特許拒絶査定不服審判
2016-019034
秘密計算システム及び方法並びに管理サーバ及びプログラム
- 審判番号
- 2016-019034
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-229585
- 請求日
- 2016年12月20日
- 審決日
- 2018年02月28日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】日本電信電話株式会社
- 【請求人代理人】豊田 義元
- 【請求人代理人】渡部 比呂志
- 審判長/審判官
- 審判長 高木 進
- 審判官 石井 茂和
- 審判官 山崎 慎一
- 分類
- P18 .536-WY (G09C) / P18 .537-WY (G09C) / P18 .121-WY (G09C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第164条第3項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-229585「秘密計算システム及び方法並びに管理サーバ及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月26日出願公開,特開2016- 95330,請求項の数(4)〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は,特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本願は,平成26年11月12日の出願であって,
平成27年3月12日付けで審査請求がなされ,平成28年5月26日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成28年8月1日付けで意見書が提出されたが,平成28年9月30日付けで審査官により拒絶査定がなされ(謄本送達;平成28年10月4日),これに対して平成28年12月20日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成29年1月27日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成29年4月7日付けで上申書が提出され,平成29年10月31日付けで当審により審判請求時の手続補正が却下されると共に拒絶理由が通知され,これに対して平成29年12月7日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたものである。
第2.本願発明について
本願の請求項1~本願の請求項4に係る発明(以下,これらを,それぞれ「本願発明1」~「本願発明4」という)は,平成29年12月7日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~請求項4に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりのものである。
「nを所定の3以上の整数とし,kをn未満の所定の正の整数とし,xをk以上n未満の整数として,(k,n)秘密分散法により分散されたn個の分散データの1つをそれぞれ格納するn個の秘密計算サーバと,
上記n個の秘密計算サーバのそれぞれが,秘密計算可能な状態であるかを判断する判断部と,秘密計算可能な状態であると判断された秘密計算サーバの中からx個の秘密計算サーバを選択する選択部とを含む管理サーバと,を含み,
上記選択されたx個の秘密計算サーバは,上記選択されたx個の秘密計算サーバにそれぞれ1つずつ格納された全部でx個の分散データに基づいて秘密計算が可能である
秘密計算システム。」
なお,本願発明2は,本願発明1に対応する秘密計算方法の発明であり,本願発明3は,本願発明1に対応する管理サーバの発明であり,本願発明4は,本願発明3に対応するプログラムの発明である。
第3.引用刊行物に記載の事項
1.原審における平成28年5月26日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)において引用された,本願の出願前に既に公知である,特開2014-137516号公報(平成26年7月28日公開,以下,これを「引用刊行物1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。
A.「【0011】
本発明の実施形態を説明する。
<定義>
