特許拒絶査定不服審判
2016-018944
スポットサイズ変換器
- 審判番号
- 2016-018944
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-034096外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年12月16日
- 審決日
- 2018年01月24日
- 公報発行日
- 2018年03月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015- 34096「スポットサイズ変換器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 1日出願公開、特開2016-156928、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月24日の出願であって、平成28年2月26日付けで拒絶理由通知(同年3月1日送付)がされ、同年4月22日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年9月27日に拒絶査定(同年10月4日送達)がされ、これに対し、同年12月16日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明9」という。)は、平成28年4月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの本願発明1は、その請求項1に記載されている事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
基板上に、第1導波路コアと第2導波路コア、及び下部クラッド層と上部クラッド層を備えるスポットサイズ変換器であって、
前記第1導波路コアの屈折率より前記第2導波路コアの屈折率が小さく、前記下部クラッド層及び前記上部クラッド層の屈折率は、前記第2導波路コアの屈折率より小さく、
当該第1導波路コアと当該第2導波路コアの導波方向に順次設定された、第1構成領域、第2構成領域において、
前記第1導波路コアは前記第1構成領域に形成されており、
前記第2導波路コアは、前記第1構成領域、前記第2構成領域の全域にわたって形成されており、
前記第1導波路コアと前記第2導波路コアは、当該両導波路コアの厚み方向に、前記第1導波路コアの対称中心と前記第2導波路コアの対称中心とが重なるように、かつ当該第1導波路コアの導波方向と当該第2導波路コアの導波方向は互いに平行になるように積み重ねて配置されており、
前記第1導波路コアは、前記第2構成領域に向かって当該コアの幅が狭まるテーパ構造領域を含んでおり、
前記第2導波路コアの前記第2構成領域に含まれる部分は、前記第1構成領域から離れるにしたがって当該コアの幅が狭まるテーパ構造領域とされており、
前記下部クラッド層の厚みは、前記第1及び第2導波路コアを伝搬する光の電場成分の一部が前記下部クラッド層を介して前記基板に達することに起因する光電場の当該基板への放射損失が無視できる程度の厚みに設定されており、
前記第1構成領域では、前記第1導波路コアを伝搬する伝搬光と前記第2導波路コアを伝搬する伝搬光とが互いのエバネッセント場を介して光結合され、
前記第2構成領域では、入力光のモードフィールド径が前記第1構成領域から離れるにしたがって拡大される
ことを特徴とするスポットサイズ変換器。」
第3 原査定の拒絶理由
原査定の拒絶理由は、次のとおりである。
「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-8
・引用文献等 1-4
・備考
引用文献1[図1]等には、導波路コアの厚み方向に、第1導波路コアと第2導波路コアとが積み重なって構成されるスポットサイズ変換器であって、第1導波路コアの幅が、導波方向に向かってテーパ状に狭まる構成等が開示されており、本願発明と対比して、第2導波路コアにテーパ構造領域を設ける旨が記載されていない点で主として相違する。しかしながら、スポットサイズ変換器において導波方向に順次重なり設けられる複数の導波路コア各々を、導波方向に幅が狭まる構成となすことは、例えば引用文献2[図1A]等で周知であって、引用文献1において該周知の構成を鑑み本願発明をなすことは、当業者にとって容易である。
