特許異議申立
2026-700082
合成燃料の製造方法
- 審判番号
- 2026-700082
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-115084
- 登録番号
- 7715554
- 請求日
- 2026年01月28日
- 審決日
- 2026年07月14日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】東洋エンジニアリング株式会社
- 【権利者代理人】古谷 聡
- 【異議申立人】矢菅 由布子
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 千弥子
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 山田 貴之
- 分類
- P1651.121-Y (C10J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7715554号発明「合成燃料の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7715554号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 本件特許に係る出願は、令和3年7月12日に出願され、令和7年7月22日に請求項1~5に係る特許の設定登録がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行されたところ、令和8年1月28日に特許異議申立人 矢菅 由布子(以下「申立人」という。)により全請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
2 その後の手続は以下のとおりである。
令和8年 3月19日付け 当審において取消理由通知
同年 5月20日 意見書の提出(特許権者)
第2 本件発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明5」といい、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
廃棄物と酸素と水とを高温で反応させてガス化し、二酸化炭素、一酸化炭素及び水素を含むガス化ガス(1)を生成するガス化工程(G)と、
少なくともガス化工程(G)において生成したガス化ガス(1)から二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離工程(S)と、
二酸化炭素分離工程(S)において二酸化炭素が分離された合成ガス(2)をフィッシャー・トロプシュ合成して合成燃料を生成するFT合成工程と、
を有する合成燃料の製造方法において、
さらに、二酸化炭素分離工程(S)において分離された二酸化炭素を電気分解して一酸化炭素及び二酸化炭素含む電解ガス(3)を生成する二酸化炭素電解工程(E)を有し、
二酸化炭素電解工程(E)において生成した電解ガス(3)を二酸化炭素分離工程(S)に供給し、ガス化ガス(1)及び電解ガス(3)から二酸化炭素を分離することを特徴とする合成燃料の製造方法。
【請求項2】
さらに、水を電気分解して酸素と水素を生成する水電解工程(WE)を有し、生成した水素をFT合成工程に供給し、生成した酸素をガス化工程(G)に供給する請求項1に記載の合成燃料の製造方法。
【請求項3】
さらに、空気から酸素を分離する酸素分離工程を有し、分離した酸素をガス化工程(G)に供給する請求項1又は2に記載の合成燃料の製造方法。
【請求項4】
既存の合成燃料の製造設備の装置において発生する二酸化炭素の大気中への排出量を低減する為の改良方法であって、
廃棄物と酸素と水とを高温で反応させてガス化し、二酸化炭素、一酸化炭素及び水素を含むガス化ガス(1)を生成するガス化装置(g)と、
少なくともガス化装置(g)において生成したガス化ガス(1)から二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離装置(s)と、
二酸化炭素分離装置(s)において二酸化炭素が分離された合成ガス(2)をフィッシャー・トロプシュ合成して合成燃料を生成するFT合成装置と、
を有する既存の合成燃料の製造設備に対して、
二酸化炭素分離装置(s)において分離された二酸化炭素を電気分解して一酸化炭素及び二酸化炭素を含む電解ガス(3)を生成する二酸化炭素電解装置(e)を追加し、
二酸化炭素電解装置(e)において生成した電解ガス(3)を二酸化炭素分離装置(s)に供給し、ガス化ガス(1)及び電解ガス(3)から二酸化炭素を分離することを特徴とする合成燃料の製造設備の改良方法。
【請求項5】
さらに、水を電気分解して酸素と水素を生成する水電解装置(we)を追加し、生成した水素をFT合成装置に供給し、生成した酸素をガス化装置(g)に供給する請求項4に記載の合成燃料の製造設備の改良方法。」
第3 特許異議申立ての理由及び当審が通知した取消理由の概要
1 申立人が申し立てた理由の要旨は、次のとおりである。
(1)甲第1号証を主引用例とする進歩性の欠如
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5、8、9号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)甲第6号証を主引用例とする進歩性の欠如