各実施形態で用いる記号や用語を定義する。
(k,n)-秘密分散は,データをn個の分散値(シェア)に分散し,分散値がk個以上あればデータを完全に復元できるデータ分散方法である。ただし,nおよびkが2以上の整数であり,n≧kである。(k,n)-秘密分散は,k個未満の分散値からはデータに関する一切の情報を得ることができないという安全性をもつ。分散値を生成して提供する装置をディーラー装置と呼び,各分散値を保持する装置をパーティ装置とよぶ。
【0012】
加法準同型(k,n)-秘密分散は,分散されたデータ上で,元のデータの秘匿性を保ったまま,他のパーティ装置と情報の受け渡しなしで加算を行うことができる(k,n)-秘密分散である。加法準同型(k,n)-秘密分散としては,Shamirの秘密分散が有名である。加法準同型(k,n)-秘密分散では,パーティ装置間で情報のやり取りを行うことで秘匿計算を行うことができる。
【0013】
(k,n)-IDAは,(k,n)-秘密分散から上述の安全性の要件を取り除いた方式である。つまり(k,n)-IDAでも,分散値がk個以上あればデータを完全に復元することができる。ただし(k,n)-IDAでは,k個未満の分散値からデータに関する一切の情報を得ることができないことは保証されない。」
B.「【0021】
<第1実施形態>
第1実施形態を説明する。
《全体構成》
図1に例示するように,本形態の秘密分散システム1は,分散管理装置11,復元装置12,およびパーティ装置13-0,・・・,13-(n-1)を有し,ネットワーク14を通じて情報の受け渡しが可能なように構成されている。分散管理装置11および復元装置12はディーラー装置に相当する。本形態では,分散管理装置11と復元装置12とが別の装置であるが,分散管理装置11と復元装置12とが一体であってもよい。パーティ装置13-0,・・・,13-(n-1)(パーティ装置P(0),…,P(n-1))を元とする集合をPset={P(0),…,P(n-1)}とする。集合Psetに属するn-k+1個の元からなる部分集合をPsub(j)⊂Psetとする。このような部分集合Psub(j)はN=nCk-1個存在し,j=0,…,N-1とする。nおよびkは2以上の整数である。図4は,n=3,k=2の場合の集合Psetおよび部分集合Psub(j)を例示しており,この例ではPsub(0)={P(0),P(1)},Psub(1)={P(1),P(2)},Psub(2)={P(2),P(0)}である。
【0022】
《分散管理装置》
図2Aに例示するように,本形態の分散管理装置11は,入力部111とシード部112と関数部113と演算部114と分散部115と分散値生成部116と出力部117と記憶部118と制御部119とを有する。
【0023】
《復元装置》
図2Bに例示するように,本形態の復元装置12は,入力部121と復元部122,124と演算部123と出力部125と記憶部128と制御部129とを有する。
【0024】
《パーティ装置》
図3に例示するように,各パーティ装置13-i(ただし,i=0,...,n-1)は,提供部131-iと出力部132-iと入力部133-iと復旧部134-iと記憶部135-iと復元部136-i,1314-iと関数部137-i,138-i,1310-i,1313-iとシード部139-iと分散部1311-iと制御部1319-iとを有する。」
C.「【0030】
分散部115は,(k,n)-IDAによって関数値a’を分散し,n個の分散値a0’,…,an-1’を得て出力する。分散値a0’,…,an-1’は分散値生成部116に入力される(ステップS115)。分散値生成部116は,前述した部分集合Psub(j)に属する元である各パーティ装置13-i(すなわちP(i))に対し,それぞれ分散値ai’とシード値sjとを含む分散値T(i)を得て出力する。ただし,i=0,…,n-1である。すなわち,各パーティ装置13-iに対し,分散値ai’とシード列Si={sj∈S|P(i)∈Psub(j) and 0≦j<N}とを含む分散値T(i)を得て出力する。分散値T(i)は,分散値ai’とシード列Siのみを含んでいてもよいし,さらに共通パラメータ等のその他の情報を含んでいてもよい。n個の分散値T(0),…,T(n-1)は,出力部117に送られる(ステップS116)。
【0031】
出力部117は,各分散値T(i)を各パーティ装置13-iに対して出力する。分散値T(i)は,パーティ装置13-iの入力部133-iに入力され,記憶部135-iに格納される。このように各パーティ装置13-iに分散値T(i)が与えられる(ステップS117)。
