、コストが高くなる。また、分割を必要とする錠剤ではコーティングによって割線が埋まるなどのトラブルが発生しやすく、分割後には分割面が剥き出しになる為光安定化効果は期待出来ない。」(【0002】~【0003】)
2)「本発明者らは鋭意検討を行った結果、アムロジピンまたはその薬学上許容される塩に酸化鉄を配合することで、光安定化のために被覆層を必要とすることなく非常に簡便に光安定化されたアムロジピン含有経口固形組成物が得られることを見出した。」(【0012】)
3)「本発明における口腔内崩壊型製剤においては、服用性の観点から賦形剤として水溶性賦形剤の添加が好ましい。水溶性賦形剤としては、服用の際良好な甘味を有する水溶性糖アルコール、糖類、甘味を有するアミノ酸類及びこれらの混合物が挙げられ、・・・特に好ましくは水溶性糖アルコールが挙げられる。
・・・水溶性糖アルコールの例としてはソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元澱粉糖化物、キシリトール、還元パラチノース、エリスリトールなどが挙げられ、これらはその2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。」(【0022】~【0023】)
4)「錠剤処方(mg)
【表1】
」(【0032】~【0033】)
5)「【表2】
」(【0035】)
1)、2)の記載によれば、本件特許明細書には、アムロジピンは光分解を受けることがあるところ、従来技術として、酸化鉄を配合したフィルムをコーティングしてなる光に対して安定化された錠剤をもたらす技術があること、及び、アムロジピンに酸化鉄を配合することで、光安定化のために被覆層を必要とすることなく光安定化されたアムロジピン含有経口固形組成物が得られることを見出したことが記載されている。そして、3)の記載によれば、本件特許明細書には、マンニトールは、添加が好ましいとされる賦形剤の一つであることが記載され、4)、5)の記載によれば、本件特許明細書には、そのマンニトールも含む実施例1~3の錠剤が一定の光照射の後、外観に変化なし、または、ほとんど変化なし、とされたことが記載されている。
そうすると、これら本件特許明細書の記載に接した当業者ならば、マンニトールは添加が好ましいとされる賦形剤の一つに過ぎず、その有無にかかわらず、アムロジピンに酸化鉄を配合することで、光安定化のために被覆層を必要とすることなく光安定化されたアムロジピン含有経口固形組成物が得られることを認識することができるといえる。
したがって、本件特許に係る出願の特許請求の範囲には、請求人のいう記載上の不備はなく、該不備に基づく無効理由は見いだせない。
5.無効理由5について
請求人が主張する無効理由5は以下のとおりである。
「理由5:特許法第39条第2項(特許法第123条第1項第2号)(先願要件違反)
本件特許発明は,上記(5-6)及び(5-7)のように特許法第36条第6項第1号,第44条第1項第1号等に違反するものと考えられるが,仮に当該主張がみとめられない場合であっても,以下のような本件特許発明の出願経過における出願人の主張内容を前提とすると,本件特許発明は,本件原出願の発明と同一のものであり,先願要件を充足しないものとなる。
具体的には,上記(5-3)ナに記載のとおり,本件特許発明の出願経過における平成28年8月27日付け拒絶理由通知書において,近藤政克審査官より,「本願の請求項1-17に係る発明は,…但し書きの規定からみて,マンニトールを含む組成物を除外するものである。しかし,発明の詳細な説明に,具体的な実施態様として記載されているのは,マンニトールを含む組成物のみであり…。」として,本件明細書には「マンニトール」を含まない組成物は記載されていないことから,実施可能要件違反,又はサポート要件違反の拒絶理由が通知されたところ(甲第27号証 (27A)),本件特許発明の出願人は,平成26年10月27日付けで特許請求の範囲を補正すると共に提出した意見書において,「本発明で奏される所望の効果は,酸化鉄により解決するものでありますが,一方,本願明細書の実施例で用いられたマンニトールやデンプンは酸化鉄の作用を阻害しない添加剤の一つとして使用されています。このことは,本願明細書の段落〔0027〕に,『製剤分野において通常使用される無毒性かつ不活性な添加剤を添加することもできる。』との記載からも窺えます。