特許拒絶査定不服審判
2016-015017
軸の連結構造
- 審判番号
- 2016-015017
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-075336外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年10月06日
- 審決日
- 2017年07月11日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】住友重機械工業株式会社
- 【請求人代理人】小島 誠
- 分類
- P18 .121-WY (F16D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-75336「軸の連結構造」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月23日出願公開、特開2014-199126、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年3月29日の出願であって、平成27年12月8日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月12日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年7月5日付け(発送日:同年7月19日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年10月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定の概要は、次のとおりである。
(進歩性)本願の請求項1~7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1~4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2005-201428号公報
2.特表平6-503406号公報
3.特開2009-257543号公報
4.特開平9-126216号公報(周知技術を示す文献)
・請求項1について
請求項1に係る発明は、第1軸のクランプ締結具よりも軸端側に、クランプ締結具の脱落を防止するOリングが配置された点で、引用文献1に記載された発明と相違する。
引用文献2には、中空部を有する第1軸(引用文献2では、ブシュ部材3)と、第1軸の中空部に挿入される第2軸(同軸1)と、第1軸の中空部の外側に配置され第1軸と第2軸とを摩擦力によって締結する締結具(同締付けリング8)と、を有する軸の連結構造において、第1軸の締結具よりも軸端側に、締結具の脱落を防止するリング(同スナップリング42)が配置されたことが記載されている(引用文献2の3ページ右下欄15行~4ページ右上欄9行、図1~4、特に、4ページ左上欄5~9行、図4を参照のこと。)。
また、部材の脱落を防止することを目的として、Oリングを装着することは、従来周知の技術である(例えば、周知技術を示す文献4の段落【0004】~【0009】、図7を参照のこと。)。
引用文献1及び2は、ともに、軸の連結構造において、締結具の脱落を防止しようとする点で、共通するものである(引用文献1の段落【0030】、引用文献2の4ページ左上欄5~9行を、それぞれ参照のこと。)から、引用文献1に記載された軸の連結構造に対し、クランプ締結具の脱落を防止するために、引用文献2に記載された事項を採用し、その際、リングとして従来周知の技術を勘案して上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
引用文献1に記載された軸の連結構造に対し、クランプ締結具の脱落を防止するための構成である段差部44の終端部44Cに代えて、同じく締結具の脱落を防止するための構成である引用文献2に記載された事項を採用することに、技術的に阻害要因があるとは認められないし、必ずしも部品点数やコストが増大するとも認められない。
そして、引用文献1に記載された軸の連結構造に対し、引用文献2に記載された事項及び従来周知の技術を採用すれば、当然に、第1軸とクランプ締結具は、クランプ締結具の締結が完了していない状態において、クランプ締結具が第1軸の軸端から脱落する構成となることは、当業者にとっては容易に予測し得ることである。
したがって、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1及び2に記載された発明並びに従来周知の技術に基づいて、当業者が容易になし得たものである。
・請求項2~7について
