意匠補正却下不服審判
2016-500006
ボート
- 審判番号
- 2016-500006
- 法域
- 意匠
- 審判種別
- 補正却下不服審判(補正却下不服の審決)
- 出願番号
- 意願2015-020148外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年12月28日
- 審決日
- 2017年05月09日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- D17 .1 -Z (G3-2)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 意匠法17条の2第1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 意匠法第3条第1項、意匠法第17条の2第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
意願2015- 20148「ボート」において,平成28年 6月30日付けでした手続補正に対してされた補正却下決定不服審判事件について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
【理 由】
第1 本願の手続の経緯
1.出願当初の願書及び願書添付図面
本願は,2015年3月10日の域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成27年(2015年)9月10日の意匠登録出願であり,願書の【意匠に係る物品】欄に「ボート」と記載され,【意匠に係る物品の説明】欄に,「本物品は,空気孔部を船底に配置したボートである。本物品の空気孔部は,船底から水中に空気を送り出すためのものである。」と記載され,【意匠の説明】欄に,「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。実線で表した部分(意匠登録を受けようとする部分)は,空気孔部である。」と記載されたものであって,願書添付図面として,正面図,背面図,平面図,底面図,及び左右側面図の六面図が提出されている。
2.原審の拒絶理由通知
原審より,平成28年3月22日付けで,「この意匠登録出願の意匠は,ボートの正面側に設けられた12の空気孔の部分(願書の意匠の説明の欄の記載による)について意匠登録を受けようとするものですが,正面図以外に当該部分が描かれておらず,断面図等も含まれていないことから,当該部分のうちどこが孔かさえ不明であり,当該部分の形状について一の意匠を特定することができませんので,具体的ではありません。」とする意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しない旨の拒絶の理由が通知されている。
3.出願人の手続補正書及び意見書の提出
出願人は,上記2の拒絶理由通知を受けて,平成28年6月30日に手続補正書を提出し,出願当初の六面図を全図変更するとともに,新たに【A-A,B-B部分拡大図】,【内部機構を省略したA-A,D-D部分における拡大C-C端面図】,及び【各部名称を示す参考拡大C-C端面図】を追加する補正を行っている。
また,同日に提出した意見書において,本願の優先日(2015年3月10日)より前に公開された公表特許公報(特表2015-506879号,公表日:2015年3月5日,国際公開日:2013年8月29日)において,本願意匠に係る物品と類似する物品である「船舶」の底面に,本願意匠の当該部分と同じ用途・機能を備えた部材が表れているため,この種物品分野における通常の知識を有する者であれば,本願の出願当初の願書及び図面の記載から,補正図面の内容を当然に直接的に導き出すことができるものであり,補正図面は出願当初の意匠の要旨を変更するものではない旨の主張を行っている。
4.原審の補正の却下の決定
原審は,平成28年9月21日付けで,出願当初の願書に添付された図面の意匠登録を受けようとする部分は,12の,内部に略舟型の模様があらわれた隅丸四角状の部分であり,当該略舟型の模様はいずれも不等間隔の平行線により7つの区画に分かれているよう示されているが,当該範囲のうち,いずれの区画が空気孔であるのか,という点は出願当初の願書及び願書に添付された図面を総合しても明確ではない。また,先行する特許公表公報においても,波偏向部材について,図3においては湾曲したものが,図4においては「A-A,B-B部分拡大図」と似た断面形状のものが示されており,これら波偏向部材に定まった形があることも認められず,図4の形状が一般的な形状であることも認められないことから,上記手続補正書で追加された断面形状は,出願当初明確でなかった形状を明確にするものであり,出願当初の意匠の要旨を変更するものと認められるので,意見書の主張は採用できない,としてこの手続補正書は意匠法第17条の2第1項の規定により却下をすべきものとの決定を行っている。
第2 請求人の主張
請求人は,この補正却下の決定を不服として平成28年12月28日に審判請求を行い,要旨以下のように主張している。
本願意匠の出願当初の願書及び図面に表れた空気孔部は,特表2015-506879号公報に記載の空気孔部とその用途・機能と概括的な形態が共通しており,当業者であれば,本願意匠の出願当初の願書及び図面に表れた空気孔部を認識した場合に,本願意匠の空気孔部が平板状の波偏向部材,空気入口,垂直状の前端,水平状の上壁,略弧状に傾斜する後壁,後端等から構成されるという要旨を当然に想起することができるものである。
また,本願意匠は,略隅丸四角形状の輪郭部の内側に,船体の下方に向かって正面視略舟型状に開口する凹部空間であってその内部に波偏向部材を並設した空気孔部12個を,船底の先端寄りに略V字状に配設した態様のものであるが,本願意匠の創作の主要点であり本質的な特徴点であり,本願意匠を特徴づける意匠上の構成要素は,この12個の空気孔部を「船底に略V字状に配設した」点にある。一方で,空気孔部の断面形状等の個々の具体的形状は,いわば空気孔部の内部の形状にかかる構成であり,かつ,本願意匠に係る物品であるボートの通常の使用状態においては,空気孔部の具体的な断面形状は殆ど目にしないところであるため需要者の注意を殆ど惹くものではなく,したがって,本願意匠の本質を左右するものではない。出願当初の願書及び図面においては,本願意匠の本質的特徴にかかる構成は開示されているものであるから,この本質にかかわらない空気孔部個々の具体的態様の細部について開示が欠けているところがあり,これを事後に補ったとしても,意匠の本質に何ら変更を及ぼすものではない。出願時に表していない「A-A,B-B部分拡大図」や「内部機構を省略したA-A,D-D部分における拡大C-C端面図」及び「各部名称を示す参考拡大C-C端面図」を補正により表すことは,出願当初に不明確であったものを明確にするものでも,新たな構成を付加するものでもなく,この種物品の分野において当然に導き出せる同一の範囲において,具体的な形状を表したに過ぎないものである。