なお、スポットサイズ変換器のコア厚み方向に積み重なる導波路間で、伝搬光がエバネッセント場を介し光結合する点は、引用文献3[請求項1]等に明記されている。
請求項2,4,6,7の「第3構成領域」に関し、第2導波路コアが形成される領域の出力側を、単に称した程度のものである。
請求項5-6に関し、第1導波路コアと第2導波路コアとの間にクラッド層が備わる構成は、引用文献3[図2]等に開示されている。
請求項8に関し、スポットサイズ変換器におけるセグメント導波路利用の周知例として、引用文献4[図11]等参照。
<引用文献等一覧>
1.特開2004-133446号公報
2.特開2013-231753号公報
3.特開2014-191301号公報
4.特開2004-240064号公報(周知技術を示す文献)」
第4 引用文献
1 引用文献1について
原査定の拒絶理由に引用された引用文献1(特開2004-133446号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審が付加した。以下同様。)。
(1) 「【0007】
図12に示した光導波路において、光ファイバと低損失で接続するためには、細線状の第1の光導波路と接続される第2の光導波路のモードフィールド径は光ファイバのモードフィールド径(9μm)に近いことが求められる。しかしながら、図12の光導波路では、屈折率1の空気がオーバークラッドの役割をしているため、接続される第2の光導波路12のコア18との屈折率差が大きく、シングルモード条件を満たす第2の光導波路12のコアサイズは3μm角より大きくできず、光ファイバとの接続損失を低減できないという問題があった。さらに、シリコン細線からなる第1の光導波路10のコア16の周りも特にオーバークラッド層がないため、光導波路10のコア16が傷つけられやすく、伝搬損失が増加するという問題もあった。
また、図12に示した光導波路において、モードフィールドサイズ変換効率を高めるためには、テーパ先端部の幅が0.1μm以下、理想的には0.06μm程度かさらに小さいことが求められる。このような微細な加工は、電子線ビーム描画等の極めて高度なリソグラフィ技術やエッチング技術を要するなどし、経済的に加工することが困難であった。」
(2) 「【0009】
本発明の光モジュールは、全体として平板状のアンダークラッドと、このアンダークラッド上に配置された断面が四角形のシリコンからなる第1のコアと、この第1のコアの終端部を覆うように配置された第2のコアと、前記第1コアの終端部と前記第2のコアとを覆うように配置されたオーバークラッドとを備え、前記アンダークラッドと前記第1のコアとは、第1の光導波路を構成し、前記アンダークラッドと前記第1のコアの終端部と前記第2のコアと前記オーバークラッドとは、モードフィールドサイズ変換部を構成し、前記アンダークラッドと前記第2のコアと前記オーバークラッドとは、第2の光導波路を構成し、前記第1のコアと前記第2のコアの断面形状が異なっていることを特徴とするものである。アンダークラッドは、第1のコア及び第2のコアよりも屈折率が小さい材料、例えばシリコン酸化膜からなる。第2のコアは、アンダークラッドよりも屈折率が大きい材料、例えばポリマーからなる。第1のコアは、第2のコアよりも屈折率が大きいシリコンからなる。
また、本発明の光モジュールの1構成例において、前記第1コアの終端部は、先端に向かうに従って漸次断面積が小さくなるテーパ部によって構成されるものである。
また、本発明の光モジュールの1構成例において、前記オーバークラッドは、前記第2のコアの上とその周囲に加えて前記第1コアの上とその周囲にも配置されるものである。
また、本発明の光モジュールの1構成例において、前記第2のコアは、前記アンダークラッドより屈折率が高く、かつ前記第1のコアのシリコンより屈折率が低い材料によって形成されるものである。
また、本発明の光モジュールの1構成例は、前記第1のコアと前記終端部との少なくとも側面を、シリコン酸化膜で覆うようにしたものである。
また、本発明の光モジュールの1構成例において、前記終端部上の第2のコアは、前記シリコン酸化膜上に配置されるものである。
また、本発明の光モジュールの1構成例において、前記アンダークラッドは、シリコン酸化膜からなるものである。」
