特許拒絶査定不服審判
2016-015919
空気入りタイヤの製造方法
- 審判番号
- 2016-015919
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-555324外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年10月25日
- 審決日
- 2017年07月24日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】住友ゴム工業株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人 安富国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (B29D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-555324号「空気入りタイヤの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月21日国際公開、WO2016/060243、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2015年10月16日(優先権主張2014年10月17日、日本国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成28年 2月26日付け 拒絶理由通知
4月25日 意見書、手続補正書の提出
7月21日付け 拒絶査定
10月25日 審判請求書及び手続補正書の提出
平成29年 4月 5日付け 拒絶理由通知
6月 8日 意見書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
[原査定の概要]
本願の請求項1~5に係る発明は、以下の引用文献A~Cに記載された発明及び周知の技術(引用文献E~G参照)に基いて、また、本願の請求項1~6に係る発明は、以下の引用文献B~Dに記載された発明及び周知の技術(引用文献E~G参照)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献A:特開昭53-55802号公報
引用文献B:特表2010-528131号公報
引用文献C:特開昭58-93612号公報
引用文献D:特開2003-190756号公報
引用文献E:特開2001-18609号公報
引用文献F:特開2002-347418号公報
引用文献G:特開昭53-60002号公報
第3 当審の拒絶理由の概要
平成29年4月5日付けで当審において通知した拒絶理由の概要は次のとおりである。
[当審の拒絶理由の概要]
本願の請求項1~6に係る発明は、以下の引用文献1~3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開昭58-93612号公報 (原査定の引用文献C)
引用文献2:特開2003-190756号公報(原査定の引用文献D)
引用文献3:特表2010-528131号公報(原査定の引用文献B)
第4 本願発明
本願の請求項1~6に係る発明(以下、「本願発明1~6」という。)は、平成29年6月8日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願発明1は次のとおりのものである。
「【請求項1】
有機過酸化物を含む原料を二軸混練押出機により混合することにより順次調製されるシーラント材を順次タイヤの内周面に連続的にらせん状に、らせん状に塗布されるシーラント材同士が幅方向に重ならないように、隙間なく塗布することを特徴とし、
塗布後のシーラント材の幅が0.8mm~18mm、塗布後のシーラント材の断面積が0.8mm2~180mm2である空気入りタイヤの製造方法。」
なお、本願発明2~6は、本願発明1を減縮した発明である。
第5 引用文献
1.引用文献1に記載された事項及び引用発明1
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付したものである。以下同様。
(1a)
「(11) 一つの軸の回りに回転できる、一対の環状のビード部と一つのクラウン部の間にサイドウオールが入つたトロイダル形の、空気入りタイヤの裏うちとしてパンクシール材の層を付加する方法であつて、
パンクシール材の連続した帯の第1の端を前記タイヤの第1の円周上位置において前記タイヤの内面に布設し、接着し、