以上より,平成28年6月30日付で行った手続の補正は,出願当初の願書の記載及び添付図面の記載の要旨を変更するものではない。
第3 当審の判断
1.出願当初の願書及び願書添付図面に記載された意匠(以下「当初の意匠」という。)と,平成28年6月30日付け手続補正書による補正後の意匠(以下「補正後の意匠」という。)について
(1)当初の意匠
当初の意匠は,部分意匠の意匠登録出願に係るものであって,その願書添付図面には,実線で表された意匠登録を受けようとする部分である空気孔部が,船底前方部分に正面視略略倒V字状の配列で上下6個ずつ計12個配設されたものであり,各空気孔部の態様は,正面図によれば,略隅丸横長長方形状の枠内に略舟型状の形状線が表され,当該略舟型状の部分に等間隔ではない6本の縦方向の平行線が表れているものである。
(2)補正後の意匠
補正後の意匠は,部分意匠の意匠登録出願に係るものであって,その補正後の願書添付図面には,実線で表された意匠登録を受けようとする部分である空気孔部が,船底前方部分に正面視略倒V字状の配列で上下6個ずつ計12個配設されたものであり,各空気孔部の態様は,「A-A,B-B部分拡大図」及び「内部機構を省略したA-A,D-D部分における拡大C-C端面図」によれば,略隅丸横長長方形状の枠内に略舟型状の切り欠き部が表され,当該略舟型状の切り欠き部の断面形状は,船体前方から後方に向かって,前端部が船体内側に垂直に入り込み,そのまま直角に曲がり後方に向かって水平状の上壁部が続き,その後方端部付近から略隅丸横長長方形状の枠部表面部に向かって略弧状に傾斜した後壁部が立ち上がる構成態様を持ち,切り欠き部の前端部と後壁部の間の中央やや上方寄りの壁面部分に,5つの波偏向部材を前方の一つを除く後方の4つを等間隔に配設したものである。
2.補正の適否について
平成28年6月30日付け手続補正書による補正が,出願当初の願書の記載及び願書添付図面の要旨を変更するか否かについて,以下検討する。
本来,願書の記載及び願書添付図面の記載は,登録意匠の範囲を定める基となる美的創作として出願された意匠の内容を表しており,その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて,願書の記載及び願書添付図面等から直接的に導き出される具体的な意匠の内容を,意匠の要旨という。
そして,出願当初の願書の記載及び願書添付図面等を総合的に判断しても意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当せず,意匠の要旨を特定することができないものを,工業上利用することができる意匠とする補正,すなわち,出願当初不明であった意匠の要旨を明確なものとする補正を認めることは,先願主義の趣旨に反し第三者に不測の不利益を与えることになるという観点から,このような補正は,出願当初の願書の記載又は願書に添付した図面等の要旨を変更するものと認めるとされている。(意匠審査基準82.1.2.1.2 出願当初不明であった意匠の要旨を明確なものとするものと認められる場合)
ここで,出願当初の願書添付図面における,実線で表された各空気孔部の記載は,略隅丸横長長方形状の枠内に略舟型状の形状線が表され,当該略舟型状の部分に等間隔ではない6本の縦方向の平行線が表れているだけのものであって,当該略舟型状の形状線の部分が切り欠き部である点,6本の縦方向の平行線のうち,前方側の5本が波偏向部材を表し,後方側の1本が略弧状に傾斜した後壁部の立ち上がり部分を表している点,等の当該略舟形状の部分の具体的な態様が不明であり,当該部分の形状について一の意匠を特定することができないものである。
次に,平成28年6月30日付け手続補正書による補正後の願書添付図面における各空気孔部の記載は,略隅丸横長長方形状の枠内における略舟型状の切り欠き部について,その具体的な構成態様が明らかになり,波偏向部材について,その数及び形態並びにその5つの配置態様が明らかになったものであり,当該略舟形状の部分の具体的な態様について一の意匠を特定することができるものである。
したがって,当該補正は,出願当初不明であった意匠の要旨を明確なものとするものと認められるものであるから,出願当初の願書添付図面の要旨を変更するものである。
なお,請求人は,「本願意匠に係る物品であるボートの通常の使用状態においては,空気孔部の具体的な断面形状は殆ど目にしないところであるため需要者の注意を殆ど惹くものではなく,したがって,本願意匠の本質を左右するものではないのである。そのため,出願当初の願書及び図面においては,本願意匠の本質的特徴にかかる構成は開示されているものであるから,この本質にかかわらない空気孔部個々の具体的態様の細部について開示が欠けているところがあり,これを事後に補ったとしても,意匠の本質に何ら変更を及ぼすものではない。」と主張するが,ボートの分野における通常の知識に基づいても,出願当初の願書の記載及び願書添付図面から空気孔部における具体的な態様を特定することはできないから,出願当初不明であった具体的な意匠の内容を明確なものとするこの補正は,意匠の本質に変更を及ぼし,本願意匠の要旨を変更するものと認められる。
よって,請求人のこの主張は認めることはできない。
第4 むすび
以上のとおりであって,平成28年6月30日付けの手続補正書による補正は,出願当初の願書の記載又は願書添付図面の要旨を変更するものと認められ適法なものではない。
したがって,原審の,平成28年6月30日付けの手続補正書を意匠法第17条の2第1項の規定により却下すべきものとした決定は,適正なものである。
よって,結論のとおり審決する。
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