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明は、甲第6号証に記載された発明及び甲第1、4、5、7~9号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 当審において令和8年3月19日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)理由1(甲第6号証を主引用例とする進歩性の欠如)
本件特許の特許請求の範囲の請求項1、4に係る発明は甲6に記載された発明、甲6、7に記載された事項、及び周知技術に基いて、本件特許の特許請求の範囲の請求項2、3、5に係る発明は甲6に記載された発明、甲5~8に記載された事項、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第4 証拠方法等の一覧
甲第1号証:CHEMICAL ENGINEERING TRANSACTIONS, Vol.76, 2019年, 第1177頁~第1182頁
甲第2号証:環境技術, Vol.34, No.7, 2005年, 第522頁~第527頁
甲第3号証:密閉型ガス化炉によるヒノキ廃材の間接ガス化に関する研究-生成ガス組成に及ぼす水分率と圧力の影響-, 第23回廃棄物資源循環学会研究発表会, 2012年
甲第4号証:日本燃焼学会誌, 第47巻, 139号, 2005年, 第31頁~第39頁
甲第5号証:IEEJ, 2008年7月, 第1頁~第71頁
甲第6号証:三菱重工技報, Vol.53, No.4, 2016年, 第129頁~第132頁
甲第7号証:東芝レビュー, Vol.76, No.3, 2021年5月, 第26頁~第30頁
甲第8号証:特開2010-070763号公報
甲第9号証:特開2010-248459号公報
(以下、「甲第1号証」~「甲第9号証」を「甲1」~「甲9」ともいう。)
第5 当審における判断
1 文献等に記載された事項
(1)甲1
甲1には以下の事項が記載されている。なお、甲1は外国語によるものであるから、申立人による日本語訳及び特許異議申立書16頁に記載のFigure 1, 2の日本語訳にて記載する。
ア
「
[図:0001438304000001.jpg]
[図:0001438304000002.jpg]
」(第1177頁「1. Introduction」)
イ
「
[図:0001438304000003.jpg]
」(第1178頁「2.1 Plant description and modelling」)
ウ
「
[図:0001438304000004.jpg]
[図:0001438304000005.jpg]
」(第1179頁「3. Results and discussion」)
エ
「
[図:0001438304000006.jpg]
」(第1178頁「Figure 1」、第1180頁「Figure 2」)
(2)甲5
ア
「
[図:0001438304000007.jpg]
[図:0001438304000008.jpg]
」(第2頁「1-2-1 プロセスの概要」
イ
「
[図:0001438304000009.jpg]
」(第38頁「4-1-2 合成ガスの特徴」)
(3)甲6
ア
「
[図:0001438304000010.jpg]
[図:0001438304000011.jpg]
」(第129頁下から5行~第130頁3行「2.バイオジェット燃料製造プロセスの開発」)
イ
「
[図:0001438304000012.jpg]
」(第130頁図1)
ウ
「
[図:0001438304000013.jpg]
」(第131頁第8行~第14行「2.3. バイオマスガス化-FT合成一貫試験」)
エ
「
[図:0001438304000014.jpg]
」(第131頁図4)
オ
「
[図:0001438304000015.jpg]
」(第131頁表1)
(4)甲7
ア
「
[図:0001438304000016.jpg]
」(第27頁左欄第7行~第10行)
イ
「
[図:0001438304000017.jpg]
[図:0001438304000018.jpg]
[図:0001438304000019.jpg]
」(第27頁「2.1 固体高分子型電解セルの構成と特徴」)
(5)甲8
「【0032】
水素貯蔵器3中に貯蔵すべき水素Cは、水A、可能な場合には化学式H2Oを有する純水から、水素エネルギー貯蔵および生産ユニット1内の電気分解装置2によって製造される。一般に、化学および製造において、電気分解は、化学的に結合された元素および化合物を電流の通過によって分離する方法である。本発明の場合、電気分解装置2は、水Aを分離し、したがって2つの水分子H2Oは、2個の水素分子H2、参照符号Cおよび1個の酸素分子O2、参照符号Bを生じる。
【0033】
2個の水素分子H2は、水素貯蔵器33内でエネルギーキャリヤーとして貯蔵される。この水素貯蔵器3は、既にエネルギー貯蔵システムの一部分であることができ、このことについては、本明細書中でこれ以上論議しない。更に、貯蔵された水素は、一般に電動機および燃焼機関に動力を供給するために使用されることができる。特に、水素は、本発明において合成ガスの化学組成を変性するために使用され、燃焼のために最適化された製品、製品Mが形成されるか、または選択可能な方法の場合には、化学工業のための化学製品、例えばエタノールが形成される。」
「【0036】
