特許異議申立
2016-700837
産業用安全帽
- 審判番号
- 2016-700837
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-094819
- 登録番号
- 特許第5878202号(P5878202)
- 請求日
- 2016年09月08日
- 審決日
- 2017年05月22日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社谷沢製作所
- 【権利者代理人】特許業務法人創成国際特許事務所
- 【異議申立人】弁護士法人 クレオ国際法律特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 克彦
- 審判官 渡邊 豊英
- 審判官 井上 茂夫
- 分類
- P1651.121-YAA(A42B) / P1651.536-YAA(A42B) / P1651.537-YAA(A42B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5878202号発明「産業用安全帽」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5878202号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び明細書のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
特許第5878202号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第5878202号の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成26年5月1日に特許出願され、平成28年2月5日にその特許権の設定登録がされた。
その後、請求項1~7に係る特許について、特許異議申立人 弁護士法人クレオ国際法律特許事務所(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成28年11月30日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年1月31日(特許庁受付)に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)があり、平成29年2月7日付けで申立人に対し訂正請求があった旨の通知がなされ、その指定期間内である平成29年3月13日(特許庁受付)に申立人から意見書が提出された。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
ア.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「該衝撃吸収部がない前記脚部連結部が該帽体と接触することなく前記空隙が形成されている」とあるのを、
「該衝撃吸収部及び衝撃吸収能力を付与する他の衝撃吸収部がない前記脚部連結部が該帽体と接触することなく前記空隙が形成されている」に訂正する。
イ.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に、
「請求項1又は2記載の産業用安全帽において」とあるのを、
「請求項1記載の産業用安全帽において」に訂正する。
ウ.訂正事項3
明細書の段落【0012】に、
「該衝撃吸収部がない前記脚部連結部が該帽体と接触することなく前記空隙が形成されている」とあるのを、
「該衝撃吸収部及び衝撃吸収能力を付与する他の衝撃吸収部がない前記脚部連結部が該帽体と接触することなく前記空隙が形成されている」に訂正する。
(2)一群の請求項、訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.訂正前の請求項1及びそれぞれが請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~7は一群の請求項であり、訂正事項1~3による訂正は当該一群の請求項1~7に対し請求されたものである。
イ.訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「脚部連結部」について、本件特許明細書の段落【0013】の「本発明の産業用安全帽が備えるハンモックによれば、前記懸架部を設け、該懸架部に前記衝撃吸収部を設けることにより、前記懸架部が跨いでいる脚部間の間隔部分であっても前記衝撃吸収部を配置することができる。これにより、衝撃吸収能力を付与する必要がある位置に確実に前記衝撃吸収部を配置することができるので、帽体の内面の殆どを覆うような衝撃吸収ライナが不要となる」との記載、段落【0025】の「本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、産業用安全帽1は、硬質の帽体2(図中仮想線示)と、帽体2の内部に設けられて人頭に接する着装体3とによって構成される。着装体3は、ハンモック4、ヘッドバンド5、及び図示省略した環ひも類(顎紐等)により構成されている。」との記載、及び、【図1】から看取される「脚部連結部8と帽体2との間には、何らの部材等も記載されていないこと」に基づいて、「脚部連結部」が、「衝撃吸収部がない」ことに加えて「衝撃吸収能力を付与する他の衝撃吸収部がない」ことを特定するものである。
