特許拒絶査定不服審判
2016-018696
ユーザ認証サーバ、ユーザ認証方法、ユーザ認証サーバ用プログラム
- 審判番号
- 2016-018696
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-038703外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年12月12日
- 審決日
- 2018年02月19日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (G06F) / P18 .55 -WY (G06F) / P18 .536-WY (G06F) / P18 .537-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第4項第1号、特許法第164条第3項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014- 38703「ユーザ認証サーバ,ユーザ認証方法,ユーザ認証サーバ用プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月 7日出願公開,特開2015-162211,請求項の数(4)〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は,特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本願は,平成26年2月28日の出願であって, 平成27年11月25日付けで拒絶理由がされ,平成28年2月8日付けで意見書が提出されると共に手続補正がされ,平成28年6月1日付けで最後の拒絶理由がされ,平成28年8月26日付けで意見書が提出されたが,平成28年9月9日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対して,平成28年12月12日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると共に手続補正がされ,平成29年1月27日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がされ,平成29年10月26日付で当審により補正の却下の決定がされる共に拒絶理由(当審拒絶理由)がされ,平成30年1月8日付けで意見書が提出されると共に手続補正(最新の手続補正)がされたものである。
第2.原査定の概要
原査定(平成28年9月9日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1,2,4,5に係る発明は,以下の引用文献A-Cに基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
A:国際公開第2011/083867号
B:特開2008-242926号公報
C:国際公開第2007/110951号
第3.当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
(1)平成28年2月8日付けでした手続補正は,下記の点で願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(2)本件出願は,明細書,特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号,第2号に規定する要件を満たしていない。
(3)本願請求項1,2,4,5に係る発明は,引用例1-3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1:国際公開第2011/083867号
2:特開2008-242926号公報
3:国際公開第2007/110951号
第4.本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は,平成30年1月8日付けの手続補正(以下、「最新の手続補正」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりである。
1.本願発明1
「【請求項1】
ユーザが利用するユーザ端末と通信可能に接続され,ユーザの認証を行うユーザ認証サーバであって,
前記ユーザ端末から,ワンタイムパスワードとユーザの識別子を受信するワンタイムパスワード受信手段と,
前記受信したユーザの識別子を用いて,前記受信したワンタイムパスワードが有効であるか否かを識別するワンタイムパスワード識別手段と,
前記識別の結果,有効であった場合にのみ,前記ユーザ端末から,ワンタイムパスワード以外に認証に用いる認証情報を受信する認証情報受信手段と,
前記認証情報を用いて前記ユーザの認証を行う認証実行手段と,
認証履歴データベースを備え,
前記ユーザについて前記認証を行った際,当該ユーザのユーザ関連情報に含まれるIPアドレスを取得し,認証履歴として記憶させる認証履歴記憶手段と,
