特許拒絶査定不服審判
2016-015741
合成開口レーダシステム、進行方向速度算出装置、および進行方向速度推定方法
- 審判番号
- 2016-015741
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-046601外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年10月21日
- 審決日
- 2017年08月15日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (G01S) / P18 .537-WY (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012- 46601「合成開口レーダシステム、進行方向速度算出装置、および進行方向速度推定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月12日出願公開、特開2013-181881、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月2日の出願であって、平成27年12月25日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月7日付けで手続補正がなされたが、平成28年7月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年10月21日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされ、当審において、平成29年4月26日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年6月29日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成28年7月13日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
・請求項1-5、8-10に係る発明は、引用文献1に記載された発明(以下、「引用発明1」という。)、周知技術(引用発明3、4)、及び引用文献1の記載に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・本願の請求項6-7に係る発明は、引用発明1、周知技術(引用発明2、3、4)、及び引用文献1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2007-114098号公報
2.特開2003-161779号公報(周知技術を示す文献)
3.特開平10-206539号公報(周知技術を示す文献・新たに引用された文献)
4.特公平2-15040号公報(周知技術を示す文献・新たに引用された文献)
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
理由1
本願の請求項8~10に係る発明は、引用例1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引 用 文 献 等 一 覧
引用例1:特開2007-114098号公報
理由2
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
(請求項8~10について)
本願発明における解決課題及び解決手段は、「ターゲットのレンジ方向成分とプラットホーム進行方向速度成分とを別々に取り扱」(審判請求書「 【請求の理由】 」 「(三)本願発明が特許されるべき理由」参照。)うことが特許請求の範囲に特定されて初めて当業者に正しく認識されるものと認められるが、この点は、請求項8~10には、何ら特定されていないから、請求項8~10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
<拒絶の理由を発見しない請求項>
請求項1~7に係る発明については、現時点では、拒絶の理由を発見しない。拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。
第4 当審拒絶理由における理由1について
1 本願発明
本願の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明8」という。)は、本件補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
ターゲットのプラットホーム進行方向速度成分を仮定した複数の処理パラメータを用いて 前記処理パラメータ毎の振幅画像データを 前記処理パラメータ毎に各々SAR画像再生処理及び振幅変換処理を実行することによって生成すると共に、ターゲット位置情報を受け付けて、該ターゲット位置情報を参照し、生成した処理パラメータ毎のターゲット近傍の振幅画像データ相互を比較処理して ターゲット近傍に生じている反応のプラットホーム進行方向の位置に対する振幅値集合のピーク値について より強度が強い振幅画像データの処理パラメータが示すプラットホーム進行方向速度成分を 前記ターゲットのプラットホーム進行方向速度成分と見做す処理を行う進行方向速度算出手段をSAR/GMTI(Synthetic Aperture Radar/Ground Moving Target Indicator)処理部内に備え、