ゆえに、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ.訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用するものであったところ、請求項1のみを引用するものとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ.訂正事項3について
訂正事項3は、上記訂正事項1による訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正を認める。
3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1~7」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
硬質の帽体と、該帽体の内側に設けられて人頭に接するハンモック及びヘッドバンドからなる装着体とを備える産業用安全帽において、
前記ハンモックは、前記帽体の内面に対して所定の空隙を存して頭頂部に形成された脚部連結部から放射状に延びて下端部が帽体に着脱自在に連結される複数本の脚部を備え、該脚部の内側下部には、人頭外周に装着する環状の前記ヘッドバンドが配置され、
前記脚部に、前記ヘッドバンドよりも頭頂側に位置して、少なくとも2つの脚部間に形成される間隔部分を跨ぐ懸架部を設け、
該懸架部に衝撃吸収部を設けることにより、該衝撃吸収部を前記ハンモックに部分的に形成し、該衝撃吸収部と前記帽体が接触して該帽体の外部からの衝撃を吸収すると共に、該衝撃吸収部及び衝撃吸収能力を付与する他の衝撃吸収部がない前記脚部連結部が該帽体と接触することなく前記空隙が形成されていることを特徴とする産業用安全帽。
【請求項2】
請求項1記載の産業用安全帽において、
前記懸架部は、前記脚部に着脱自在に連結されていることを特徴とする産業用安全帽。
【請求項3】
請求項1記載の産業用安全帽において、
前記懸架部は、互いに隣り合う2つの前記脚部間の間隔部分に沿って延びる延出部を備え、前記衝撃吸収部は、前記延出部に設けられていることを特徴とする産業用安全帽。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項記載の産業用安全帽において、
前記懸架部に、前記ヘッドバンドを着脱自在に連結するヘッドバンド連結部を設けたことを特徴とする産業用安全帽。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項記載の産業用安全帽において、
前記衝撃吸収部は、軸線方向に付与される衝撃力に対して所定の衝撃吸収能力を有する筒状構造部を備え、該筒状構造部の軸線を前記帽体の内面に向けた姿勢で設けられることを特徴とする産業用安全帽。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項記載の産業用安全帽において、
前記脚部は、前記帽体の内面に向かって突出する突起を備え、
該突起は、前記脚部と前記帽体の内面との間の空隙に対応する突出量を有することを特徴とする産業用安全帽。
【請求項7】
請求項6記載の産業用安全帽において、
前記突起は、筒状に形成されていて前記帽体の外部からの衝撃を吸収する能力を有することを特徴とする産業用安全帽。
(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1~7に係る特許に対して、通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
《理由1》本件特許の請求項1~7に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
《刊行物》
1.欧州特許出願公開第0423379号明細書
2.JIS T8131 2000 産業用安全帽、財団法人 日本規格協会、平成12年6月5日(第2刷発行)
3.国際公開第2012/059081号
4.安衛法便覧 平成27年度版(II)、労働調査会、平成27年9月30日(初版発行)
刊行物1~4は、特許異議申立の甲第1号証~甲第4号証であり、刊行物1に記載された発明を刊行物1発明といい、刊行物1~4に記載された事項を各々刊行物1記載事項~刊行物4記載事項という。
1.請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明は、甲第5号証に示される実証実験結果を踏まえると、刊行物1発明、刊行物2記載事項、刊行物4記載事項及び周知技術に基づき、当業者が容易に発明し得たものといえるから、その特許を取り消すべきである。
2.請求項2~5に係る発明について
請求項2~5に係る発明は、甲第5号証に示される実証実験結果を踏まえると、刊行物1発明、刊行物2記載事項、刊行物3記載事項、刊行物4記載事項及び周知技術に基づき、当業者が容易に発明し得たものといえるから、その特許を取り消すべきである。
3.請求項6、7に係る発明について
請求項6、7に係る発明は、甲第5号証及び甲第6号証に示される実証実験結果を踏まえると、刊行物1発明、刊行物2記載事項、刊行物3記載事項、刊行物4記載事項及び周知技術に基づき、当業者が容易に発明し得たものといえるから、その特許を取り消すべきである。
《理由2》本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