【0032】
《復元》
図5Bを用いて,本形態の復元を説明する。
任意のk個の分散値T(φ(0)),…,T(φ(k-1))が,復元装置12(図2B)の入力部121に入力される。ただし,{φ(0),…,φ(k-1)}⊂{0,…,n-1}である。分散値T(φ(0)),…,T(φ(k-1))が含む分散値aφ(0)’,…,aφ(k-1)’は復元部122に送られ,シード列Sφ(0),…,Sφ(k―1)は演算部123に送られる(ステップS121)。
【0033】
復元部122は,(k,n)-IDAの復元方式によって,k個の分散値aφ(0)’,…,aφ(k-1)’からa’を復元して出力する。復元値a’は復元部124に送られる(ステップS122)。
【0034】
演算部123は,シード列Sφ(0),…,Sφ(k―1)に含まれるN個のシード値s0,…,sN-1および前述の擬似乱数生成関数Fを用い,関数値a0=F(s0),…,aN-1=F(sN-1)を計算して出力する。シード列Sφ(0),…,Sφ(k―1)からなる集合は,必ずすべてのシード値s0,…,sN-1を含む。関数値a0,…,aN-1は復元部124に送られる(ステップS123)。
【0035】
復元部124は,復元値a’と関数値a0,…,aN-1とに対する関数値である復元値a=D(a’,a0,…,aN-1)を計算して出力する。ただし,Dは環RのN+1個の元を入力として環の1個の元を出力する所定の関数D:RN+1→Rであり,例えば,Dは準同型関数であり,前述の関数Gに対応する。すなわち,GおよびDは,a’=G(a,a0,…,aN-1)およびa=D(a’,a0,…,aN-1)の関係を満たす。例えば,a’=a-Σj∈{0,...,N-1}ajである場合,a=a’+Σj∈{0,...,N-1}ajである。復元値aは出力部125に送られる(ステップS124)。出力部125は復元値aを出力する。」
2.原審拒絶理由において引用された,本願の出願前に既に公知である,特開2008-186064号公報(平成20年8月14日公開,以下,これを「引用刊行物2」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。
D.「【0009】
本発明に係る分散認証方法は,ひとつまたは複数のノードで構成される分散認証システムであり,前記分散認証システムに参加するノードのうち所定数台のノードが前記分散認証システムを代表する代表ノードとなり,前記代表ノードが,互いに連携することによって,前記分散認証システムの電子署名で用いる代表鍵と,分散認証システム電子証明書と,前記分散認証システムに参加するノードの電子署名で用いる個人鍵と,前記分散認証システムに参加するノードの電子証明書とを発行する分散認証システムの分散認証方法であって,(A)前記分散認証システムへの参加を開始するステップと,(B)前記分散認証システムに参加する全ノード数が所定数未満の場合,総意モードの動作を行うステップと,(C)前記分散認証システムに参加する全ノード数が所定数以上の場合,代表モードの動作として,前記代表ノード以外の一般ノードのときの動作を行うステップと,(D)前記代表モードの動作として,前記代表ノードのときの動作を行うステップと,(E)他ノードから受信したメッセージの電子署名を確認するときの動作を行うステップと,(F)前記代表ノードの初期の動作を行うステップと,(G)前記代表ノードを更新するときの動作を行うステップと,(H)前記代表ノードを離脱するときの動作を行うステップとを有することを特徴とする。」
E.「【0124】
図6は,代表ノード動作を示すものである。
【0125】
図6おいて,ステップS-D1は,代表ノード動作時の初期状態である。この初期状態から,ノードリストを読み出し,他のノードに対し,ノードリストを付加したkeep aliveメッセージを送信し(ステップS-DA1),初期状態(ステップS-D1)に戻る。
【0126】
次いで,初期状態(ステップS-D1)において,他のノードから,ノードリストが付加されたkeep aliveメッセージを受信する(ステップS-DB1)。この時,受信したメッセージの正当性を確認する場合は,後述の署名確認動作(ステップS-E1)に移行し,受信したメッセージの正当性が確認できた場合は,次のステップに移行する。
【0127】
次いで,ステップS-DB1で受信したkeep aliveメッセージに付加されていたノードリストと自ノードが保存していたノードリストを比較し最新の情報に更新する(ステップS-DB2)。そして,ノードリストを読み出し,分散認証システムに参加するノード数が規定数mに達しているかどうかを確認する(ステップS-DB3)。