アンテナから得た取得データから、ターゲットの進行方向速度を、前記進行方向速度算出手段によって算定されたターゲットのプラットホーム進行方向速度成分と 別に算定されたターゲットのプラットホーム距離方向速度成分と に基づいて算定することを特徴とする合成開口レーダシステム。
【請求項2】
前記進行方向速度算出手段は、前記処理パラメータ毎の振幅画像データ相互を比較処理する際に、前記処理パラメータ毎の振幅画像データから、移動目標検出処理で検出されたターゲット位置情報で示されたプラットホーム進行方向の位置座標に表れている各振幅値集合のピーク値相互を参照して、より強度が強い振幅値を有した振幅画像データを特定し、その振幅画像データの処理パラメータが示すプラットホーム進行方向速度成分を 前記ターゲットのプラットホーム進行方向速度成分として同定することを特徴とする請求項1記載の合成開口レーダシステム。
【請求項3】
前記進行方向速度算出手段は、前記処理パラメータ毎の振幅画像データ相互を比較処理する際に、前記処理パラメータ毎の振幅画像データが 所定基準を満たす 移動目標検出処理で検出されたターゲット位置情報で示されたプラットホーム進行方向の位置座標に表れている各振幅値集合のピーク値を何れも有さない振幅画像データの組み合わせだった場合に、前記処理パラメータ毎の振幅画像データから、移動目標検出処理で検出されたターゲット位置情報で示されたプラットホーム進行方向の位置座標に表れている各振幅値集合の幅相互を参照して、より幅が狭い振幅集合を有した振幅画像データを特定し、その振幅画像データの処理パラメータが示すプラットホーム進行方向速度成分を 前記ターゲットのプラットホーム進行方向速度成分として同定することを特徴とする請求項1又は2に記載の合成開口レーダシステム。
【請求項4】
前記進行方向速度算出手段は、生成した処理パラメータ毎の振幅画像データ相互を比較する際に、
比較対象とする各々の振幅画像データを使用するか否かを定める振幅値集合のピークの下限値を定める第1の閾値と、前記第1の閾値より小さく 比較対象とする各々の振幅画像データの振幅の広がり範囲の下限値を定める第2の閾値とを用いて、
前記第1の閾値を超えて且つ、比較対象となる処理パラメータ毎の振幅画像データ相互の中で一番高いピーク値を有する処理パラメータの仮定速度の値を、前記ターゲットのプラットホーム進行方向速度成分として同定し、
前記第1の閾値を超える振幅画像データが無い場合に、比較対象とする処理パラメータ毎の振幅画像データの中で前記第2の閾値を超える範囲の振幅の広がり幅の最も狭い処理パラメータの仮定速度を、ターゲットの進行方向速度成分として同定することを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の合成開口レーダシステム。
【請求項5】
前記進行方向速度算出手段は、生成した処理パラメータ毎の振幅画像データ相互を比較する際に、
比較対象とする各々の振幅画像データを使用するか否かを定める振幅値集合のピークの下限値を定める第1の閾値と、前記第1の閾値より小さく 比較対象とする各々の振幅画像データの振幅の広がり範囲の下限値を定める第2の閾値と、に加え、
比較対象とする各々の振幅画像データ間内の最大振幅ピーク値を基準に 最大の振幅ピーク値に対する他の振幅画像データの振幅ピーク値の差分許容値を定める第3の閾値を働かせてターゲットの進行方向速度成分として同定することを特徴とする請求項4記載の合成開口レーダシステム。
【請求項6】
前記SAR/GMTI処理部は、前記進行方向速度算出手段から出力されたターゲットのプラットホーム進行方向速度成分を基準に変換した処理パラメータを前記進行方向速度算出手段に入力する入力パラメータ変換手段を具備し、
前記SAR/GMTI処理部は、前記入力パラメータ変換手段を介して前記進行方向速度算出手段に与えるパラメータ調整を繰り返すことを特徴とする請求項1ないし5の何れか一項に記載の合成開口レーダシステム。
【請求項7】
前記SAR/GMTI処理部は、複数のターゲットについて、前記進行方向速度算出手段を用いてそれぞれのターゲットのプラットホーム進行方向速度成分を同時並列処理で同定することを特徴とする請求項1ないし6の何れか一項に記載の合成開口レーダシステム。
【請求項8】
ターゲットのプラットホーム進行方向速度成分を仮定した複数の処理パラメータを生成処理する画像再生処理パラメータ算出部と、
ターゲットのプラットホーム進行方向速度成分を仮定したそれぞれの処理パラメータを用いて、前記処理パラメータ毎の複素画像データをSAR画像再生処理によって各々再生処理するSAR画像再生処理部群と、
再生された前記処理パラメータ毎の複素画像データからそれぞれ振幅画像データを振幅変換処理によって各々生成処理する画像生成部群と、
SAR/GMTI処理で生成されたターゲット位置情報を受け付けて、該ターゲット位置情報を参照し、生成された前記処理パラメータ毎の振幅画像データからそれぞれプラットホーム進行方向の位置座標に表れている各振幅値集合を各々抽出処理するターゲット振幅検出部群と、
抽出された処理パラメータ毎の振幅値集合相互を、より強度が強い 若しくは 所定強度を有するものがない場合により広がり幅が狭い、処理パラメータの振幅画像データを選定するように比較して、該比較で選定された処理パラメータが示すプラットホーム進行方向速度成分を 前記ターゲットのプラットホーム進行方向速度成分として出力する速度決定部と、
をSAR/GMTI処理部内に含み、
アンテナから得た取得データから、ターゲットの進行方向速度を、前記速度決定部によって算定されたターゲットのプラットホーム進行方向速度成分と 別に算定されたターゲットのプラットホーム距離方向速度成分と に基づいて算定することを特徴とする合成開口レーダシステム。」
