特許拒絶査定不服審判
2016-016888
蒸留装置とその制御方法
- 審判番号
- 2016-016888
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-251321外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年11月11日
- 審決日
- 2017年12月05日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】東洋エンジニアリング株式会社
- 【請求人代理人】宮崎 昭夫
- 【請求人代理人】緒方 雅昭
- 分類
- P18 .121-WY (B01D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-251321「蒸留装置とその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月29日出願公開、特開2014- 97474、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年11月15日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 4月26日付け:拒絶理由の通知
同年 6月 8日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月29日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
同年11月11日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願請求項1及び2に係る発明(それぞれ、「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成28年 6月 8日付けで手続補正がされた特許請求の範囲の請求項1及び2にそれぞれ記載された事項によって特定される以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
濃縮部の全部もしくは一部を含み、相対的に高圧で気液接触を行う高圧部と、
回収部の全部もしくは一部を含み、相対的に低圧で気液接触を行う低圧部と、
前記低圧部の塔頂蒸気を前記高圧部の塔底部に導くラインと、
前記高圧部の塔底液を前記低圧部の塔頂部に導くラインと、
濃縮部から回収部に熱を移動させる熱交換構造と
を含む蒸留装置の制御方法であって、
前記高圧部から前記低圧部に導かれる塔底液の流量を、缶出製品または留出製品の不純物濃度が所定の値以下になるよう調整された目標値に制御することを特徴とする
蒸留装置の制御方法。
【請求項2】
濃縮部の全部もしくは一部を含み、相対的に高圧で気液接触を行う高圧部と、
回収部の全部もしくは一部を含み、相対的に低圧で気液接触を行う低圧部と、
前記低圧部の塔頂蒸気を前記高圧部の塔底部に導くラインと、
前記高圧部の塔底液を前記低圧部の塔頂部に導くラインと、
濃縮部から回収部に熱を移動させる熱交換構造と
を含む蒸留装置であって、
前記高圧部の塔底液を前記低圧部に導くラインに、前記高圧部から前記低圧部に導かれる塔底液の流量を、缶出製品または留出製品の不純物濃度が所定の値以下になるよう調整された目標値に制御する流量制御手段を有することを特徴とする
蒸留装置。」
第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明1及び2は、下記の引用文献1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
引用文献1:特開2000-246001号公報
引用文献2:米国特許出願公開第2012/0085126号明細書
第4 引用文献の記載事項及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている。
1a「【特許請求の範囲】
【請求項1】本体胴内に配設された単管又は複数管(以下、単に「管」という)を、塔頂側及び塔底側の両端管板によって本体胴と連結させることにより、本体胴の内部において、管の内部(管内)と管の外部(管外)が隔離された構造とし、
前記管に気液の出入口を設け、
管内側と管外側の操作圧力に差をつけることにより操作温度を異ならせ、
前記管の管壁を伝熱面として、高圧側から低圧側に熱移動させることにより、高圧側が濃縮部、低圧側が回収部として機能するように構成された内部熱交換型蒸留塔であって、
濃縮部の塔頂蒸気(製品蒸気)と原料液とを熱交換させる熱交換手段を具備することを特徴とする内部熱交換型蒸留塔。
・・・ 」
1b「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、低圧塔と高圧塔を備え、高圧塔(濃縮部)側から、低圧塔(回収部)側に熱移動させることにより両者の間で熱交換を行う内部熱交換型蒸留塔に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】省エネルギー性に優れた蒸留塔として、低圧塔と高圧塔とを備え、両者の間で熱交換を行うように構成され、他との熱の授受を必要としない内部熱交換型の蒸留塔が知られている。 ・・・ 」
