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特許拒絶査定不服審判

2016-016679

電動インパルススクリュードライバ

審判番号
2016-016679
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-505658
請求日
2016年11月07日
審決日
2018年11月13日
公報発行日
2019年05月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】エタブリスマン・ジョルジュ・ルノー
  • 【請求人代理人】奥山 尚一
  • 【請求人代理人】有原 幸一
  • 【請求人代理人】松島 鉄男
  • 【請求人代理人】河村 英文
  • 【請求人代理人】中村 綾子
  • 【請求人代理人】森本 聡二
  • 【請求人代理人】田中 祐
  • 【請求人代理人】徳本 浩一
審判長/審判官
  • 審判長 西村 泰英
  • 審判官 平岩 正一
  • 審判官 中川 隆司
分類
P18 .121-WZ (B25B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2014-505658「電動インパルススクリュードライバ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月26日国際公開、WO2012/143532、平成26年6月19日国内公表、特表2014-514174〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2012年(平成24年)4月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年4月21日 (FR)フランス共和国)を国際出願日とする外国語書面出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成27年 9月14日付け:拒絶理由通知 平成28年 2月18日  :意見書、手続補正書の提出 平成28年 7月 4日付け:拒絶査定(同年同月8日送達) 平成28年11月 7日  :審判請求書、同時に手続補正書の提出 平成30年 2月 5日付け:拒絶理由通知 平成30年 8月 6日  :手続補正書の提出 平成30年 8月 7日  :意見書の提出 第2 本願発明 平成30年8月6日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである(以下、その請求項1に記載された発明を「本願発明」という。)。 「【請求項1】 ハウジング(5)と、 ロータ(10)を有するモータ手段(1)であって、その一定速度における最大トルクはCmaxであるモータ手段と、 比R及び効率μを有する減速ギヤ(3)を備えた変速機構によって回転駆動することができる先端部材(2)であって、前記変速機構は、前記モータ手段(1)に組み付けられ、機能的な角度クリアランスを有する、先端部材と、 設定トルク値Ccに達したことを検出する少なくとも1つのトルクセンサ(6)と、 インパルスモードにおいて前記モータ手段(1)を駆動する手段(4)であって、前記駆動する手段は連続的な電流インパルスを前記モータ手段(1)に供給し、各インパルスは前記クリアランスを吸収する前記ロータの加速をもたらすものである、駆動する手段とを備え、 前記変速機構は、前記クリアランスの各吸収の際に運動エネルギーEcを前記ロータ内に蓄積し、前記クリアランスが吸収されると前記運動エネルギーEcを次のインパルスまでに前記先端部材(2)へ伝達できるようにすることが可能であり、前記モータ手段(1)及び前記減速ギヤ(4)は、R*μ*Cmax<Ccであるように構成され、前記運動エネルギーEcが締め付けられるべきねじに伝達されることにより前記設定トルク値Ccに達し、 前記比Rは10N・m/(μCmax)以下であり、Cc>20N・mであることを特徴とする電動スクリュードライバ。 【請求項2】 前記減速ギヤは1段のみを有する遊星タイプのものであることを特徴とする請求項1に記載のスクリュードライバ。 【請求項3】 前記変速機構は、前記モータ手段の前記ロータ(10)がインパルス中に自由に加速し、運動エネルギーEcを蓄積できるようにする角度クリアランスを組み込んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載のスクリュードライバ。 【請求項4】 請求項1~3のいずれか一項に記載のスクリュードライバであって、前記変速機構は、前記トルクセンサによって該スクリュードライバの前記ハウジングに回転可能に連結されるリングギヤを備えることを特徴とするスクリュードライバ。 