引用文献1には、第1軸には、段部が設けられ、段部は、クランプ締結具の反軸端側の端面を規制することが記載されている(引用文献1の図3を参照のこと。)。そして、段差部の代わりとして、Oリングを用いることは、当業者が適宜なし得たことに過ぎない。
引用文献1には、第1軸には、段部が設けられ、段部は、クランプ締結具の反軸端側の端面を規制することが記載されている(引用文献1の図3を参照のこと。)。
引用文献2には、第1軸に、リングの配置溝(引用文献2では、円周溝41)が形成されたことが記載されている(引用文献2の4ページ左上欄5~9行、図4を参照のこと。)。
引用文献1には、クランプ締結具の径方向外側を覆うカバー部材を有することが記載されている(引用文献1の図1を参照のこと。)。
引用文献1に記載された軸の連結構造を有するハイポイドギヤモータHGM1をどのような姿勢で用いるかは、当該モータを適用する装置の具体的な態様に応じて、当業者が適宜決定することであり、第1軸の軸端側が反軸端側よりも低い状態で設置されることは、想定の範囲内のことである。
引用文献3には、中空部を有する第1軸(引用文献3では、入力軸110)と、第1軸の中空部に挿入される第2軸(同出力軸120)と、第1軸の中空部の外側に配置され第1軸と第2軸とを摩擦力によって締結するクランプ締結具(同締結部材130)と、を有する軸の連結構造において、第1軸と第2軸は、キー(同キー140)によっても連結されることが記載されている(引用文献3の段落【0035】~【0046】、図1~5を参照のこと。)。
引用文献1に記載された軸の連結構造に対し、引用文献2、3に記載された事項及び従来周知の技術を採用する際に、Oリングをどのように配置するかは、当業者が適宜決定することであり、キーの径方向外側に配置されるようにすることに、特段の困難性は認められない。
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって、請求項1に「前記Oリングは、2つの部材の間に配置されて当該Oリングの一方側から他方側に潤滑剤を漏出させないことを本来の機能とする部材である」という事項が追加された。この補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「Oリング」について限定を付すものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明とその補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当初明細書の段落【0010】には、「Oリングは、もともとは、2つの部材の間に配置されて該Oリングの一方側から他方側にオイル等が漏出しないように機能させるものであるが」と、また、段落【0034】には、「しかしながら、Oリング18は、もともと『該Oリング18の一方側から他方側に潤滑剤等を漏出させない』という機能をその本来の機能として有している。」と記載されているから、「前記Oリングは、2つの部材の間に配置されて当該Oリングの一方側から他方側に潤滑剤を漏出させないことを本来の機能とする部材である」という事項は、当初明細書に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1~7に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明7」という。)は、平成28年10月6日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
中空部を有する第1軸と、該第1軸の中空部に挿入される第2軸と、前記第1軸の中空部の外側に配置され該第1軸と第2軸とを摩擦力によって締結するクランプ締結具と、を有する軸の連結構造において、
前記第1軸と前記クランプ締結具は、該クランプ締結具の締結が完了していない状態において、前記クランプ締結具が前記第1軸の軸端から脱落する構成とされ、
前記第1軸のクランプ締結具よりも軸端側に、該クランプ締結具の脱落を防止するOリングが配置され、
前記Oリングは、2つの部材の間に配置されて当該Oリングの一方側から他方側に潤滑剤を漏出させないことを本来の機能とする部材であることを特徴とする軸の連結構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記クランプ締結具の反軸端側の端面を規制する第2Oリングを有することを特徴とする軸の連結構造。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1軸には、段部が設けられ、当該段部は、前記クランプ締結具の反軸端側の端面を規制することを特徴とする軸の連結構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかにおいて、
