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特許拒絶査定不服審判

2016-019156

マイクロカプセル化難燃剤およびそれを含む難燃性樹脂組成物

審判番号
2016-019156
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-194175
請求日
2016年12月21日
審決日
2018年03月14日
公報発行日
2018年06月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社伏見製薬所
  • 【請求人代理人】市川 恒彦
審判長/審判官
  • 審判長 佐々木 秀次
  • 審判官 冨士 良宏
  • 審判官 阪▲崎▼ 裕美
分類
P18 .121-WZ (C09K) / P18 .121-WZ (C08K) / P18 .121-WZ (C08L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2012-194175「マイクロカプセル化難燃剤およびそれを含む難燃性樹脂組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月17日出願公開、特開2014- 47342〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本件審判請求に係る出願(以下、「本件出願」という。)は、平成24年 9月 4日に出願された特願2012-194175号であって、出願後の手続きの経緯の概略は、以下のとおりである。 平成28年 5月31日付け 拒絶理由通知 平成28年 7月23日   意見書及び手続補正書提出 平成28年10月 3日付け 拒絶査定 平成28年12月21日   審判請求書及び手続補正書提出 平成29年 1月19日付け 前置報告 平成29年 6月13日   上申書提出 平成29年 9月11日付け 当審における拒絶理由通知 平成29年11月 3日   意見書及び手続補正書提出 第2 本願発明 本件出願の請求項1ないし10に係る発明は、平成28年 7月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」ともいう。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】コア物質とシェル物質からなる平均粒子径が0.01μm~2,000μmのマイクロカプセルであって、前記コア物質が(A)アリールオキシシクロホスファゼン系難燃剤であり、かつ、前記シェル物質が(B)ポリマー基材材料であることを特徴とするマイクロカプセル化難燃剤。」 第3 当審における拒絶理由の概要 当審において、平成29年 9月11日付けで通知した理由(以下、「当審拒絶理由」という)は、以下のとおりである。 本件出願の請求項1~10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記1~4の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1.特開2004-115815号公報 2.特表2003-527472号公報 3.特開2004-83730号公報 4.特開平11-323015号公報 (以下、本願出願日前に頒布された上記刊行物1~4を、それぞれ「引用例1」~「引用例4」という) 第4 引用例の記載及び引用発明 1.引用例1の記載 引用例1には、以下の事項が記載されている。 (1a)「【請求項1】 一般式(1) 【化1】 [式中mは3~25の整数を示す。Phはフェニル基を示す。] で表される環状ホスファゼン化合物及び一般式(2) 【化2】 [式中Xは基-N=P(OPh)3又は基-N=P(O)OPhを示し、Yは基-P(OPh)4又は基-P(O)(OPh)2を示す。nは3~1000の整数を示す。Phは前記に同じ。] で表される直鎖状ホスファゼン化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のホスファゼン化合物からなる難燃剤。 【請求項2】 熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂100重量部に対し、請求項1に記載の難燃剤0.1~100重量部及び無機質充填剤0.01~50重量部を配合した難燃性樹脂組成物。 