前記ユーザについて前記認証を行う際,当該ユーザの認証履歴を抽出する認証履歴抽出手段と,
前記抽出した認証履歴に含まれるIPアドレスと,取得したユーザ関連情報に含まれるIPアドレスとを比較して,差分を抽出する認証履歴差分抽出手段と,
前記抽出した差分が,所定の閾値を超えていた場合,前記ユーザの認証時に警告処理と認証処理の中止の少なくともいずれかを行う警告処理手段と,
警告履歴データベースと,
前記警告処理又は認証処理を中止した場合に,認証を行ったユーザとともに前記警告履歴データベースに警告履歴を記録させる警告履歴記憶手段と,
前記ユーザについて前記認証を行う際,当該ユーザの警告履歴を抽出する警告履歴抽出手段と,を備え,
前記抽出した警告履歴の数が,所定の閾値を超えていた場合,前記ユーザの認証時に警告処理と認証処理の中止のいずれかを行うことを特徴とするユーザ認証サーバ。」
2.本願発明2-4
本願発明2は,本願発明1を減縮した発明である。
本願発明3-4は,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
第5.引用文献,引用発明
1.引用文献1について,
(1)本願出願前に頒布され原審及び当審において引用した,国際公開第2011/083867号(2011年7月14日国際公開,以下,これを「引用文献1」という)には,関連する図面とともに,次の事項が記載されている(下線は,説明のため当審で付与した。)。
A.「[0006] 本発明は,このような問題に鑑みてなされたものであり,簡易な構成により,第三者のなりすましを防止できる認証装置,認証方法,及び,プログラムを提供することを目的とする。
(中略)
[0038] ユーザの操作に従って,携帯電話20は,携帯電話20からインターネット60を介して社内システム40に接続を要求するショートメッセージを,携帯電話網(移動体通信網)50を介して,認証装置10に送信する(ステップS11)。
認証装置10は,携帯電話20からショートメッセージを受信すると,ショートメッセージの送信元アドレスに設定されている電話番号に対応する電話番号が認証DB121にあるか否かを判別して,当該携帯電話20を認証する(ステップS12)。
認証装置10は,携帯電話20の電話番号を用いた認証が成功すると,ワンタイムパスワードをパラメータに含んだ認証装置10へアクセスするためのURLを作成する。認証装置10は,作成したURLを,携帯電話網50を介して,携帯電話20に通知する(ステップS13)。
[0039] 携帯電話20は,ユーザの操作に従って,認証装置10から通知されたURL先(即ち,認証装置10)に,インターネット60を介してアクセスする(ステップS14)。認証装置10は,携帯電話20からのアクセスがあると,URLに含まれるワンタイムパスワードを用いて,携帯電話20を認証(URL認証)する(ステップS15)。
[0040] 認証装置10によりURL認証が完了すると,携帯電話20は,ユーザの操作に従って,ユーザが入力した暗証番号を,インターネット60を介して認証装置10に送信する(ステップS16)。認証装置10は,携帯電話20から受信した暗証番号を用いて,当該携帯電話20のユーザを認証する(ステップS17)。
認証装置10は,この認証が完了すると,携帯電話20から社内システム40へのアクセスを許可する(ステップS18)。」
B.「[0043] 認証装置10の制御部13は,移動体通信網50を介して,携帯電話20から接続要求SMを受信すると(ステップS102),接続要求SMの送信元アドレスに設定されている電話番号を用いて,携帯電話20の認証を行う。即ち,まず,制御部13は,接続要求SMの送信元アドレスに設定されている電話番号が,認証DB121に登録されているか否かを判別する(ステップS103)。」
C.「[0047] 続いて,制御部13は,乱数などを発生させるなどしてワンタイムパスワードを作成する。制御部13は,作成したワンタイムパスワードを,さきほどステータスを更新した認証DB121のレコードに記憶する(ステップS106)。また,制御部13は,そのときの時刻を,認証DB121の当該レコードの応答時刻に記録する(ステップS107)。
[0048] 続いて,制御部13は,インターネット60を介して認証装置10にアクセスするためのアドレス情報(例えば,URL(Uniform Resource Locator))を作成する(ステップS108)。なお,このURLには,認証装置10へのアクセス用のURL以外に,接続要求SMの送信元アドレスに設定されている電話番号と,ステップS106で作成したワンタイムパスワードとがパラメータとして付与される。例えば,ステップS108の処理により,「http://www.aaa.com?x1=0904567865&x2=93445693」のようなURLが作成される。この例では,「http://www.aaa.com」は,認証装置10へのアクセス用URL,パラメータx1に設定されている「0904567865」は電話番号,パラメータx2に設定されている「93445693」は発行されたワンタイムパスワードを示す。」
