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特許拒絶査定不服審判

2016-013659

ゴムの加工に使用される改良型カーボンブラック

審判番号
2016-013659
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-543974
請求日
2016年09月12日
審決日
2017年10月13日
公報発行日
2018年04月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】アディティア ビルラ ヌーヴォ リミテッド
  • 【請求人代理人】西島 孝喜
  • 【請求人代理人】弟子丸 健
  • 【請求人代理人】田中 伸一郎
  • 【請求人代理人】箱田 篤
  • 【請求人代理人】浅井 賢治
  • 【請求人代理人】山崎 一夫
  • 【請求人代理人】市川 さつき
  • 【請求人代理人】服部 博信
  • 【請求人代理人】志村 将
審判長/審判官
  • 審判長 加藤 友也
  • 審判官 大島 祥吾
  • 審判官 渕野 留香
分類
P18 .121-Z (C08K) / P18 .575-Z (C08K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第162条、特許法第17条の2第5項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-543974「ゴムの加工に使用される改良型カーボンブラック」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月21日国際公開、WO2012/081034、平成25年12月26日国内公表、特表2013-545866〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、国際出願日である2011年12月12日(パリ条約に基づく優先権主張 2010年12月13日 インド(IN))にされたとみなされる特許出願であって、平成26年5月19日付けで拒絶理由が通知され、同年11月26日に意見書並びに特許請求の範囲及び明細書についての手続補正書が提出され、平成27年5月25日付けで拒絶理由<最後>が通知され、同年12月1日に意見書及び特許請求の範囲についての手続補正書が提出されたが、平成28年4月27日付けで当該平成27年12月1日付け手続補正書でした補正について、補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定がされ、これに対して、同年9月12日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲及び明細書についての手続補正書が提出されたので、特許法162条所定の審査がされた結果、同年10月21日付けで同法164条3項所定の報告がされたものである。 第2 補正の却下の決定 [結論] 平成28年9月12日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 平成28年9月12日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の内容 本件補正は、特許請求の範囲についての補正を含むものであって、本件補正の前後における特許請求の範囲の記載は、それぞれ以下のとおりである。 ・ 本件補正前 「【請求項1】 カーボンブラックと天然油を含む、ゴムの加工に使用するための、処理され乾燥されたカーボンブラック組成物。 【請求項2】 前記天然油が、食用植物油および非食用植物油から選択される、請求項1に記載のカーボンブラック組成物。 【請求項3】 前記天然油が、米ぬか油(イネ)、インドセンダン油(インドセンダン(Azadirachta indica))、カランジャ油(クロヨナ(Milletia pinnata))、ヤシ油、マフア油(マドゥカ・ロンギフォリア(Madhuca longifolia))、又はゴム種子油から選択される、請求項1又は2に記載のカーボンブラック組成物。 【請求項4】 前記油が、カーボンブラックの1~50質量%の割合で存在する、請求項1又は2に記載のカーボンブラック組成物。 【請求項5】 ゴム化合物と請求項1記載のカーボンブラック組成物とを含む、ゴム化合物組成物。 【請求項6】 前記油が、カーボンブラックの1~50質量%の割合で存在する、請求項3に記載のカーボンブラック組成物。 【請求項7】 カーボンブラック組成物が70℃の温度で乾燥された、請求項1に記載のカーボンブラック組成物。 【請求項8】 ゴム混合工程の間ゴム加工油を個別に添加することなく得られる、請求項5に記載のゴム化合物組成物。 【請求項9】 ゴムの加工に使用するためにカーボンブラックを処理する方法であって、 a) 前記カーボンブラックを天然油で処理し、処理されたカーボンブラックを形成すること、 b) 前記処理されたカーボンブラックを乾燥し、乾燥された、処理されたカーボンブラックを提供することであって、前記乾燥された、処理されたカーボンブラックが、その中に組み込まれた前記油を有すること、 を含む、前記方法。 