前記第1軸に、前記Oリングの配置溝が形成されたことを特徴とする軸の連結構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかにおいて、
前記クランプ締結具の径方向外側を覆うカバー部材を有することを特徴とする軸の連結構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかにおいて、
前記第1軸は、該第1軸の前記軸端側が反軸端側よりも低い状態で設置されることを特徴とする軸の連結構造。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかにおいて、
前記第1軸と前記第2軸は、キーによっても連結され、前記Oリングは、該キーの径方向外側に配置されることを特徴とする軸の連結構造。」
第5 引用文献、引用発明等
1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2005-201428号公報)には、「ハイポイドギヤドモータ及びモータピニオンとハイポイドピニオンとの連結構造」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
(1) 「【0001】
本発明は、ハイポイドギヤドモータ、特にモータ軸に形成されたモータピニオンとハイポイドピニオンとの連結構造に特長を有するハイポイドギヤドモータに関する。
【背景技術】」
(2) 「【0023】
図3、図4に拡大して示すように、ハイポイドピニオン24は、そのモータM1側の端面24Aに、モータ軸20のヘリカルピニオン22が挿入される凹部(係合部)24Hを備える。
【0024】
ハイポイドピニオン24にはその軸方向に沿って、該凹部24Hの外周側から内周側に至るスリット24Sが形成されており、このスリット24Sの隙間が変化することによってハイポイドピニオン24の凹部24Hの内径Doが変化し得る構成とされている。なお、スリット24Sの先端24S1には、応力集中防止のために円加工が施されている。
【0025】
ハイポイドピニオン24の凹部24Hの外周には、円周方向にリング状に段差部44が形成されている。この段差部44は、その底部がハイポイドピニオン24の外径d1より小径の外径d2に加工された平滑部44A、該平滑部44Aから僅かに切り込まれた境界部44B、及び該境界部44Bから立ち上がり平滑部44Aの外径d2より僅かに大径の外径d3に加工された終端部44Cとで構成されている。即ち、d2<d3<d1である。この段差部44に跨るようにして、摩擦締結部材の本体を構成するクランプリング50が配置される。ただし、クランプリング50の前記終端部44Cに対応する部分50Eには段差が形成されており、該終端部44Cとは接触していない。これにより、クランプリング50とハイポイドピニオン24とが平滑部44Aを基準として接触することが可能となる。なお、境界部44Bは必ずしも切り込まれた形状でなくてもよいが、外径d3が外径d2よりも僅かに大径となるような加工を現実に行うのは困難であるため、これを緩和するためには、切り込まれた形状としておいた方が好ましい。
【0026】
クランプリング50は、図2に示されるように、円周方向に狭縮可能なスリット50Aを備え、全体がアルファベットの「C」の形をしている。また、その外周50Bの一部にボルト(図示略)をねじ込むための切欠部50Cを備え、ねじ込んだボルトによって該スリット50Aを締付け可能である。このスリット50Aの締め付けにより、ヘリカルピニオン22の外周部22Aが、ハイポイドピニオン24の凹部24Hの半径方向外側からクランプされる状態が形成される。なお、ケーシング32には、このボルトのねじ込みを可能にするための断面楕円形の長孔32Aが貫通形成されている。
【0027】
クランプリング50のフリー時(ボルトによって締め込まれていない状態のとき)の内径D1は、ハイポイドピニオン24の外径d1より小径とされており(D1<d1)、更に、段差部44の終端部44Cの外径d3よりも小径に設定されている(D1<d3)。」
(3) 「【0030】
クランプリング50のフリー時(ボルトによって締め込まれていない状態)の内径D1は、ハイポイドピニオン24の外径d1より小径とされているため、クランプリング50のこの段差部44での位置決めが容易である。また、内径D1<外径d3であるため、予めハイポイドピニオンに適したクランプリング50を用意しておいて、ハイポイド減速機HG1側に取付けておくことができるため、据付先(工場等)でのクランプリング50の取り付け作業を省略することができるだけでなく、常に最適のクランプリング50を装着することが可能となる。また、このD1<D3の関係があることから、このように予めクランプリング50を装着していたとしても、輸送の途中等において該クランプリング50が段差部44から外れることも防止できる。