【0128】
その結果,分散認証システムに参加するノード数が規定数mに達していた場合(Yes)は,ノードリストを読み出し,代表ノードが離脱していないか確認し(ステップS-DB4),代表ノードが離脱していた場合(Yes),後述の代表ノード更新動作(ステップS-G1)に移行する。一方,代表ノードが離脱していなかった場合,初期状態(ステップS-D1)に移行する。
【0129】
一方,上記ステップS-DB3にて分散認証システムに参加するノード数が規定数mに達していなかった場合(No)は,前述の総意モード動作(ステップS-B1)に移行する。」
F.「【0151】
図9は,代表ノード更新動作を示すものである。
【0152】
図9において,ステップS-G1は,代表ノード更新動作時の初期状態である。この初期状態から,新たに代表ノードになるノードを選出し(ステップS-G2),代表ノード指名確認メッセージを,他の代表ノードに送信する(ステップS-G3)。
【0153】
次いで,代表ノード指名確認レスポンスを受信する(ステップS-G4)。この時,受信したメッセージの正当性を確認する場合は,前述の署名確認動作(ステップS-E1)に移行し,受信したメッセージの正当性が確認できた場合は,次のステップに移行する。
【0154】
次いで,ステップS-G4で受信した代表ノード指名確認レスポンスに,ステップS-G2で選出したノードを拒否するメッセージが付加されているか確認する(ステップS-G5)。その結果,ステップS-G4で受信した代表ノード指名確認レスポンスに,ステップS-G2で選出したノードを拒否するメッセージが付加されていた場合(Yes),初期状態(ステップS-G1)に移行する。
【0155】
一方,ステップS-G4で受信した代表ノード指名確認レスポンスに,ステップS-G2で選出したノードを拒否するメッセージが付加されていなかった場合(No),ステップS-G2で選出したノードに対し,代表ノード指名リクエストを送信する(ステップS-G6)。
【0156】
次いで,ステップS-G2で選出したノードから,代表ノード指名レスポンスを受信する(ステップS-G7)。この時,受信したメッセージの正当性を確認する場合は,前述の署名確認動作(ステップS-E1)に移行し,受信したメッセージの正当性が確認できた場合は,次のステップに移行する。
【0157】
次いで,ステップS-G7で受信した代表ノード指名レスポンスに,代表ノードになることを拒否するメッセージが付加されているか確認する(ステップS-G8)。その結果,ステップS-G7で受信した代表ノード指名レスポンスに,代表ノードになることを拒否するメッセージが付加されていた場合(Yes),初期状態(ステップS-G1)に移行する。
【0158】
一方,ステップS-G7で受信した代表ノード指名レスポンスに,代表ノードになることを拒否するメッセージが付加されていなかった場合(No),代表ノード数が規定数mに達しているかどうか確認する(ステップS-G9)。その結果,代表ノード数が規定数mに達していた場合(Yes)は,前述の代表ノード初期動作(ステップS-F1)に移行する。一方,代表ノード数が規定数mに達していなかった場合(No)は,初期状態(ステップS-G1)に移行する。」
第4.引用刊行物に記載の発明
1.上記Aの「(k,n)-秘密分散は,データをn個の分散値(シェア)に分散し,分散値がk個以上あればデータを完全に復元できるデータ分散方法である。ただし,nおよびkが2以上の整数であり,n≧kである」という記載,同じく,上記Aの「分散値を生成して提供する装置をディーラー装置と呼び,各分散値を保持する装置をパーティ装置とよぶ」という記載,同じく,上記Aの「パーティ装置間で情報のやり取りを行うことで秘匿計算を行うことができる」という記載,同じく,上記Aの「(k,n)-IDAは,(k,n)-秘密分散から上述の安全性の要件を取り除いた方式である。つまり(k,n)-IDAでも,分散値がk個以上あればデータを完全に復元することができる」という記載,上記Bの「本形態の秘密分散システム1は,分散管理装置11,復元装置12,およびパーティ装置13-0,・・・,13-(n-1)を有し,ネットワーク14を通じて情報の受け渡しが可能なように構成されている。