前述のエネルギー貯蔵システム中で製造された酸素Bは、このシステム中では不要である。しかし、この酸素は、簡単には廃棄されず、排気ガスとして処理される。ガス化ユニット5による酸素の必要性が電気分解装置2からの供給された酸素Bに適合しないならば、可能な場合には、さらに場合による酸素Eを酸素Bに供給することによって、酸素Bは、酸素Fとしてガス化ユニット5に通過される。酸素Eは、場合によっては空気分離ユニット4によって形成されることができ、酸素を周囲空気Dから、例えば極低温処理によって分離し、したがって酸素は、空気Dから分離されることができる。極低温処理が主に空気の温度の減少のために大量のエネルギーを消費するという事実のために、このシステムは、有利に付加的な酸素Eを全く必要としないかまたはごく僅かに付加的な酸素Eを必要とする方法で制御される。従って、空気分離ユニット4は、必要でなくともよく、その結果、空気分離ユニット4がシステム中に構成されていないならば、殆んどエネルギーは消費されず、複雑で高価な空気分離ユニット4は、構成される必要はなく、システムの全効力の程度を減少された費用で上昇させることができる。
【0037】
酸素Fの必要性は、合成ガスJを製造するためのガス化ユニット5中で処理することができる原料物質Iのタイプに依存して酸素の量の点で変動することができる。ガス化は、炭素質材料、例えば石炭、石油、またはバイオマス、精油所からの残渣、廃棄物、スラリー、またはこれらの組合せをガス状の形に変換する1つの方法であり、合成ガスは、主に、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、メタン、窒素ならびに原料、即ち供給原料Iを高い温度で制御された量の酸素、即ち酸素Fおよび/または蒸気と反応させることによる蒸気から構成されている。生じるガス混合物は、合成物または合成ガスJまたは"syngas(合成ガス)"であり、それ自体が燃料である。」
「【0046】
本発明は、電気分解装置2からの発生された酸素Bおよび発生された水素G1の使用を可能にし、酸素または水素を別々の発生させる処理工程に取って代わることを可能にする。理想的には、本発明は、有利にこのような電気分解装置を有するエネルギー貯蔵システム、例えば水素ガス貯蔵器および動力プラントと組み合わせることができる。このようなシステムにおいて、水素ガス貯蔵器は、動力プラントに接続されていてよい。好ましくは、電気分解装置は、高圧電気分解装置である。」
「【0056】
本発明は、燃料を支持するエネルギー貯蔵システム、即ちガス化システムが電気分解装置による酸素および/または水素を提供し、この電気分解装置がとにかくエネルギー貯蔵システムのために存在し、貯蔵されるべきエネルギー製品、例えば水素を発生させるならば、殊に有利である。これは、エネルギー貯蔵システムによって提供される燃料ガス化法のために酸素の使用を可能にする。その上、エネルギー貯蔵器中で製造された水素の画分は、燃料ガス化法で使用されることができ、生成物の生産量を増加させる。 付加的に、生成物の生産量は、増加させることができ、システムの複雑さは、全てのシステムに対して減少させることができる。更に、これは、殊にバイオマスを原料として使用するならば、経済的な価値に最適化する、よりいっそう小型のシステムを建造することを可能にする。」
「【図1】
[図:0001438304000020.jpg]
」
2 甲6に記載された発明
甲6の第129頁下から5行~第130頁3行「2.バイオジェット燃料製造プロセスの開発」、図1、表1に着目すると、甲6には以下の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明A)
「木質バイオマスが粉砕された状態でガス化炉に投入され、H2とCOを主成分とする合成ガスとなり、その後、冷却、精製工程を経て、FT合成に寄与しないCO2が脱炭酸にて回収された後、FT合成により炭化水素を生成する方法であって、ガス化炉でバイオマス処理を行う際のガス化剤が酸素・水蒸気であるFT合成により炭化水素を生成する方法。」
また、甲6の第129頁下から5行~第130頁3行「2.バイオジェット燃料製造プロセスの開発」、第131頁第8行~第14行「2.3. バイオマスガス化-FT合成一貫試験」、図1、図4、表1に着目すると、甲6には以下の発明(以下「引用発明B」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明B)
「バイオマスガス化-FT合成一貫試験設備であって、木質バイオマスが粉砕された状態で投入され、H2とCOを主成分とする合成ガスが生成されるガス化炉と、その後、冷却、精製工程を経て、FT合成に寄与しないCO2が脱炭酸にて回収された後、FT合成により炭化水素を生成するFT合成設備とからなり、ガス化炉でバイオマス処理を行う際のガス化剤が酸素・水蒸気であるFT合成により炭化水素を生成するバイオマスガス化-FT合成一貫試験設備。」
3 取消理由1(甲6を主引用例とする進歩性の欠如)について(前記第3 2(1)の取消理由及び前記第3 1(2)の特許異議申立ての理由に相当)
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と引用発明Aを対比する。
(ア)引用発明Aの「H2とCOを主成分とする合成ガス」は、CO2が脱炭酸にて回収された後、FT合成に用いられているため、当該合成ガスは、H2とCOの他にCO2を含んでいると認められる。
そうすると、引用発明Aの「木質バイオマスが粉砕された状態でガス化炉に投入され、H2とCOを主成分とする合成ガスとなり」及び「ガス化炉でバイオマス処理を行う際のガス化剤が酸素・水蒸気である」は、木質バイオマスをガス化炉に投入することにより合成ガスを生成しているため、高温で反応させているといえるから、本件発明1の「廃棄物と酸素と水とを高温で反応させてガス化し、二酸化炭素、一酸化炭素及び水素を含むガス化ガス(1)を生成するガス化工程(G)」と「合成ガス生成原料と酸素と水とを高温で反応させてガス化し、二酸化炭素、一酸化炭素及び水素を含むガス化ガス(1)を生成するガス化工程(G)」の点で共通する。