D.「[0052] 認証装置10の制御部13は,インターネット60を介して,携帯電話20からのアクセスがあると,当該アクセスの際のURLを用いて,認証を行う。即ち,まず,制御部13は,このURLから,ワンタイムパスワードと電話番号とを取得する(ステップS112)。なお,URLから電話番号とワンタイムパスワードとを取得できない場合にはエラーとして処理を終了する。
[0053] 続いて,制御部13は,ステップS112で取得した情報を用いて,接続要求SMを送信して認証を与えた携帯電話20からのアクセスであるか否かを判別する(ステップS113)。
具体的には,制御部13は,ステップS112で取得したワンタイムパスワードと電話番号とが対応付けられて記憶されているレコードが認証DB121に有り,且つ,そのレコードのステータスが接続待ち状態を示す「1」である場合に,認証を与えた携帯電話20からのアクセスであると判別する。
(中略)
[0057] 制御部13は,所定時間以内であると判別した場合(ステップS115;Yes),暗証番号入力用の所定の画面を表す画面データを,インターネット60を介してアクセス元の携帯電話20に送信(返信)する(ステップS116)。
このように,認証装置10は,携帯電話20からインターネット60を介したアクセスがあると,そのURLに含まれる情報を用いて認証を行う。
[0058] 携帯電話20は,認証装置10からインターネット60を介して受信した画面データに従って,暗証番号入力用の画面を表示する(図6,ステップS117)。ユーザは,携帯電話20のボタンを押下する等して,予め設定した暗証番号を携帯電話20に入力して認証装置10に送信させるための操作を行う。携帯電話20は,入力された暗証番号を,インターネット60を介して,認証装置10に送信する(ステップS118)。
[0059] 認証装置10の制御部13は,インターネット60を介して,携帯電話20から暗証番号を受信すると(ステップS119),暗証番号を用いたユーザ認証を行う。即ち,制御部13は,認証DB121を参照して,携帯電話20から受信した暗証番号が,認証を与えた携帯電話20の暗証番号(即ち,ステップS112でURLから取得した電話番号が記憶されている認証DB121のレコードの暗証番号)と一致する否かを判別する(ステップS120)。」
(2)引用発明
引用文献1に記載された事項を検討する。
ア.上記Aの「ユーザの操作に従って,携帯電話20は」「社内システム40に接続を要求するショートメッセージを,携帯電話網(移動体通信網)50を介して,認証装置10に送信する」という記載,及び「認証装置10は」「受信した暗証番号を用いて,当該携帯電話20のユーザを認証する」という記載から,引用文献1においては,“ユーザが利用する携帯電話と通信可能に接続された,ユーザの認証を行う認証装置”が読み取れる。
イ.上記Aの「認証装置10は」「ワンタイムパスワードをパラメータに含んだURLを作成」し,「作成したURLを携帯電話20に通知する」との記載,「携帯電話20は,URL先(即ち,認証装置10)に,インターネット60を介してアクセス」し,「認証装置10は,携帯電話20からのアクセスがあると,URLに含まれるワンタイムパスワードを用いて,携帯電話20を認証(URL認証)する」との記載,上記Cの「制御部13は,認証装置10にアクセスするためのアドレス情報(例えば,URL)を作成する」との記載,「URLには,認証装置10へのアクセス用のURL以外に,接続要求SMの送信元アドレスに設定されている電話番号と作成したワンタイムパスワードとがパラメータとして付与される」との記載,上記Dの「認証装置10の制御部13は,インターネット60を介して,携帯電話20からのアクセスがあると」「URLから,ワンタイムパスワードと電話番号とを取得する」との記載から,引用文献1においては,“携帯電話から,ワンタイムパスワードが含まれるURLを用いて認証装置がアクセスされると,アクセスの際のURLから,ワンタイムパスワードと電話番号を取得”する“制御部”が読み取れる。
ウ.上記Aの「認証装置10は,携帯電話20からのアクセスがあると,URLに含まれるワンタイムパスワードを用いて,携帯電話20を認証(URL認証)する」との記載,上記Dの「制御部13は」「取得したワンタイムパスワードと電話番号とが対応付けられて記憶されているレコードが認証DB121に有り,且つ,そのレコードのステータスが接続待ち状態を示す「1」である場合に,認証を与えた携帯電話20からのアクセスであると判別する」との記載から,引用文献1においては,“取得したワンタイムパスワードと電話番号に基づいて,認証を与えた携帯電話であるかを識別”する“制御部”が読み取れる。