【請求項3】 熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂100重量部に対し、請求項1に記載の難燃剤0.1~50重量部及びハロゲンを含有しない有機リン化合物0.1~50重量部を配合した難燃性樹脂組成物。 【請求項4】 請求項2又は請求項3に記載の難燃性樹脂組成物を成形して得ることができる難燃性樹脂成形体。」(【特許請求の範囲】【請求項1】~【請求項4】) (1b)「【0002】 プラスチックスはその優れた成形加工性、機械的特性、外観等の特徴から、電器・電子製品、OA機器、事務機器及び通信機器等の用途に使用されている。これらの用途では、内部部品の発熱発火等の問題から樹脂の難燃化が必要とされている。」(明細書段落【0002】) (1c)「【0010】 このため、ハロゲンを含まず、高融点、低揮発性で且つ機械的特性、成形加工性等の樹脂本来の特性を低下させず、混練時のブロッキングや滲みだし等の問題がなく、燃焼中にドリッピングを起こさない新規難燃剤の開発が望まれている。」(明細書段落【0010】) (1d)「【0026】 更に、下記一般式(3)で表される環状ホスファゼン化合物及び一般式(4)で表される直鎖状ホスファゼン化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のホスファゼン化合物を難燃剤として用いる場合にも、上記のような本発明の所期の効果が発現されることを見い出した。 【0027】 本発明によれば、一般式(3) 【0028】 【化4】 【0029】 [式中mは前記に同じ。R1はシアノ置換フェニル基を示す。R2は炭素数1~18のアルキル基、基 【0030】 【化5】 【0031】 又は基 【0032】 【化6】 【0033】 を示す。ここでR3は水素原子、シアノ基、炭素数1~10のアルキル基、アリル基又はフェニル基を示す。R2が2個以上ある場合には、R2は同一であってもよいし、異なっていてもよい。p及びqは、p>0、q≧0であり、p+q=2を満足する実数である。] で表される環状ホスファゼン化合物及び一般式(4) ・・・・・・(中略)・・・・・・・・ で表される直鎖状ホスファゼン化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のホスファゼン化合物からなる難燃剤(以下、この難燃剤を「難燃剤C」という)が提供される。 【0036】 また、本発明によれば、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂100重量部に対し、難燃剤C0.1~100重量部を配合した難燃性樹脂組成物が提供される。」(明細書段落【0026】~【0036】) (1e)「【0096】 無機質充填剤としては公知の樹脂充填剤が使用でき、例えば、マイカ、カオリン、タルク、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、珪酸カルシウム、酸化チタン、硝子ビーズ、硝子バルーン、硝子フレーク、ガラス繊維、繊維状チタン酸アルカリ金属(チタン酸カリウム繊維等)、繊維状ホウ酸遷移金属塩(ホウ酸アルミニウム繊維等)、繊維状ホウ酸アルカリ土類金属塩(ホウ酸マグネシウム繊維等)、酸化亜鉛ウィスカー、酸化チタンウィスカー、酸化マグネシウムウィスカー、石膏ウィスカー、珪酸アルミニウム(鉱物名ムライト)ウィスカー、珪酸カルシウム(鉱物名ワラストナイト)ウィスカー、炭化珪素ウィスカー、炭化チタンウィスカー、窒化珪素ウィスカー、窒化チタンウィスカー、炭素繊維、アルミナ繊維、アルミナ-シリカ繊維、ジルコニア繊維、石英繊維等を挙げることができる。 【0097】 これら無機質充填剤の中でも、繊維状チタン酸アルカリ金属、繊維状ホウ酸遷移金属塩、繊維状ホウ酸アルカリ土類金属塩、酸化亜鉛ウィスカー、酸化チタンウィスカー、酸化マグネシウムウィスカー、珪酸アルミニウムウィスカー、珪酸カルシウムウィスカー、炭化珪素ウィスカー、炭化チタンウィスカー、窒化珪素ウィスカー、窒化チタンウィスカー等の繊維状物やマイカ等の形状異方性を有するものが好ましく、繊維状チタン酸アルカリ金属、繊維状ホウ酸遷移金属塩、繊維状ホウ酸アルカリ土類金属塩、酸化チタンウィスカー、珪酸カルシウムウィスカー等が特に好ましい。」(明細書段落【0096】~【0097】) (1f)「【0129】 このようにして得られる本発明の難燃性樹脂組成物及び難燃性樹脂成形体は、電気・電子・通信、農林水産、鉱業、建設、食品、繊維、衣類、医療、石炭、石油、ゴム、皮革、自動車、精密機器、木材、家具、印刷、楽器等の幅広い産業分野に使用できる。 