分散管理装置11および復元装置12はディーラー装置に相当する」という記載,同じく,上記Bの「本形態の分散管理装置11は,入力部111とシード部112と関数部113と演算部114と分散部115と分散値生成部116と出力部117と記憶部118と制御部119とを有する」という記載,同じく,上記Bの「本形態の復元装置12は,入力部121と復元部122,124と演算部123と出力部125と記憶部128と制御部129とを有する」という記載,上記Cの「分散部115は,(k,n)-IDAによって関数値a’を分散し,n個の分散値a0’,…,an-1’を得て出力する。分散値a0’,…,an-1’は分散値生成部116に入力される(ステップS115)。分散値生成部116は,前述した部分集合Psub(j)に属する元である各パーティ装置13-i(すなわちP(i))に対し,それぞれ分散値ai’とシード値sjとを含む分散値T(i)を得て出力する」という記載,同じく,上記Cの「出力部117は,各分散値T(i)を各パーティ装置13-iに対して出力する。分散値T(i)は,パーティ装置13-iの入力部133-iに入力され,記憶部135-iに格納される。このように各パーティ装置13-iに分散値T(i)が与えられる」という記載,同じく,上記Cの「任意のk個の分散値T(φ(0)),…,T(φ(k-1))が,復元装置12(図2B)の入力部121に入力される」という記載,同じく,上記Cの「分散値T(φ(0)),…,T(φ(k-1))が含む分散値aφ(0)’,…,aφ(k-1)’は復元部122に送られ,シード列Sφ(0),…,Sφ(k―1)は演算部123に送られる」という記載,及び,同じく,上記Cの「復元部122は,(k,n)-IDAの復元方式によって,k個の分散値aφ(0)’,…,aφ(k-1)’からa’を復元して出力する」という記載から,引用刊行物1には,次の発明(以下,これを「引用発明1」という)が記載されているものと認める。
「nおよびkが2以上の整数であり,n≧kである,(k,n)-IDAを用いる秘密分散システム1であって,
前記秘密分散システム1は,分散管理装置11,復元装置12,およびパーティ装置13-0,・・・,13-(n-1)を有し,ネットワーク14を通じて情報の受け渡しが可能なように構成され,
前記分散管理装置11は,入力部111とシード部112と関数部113と演算部114と分散部115と分散値生成部116と出力部117と記憶部118と制御部119とを有し,
前記復元装置12は,入力部121と復元部122,124と演算部123と出力部125と記憶部128と制御部129とを有し,
前記パーティ装置13-0,・・・,13-(n-1)は,パーティ装置間で情報のやり取りを行うことで秘匿計算を行うことができ,
前記分散部115は,(k,n)-IDAによって関数値a’を分散し,n個の分散値a0’,…,an-1’を得て出力し,
前記分散値a0’,…,an-1’は前記分散値生成部116に入力され,
前記分散値生成部116は,前記パーティ装置13-iに対し,それぞれ分散値ai’とシード値sjとを含む分散値T(i)を得て出力し,
前記分散値T(i)は,前記パーティ装置13-iの入力部133-iに入力され,記憶部135-iに格納され,
前記パーティ装置13-iから,任意のk個の分散値T(φ(0)),…,T(φ(k-1))が,前記復元装置12の入力部121に入力され,
前記復元装置12の復元部122に,前記分散値T(φ(0)),…,T(φ(k-1))が含む分散値aφ(0)’,…,aφ(k-1)’が送られ,
前記復元部122は,(k,n)-IDAの復元方式によって,k個の分散値aφ(0)’,…,aφ(k-1)’からa’を復元して出力する,秘密分散システム。」
2.上記Dの「ひとつまたは複数のノードで構成される分散認証システムであり,前記分散認証システムに参加するノードのうち所定数台のノードが前記分散認証システムを代表する代表ノードとなり,前記代表ノードが,互いに連携することによって,前記分散認証システムの電子署名で用いる代表鍵と,分散認証システム電子証明書と,前記分散認証システムに参加するノードの電子署名で用いる個人鍵と,前記分散認証システムに参加するノードの電子証明書とを発行する分散認証システム」という記載,同じく,上記Dの「(A)前記分散認証システムへの参加を開始するステップと,(B)前記分散認証システムに参加する全ノード数が所定数未満の場合,総意モードの動作を行うステップと,(C)前記分散認証システムに参加する全ノード数が所定数以上の場合,代表モードの動作として,前記代表ノード以外の一般ノードのときの動作を行うステップと,(D)前記代表モードの動作として,前記代表ノードのときの動作を行うステップ」,上記Eの「図6は,代表ノード動作を示すものである」という記載,同じく,上記Eの「図6において,ステップS-D1は,代表ノード動作時の初期状態である。