前記の帯で少くとも存在すべき第1のターンを、第1の軸方向位置において、前記タイヤの円周に沿つて一つの環状体を形成するように布設、接着し、
その帯の第1のクロス部を、一般に上記タイヤの円周中心線に対して斜めの方向に、上記の第1の軸方向位置にある上記の帯を横切り、上記の第1の軸方向位置にある上記の帯と並ぶような第2の軸方向位置まで伸びるように布設、接着し、しかる後に
その帯で少くとも存在すべき第2のターンを、上記の第2の軸方向位置において、上記タイヤの円周に沿って一つの環状体を形成するように布設、接着する方法。」(2頁右上欄11行~同頁左下欄12行)
(1b)
「(14) さらに第2のクロス部を前記の第1のクロス部とほぼ同じ方向に、そして前記の第1の円周上位置において布設、接着し、これに続く第3のターンを、前記の第2の軸方向位置にある帯と縁と縁が接して並ぶような第3の軸方向位置において布設、接着することを含めた、特許請求の範囲第11項に記載の方法。」(2頁右下欄2~8行)
(1c)
「シール材によるパンク防止層をタイヤのクラウン部の内面に付加することを、そのシール材の帯をタイヤに接着することによつて実現することが提案されて来た。そして、連続して押出された帯を用いる場合は、それは螺旋状にタイヤに付加されていた。この方法はあるタイヤでは満足すべき結果を得ても他のタイヤでは静的および動的バランスの点で問題を起すというものであつた。
また、互に別々の帯を、その縁を並行させ、端を重ね合わせて布設する方法もとられて来たが、この方法ではその帯を要求される長さに切るところに製造上の問題があり、また、その帯の端が重なる箇所がその帯の重いスポツトを形成するので、静的および動的なアンバランスを防止するため特別の処置を必要としている。
本発明はシール材の連続した帯で成るパンクシール層をもつタイヤ、およびそのタイヤを作る方法に関するものである。シール材の帯はタイヤのクラウン部の内面に、タイヤの円周方向に伸び、クラウン部の幅に亘つて次々と縁を接して並ぶように布設される。その帯に少くとも存在すべき一つのターンが第1の軸方向位置において布設されてから、帯はその帯の別の部分(既に布設された部分)を横切り、斜めの方向に布設され、しかる後に第2のターンが第2の軸方向位置において円周方向に、第1の軸方向位置で布設された帯と縁と縁が接して並ぶように布設される。帯の相接する縁を重ね合わせることにより、縁部分をより重いものにすることができる。第2のターンのあとで、帯は斜めの方向に、そしてしかる後に第3の軸方向位置において円周方向に布設される。なお、最後の軸方向位置での帯の終端にテーパーをもたせ、それをその最後の軸方向位置での帯の別の部分(既に布設された部分)の上に延伸させることができる。このようなパンクシール層の構造をもつタイヤは、その層が連続した帯から成るものであるにもかかわらず、受入れられるに足る静的および動的バランスをもち、したがつて、経済的に、正確に生産できることが判明している。」(3頁左上欄9行~同頁左下欄7行)
(1d)
「第1図および第2図はリムに取付け、一つの軸の回りに回転させられる空気入りタイヤ10を示す。・・・
本発明によるパンクシール層26はタイヤの内表面28にクラウン部18の裏うちとして接着される。このパンクシール層26はシール材の連続した帯30でできており、それは第1図、第2図に示すような形で内表面28の上に布設され、接着される。帯30の第1のターン32の内表面28への付加は、その第1の端部34を第1の軸方向位置35において第1の円周上位置36にもち来してスタートされる。第1のターン32はタイヤ10に沿って360°延伸してさきの第1の円周上位置36に至り、ここで第1のクロス部38に続くが、この第1のクロス部は円周中心線A-Aに対して斜めの方向に伸び、第2の軸方向位置40に至り、ここで帯30の第2のターン42に接続する。・・・
帯30の第2のターン42は、第2の軸方向位置40においてタイヤの円周に沿つて伸び一つの環状体を形成し、その第2のターンの縁44は第1のターン32の縁46に重なり、かくして内表面が完全に覆われるようにタイヤ10の内表面28に接着される。第1の(円周上)位置36に至つたところで第2のクロス部48がタイヤ10の円周中心線A-Aに対して一般に第1のクロス部38の場合と同じ角度をもつてタイヤの内表面上を伸びて行く。第2図に示すように、この第2のクロス部48の縁50は第1のクロス部38の縁52に重なる。