【請求項10】 前記天然油が、食用植物油および非食用植物油から選択される、請求項9に記載の方法。 【請求項11】 乾燥が70℃の温度で行われる、請求項9に記載の方法。」 ・ 本件補正後 「【請求項1】 ゴム化合物、および カーボンブラックと、その中に組み込まれた天然油とを含む処理され乾燥されたカーボンブラック組成物を含み、 別個のゴム加工油を含まない、ゴム化合物組成物。」 本件補正は、上記訂正後の請求項1に係る補正(以後、当該請求項1に係る補正を、「補正事項ア」という。)を含むものである。 2 補正事項アの目的 補正事項アは、補正前の請求項1ないし4及び6ないし11の削除に伴い、補正前の請求項5の記載を補正前の請求項1を引用しない形式に書き下した上で、補正前の請求項8の態様に限定したものであって、しかも、補正の前後で、請求項に記載の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は変わらないから、当該補正事項アは、特許法第17条の2第5項第1及び2号に掲げる請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 3 独立特許要件違反の有無について 上記2のとおりであるから、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(補正事項アが、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するか。いわゆる独立特許要件違反の有無)について検討するところ、補正事項アは当該要件に違反すると判断される。 すなわち、本願補正発明は、下記刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 刊行物1: P.P.KUNDU et al.,Surface Modification of Carbon Black by Vegetable Oil-Its Effect on the Rheometric,Hardness,Abrasion,Rebound Resilience,Tensile,Tear,and Adhesion Properties,Journal of Applied Polymer Science,2002年 4月11日,volume84, Number2,p.256-260 (拒絶査定の理由とされた平成27年5月25日付け拒絶理由通知において提示されている引用文献3) 刊行物2: P.P.KUNDU,Improvement of Filler-Rubber Interaction by the Coupling Action of Vegetable Oil in Carbon Black Reinforced Rubber,Journal of Applied Polymer Science,2000年,Vol.75,p.735-739 (拒絶査定の理由とされた平成27年5月25日付け拒絶理由通知において提示されている引用文献5) 以下、特許を受けることができない理由を、下記5において詳述する。 4 本願補正発明 本願補正発明は、平成28年9月12日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「ゴム化合物、および カーボンブラックと、その中に組み込まれた天然油とを含む処理され乾燥されたカーボンブラック組成物を含み、 別個のゴム加工油を含まない、ゴム化合物組成物。」 5 本願補正発明が特許を受けることができない理由 (1) 刊行物の記載事項 本願の優先日前に頒布された刊行物であることが明らかな刊行物1には、以下の事項が記載されている。和訳については、当審が作成し、下線については、当審において付与した。 ア 「 」(第256ページ中段) (要旨:可塑剤(植物油またはパラフィン系石油)で前処理したカーボンブラックを調合のためゴムと混合する。流動測定トルクから得られる硬化度は植物油含有量の増加とともに直線的に減少することが認められる。カーボンブラック-ゴム界面における植物油のカップリング作用とその単層(ミクロ可塑化)の存在は、3 phrまで、tan ∂(流動測定研究から)、破断伸び、及び引っ張り強度の減少と摩耗損失、硬度、及び300%モジュラスの増加を引き起こす。それを超えると、植物油の増加に対してちょうど逆の傾向を示す。引き裂き強度と反発弾性は両者とも植物油投与量の増加とともに増加し;その増加割合は3 phrまでカップリング作用とミクロ可塑化のため緩やかで、3 phrを超えるとカップリング作用と可塑化作用の両者の存在のため急激になる。1 phrまでの可塑剤の添加により付着力は、植物油の場合は増加しパラフィン系石油の場合はほとんど一定で変わらないが;1phrを超えるとゴム-金属界面に多層の可塑剤が存在するため減少する。C○(審決注:丸囲みCを表す。