1c「【0019】
【発明の実施の形態】 ・・・ 図1は、本発明の内部熱交換型蒸留塔の概略構成を示す図である。 ・・・
【0020】この実施形態の内部熱交換型蒸留塔においては、高圧側(例えば管内)の濃縮部4から、低圧側(例えば管外)の回収部5に熱が移動するように構成されており、その濃度における沸点温度の原料液が、濃縮部4の塔頂蒸気(製品蒸気)と熱交換器20において熱交換され、回収部5の塔頂に供給されるとともに、塔頂蒸気は熱交換器20において凝縮し、製品として外部に取り出されるように構成されている。
【0021】なお、この内部熱交換型蒸留塔では、回収部5の塔頂蒸気は、圧縮手段21を経て高圧側の濃縮部4の塔底側に供給される。また、回収部5の塔底液はその一部が缶出液として外部に排出され、残りは、リボイラー22を経て回収部5の塔底に戻される。また、濃縮部4の塔底液は、流量調整弁(絞り弁)23を経て所定量が回収部5に供給されるように構成されている。」
1d「【図1】
」
(2)引用文献1に記載された発明
記載事項1a、1bによると、引用文献1は、内部熱交換型蒸留塔に関するものであり、濃縮部を構成し高圧で気液接触を行う高圧塔と、回収部を構成し低圧で気液接触を行う低圧塔とを備えた蒸留装置が記載されているといえる。
記載事項1a~1dによれば、低圧塔の塔頂蒸気を高圧塔の塔底に供給する配管と、高圧塔の塔底液を低圧塔の塔頂に供給する配管を備えているといえる。また、高圧側の濃縮部から低圧側の回収部に熱移動させて熱交換が行われるから、濃縮部から回収部に熱が移動するように構成した熱交換手段を備えているといえる。
そして、記載事項1c、1dによれば、高圧塔の塔底液を低圧塔の塔頂に供給する配管には、流量調整弁が設けられており、これにより塔底液の流量が制御されることは明らかであるから、高圧塔から低圧塔に供給される塔底液の流量を制御する蒸留装置の制御方法が記載されているといえる。
これらのことから、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
「濃縮部を構成し高圧で気液接触を行う高圧塔と、
回収部を構成し低圧で気液接触を行う低圧塔と、
前記低圧塔の塔頂蒸気を前記高圧塔の塔底に供給する配管と、
前記高圧塔の塔底液を前記低圧塔の塔頂に供給する配管と、
濃縮部から回収部に熱が移動するように構成した熱交換手段と、
を含む蒸留装置の制御方法であって、
前記高圧塔から前記低圧塔に供給される塔底液の流量を制御する
蒸留装置の制御方法。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
2a 「【0008】FIG.2 depicts a HIDiC unit operation 2000・・・. ・・・the rectifier and the stripper sections 2060 and 2030, respectively, in FIG.2 are located in a lateral position with additional provision for heat transfer from the rectifier to the stripper sections. A compressor 2010 is employed to compress the vapor from the stream 2020 exiting the stripping section 2030, which is the section defined by area below the feed 2040. The compression results in a higher temperature in the rectifier section 2060, which is generally the column 2080 shown on the right of FIG.2. A valve 2090 is provided to control the flow of the stream 2100 exiting the bottom of the rectifying section to a location in close proximity to the feed. The upper portion of the second column 2080 yields a vapor-rich stream 2110 which is directed to a condenser 2120 that yield a low volatile product 2130 and a reflux stream 2140, which is returned to the rectifier section 2060 .