(イ)引用発明Aの「FT合成に寄与しないCO2が脱炭酸にて回収された後、FT合成により炭化水素を生成する」は、FT合成はフィッシャー・トロプシュ合成を指し、FT合成により生成された炭化水素からはジェット燃料などの合成燃料が回収されるから(甲6の第130頁図1)、本件発明1の「少なくともガス化工程(G)において生成したガス化ガス(1)から二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離工程(S)」及び「二酸化炭素分離工程(S)において二酸化炭素が分離された合成ガス(2)をフィッシャー・トロプシュ合成して合成燃料を生成するFT合成工程」に相当する。
(ウ)してみると、本件発明1と引用発明Aは、
「合成ガス生成原料と酸素と水とを高温で反応させてガス化し、二酸化炭素、一酸化炭素及び水素を含むガス化ガス(1)を生成するガス化工程(G)と、
少なくともガス化工程(G)において生成したガス化ガス(1)から二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離工程(S)と、
二酸化炭素分離工程(S)において二酸化炭素が分離された合成ガス(2)をフィッシャー・トロプシュ合成して合成燃料を生成するFT合成工程と、
を有する合成燃料の製造方法。」の点で一致し、以下の点(「相違点1」及び「相違点2」)で相違する。
(相違点1)
本件発明1は、「さらに、二酸化炭素分離工程(S)において分離された二酸化炭素を電気分解して一酸化炭素及び二酸化炭素含む電解ガス(3)を生成する二酸化炭素電解工程(E)を有し、二酸化炭素電解工程(E)において生成した電解ガス(3)を二酸化炭素分離工程(S)に供給し、ガス化ガス(1)及び電解ガス(3)から二酸化炭素を分離する」方法であるのに対し、引用発明Aは、そのような方法でない点。
(相違点2)
本件発明1は、合成ガス生成原料が「廃棄物」であるのに対し、引用発明Aは、「木質バイオマス」である点。
イ 事案に鑑み、まず、相違点1について検討する。
(ア)二酸化炭素電解工程(E)について
甲7には、施設から排出されたCO2を分離回収し、COに電気分解し、得られたCOをH2と反応させて合成燃料などを生成できること、また、その例として、当該得られたCOをH2と反応させてFT合成して、燃料を製造できることが記載されている(甲7の第27頁左欄第7行~第10行、図3)。
すなわち、甲7には、施設から排出された二酸化炭素を電気分解して一酸化炭素を生成し、生成した一酸化炭素をFT合成して合成燃料を生成する工程が記載されているところ、二酸化炭素の電気分解により得られる電解ガスには、一酸化炭素の他、未反応の二酸化炭素も含まれるといえる。
そうすると、甲7には、施設から排出された二酸化炭素を電気分解して、一酸化炭素と二酸化炭素を含む電解ガスを生成し、生成した電解ガスをFT合成して合成燃料を生成する工程が記載されているといえる。
一方、引用発明Aは、甲7と同様に、FT合成により合成燃料を製造する方法であり、脱炭酸にて回収されたCO2(二酸化炭素)は、施設から排出された二酸化炭素であるから、甲7の記載によれば、引用発明Aにおいて、脱炭酸にて回収されたCO2(二酸化炭素)を電気分解して、一酸化炭素及び二酸化炭素を含む電解ガスを生成すること、すなわち、引用発明Aにおいて、上記相違点1のうち、「二酸化炭素分離工程(S)において分離された二酸化炭素を電気分解して一酸化炭素及び二酸化炭素含む電解ガス(3)を生成する二酸化炭素電解工程(E)」を設けることは、当業者が容易に想到し得るといえる。
(イ)電解ガス(3)から二酸化炭素を分離することについて
そこで、さらに進んで、引用発明Aにおいて、「二酸化炭素電解工程(E)において生成した電解ガス(3)を二酸化炭素分離工程(S)に供給し、ガス化ガス(1)及び電解ガス(3)から二酸化炭素を分離する」ことが、当業者が容易に行うことであるか、について検討すると、甲7には、二酸化炭素電解工程において生成した電解ガスをFT合成工程に用いるにあたり、電解ガスから二酸化炭素を分離する工程は記載されていない(甲7の図3の「CO2電解」→「CO」→「合成ガス(CO+H2)」→FT合成→「燃料(ジェット燃料など)」参照。)。
そうすると、甲7の記載からは、電解ガスから二酸化炭素を分離することが動機付けられるとはいえない。
また、仮に、電解ガスから二酸化炭素を分離するとしても、引用発明Aにおいて、木質バイオマスを投入したガス化炉から得られた合成ガスからCO2を脱炭酸にて回収する工程(相違点1における「二酸化炭素分離工程(S)」に相当)に電解ガスを供給して二酸化炭素を分離する理由は見当たらないから、引用発明Aにおいて、「二酸化炭素電解工程(E)において生成した電解ガス(3)を二酸化炭素分離工程(S)に供給」することは、当業者が容易に行うこととはいえない。
加えて、電解ガスから二酸化炭素を分離するにあたり、木質バイオマスを投入したガス化炉から得られた合成ガス(相違点1における「ガス化ガス(1)」に相当)と一緒に二酸化炭素を分離する、すなわち、「ガス化ガス(1)及び電解ガス(3)」から二酸化炭素を分離する理由も見当たらないから、引用発明Aにおいて、「ガス化ガス(1)及び電解ガス(3)から二酸化炭素を分離する」ことが、当業者が容易に行うことともいえない。
そして、甲1~9の記載を検討しても、引用発明Aにおいて、「二酸化炭素電解工程(E)において生成した電解ガス(3)を二酸化炭素分離工程(S)に供給し、ガス化ガス(1)及び電解ガス(3)から二酸化炭素を分離する」ことを動機づけるに足る理由は見当たらない。
(ウ)まとめ