【請求項5】 前記変速機構は、0.5N.m/度以上の剛性を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のスクリュードライバ。」 第3 拒絶の理由 平成30年2月5日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由2は、次のとおりのものである。 本願の請求項1~3に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2006-315125号公報 引用文献2:国際公開第2010/016185号 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。 (1)「【0001】 本発明は、インパクト式のネジ締め装置の制御方法および装置に関し、特に、片手持ちに適するように反力を軽減したネジ締め装置に関する。」 (2)「【0011】 特許文献1のネジ締め装置によると、モータに電流を間欠的に供給してモータがパルス状のトルクを発生するように構成されている。これによって作業者への反力が小さいにもかかわらず精度が良好であり、作業者が片手でネジ締め作業を行うことができる。 【0012】 しかし、ネジ締め作業における締付トルクの精度の向上とネジ締めに要する時間の短縮について本発明者らは鋭意研究を行い、上のネジ締め装置の改良を行った。 【0013】 したがって、本発明の目的は、電動式のモータを回転駆動源とするインパクト式のネジ締め装置において、締付トルクの精度の向上とネジ締めに要する時間の短縮を図ることである。」 (3)「【0024】 図1において、ネジ締め装置1は、ネジ締め装置本体3、および、サーボドライバ7と制御用コントローラ8とを有した制御装置4からなる。 【0025】 ネジ締め装置本体3は、モータ11、衝撃発生装置12、トルクセンサ13、エンコーダ14、出力軸15、および、図示しないケーシング、スイッチなどからなる。 【0026】 モータ11には、例えば、3相のACサーボモータが用いられる。衝撃発生装置12は、モータ11の回転力を間歇的な衝撃力に変換する衝突エネルギ発生機構である。衝撃発生装置12として種々の機構が用いられるが、本実施形態では遊星ギヤなどからなる減速ギヤが用いられている。遊星ギヤのバックラッシュ(遊び)およびジョイント部などの遊びが、衝撃発生のために利用される。つまり、遊星ギヤなどの高速側が何回転か回転する間に、低速側のギヤが遊びの分だけ回転し、低速側で噛み合ったギヤ同士が実際に当たったときに衝撃を発生する。高速側が回転する間に蓄えられた慣性力によって大きな衝撃となる。衝撃発生装置12として、他に、2ハンマ機構、スウィングハンマ機構、その他のハンマ機構、オイルパルス機構などを用いることができる。2ハンマ機構を用いた場合は、モータ11の1回転で2打撃となる。スウィングハンマ機構を用いた場合には、1回転で1打撃となり、1打撃の出力が大きい。これらの衝撃発生装置12は公知である。 【0027】 トルクセンサ13は、モータ11によるネジの締付トルクTQを検出し、検出信号S31を出力する。本実施形態では、モータ11の出力するトルクのうち、出力軸15に発生するトルク、つまり負荷であるネジを締付けるトルク(締付トルク)を直接的に検出する。したがって、トルクセンサ13から得られる検出信号S31は、衝撃発生装置12による衝撃によってネジに加えられる実際の締付トルクTQの波形を表すことになる。 【0028】 エンコーダ14は、モータ11の回転速度を検出するためのものであり、モータ11の回転数に比例した個数のパルス信号を出力する。 【0029】 ネジ締め装置本体3は、作業者が片手で握るためのハンドルグリップ部を有し、全体として片手で操作が可能な形状のケーシングで覆われている。図示しないスイッチを操作することによって、電源のオンオフが制御される。」 (4)「【0049】 運転制御モード切替え部52は、速度制御モードと電流制御(トルク制御)モードとを切り替える。 【0050】 速度制御モードでは、モータ11の回転速度が、速度指令データD1Sにより設定された速度となるように制御を行う。負荷が変動しても、設定された速度となるように、モータ11に流れる電流を制御する。速度制御モードでは、電流のリミット値を設けることができる。電流のリミット値により、電流の最大値が制限される。したがって、負荷の状態によっては、設定された速度に達しない場合がある。 【0051】 電流制御モードでは、モータ11に流れる電流が、電流指令データD1Tにより設定された電流値となるように制御を行う。