【0130】 より具体的には、本発明の難燃性樹脂組成物及び難燃性樹脂成形体は、プリンター、パソコン、ワープロ、キーボード、PDA(小型情報端末機)、電話機、ファクシミリ、複写機、ECR(電子式金銭登録機)、電卓、電子手帳、電子辞書、カード、ホルダー、文具等の事務・OA機器、 洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、照明器具、ゲーム機、アイロン、炬燵等の家電機器、TV、VTR、ビデオカメラ、ラジカセ、テープレコーダー、ミニディスク、CDプレイヤー、スピーカー、液晶ディスプレイ等のAV機器、コネクター、リレー、コンデンサー、スイッチ、プリント基板、コイルボビン、半導体封止材料、電線、ケーブル、トランス、偏向ヨーク、分電盤、時計等の電気・電子部品及び通信機器等の用途に使用される。」(明細書段落【0129】~【0130】) 2.引用例2の記載 引用例2には、以下の事項が記載されている。 (2a)「【請求項1】オレフィン系不飽和化合物および少なくとも1つのハロゲン非含有リン化合物から調製され平均粒度が1~1000μmである架橋ビーズポリマー。」(【特許請求の範囲】【請求項1】) (2b)「【0009】 (発明の開示) 熱可塑性プラスチック、特に、融解温度またはガラス転移温度が高いために高温でしか加工することができないものへの難燃性の付与に普遍的に適した、特定のハロゲン非含有リン化合物を含むビーズポリマーを、見いだした。カプセル化されていない遊離のリン化合物の代わりに本発明のビーズポリマーを使用することにより、難燃添加剤のブリーディングおよび気化が減少し、熱可塑性プラスチックの耐熱性が向上して耐燃性になり、難燃剤の有効性が増大する。」(明細書段落【0009】) (2c)「【0015】 本発明のビーズポリマーが熱可塑性プラスチックへの難燃性の付与に、遊離の、すなわちカプセル化されていないリン化合物よりも適していることは、極めて驚くべきことと考えなければならない。本発明のビーズポリマーは重要なプラスチックに容易に組み込むことができ、それらのプラスチックに高い適合性を示す。マイクロカプセル型を使用すると、リン化合物の移動性および可塑化作用は著しく低下する。」(明細書段落【0015】) (2d)「【0018】 本発明に適したオレフィン系モノ不飽和化合物は、例えば芳香族ビニル化合物(スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルピリジンなど)、アクリル化合物、メタクリル化合物、アクリル酸C1-C8アルキル、メタクリル酸C1-C8アルキル(好ましい例は、アクリル酸、・・・・・(中略)・・・・・、またはそれらの混合物)である。ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニルもしくはアジピン酸ビニル、またはそれらの混合物も好適である。」(明細書段落【0018】) (2e)「【0038】 本発明のビーズポリマーは懸濁重合で製造される。 懸濁重合とは、モノマーまたはモノマー混合物に可溶な開始剤を含み所望により添加剤と混合したモノマーまたはモノマー混合物を、前記モノマーまたはモノマー混合物とは実質的に混和せず、分散剤を含む相で、小滴状に細分し、撹拌しながら温度を上昇させることによって硬化させる方法を意味するものと解釈される。懸濁重合のさらなる詳細は、例えば・・・・・(中略)・・・・・に記載されている。 【0039】 本発明のビーズポリマーは、とりわけ、上述した重合性オレフィン系不飽和化合物、上記ハロゲン非含有リン化合物の少なくとも1つ、少なくとも1つの開始剤および所望により水と混和しにくい有機溶媒を含む有機相を、水および少なくとも1つの分散剤からなる水相に、0℃~60℃の温度で撹拌しながら微分散させ、次に撹拌しながら温度を上昇させて重合を行い、次に場合により存在する揮発物、有機物質を全て分離し、得られたビーズポリマーを単離し、所望により洗浄および乾燥することによって製造することができる。」(明細書段落【0038】【0039】) (2f)「【0054】 本発明のビーズポリマーは、高温で加工される熱可塑性プラスチックまたは熱可塑性プラスチック混合物への難燃性の付与に、とりわけ好ましく使用される。例として、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィドまたはそれらの混合物を含む成形組成物を挙げることができる。これらの熱可塑性プラスチックを他の成分、例えば耐衝撃性改良剤および/またはビニルポリマーおよび/または相溶化剤などと共に含むブレンドも、特に挙げておくことができる。 ポリカーボネート成形組成物およびその耐衝撃性改良ブレンドは特に好ましい。」