以上のとおりであるから、引用発明Aにおいて、「さらに、 二酸化炭素分離工程(S)において分離された二酸化炭素を電気分解して一酸化炭素及び二酸化炭素含む電解ガス(3)を生成する二酸化炭素電解工程(E)を有し、二酸化炭素電解工程(E)において生成した電解ガス(3)を二酸化炭素分離工程(S)に供給し、ガス化ガス(1)及び電解ガス(3)から二酸化炭素を分離する」ことは、当業者が容易に行うことではない。
ウ 相違点1についての申立人の主張について
(ア)申立人の主張の概要
申立人は、令和8年1月28日提出の異議申立書51頁において、「そうすると、甲6発明のようなバイオマスガス化-FT合成システムに対し、さらなるCO2削減と炭素利用効率向上のために甲7技術事項を適用して、脱炭酸により回収されたCO2を電解してCOに転化し、これをFT合成の原料として用いるとともに、さらに甲1の教示に基づき、得られた電解ガスをシステム内の上流側の分離工程(脱炭酸)に戻してCO2再循環を実現することは、当業者が容易に想到し得ることである。なお、甲6発明において、甲1の教示に基づき、既存の分離工程(脱炭酸)に電解ガス(CO+CO2)を供給して未反応のCO2を再度分離するようにすることは、脱炭酸装置の共用化によるプロセス統合の合理的な設計変更に過ぎない。」(以下「主張1」という。)と主張している。
そこで、前記主張1について検討する。
(イ)主張1について
前記イで記載したとおり、引用発明Aにおいて、「二酸化炭素電解工程(E)において生成した電解ガス(3)を二酸化炭素分離工程(S)に供給し、ガス化ガス(1)及び電解ガス(3)から二酸化炭素を分離する」ことは、当業者が容易に行うことではなく、甲1~9の記載を検討しても、それを動機づけるに足る理由は見当たらない。
申立人は、システム内の上流側の分離工程(脱炭酸)に戻すことは当業者が容易に想到し得ることであると主張するが、甲7に記載された電気分解により得られるガス(相違点1における電解ガス(3)に相当)を、引用発明Aにおける、木質バイオマスを投入したガス化炉から得られた合成ガス(相違点1におけるガス化ガス(1)に相当)とあえて一緒にして、二酸化炭素を分離すること、すなわち、システム内の上流側の分離工程(脱炭酸)に戻すことを動機付ける理由が見当たらないことは、上記イのとおりである。
また、甲1によればCO2再循環を実現することは、当業者が容易に行うことであるとしても、引用発明Aにおいて、「二酸化炭素電解工程(E)において生成した電解ガス(3)を二酸化炭素分離工程(S)に供給し、ガス化ガス(1)及び電解ガス(3)から二酸化炭素を分離する」ことが、当業者が容易に行うことではないことは、上記イのとおりである。
よって、主張1は採用できない。
エ 小括
そうすると、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6に記載された発明、並びに甲1、甲4~甲9に記載された事項、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件発明1に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。
(2)本件発明2、3
本件発明2、3は、いずれも本件発明1に対して、それぞれ個別の技術事項を追加したものである。そうすると、本件発明2、3は、前記(1)に示した理由と同様の理由により、甲6に記載された発明、並びに甲1、甲4~甲9に記載された事項、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明2、3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。
(3)本件発明4
ア 対比
本件発明4と引用発明Bを対比する。
(ア)引用発明Bの「バイオマスガス化-FT合成一貫試験設備」は、FT合成により生成する炭化水素が合成燃料であるジェット燃料留分を含むから(甲6の第131頁第8行~第14行)、本件発明4の「既存の合成燃料の製造設備」及び「既存の合成燃料の製造設備の装置」に相当する。
(イ)引用発明Bの「H2とCOを主成分とする合成ガス」は、CO2が脱炭酸にて回収された後、FT合成に用いられているため、当該合成ガスは、H2とCOの他にCO2を含んでいると認められる。
そうすると、引用発明Bの「木質バイオマスが粉砕された状態で投入され、H2とCOを主成分とする合成ガスが生成されるガス化炉」及び「ガス化炉でバイオマス処理を行う際のガス化剤が酸素・水蒸気である」は、木質バイオマスをガス化炉に投入することにより合成ガスを生成しているため、高温で反応させているといえるから、本件発明4の「廃棄物と酸素と水とを高温で反応させてガス化し、二酸化炭素、一酸化炭素及び水素を含むガス化ガス(1)を生成するガス化装置(g)」と「合成ガス生成原料と酸素と水とを高温で反応させてガス化し、二酸化炭素、一酸化炭素及び水素を含むガス化ガス(1)を生成するガス化装置(g)」の点で共通する。
(ウ)引用発明Bの「FT合成に寄与しないCO2が脱炭酸にて回収された後、FT合成により炭化水素を生成するFT合成設備」は、FT合成はフィッシャー・トロプシュ合成を指し、FT合成により生成された炭化水素は上記(ア)のとおり合成燃料であるジェット燃料留分を含むから、本件発明4の「二酸化炭素が分離された合成ガス(2)をフィッシャー・トロプシュ合成して合成燃料を生成するFT合成装置」に相当する。
(エ)してみると、本件発明4と引用発明Bは、
「既存の合成燃料の製造設備の装置であって、
合成ガス生成原料と酸素と水とを高温で反応させてガス化し、二酸化炭素、一酸化炭素及び水素を含むガス化ガス(1)を生成するガス化装置(g)と、