モータ11の回転速度は、設定された電流値と負荷の状態とによって変化する。電流制御モードでは、回転速度のリミット値を設けることができる。モータ11の回転速度がリミット値に達すると、電流値が制限される。 【0052】 切り替え器26によって、速度制御モードでは速度指令データD3が選択され、電流制御モードでは電流指令データD1Tが選択される。 【0053】 自動運転時の締付け動作において、最初は速度制御モードで運転を行い、出力軸15を高速回転させる。出力軸15に発生する締付トルクTQが予め設定された着座トルクTSに達したときに、負荷であるネジが着座したと判断し、電流制御モードに切り替える。電流制御モードでは、電流指令データD1Tにより示される出力トルクが得られるように、モータ11に流れる電流を制御する。」 (5)「【0059】 まず、締付トルクTQの反力を低減するための制御(無反力制御)について説明する。 【0060】 ネジ締め装置本体3は、そのハンドルグリップ部を作業者が握り、片手で持って操作する。作業者への反力を低減するために、モータ11の作動を、電流が連続的に流れる連続運転ではなく、パルス状の電流による間欠運転とする。 【0061】 すなわち、図9に示すように、指令データD1(電流指令データD1T)により、モータ11に対して、パルス状の電流(電流パルスDP)を間欠的に供給する。電流パルスDPは、可変設定可能なオン時間TNとオフ時間TFとを有し、所定の周期、つまりオン時間TNとオフ時間TFとの合計時間の周期で繰り返される。電流パルスDPの高さについては、後で説明するようにトルク2段制御が行われる。 【0062】 図9において、電流パルスDPがオンすることによってモータ11が回転を開始し、徐々に回転速度が上昇する。モータ11が所定の角度または所定の回転数だけ回転すると、衝撃発生装置12において、回転する入力側の部材が出力側の部材に衝突し、これによって衝撃が発生する。つまり、衝撃発生装置12における入力側の部材の慣性エネルギーが、当該部材の衝突によって出力側の部材に衝撃力として伝達され、その衝撃力によって大きなトルクを発生させる。このトルクが、負荷であるネジに締付トルクTQとして作用する。衝撃の瞬間timpから短時間の間、例えば0.01~0.005sec程度の間に、入力側の部材の慣性エネルギーのほとんどが出力側の部材に伝達され、ネジに伝達される。これによってモータ11の回転速度はほぼ零まで低下する。そして、その後に、モータ11の回転が再開され、次の衝撃のための慣性エネルギーが蓄えられることになる。 【0063】 さて、本実施形態では、衝撃の瞬間timpに、またはその微小幅の前後、特に微小幅の後に、モータ11に流れる電流を停止する。つまりモータ11への電力の供給を停止する。電流を停止するタイミングとして、モータ11の回転速度が最大となったタイミングを用いる。例えば、モータ11の回転速度が上昇から下降に転換するタイミングを検出する。そのための検出方法として、例えば、一定の短い時間間隔tsで回転速度をサンプリングし、サンプリング値が前回のサンプリング値よりも小さくなったときに、回転速度が最大となったものとする。実際には、ノイズなどによる誤検出を防止するため、サンプリング値が複数回(例えば3回)連続して前回よりも小さくなったときに、回転速度が最大となったことを検出する。このようにして検出されたタイミングで電流パルスDPがオフとなるように、電流指令データD1Tを作成する。なお、時間間隔tsは、例えば0.5msecに設定される。 【0064】 このように、モータ11の回転速度が最大となったときにモータ11への電力の供給を停止することにより、衝撃の発生後の無駄な締付トルクを生成することがなくなり、作業者に作用する反力は、概ね、衝撃の瞬間timpにおいてモータ11が発生している瞬間的なトルクのみとなる。これにより、作業者への反力が大幅に低減する。 【0065】 すなわち、もし、衝撃の発生後においてもオン時間TNが経過するまでモータ11に電流を供給し続けた場合には、その電流によってトルクが発生し、これが作業者への反力として作用する。この反力つまりその電流によって発生するトルクは、ネジの締付けにはほとんど寄与しない。本実施形態の制御によると、この無駄な締付トルクTQをほとんどゼロにすることができ、これによって作業者への反力を大幅に低減することができる。」 (6)「【0069】 図6に示すように、締付け動作は、時刻t0~t2の間の速度制御モードによる動作、および時刻t2~t4の間の電流制御モードによる動作からなる。 【0070】 図2において、まず、速度制御モードによる速度制御が行われる(#11)。速度制御では、速度指令データD1Sによってモータ11の回転速度が設定される。