エ.上記Aの「認証装置10によりURL認証が完了すると,携帯電話20は」「ユーザが入力した暗証番号を,インターネット60を介して認証装置10に送信」し,「認証装置10は」「受信した暗証番号を用いて,当該携帯電話20のユーザを認証する」との記載,「認証装置10は,この認証が完了すると,携帯電話20から社内システム40へのアクセスを許可する」との記載,上記Dの「制御部13は,認証DB121を参照して,携帯電話20から受信した暗証番号が,認証を与えた携帯電話20の暗証番号(URLから取得した電話番号が記憶されている認証DB121のレコードの暗証番号)と一致する否かを判別する」との記載から,引用文献1においては,“識別の結果,認証を与えた携帯電話であった場合にのみ,携帯電話から,暗証番号を受信する制御部”と“暗証番号を用いて携帯電話のユーザの認証を行”う“制御部”が読み取れる。
オ.上記ア.~エ.において検討した事項から,引用文献1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。
「ユーザが利用する携帯電話と通信可能に接続され,ユーザの認証を行う認証装置であって,
前記携帯電話から,ワンタイムパスワードが含まれるURLを用いて前記認証装置がアクセスされると,アクセスの際のURLからワンタイムパスワードと電話番号を取得し,
前記取得したワンタイムパスワードと電話番号に基づいて,認証を与えた携帯電話であるかを識別し,
前記識別の結果,認証を与えた携帯電話であった場合にのみ,携帯電話から,暗証番号を受信し,
前記暗証番号を用いて携帯電話のユーザの認証を行う,制御部
を備えることを特徴とする認証装置。」
2.引用文献2
本願出願前に頒布され原審及び当審において引用した,特開2008-242926号公報(2008年10月9日公開,以下,これを「引用文献2」という)には,関連する図面とともに,次の事項が記載されている。
E.「【0001】
本発明は,ワンタイムパスワードを用いてユーザの正当性を認証する認証技術に関する。
(中略)
【0019】
認証サーバ5は,ユーザ端末(携帯電話1,端末2)からのアクセス要求を認証し,認証に成功した場合に所定のサービスを提供する。図示する認証サーバ5は,1次認証を行う1次認証部51と,ユーザ端末が携帯電話1か否かを判別する判別部52と,ユーザ端末が携帯電話1の場合にワンタイムパスワードを生成する第1の生成部53と,ユーザ端末が端末2の場合にワンタイムパスワードを要求するワンタイムパスワード要求部54と,ユーザ端末からワンタイムパスワードを受信するワンタイムパスワード受信部55と,認証用のワンタイムパスワードを生成する第2の生成部56と,ユーザ端末から送信されたワンタイムパスワードと第2の生成部が生成したワンタイムパスワードとを検証する2次認証部57と,ユーザ端末に所定のサービスを提供する業務処理部58と,を有する。」
F.「【0022】
ワンタイムパスワード生成キー204は,ワンタイムパスワードを生成するための情報であって,固定情報(シード)と可変情報(カウンタ,時刻情報など)とを有する。固定情報は,ユーザ毎(またはユーザID毎)に割り当てられるユニークな文字列である。可変情報は,毎回異なるワンタイムパスワードを生成するための情報である。可変情報としては,例えば,時刻情報(タイムスタンプ)や,ワンタイムパスワードの生成回数を用いることが考えられる。
【0023】
図3は,セッション情報テーブル62の一例を示す図である。図示するセッション情報テーブル62は,セッションID301(セッション情報)とユーザID302とを有する。セッションID301は,認証サーバ5にアクセスしたユーザ端末(携帯電話1または端末2)を識別するための情報であって,ログインからログアウトまでのセッション毎に一意に割り振られる情報である。
(中略)
【0040】
そして,第1の生成部53は,生成したワンタイムパスワードを含むワンタイムパスワード確認画面と,セッションIDとをユーザ端末に送信する(S22)。ユーザ端末は,例えば,図7(a)のワンタイムパスワード確認画面73を出力装置に表示する(S23)。ユーザが当該画面のOKボタンをクリックすることにより,ユーザ端末は,表示されたワンタイムパスワード,および当該画面に埋め込まれたセッションIDを認証サーバ5に送信する(S24)。
【0041】
認証サーバ5のワンタイムパスワード受信部55は,S18と同様に,受信したセッションIDがセッション情報テーブル62に存在するか否かをチェックする(S25)。セッション情報テーブル62に存在する場合,ワンタイムパスワード受信部55は,セッション情報テーブル62から対応するユーザIDを取得する。そして,ワンタイムパスワード受信部55は,認証テーブル61から取得したユーザIDに対応するワンタイムパスワード生成キーを取得して第2の生成部56に送出する。
【0042】
第2の生成部56は,送出されたパスワード生成キーに基づいて,S21と同様のアルゴリズムによりワンタイムパスワードを生成する(S26)。そして,2次認証部57は,S24で受信したワンタイムパスワードと,S26で生成したワンタイムパスワードとが一致するか否かを判別する(S27)。ワンタイムパスワードが一致した場合,2次認証部57は,正当なユーザからの要求であると認証し,2次認証に成功した旨を示すログイン後画面をユーザ端末に送信する(S28)。」