この初期状態から,ノードリストを読み出し,他のノードに対し,ノードリストを付加したkeep aliveメッセージを送信し」という記載,同じく,上記Eの「次いで,初期状態(ステップS-D1)において,他のノードから,ノードリストが付加されたkeep aliveメッセージを受信する」という記載,同じく,上記Eの「次いで,ステップS-DB1で受信したkeep aliveメッセージに付加されていたノードリストと自ノードが保存していたノードリストを比較し最新の情報に更新する(ステップS-DB2)。そして,ノードリストを読み出し,分散認証システムに参加するノード数が規定数mに達しているかどうかを確認する」という記載,同じく,上記Eの「分散認証システムに参加するノード数が規定数mに達していた場合(Yes)は,ノードリストを読み出し,代表ノードが離脱していないか確認し(ステップS-DB4),代表ノードが離脱していた場合(Yes),後述の代表ノード更新動作(ステップS-G1)に移行する」という記載,同じく,上記Eの「分散認証システムに参加するノード数が規定数mに達していなかった場合(No)は,前述の総意モード動作(ステップS-B1)に移行する」という記載,上記Fの「図9は,代表ノード更新動作を示すものである」という記載,同じく,上記Fの「新たに代表ノードになるノードを選出し(ステップS-G2),代表ノード指名確認メッセージを,他の代表ノードに送信する」という記載,同じく,上記Fの「次いで,代表ノード指名確認レスポンスを受信する」という記載,同じく,上記Fの「次いで,ステップS-G4で受信した代表ノード指名確認レスポンスに,ステップS-G2で選出したノードを拒否するメッセージが付加されているか確認する」という記載,同じく,上記Fの「受信した代表ノード指名確認レスポンスに,ステップS-G2で選出したノードを拒否するメッセージが付加されていなかった場合(No),ステップS-G2で選出したノードに対し,代表ノード指名リクエストを送信する」という記載,同じく,上記Fの「選出したノードから,代表ノード指名レスポンスを受信する」という記載,同じく,上記Fの「受信した代表ノード指名レスポンスに,代表ノードになることを拒否するメッセージが付加されているか確認する」という記載,及び,同じく,上記Fの「ステップS-G7で受信した代表ノード指名レスポンスに,代表ノードになることを拒否するメッセージが付加されていなかった場合(No),代表ノード数が規定数mに達しているかどうか確認する」という記載から,引用刊行物2には,次の発明(以下,これを「引用発明2」という)が記載されているものと認める。
「ひとつまたは複数のノードで構成される分散認証システムであって,前記分散認証システムに参加するノードのうち所定数台のノードが前記分散認証システムを代表する代表ノードとなり,前記代表ノードが,互いに連携することによって,前記分散認証システムの電子署名で用いる代表鍵と,分散認証システム電子証明書と,前記分散認証システムに参加するノードの電子署名で用いる個人鍵と,前記分散認証システムに参加するノードの電子証明書とを発行する分散認証システムにおいて,
前記分散認証システムは,
(A)前記分散認証システムへの参加を開始するステップと,(B)前記分散認証システムに参加する全ノード数が所定数未満の場合,総意モードの動作を行うステップと,(C)前記分散認証システムに参加する全ノード数が所定数以上の場合,代表モードの動作として,前記代表ノード以外の一般ノードのときの動作を行うステップと,(D)前記代表モードの動作として,前記代表ノードのときの動作を行うステップとを有し,
前記代表モードにおいて,前記代表ノードは,
ノードリストを読み出し,他のノードに対し,ノードリストを付加したkeep aliveメッセージを送信し,
他のノードから,ノードリストが付加されたkeep aliveメッセージを受信し,
受信したkeep aliveメッセージに付加されていたノードリストと自ノードが保存していたノードリストを比較し最新の情報に更新し,前記ノードリストを読み出し, 前記分散認証システムに参加するノード数が規定数mに達しているかどうかを確認し,
前記分散認証システムに参加するノード数が規定数mに達していなかった場合は,前記総意モード動作に移行し,
前記分散認証システムに参加するノード数が規定数mに達していた場合は,ノードリストを読み出し,代表ノードが離脱していないか確認し,代表ノードが離脱していた場合,代表ノード更新動作に移行する,分散認証システムであって,