(明細書段落【0054】) (2g)「【0100】 表1および表2から、TPPを架橋SANマトリックス中に封入することにより、 ・難燃性にしたプラスチックの耐熱性および溶融粘度が増加する、 ・そのジューシング(しみ出し)挙動が改善される、すなわち難燃添加剤のブリードまたは気化傾向が低下する(TGA実験での質量損失が減少)、 ・成形組成物の応力亀裂耐性が改善される、 ・成形組成物のノッチ付衝撃強さは影響を受けない、および ・良好な(改善された)耐燃性が得られる、 と結論することができる。」(明細書段落【0100】) 3.引用例3の記載 引用例3には、以下の事項が記載されている。 (3a)「【請求項1】 少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と、極性基含有単量体と、光重合開始剤とを主成分とする光硬化性粘着剤中に、ドリッピング抑制剤と、難燃剤を添加した無溶剤型光硬化性粘着剤を基材上に塗工してなる難燃性粘着テープにおいて、上記難燃剤として、マイクロカプセル化したホスファゼン化合物を添加したことを特徴とする難燃性粘着テープ。 【請求項2】 上記光硬化性粘着剤100重量部に対して、上記ドリッピング抑制剤として、光活性官能基を有するヒドロキシ基含有単量体が5~50重量部、上記難燃剤として、マイクロカプセル化したホスファゼン化合物が5~100重量部配合されてなることを特徴とする請求項1に記載の難燃性粘着テープ。 【請求項3】 上記光硬化性粘着剤100重量部に対して、上記ドリッピング抑制剤として、光活性官能基を有するヒドロキシ基含有単量体が5~50重量部、上記難燃剤として、マイクロカプセル化したホスファゼン化合物が5~100重量部及び水和アルミナが10~200重量部配合されてなることを特徴とする請求項1に記載の難燃性粘着テープ。 【請求項4】 上記光硬化性粘着剤100重量部に対して、上記ドリッピング抑制剤として、光活性官能基を有するヒドロキシ基含有単量体が5~50重量部、上記難燃剤として、マイクロカプセル化したホスファゼン化合物が5~100重量部及びポリリン酸アンモニウムが10~200重量部配合されてなることを特徴とする請求項1に記載の難燃性粘着テープ。 【請求項5】 上記光硬化性粘着剤100重量部に対して、上記ドリッピング抑制剤として、光活性官能基を有するヒドロキシ基含有単量体が5~50重量部、上記難燃剤として、マイクロカプセル化したホスファゼン化合物が5~100重量部、水和アルミナが10~100重量部及びポリリン酸アンモニウム10~100重量部配合されてなることを特徴とする請求項1に記載の難燃性粘着テープ。 【請求項6】 酸素指数が23以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の難燃性粘着テープ。 【請求項7】 上記マイクロカプセル化に使用したシェル材が、メラミン樹脂又はゼラチン-アラビアゴムであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の難燃性粘着テープ。 【請求項8】 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の難燃剤を含む上記無溶剤型光硬化性粘着剤を基材上に5~1000μm厚に塗工して形成した光硬化性粘着剤層を硬化する際に、不活性ガス雰囲気下、あるいは、透明な保護フィルムを上から被せながら、上記光硬化性粘着剤層を光照射により硬化させて作製したことを特徴とする難燃性粘着テープの製造方法。」(【特許請求の範囲】【請求項1】~【請求項8】) (3b)「【0012】 本発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであり、内部の難燃剤の溶出がなく、良好な粘着特性を併せ持つ難燃性粘着テープを得ることにある。」(明細書段落【0012】) (3c)「【0028】 また、難燃剤であるホスファゼン化合物を覆うシェル材の樹脂としては、内部の難燃剤が溶出しないなど難燃剤との遮断性を有する限り、特に、限定されないが、例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタン-ウレア樹脂、メラミン樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、架橋ゼラチン、ゼラチン-アラビアゴム樹脂、エポキシ樹脂、アクリロニトリル-(メタ)アクリル酸エステル-多官能モノマー三元共重合体などが挙げられ、特に、分散性の観点からメラミン樹脂、ゼラチン-アラビアゴム樹脂が好ましい。