帯30の第3のターン54が第2のクロス部48に続いて第3の軸方向位置56においてタイヤ10の円周に沿つて一つの環状体を形成するように伸びる。第3のターン54はクロス部58へと接続する。すなわち、第1の(円周上)位置36において、第1および第2のクロス部の場合と同様に、円周中心線A-Aに対して角度Xをなすようにその方向がきめられる。図示のように、第3のターン54の縁62は第2のターン42の縁64に重なつている。この縁の重なりは第3のクロス部58に続いて行く。つまり、第3のクロス部の縁66は第2のクロス部48の縁68に重なる。
第3のクロス部58は第4の軸方向位置72において第4のターン70へと接続し、タイヤ10の円周に沿つて一つの環状体を形成するように伸びる。第4のターン70が約360°伸びたところで帯30の第2の端部(末端)74となる。第4のターン70の縁76は第3のターン54の縁78に重なる。なお、第2図でみられるように、第2の端部74は第3のクロス部58のもう一方の縁80の上に重なり、その後テーパーつきの形となり、第4のターン70の始まりの部分に重なる。
帯30のタイヤ10の内表面28への接着は、この粘着性あるシール材料を内表面へロールで押し付けることによつて達せられるが、帯30を付加する前に内表面28に適当な接着剤を塗つておくこともありうる。帯30を内表面28に押し付けることにより、帯の縁の重なつた部分が一緒にプレスされ、パンクシール層26の隙間のない連続した表面が作られることとなる。」(4頁左上欄18行~5頁左上欄15行)
(1e)
「このようなタイヤの作り方では、第1,第2,第3,第4の各ターン32,42,54,70は同じ厚さであるが、第1,第2,第3の各クロス部38,48,58の厚さは、それらのクロス部では帯が斜めに布設される関係上、第1から第4までの各ターンの厚さより小となる。
この帯30の厚さの減少を補つて余りあるのが第1のターン32の最初の端部34における重なりと第2の端部74による第3のクロス部58と第4のターン70との重なりである。この重なりによる重量増加はタイヤ10のバランスをよりよくするために利用することができる。それは、パンクシール層26の最初の円周上位置36を、パンクシール層26を付加するより前にバランシングマシンで求められたタイヤの軽い箇所に合わせることによつて実現される。このような作り方をすればシール材の帯30によってクラウン部18の裏の内表面28を覆い、しかも動的、静的バランスの変化を極小にすることができる。特に動的バランスの変化を極小にできることは明らかである。」(5頁左上欄16行~同頁右上欄16行)
(1f)
「上述のようなパンクシール層26をもつたタイヤ10を製造するには、・・・帯30はタイヤ10の内表面28に手作業または種々の装置を利用して付加される。第3図,第4図はタイヤ10の内表面28へのパンクシール層26の付加のプロセスの理解の助けとする。
タイヤ10の内表面28が清浄にされてから、タイヤをスピンドル84の上で回転できるチャック82にとりつける。押出機のノズル86がタイヤ10の中に位置して、これはシール材の帯30を押出し、それをタイヤの内表面に布設するものである。」(5頁右上欄17行~同頁左下欄12行)
(1g)
第2図から、帯30は、第1のクロス部38において第1の端部34と重なり、第2の端部74は第3のクロス部38及び第4のターン70と重なっていることを看取しうる。
以上の(1a)~(1g)の記載事項及び第1図~第4図の記載からみて、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明1〕
「(ア)押出機のノズル86から押し出されるシール材の連続した帯30の第1の端部34を前記空気入りタイヤ10の第1の円周上位置36において前記空気入りタイヤ10の内面に布設し、接着し、
(イ)前記帯30を、第1の軸方向位置36において前記空気入りタイヤ10の円周に沿って一つの環状体を形成するように布設、接着し、第1のターン32を形成し、
(ウ)その帯30を、前記空気入りタイヤ10の円周中心線に対して斜めの方向に、前記第1の軸方向位置34にある前記帯30を横切り、前記第1の軸方向位置36にある前記帯30と並ぶような第2の軸方向位置40まで伸びるように布設、接着し、第1のクロス部38を形成し、
(エ)その帯30を、前記第1のターン32及び第1のクロス部38に並んで布設、接着し、第2のターン42及び第2のクロス部48を形成し、
(オ)その帯30を、前記第2のターン42及び第2のクロス部48に並んで布設、接着し、第3のターン54及び第3のクロス部58を形成し、
(カ)その帯30を、前記第3のターン54に並んで布設、接着し、第4のターン70を形成し、第4のターンが約360°伸びたところで第2の端部74を形成し、
(キ)帯30は、前記第1のクロス部38において前記第1の端部34と重なり、前記第2の端部74は前記第3のクロス部38及び前記第4のターン70と重なり、