以下同じ)2002 John Wiley & Sons, Inc. J Appl Polym Scj 84: 256-260, 2002; DOI 10.1002/app.10320) イ 「 」(第257ページ左欄第1行ないし右欄第4行) (実験 使用材料 天然ゴム(RMA 1X):水分含有量1%、灰分含有量0.4%、比重0.85、ムーニー粘度(100℃におけるML1+4) 60; ポリブタジエンゴム:水分含有量1%、灰分含有量1.5%、比重0.93、Mooney粘度(100℃におけるML) 45; HAFカーボンブラック:DBP吸収 102 cc/100g、Ralson Carbon(インド)より調達;6 PPD:劣化防止剤、M.W. 268、ICI Ltd.より調達;ステアリン酸:融点62℃、酸価 192-204;植物油(自社製化学薬品):アニリン点22℃、報告済みのものに比べより不飽和度が高い6。真鍮(Cu70%及びZn30%)被覆軟鋼を金属とゴム界面の付着力の試験のための基材として用いた。 サンプル調製 化合物は次のように調合される。NR(RMA-1X): 70, PBR: 30, カーボンブラック、HAF(補強剤):50、可塑剤(植物油またはパラフィン系オイル):変動量、ZnO: 4.5, ステアリン酸:1.5、6 PPD: 1, H.S. ビーズ(抗酸化剤):1.5、パラフィンワックス:2、シクロへキシルベンズスルフェンアミド、CBS(加速剤):1、イオウ:1.5。0、1、 0.2、1、2、3、4、5及び5.8 phrの植物油を用いて8種の化合物が調合される。パラフィン系オイルは、植物油を含む化合物と付着特性を比較するためにのみ用いられる。調合された化合物は2ロールミルにより標準的操作手順で混合された。標準的操作手順では、次の混合順に従った。すなわち、まずゴムの素練りと混合ミルの前ロール上での帯形成;カーボンブラック及び(もしあるなら)可塑剤、促進活性剤(ZnOとステアリン酸)、抗分解剤(6 PPD及びH.S.ビーズ)、可塑剤助剤(パラフィンワックス)の添加、そして最後に加速剤と硬化剤(CBSとイオウ)の添加である。それぞれの調合成分の添加後、ゴムと適切に混合するようにある程度時間を与えた。全ての化合物について成分の分散のレベルが同様になるように、全混合時間は17分に保った。混合温度は70℃に保った。可塑剤(植物油またはパラフィン系石油)は個別には加えなかった。これらは最初前処理としてカーボンブラックと混合し、それから混合ミルでゴムに加えた。植物油またはパラフィン系石油によるカーボンブラックの前処理手順は別に記載した6。上のように調合された化合物は、流動測定、硬度、摩耗、引き裂き、及び引っ張り強度特性の試験のためのサンプル調製に用いられた。) ウ 「 」(第260ページ左欄第10行ないし右欄第13行) (結論 植物油で前処理されたカーボンブラックがゴムと混合されると、物理的特性並びに機械的特性が大幅に改善すると結論できる。流動測定トルクから得られる硬化度は、植物油含有量の増加とともに直線的に減少する。3 phrまでの、tan ∂(流動測定研究から)、破断伸び、及び引っ張り強度の減少と摩耗損失、硬度、及び300%モジュラスの増加は、カーボンブラック-ゴム界面におけるカップリング作用と植物油単層(ミクロ可塑化)の存在によるものである。一方、植物油含有量が3 phrを超えると、植物油の可塑化効果が優勢になるため、植物油含有量の増加に対してちょうど逆の傾向を示す。引き裂き強度と反発弾性は、両者ともに植物油含有量の増加とともに増加する。増加の割合は3 phrまではカップリング作用とミクロ可塑化のために緩やかで、3 phrを超えるとカップリング作用と可塑化作用の両方が存在するためより急激になる。可塑化剤1 phrまでの添加により、付着力は、植物油の場合は増加し、パラフィン系オイルの場合はほとんど一定のままである。1 phrを超えると、付着力はゴム-金属界面に多層の可塑剤が存在するため減少する。植物油の増加とともに付着力は減少するが、それでもなお、可塑化されていないものに比べれば高度の付着性を示す。) エ 「 」(第260ページ右欄第20ないし31行) (参考文献 1.Wolff, S.; Wang, M.-J. Rubber Chem Technol 1992, 65, 329. 2.Wang, M.-J.; Wolff, S.; Tan, E.-H. Rubber Chem Technol 1993, 66, 178. 3.Wolff, S.; Wang, M.-J.; Tan, E.-H. Kautschuk Gummi Kunststoffe 1994, 47, 102. 4.Wolff, S.; Tan, E.-H.; Donnet, J.-B. Kautschuk Gummi Kunststoffe 1994, 47, 485. 5.Wang, W.-D.; Vidal, A.; Nanse, G.; Donnet, J.-B. Kautschuk Gummi Kunststoffe 1994, 47,493. 6.Kundu, P. P. J Appl Polym Sci 2000, 75,735.) 本願の優先日前に頒布された刊行物であることが明らかな刊行物2には、以下の事項が記載されている。和訳については、当審が作成し、下線については、当審において付与した。 