速度指令値が徐々に増大され、モータ11の回転速度も増大する。所定の回転速度になると、一定値に維持される。これによって、モータ11が高速回転し、ネジの着座までの仮締めが行われる。その間において、締付トルクTQが計測開始トルクを越えると、計測を開始する。 【0071】 締付トルクTQが着座トルクTSに達すると(#12でイエス)、ネジが着座したと判断し、モータ11を急停止させる(#13)。 【0072】 モータ11を急停止させるために、モータ11の速度指令値をゼロとし、且つモータ11をロックするための電流を流してブレーキをかける。そして、電流制御モードに切り替える(#14)。 【0073】 電流制御モードでは、まず、モータ11に対して、空転回転に必要な最小の電流値ST1を電流指令データD1Tとして設定する(#15)。 【0074】 そして、締付トルクTQが目標トルクTQJに達するまでの間(#17でノー)、電流制御を行う(#16)。 【0075】 締付トルクTQが目標トルクTQJに達すると(#17でイエス)、モータ11を停止させる(#18)。モータ11を停止させるために、電流パルスDPの供給を停止し、モータ11に流れる電流をゼロにする。 【0076】 そして、最終の締付トルクTQおよびそれまでに現れた最大値TQMについて、設定された上下限値の範囲内に入っているか否かを判定し、判定結果を表示装置の表示面に表示する(#19)。 【0077】 電流制御では、電流指令データD1Tによってモータ11に流れる電流が設定される。モータ11に流れる電流の大きさに応じて、モータ11の立ち上がり、つまり回転速度が決まり、これに応じて衝撃による締付トルクTQの大きさが決まる。」 (7)「【0082】 図4において、最大回転検出処理では、モータ11の回転速度が最大となったタイミングを検出する。つまり、サンプリング値が前回のサンプリング値よりも小さくなったときに(#31でイエス)、カウンタのカウント値に「1」を加える(#32)。カウント値が「3」になったときに(#33でイエス)、最大回転検出フラグを「1」にする(#34)。ステップ#31においてサンプリング値が前回よりも小さくならなかったときには(#31でノー)、カウント値を「0」にする(#35)。 【0083】 この処理によって最大回転検出フラグが「1」になっている場合に、図3のステップ#27においてイエスとなり、電流指令データD1Tすなわち電流パルスDPがオフとなる。 【0084】 つまり、図8に示すように、各電流パルスDPについて、モータ11の回転速度が最大となったときに、その電流パルスDPをオフするように制御する。 【0085】 なお、このように、サンプリング値が複数回(ここでは3回)連続して前回よりも小さくなったときに回転速度が最大となったことを検出するので、ノイズなどによる誤検出が防止される。」 2 引用文献1に記載された技術的事項 上記1から,引用文献1には,次の技術的事項が記載されている。 (1)引用文献1に記載された技術は,インパクト式のネジ締め装置の制御方法に関し(【0001】),作業者への反力を小さくし(【0011】),ネジ締めに要する時間の短縮を図ることを課題としたものである(【0013】)。 (2)ネジ締め装置本体3はモータ11,ケーシングなどからなる(【0025】)。 (3)【図1】から,モータ11に結合、すなわち組み付けられる,衝撃発生装置12によって回転駆動することができる出力軸15が,看取される。そして、衝撃発生装置12は、バックラッシュ(遊び)およびジョイント部などの遊びが、衝撃発生のために利用される遊星ギヤなどからなり、遊星ギヤなどの高速側が何回転か回転する間に、低速側のギヤが遊びの分だけ回転し、低速側で噛み合ったギヤ同士が実際に当たったときに衝撃を発生し、高速側が回転する間に蓄えられた慣性力によって大きな衝撃となるような構成を有しているものである(【0026】)。 また、【図9】において、電流パルスDPがオンすることによってモータ11が回転を開始し、徐々に回転速度が上昇する。モータ11が所定の角度または所定の回転数だけ回転すると、衝撃発生装置12において、回転する入力側の部材が出力側の部材に衝突し、これによって衝撃が発生する。つまり、衝撃発生装置12における入力側の部材の慣性エネルギーが、当該部材の衝突によって出力側の部材に衝撃力として伝達され、その衝撃力によって大きなトルクを発生させるものである(【0062】)。 これらの記載からすると、回転する入力側の部材が出力側の部材に衝突することによって、すなわちバックラッシュ(遊び)がなくなる(吸収される)ことによって、衝撃が発生するものと理解できる。 (4)ネジ締めの目標トルクTQJに達したことを検出する(【0075】)トルクセンサ13を有する(【0027】)。 (5)間欠的に電流パルスDPをモータに供給する(【0061】)電流制御モードにおいてモータ11を駆動する(【0053】)制御装置4(【0024】)であって、電流パルスDPは繰り返し供給されているのであるから連続的である(【図6】、【図7】、【図8】)。 3 引用発明 上記1及び2から,引用文献1には,次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「ケーシングと, モータ11と, 減速ギヤを備えた衝撃発生装置12によって回転駆動することができる出力軸15であって,前記衝撃発生装置12は、前記モータ11に組み付けられ,前記衝撃発生装置12は、衝撃発生のために利用される遊星ギヤなどからなるバックラッシュ(遊び)を有し、そのような前記衝撃発生装置12によって回転駆動される出力軸15と、 ネジ締めの目標トルクTQJに達したことを検出する少なくとも1つのトルクセンサ13と, 電流制御モードにおいてモータ11を駆動する制御装置4であって、制御装置4は連続的な電流パルスDPをモータ11に供給し、電流パルスDPは、バックラッシュ(遊び)を吸収する前記モータ11の回転速度の上昇をもたらすものである、制御装置4とを備え、 前記衝撃発生装置12は、前記バックラッシュ(遊び)の吸収の際に、慣性エネルギーを衝撃発生装置のモータ11側である高速側が回転する間に蓄え、前記バックラッシュ(遊び)が吸収されると前記慣性エネルギーを次の電流パルスDPまでに前記出力軸15へ伝達できるようにすることが可能であるネジ締め装置本体。」 4 引用文献2の記載 (1)「この時、DCモータ3はコントローラにより断続制御されるので、減速機4のギヤ部やジョイント部などのバックラッシュを活用することによりインパクト効果が生まれ、トルクアップが図れる。また、例えば0.1msecなどの断続時間(オン/オフ時間)を設定することにより、締付反力が作業者の腕に伝わる前に回転と停止が繰り返えされ、反力の軽減が図れる。」(段落[0041]) (2)「本発明に係るねじ締付装置によれば、DCモータ3の出力側に直接クラッチ5を接続したことにより、DCモータ3の出力を従来よりも低く抑えることができるため、DCモータ3、クラッチ5を小型化することができる。したがって、装置本体1が従来のものより小型・軽量になる。例えば、30N・mの締付トルクが必要な場合における装置本体1の大きさと重さを従来のものと比較すると次のようになる。」(段落[0047]) 第5 対比 1 本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「ケーシング」,「ネジ締め装置本体」は,本願発明の「ハウジング(5)」,「電動スクリュードライバ」に相当する。 (2)引用発明の「モータ11」は,ロータを当然に含むので,本願発明の「ロータ(10)を有するモータ手段(1)」に相当する。 (3)引用発明の「減速ギヤを備えた衝撃発生装置12によって回転駆動することができる出力軸15」について,減速ギヤは,遊星ギヤなどの高速側が何回転か回転する間に,低速側のギヤが回転することから,ギヤ比があることは明らかであり,ギヤに効率があることも技術常識であるから,本願発明の「比R及び効率μを有する減速ギヤ(3)を備えた変速機構によって回転駆動することができる先端部材(2)」に相当する。 (4)本願発明の「機能的な角度クリアランス」について検討する。本願明細書の段落【0028】には「従来、スクリュードライバの変速機構は、ピニオンの効率的な動作のために必要とされる機能的な(角度)クリアランスを含む。モータのステータが電流インパルスを供給されるとき、ステータは角度クリアランスの限度内でロータを加速させ、その後、遊びが吸収されると、ロータはその運動エネルギーを衝撃としてねじに伝達し、それにより、トルクインパルスを生成する。」と記載されており、本願発明における「機能」とは、「運動エネルギーを衝撃と」することであり、「クリアランス」とは一般的な用語としての「遊び」と同様のことを意味していると理解できる。 そうすると、引用発明の「衝撃発生のために利用される遊星ギヤなどからなるバックラッシュ(遊び)」は、本願発明の「機能的な角度クリアランス」に相当する。 (5)本願発明の「設定トルクCc」について,本願明細書の段落【0007】における「出力トルクが設定トルク値、すなわち、達成されるべき締付け目標」との記載を参照すると,「設定トルクCc」は目標とされるねじの締付けトルクを意味するので,引用発明の「ネジ締めの目標トルクTQJ」は,本願発明の「設定トルクCc」に相当する。 (6)引用発明の「ネジ締めの目標トルクTQJに達したことを検出するトルクセンサ13」は,本願発明の「設定トルク値Ccに達したことを検出する少なくとも1つのトルクセンサ(6)」に相当する。 (7)引用発明の「電流制御モードにおいてモータ11を駆動する制御装置4」は,本願発明の「インパルスモードにおいて前記モータ手段(1)を駆動する手段(4)」に相当する。 (8)引用発明の「制御装置4は連続的な電流パルスDPをモータ11に供給し」は、本願発明の「前記駆動する手段は連続的な電流インパルスを前記モータ手段(1)に供給し」に相当する。 (9)引用発明の「電流パルスDPは、バックラッシュ(遊び)を吸収する前記モータ11の回転速度の上昇をもたらすものである」は、本願発明の「各インパルスは前記クリアランスを吸収する前記ロータの加速をもたらすものである」に相当する。 (10)引用発明の「前記衝撃発生装置12は、前記バックラッシュ(遊び)の吸収の際に、慣性エネルギーを衝撃発生装置のモータ11側である高速側が回転する間に蓄え」は、本願発明の「前記変速機構は、前記クリアランスの各吸収の際に運動エネルギーEcを前記ロータ内に蓄積し」に相当する。 (11)引用発明の「前記バックラッシュ(遊び)が吸収されると前記慣性エネルギーを次の電流パルスDPまでに前記出力軸15へ伝達できるようにする」は、本願発明の「前記クリアランスが吸収されると前記運動エネルギーEcを次のインパルスまでに前記先端部材(2)へ伝達できるようにする」に相当する。 2 以上のことから,本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。 <一致点> 「ハウジング(5)と, ロータ(10)を有するモータ手段(1)と, 比R及び効率μを有する減速ギヤ(3)を備えた変速機構によって回転駆動することができる先端部材(2)であって、前記変速機構は、前記モータ手段(1)に組み付けられ、機能的な角度クリアランスを有する、先端部材と、 設定トルク値Ccに達したことを検出する少なくとも1つのトルクセンサ(6)と, インパルスモードにおいて前記モータ手段(1)を駆動する手段(4)であって、前記駆動する手段は連続的な電流インパルスを前記モータ手段(1)に供給し、各インパルスは前記クリアランスを吸収する前記ロータの加速をもたらすものである、駆動する手段とを備え、 前記変速機構は、前記クリアランスの各吸収の際に運動エネルギーEcを前記ロータ内に蓄積し、前記クリアランスが吸収されると前記運動エネルギーEcを次のインパルスまでに前記先端部材(2)へ伝達できるようにすることが可能である,電動スクリュードライバ。」 <相違点1> 本願発明では,「一定速度における最大トルクはCmaxであるモータ手段」であるのに対して,引用発明では,モータ11の最大トルクについては不明である点。 <相違点2> 本願発明では,「前記モータ手段(1)及び前記減速ギヤ(4)は、R*μ*Cmax<Ccであるように構成され、前記運動エネルギーEcが締め付けられるべきねじに伝達されることにより前記設定トルク値Ccに達」するのに対して,引用発明では,衝撃発生装置12の減速ギヤ比及び効率と目標トルクTQJとの関係は不明である点。 <相違点3> 本願発明では,「Cc>20N.m」であるのに対して,引用発明は,目標トルクTQJについて値の範囲を規定していない点。 <相違点4> 本願発明では,「比Rは10N・m/(μCmax)以下」であるとしているが,引用発明では,減速ギヤの比について値の範囲を規定していない点。 第6 判断 以下,相違点について検討する。 1 相違点1について 「Cmax」の具体的な値については、「Cmax」に関する数式が示されている相違点2及び4の判断で検討するが、無限大のトルクを発生するモータはあり得ないのであるから、モータが最大トルクを有することは当然のことであり、相違点1は、実質的な相違点ではない。 2 相違点2について 引用文献1の段落【0062】には,「・・・電流パルスDPがオンすることによってモータ11が回転を開始し、徐々に回転速度が上昇する。モータ11が所定の角度または所定の回転数だけ回転すると、衝撃発生装置12において、回転する入力側の部材が出力側の部材に衝突し、これによって衝撃が発生する。つまり、衝撃発生装置12における入力側の部材の慣性エネルギーが、当該部材の衝突によって出力側の部材に衝撃力として伝達され、その衝撃力によって大きなトルクを発生させる。このトルクが、負荷であるネジに締付トルクTQとして作用する。衝撃の瞬間timpから短時間の間、例えば0.01~0.005sec程度の間に、入力側の部材の慣性エネルギーのほとんどが出力側の部材に伝達され、ネジに伝達される。これによってモータ11の回転速度はほぼ零まで低下する。