二酸化炭素が分離された合成ガス(2)をフィッシャー・トロプシュ合成して合成燃料を生成するFT合成装置と、
を有する既存の合成燃料の製造設備。」の点で一致し、以下の点(「相違点3」~「相違点6」)で相違する。
(相違点3)
本件発明4は、「既存の合成燃料の製造設備の装置において発生する二酸化炭素の大気中への排出量を低減する為の改良方法」であるのに対し、引用発明Bは、二酸化炭素の大気中への排出量を低減する為の改良方法ではない点。
(相違点4)
本件発明4は、合成ガス生成原料が「廃棄物」であるのに対し、引用発明Bは、「木質バイオマス」である点。
(相違点5)
本件発明4は、「少なくともガス化装置(g)において生成したガス化ガス(1)から二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離装置(s)」を備えているのに対し、引用発明Bは、FT合成に寄与しないCO2を脱炭酸にて回収しているが、二酸化炭素分離装置(s)を備えていることが特定されていない点。
(相違点6)
本件発明4は、「二酸化炭素分離装置(s)において分離された二酸化炭素を電気分解して一酸化炭素及び二酸化炭素を含む電解ガス(3)を生成する二酸化炭素電解装置(e)を追加し、二酸化炭素電解装置(e)において生成した電解ガス(3)を二酸化炭素分離装置(s)に供給し、ガス化ガス(1)及び電解ガス(3)から二酸化炭素を分離する」製造設備の改良方法であるのに対し、引用発明Bは、そのような製造設備の改良方法ではない点。
イ 事案に鑑み、まず、相違点6について検討する。
前記(1)イと同様に、引用発明Bにおいて、「二酸化炭素分離装置(s)において分離された二酸化炭素を電気分解して一酸化炭素及び二酸化炭素を含む電解ガス(3)を生成する二酸化炭素電解装置(e)を追加し、二酸化炭素電解装置(e)において生成した電解ガス(3)を二酸化炭素分離装置(s)に供給し、ガス化ガス(1)及び電解ガス(3)から二酸化炭素を分離する」ことは、当業者が容易に行うことではない。
ウ 相違点6についての申立人の主張について
相違点6についての申立人の主張については、前記(1)ウと同様に、採用できない。
エ 小括
そうすると、相違点3~5について検討するまでもなく、本件発明4は、甲6に記載された発明、並びに甲1、甲4~甲9に記載された事項、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件発明4に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。
(4)本件発明5
本件発明5は、本件発明4に対して、個別の技術事項を追加したものである。そうすると、本件発明5は、前記(3)に示した理由と同様の理由により、甲6に記載された発明、並びに甲1、甲4~甲9に記載された事項、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件発明5に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。
4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由(甲1を主引用例とする進歩性の欠如)について(前記第3 1(1)の特許異議申立ての理由に相当)
(1)甲1に記載された発明
甲1のFigure 1、第1177頁「1. Introduction」、第1178頁「2.1 Plant description and modelling」に着目し、SOECについて、第1177頁「1. Introduction」の記載を参酌すると、甲1には以下の発明(以下「引用発明C」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明C)
「バイオマスを乾燥機による乾燥、熱分解、粒子及び硫黄の除去、プレ改質器によるプレ改質、SOEC(固体酸化物形電解セル)によるガス中のメタンのH2及びCOへの改質、電気加熱式流動層チャーガス化炉にて行われるチャーの蒸気及びCO2含有分による合成ガス化、粒子の除去、アミン洗浄によるAGR(酸性ガス除去)並びに乾燥したCO2希薄合成ガスを用いたメタノール合成の順で処理する、メタノール合成方法。」
(引用発明D)
「バイオマスを乾燥機による乾燥、熱分解、粒子及び硫黄の除去、プレ改質器によるプレ改質、SOEC(固体酸化物形電解セル)によるガス中のメタンのH2及びCOへの改質、電気加熱式流動層チャーガス化炉にて行われるチャーの蒸気及びCO2含有分による合成ガス化、粒子の除去、アミン洗浄によるAGR(酸性ガス除去)並びに乾燥したCO2希薄合成ガスを用いたメタノール合成の順で処理する、メタノール合成装置。」
(2)本件発明1
ア 対比
本件発明1と引用発明Cを対比する。
(ア)引用発明Cの合成ガスは、CO2希薄合成ガスであるため、CO2を含んでいると認められる。
そうすると、引用発明Cの「電気加熱式流動層チャーガス化炉にて行われるチャーの蒸気及びCO2含有分による合成ガス化」は、電気加熱式流動層チャーガス化炉により合成ガス化を行っているため、高温で反応させているといえるから、本件発明1の「廃棄物と酸素と水とを高温で反応させてガス化し、二酸化炭素、一酸化炭素及び水素を含むガス化ガス(1)を生成するガス化工程(G)」と、「合成ガス生成原料と水とを高温で反応させてガス化し、二酸化炭素を含むガス化ガス(1)を生成するガス化工程(G)」の点で共通する。