(ク)前記第1~第4のターン32、42、54、70及び前記第1~第3のクロス部38、48、58は、その縁同士が重なるように布設、接着された、
パンクシール層26を裏うちした空気入りタイヤ10の製造方法。」
2.引用文献Aに記載された事項及び引用発明2
引用文献Aには、図面とともに次の事項が記載されている。
(2a)
「1. ポリイソブチレン100重量部と無機充填剤10~150重量部とパーオキサイド0.2~10重量部から成る配合ゴム組成物を熱処理して得たシーラント組成物層をタイヤ本体内面に具備したことを特徴とするパンク防止用粘着シーラント組成物層を備えた空気入りタイヤ。」(1頁左下欄6~11行)
(2b)
「本発明のパンク防止用粘着シーラント組成物層を有する空気入りタイヤの製造方法は次のようにして行なうことができる。上述のゴム組成物は通常のゴム加工機により容易に混合し、シート状に成型することが可能である。生タイヤ成型に際しては成型機上にインナーライナーを貼り、その上に当該ゴム組成物シートを貼り、以後は通常のチューブレスタイヤの成型法に従つて成型する。当該ゴム組成物シートとタイヤ最内側インナーライナー(第1図の符号(2)に相当)とはいわゆる二軸押出機により同時に押出して成型を簡略化することも可能である。」(3頁左下欄11行~同頁右下欄2行)
(2c)
「当該ゴム組成物を用いたシーラントタイヤの製造方法は次のようにしても行なうことができる。すなわち、当該ゴム組成物を第2図に示す高温に加熱した押出機にホツパー(8)から供給し、シリンダー(9)を通過する間に当該ゴム組成物が熱とパーオキサイドにより分解して、粘着性を帯びすぐれたシーラントを形成する。ダイヘツド(10)に適当なノズルを装着することによつて、押出機内で形成されたシーラントを、直接チユーブレスタイヤの内面へ押出貼付けして、すぐれたシーラントタイヤを製造することができる。」(4頁左上欄6~16行)
以上の(2a)~(2c)の記載事項及び第1図~第2図の記載からみて、引用文献Aには次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明2〕
「ポリイソブチレン100重量部と無機充填剤10~150重量部とパーオキサイド0.2~10重量部から成る配合ゴム組成物を熱処理して得たシーラント組成物層をタイヤ本体内面に具備したパンク防止用粘着シーラント組成物層を備えた空気入りタイヤの製造方法であって、
前記配合ゴム組成物を高温に加熱した押出機に供給し、当該ゴム組成物が熱とパーオキサイドにより分解して、粘着性を帯びすぐれたシーラントを形成し、
押出機内で形成されたシーラントを、ノズルから直接チユーブレスタイヤの内面へ押出貼付けする、パンク防止用粘着シーラント組成物層を備えた空気入りタイヤの製造方法。」
3.引用文献Bに記載された事項及び引用発明3
引用文献Bには、次の事項が記載されている。
(3a)
「【0001】
本発明は、ポリマーベースのタイヤシーラントを製造する方法に関する。・・・」
(3b)
「【0009】
プロセスの第1の工程
溶媒なしで製造される背景技術で挙げた先行技術のシーラントとは異なる第1のシーラント成分(A)は、高粘度の処理のために最適化された混合装置で調製される。特に、調製には、混練押出し機(バッチミキサー)または二軸押出し機を用いる。
・・・
【0012】
プロセスの第2の工程
第1のシーラント成分(A)とは異なり、第2のシーラント成分(B)は、低粘度で、攪拌システムにおいて別個に製造される。それには、媒体、特に、ペーストまたは油の稠度を有し、少なくとも活性剤を含む媒体を含む。架橋剤は、さらなる添加剤と混合しておくことができ、第2のシーラント成分(B)は全架橋剤系を含む。特に、過酸化物活性剤が用いられ、例えば、ジアロイル過酸化物、ジアシル過酸化物またはパーオキシ-エステルに基づくものである。
【0013】
プロセスの第3の工程
第1のシーラント成分(A)および第2のシーラント成分(B)は、ポンピングにより、別個に、計量装置に導入される。・・・
【0014】
プロセスの第4の工程
高粘度の第1のシーラント成分(A)を、低粘度の第2のシーラント成分(B)と、混合装置で混合して、タイヤシーラント(C)を形成する。架橋がなされる。混合プロセスは、静的または動的ミキサーで行われる。
・・・
【0017】
プロセスの第6の工程
次に、タイヤシーラント(C)は、回転しているタイヤに挿入される。導入プロセスに関して、次の2つの変形が、特に用いられる。