3.引用文献3
本願出願前に頒布され,原審及び当審において引用した,国際公開第2007/110951号(2007年10月4日公開,以下,これを「引用文献3」という)には,関連する図面とともに,次の事項が記載されている。
G.「【0020】
(中略)請求項3記載の発明では,ユーザ識別情報とパスワードの組み合わせに基づく従来のユーザ確認(認証)に加えて,ユーザエージェント情報(及びアクセス元IPアドレス)に基づくユーザ確認を行うので,ユーザ確認の精度を更に向上させることができ,正当なユーザのユーザ識別情報とパスワードを不正に取得した第三者が,正当なユーザになりすまして不正にアクセスしようとした場合にも,これを検知して阻止することが可能となる。
(中略)
【0059】
一方,ステップ32の認証処理で認証に成功した場合(請求項3に記載の「ユーザ識別情報とパスワードの組み合わせが記憶手段に記憶されていた場合」に相当)には,ステップ34の判定が肯定されてステップ36へ移行し,受信した認証要求パケットのHTTPデータからアクセス元IPアドレス(送信元IPアドレス)を抽出すると共に,認証要求パケットのHTTPヘッダからユーザエージェント情報を抽出する。なお,このステップ36は本発明に係る抽出手段(詳しくは請求項2に記載の抽出手段)に対応している。また,次のステップ38では,HDD12Cに記憶されている使用履歴テーブルから,先のステップ30で抽出されたユーザIDに対応する使用履歴情報を抽出し,抽出した使用履歴情報をメモリ12Bに記憶させる。
(中略)
【0063】
前述のように,使用履歴情報領域のうちのアクセス元IPアドレス領域及びユーザエージェント情報領域には初期値として空白が設定されるが,オンライン金融取引受付サービ
スの利用を申請したユーザによって,オンライン金融取引用ウェブサイトへのアクセスが1回以上行われると,ステップ36で認証要求パケットから抽出されたアクセス元IPアドレス及びユーザエージェント情報が使用履歴情報として登録される(詳細は後述)。使用履歴情報としてアクセス元IPアドレス及びユーザエージェント情報が既に登録されている場合はステップ42の判定が肯定されてステップ44へ移行し,ステップ36で認証要求パケットから抽出したアクセス元IPアドレス及びユーザエージェント情報を,使用履歴情報として登録されているアクセス元IPアドレス及びユーザエージェント情報と照合する。
【0064】
なお,IPアドレスの照合は以下のようにして行われる。すなわち,IPアドレスは4バイトのデータであるが,本実施形態では,アクセス元IPアドレス領域へのアクセス元IPアドレスの登録に際し,1バイト毎にハッシュ関数を用いてハッシュ値が演算され,4個のハッシュ値がアクセス元IPアドレスとして登録される。このため,ステップ36で抽出したアクセス元IPアドレスについても1バイト毎にハッシュ値を演算し,得られた4個のハッシュ値をアクセス元IPアドレス領域に登録されている4個のハッシュ値と比較し,ハッシュ値単位での一致率を求める。そして,求めた一致率を使用履歴情報として設定されている照合判定用閾値と比較し,一致率が閾値以上の場合は,今回のアクセス元IPアドレスが登録されているIPアドレスと「対応している」と判定し,一致率が閾値未満の場合は,今回のアクセス元IPアドレスが登録されているIPアドレスと「対応していない」と判定する。
(中略)
【0070】
一方,先のステップ44における照合結果が,「使用履歴情報として登録されているアクセス元IPアドレス及びユーザエージェント情報の組の中に,認証要求パケットから抽出されたアクセス元IPアドレス及びユーザエージェント情報と各々対応していると判定された組が存在していない」という条件(便宜上,第2の条件と称する)を満たす結果であった場合,今回のアクセスは,同一のユーザが過去にオンライン金融取引用ウェブサイトをアクセスした際と,アクセス元及びクライアント端末18の少なくとも一方が各々相違しているので,認証要求パケット送信元のクライアント端末18を操作しているユーザは正当なユーザでない可能性が高い。
(中略)
【0072】
(中略),ステップ44における照合結果が前述の第2の条件を満たしかつ上記の第3の条件を満たさない場合に,図5に「認証NG」と表記して示すように,認証を「失敗」と判定する。
(中略)
【0076】
一方,先のステップ46で認証が「失敗」と判定された場合はステップ68へ移行し,使用履歴情報のうちの取引停止フラグに1を設定する。また,ステップ46で認証が「失敗」と判定された場合にも,認証要求パケット送信元のクライアント端末18を操作しているユーザが正当なユーザである可能性があり,これを考慮して次のステップ70では,ステップ32で抽出したユーザIDと対応付けて認証情報DBに記憶されている電子メールアドレスを読み出し,読み出した電子メールアドレスへ再認証要請メールを送信する。例として図6に示すように」