(3) 「【0017】
[第1の実施の形態]
図1(a)は本発明の第1の実施の形態となるモードフィールドサイズ変換部を備えた光モジュールの平面図、図1(b)は図1(a)の光モジュールのA-A線断面図である。同図において、10は第1の光導波路、11はモードフィールドサイズ変換部、12は第1の光導波路10と接続される第2の光導波路、13はシリコン基板、14はシリコン基板上に形成されたシリコン酸化膜よりなるアンダークラッド、15は例えばポリマーのような材料よりなるオーバークラッドであり、本発明によって特徴づけられる部分である。16はアンダークラッド14上に形成されたシリコンよりなる細線状の第1のコア、17は第1のコア16の終端部であるシリコンよりなるテーパ部、18は第1のコア16のテーパ部17上に少なくとも一部が配置されたポリマーよりなる第2のコアである。第2のコア18の主部はオーバークラッド15,アンダークラッド14とともに第2の光導波路を構成している。テーパ部17は、第1のコア16の先端方向に向かうに従って漸次断面積がちいさくなるように形成されている。
【0018】
第1の光導波路10と第2の光導波路12は、シリコン基板13とアンダークラッド14を共通基板として形成され、モードフィールドサイズ変換部11を介して光学的に接続されている。
また、フィールドサイズ変換部11はアンダークラッド14、テーパ部17、テーパ部17上に配置された第2コア18およびこの第2のコアの上およびその周囲に配置されるオーバークラッド15によって構成されている。また、第1の光導波路10はアンダークラッド14とこの上に配置されるコア16とオーバークラッド15とによって構成される。第1の光導波路10では、オーバークラッド15は必ず必要というわけではない。その理由は、シリコンをコアとする第1の光導波路10は光の閉じ込めが強く、オーバークラッドがない場合でも下の基板に光が漏れることはないからである。
【0019】
光通信に最も良く使用されている1.55μm帯の光を通す場合、第1の光導波路10のコア16は、断面の厚さおよび幅が0.3μm程度である。第2光導波路12のコア18は、アンダークラッド14及びオーバークラッド15のいずれよりも数%程度大きな屈折率を持ち、断面の厚さと幅は共に数μm程度である。テーパ部17は、長さが300μm、テーパ先端部の幅が0.06μmである。第1の光導波路10、モードフィールドサイズ変換部11及び第2の光導波路12に共通のオーバークラッド15は、アンダークラッド14とほぼ同じあるいは大きめの屈折率を持つ。第1のコア16及びテーパ部17は、電子線リソグラフィとエッチングで形成され、第2のコア18は、光リソグラフィとエッチングで形成される。
【0020】
次に、図1に示した光モジュールの製造方法を図2、図3を用いて説明する。まず、シリコン基板13と、シリコン基板13上に形成されたシリコン酸化膜からなる全体として平板状のアンダークラッド14と、アンダークラッド14上に形成されたシリコン層161とからなるSOI基板を用意し、シリコン層161の上に、エッチング加工用マスクとなるシリコン酸化膜162を化学気相成長法あるいはスパッタ法等を用いて形成する(図2(a))。この場合、アンダークラッド14の厚さは3.0μm、シリコン層161の厚さは0.2μ~0.5μmである。」
(4) 図1は、次のものである。
(5) 図1を参考にして、上記(1)、(3)の記載をみると、次のことが読みとれる。
ア 第1のコア16を有する第1の光導波路10から第2のコア18を有する第2の光導波路12の方向に光が通るよう構成されており、モードフィールドサイズ変換部11、第2の光導波路12は、この順で、第1のコア16及び第2のコア18の導波方向に設定されている。
イ 第1のコア16は、モードフィールドサイズ変換部11に形成されており、第2のコア18は、モードフィールドサイズ変換部11及び第2の光導波路12の全域にわたって形成されている。
ウ 第1のコア16と第2のコア18は、各々のコアの厚み方向に、第1のコア16の対称中心と第2のコア18の対称中心とが重なるように、かつ第1のコア16の導波方向と第2のコア18の導波方向は互いに平行になるように積み重ねて配置されている。