【0031】
なお、クランプリング50の内径D1は、段差部44の終端部44Cの外径d3よりも更に小径に設定されているため、クランプリング50の段差部44への設置は、該クランプリング50を若干広げた状態で行うことになる。
【0032】
クランプリング50の図示せぬボルトを締めつけることにより、該クランプリング50のスリット50Aの隙間が狭縮すると、ヘリカルピニオン22の外周部22Aがハイポイドピニオン24の凹部24Hの半径方向外側からクランプされ、両者22、24が摩擦締結される。」
(4) 「【0046】
HGM1…ハイポイドギヤドモータ
HG1…ハイポイド減速機構
M1…モータ
20…モータ軸
22…ヘリカルピニオン(モータピニオン)
24…ハイポイドピニオン
24A…端面
24H…凹部(係合部)
・・・(中略)・・・
44…段差部
50…クランプリング(摩擦締結部材)
50A…スリット」
上記の記載事項及び図面の記載を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、図1~4に記載の実施形態として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「凹部24を有するハイポイドピニオン24と、該ハイポイドピニオン24の凹部24に挿入されるヘリカルピニオン22と、前記ハイポイドピニオン24の凹部24の外側に配置され該ハイポイドピニオン24とヘリカルピニオン22とを摩擦力によって締結するクランプリング20と、を有するヘリカルピニオン22とハイポイドピニオン24との連結構造において、
ハイポイドピニオン24の凹部24の外周の段差部44は、外径d2の平滑部44A、及び外径d2より僅かに大径の外径d3の終端部44Cとで構成され、
クランプリング50のフリー時の内径D1は、段差部44の終端部44Cの外径d3よりも小径(D1<d3)であるので、予めクランプリング50を装着していたとしても、輸送の途中等において該クランプリング50が段差部44から外れることを防止できる
ヘリカルピニオン22とハイポイドピニオン24との連結構造。」
2 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献2(特表平6-503406号公報)には、「外側部材と軸の強制拘束的結合のための結合部材」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(以下、「引用文献2に記載された事項」という。)。
(1) 「図1及び2に全体を100で示す星形板は、図1に鎖線で略示した軸1と結合するためのものである。星形板は軸1に嵌合する穴12を具備するフランジ板11及び120°ずつずらせた3本の腕13からなる。腕13には別の部材例えば弾性結合板等との結合のためのねじ穴14が軸線2から間隔を置いて設けられている。
結合部材10はフランジ板11とボス状に一体に連結されている。結合部材10はフランジ板11の穴12と一線に並ぶ円筒形の内周4及び軸線2に平行な母線により螺旋面として形成された外周面を有するブシュ部材3を有する。外周面は周方向に90°ずつずれた4個所に、フランジ板11の直前まで達し、半径方向に貫通する縦スリット6を有する。周方向に閉じた締付けリング8が螺旋面5の上に配設され、その内周面は対応する螺旋面7として形成されている。締付けリング8は外周に六角スパナ面9を有する。
ブシュ部材3はフランジ板11の反対側で締付けリング8から軸方向に突出し、そこの外側に図1では省略したスナップリング42(図4)を受けるための円周溝41を有する。緊定しない状態でゆるい締付けリング8はこのスナップリングによりブシュ部材3に保持される。
結合部材10の構造の細部を図3に基づいて説明する。直径16の仮想の円筒面15を断面図に破線で略示した。締付けリング8の内周面をなす螺旋面7は初めの2つの象限では仮想の円筒面15の外にあり、終りの2つの象限ではその中にある。螺旋面7及び螺旋面5の局部的半径は図3の『12時』位置17から時計回りに約360°にわたり角度に比例して減少し、最小直径の位置18から狭い移行区域を置いて再び位置17の最大直径へ移行する。軸の直径が100mmの場合位置17、18の間の半径差は例えば2mmである。従って螺旋面5、7を相互に36°の角度だけねじることにより0.2mmの半径差を橋渡しすることができる。たいていの場合これで十分である。考えられるねじ戻し回転行程は決して45°を超えないでよいであろう。