2 引用文献、引用発明
当審拒絶理由に引用された引用例1(原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
本発明にかかる実施の形態は、SAR(Synthetic Aperture Radar、合成開口レーダ)により観測された目標物のデータから目標物の正しい位置を算出するレーダ画像処理に関連するものである。」
「【0048】
次に、図11に基づき実施の形態1にかかる画像鮮明化装置100の機能について説明する。図11は、実施の形態1にかかる画像鮮明化装置100の機能を示す機能ブロック図である。
【0049】
画像鮮明化装置100は、SARにより観測された目標物のデータから目標物の画像を鮮明化する。ここでは、画像鮮明化装置100は、例えば、速度指定方式ISARにより、SARにより観測された目標物のデータから目標物の画像を鮮明化する。画像鮮明化装置100は、入力部110、処理部130、記憶部160、表示部170、入力装置980、記憶装置982、表示装置984を備える。
【0050】
入力部110は、データ入力部112、参照関数情報入力部114、付随情報入力部120、鮮明度判定入力部122を備える。
データ入力部112は、SARが観測した目標物のデータについてレンジ圧縮したレンジ圧縮後データを入力装置980により入力する。ここで、レンジ圧縮後データとは、レンジ方向に対してパルス圧縮処理が施されたレンジ方向にのみ高分解能な画像を指す。
参照関数情報入力部114は、速度入力部116、合成開口時間情報入力部118を備える。速度入力部116は、目標物の移動する予測速度である予測移動速度を入力装置980により入力する。ここで、予測移動速度は、レンジ方向の予測速度vRとアジマス方向の予測速度vAとを有する。合成開口時間情報入力部118は、合成開口時間の開始時刻αstartと合成開口時間の終了時刻αendとを有する合成開口時間情報を入力装置980により入力する。
付随情報入力部120は、SARの位置やSARの速度などのレンジ方向の予測速度vRとアジマス方向の予測速度vA以外の画像に付随する画像付随情報を入力装置980により入力する。
鮮明度判定入力部122は、後述するデータ表示部172が表示したIFFT後データが鮮明か否かの判定を入力装置980により入力する。」
【0051】
処理部130は、レンジマイグレーション補正部132、ゼロ詰め処理部134、FFT処理部136、アジマス圧縮処理部138、IFFT処理部140、参照関数生成部142を備える。」
「【0052】
(式13)省略
(式14)省略
FFT処理部136は、ゼロ詰め処理部134が生成したゼロ詰めデータをアジマスラインごとに複素高速フーリエ変換し周波数領域に変換したFFT後データを処理装置により生成する。さらに、FFT処理部136は、後述する参照関数生成部142が生成した参照関数をFFTしFFT後参照関数を処理装置により生成する。
アジマス圧縮処理部138は、後述する参照関数生成部142が生成した参照関数に基づき、データ入力部112が入力したレンジ圧縮後データをアジマス圧縮しアジマス圧縮後データを処理装置により生成する。ここでは、アジマス圧縮処理部138は、FFT後参照関数に基づき、FFT後データをアジマス圧縮する。アジマス圧縮処理部138は、例えば、切り出された画像の1アジマスラインとアジマス圧縮用の参照関数について、周波数領域で掛け合わせることで、アジマス圧縮(相関処理)を行う。これにより、時間領域におけるアジマス方向への高分解能化を図る。
IFFT処理部140は、アジマス圧縮処理部138がアジマス圧縮したアジマス圧縮後データを逆高速フーリエ変換(IFFT)し、IFFT後データを処理装置により生成する。IFFT処理部140は、周波数領域でアジマス圧縮処理されたデータについて、IFFTを行うことで、ISAR処理画像を生成する。
参照関数生成部142は、SARの移動情報と目標物の予測移動情報とに基づいたSARと目標物との距離関係情報に基づき参照関数を処理装置により生成して記憶装置982に記憶する。参照関数生成部142は、例えば、上記式10の参照関数Erefを生成する。予測移動情報とは、速度入力部116が入力した予測移動速度である。例えば、上記式10はレンジドップラー再生方式を対象に生成しているが、再生方式はこれに限定するものではなく、スポットライトなど、それ以外の再生方式でも構わない。他の再生方式の場合であっても、アジマス圧縮を遡って実施することで対応できる。
【0053】
記憶部160は、データ記憶部162を備える。
データ記憶部162は、アジマス圧縮処理部138が生成したアジマス圧縮後データをIFFTしたIFFT後データを記憶装置982に記憶する。ここでは、データ記憶部162は、鮮明度判定入力部122が鮮明であると判定した場合、IFFT後データを記憶装置982に記憶する。データ記憶部162は、例えば、移動する目標物が鮮明化された実部と虚部からなる画像を、記憶装置982に記憶する。
【0054】
表示部170は、データ表示部172を備える。
データ表示部172は、IFFT処理部140が生成したIFFT後データを表示装置984に表示する。データ表示部172は、IFFT後データを、複素数からパワーを計算して表示する。」
「【0064】
実施の形態2にかかる画像鮮明化装置100は、実施の形態1にかかる画像鮮明化装置100に加え、速度判定部144を備える。」
「【0067】
実施の形態3.