(イ)引用発明Cの「アミン洗浄によるAGR(酸性ガス除去)並びに乾燥したCO2希薄合成ガスを用いたメタノール合成」は、AGR(酸性ガス除去)によりCO2の分離を行っており、CO2希薄合成ガスを用いて合成されたメタノールは合成燃料であるから(甲1の第1177頁「1.Introduction」における第4行~第6行)、本件発明1の「少なくともガス化工程(G)において生成したガス化ガス(1)から二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離工程(S)」「を有する合成燃料の製造方法」に相当する。
(ウ)してみると、本件発明1と引用発明Cは、
「合成ガス生成原料と水とを高温で反応させてガス化し、二酸化炭素を含むガス化ガス(1)を生成するガス化工程(G)と、
少なくともガス化工程(G)において生成したガス化ガス(1)から二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離工程(S)と、
を有する合成燃料の製造方法。」の点で一致し、以下の点(「相違点7」~「相違点9」)で相違する。
(相違点7)
本件発明1は、「廃棄物と酸素と水とを高温で反応させてガス化し、二酸化炭素、一酸化炭素及び水素を含むガス化ガス(1)を生成するガス化工程(G)」を有しているのに対し、引用発明Cは、合成ガス生成原料としてバイオマスを用いている点、合成ガス化の際に、酸素を用いているか不明である点、及び、ガス化ガスに一酸化炭素及び水素が含まれていることが特定されていない点。
(相違点8)
本件発明1は、「二酸化炭素分離工程(S)において二酸化炭素が分離された合成ガス(2)をフィッシャー・トロプシュ合成して合成燃料を生成するFT合成工程」を有しているのに対し、引用発明Cは、FT合成工程を有しておらず、メタノール合成工程を有している点。
(相違点9)
本件発明1は、「さらに、二酸化炭素分離工程(S)において分離された二酸化炭素を電気分解して一酸化炭素及び二酸化炭素含む電解ガス(3)を生成する二酸化炭素電解工程(E)を有し、二酸化炭素電解工程(E)において生成した電解ガス(3)を二酸化炭素分離工程(S)に供給し、ガス化ガス(1)及び電解ガス(3)から二酸化炭素を分離」しているのに対し、引用発明Cは、そのようなものではない点。
イ 事案に鑑み、まず、相違点8について検討する。
引用発明Cは、CO2希薄合成ガスを用いるメタノール合成方法であり、甲1の記載を検討しても、当該合成ガスを用いてFT合成を行うことは記載も示唆もされていない。
この点、甲5には、第1段階で原料となる炭化水素源を分解して合成ガス(CO+H2)をつくり、第2段階で合成ガスからFT合成を行うか、メタノールやLPGと性質が似たDME(ジメチルエーテル)など単一製品を行うかによって反応温度・条件などプロセスの詳細は若干異なることが記載されている(甲5の第2頁「1-2-1 プロセスの概要」)。
すなわち、前記のとおり、甲5には、FT合成を行うか、メタノールなど単一製品を行うかによって反応温度・条件などプロセスの詳細は若干異なることが記載されているから、甲5に接した当業者が、メタノール合成を行う引用発明Cにおいて、プロセスの条件を変更して、メタノール合成に替えて、FT合成を行うように動機付けられるものではない。
また、甲2~4、6~9において、引用発明Cにおける合成ガスからのメタノール合成に替えて、FT合成を行うように動機づけるに足る記載も示唆も見当たらない。
ウ 相違点8についての申立人の主張について
(ア)申立人の主張の概要
申立人は、令和8年1月28日提出の異議申立書41頁において、「例えば甲5に記載されるように、合成ガス(CO+H2)から燃料を合成するに際して、目的生産物に応じて、FT合成やメタノール合成等の種々のプロセスを選択可能であることは周知であった(甲5技術事項1)。そうすると、甲1発明において、例えば甲5に記載された周知技術に基づいて、目的生産物に応じて、メタノール合成に替えて、FT合成(フィッシャー・トロプシュ合成)を行うことは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎず、当業者にとって何ら困難性を伴うものではない。」(以下「主張2」という。)と主張している。
そこで、前記主張2について検討する。
(イ)主張2について
前記イで記載したとおり、甲5には、FT合成を行うか、メタノールなど単一製品を行うかによって反応温度・条件などプロセスの詳細は若干異なることが記載されているから、甲5に接した当業者が、メタノール合成を行う引用発明Cにおいて、プロセスの条件を変更して、メタノール合成に替えて、FT合成を行うように動機付けられるものではない。
また、甲2~4、6~9において、合成ガスからのメタノール合成に替えて、FT合成を行うように動機づけるに足るその他記載も示唆も見当たらない。
よって、主張2は採用できない。
エ 小括
そうすると、相違点7、9について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明、並びに甲1~甲5、8、9に記載された事項、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件発明1に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。
(3)本件発明2、3
本件発明2、3は、いずれも本件発明1に対して、それぞれ個別の技術事項を追加したものである。そうすると、本件発明2、3は、前記(2)に示した理由と同様の理由により、甲1に記載された発明、並びに甲1~甲5、8、9に記載された事項、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明2、3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。