肉厚が最大の又は螺旋面5の半径が最大のブシュ部材3の位置20を考察することによって、緊定機能を明らかにすることができる。図3により締付けリングを保持してこの位置を時計回りに動かすと、位置20は次第に減少する半径を有する螺旋面7の各位置に逐次当接する。こうして位置20は内側へ圧迫され、軸1の上に強制拘束的に緊定される。
締付けリング8の外周面を六角スパナ面として構成することは、図1ないし3の実施例でもその他の実施例でも単に一例と見るべきである。締付けリング8の回転駆動を容易にするための別の構造、例えば引っかけスパナの作用のための空欠部を有する円筒形外周面を設けることももちろん可能である。」(3ページ右下欄15行~4ページ右上欄9行)
(2) FIG.1~FIG.4を参照すると、
中空部を有する結合部材10のブシュ部材3と、該ブシュ部材3の中空部に挿入される軸1と、ブシュ部材3の中空部の外側に配置され該ブシュ部材3と軸1とを摩擦力によって締結する締付けリング8と、を有する軸1と結合部材10のブシュ部材3との連結構造において、
前記ブシュ部材3と前記締付けリング8は、該締付けリング8の締付が完了していない状態において、前記締付けリング8が前記ブシュ部材3の軸端から脱落する構成とされ、
前記ブシュ部材3の締付けリング8よりも軸端側の円周溝41に、該締付けリング8の脱落を防止するスナップリング42が配置されていることが看取される。
3 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献3(特開2009-257543号公報)には、「回転軸連結構造及びギヤドモータ」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(以下、「引用文献3に記載された事項」という。)。
「【0035】
以下に、本発明の回転軸連結構造及びギヤドモータの実施例について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施例であるギヤドモータの側面一部断面図であり、図2は、図1A-A線の断面図であり、図3は、本発明の一実施例であるギヤドモータの軸嵌合穴の拡大断面図であり、る。図4、本発明の締め付け前のキー、締結部材、軸嵌合穴及び出力軸の断面図であり、図5は、本発明の締め付け後のキー、締結部材、軸嵌合穴及び出力軸の断面図である。
【0036】
本発明の一実施例であるギヤドモータ100は、図1に示すように、減速機101とモータ102が一体に連結され、減速機101の入力軸110とモータ102の出力軸120が同一軸線上で上記回転軸連結構造によって連結され回転が伝達される。
減速機101の入力軸110には、図1乃至図4に示すように、モータ102側の軸端に内周にキー溝113を有する軸嵌合穴111が設けられ、モータ102の出力軸120には外周にキー溝123が設けられている。
【0037】
そして、該軸嵌合穴111には入力軸110の中心軸を含みかつキー溝113を通る平面に沿って軸端から少なくとも軸嵌合穴111の途中まで伸びるスリット112が設けられるとともに、分断部132を有する環状の締結部材130が入力軸110の軸端に外嵌されている。
【0038】
締結部材130は、分断部132の間隔を狭める締結ボルト133を有するとともに、しており、締結部材130の軸方向の長さは、スリット112の軸方向長さより短くされており、軸嵌合穴111の途中まで伸びるスリット112部に外嵌された締結部材130の締結ボルト133を締め付けることにより、軸嵌合穴111の内径を縮小するとともにキー溝113の幅も狭められるように構成されている。
【0039】
以上の構成のギヤドモータ100の組立及び動作について以下に説明する。
まず、図4に示すように、モータ102の出力軸120のキー溝123とキー140は密に嵌合するように構成されており、あらかじめモータ102の出力軸120のキー溝123にキー140を嵌合させた状態でモータ102の出力軸120を減速機101の入力軸110に設けられた軸嵌合穴111に挿入する。
この時、モータ102の出力軸120には薄くグリース等の潤滑材を塗布しておく。
・・・(中略)・・・
【0046】
なお、上記実施例では、軸嵌合穴111には入力軸110の中心軸を含みかつキー溝113を通る平面に沿って、図2の図示下方のキー溝113が存在しない部分にもスリット112を設けているが、キー溝113側にだけスリット112を設けても良い。