かかるマイクロカプセル化難燃剤の粒径は、その平均粒径が0.5~50μmのものである。0.5μmより小さい場合は、粘着剤の加工性、耐溶剤性が低下し、粉体としての取り扱いが不便となり、50μmより大きい場合は、粘着剤組成中に分散した場合に、十分な接着性を得られない場合がある。かかるマイクロカプセル化難燃剤の製法は、特に限定されず、コアセルベーション法、in-situ重合法等が挙げられる。」(明細書段落【0028】) 4.引用例4の記載 引用例4には、以下の事項が記載されている。 (4a)「【請求項1】 マイクロカプセルに包合された難燃剤と熱可塑性樹脂とで構成されていることを特徴とする難燃性樹脂組成物。 【請求項2】 該難燃剤が、ハロゲン元素を含まない化合物である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。 【請求項3】 該ハロゲン元素を含まない化合物が、燐系化合物である請求項2記載の難燃性樹脂組成物。」(【特許請求の範囲】【請求項1】~【請求項3】) (4b)「【0007】 【発明の実施の形態】本発明は、前記課題、つまり、難燃性、樹脂製膜性、樹脂膜強度にともに優れ、しかも難燃剤が表面にブリードしにくく、燃焼時にハロゲン元素を含む有毒な物質を発生しない優れた難燃性樹脂組成物について、鋭意検討し、難燃剤をマイクロカプセルに包合させてみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。また、本発明によれば、さらにかかる樹脂組成物により繊維布帛上に均一な製膜ができ、難燃剤が樹脂表面にブリードしにくい品質に優れた難燃性繊維構造物を提供できることを究明したものである。」(明細書段落【0007】) (4c)「【0018】★本発明は難燃剤をマイクロカプセル化するものである。マイクロカプセルを製造する方法は公知の方法を使用することができ、例えば「新版マイクロカプセルその製法・性質・応用(三共出版株式会社)」に記載されている方法等を採用することができ特に限定されるものではなく、難燃剤の種類、熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択することができ、マイクロカプセル化された難燃剤は熱可塑性樹脂樹脂の製膜方法に応じて水分散液、溶剤分散液あるいは粉体状で使用することができる。 【0019】本発明のマイクロカプセルの製造は、1種類の難燃剤をマイクロカプセル化するのはもちろんのことであるが2種以上の難燃剤を混合したものを使用することもできる。 【0020】本発明のマイクロカプセルの難燃剤の含有量は特に限定されないが、難燃剤の量は多いほど熱可塑性樹脂への配合量を少なくできるので好ましいが、マイクロカプセル外壁樹脂が薄すぎると外壁が破損し難燃剤がブリードする結果を招くので、外壁樹脂の全重量に対する重量比率は、好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上である。 【0021】本発明のマイクロカプセルの粒径は、細かいほどよく、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下のものがよい。」(明細書段落【0018】~【0021】) 5.引用例1に記載の発明 引用例1の【特許請求の範囲】【請求項1】には、「一般式(1) 【化1】 [式中mは3~25の整数を示す。Phはフェニル基を示す。] で表される環状ホスファゼン化合物及び一般式(2) 【化2】 [式中Xは基-N=P(OPh)3又は基-N=P(O)OPhを示し、Yは基-P(OPh)4又は基-P(O)(OPh)2を示す。nは3~1000の整数を示す。Phは前記に同じ。] で表される直鎖状ホスファゼン化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のホスファゼン化合物からなる難燃剤。」 が記載されており、上記一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物と上記一般式(2)で表される直鎖状ホスファゼン化合物とは択一的に用いられるものであるから、引用例1には、 「一般式(1) 【化1】 [式中mは3~25の整数を示す。Phはフェニル基を示す。] で表される環状ホスファゼン化合物からなる難燃剤。」に係る発明(以下、この発明を「引用例1発明」という)が記載されているものと認められる。 