前記代表ノード更新動作が,
新たに代表ノードになるノードを選出し,代表ノード指名確認メッセージを,他の代表ノードに送信するステップと,
前記他の代表ノードから,代表ノード指名確認レスポンスを受信するステップと,
受信した代表ノード指名確認レスポンスに,選出したノードを拒否するメッセージが付加されているか確認するステップと,
前記代表ノード指名確認レスポンスに,前記選出したノードを拒否するメッセージが付加されていなかった場合,前記選出したノードに対し,代表ノード指名リクエストを送信するステップと,
前記選出したノードから,代表ノード指名レスポンスを受信するステップと,
受信した代表ノード指名レスポンスに,代表ノードになることを拒否するメッセージが付加されているか確認するステップと,
前記代表ノード指名レスポンスに,代表ノードになることを拒否するメッセージが付加されていなかった場合,代表ノード数が規定数mに達しているかどうか確認するステップ,
とを有する,分散認証システム。」
第5.本願発明1と引用発明との対比
1.引用発明1において,「パーティ装置13-0,・・・,13-(n-1)」が“n台”存在していることは,明らかであり,当該「パーティ装置13-0,・・・,13-(n-1)は,パーティ装置間で情報のやり取りを行うことで秘匿計算を行うことができ」るものであるから,引用発明1における「パーティ装置」が,本願発明1における「秘密計算サーバ」に相当し,
引用発明1においては,「パーティ装置」それぞれに,「nおよびkが2以上の整数であり,n≧kである,(k,n)-IDAを用い」て,「n個の分散値」が「出力」され,「パーティ装置」の「記憶部に格納され」るものであるから,
引用発明1における「nおよびkが2以上の整数であり,n≧kである,(k,n)-IDAを用いる秘密分散システム1」を構成する「パーティ装置」と,
本願発明1における「nを所定の3以上の整数とし,kをn未満の所定の正の整数とし,xをk以上n未満の整数として,(k,n)秘密分散法により分散されたn個の分散データの1つをそれぞれ格納するn個の秘密計算サーバ」とは,
“k,nを所定の整数として,秘密分散法により分散されたn個の分散データの1つをそれぞれ格納するn個の秘密計算サーバ”である点で共通する。
2.引用発明1においては,上記1.において指摘したとおり,各「パーティ装置」は,「秘匿計算を行うことができ」るので,引用発明1における「パーティ装置」においても,“選択されたx(<k)個のパーティ装置は,それぞれが有する分散値を用いて秘匿計算が可能である”ことは明らかであるから,
引用発明1における「パーティ装置13-0,・・・,13-(n-1)は,パーティ装置間で情報のやり取りを行うことで秘匿計算を行うことができ」ることが,
本願発明1における「選択されたx個の秘密計算サーバは,上記選択されたx個の秘密計算サーバにそれぞれ1つずつ格納された全部でx個の分散データに基づいて秘密計算が可能である」ことに相当する。
3.以上,上記1.,及び,2.において検討した事項から,本願発明1と,引用発明1との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。
[一致点]
k,nを所定の整数として,秘密分散法により分散されたn個の分散データの1つをそれぞれ格納するn個の秘密計算サーバを有し,
選択されたx個の秘密計算サーバは,上記選択されたx個の秘密計算サーバにそれぞれ1つずつ格納された全部でx個の分散データに基づいて秘密計算が可能である
秘密計算システム。
[相違点1]
“秘密分散法”に関して,
本願発明1においては,「nを所定の3以上の整数とし,kをn未満の所定の正の整数とし,xをk以上n未満の整数と」する「(k,n)秘密分散法」であるのに対して,
引用発明1においては,「nおよびkが2以上の整数であり,n≧kである,(k,n)-IDA」である点。
[相違点2]
本願発明1は,「n個の秘密計算サーバのそれぞれが,秘密計算可能な状態であるかを判断する判断部と,秘密計算可能な状態であると判断された秘密計算サーバの中からx個の秘密計算サーバを選択する選択部とを含む管理サーバ」を含むものであるのに対して,
引用発明1においては,「分散管理装置11」は,「パーティ装置」の状態管理などは行っておらず,本願発明1における「管理サーバ」に相当する構成が存在していない点。
第6.相違点についての当審の判断