-タイヤシーラント(C)の導入方法は、連続ビードをタイヤに配置して、巻取りパターンを用いて、タイヤの内側のカバーすべき場所、特に、タイヤトレッドの下をカバーするものである。
・・・」
以上の(3a)~(3b)の記載事項からみて、引用文献Bには次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明3〕
「高粘度の第1のシーラント成分(A)と過酸化物活性剤としてパーオキシ-エステルを含んだ低粘度の第2のシーラント成分(B)とを、混合装置で混合して、タイヤシーラント(C)を形成し、
タイヤシーラント(C)を、連続ビードをタイヤに配置して、巻取りパターンを用いて、タイヤトレッドの下をカバーするように、回転しているタイヤに挿入される、タイヤシーラントの製造方法。」
第6 当審の拒絶理由について
1.本願発明1
本願発明1と引用発明1とを対比する。
後者の「押出機のノズル86から押し出されるシール材」は、前者の「有機過酸化物を含む原料を二軸混練押出機により混合することにより順次調製されるシーラント材」と、「押出機により押し出されるシーラント材」である限りにおいて一致する。
後者の「(ア)」~「(カ)」は、「帯30」により「第1~第4のターン32、42、54、70」及び「第1~第3のクロス部38、48、58」を空気入りタイヤ10の内面に布設し、接着するものであり、各ターン及び各クロス部からなる形状はらせん状といえるので、前者の「シーラント材を順次タイヤの内周面に連続的にらせん状に塗布すること」に相当する。
後者の「パンクシール層26を裏うちした空気入りタイヤ10の製造方法」は、前者の「空気入りタイヤの製造方法」に相当する。
そうすると、両者は、
「押出機により押し出されるシーラント材を順次タイヤの内周面に連続的にらせん状に塗布する空気入りタイヤの製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点1-1〕
本願発明1は、「シーラント材」が「有機過酸化物を含む原料を二軸混練押出機により混合することにより順次調製される」ものであるのに対して、引用発明1は、シール材はそのような特定がなされていない点。
〔相違点1-2〕
本願発明1は、「塗布後のシーラント材の幅が0.8mm~18mm、塗布後のシーラント材の断面積が0.8mm2~180mm2である」と特定されているのに対して、引用発明1は、シール材の帯30がそのような特定がなされていない点。
〔相違点1-3〕
本願発明1は、「らせん状に塗布されるシーラント材同士が幅方向に重ならないように、隙間なく塗布する」ものであるのに対して、引用発明1は、「(キ)帯30は、前記第1のクロス部38において前記第1の端部34と重なり、前記第2の端部74は前記第3のクロス部38及び前記第4のターン70と重なり、(ク)前記第1~第4のターン32、42、54、70及び前記第1~第3のクロス部38、48、58は、その縁同士が重なるように布設、接着された」ものである点。
事案に鑑み、相違点1-3について以下検討する。
引用文献1には、上記「第5 1.(1c)」の摘示個所には、「シール材の帯をタイヤに接着」した場合に「その帯の端が重なる箇所がその帯の重いスポツトを形成するので、静的および動的なアンバランスを防止するため特別の処置を必要としている。」との技術的課題がある旨記載されており、その課題解決のために、「帯の相接する縁を重ね合わせることにより、縁部分をより重いものにすることができる。」と記載されており、また、上記「第5 1.(1e)」の摘示個所には、「第1のターン32の最初の端部34における重なりと第2の端部74による第3のクロス部58と第4のターン70との重なり」を、予め「バランシングマシンで求められたタイヤの軽い箇所に合わせる」ことによって、「この重なりによるによる重量増加はタイヤ10のバランスをよりよくするために利用することができる。」と記載されている。
そうすると、引用発明1の「(キ)」、「(ク)」の事項は、課題解決のための必須の事項といえ、これを省くことは阻害要件があるといえる。
したがって、引用発明1を、相違点1-3に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
よって、相違点1-1、1-2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1、引用文献2、3に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
2.本願発明2~6