(6) したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1発明」という。)が記載されていると認められる。
「 シリコン基板13上に形成されたシリコン酸化膜よりなるアンダークラッド14、ポリマーよりなるオーバークラッド15、シリコンよりなる第1のコア16、ポリマーよりなる第2のコア18を備えた光モジュールであって、
前記第2のコア18は、前記アンダークラッド14よりも屈折率が大きいポリマーからなり、前記第1のコア16は、前記第2のコア18よりも屈折率が大きいシリコンからなり、第2光導波路12のコア18は、アンダークラッド14及びオーバークラッド15のいずれよりも数%程度大きな屈折率を持ち、前記オーバークラッド15は、前記アンダークラッド14とほぼ同じあるいは大きめの屈折率を持ち、
前記第1のコア16及び前記第2のコア18の導波方向に設定された、モードフィールドサイズ変換部11、第2の光導波路12において、
前記第1のコア16は、前記モードフィールドサイズ変換部11に形成されており、前記第2のコア18は、前記モードフィールドサイズ変換部11及び前記第2の光導波路12の全域にわたって形成されており、
前記第1のコア16と前記第2のコア18は、各々のコアの厚み方向に、前記第1のコア16の対称中心と前記第2のコア18の対称中心とが重なるように、かつ前記第1のコア16の導波方向と前記第2のコア18の導波方向は互いに平行になるように積み重ねて配置されており、
前記第1のコア16の一部に、テーパ部17が、第1のコア16の先端方向に向かうに従って漸次断面積が小さくなるように形成されており、
前記アンダークラッド14の厚さは3.0μmである
光モジュール。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶理由に引用された引用文献2(特開2013-231753号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1) 「【0017】
このスポットサイズ変換器は、下部クラッド層101と、下部クラッド層101の上の導波領域111に形成されて導波領域111において先細りの先端を備える第1コア102を備える。また、導波領域111の第1コア102の先端部から導波領域111に続くスポットサイズ変換領域112の光入出射端113まで配置され、先細りに形成した第1コア102の先端部を覆い、スポットサイズ変換領域112で光入出射端113にかけて先細りに形成された第2コア103を備える。
【0018】
なお、スポットサイズ変換器は、厳密には、スポットサイズ変換領域112の部分となるが、ここでは、説明の便宜上、一部の導波領域111も含めている。導波領域111では、例えば、第1コア102および第2コア103により、光回路が形成されている。ここで、第1コア102は、導波領域111内で、第2コア103と接続する箇所で、先端にかけて先細りに形成されている。
【0019】
また、スポットサイズ変換領域112で第2コア103を覆って下部クラッド層101の上の光入出射端113まで配置され、先細りの第2コア103の形状に沿って光入出射端にかけてコア部(リブ部)が先細りとされたスラブ型の第3コア104を備える。また、第1コア102,第2コア103,および第3コア104を覆って下部クラッド層101の上に形成された上部クラッド層105を備える。
【0020】
ここで、上述したように、第2コア103が、スポットサイズ変換領域112において、光入出射端113にかけて先細りに形成され、第3コア104も、第1コア102の先端より光入出射端113の側のスポットサイズ変換領域112において、光入出射端113にかけてコア部が先細りに形成され、この第3コア104の形状が堆積のみで形成できるところに特徴がある。なお、第2コア103の屈折率は、第1コア102より小さく、第3コア104の屈折率は、第2コア103より小さく、上部クラッド層105の屈折率は、第3コア104より小さくされている。
【0021】
上記スポットサイズ変換器では、導波領域111を導波してきた光信号は、スポットサイズ変換領域112においてスポットサイズが拡大され、光入出射端113に光接続される光ファイバ(不図示)に光結合して導波する。
【0022】