[相違点2]に関して,引用発明2は,「分散認証システム」に関する発明であって,何れかの「ノード」が,当該「分散認証システムに参加するノード数が規定数mに達しているかどうかを確認し」,「分散認証システムに参加するノード数が規定数mに達していなかった場合は」,「総意モード動作に移行し」,「規定数mに達していた場合は,ノードリストを読み出し,代表ノードが離脱していないか確認し,代表ノードが離脱していた場合,代表ノード更新動作に移行」し,何れかの「代表ノード」が,「新たに代表ノードになるノードを選出し,代表ノード指名確認メッセージを,他の代表ノードに送信」し,他の「代表ノード」に,当該「選出したノード」の承認が得られた場合に,「選出したノードに対し,代表ノード指名リクエストを送信」し,当該「選出したノード」が,当該「選出」を受諾する旨の「レスポンス」を返信してきた場合に,「代表ノード数が規定数mに達しているかどうか確認する」という処理を行うものであるから,
引用発明2は,「秘密分散法」を用いて分散されたデータを用いた「秘匿計算」とは異なる技術分野のものであり,かつ,
引用発明2においては,「代表モード」で動作し得るかの,「ノード数」,及び,「代表モード」で動作する場合,「代表ノード」が,「所定数mに達しているかどうかを確認」することは,行っているが,
引用発明2は,各「代表ノード」が,何らかの「計算」を行い得る状態にあるか,即ち,現在「代表ノード」である「ノード」が正常に機能しているかについてを「判断する」機能を有してはいない。
以上検討したとおりであるから,引用発明1と,引用発明2とを組み合わせても,本願発明1には相当しない。
したがって,上記[相違点1]について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明1,及び,引用発明2に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
第7.本願発明2~本願発明4について
本願発明2,及び,本願発明3は,表現やカテゴリ相違はあるものの,本願発明1と同等の構成を有するものであり,本願の請求項4は,本願の請求項3を引用するものであるから,本願発明2~本願発明4は,上記「第6.相違点についての当審の判断」において検討した,[相違点2]に係る構成を有するものである。
したがって,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明1,及び,引用発明2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第8.原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は,本願の請求項1~本願の請求項4について上記引用刊行物1,及び,引用刊行物2に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら,本願の請求項1~請求項4は,上記「第6.相違点についての当審の判断」において検討した,[相違点2]に係る構成を有するものであるから,上記において検討のとおり,本願発明1~本願発明4は,上記引用刊行物1に記載された発明及び上記引用刊行物2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。
第9.当審拒絶理由について
1.36条6項2号について
当審では,本願の請求項1~本願の請求項3に記載の「上記選択されたx個の秘密計算サーバは,上記選択されたx個の秘密計算サーバにそれぞれ格納されたx個の分散データに基づいて秘密計算が可能である」は明確でない旨の拒絶理由を通知しているが,平成29年12月7日付けの手続補正において,「秘密計算サーバにそれぞれ1つずつ格納された全部でx個の分散データ」と補正されたことで,この拒絶理由は解消した。
2.36条4項1号について
本願の請求項1~本願の請求項3に記載の「上記選択されたx個の秘密計算サーバは,上記選択されたx個の秘密計算サーバにそれぞれ格納されたx個の分散データに基づいて秘密計算が可能である」は,本願明細書の発明の詳細な説明の記載からは明確にならない旨の拒絶理由を通知しているが,上記1.において言及した補正により,この拒絶理由は解消した。
第.むすび
以上のとおり,本願発明1~本願発明4は,当業者が引用発明1,及び,引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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2016-019034