第5 対比 そこで、本願発明1と、上記引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物からなる難燃剤」は、その構造から見て、本願発明1の「アリールオキシシクロホスファゼン系難燃剤」に相当することは明らかである。 よって、両者は、「アリールオキシシクロホスファゼン系難燃剤」である点で一致し、一方、下記の点で相違しているものと認められる。 (相違点) 本願発明1においては、難燃剤が、「コア物質とシェル物質からなる平均粒子径が0.01μm~2,000μmのマイクロカプセルであって、前記コア物質が(A)アリールオキシシクロホスファゼン系難燃剤であり、かつ、前記シェル物質が(B)ポリマー基材材料であるマイクロカプセル化難燃剤」であるのに対して、引用例1発明の難燃剤は、マイクロカプセル化されていない「アリールオキシシクロホスファゼン系難燃剤」である点 第6 判断 上記相違点について検討するに、引用例1~4に記載のとおり、シクロホスファゼンなどのリン系化合物の難燃剤を樹脂に添加する際に、樹脂へのブリードアウトを防止し、樹脂本来の特性を低下させずに難燃性を付与することは、当該技術分野における周知の技術課題と認められる(適示事項(1a)、(1c)、(2a)~(2c)、(3a)、(3b)、(4a)、(4b)参照)。 そして、引用例2には、上記技術課題の解決のために、「オレフィン系不飽和化合物および少なくとも1つのハロゲン非含有リン化合物から調製された架橋ビーズポリマー」を用いることが記載されており(摘示事項(2a)参照)、当該「ビーズポリマー」は、「マイクロカプセル型」の難燃剤であって(摘示事項(2b)、(2c)、(2f)参照)、具体的には、本願発明1と同様に(本件出願の明細書段落【0045】、【0084】~【0085】参照)、重合性オレフィン系不飽和化合物、ハロゲン非含有リン化合物、開始剤を含む有機相を、水及び少なくとも1つの分散剤からなる水相に、撹拌しながら微分散させて懸濁重合を行うという懸濁重合法で製造されている(摘示事項(2e)参照)から、上記「オレフィン系不飽和化合物」から調整されたものがシェル物質となり、「少なくとも1つのハロゲン非含有リン化合物」の難燃剤がコア物質であるマイクロカプセル化難燃剤を形成していると認められる。ここで、上記「オレフィン系不飽和化合物」から調整されたものが「オレフィン系不飽和重合体」、すなわち、「ポリマー基材材料」に相当すること、また「少なくとも1つのハロゲン非含有リン化合物」の難燃剤が「リン化合物系難燃剤」に相当することは、明らかである。 同様にして、上記課題の解決のために、引用例3及び4には、それぞれ、難燃剤であるホスファゼン化合物をシェル材の樹脂で覆ったマイクロカプセルとすること、燐系化合物を外壁が樹脂であるマイクロカプセルとすることが記載されている(適示事項(3a)、(3c)、(4a)、(4c)参照)。 してみると、引用例2~4に記載のとおり、上記技術課題の解決のために、リン系化合物の難燃剤をコア物質、ポリマー基材材料をシェル物質としてコア物質とシェル物質からなるマイクロカプセル化難燃剤とすることも、周知技術であると認められる。 よって、引用例1発明において、「アリールオキシシクロホスファゼン系難燃剤」を「コア物質とシェル物質からなるマイクロカプセル」とし、「前記コア物質が(A)アリールオキシシクロホスファゼン系難燃剤であり、かつ、前記シェル物質が(B)ポリマー基材材料であるマイクロカプセル化難燃剤」とすることは、当業者なら容易に想到することができたものといえる。 また、マイクロカプセルの平均粒子径に関しても、引用例2には、「平均粒度が1~1000μm」と記載されている(摘示事項(2a)参照)。さらに、引用例3及び4にも、それぞれ、「マイクロカプセル化難燃剤の粒径は、その平均粒径が0.5~50μm」、「マイクロカプセルの粒径は、細かいほどよく、好ましくは10μm以下」と記載されているから(適示事項(3c)、(4c)参照))、本願発明1のマイクロカプセルの粒径は格別のものではなく、引用例1発明に適用したマイクロカプセルの平均粒子径を本願発明と同程度とすることは、当業者であれば、これら周知技術を参酌しながら、容易になし得たものといえる。 一方、本願発明1の効果について検討するに、引用例2には、「カプセル化されていない遊離のリン化合物の代わりに本発明のビーズポリマーを使用することにより、難燃添加剤のブリーディングおよび気化が減少し、熱可塑性プラスチックの耐熱性が向上して耐燃性になり、難燃剤の有効性が増大する。」(摘示事項(2b)参照)、「本発明のビーズポリマーは、高温で加工される熱可塑性プラスチックまたは熱可塑性プラスチック混合物への難燃性の付与に、とりわけ好ましく使用される。」