(4)本件発明4
ア 対比
上記(2)アと同様に、本件発明4と引用発明Dを対比する。
(ア)CO2希薄合成ガスを用いて合成されたメタノールは合成燃料であるから、引用発明Dの「メタノール合成装置」は、本件発明4の「既存の合成燃料の製造設備」及び「既存の合成燃料の製造設備の装置」に相当する。
(イ)引用発明Dの「合成ガス」は、CO2希薄合成ガスであるため、CO2を含んでいると認められる。
そうすると、引用発明Dの「電気加熱式流動層チャーガス化炉にて行われる蒸気及びCO2含有分による合成ガス化」は、電気加熱式流動層チャーガス化炉により合成ガス化を行っているため、高温で反応させているといえるから、本件発明4の「廃棄物と酸素と水とを高温で反応させてガス化し、二酸化炭素、一酸化炭素及び水素を含むガス化ガス(1)を生成するガス化装置(g)」と、「合成ガス生成原料と水とを高温で反応させてガス化し、二酸化炭素を含むガス化ガス(1)を生成するガス化装置(g)」の点で共通する。
(ウ)引用発明Dの「アミン洗浄によるAGR(酸性ガス除去)並びに乾燥したCO2希薄合成ガスを用いたメタノール合成」は、AGR(酸性ガス除去)によりCO2の分離を行っており、CO2希薄合成ガスを用いて合成されたメタノールは合成燃料であるから、本件発明4の「少なくともガス化装置(g)において生成したガス化ガス(1)から二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離装置(s)」及び「二酸化炭素分離装置(s)において二酸化炭素が分離された合成ガス(2)を」「合成して合成燃料を生成する」「合成装置」に相当する。
(エ)してみると、本件発明4と引用発明Dは、
「既存の合成燃料の製造設備の装置であって、
合成ガス生成原料と水とを高温で反応させてガス化し、二酸化炭素を含むガス化ガス(1)を生成するガス化装置(g)と、
少なくともガス化装置(g)において生成したガス化ガス(1)から二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離装置(s)と、
二酸化炭素分離装置(s)において二酸化炭素が分離された合成ガス(2)を合成して合成燃料を生成する合成装置と、
を有する既存の合成燃料の製造設備。」の点で一致し、以下の点(「相違点10」~「相違点13」)で相違する。
(相違点10)
本件発明4は、「既存の合成燃料の製造設備の装置において発生する二酸化炭素の大気中への排出量を低減する為の改良方法」であるのに対し、引用発明Dは、二酸化炭素の大気中への排出量を低減する為の改良方法ではない点。
(相違点11)
本件発明4は、「廃棄物と酸素と水とを高温で反応させてガス化し、二酸化炭素、一酸化炭素及び水素を含むガス化ガス(1)を生成するガス化装置(g)」を有しているのに対し、引用発明Dは、合成ガス生成原料として、バイオマスを用いている点、合成ガス化の際に、酸素を用いているか不明である点、及び、ガス化ガスに一酸化炭素及び水素が含まれていることが特定されていない点。
(相違点12)
本件発明4は、「二酸化炭素分離装置(s)において二酸化炭素が分離された合成ガス(2)をフィッシャー・トロプシュ合成して合成燃料を生成するFT合成装置」を有しているのに対し、引用発明Dは、FT合成装置を有しておらず、メタノール合成装置を有している点。
(相違点13)
本件発明4は、「二酸化炭素分離装置(s)において分離された二酸化炭素を電気分解して一酸化炭素及び二酸化炭素を含む電解ガス(3)を生成する二酸化炭素電解装置(e)を追加し、二酸化炭素電解装置(e)において生成した電解ガス(3)を二酸化炭素分離装置(s)に供給し、ガス化ガス(1)及び電解ガス(3)から二酸化炭素を分離」しているのに対し、引用発明Dは、そのような方法ではない点。
イ 事案に鑑み、相違点12について検討する。
前記(2)イのとおり、甲5に接した当業者が、メタノール合成を行う引用発明Dにおいて、プロセスの条件を変更して、メタノール合成に替えて、FT合成を行うように動機付けられるものではない。
また、甲2~4、6~9において、引用発明Dにおける合成ガスからのメタノール合成に替えて、FT合成を行うように動機づけるに足る記載も示唆も見当たらない。
ウ 相違点12についての申立人の主張について
相違点12についての申立人の主張については、前記(2)ウと同様に、採用できない。
エ 小括
そうすると、相違点10、11、13について検討するまでもなく、本件発明4は、甲1に記載された発明、並びに甲1~甲5、8、9に記載された事項、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件発明4に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。
(5)本件発明5
本件発明5は、本件発明4に対して、個別の技術事項を追加したものである。そうすると、本件発明5は、前記(4)に示した理由と同様の理由により、甲1に記載された発明、並びに甲1~甲5、8、9に記載された事項、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件発明5に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。
第6 むすび
前記第5のとおり、本件発明に係る特許は、前記第3 1(1)、(2)の特許異議申立ての理由、前記第3 2(1)の取消理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2026-700082