【0009】 Upon transfer of heat from the rectifier section 2060 to the stripper section 2030, the stream 2100 providing liquid reflux functionality between the rectification and stripping sections is generated. The "reflux ratio" of the stream 2100 providing liquid reflux functionality is set by the column heat balance with proximate control based on level in the rectification section bottoms by valve 2090.」
(当審による仮訳)
「【0008】図2は、HIDiCの運転装置を示す。・・・ 図2の精留部2060と回収部2030は、それぞれ精留部から回収部へ熱移動を行うように横方向に配置されている。圧縮機2010は、原料2040よりも下部の領域として定義される回収部2030から出る蒸気2020を圧縮するために設けられている。この圧縮により、図2の右側に示される塔2080からなる精留部2060は高温となる。弁2090は、精留部2060の塔底から原料に近接した位置への流れ2100の流量を制御するために設けられる。第二の塔2080の上部は、精留部2060に戻る還流2140と低沸点生成物2130とを生成するコンデンサー2120に導かれる蒸気に富む流れ2110を与える。
【0009】精留部2060から回収部2030への熱伝導により、精留部と回収部との間で液体還流として機能する流れ2100が生じる。当該流れ2100の「還流比」は、弁2090による精留部の塔底液面に基づく直接制御による塔の熱収支で設定される。」)
2b 「
」
(2)引用文献2に記載された発明
記載事項2a、2bによると、引用文献2は、HIDiC、すなわち、内部熱交換型蒸留塔に関するものであり、精留部を備え高圧で気液接触を行う精留塔と、回収部を備え低圧で気液接触を行う回収塔とを備えた蒸留装置が記載されているといえる。
また、回収塔の塔頂蒸気を精留塔の塔底に導く配管と、精留塔の塔底液を回収塔の塔頂に導く配管とを備え、精留部から回収部に熱を移動させる熱移動手段とを備えているといえる。
そして、精留塔から回収塔の塔頂に導く配管における流れ2100の「還流比」は、配管に設けられた弁2090による精留塔の塔底液面に基づいた制御により設定されることから、精留塔から回収塔に導かれる塔底液の流量は、精留塔の塔底液面に基づいて制御する蒸留装置の制御方法が記載されているといえる。
これらのことから、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。
「精留部を備え高圧で気液接触を行う精留塔と、
回収部を備え低圧で気液接触を行う回収塔と、
回収塔の塔頂蒸気を前記精留塔の塔底に導く配管と、
精留塔の塔底液を前記回収塔の塔頂に導く配管と、
精留部から回収部に熱を移動させる熱移動手段と、
を含む蒸留装置の制御方法であって、
前記精留塔から前記回収塔に導かれる塔底液の流量を、精留塔の塔底液面に基づいて制御する
蒸留装置の制御方法。」
第5 対比・判断
(1)本願発明1について
本願発明1と、引用発明1、2をそれぞれ対比する。
引用発明1の「高圧塔」、「低圧塔」は、本願発明1の「高圧部」、「低圧部」にそれぞれ相当し、また、引用発明1の「塔底」、「配管」、「塔頂」、「熱交換手段」は、本願発明1の「塔底部」、「ライン」、「塔頂部」、「熱交換構造」にそれぞれ相当する。
また、引用発明2の「精留部」、「精留塔」、「回収塔」は、本願発明1の「濃縮部」、「高圧部」、「低圧部」にそれぞれ相当し、また、引用発明2の「塔底」、「配管」、「塔頂」、「熱移動手段」は、本願発明1の「塔底部」、「ライン」、「塔頂部」、「熱交換構造」に相当する。
そうすると、高圧部から低圧部に導かれる塔底液の流量について、
本願発明1は、「缶出製品または留出製品の不純物濃度が所定の値以下になるように調整された目標値に制御する」ことを特定事項(制御の指標)としているのに対して、
引用発明1は、上記塔底液の流量を何に基づいて制御するか明らかでない点で相違し、また、引用発明2は、塔底液面に応じて制御する点で相違している。
これらの相違点について検討すると、引用文献1及び2は、本願発明1の上記特定事項について何ら開示しておらず、また、蒸留装置の制御において、技術常識からして、製品組成の他に塔の圧力等を制御の指標とすることは普通に想定されるものの、上記特定事項(制御の指標)が本願出願前の自明の事項であるとはいえない。
そして、本願発明1は、「種々の外乱に対して製品純度を安定して維持できる」(本願明細書【0012】)という、引用文献1、2からは予測し得ない効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は、引用文献1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本願発明2について
本願発明2は、本願発明1に係る「蒸留装置の制御方法」に対応する「蒸留装置」の発明であって、本願発明1で特定する「塔底液の流量」の制御方法に対応させた具体的な流量制御手段を蒸留装置が具備することを特定しているものである。
そうすると、本願発明2も、上記(1)で検討した本願発明1と同様に、引用文献1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 原査定について
上記「第5(1)、(2)」に記載のとおり、本願発明1及び2は、拒絶査定において引用された引用文献1、2に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
したがって,原査定を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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