(摘示事項(2f)参照)ことなどが、それぞれ記載されており、カプセル化したリン化合物を難燃剤として用いることにより、カプセル化されていない遊離のリン化合物を用いた場合よりも、耐熱性等が向上するという有利な効果が得られることが、実施例においても確認されている(摘示事項(2g)参照)。してみると、本願発明1における耐熱性に優れるという効果は、引用例2の記載から予測される範囲内であり、また難燃性や高温信頼性(ブリードアウト)などの効果についても、引用例1~4の記載から予測される範囲内にあるといえるから、本願発明1が格段の作用効果を奏しているものとは認められない。 以上のとおりであるから、本願発明1は、上記引用例1~4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 請求人の主張についての検討 請求人は、平成29年11月3日に提出された意見書において、以下の(1)~(4)の点を挙げ、「熱硬化性樹脂による樹脂製品について耐熱性を高めることができるという本願発明1の効果は、引用例1~4の記載から予測することのできない格別顕著な効果であり、それは、コア物質としてアリールオキシシクロホスファゼン系難燃剤を用いたマイクロカプセルという本願発明1に特有の構成によりもたらされるものである。本願発明1は、上記格別顕著な効果を奏することによると、上記引用例1~4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとされる発明に該当しない。」と主張している。 (1)本願発明1は、熱硬化性樹脂による樹脂製品についても耐熱性を高めることができるという効果を奏するものである。 (2)引用例2は、それが開示するビーズポリマーの使用により熱可塑性プラスチック(熱可塑性樹脂)の耐熱性が向上することに言及しているものの、熱硬化性樹脂に対して当該ビーズポリマーを使用した場合に樹脂製品の耐熱性が向上することについては言及していない。 (3)熱可塑性樹脂による樹脂製品はポリマーの鎖状分子がファンデルワールス結合や水素結合により結合した集合体であるのに対し、熱硬化性樹脂による樹脂製品はポリマーが架橋構造になったものであることから、前者と後者は分子構造が異なるものであり、それらの耐熱性は、ともにガラス転移温度に基づいて評価され得るものであっても意義が異なるものである。 (4)そして、引用例2のビーズポリマーの使用により熱可塑性プラスチックの耐熱性が向上するという効果が、同様のビーズポリマーを熱硬化性樹脂に対して使用した場合についても予測される効果といえる根拠を引用例1~4において見出すことはできず、また、当業者においてそのような予測を可能とする技術常識が存在するものでもない。 しかしながら、本願発明1の「マイクロカプセル化難燃剤」は、これを添加して難燃化する樹脂を特定していないのであるから、上記主張は特許請求の範囲の記載に基づかないものであり、到底採用することができない。 また、上記請求人の主張を検討したとしても、以下のとおり、これを採用することができない。 上記(1)の点に関して、本件出願の明細書の段落【0090】~【0100】には、実施例7~12として、アリールオキシシクロフォスファゼン化合物に対し、メタクリル酸メチル、ジメタクリル酸エチレン、界面活性剤、重合開始剤、水等を加えて懸濁重合を行って、コア物質とシェル物質とからなるマイクロカプセル化難燃剤を製造し、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂及びノボラック型フェノール樹脂に添加して、耐熱性評価を行い、マイクロカプセル化せずにアリールオキシシクロフォスファゼン化合物を添加したもの(比較例1~3)との比較を行った結果が記載されている。そして、その結果によると、上記実施例7~12の耐熱性は163~174℃の範囲となっており、比較例1~3(耐熱性は152~158℃)を上回っているから、この比較においては、アリールオキシシクロフォスファゼン化合物をマイクロカプセル化することにより、マイクロカプセル化しないものに比して、樹脂の耐熱性が高いことが読み取れる。 しかしながら、上記実施例7~12におけるシェル物質を構成するポリマー基材材料は、メタクリル酸メチルとジメタクリル酸エチレンとを重合させたポリマーのみに限定されており、他のポリマー基材材料を用いた場合にも、上記実施例と同等の作用効果を奏するかは明らかでない。また、難燃剤を添加する樹脂組成物もビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂及びノボラック型フェノール樹脂からなる組成物に限定されており、他の熱硬化性樹脂を用いた場合にも、上記実施例と同等の作用効果を奏するかは明らかでない。