第6.対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
ア.引用発明の「ユーザが利用する携帯電話と通信可能に接続され,ユーザの認証を行う認証装置」は,「ユーザが利用する携帯電話」と「ユーザの認証を行う認証装置」とが「通信可能に接続され」ていることから,本願発明1の“ユーザが利用するユーザ端末と通信可能に接続され,ユーザの認証を行うユーザ認証サーバ”に相当する。
イ.引用発明の「前記携帯電話から,ワンタイムパスワードが含まれるURLを用いて前記認証装置がアクセスされると,アクセスの際のURLからワンタイムパスワードと電話番号を取得」することは,「携帯電話から」の「ワンタイムパスワード」と「電話番号」を取得しており,「電話番号」はユーザを識別することもできることから,「ユーザの識別子」といえる。そうすると,本願発明1の「前記ユーザ端末から,ワンタイムパスワードとユーザの識別子を受信するワンタイムパスワード受信手段」とは,後記する点で相違するものの,“ユーザ端末から,ワンタイムパスワードとユーザの識別子を得る”点で共通する。
ウ.引用発明は「取得したワンタイムパスワードと電話番号に基づいて,認証を与えた携帯電話であるかを識別」しているところ,得られたワンタイムパスワードが,認証を与えた携帯電話の,有効なものであるかを識別しているといえるから,引用発明の「制御部」と,本願発明1の「前記受信したユーザの識別子を用いて,前記受信したワンタイムパスワードが有効であるか否かを識別するワンタイムパスワード識別手段」とは,後記する点で相違するものの,“得られたワンタイムパスワードが有効であるか否かを識別する”点で共通する。
エ.引用発明の「識別の結果,認証を与えた携帯電話であった場合にのみ,携帯電話から,暗証番号を受信し,暗証番号を用いて携帯電話のユーザの認証を行う」ことは,当該暗証番号が,認証に用いる情報であることは明らかであり,引用発明の「暗証番号」が,ワンタイムパスワード以外の認証用の情報であることは明らかである。
そうすると,引用発明の「暗証番号」,「暗証番号を用いて携帯電話のユーザの認証を行う」「制御部」が,それぞれ本願発明1の「ワンタイムパスワード以外に認証に用いる認証情報」,「認証情報を用いて前記ユーザの認証を行う認証実行手段」に相当するので,本願発明1の「識別の結果,有効であった場合にのみ,前記ユーザ端末から,ワンタイムパスワード以外に認証に用いる認証情報を受信する認証情報受信手段と,前記認証情報を用いて前記ユーザの認証を行う認証実行手段」とは,後記する点で相違するものの,“識別の結果,得られたワンタイムパスワードが有効であった場合にのみ,携帯電話から,ワンタイムパスワード以外に認証に用いる認証情報を受信する手段と,前記認証情報を用いて前記ユーザの認証を行う手段”である点で共通する。
オ.以上ア.~エ.において検討した事項から,本願発明1と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。
<一致点>
「ユーザが利用するユーザ端末と通信可能に接続され,ユーザの認証を行うユーザ認証サーバであって,
前記ユーザ端末から,携帯電話から,ワンタイムパスワードとユーザの識別子を得る手段と,
前記得られたワンタイムパスワードが有効であるか否かを識別する手段と,
前記識別の結果,有効であった場合にのみ,前記ユーザ端末から,ワンタイムパスワード以外に認証に用いる認証情報を受信する手段と,
前記認証情報を用いて前記ユーザの認証を行う手段と,
を備えることを特徴とするユーザ認証サーバ。」
<相違点1>
“ワンタイムパスワードとユーザの識別子を得る手段”に関して,
本願発明1は「ユーザ端末から,ワンタイムパスワードとユーザの識別子を受信するワンタイムパスワード受信手段」であるのに対して,引用発明は“携帯電話からのアクセス情報(URL)からワンタイムパスワードを取得”する点。
<相違点2>
“識別する手段”に関して,
本願発明1は「受信したユーザの識別子を用いて,前記受信したワンタイムパスワードが有効であるか否かを識別する」のに対して,引用発明は,“ワンタイムパスワードと電話番号に基づいて,認証を与えた携帯電話であるかを識別”する点。
<相違点3>
本願発明1の「ユーザ認証サーバ」は,「認証履歴データベースを備え,前記ユーザについて前記認証を行った際,当該ユーザのユーザ関連情報に含まれるIPアドレスを取得し,認証履歴として記憶させる認証履歴記憶手段と,前記ユーザについて前記認証を行う際,当該ユーザの認証履歴を抽出する認証履歴抽出手段と,前記抽出した認証履歴に含まれるIPアドレスと,取得したユーザ関連情報に含まれるIPアドレスとを比較して,差分を抽出する認証履歴差分抽出手段と,前記抽出した差分が,所定の閾値を超えていた場合,前記ユーザの認証時に警告処理と認証処理の中止の少なくともいずれかを行う警告処理手段」を備えるのに対して,引用発明はそのように特定されていない点。