オ 「 」(第735ページ中段) (要旨:植物油は、混合の際ゴム化合物へ少量加えられてきた。植物油含有化合物について、流動測定トルクから得られる硬化度はより低いことが認められた。このことは、その物理特性と引っ張り特性から明白である。植物油含有化合物が示す摩耗と硬度がより低いことは、その化合物の可塑化がより良好であることと架橋密度がより低いためであろう。最大トルクにおけるtan ∂が低いことは、低損失と低熱発生を示す。植物油含有化合物は、低モジュラス、高い引っ張り強度及び伸びを示す。植物油を含有する化合物は全て、植物油を含有しない標準化合物に比べ、低い圧縮歪みと高い弾性反発、引き裂き強度、及び屈曲亀裂を示す。C○ 2000 John Wiley & Sons, Inc. J Appl Polym Scj 75: 735-739, 2000) カ 「 」(第736ページ上段及び左欄下から17行ないし右欄第12行) (表1 phr単位で表した調合成分 (表の記載は省略) 全ての化合物は次の物を(単位phrで)含む。天然ゴム(RMA-IX): 70, ポリブタジエンゴム:30、酸化亜鉛(ZnO): 4.5, ステアリン酸:1.5、6 PPD(劣化防止剤):1.0;H.S.ビーズ:1.5、パラフィンワックス:2.0、Elasto 710: 10.0, シクロへキシルベンズスルフェンアミド:1.0、イオウ:1.5 試料調製 調合された化合物は表1に示す。表1の第一欄は標準化合物(化合物1)と見なされる。他の化合物は、化合物2、化合物3、及び化合物4に植物油として過剰量の可塑剤(0.5, 0.9, 及び1.5 phr)を用い、可塑剤とカーボンブラックの全量を一定に保って調合した。所要量の植物油は必要量のカーボンブラックとともにアセトン中にとり、適切に混合する様ゆっくり撹拌する。次いでアセトンは40℃で蒸発させる。ゴム、植物油修飾カーボンブラック、及び他の調合成分は、標準操作に従い2ロールミルで混合された。化合物は、異なる試験試料について、プレス機上、160℃、15MPaで9分間成形した。全ての試験試料は処理済みカーボンブラックを用いて調製した。これらの植物油処理カーボンブラック化合物は、カーボンブラックと植物油を直接加え2ロールミルにかけて得られた化合物に比べ優れていると期待される。これは、直接添加の場合に起こるゴムによる植物油吸着への妨害がない適切な物理的混合によるものであろう。これは実験的にも確かめられていて、添加した植物油は可塑剤としてのみ作用する。) (2)刊行物1に記載された発明 刊行物1は、植物油で前処理されたカーボンブラックがゴムと混合されると、物理的特性並びに機械的特性が大幅に改善することが記載された文献(上記(1)ア、ウ)であって、上記(1)イにおいて、特性を確かめるために具体的に調合された組成物として、 「NR(RMA-1X): 70, PBR: 30、ZnO: 4.5, ステアリン酸:1.5、6 PPD: 1, H.S. ビーズ(抗酸化剤):1.5、パラフィンワックス:2、シクロへキシルベンズスルフェンアミド、CBS(加速剤):1、イオウ:1.5、植物油(変動量)で前処理されたカーボンブラックHAF50が配合された組成物。」に係る発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 (3)本願補正発明と引用発明との対比・判断 引用発明と本願補正発明とを対比する。 引用発明の「NR(RMA-1X): 70」と「PBR: 30」は、本願補正発明における「ゴム化合物」に相当する。 引用発明の「植物油」は、本願補正発明における「天然油」に相当するから、引用発明の「植物油(変動量)で前処理されたカーボンブラックHAF」は、本願補正発明における「カーボンブラックと、その中に組み込まれた天然油とを含む処理されたカーボンブラック組成物」に相当する。 引用発明の組成物には、「ZnO: 4.5, ステアリン酸:1.5、6 PPD: 1, H.S. ビーズ(抗酸化剤):1.5、パラフィンワックス:2、シクロへキシルベンズスルフェンアミド、CBS(加速剤):1、イオウ:1.5」が配合されているが、本願補正発明は、その他の添加剤等を含むことを除外していないから、この点は相違点とはならない。 引用発明の「組成物」は、本願補正発明における「ゴム化合物組成物」に相当する。 そうすると、両者は、 「ゴム化合物、および カーボンブラックと、その中に組み込まれた天然油とを含む処理されたカーボンブラック組成物を含む、ゴム化合物組成物。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点1> 処理に関し、本願補正発明は「乾燥された」と特定するのに対し、引用発明は、この点を特定しない点。 <相違点2> 本願補正発明は、「別個のゴム加工油を含まない」と特定するのに対し、引用発明は、この点を特定しない点。 以下、相違点について検討する。 相違点1について 刊行物1には、「カーボンブラックの前処理手順は別に記載した6。」(上記(1)ウ)と記載されていて、注6には、上記刊行物2が記載されており、当該刊行物2には、「植物油は必要量のカーボンブラックとともにアセトン中にとり、適切に混合する様ゆっくり撹拌する。