次に、実施の形態3について説明する。実施の形態3では、目標物の画像の鮮明度を判定する画像鮮明度判定装置を備える画像鮮明化装置100について説明する。上記実施の形態においては、鮮明度判定入力部122が、画像が鮮明か否かの判定を入力することにより、画像の鮮明度が判断されていた。しかし、実施の形態3では、機械的に画像の鮮明度を判定し、最も鮮明な目標物の画像と、目標物の速度とを得る。」
「【0069】
次に、図17に基づき実施の形態3での鮮明な目標物の画像を得るための処理について説明する。図17は、機械的に画像の鮮明度を判定する画像鮮明化装置100の動作を示す図である。
機械的に画像の鮮明度を判定する画像鮮明化装置100では、レンジ圧縮後の画像を入力することで、機械的に最も鮮明な目標物の画像を出力する。
したがって、ISAR用の合成開口時間の中で目標物が複雑に移動する場合など、鮮明な画像を得るために多くの時間がかかっていたが、実施の形態3の方法を用いることで解決することができる。
【0070】
次に、図18、図19に基づき実施の形態3における画像鮮明度判定装置の画像鮮明度判定方法の概要について説明する。
図18は、画像が鮮明にならないぼやけを生じる場合の例を示した図である。レンジ圧縮後の画像に対して、マッチングしない参照関数を入力し、アジマス圧縮処理を行うと、アジマス圧縮後の画像はぼやけを生じ鮮明な画像は得られない。つまり、目標物の予測速度が、実際の目標物の速度と異なると参照関数がマッチングしないため、鮮明な画像は得られない。この場合、アジマス圧縮後の画像の目標物の輝度を示す振幅値のピークは低くなる。
図19は、画像が鮮明になる場合の例を示した図である。レンジ圧縮後の画像に対して、マッチングする参照関数を入力し、アジマス圧縮処理を行うと、アジマス圧縮後の画像はぼやけを生じない鮮明な画像が得られる。つまり、目標物の予測速度が、実際の目標物の速度と同等であると参照関数がマッチングし、鮮明な画像が得られる。この場合、アジマス圧縮後の画像の目標物の輝度を示す振幅値のピークは高くなる。
【0071】
次に、図20に基づき実施の形態3にかかる画像鮮明化装置100の機能について説明する。図20は、実施の形態3にかかる画像鮮明化装置100の機能を示す機能ブロック図である。ここでは、実施の形態2にかかる画像鮮明化装置100の機能と異なる部分についてのみ説明する。
【0072】
実施の形態3にかかる画像鮮明化装置100は、実施の形態2にかかる画像鮮明化装置100に加え、鮮明度算出部146を備える。また、実施の形態3にかかる画像鮮明化装置100は、鮮明度判定入力部122を備えていなくても構わない。
鮮明度算出部146は、アジマス圧縮処理部138が生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データが示す画像の鮮明度を処理装置により算出する。鮮明度算出部146は、例えば、アジマス圧縮処理部138が生成したアジマス圧縮後データが示す画像の画素の輝度を表す振幅のピーク値を探し、ピーク値の高さが高いものほど画像の鮮明であると判定する。
また、速度入力部116は、例えば、アジマス方向の予測速度vAの範囲va_max,va_mixとレンジ方向の予測速度vRの範囲vr_max,vr_mixとアジマス圧縮回数Nとを設定し、以下の式15のように入力する速度を算出し、算出した速度を入力する。
【0073】
【数14】
【0074】
次に、図21に基づき実施の形態3にかかる画像鮮明化装置100の動作について説明する。図21は、実施の形態3にかかる画像鮮明化装置100の動作である速度指定方式ISARによる画像鮮明化を自動化する画像鮮明度判定方法を示すフローチャートである。ここでは、実施の形態2にかかる画像鮮明化装置100の動作と異なる部分についてのみ説明する。
【0075】
まず、S202からS204までと、S206からS211までとを処理群Aとし、後述する速度入力ステップ(S210)で速度入力部116が入力する速度を変えながら、処理群Aを繰り返し実行する。処理群Aは、例えば、上記式15に基づきN回繰り返す。
ここで、S201からS209までは、それぞれ、S101からS109までと同様である。
速度入力ステップ(S210)では、速度入力部116は、目標物の移動する予測速度であるレンジ方向の予測速度vrとアジマス方向の予測速度vaを入力装置980により入力する。速度入力部116は、例えば、アジマス方向の予測速度vAの範囲va_max,va_mixとレンジ方向の予測速度vRの範囲vr_max,vr_mixとアジマス圧縮回数Nとを設定し、上記式15のように入力する速度を算出し、算出した速度vr,vaを入力する。鮮明度算出ステップ(S211)では、鮮明度算出部146は、アジマス圧縮処理部138が生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データが示す画像の鮮明度を処理装置により算出する。次に、速度判定ステップ(S212)では、速度判定部144は、鮮明度算出部146が算出した鮮明度が最も高いアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を生成する場合に、参照関数生成部142が使用した予測速度vR,vAを目標物の速度であると処理装置により判定する。次に、データ記憶ステップ(S213)では、データ記憶部162は、複数回実行された処理群Aにおいて、鮮明度算出部146が最も鮮明度が高いと判定したデータを記憶装置982に記憶する。ここで、データ記憶部162は、実施の形態2同様、鮮明度が高いと判定されたデータを算出する場合に入力された予測速度vA,vRを目標物の速度として記憶する。