そして、その後に、モータ11の回転が再開され、次の衝撃のための慣性エネルギーが蓄えられることになる。」と記載されている。 衝撃の瞬間timpから短時間の間に,入力側の部材の慣性エネルギーのほとんどが出力側の部材に伝達されてモータ11の回転速度はほぼ零まで低下し,その後にモータ11の回転が再開されて次の衝撃のための慣性エネルギーが蓄えられるのであるから,2つの衝撃の間に慣性エネルギーをモータに直結されたロータに蓄積していることは明らかである。 そして,「衝撃発生装置12」は,モータ11の回転速度が最大となったタイミングを用いて慣性エネルギーを衝撃として締付トルクTQを発生させ,当該締付トルクTQが目標トルクTQJに達するまでの間,電流制御を行い,締付トルクTQが目標トルクTQJに達すると,モータ11を停止させるものである。 ここで,引用文献1の【図6】に係る技術について、当業者が理解するところについて、より詳細に検討する。締付トルクTQは、【図1】に示されているように、モータ11のトルクが、衝撃発生装置12を経由して、出力軸15に加えられた結果として得られるネジの締付トルクである。 上記第4の1(6)に摘記した段落【0070】、【0071】の記載によると、【図6】の速度制御モードでは、電流がパルス状ではなく連続的に加えられ,「速度/電流指令」が、「設定速度」とする一定の値になった状態で、「締付トルク(TQ)」が「TS」となると、モータを急停止させることが理解できる。 すなわち、「締付トルク(TQ)」が「TS」を超えることがないようにモータは制御されているものであり、「衝撃発生装置12」のギヤ比を「R」、効率を「μ」とすると、「締付トルク(TQ)」が「TS」となったときにモータが発生しているトルクであるTS/(R×μ)が、モータの最大トルクとなる。 そうすると、モータの最大トルクをCmaxとすれば、Cmax=TS/(R×μ)であり、式を変形すれば、TS=R×μ×Cmaxとなる。 そして、そもそもインパクト式の電動ドライバは、モータを回転させるだけではTSのトルクしか発生させられないところ衝撃を利用することによりTQJのトルクを発生させることができるものであるから、TS<TQJであるから、引用発明においても、「R×μ×Cmax<TQJ」となる制御を行っていることとなる。 してみると,相違点2に係る事項を,実質的に引用発明も有しているといえ,相違点2は,実質的な相違点ではない。 なお、「Cmax」が、モータに実際に発生させている最大トルクではなく、モータ単体の性能と考えたとしても、求められるトルクに対して必要以上に大きなモータを選択することは通常行わないことであるから、相違点2に困難性があったものとは認められない。 3 相違点3について 目標トルクTQJをいくつにするかは,締め付けるネジなどの対象物によって適宜決定される事項にすぎないところ,引用文献2には,30N・mという値が示されており(引用文献2の段落[0047]),引用発明において目標トルクTQJを例えば30N・mに設定することは、締め付け対象に応じて適宜設定しうる程度の事項であり、困難性があったものとは認められない。 4 相違点4について 本願発明において,比Rが「10N・m/(μCmax)以下」であるという特定をしているが、数式を変形すると「R×μ×Cmax」が10N・m以下であることを意味しているにすぎない。 そして、上記2のとおり、R×μ×Cmax=TSであるところ、引用文献1及び2に示されたバックラッシュを利用した場合に,どの程度のトルクアップが図れるのかは明らかではないが,バックラッシュを利用しない場合に比べて,より多くのトルクが出力として得ることが可能であることは,当業者であれば当然に理解できる事項であり,例えば,目標トルクTQJを上記3のように30N・mとしたときに,TSを10N・m以下にすることの困難性について検討する。 一般的に、手で押し込んでも釘を打つことはできないが、金槌を使えば釘が打てるように、衝撃による力というのは相当大きいことは、技術者であれば当然に認識している事項である。 そして、周知技術としての例えば、特公昭61-33671号公報の第2ページ右欄第34-43行の「ハンマー部材による力学的エネルギーの蓄積時間は衝突の時間(ハンマー部材によつて蓄えられたエネルギーをスピンドルへ伝達するための時間)よりはるかに大きいので、スピンドルに発生する力は駆動モーターのシヤフトにおける力よりも400~500倍の大きなものとなる。そしてこのことは小さい質量で非常に高出力の衝撃装置を製作することを可能にする。回転衝撃工具の他の重要な利点は作業者の手に伝わる反動トルクが少ないという点である。」