一方、本件出願の発明の詳細な説明には、本件発明のマイクロカプセル化難燃剤を熱硬化性樹脂に対して添加する場合の耐熱性向上に関する作用機序は明りょうに記載されておらず、これを参酌しても、メタクリル酸メチルとジメタクリル酸エチレンとを重合させたポリマー以外のポリマー基材材料を用いた場合や、特定のエポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂を用いた場合にも、本願発明1は、上記実施例と同様に、マイクロカプセル化しないものに比して、樹脂の耐熱性が高いという効果を奏するかは明らかでない。なお、請求人は、「耐熱性を高めることができる」と主張しているが、上記実施例で確認できるのは、マイクロカプセル化しない難燃剤を添加したものに比して、樹脂の耐熱性が高いと言うことであって、難燃剤を添加しない場合に比して耐熱性が高くなると言う効果は確認できない。 しかるに、本願発明1の熱硬化性樹脂についての耐熱性を高めるという効果は、「特定のポリマー基材材料を用い」、「特定の熱硬化性樹脂製品について」確認できるものであって、本願発明1全般に渡って確認できるものではないから、「本願発明1は、熱硬化性樹脂による樹脂製品についても耐熱性を高めることができるという効果を奏するものである。」という請求人の主張は適切なものとはいえない。 よって、本願発明1の熱硬化性樹脂についての耐熱性を高めるという効果を認めるとしても、せいぜい、「本願発明1は、特定のポリマー基材材料を用いてマイクロカプセル化した場合において、特定の熱硬化性樹脂製品について、マイクロカプセル化しない場合に比して、耐熱性を高めることができるという効果を奏することがある。」と限定的に解するのが妥当である。 そして、請求人は、上記効果の予測困難性について、上記(2)~(4)の点を挙げているが、引用例2には、熱硬化性樹脂に対して当該ビーズポリマーを使用した場合に樹脂製品の耐熱性が向上することについては言及されてはいないが、上記第6で述べたとおり、「カプセル化されていない遊離のリン化合物の代わりに本発明のビーズポリマーを使用することにより、難燃添加剤のブリーディングおよび気化が減少し、熱可塑性プラスチックの耐熱性が向上して耐燃性になり、難燃剤の有効性が増大する。」(摘示事項(2b)参照)と記載されており、カプセル化したリン化合物を難燃剤として用いることにより、カプセル化されていない遊離のリン化合物を用いた場合よりも、耐熱性等が向上するという有利な効果が得られることが、実施例においても確認されている(摘示事項(2g)参照)。 しかるに、引用例2には、カプセル化したビーズポリマーを使用することにより、カプセル化されていない遊離のリン化合物を使用した場合に発生するブリーディングおよび気化が減少し、少なくとも熱可塑性プラスチックに対して添加した場合には、耐熱性が向上するという有利な効果が得られることが示唆されているといえる。そして、ブリーディングおよび気化は、樹脂組成物ではなく、遊離のリン化合物、すなわち難燃剤に起因することは明らかであるから、引用例2に接した当業者であれば、熱可塑性プラスチック(熱可塑性樹脂)とは分子構造が異なる熱硬化性樹脂に対しても、難燃剤としてカプセル化したビーズポリマーを使用してブリーディングおよび気化を減少させることにより、耐熱性を改善しうることは、十分予測しうるものと言える。 よって、「本願発明1は、特定のポリマー基材材料を用いてマイクロカプセル化した場合において、特定の熱硬化性樹脂製品について、マイクロカプセル化しない場合に比して、耐熱性を高めることができるという効果を奏することがある。」という作用効果は、引用例1~4に基づき予測可能なものであり、請求人の「本願発明1は、上記格別顕著な効果を奏することによると、上記引用例1~4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとされる発明に該当しない。」との主張は、採用することができない。 第8 むすび 以上の通りであるから、本願発明は、上記引用例1~4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件出願は、その他の請求項について検討するまでもなく、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-019156

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