また、締結部材130の分断部132に加えて、回転中心軸に対称の位置の内周側から一部切り込みを設けても良い。
・・・(後略) 」
4 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献4(特開平9-126216号公報)には、「配管支持用の環状部材のボルト脱落防止装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(以下、「引用文献4に記載された事項」という。)。
(1) 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、配管支持用の環状部材のボルト脱落防止装置に関し、特に、ダクトやスパイラル管などの円筒管を配管支持装置により支持して、立配管支持用の立管支持バンドや水平配管支持用または垂直配管支持用の床バンドによる支持により配管することに適した配管支持用の環状部材のボルト脱落防止装置に関する。」
(2) 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来から使用されてきた配管支持装置は、水平方向の配管を吊下げる場合もあるが、必ずしも、配管を吊下げる配管吊下げ装置によらずに他の支持装置の使用も必要なところがある。ところで、配管を取り巻く環状部材が有する締結具としては、ボルトとナットによる締結具が一般的である。ボルトとナットによる締結具により締結する時には、まず、環状部材の挟持部分の両方の自由端の部分の近くの通孔にボルトとナットによる締結具を使用し、ボルトを挿通し、そのボルトの先端部分の側からナットを嵌め込んで締め付けるのであるが、その際に、挿通されたボルトが抜け出して、ナットを嵌めて締め付けることが出来ないことが、しばしば、生じた。本発明は、それらの問題を解決することを課題とする。」
(3) 「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、配管支持用の環状部材であって、その環状部材の締結部分をボルトにより形成し、そのボルト締めの締結部分により、配管支持用の環状部材を閉鎖させる際に、ボルト締めするボルトの頭の部分の反対側からOリングなどの摩擦部材をボルトの先端部分に嵌めて、締結用として装着されたボルトの部分が外れて脱落しないようにボルトの部分を保持させて、ボルトの先端部分へのナット締めをなし得ることを特徴にした配管支持用の環状部材のボルト脱落防止装置である。
【0005】
【作用】本発明の配管支持用の環状部材のボルト脱落防止装置において、配管支持用の環状部材による締結部分をボルト締めする構造にして、配管支持用の環状部材による締結部分をボルト締めする際に、まず、最初に、環状部材による締結部分を開き、その開かれた状態の環状部材による締結部分の開かれた状態の部分に、配管を支持するために、配管の周囲に環状部材による締結部分をあてがい、配管を環状部材による支持部分により挟持して、配管支持用の環状部材に設けた環状部材による支持部分を形成し、その環状部材による支持部分の締結部分を有していて、その締結部分をボルト締めする構造にして、その環状部材による配管支持部分を閉鎖させる際に、ボルト締めするボルトの頭の部分の反対側からOリングなどの摩擦部材をボルトの先端部分に嵌めて、締結用として装着されたボルトの部分が外れて脱落しないようにし得る。そこで、配管支持用の環状部材の締結部分をボルト締めする際に、ナット締めする前に、Oリングなどの摩擦部材を嵌めて、ナット締めする前にボルトの部分が外れて脱落しないようにすることを確実にすることが出来る。そのために、締結部分のボルトの頭の部分の反対側にナット締めするにあたり、配管支持用の環状部材のボルトを離脱させないようにしてボルトとナットとの締結を可能にするので、施工作業の安全を確保し、失敗なく、かつ、能率的に配管支持用の環状部材のボルト締めによる締結作業をすることができる。
【0006】
【実施例1】本発明は、配管支持用の環状部材であって、その中間部分に蝶番部分を有する半円弧状の挟持部分を形成し、その半円弧状の挟持部分の上端部分の締結部分を形成し、その締結部分をボルト締めし得る構造にして、半円弧状の挟持部分を閉鎖させる際に、ボルト締めするボルトの頭の部分の反対側からOリングをボルトの先端部分に嵌めて、締結用として装着されたボルトの部分が外れて脱落しないようにし、そこで、配管支持用の環状部材の締結部分をボルト締めする際に、ナット締めする前に、Oリングを嵌めて、ボルトの部分が外れて脱落しないようにするために、締結部分のボルトの頭の部分の反対側にナット締めするにあたり、ナット締めする前に、Oリングを嵌めて、その後、ナット締めして配管吊下げ用の環状部材のボルトを離脱させないようにしてボルトとナットとの締結を可能にし得ることを特徴にした配管支持用の環状部材のボルト脱落防止装置である。