【0076】
図21に示す画像鮮明化装置100の動作では、予測速度vR,vAを変化させながら、最も鮮明度が高いものを探す処理を行った。」
「【0078】
実施の形態3によれば、目標物の画像が鮮明であるか否かを機械的に判定することができる。したがって、SAR用合成開口時間内の目標物の移動が複雑な場合などに、高品質なISAR画像を得るまでに相当の時間を要していたが、実施の形態3によれば、その時間を短縮することができ、かつ、高品質なISAR画像を得るための手間が軽減される。」
引用例1において、「実施の形態2にかかる画像鮮明化装置100は、実施の形態1にかかる画像鮮明化装置100に加え、速度判定部144を備え」(段落【0064】)たものに相当し、「実施の形態3にかかる画像鮮明化装置100は、実施の形態2にかかる画像鮮明化装置100に加え、鮮明度算出部146を備え」(段落【0072】)たものに相当することを踏まえると、引用例1には、「実施の形態3」として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる(なお、レンジ方向の予測速度、及びアジマス方向の予測速度を表す記号については、それぞれvR、及びvAで統一した。)。
「SAR(Synthetic Aperture Radar、合成開口レーダ)により観測された目標物のデータから目標物の正しい位置を算出するレーダ画像処理に関連し(段落【0001】より)、SARにより観測された目標物のデータから目標物の画像を鮮明化する画像鮮明化装置100であって(段落【0049】より)、
画像鮮明化装置100は、入力部110、処理部130、記憶部160、表示部170、入力装置980、記憶装置982、表示装置984を備え(段落【0049】より)、
入力部110は、データ入力部112、参照関数情報入力部114を備え(段落【0050】より)、
データ入力部112は、SARが観測した目標物のデータについてレンジ圧縮したレンジ圧縮後データを入力装置980により入力し(段落【0050】より)、
参照関数情報入力部114は、速度入力部116を備え、速度入力部116は、目標物の移動する予測速度である予測移動速度を入力装置980により入力するが、ここで、予測移動速度は、レンジ方向の予測速度vRとアジマス方向の予測速度vAとを有し(段落【0050】、【0075】より)、
処理部130は、アジマス圧縮処理部138、参照関数生成部142を備え(段落【0051】より)、
参照関数生成部142は、SARの移動情報と目標物の予測移動情報とに基づいたSARと目標物との距離関係情報に基づき参照関数を処理装置により生成し、
アジマス圧縮処理部138は、参照関数生成部142が生成した参照関数に基づき、データ入力部112が入力したレンジ圧縮後データをアジマス圧縮しアジマス圧縮後データを処理装置により生成し(段落【0052】より)、
記憶部160は、データ記憶部162を備え、データ記憶部162は、アジマス圧縮処理部138が生成したアジマス圧縮後データ、例えば、移動する目標物が鮮明化された実部と虚部からなる画像を、記憶装置982に記憶し(段落【0053】より)、
。
画像鮮明化装置100は、さらに、鮮明度算出部146と速度判定部144を備え、鮮明度算出部146は、アジマス圧縮処理部138が生成したアジマス圧縮後データが示す画像の画素の輝度を表す振幅のピーク値を探し、ピーク値の高さが高いものほど画像の鮮明であると判定し(段落【0064】、【0072】より)
速度入力ステップ(S210)では、速度入力部116は、目標物の移動する予測速度であるレンジ方向の予測速度vRとアジマス方向の予測速度vAを入力装置980により入力し(【0075】より)、
速度判定ステップ(S212)では、速度判定部144は、鮮明度算出部146が算出した鮮明度が最も高いアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を生成する場合に、参照関数生成部142が使用した予測速度vR,vAを目標物の速度であると処理装置により判定し(段落【0075】より)、
速度入力ステップ(S210)で速度入力部116が入力する速度を変えながら、処理を繰り返し実行し(段落【0075】より)、
データ記憶ステップ(S213)では、データ記憶部162は、複数回実行された処理において、鮮明度算出部146が最も鮮明度が高いと判定したデータを記憶装置982に記憶し、鮮明度が高いと判定されたデータを算出する場合に入力された予測速度vA,vRを目標物の速度として記憶し(段落【0075】より)、
予測速度vR,vAを変化させながら、最も鮮明度が高いものを探すように動作する(段落【0076】より)、