次いでアセトンは40℃で蒸発させる」(上記(1)カ)との記載があるから、カーボンブラックの前処理において、乾燥させることは、当業者が、刊行物2の記載から容易想到である。 相違点2について 引用発明に配合されているZnO、ステアリン酸、6 PPD、H.S. ビーズ(抗酸化剤)、シクロへキシルベンズスルフェンアミド、CBS(加速剤)、イオウは、ゴム加工油でないことは明らかである。そして、パラフィンワックスは、常温で固体であって加工油ではないから、相違点2は、実質上の相違点ではない。 仮に、パラフィンワックスが加工油といえるとしても、当該パラフィンワックスは可塑剤助剤として配合されているものであり(上記(1)イ)、カーボンブラックの配合量を減少させれば可塑剤は不要となることが技術常識(後藤邦夫 編「プラスチックおよびゴム用添加剤実用便覧」、昭和52年4月1日3刷発行、株式会社化学工業社、1005頁には、「素練り方法が開発されると,軟化剤は特殊製品(スポンジ)以外への利用量を制限された.1912年にカーボン・ブラックがゴム工業に導入されると,ゴムの素練りを制限してカーボンの混合と分散を助けるために再び軟化剤を使用する必要が起こってきた.」と記載されている。)であることを踏まえると、カーボンブラックの配合量を減少させるとともに可塑剤助剤であるパラフィンワックスを配合しないようにすることは、当業者において容易想到である。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び刊行物2に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)まとめ 本願補正発明は、引用発明及び刊行物2に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 6 補正の却下の決定のむすび 以上のとおりであるから、上記補正事項アを含む本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成28年9月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~11に係る発明は、平成26年11月26日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載されたとおりのものであって、そのうち、請求項1及び5に係る発明は、以下のとおりである。 「【請求項1】 カーボンブラックと天然油を含む、ゴムの加工に使用するための、処理され乾燥されたカーボンブラック組成物。 【請求項5】 ゴム化合物と請求項1記載のカーボンブラック組成物とを含む、ゴム化合物組成物。」 ここで、請求項5を請求項1を引用しない形式で書き下すと、次のとおりである。 「ゴム化合物とカーボンブラックと天然油を含む、ゴムの加工に使用するための、処理され乾燥されたカーボンブラック組成物とを含む、ゴム化合物組成物。」(以下、当該発明を「本願発明」という。) 2 引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に外国において頒布されたことが明かな刊行物1(P.P.KUNDU et al.,Surface Modification of Carbon Black by Vegetable Oil-Its Effect on the Rheometric,Hardness,Abrasion,Rebound Resilience,Tensile,Tear,and Adhesion Properties,Journal of Applied Polymer Science,2002年 4月11日,volume84, Number2,p.256-260)及び刊行物2(P.P.KUNDU,Improvement of Filler-Rubber Interaction by the Coupling Action of Vegetable Oil in Carbon Black Reinforced Rubber,Journal of Applied Polymer Science,2000年,Vol.75,p.735-739)の記載事項及び引用発明は、上記第2 5(1)及び(2)に記載したとおりである。 3 対比・判断 上記第2 2で検討したように、本願補正発明は本願発明の発明特定事項に限定を加えたものである。そして、本願発明の発明特定事項に限定を加えた本願補正発明が上記第2 5のとおり、引用発明及び刊行物2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に引用発明及び刊行物2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明、すなわち請求項5に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-013659

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