例えば、上述した構成は、よく知られたSOI基板(Silicon on Insulator)基板を用いて形成され、SOI基板の埋め込み絶縁層を下部クラッド層101として利用している
。埋め込み絶縁層は、一般にはSiO2から構成されており、下部クラッド層101は、屈折率が1.44である。」
3 引用文献3について
原査定の拒絶理由に引用された引用文献3(特開2014-191301号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板上に設けられて光を入出力する第1の端部から第2の端部に向かって延在する第1のコアと、
前記第1のコアと積層方向においてエバネッセント結合する位置に形成されて前記第1の端部から前記第2の端部に向かう方向に沿って延在する複数のコアからなる第2のコアと、
前記第2のコアと積層方向においてエバネッセント結合する位置に形成されて前記第1の端部から前記第2の端部に向かう方向に沿って延在し、前記第1の端部から前記第2の端部に向かう方向において断面積が増加するテーパ部を有する第3のコアと
を有することを特徴とするスポットサイズ変換器。」
4 引用文献4について
原査定の拒絶理由に引用された引用文献4(特開2004-240064号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1) 「【0045】
(第2の実施の形態)
図11に示す第2の実施の形態に係るスポットサイズ変換光導波路は、光の伝搬方向zに沿って徐々に幅が細くなるダウンテーパー導波路構造のコア1と、このコア1の後段に光の伝搬方向zに沿って分割配置された複数の同形状のコア1cと、これらのコア1,1aを覆うクラッド2とから成り、このクラッド2はコア1、1aを保護すると共に光をコア1,1aに閉じ込めるためにコア1、1aよりも低い屈折率を有している。コア1の後段の各コア1cは、一定周期構造部分7である。
【0046】
コア1は、光の入力部分の幅と高さが各々4.3μmであり、テーパー状に細くなる位置z=0から先端までの長さが500μm、先端の端面の幅が1.0μmの寸法を有する。また、一定周期構造部分7においては、各コア1cの幅、高さ共に4.3μmであり、ギャップ長が5.0μmに設定されている。」
第5 当審の判断
1 本願発明1について
(1) 対比・一致点・相違点
本願発明1と引用文献1発明とを対比する。
ア 引用文献1発明の「シリコン基板13」、「アンダークラッド14」、「オーバークラッド15」、「第1のコア16」、「第2のコア18」は、本願発明1の「基板」、「下部クラッド層」、「上部クラッド層」、「第1導波路コア」、「第2導波路子」に各々相当する。
イ 引用文献1発明の「光モジュール」は、モードフィールドサイズ変換部11を有し、光のスポットサイズを変換する機能を有するため、本願発明1の「スポットサイズ変換器」に相当する。
ウ 引用文献1発明の「前記第2のコア18は、前記アンダークラッド14よりも屈折率が大きいポリマーからなり、前記第1のコア16は、前記第2のコア18よりも屈折率が大きいシリコンからなり、第2光導波路12のコア18は、アンダークラッド14及びオーバークラッド15のいずれよりも数%程度大きな屈折率を持ち、前記オーバークラッド15は、前記アンダークラッド14とほぼ同じあるいは大きめの屈折率を持つ」構成は、第1のコア、第2のコア、オーバークラッド、アンダークラッドの各屈折率の大小関係からみて、
本願発明1の「前記第1導波路コアの屈折率より前記第2導波路コアの屈折率が小さく、前記下部クラッド層及び前記上部クラッド層の屈折率は、前記第2導波路コアの屈折率より小さ」い構成に相当する。
エ 引用文献1発明の「前記第1のコア16及び前記第2のコア18の導波方向に設定された、モードフィールドサイズ変換部11、第2の光導波路12」は、
本願発明1の「当該第1導波路コアと当該第2導波路コアの導波方向に順次設定された、第1構成領域、第2構成領域」に相当する。
オ 引用文献1発明の「前記第1のコア16は、前記モードフィールドサイズ変換部11に形成されており、前記第2のコア18は、前記モードフィールドサイズ変換部11及び前記第2の光導波路12の全域にわたって形成されて」いる構成は、
本願発明1の「前記第1導波路コアは前記第1構成領域に形成されており、前記第2導波路コアは、前記第1構成領域、前記第2構成領域の全域にわたって形成されて」いる構成に相当する。