本願発明2~6は、本願発明1のすべての事項を備えるものであるから、上記「1.」で述べたと同様に、当業者であっても引用発明1及び引用文献2、3に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 原査定の拒絶理由について
1.本願発明1
(1)対比・判断(その1)
本願発明1と引用発明2とを対比する。
後者の「ポリイソブチレン100重量部と無機充填剤10~150重量部とパーオキサイド0.2~10重量部から成る配合ゴム組成物」は、前者の「有機過酸化物を含む原料」に相当する。
後者の「配合ゴム組成物を高温に加熱した押出機に供給し、当該ゴム組成物が熱とパーオキサイドにより分解して」形成する「粘着性を帯びすぐれたシーラント」は、前者の「原料を二軸混練押出機により混合することにより順次調製されるシーラント材」と、「原料を押出機により混合することにより調製されるシーラント材」である限りにおいて一致する。
後者の「押出機内で形成されたシーラントを、ノズルから直接チユーブレスタイヤの内面へ押出貼付けする」ことは、前者の「シーラント材を順次タイヤの内周面に連続的にらせん状に、らせん状に塗布されるシーラント材同士が幅方向に重ならないように、隙間なく塗布する」ことと、「シーラント材をタイヤの内周面に連続的に塗布する」限りにおいて一致する。
後者の「パンク防止用粘着シーラント組成物層を備えた空気入りタイヤの製造方法」は、前者の「空気入りタイヤの製造方法」に相当する。
そうすると、両者は、
「有機過酸化物を含む原料を押出機により混合することにより調製されるシーラント材をタイヤの内周面に連続的に塗布する、空気入りタイヤの製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点2-1〕
本願発明1は、「有機過酸化物を含む原料を二軸混練押出機により混合することにより順次調製されるシーラント材を順次タイヤの内周面に連続的にらせん状に、らせん状に塗布されるシーラント材同士が幅方向に重ならないように、隙間なく塗布する」ものであるのに対して、引用発明2は、押出機が二軸混連押出機とは特定されておらず、シーラントの形成、及び、チユーブレスタイヤの内面へ押出貼付けについて、前記のように特定されていない点。
〔相違点2-2〕
本願発明1は、「塗布後のシーラント材の幅が0.8mm~18mm、塗布後のシーラント材の断面積が0.8mm2~180mm2である」と特定されているのに対して、引用発明2は、シーラントの幅、断面積について特定されていない点。
相違点2-1について検討する。
引用文献Aには、「上述のゴム組成物は通常のゴム加工機により容易に混合し、シート状に成型することが可能である。生タイヤ成型に際しては成型機上にインナーライナーを貼り、その上に当該ゴム組成物シートを貼り、以後は通常のチューブレスタイヤの成型法に従つて成型する。」(上記「第5 2.(2b)」参照)と記載されており、引用発明2は、配合ゴム組成物をシート状に成型し貼り付けるものであることを前提としているといえる。
そうすると、引用発明2には、配合ゴム組成物をらせん状に貼り付けるものとする積極的な動機付けはないといえる。
また、シーラント材をらせん状に貼り付けることが、原査定で引用した引用文献C、E~Gに示されるように周知の事項であり、二軸混連押出機が引用文献Bに示されているとしても(前記「第5 3.(3b)」参照)、引用発明2に周知の事項を適用した上で、引用文献Bに記載の事項を適用することが、当業者にとって容易想到とはいえない。
他に相違点2-1に係る本願発明1の構成を示唆する文献もない。
そうすると、引用発明2を相違点2-1に係る本願発明1の構成にようにすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
よって、相違点2-2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明2、引用文献B~Cに記載された事項及び周知の事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)対比・判断(その2)
本願発明1と引用発明3とを対比する。
後者の「高粘度の第1のシーラント成分(A)と過酸化物活性剤としてパーオキシ-エステルを含んだ低粘度の第2のシーラント成分(B)」は、前者の「有機過酸化物を含む原料」に相当する。
後者の「高粘度の第1のシーラント成分(A)と過酸化物活性剤としてパーオキシ-エステルを含んだ低粘度の第2のシーラント成分(B)とを、混合装置で混合」して形成した「タイヤシーラント(C)」は、前者の「原料を二軸混練押出機により混合することにより順次調製されるシーラント材」と、「原料を混練機により混合することにより調製されるシーラント材」である限りにおいて一致する。