1.請求項1に係る発明は、脚部が2本しかない場合であっても、解決すべき課題を解決し得ることの裏付けがなく、また、出願時の技術常識からも、当該課題を解決し得ることが推認可能であるとはいえず、前記課題を解決し得ない発明を含み得るものであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
また、請求項1に係る発明を直接または間接的に引用する請求項2~7に係る発明についても同様である。
2.請求項3に係る発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明及び図面には、脚部7と着脱自在に構成される懸架部として、第1懸架部10のみが記載され、第2懸架部14が延出部を有する旨が記載されていることを踏まえると、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
また、請求項3に係る発明を直接または間接的に引用する請求項4~7に係る発明についても同様である。
(3)判断
以下に述べるとおり、上記理由1及び2はいずれも解消された。
ア.理由1について
(ア)刊行物1発明
刊行物1の第1欄第1~9行、第2欄30~46行、第3欄5~14行、35~55行、第4欄5~20行、40~45行、請求項1、Fig.1及びFig.2の記載を踏まえると、刊行物1には、以下の刊行物1発明が記載されている。
《刊行物1発明》
帽体(Helmkalotte 1)と、該帽体の内側に設けられて人頭に接するバスケット(Tragkorb 2)及び環状支持バンド(Tragband 3)からなる装着体とを備える軍用保護ヘルメット(militarische Schutzhelm 3 (《合議体注》 ウムラウト記号は省略して表記。以下同様。)において、
前記バスケットは、前記帽体の内面に対して所定の空隙を存して頭頂部に形成された装着リング(Befestigungsring 5)から放射状に延びて下端部が帽体に着脱自在に連結される複数本のバンド(Bander 4)を備え、
該バンドの下部には、人頭外周に装着する環状の前記環状支持バンドが配置され、
前記バンドに、前記環状支持バンドよりも頭頂側に位置して、少なくとも2つのバンド間に形成される間隔部分を跨ぐ接続バンド(Verbindungsband 5’)を設け、
該接続バンドに突起(Noppen 12)を設けることにより、該突起を前記ハンモックに部分的に形成し、該突起と前記帽体が接触して該帽体の外部からの衝撃を吸収する軍用保護ヘルメット。
(イ)対比、判断
本件発明1と、刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明の「帽体(Helmkalotte 1)」、「バスケット(Tragkorb 2)」、「環状支持バンド(Tragband 3)」、「軍用保護ヘルメット(militarische Schutzhelm 3)」、「装着リング(Befestigungsring 5)」、「バンド(Bander 4)」、「接続バンド(Verbindungsband 5’)」、「突起(Noppen 12)」は、本件発明1の「帽体」、「ハンモック」、「ヘッドバンド」、「産業用安全帽」、「脚部連結部」、「脚部」、「懸架部」、「衝撃吸収部」に相当する。
そして、本件発明1と刊行物1発明とは、少なくとも、以下の点で相違する。
《相違点》
本件発明1では「該衝撃吸収部及び衝撃吸収能力を付与する他の衝撃吸収部がない前記脚部連結部が該帽体と接触することなく前記空隙が形成されている」に対して、刊行物1発明ではそのような構造にはなっていない点。
上記相違点について検討する。
刊行物2には、内側垂直すきまが25mm未満であってはならないこと、すなわち、ハンモックの頭頂部壁面と帽体の内壁面との間に、少なくとも25mmのすきまを設けることが記載されている。
しかしながら、刊行物2の6.4b)2)には、「ハンモック及び頭頂部の防護パッドがある場合はハンモック及び防護パッドを取り除いた高さ(寸法B)」(下線は、合議体にて付与。)との記載があることからも明らかなように、刊行物2には、ハンモックの頭頂部に突起及び衝撃吸収能力を付与する他の衝撃吸収部材を設けないようにすることは記載されていないし、示唆もない。
また、刊行物3、4にも、ハンモックの頭頂部に突起及び衝撃吸収能力を付与する他の衝撃吸収部材を設けないようにすることは記載されていない。 そして、このことが周知技術であったことを示す他の証拠もない。
ゆえに、甲1発明において、「装着リング(Befestigungsring 5)」に「突起(Noppen 12)」を設けないようにして、「装着リング(Befestigungsring 5)」が「帽体(Helmkalotte 1)」と接触することなく空隙が形成されるようにすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件発明1は、甲第5号証に示される実証実験結果を踏まえたとしても、刊行物1発明、刊行物2記載事項~刊行物4記載事項及び周知技術に基づき、当業者が容易に発明し得たものではない。
そして、本件発明2~7は、本件発明1をさらに限定したものであるから、本件発明1と同様の理由により、刊行物1発明、刊行物2記載事項~刊行物4記載事項及び周知技術に基づき当業者が容易に発明し得たものではない。
イ.理由2について