<相違点4>
本願発明1は「警告履歴データベースと,前記警告処理又は認証処理を中止した場合に,認証を行ったユーザとともに前記警告履歴データベースに警告履歴を記録させる警告履歴記憶手段と,前記ユーザについて前記認証を行う際,当該ユーザの警告履歴を抽出する警告履歴抽出手段と,を備え,前記抽出した警告履歴の数が,所定の閾値を超えていた場合,前記ユーザの認証時に警告処理と認証処理の中止のいずれかを行う」のに対して,引用発明ではそのように特定していな点。
(2)相違点についての当審の判断
相違点4について検討すると,本願発明1の「前記警告処理又は認証処理を中止した場合に,認証を行ったユーザとともに前記警告履歴データベースに警告履歴を記録させる手段と,前記ユーザについて前記認証を行う際,当該ユーザの警告履歴を抽出する手段と前記抽出した警告履歴の数が,所定の閾値を超えていた場合,前記ユーザの認証時に警告処理と認証処理の中止のいずれかを行うこと」(以下,これを「相違点4に係る構成」という。)は,上記引用文献1-3には記載されておらず,本願出願前において周知技術であったともいえない。
したがって,他の相違点を判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2.本願発明2について
本願発明2は,本願発明1を減縮する発明であり,上記相違点4に係る構成を備えるものであるので,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
3.本願発明3及び本願発明4について
本願発明3及び本願発明4は,本願発明1のカテゴリ表現が異なるだけの発明であり,上記相違点4に係る構成を備えるものであるため,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7.原査定についての判断
最新の手続補正により,補正後の請求項1-4は,上記相違点4に係る構成を有するものとなった。上記相違点4に係る構成は,原査定における引用文献A-Cには記載されておらず,本願出願前における周知技術でもない。よって,本願発明1-4は,当業者であっても,原査定における引用文献A-Cに基づいて容易に発明できたものではない。
したがって,原査定を維持することはできない。
第8.当審拒絶理由について
1.特許法第17条の2第3項について
当審では,「ワンタイムパスワード受信手段」が「ワンタイムパスワード」のみを受信する態様を包含するとして,当初明細書等に記載されたものではないいとの拒絶の理由を通知しているが,最新の手続補正により「ワンタイムパスワードとユーザの識別子を受信するワンタイムパスワード受信手段」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。
2.特許法第36条第6項第2号について
当審では,「前記入力されたワンタイムパスワード」に関して,「前記」に相当する記載がないとの拒絶の理由を通知しているが,最新の手続補正により「前記受信したユーザ識別子を用いて,前記受信したワンタイムパスワードが有効であるか否かを識別するワンタイムパスワード識別手段」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。
3.特許法第36条第4項第1号,及び,同第6項第1号について
当審では,「ワンタイムパスワード受信手段」が,「ワンタイムパスワード」のみを受信する態様を包含するとして,本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではなく,本願明細書の発明の詳細な説明は,経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記述したものでないとの拒絶理由を通知しているが,最新の手続補正により「ワンタイムパスワードとユーザの識別子を受信するワンタイムパスワード受信手段」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。
4.特許法第29条第2項について
当審では,本願請求項1,2,4,5に係る発明は,引用例1-3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとの拒絶理由を通知しているが,最新の手続補正により,本願発明1-4に上記相違点4に係る構成を補正された結果,この拒絶の理由は解消した。
第9.むすび
以上のとおり,本願発明1-4は,当業者が引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明することができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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2016-018696