後者の「タイヤシーラント(C)を、連続ビードをタイヤに配置して、巻取りパターンを用いて、タイヤトレッドの下をカバーするように、回転しているタイヤに挿入される」ことは、前者の「シーラント材を順次タイヤの内周面に連続的にらせん状に、らせん状に塗布されるシーラント材同士が幅方向に重ならないように、隙間なく塗布する」ことと、「シーラント材をタイヤの内周面に連続的に塗布する」限りにおいて一致する。
後者の「タイヤシーラントの製造方法」は、シーラント材をタイヤに貼り付けることを意図しており、結局、シーラント材を貼り付けたタイヤの製造方法といえるので、前者の「空気入りタイヤの製造方法」に相当する。
そうすると、両者は、
「有機過酸化物を含む原料を混練機により混合することにより調製されるシーラント材をタイヤの内周面に連続的に塗布する、空気入りタイヤの製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点3-1〕
本願発明1は、「有機過酸化物を含む原料を二軸混練押出機により混合することにより順次調製されるシーラント材を順次タイヤの内周面に連続的にらせん状に、らせん状に塗布されるシーラント材同士が幅方向に重ならないように、隙間なく塗布する」ものであるのに対して、引用発明3は、第1のシーラント成分(A)と第2のシーラント成分(B)とを混合装置で混合するものの、混合装置が二軸混連押出機とは特定されておらず、連続ビードの形成の仕方及び連続ビード同士の配置についても特定されていない点。
〔相違点3-2〕
本願発明1は、「塗布後のシーラント材の幅が0.8mm~18mm、塗布後のシーラント材の断面積が0.8mm2~180mm2である」と特定されているのに対して、引用発明3は、連続ビードの幅、断面積について特定されていない点。
相違点3-1について検討する。
引用文献Bには、混合装置として二軸押出し機が例示され(前記「第5 3.(3b)」参照)、また、引用文献Dには、二軸混連押出機が連続的に混連処理することが示唆されている(段落【0003】、【0004】参照)。
シーラント材をらせん状に貼り付けることは、原査定で引用した引用文献C、E~Gに示されるように周知の事項といえるかもしれないが、らせん状物を幅方向に重ならないように隙間なく塗布することまでも周知ということはできない。
そうすると、引用発明3に引用文献BまたはDに記載の事項を適用し、タイヤシーラント(C)の混合に二軸混連押出機を適用できたとしても、相違点1に係る本願発明1の構成の「順次調製されるシーラント材を順次タイヤの内周面に連続的にらせん状に」塗布することまで、当業者にとって容易想到ということはできず、また、「らせん状に塗布されるシーラント材同士が幅方向に重ならないように、隙間なく塗布する」とすることも、当業者にとって容易想到ということはできない。
よって、相違点3-2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明3、引用文献C~Dに記載された事項及び周知の事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
2.本願発明2~6
本願発明2~6は、本願発明1のすべての事項を備えるものであるから、上記「1.(1)(2)」で述べたと同様に、当業者であっても引用発明2、引用文献B~Cに記載された事項及び周知の事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえず、また、引用発明3、引用文献C~Dに記載された事項及び周知の事項に基いて容易に発明をすることができたものともいえない。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明1~6は、当業者が引用発明1及び引用文献2、3に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえず、また、引用発明2、引用文献B~Cに記載された事項及び周知の事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえず、さらに引用発明3、引用文献C~Dに記載された事項及び周知の事項に基いて容易に発明をすることができたものともいえない。
したがって、原査定の理由及び当審において通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2016-015919