画像鮮明化装置100(段落【0067】より)。」
3 対比・判断
(1)対比
本願発明8と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明における「目標物の移動する予測速度であるレンジ方向の予測速度vRとアジマス方向の予測速度vA」は、本願発明8における「ターゲットのプラットホーム進行方向速度成分を仮定した複数の処理パラメータ」に相当する。
イ そして、引用発明では「速度入力部116が入力する速度を変えながら、処理を繰り返し実行し」、「予測速度vR,vAを変化させながら、最も鮮明度が高いものを探」しているから、その「速度入力部116が入力する」、「予測速度vR,vAを変化させ」て生成する装置が、本願発明8における「ターゲットのプラットホーム進行方向速度成分を仮定した複数の処理パラメータを生成処理する画像再生処理パラメータ算出部」に相当するといえる。
ウ 引用発明における「アジマス圧縮後データ」は、「SARが観測した目標物のデータについてレンジ圧縮したレンジ圧縮後データ」をアジマス圧縮したデータであって、「移動する目標物が鮮明化された実部と虚部からなる画像」であるから、本願発明8における「複素画像データ」に相当する。
エ 引用発明における「アジマス圧縮後データが示す画像の画素の輝度を表す振幅」のデータは、「移動する目標物が鮮明化された実部と虚部からなる画像」から、複素数の絶対値を計算する処理によって生成されるものであることは、明らかであるから、本願発明8における「複素画像データから」「振幅変換処理によって」「生成処理」された「振幅画像データ」に相当するといえる。
オ 上記「ウ」を踏まえると、引用発明において、「速度入力ステップ(S210)では、速度入力部116は、目標物の移動する予測速度であるレンジ方向の予測速度vRとアジマス方向の予測速度vAを入力装置980により入力し」、「アジマス圧縮後データを生成」し、「速度入力ステップ(S210)で速度入力部116が入力する速度を変えながら、処理を繰り返し実行」する部分が、本願発明8における「ターゲットのプラットホーム進行方向速度成分を仮定したそれぞれの処理パラメータを用いて、前記処理パラメータ毎の複素画像データをSAR画像再生処理によって各々再生処理するSAR画像再生処理部群」に相当するといえる。
カ 同様に、上記「エ」を踏まえると、引用発明において、「速度入力ステップ(S210)で速度入力部116が入力する速度を変えながら、処理を繰り返し実行」する際に、「アジマス圧縮処理部138が生成したアジマス圧縮後データが示す画像の画素の輝度を表す振幅」のデータを生成する部分が、本願発明8における「再生された前記処理パラメータ毎の複素画像データからそれぞれ振幅画像データを振幅変換処理によって各々生成処理する画像生成部群」に相当するといえる。
キ 引用発明における「鮮明度算出部146」は、「アジマス圧縮処理部138が生成したアジマス圧縮後データが示す画像の画素の輝度を表す振幅のピーク値を探し、ピーク値の高さが高いものほど画像の鮮明であると判定」しているから、本願発明8における「SAR/GMTI処理で生成されたターゲット位置情報を受け付けて、該ターゲット位置情報を参照し、生成された前記処理パラメータ毎の振幅画像データからそれぞれプラットホーム進行方向の位置座標に表れている各振幅値集合を各々抽出処理するターゲット振幅検出部群」とは、「生成された前記処理パラメータ毎の振幅画像データからそれぞれプラットホーム進行方向の位置座標に表れている各振幅値集合を各々抽出処理するターゲット振幅検出部群」の点で共通する。
ク 引用発明における「鮮明度算出部146」は、「アジマス圧縮処理部138が生成したアジマス圧縮後データが示す画像の画素の輝度を表す振幅のピーク値を探し、ピーク値の高さが高いものほど画像の鮮明であると判定し」、「速度判定部144」は、「鮮明度算出部146が算出した鮮明度が最も高いアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を生成する場合に、参照関数生成部142が使用した予測速度vR,vAを目標物の速度であると処理装置により判定し」ている。
よって、引用発明において、「速度入力ステップ(S210)で速度入力部116が入力する速度を変えながら」、「鮮明度算出部146」及び「速度判定部144」による処理を繰り返し実行し、「鮮明度が高いと判定されたデータを算出する場合に入力された予測速度vA,vRを目標物の速度として」求める処理をする部分と、本願発明8における「抽出された処理パラメータ毎の振幅値集合相互を、より強度が強い 若しくは 所定強度を有するものがない場合により広がり幅が狭い、処理パラメータの振幅画像データを選定するように比較して、該比較で選定された処理パラメータが示すプラットホーム進行方向速度成分を 前記ターゲットのプラットホーム進行方向速度成分として出力する速度決定部」とは、「抽出された処理パラメータ毎の振幅値集合相互を、より強度が強い処理パラメータの振幅画像データを選定するように比較して、該比較で選定された処理パラメータが示すプラットホーム進行方向速度成分を 前記ターゲットのプラットホーム進行方向速度成分として出力する速度決定部」の点で共通する。