、特公昭62-29185号公報の第2ページ右欄第29-32行の「エアーモータ2がカム121を介してハンマー122を回転駆動し、該ハンマー122の打撃によつてエアーモータ2の回転力を数百倍にも高めてアンビル125を回転させるものである。」、特開平8-267369号公報の段落【0009】の「図3~図5は、パルスツールの一例としてのねじ締めツール11を示す。このねじ締めツール11は手持ち式のツールとして構成され、そのケーシング12は本体部13とハンドル部14とを備えている。本体部13の内部には、回転駆動源としての電動モータ15と、この電動モータ15によって駆動される油圧式のパルス力発生装置16とが設けられている。電動モータ15には、角度センサ17が機械的に接続されている。パルス力発生装置16は、電動モータ15から供給される連続的なトルクをインパルス状のトルクに変換するもので、電動モータ15のトルク値をピーク値で50~100 倍に増幅可能である。」の記載からすると、引用文献1におけるTQJはTSに比べて桁違いに大きくすることが可能であることは当然に認識されることであり、引用発明において、目標トルクTQJを30N・mとしたときに,TSを10N・m以下とすることは、当業者であれば当然に考慮することであり、相違点4にも格別の困難性は認められない。 したがって,本願発明は,引用発明、引用文献1及び2記載の事項並びに周知技術に基づいて当業者であれば容易に想到し得たことである。 第7 請求人の主張について 平成30年8月7日提出の意見書の主張について検討する。 1.従来技術との対比テストについて 意見書の「4 理由2(進歩性)について」欄に次の記載がされている。 「(3)本発明の技術的効果のデモンストレーション ア はじめに 審判請求人は、本発明の技術的効果すなわち締付け時の操作者に対する反動トルクの低減という効果を示すためのテストを行いました。その詳細を以下に申し述べます。 イ 本発明の技術的効果 本発明の主な技術的効果は、先に述べましたように、インパルスモードによる締付け時の操作者に対する反動トルクの大幅な低減です。この効果を、対比テストを通して以下に示します。」 まず、「操作者に対する反動トルクの大幅な低減」については、引用文献1の段落【0001】に「本発明は、インパクト式のネジ締め装置の制御方法および装置に関し、特に、片手持ちに適するように反力を軽減したネジ締め装置に関する。」と記載されているとおり、引用発明も有している効果にすぎない。 また、意見書の表1-2に「従来型」として、「R*μ*Cmax」が「40.2Nm」であり、「設定トルク値」が「25Nm」の例が示されている。 ここで、引用文献1の【図6】を参照すると、そもそもインパクト式の電動ドライバは、モータを回転させるだけではTSのトルクしか発生させられないところ衝撃を利用することによりTQJのトルクを発生させることができるものである。 上記表1-2の「本発明1」は「R*μ*Cmax」が「7.5Nm」であるので、引用文献1の【図6】に当てはめるとTSが7.5Nmであるにも関わらず、TQJとして25Nmのトルクを発生させることができるものと理解できる。しかしながら、「従来型」については、TSが40.2Nmであり、インパルスを用いなくても25Nmの締め付けが行えるような大トルクのドライバーを前提としており、大トルクである以上反力が大きいのはあたりまえであるから、この対比テストは、当審の判断に影響しない。 2.モータの公称トルク及び変速機構の比の低減について 意見書の「4 理由2(進歩性)について」の「(4)特許性」の欄に、「(ウ)モータの公称トルクCmaxの低減について」及び「(エ)変速機構の比Rの低減について」の項目が記載されている。 この点について検討すると、上記「第6 判断」の「4 相違点4について」において言及したように、本願の請求項1の記載は「R×μ×Cmax」が10N・m以下であることを意味しているにすぎない。 ここで、「μ」はほぼ1に近い値なので、「1」と仮定すると、「Cmax」が2N・mであるならば、「R」は5以下、「Cmax」が0.2N・mであるならば、「R」は50以下ということを意味しているにすぎず、例えば「R」を小さくするというような、何らかの特定がなされているものではない。 そうすると、「モータの公称トルクCmax」及び「変速機構の比R」を低減させることは、請求項の記載に基づく主張ではないので、採用することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明、引用文献1及び2記載の事項並びに周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-016679

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