【0007】
【実施例2】本発明は、立配管支持用の床バンドによる環状部材の締結部分をボルトにより形成し、そのボルト締めの締結部分により、立配管支持用の床バンドによる環状部材を閉鎖させるのであるが、その対向位置に平行部分を形成し、それらの二つの平行部分を向き合わせて、その向き合わせ部分をボルト締めし得る構造において、そのボルト締めの締結部分により、配管支持用の環状部材を閉鎖させる際に、ボルト締めするボルトの頭の部分の反対側からOリングをボルトの先端部分に嵌めて、締結用として装着されたボルトの部分が外れて脱落しないようにし、ボルトの先端部分にナットを嵌めて締結し得ることを特徴にした配管支持用の環状部材のボルト脱落防止装置である。
【0008】
【実施例3】本発明は、立配管支持用の立管支持バンドまたは立管支持バンドに代る立管支持部材による環状部材の締結部分をボルトにより形成し、そのボルト締めの締結部分により、立配管支持用の立管支持バンドまたは立管支持バンドに代る立管支持部材による環状部材を閉鎖させるのであるが、その対向位置に平行部分を形成し、それらの二つの平行部分を向き合わせて、その向き合わせ部分をボルト締めし得る構造において、そのボルト締めの締結部分により、配管支持用の環状部材を閉鎖させる際に、ボルト締めするボルトの頭の部分の反対側からOリングをボルトの先端部分に嵌めて、締結用として装着されたボルトの部分が外れて脱落しないようにし、ボルトの先端部分にナットを嵌めて締結し得ることを特徴にした配管支持用の環状部材のボルト脱落防止装置である。
【0009】
【実施例4】本発明は、配管支持用の環状部材を二つ割の半円弧形で対象形の部材により形成し、その二つ割の半円弧形で対象形の部材の両端部分に、二つの平行部分を向き合わせて形成し、その互いに平行で向き合った部分を締結部材により締結するようにし、配管支持用の環状部材の締結部分をボルトにより形成し、そのボルト締めの締結部分により、配管支持用の環状部材を閉鎖させるのであるが、その対向位置に平行部分を形成し、それらの二つの平行部分を向き合わせて、その向き合った部分をボルト締めし得る構造において、そのボルト締めの締結部分により、配管支持用の環状部材を閉鎖させる際に、ボルト締めするボルトの頭の部分の反対側からOリングなどの摩擦部材をボルトの先端部分に嵌めて、締結用として装着されたボルトの部分が外れて脱落しないようにし得ることを特徴にした配管支持用の環状部材のボルト脱落防止装置である。」
(4) 上記記載事項及び図1~図7を参酌すると、引用文献4には、
産業上の利用分野は、配管支持用の環状部材のボルト脱落防止装置であり、ボルトとナットによる締結具により締結する時には、まず、環状部材1の挟持部分の両方の自由端の部分の近くの通孔にボルトとナット5による締結具を使用し、ボルトを挿通し、そのボルトの先端部分4の側からナット5を嵌め込んで締め付けるのであるが、その際に、挿通されたボルトが抜け出して、ナット5を嵌めて締め付けることが出来ないという問題を解決することを課題とし、
そのために、配管支持用の環状部材1を閉鎖させる際に、ボルト締めするボルトの頭の部分2の反対側からOリング7などの摩擦部材をボルトの先端部分4に嵌めて、締結用として装着されたボルトの部分が外れて脱落しないようにボルトの部分を保持させて、ボルトの先端部分4へのナット5を締めることが記載されている。
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「ハイポイドピニオン24」は、本願発明1の「第1軸」に相当する。
以下同様に、「ヘリカルピニオン22」は、「第2軸」に、
「凹部24」は、「中空部」に、
「クランプリング20」は、「クランプ締結具」に、
「ヘリカルピニオン22とハイポイドピニオン24との連結構造」は、「軸の連結構造」に、それぞれ相当する。
以上のことから、本願発明1と引用発明とは次の点で一致する。
「中空部を有する第1軸と、該第1軸の中空部に挿入される第2軸と、前記第1軸の中空部の外側に配置され該第1軸と第2軸とを摩擦力によって締結するクランプ締結具と、を有する軸の連結構造」
一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点]
本願発明1では、「前記第1軸と前記クランプ締結具は、該クランプ締結具の締結が完了していない状態において、前記クランプ締結具が前記第1軸の軸端から脱落する構成とされ、前記第1軸のクランプ締結具よりも軸端側に、該クランプ締結具の脱落を防止するOリングが配置され、前記Oリングは、2つの部材の間に配置されて当該Oリングの一方側から他方側に潤滑剤を漏出させないことを本来の機能とする部材である」のに対して、