ケ 引用発明における「画像鮮明化装置100」は、「SAR(Synthetic Aperture Radar、合成開口レーダ)により観測された目標物のデータから目標物の正しい位置を算出するレーダ画像処理に関連し」たものであるから、本願発明8における「合成開口レーダシステム」の「SAR/GMTI処理部」とは、「合成開口レーダシステム」の「SAR処理部」の点で共通する。
また、引用発明における「画像鮮明化装置100」が「SAR(Synthetic Aperture Radar、合成開口レーダ)」のシステムに含まれる処理部であることは明らかである。
よって、本願発明8と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「ターゲットのプラットホーム進行方向速度成分を仮定した複数の処理パラメータを生成処理する画像再生処理パラメータ算出部と、
ターゲットのプラットホーム進行方向速度成分を仮定したそれぞれの処理パラメータを用いて、前記処理パラメータ毎の複素画像データをSAR画像再生処理によって各々再生処理するSAR画像再生処理部群と、
再生された前記処理パラメータ毎の複素画像データからそれぞれ振幅画像データを振幅変換処理によって各々生成処理する画像生成部群と、
生成された前記処理パラメータ毎の振幅画像データからそれぞれプラットホーム進行方向の位置座標に表れている各振幅値集合を各々抽出処理するターゲット振幅検出部群と、
抽出された処理パラメータ毎の振幅値集合相互を、より強度が強い処理パラメータの振幅画像データを選定するように比較して、該比較で選定された処理パラメータが示すプラットホーム進行方向速度成分を 前記ターゲットのプラットホーム進行方向速度成分として出力する速度決定部と、
をSAR処理部内に含むことを特徴とする合成開口レーダシステム。」
(相違点1)
本願発明8では、振幅値集合を各々抽出処理する際、「SAR/GMTI処理で生成されたターゲット位置情報を受け付けて、該ターゲット位置情報を参照し」ているのに対し、引用発明では、振幅のピーク値を探しているものの、その際に、「目標物」の位置を参照しているか、明らかでない点。
(相違点2)
本願発明8では、「抽出された処理パラメータ毎の振幅値集合相互を、より強度が強い 若しくは 所定強度を有するものがない場合により広がり幅が狭い、処理パラメータの振幅画像データを選定するように比較して、該比較で選定された処理パラメータが示すプラットホーム進行方向速度成分」を、「前記ターゲットのプラットホーム進行方向速度成分」としているのに対し、引用発明では、「画像の画素の輝度を表す振幅のピーク値を探し、ピーク値の高さが高いものほど画像の鮮明であると判定する」ことで、「鮮明度が高いと判定されたデータを算出する場合に入力された予測速度vR,vAを目標物の速度として」いる点。
(相違点3)
本願発明8では、「アンテナから得た取得データから、ターゲットの進行方向速度を、前記速度決定部によって算定されたターゲットのプラットホーム進行方向速度成分と 別に算定されたターゲットのプラットホーム距離方向速度成分と に基づいて算定する」のに対し、引用発明8では、「目標物の移動する予測速度であるレンジ方向の予測速度vRとアジマス方向の予測速度vA」の両方を「変化させながら、最も鮮明度が高いものを探」しているから、「レンジ方向の予測速度vR」は、「アジマス方向の予測速度vA」と別に算定されたものではない点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点3について先に検討する。
引用例1には、「レンジ方向の予測速度vR」を、「アジマス方向の予測速度vA」と別に算定することは、何ら記載されていない。
それどころか、引用発明では、「予測速度vR,vAを変化させながら、最も鮮明度が高いものを探す」とされているように、「レンジ方向の予測速度vR」と「アジマス方向の予測速度vA」とは、一体不可分のものとして探索されている。
よって、引用発明において、「レンジ方向の予測速度vR」を、「アジマス方向の予測速度vA」と別に算定し、上記相違点3に係る本願発明8の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
4 まとめ
したがって、相違点1、相違点2について判断するまでもなく、本願発明8は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
また、当審における拒絶の理由1の対象とされていた請求項9、10は、本件補正により削除された。
よって、当審における拒絶の理由1は解消している。
第5 当審拒絶理由における理由2について
本件補正により、請求項9、10が削除されるとともに、請求項8に「アンテナから得た取得データから、ターゲットの進行方向速度を、前記速度決定部によって算定されたターゲットのプラットホーム進行方向速度成分と 別に算定されたターゲットのプラットホーム距離方向速度成分と に基づいて算定する」との事項が付加された。