カ 引用文献1発明の「前記第1のコア16と前記第2のコア18は、各々のコアの厚み方向に、前記第1のコア16の対称中心と前記第2のコア18の対称中心とが重なるように、かつ前記第1のコア16の導波方向と前記第2のコア18の導波方向は互いに平行になるように積み重ねて配置されて」いる構成は、
本願発明1の「前記第1導波路コアと前記第2導波路コアは、当該両導波路コアの厚み方向に、前記第1導波路コアの対称中心と前記第2導波路コアの対称中心とが重なるように、かつ当該第1導波路コアの導波方向と当該第2導波路コアの導波方向は互いに平行になるように積み重ねて配置されて」いる構成に相当する。
キ 引用文献1発明の「前記第1のコア16の一部に、テーパ部17が、第1のコア16の先端方向に向かうに従って漸次断面積が小さくなるように形成されている」構成は、テーパ部17の形状と、第1のコアでのテーパ部17の位置からみて、
本願発明1の「前記第1導波路コアは、前記第2構成領域に向かって当該コアの幅が狭まるテーパ構造領域を含んで」いる構成に相当する。
したがって、本願発明1と引用文献1発明とは、
(一致点)
「 基板上に、第1導波路コアと第2導波路コア、及び下部クラッド層と上部クラッド層を備えるスポットサイズ変換器であって、
前記第1導波路コアの屈折率より前記第2導波路コアの屈折率が小さく、前記下部クラッド層及び前記上部クラッド層の屈折率は、前記第2導波路コアの屈折率より小さく、
当該第1導波路コアと当該第2導波路コアの導波方向に順次設定された、第1構成領域、第2構成領域において、
前記第1導波路コアは前記第1構成領域に形成されており、
前記第2導波路コアは、前記第1構成領域、前記第2構成領域の全域にわたって形成されており、
前記第1導波路コアと前記第2導波路コアは、当該両導波路コアの厚み方向に、前記第1導波路コアの対称中心と前記第2導波路コアの対称中心とが重なるように、かつ当該第1導波路コアの導波方向と当該第2導波路コアの導波方向は互いに平行になるように積み重ねて配置されており、
前記第1導波路コアは、前記第2構成領域に向かって当該コアの幅が狭まるテーパ構造領域を含んでいる
スポットサイズ変換器。」
である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1では、「前記第2導波路コアの前記第2構成領域に含まれる部分は、前記第1構成領域から離れるにしたがって当該コアの幅が狭まるテーパ構造領域とされて」いるのに対し、
引用文献1発明では、第2のコア18はテーパ構造領域を有しない点。
(相違点2)
本願発明1では、「前記下部クラッド層の厚みは、前記第1及び第2導波路コアを伝搬する光の電場成分の一部が前記下部クラッド層を介して前記基板に達することに起因する光電場の当該基板への放射損失が無視できる程度の厚みに設定されて」いるのに対し、
引用文献1発明では、アンダークラッド14の厚みは3.0μmであるものの、シリコン基板への放射損失と厚さの関係について限定されていない点。
(相違点3)
本願発明1では、「前記第1構成領域では、前記第1導波路コアを伝搬する伝搬光と前記第2導波路コアを伝搬する伝搬光とが互いのエバネッセント場を介して光結合され」るものであるのに対し、
引用文献1発明では、モードフィールドサイズ変換部11で、モード第1のコア14の伝搬光と第2のコア16の伝搬光との光結合がどのようなものか限定されていない点。
(相違点4)
本願発明1では、「前記第2構成領域では、入力光のモードフィールド径が前記第1構成領域から離れるにしたがって拡大される」のに対し、
引用文献1発明では、第2の光導波路12でのモードフィールド径の状態が限定されていない点。
(2) 相違点についての検討
ア 上記相違点1,4について検討する。
引用文献1発明では、「第1構成領域」と、「前記第2導波路コアの前記第2構成領域に含まれる部分は、前記第1構成領域から離れるにしたがって当該コアの幅が狭まるテーパ構造領域とされて」おり、「入力光のモードフィールド径が前記第1構成領域から離れるにしたがって拡大される」「第2構成領域」とにより、モードフィールド径を変換する機能を有しているといえる。
一方、引用文献1では、「【0007】