引用発明では、「ハイポイドピニオン24の凹部24の外周の段差部44は、外径d2の平滑部44A、及び外径d2より僅かに大径の外径d3の終端部44Cとで構成され、クランプリング50のフリー時の内径D1は、段差部44の終端部44Cの外径d3よりも小径(D1<d3)であるので、予めクランプリング50を装着していたとしても、該クランプリング50が段差部44から外れることを防止できる」点。
(2) 相違点についての判断
ア 引用文献2及び引用文献4について
引用文献2に記載された事項の「結合部材10のブシュ部材3」は、本願発明1の「第1軸」に相当し、以下同様に、「軸1」は「第2軸」に、「軸1と結合部材10のブシュ部材3との連結構造」は、「軸の連結構造」に、それぞれ相当する。
また、引用文献2に記載された事項の「締付けリング8」と、本願発明1の「クランプ締結具」とは、「締結部材」である点で共通する。
すると、引用文献2に記載された事項(「第5 2(2)」を参照。)には、「中空部を有する第1軸と、該第1軸の中空部に挿入される第2軸と、前記第1軸の中空部の外側に配置され該第1軸と第2軸とを摩擦力によって締結する締結部材と、を有する軸の連結構造において、前記第1軸と前記締結部材は、該締結部材の締結が完了していない状態において、前記締結部材が前記第1軸の軸端から脱落する構成とされ、前記第1軸の締結部材よりも軸端側に、該締結部材の脱落を防止するスナップリング42が配置され」ていることが記載されているといえる。
ここで、相違点に係る本願発明1の構成と、引用文献2に記載された事項とを対比すると、少なくとも、締結部材の脱落を防止するものについて、相違点に係る本願発明1の構成では「Oリング」で、「2つの部材の間に配置されて当該Oリングの一方側から他方側に潤滑剤を漏出させないことを本来の機能とする部材」であるのに対して、引用文献2に記載された事項では「スナップリング42」である点で相違している。
そこで、部材の脱落を防止することを目的として、Oリングを装着することが周知技術であることの例として示された引用文献4について検討する。
引用文献4に記載された事項は、配管支持用の環状部材の締結部分で、環状部材1、1を閉鎖し、ボルトとナットにより締結するもので、ボルトの部分が外れて脱落しないようにボルトの部分を保持させることを課題とし、脱落を防ぐ対象がボルトで、Oリングなどの摩擦部材により脱落を防ぐものである。
一方、引用文献2に記載された事項は、結合部材10のブシュ部材3と軸1との連結を、締付けリング8により締結するもので、締付けリング8がブシュ部材3の軸端から脱落することを防止するもので、脱落を防ぐ対象が締付けリング8で、円周溝41に配置するスナップリング42により脱落を防ぐものである。
このように、引用文献4に記載された事項と、引用文献2に記載された事項とは、その締結されるものが互いに異なり、締結部材も互いに異なり、その属する技術分野が同じであるとはいえず、また、脱落を防ぐ対象が、前者はボルトであるのに対して、後者は締付リング(前者の「ナット」に相当。)である点でも異なる。
そうすると、引用発明に引用文献2に記載された事項を適用する際に、引用文献2に記載された事項の、締付リングの脱落防止のためのスナップリング42に換えて、引用文献4に記載された事項の、ボルトの脱落防止のためのOリングを適用する動機付けがあるとはいえない。
イ 引用文献3について
引用文献3に記載された事項には、入力軸110と出力軸とをキー140により連結することが記載されてはいるものの、相違点に係る本願発明1の構成については、記載も示唆もされていない。
ウ 小括
以上のことから、相違点に係る本願発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本願発明1は、引用発明、及び引用文献2~4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明2~7について
本願発明2~7は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同じ理由により、引用発明、及び引用文献2~4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
第7 原査定について
前記「第6 1」及び「第6 2」のとおり、本願発明1~7は、原査定において引用された引用文献1~4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-015017