これにより、特許請求の範囲の請求項8に係る発明が、ターゲットのレンジ方向成分とプラットホーム進行方向速度成分とを別々に取り扱うものであることが明らかになったから、拒絶の理由2は解消している。
第6 原査定の理由について
1 原査定に引用された引用文献
(1)引用文献1
原査定の拒絶理由において引用された引用文献1の記載内容及び引用発明については、上記「第4」「2」に記載したとおりである。
(2)引用文献2
原査定の拒絶理由において、周知技術を示すものとして引用された引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0035】図6において、MTI処理部24は、目標の速度を計測し、MTI情報16を出力する。圧縮パラメータ算出部223は、プラットフォームの運動状態を表すフライトパラメータ11に加えてMTI情報16を考慮して圧縮パラメータ110を出力する。このように、圧縮パラメータ算出部223の入力に、目標の速度を計測するMTIを追加して、目標の運動状態に対する情報を追加入力すると、圧縮パラメータ算出部223が行う計算をより早く収束させる、あるいはより簡素な処理にすることができる。」
(3)引用文献3
拒絶査定の備考欄において、周知技術を示すものとして引用された引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0031】前記画像生成部24~27は、それぞれルック出力データ203~206を個々に入力し、入力データをNポイントの逆FFT処理により時間領域における複素データに変換し、さらに、“R=sqrt(I2+Q2)”なる演算により振幅変換処理を実行する。なお、上記数式のRは振幅であり、I、Qは出力複素データの実部、虚部である。」
(4)引用文献4
拒絶査定の備考欄において、周知技術を示すものとして引用された引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「乗算回路44は上述した2つの入力を乗算を行ない、これを乗算回路出力441として高速逆フーリエ変換回路45に送出し、高速逆フーリエ変換回路45は、周波数領域の乗算回路出力441を逆フーリエ変換処理して時間領域の複素数信号に変換し、これをアジムス圧縮回路出力信号451として出力回路5に送出する。
出力回路5は、絶対値演算回路等によって、入力したアジムス圧縮回路出力信号441の複素数信号の絶対値を求め、これを出力信号501として表示回路等に送出する。」(第6頁、第12欄第29~39行)
2 対比・判断
ア 本願発明1は、上記「第4」「3」「(1)対比」に記載した、相違点3に係る本願発明8の構成である、「アンテナから得た取得データから、ターゲットの進行方向速度を、前記速度決定部によって算定されたターゲットのプラットホーム進行方向速度成分と 別に算定されたターゲットのプラットホーム距離方向速度成分と に基づいて算定する」点を発明特定事項として有している。
そして、相違点3に係る本願発明8の上記構成が引用発明に示されておらず、また、引用発明から当業者が容易になし得たものでないことは、上記「第4」「(2)判断」で述べたとおりである。
よって、本願発明1、8は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ また、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、目標の速度を計測する手段をMTI処理部とすることが記載され、また、拒絶査定の備考欄で提示された引用文献3~4には、振幅(絶対値)を求めて画像データとする処理を実行することが記載されているに過ぎず、引用文献2~4に記載された事項をみても、「アンテナから得た取得データから、ターゲットの進行方向速度を、前記速度決定部によって算定されたターゲットのプラットホーム進行方向速度成分と 別に算定されたターゲットのプラットホーム距離方向速度成分と に基づいて算定する」点が周知技術であるとはいえない。
よって、本願発明1、8は、引用発明及び周知技術(引用文献2~4)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本願発明2~7は、本願発明1を限定した発明である。
よって、本願発明2~5は、本願発明1、8について述べたのと同様の理由により、引用発明及び周知技術(引用文献3~4)、及び引用文献1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
同様に、本願発明6~7は、引用発明及び周知技術(引用文献2~4)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 まとめ
したがって、原査定を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1~8は、引用発明及び周知技術(引用文献2~4)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない、
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-015741