図12に示した光導波路において、光ファイバと低損失で接続するためには、細線状の第1の光導波路と接続される第2の光導波路のモードフィールド径は光ファイバのモードフィールド径(9μm)に近いことが求められる。」、
「【0028】
次に、本実施の形態の光モジュールにおける光の伝搬状態を説明する。図4(a)、図4(b)に示した第1の光導波路20の第1のコア26の左端面から入射した光は、コア26を伝搬し、テーパ部27の左端位置に到達する。光がテーパ部27を図4(a)の右方向に伝搬するにつれて、コア幅が徐々に狭まり光の閉じこめが弱くなり、モードフィールドサイズが周囲に広がろうとする。ところが、このときアンダークラッド24より屈折率の高い第2のコア28が隣接して存在するため、光パワーの分布は第1の光導波路20の第1のコア26から第2の光導波路22の第2のコア28へ徐々に移っていく。
【0029】
前記とは逆に図4(a)、図4(b)に示した第2コア28の右端部から光が入射した場合には、右から左へ光が進行するにつれてコア28、テーパ部27を介して、第1の光導波路20の第1のコア26へ光の分布が移動する。この移動はテーパにより断熱的に行われるのでその効率は非常に高い。このように、テーパ部27を介して第1の光導波路20の第1のコア26と第2の光導波路22の第2のコア28とを接続することで、効率の高いモードフィールドサイズ変換を実現することができる。」と記載されているように、モードフィールドサイズを拡大する機能は、モードフィールドサイズ変換部11が有しているのみであり、第2の光導波路は、モードフィールドサイズを変換する機能を有していないといえる。
また、引用文献2には、先細りに形成された第2コア103によるスポットサイズ変換器が記載され、引用文献3には、エバネッセント結合する領域にテーパー部を有するスポットサイズ変換器が記載され、引用文献4には、ダウンテーパ導波路構造のコアを有するスポットサイズ変換器が記載されている。
しかしながら、各引用文献において、スポットサイズ変換器を他のスポットサイズ変換器と組み合わせることについて記載されておらず、自明とはいえない。
以上のことからみて、引用文献1発明において、モードフィールドサイズ変換部11に対し、更に、モードフィールド変換するためのテーパ構造を付加することを動機付ける技術が引用文献2~4に記載されておらず、自明とともいえない。
そして、本願発明1の相違点1及び相違点4に係る構成を採用することにより、「実用上支障のない程度に光損失を小さくすることができる。すなわち、SOI基板に形成された光トランシーバ等の機能素子へ外部から光信号を入力させる際、あるいは当該機能素子からの光出力信号を導波する光導波路と光ファイバ等の外部の光導波路を結合させる際に利用して好適なスポットサイズ変換器を提供できる。」という効果を奏するものである。
イ 上記のとおりであるから、本願発明1の相違点1、相違点4に係る構成は、引用文献1発明及び引用文献2~4に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
(3) まとめ
相違点2、相違点3について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1発明及び引用文献2~4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 本願発明2~本願発明9について
本願発明2~本願発明9も、本願発明1の相違点1、4に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1発明及び引用文献2~4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 原査定について
以上のとおり、本願発明1~本願発明9は、「前記第2導波路コアの前記第2構成領域に含まれる部分は、前記第1構成領域から離れるにしたがって当該コアの幅が狭まるテーパ構造領域とされて」おり、「前記第2構成領域では、入力光のモードフィールド径が前記第1構成領域から離れるにしたがって拡大される」構成を有しており、当業者であっても、原査定の拒絶理由において引用された引用文献1~4に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-018944