…(中略)…本発明に用いる『炭酸カルシウム』,『結晶セルロース』,『デンプン』は,製剤素材としては,一般にアミノ化合物および酸化鉄には反応しない不活性な成分として知られており,酸化鉄に対して何らかの作用があるとの特段の報告はないと理解しております。…(中略)…当業者であれば,本発明の実施例において,マンニトールに代えて,本願の段落〔0027〕で添加できると記載した,同様に不活性な『炭酸カルシウム』,『結晶セルロース』を既に実施例で配合され,不活性であることが明白な『デンプン』と共に使用しても,これらが酸化鉄に対して作用を阻害するとは到底想定できませんので,同様に所望の効果が奏されるであろうことは,十分に推認することができます。」(甲第7号証(7A))との主張がされ,当該拒絶理由は解消されている。
本件特許出願人によるかかる主張を前提とすると,本件特許発明における「マンニトール」は「デンプン」,「炭酸カルシウム」,「結晶セルロース」等と同様に不活性な添加剤の1つであるとされる。他方,本件特許発明は,本件原出願の発明における「マンニトール」を「結晶セルロース」等に代え,所定量の「デンプン」を含むことを必須とするものであるが,前記の本件特許出願人の主張を踏まえると,本件特許発明と本件原出願の発明の間での構成の相違である「マンニトール」を「結晶セルロース」等及び所定量の「デンプン」に置換することは,不活性な添加剤を単に置換するものであり,いわば単なる周知慣用技術の転換に過ぎず,本件特許出願人が自認するように,両発明の効果は同一であり,新たな効果を奏するものではないことから,両発明は同一のものである。したがって,本件特許発明は,本件原出願の発明との関係では,先願要件を充足しない。」(審判請求書129頁27行~131頁10行)
そこで検討するに、本件特許に係る出願の、もとの特許出願は、「第1 手続の経緯」にて説示したとおり、3つあるところ、請求人は、上記「本件特許発明は,本件原出願の発明における「マンニトール」を「結晶セルロース」等に代え,所定量の「デンプン」を含むことを必須とするものであるが,」なる主張からみて、もっぱら、マンニトールを含む、もとの出願の発明を問題にしているから、かかる発明である、特願2005-129150号に係る発明及び特願2008-260095号に係る発明と、本件訂正発明の異同を検討する。
まず、特願2005-129150号の請求項1に係る発明及び特願2008-260095号の請求項1に係る発明は、各々、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
(a)ベシル酸アムロジピン、 (b)酸化鉄、及び(c)マンニトールを含有し、かつ被覆層を有しない経口固形組成物(但し、ベシル酸アムロジピン1質量部に対して酸化鉄を0.05~8質量部含有する医薬組成物を除く)。」
「【請求項1】
(a) ベシル酸アムロジピン、(b) 酸化鉄、及び(c) マンニトールを含有し、かつ被覆層を有しない経口固形組成物であって、
(1) ベシル酸アムロジピン1質量部に対する酸化鉄の含有量が0.05~8質量部ではない経口固形組成物を含まず、
(2) マンニトールの経口固形組成物中含量が70~90重量%である、
ことを特徴とする、経口固形組成物。」
そうすると、これらいずれの発明も、マンニトールを含有するものである。また、上記両出願の請求項1以外の請求項に係る発明も、同様にマンニトールを含有するものである。これに対し、本件訂正発明は、マンニトールを含まない、とされるものである。してみれば、上記両出願に係る発明と本件訂正発明を同一の発明であると認めることはできない。請求人の主張は独自の見解に基づくものであって採用できない。
なお、もとの特許出願の残りの一つである特願2011-283072号に係る発明は、いずれも、その請求項1に記載の「ソルビトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、及びリン酸水素カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの賦形剤を含有」するものであるから、これらの賦形剤を含有する旨の発明特定事項を有さない本件訂正発明と同一の発明であると認めることはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正を認める。また、本件訂正発明1、3、14、18~28に係る特許は、無効理由1~5によって無効にすべきものであるとはいえない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-800114