(ア)本件発明1は、「高い通気性や放熱性を得ながら、十分な衝撃吸収能力を所望の位置に付与することができるハンモックを備える産業用安全帽を提供すること」を解決すべき課題とするものであり(本件特許明細書の段落【0011】を参照。)、「前記脚部に、前記ヘッドバンドよりも頭頂側に位置して、少なくとも2つの脚部間に形成される間隔部分を跨ぐ懸架部を設け」ること、及び、「該懸架部に衝撃吸収部を設けることにより、該衝撃吸収部を前記ハンモックに部分的に形成し、該衝撃吸収部と前記帽体が接触して該帽体の外部からの衝撃を吸収する」ことを発明特定事項とするものである。
そして、上記課題の解決と発明特定事項の関係について、本件特許明細書の段落【0013】には、「該懸架部に前記衝撃吸収部を設けることにより、前記懸架部が跨いでいる脚部間の間隔部分であっても前記衝撃吸収部を配置することができる。これにより、衝撃吸収能力を付与する必要がある位置に確実に前記衝撃吸収部を配置することができるので、帽体の内面の殆どを覆うような衝撃吸収ライナが不要となる。従って、高い通気性や放熱性を得ながら、産業用安全帽として十分な衝撃吸収能力を所望の位置に付与することができる。」と記載されている。
すなわち、本件発明1は、「懸架部に衝撃吸収部を設ける」ことにより、「衝撃吸収部」を「ハンモックに部分的に形成」し、「衝撃吸収能力を付与する必要がある位置に確実に前記衝撃吸収部を配置することができ」、「帽体の内面の殆どを覆うような衝撃吸収ライナが不要」となり、「高い通気性や放熱性を得ながら、産業用安全帽として十分な衝撃吸収能力を所望の位置に付与することができる」というものである。
そして、上記「懸架部」は、2つの「脚部」があれば、それら2つの「脚部間に形成される間隔部分を跨ぐ」ように渡すことで、設けることが可能であることが明らかである。
したがって、本件発明1は、前記課題を解決し得ない発明を含み得るものではない。
また、本件発明1を直接または間接的に引用する本件発明2~7についても同様である。
(イ)本件発明3は、本件訂正により、「前記懸架部は、前記脚部に着脱自在に連結されていること」を発明特定事項としないものとなったから、本件発明3は、本件特許明細書の発明の詳細な説明及び図面に、脚部7と着脱自在に構成される懸架部として、第1懸架部10のみが記載され、第2懸架部14が延出部を有する旨が記載されていることとも整合するものとなった。
したがって、本件発明3は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明である。
また、本件発明3を直接または間接的に引用する本件発明4~7についても同様である。
(4)申立人の主張について
申立人は、意見書の3頁5~15行で、産業用安全帽に係る技術分野では、製造時の手間や費用を削減させることは、従来周知の技術課題であり、製品にとって必要不可欠と認められる要素のみを選択することで、上記課題を解決しようとすることは当然に試みることであるから、甲1発明において、刊行物2記載事項に基づき、少なくともわが国における各種試験で求められる基準を通過するために必要な衝撃吸収部のみを選択して残すようにすることは、容易に想到し得ることにすぎない旨の意見を述べている。
しかしながら、刊行物2記載事項は、上記(3)のア.(イ)で述べたとおりであるから、必要な衝撃吸収部のみを選択して残すように試みるとしても、刊行物2記載事項に基づき、ハンモックの頭頂部に突起及び衝撃吸収能力を付与する他の衝撃吸収部材を設けないようにすることは、容易に想到し得たとはいえない。
申立人は、意見書の4頁9行~16行で、参考資料1には、衝撃吸収ライナー(衝撃吸収部及び衝撃吸収能力を付与する他の衝撃吸収部に相当)がないハンモックの頭頂部付近(脚部連結部に相当)が帽体と接触することなく空隙が形成された構成が開示され、かかる空隙を形成することによりハンモックが延びて衝撃を吸収する旨も明示されているから、本件発明1の作用効果は格別なものではない旨の意見も述べている。
しかしながら、参考資料1の第4頁の四角囲み部分には、帽体とハンモックとの間に十分な隙間が設けられている旨が記載され、衝撃吸収ライナーとハンモックの頭頂部付近との間に隙間がある様子が図示されているものの、ハンモックの頭頂部付近には、前記隙間を介して衝撃吸収ライナーが図示されているから、参考資料1には、衝撃吸収ライナーがないハンモックの頭頂部付近が帽体と接触することなく空隙が形成されることは開示されているとはいえない。
また、参考資料1の第32頁には、種々のハンモック(内装)が図示されているが、これらのハンモックを用いた際に、頭頂部付近に、突起等の衝撃吸収部を設けない旨は記載ないし図示されていないし、ハンモックの脚部に、ヘッドバンドよりも頭頂側に位置して、少なくとも2つの脚部間に形成される間隔部分を跨ぐ懸架部を設け、該懸架部に衝撃吸収部を設ける旨も記載ないし図示されていない。
したがって、「該衝撃吸収部及び衝撃吸収能力を付与する他の衝撃吸収部がない前記脚部連結部が該帽体と接触することなく前記空隙が形成されている」こと、「前記脚部に、前記ヘッドバンドよりも頭頂側に位置して、少なくとも2つの脚部間に形成される間隔部分を跨ぐ懸架部を設け」ること、及び、「該懸架部に衝撃吸収部を設ける」ことを発明特定事項とする本件発明1の作用効果は、参考資料1が上記発明特定事項を開示していない以上、同資料に基づき格別なものではないということはできない。
さらに、参考資料2~4にも、上記発明特定事項は、記載も示唆もされていない。
したがって、上記意見は、いずれも失当である。
(5)むすび
以上のとおりであるから、取消理由によっては、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-700837